本発明のハードコートフィルムは、基材の少なくとも一方の面に、ハードコート層(X)、プライマー層(Y)及び表面層(Z)が積層されたハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムの前記表面層(Z)によって構成される面の塑性硬さが1000N/mm2以上であり、かつ、前記ハードコートフィルムの前記表面層(Z)によって構成される面の水接触角が110°以上であることを特徴とする。上記構成からなる本発明のハードコートフィルムは、基材の表面に、単にハードコート層(X)を設けた従来のハードコートフィルムに比べ、防汚性と滑り性に優れ、かつ、硬質な素材で繰り返し摩擦された場合であっても、その防汚性の効果を長期間持続することができる。
前記ハードコートフィルムとしては、1000N/mm2以上の塑性硬さを有するものを使用する。前記塑性硬さを有するハードコートフィルムを使用することによって、例えばタッチペン等の硬質な材料によって繰り返し摩擦された場合であっても、表面の擦傷の発生を防止可能なレベルの耐久性を付与でき、かつ、防汚性等の効果を長期間持続することが可能となる。前記塑性硬さは、1200N/mm2以上であることが好ましく、1500N/mm2以上であることがより好ましい。前記塑性硬さの上限は、特に制限されないが、ハードコートフィルムのクラックを抑制する観点から、5000N/mm2であることが好ましい。なお、前記塑性硬さは、ハードコートフィルムを構成する前記表面層(Z)からなる面に、フィッシャースコープHM2000Xyp(フィッシャーインストルメンツ社)を用い、稜間角136°のビッカース圧子を1mN荷重にて押し込んで測定した値である。
また、前記ハードコートフィルムとしては、その表面層(Z)の水接触角が110°以上のものを使用する。これにより、滑り性及び防汚性に優れ、かつ、擦傷の発生を防止することができる。
前記水接触角は、前記した効果をより一層高めるうえで、112°以上であることが好ましく、113°以上であることが好ましい。
なお、前記水接触角は、ハードコートフィルムを構成する表面層(Z)に、3μlの水滴を接触させた時から1秒後に測定される接触角を表す。
本発明のハードコートフィルムは、前記基材の他方の面側に、なんら層を有しないものであってもよく、前記基材の他方の面側に前記ハードコート層(X)とプライマー層(Y)と表面層(Z)とが順に積層された構成を有するものであってもよく、前記基材の他方の面側にハードコート層(X)、プライマー層(Y)、表面層(Z)またはその他の層を単独または2以上有するものであってもよい。
本発明のハードコートフィルムの好ましい実施態様としては、前記基材の一方の面に前記ハードコート層(X)とプライマー層(Y)と表面層(Z)とが順に積層された構成を有し、前記基材の他方の面側に、直接または他の層を介して、ハードコート層を有するものが挙げられる。前記構成からなるハードコートフィルムは、その表面硬度をより一層向上させることができ、より一層優れた耐久性を備える。また、前記ハードコートフィルムは、ハードコート層の硬化収縮に起因した反りを抑制することができる。
一方、前記基材の他方の面にハードコート層(X)を有しないハードコートフィルムは、その他方の面に粘着剤層を設けた態様で使用することで、良好な貼り作業性と後加工性とを付与することができ、その生産コストを抑制することができる。
前記ハードコートフィルムとしては、75μm〜500μmの厚さのものを使用することが好ましく、100μm〜400μmの厚さのものを使用することがより好ましく、100μm〜350μmの厚さのものを使用することがさらに好ましく、100μm〜300μmの厚さのものを使用することが特に好ましい。前記範囲の厚さを備えたハードコートフィルムは、例えばディスプレイの表面に設置する用途で使用する場合であれば、前記ディスプレイを備えた携帯電子端末や画像表示機器の薄型化と、その表面の傷つき防止効果等とを両立することができる。
また、前記ハードコートフィルムとしては、透明性の高いものを使用することが、ディスプレイの表面に設置した場合であっても、良好な視認性を確保できるため好ましい。前記ハードコートフィルムの全光線透過率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
本発明のハードコートフィルムとしては、ハードコート層(X)とプライマー層(Y)と表面層(Z)とが順に積層されたものを使用することが好ましい。その際、前記ハードコートフィルムとしては、前記ハードコート層(X)と前記プライマー層(Y)とが結合(xy)を形成したものであることが、より一層優れた滑り性、防汚性、耐擦傷性を付与でき、かつ、前記防汚性をより一層長期間維持できるため好ましい。
前記結合(xy)としては、(メタ)アクリロイル基がラジカル重合することによって形成された炭素−炭素結合が挙げられる。具体的には、前記結合(xy)としては、前記ハードコート層(X)を形成する成分に由来する(メタ)アクリロイル基と、前記プライマー層(Y)を形成する成分に由来する(メタ)アクリロイル基とがラジカル重合することによって形成された結合が挙げられる。
また、前記ハードコートフィルムとしては、前記プライマー層(Y)と前記表面層(Z)とが結合(yz)を形成したものであることが、より一層優れた滑り性、防汚性、耐擦傷性を付与でき、かつ、前記防汚性をより一層長期間維持できるため好ましい。
前記結合(yz)としては、例えばケイ素原子と酸素原子またはチタン原子と酸素原子によって構成された結合が挙げられる。具体的には、前記結合(yz)としては、前記プライマー層(Y)を形成する成分に由来するアルコキシシリル基またはシラノール基等の官能基と、前記表面層(Z)を形成する成分に由来するアルコキシシリル基やシラノール基やチタノール基等とが反応し形成された結合が挙げられる。
[基材]
本発明のハードコートフィルムを構成する基材としては、透明性が高く、一般的に光学用ハードコートフィルムの基材として使用されているものを適宜選択して使用することができる。
前記基材としては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アクリル樹脂フィルム、脂環式構造含有熱可塑性樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム等の樹脂フィルムを使用することができる。
前記基材としては、前記で挙げた樹脂フィルムのみからなる基材を使用することもできるが、ハードコート層(X)との密着性をより一層向上させることを目的として、前記樹脂フィルムの表面に易接着層を有する基材を使用することもできる。
また、前記基材としては、ハードコート層(X)との密着性をより一層向上させることを目的として、前記樹脂フィルムの表面が、サンドブラスト法、溶剤処理法等で凹凸化処理したもの、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理、酸化処理されたもの等を使用することができる。
また、前記基材としては、その全光線透過率が88%以上である透明基材を使用することが好ましく、90%以上である透明基材を使用することがより好ましい。本発明においては、全光線透過率を当該範囲とすることで透明基材の片面または両面にハードコート層(X)、プライマー層(Y)及び表面層(Z)を設けた場合であっても透過率に優れ良好な視認性の確保されたハードコートフィルムを得ることができる。
前記透明基材としては、厚さ50μm〜450μmの範囲のものを使用することが好ましく、75μm〜300μmの範囲のものを使用することが、カール(反り)の発生を抑制しながら、薄型化の要請の高い情報表示装置に使用可能なハードコートフィルムを製造できるため好ましい。
[ハードコート層(X)]
本発明のハードコートフィルムを構成するハードコート層(X)としては、例えば活性エネルギー線硬化性組成物を含有するハードコート剤を用いて形成されたものが挙げられる。
前記ハードコート層(X)の形成に使用可能なハードコート剤としては、入手や取扱いが容易であり、用途等に応じて前記ハードコート層(X)の特性を制御しやすいことから、(メタ)アクリレートを含有するハードコート剤を使用することが好ましい。
前記(メタ)アクリレートとしては、ハードコート層(X)が形成される際の硬化収縮を抑制し、かつ、高い表面硬度と優れた耐久性とを備えたハードコート層を形成するうえで、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を使用することがより好ましい。
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、各種ウレタン(メタ)アクリレートを使用することができ、なかでも、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
前記分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えばポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることによって得られるものを使用することが好ましい。
前記ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネート等を使用することができる。
前記ポリイソシアネートとしては、前記脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの3量体を使用することもできる。
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであるノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを使用することが、耐擦傷性等の耐久性のより一層優れたハードコートフィルムを得るうえで好ましい。
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の製造に使用可能な前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを使用することが、耐擦傷性等の耐久性のより一層優れたハードコートフィルムを得るうえで好ましい。
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記ポリイソシアネートと前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとを、ウレタン化触媒の存在下、常法でウレタン化反応させることによって製造することができる。
前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等のリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物等が挙げられる。
前記方法で得られたウレタン(メタ)アクリレート(A)は、単独または2種以上を組み合わせ使用することができる。
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、前記ポリイソシアネートとしてノルボルナンジイソシアネートを用いて得られたウレタンアクリレートと、前記ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを用いて得られたウレタンアクリレートとを組み合わせ使用することが好ましい。このような組み合わせとすることで、硬化させた際の硬化収縮によるハードコートフィルムの反りを抑制しながら、高い表面硬度と耐久性に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
前記ハードコート層(X)の形成に使用可能なハードコート剤としては、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外のその他の(メタ)アクリレートを含有するものを使用することができる。
前記その他の(メタ)アクリレートとしては、例えば分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)が挙げられる。
前記多官能(メタ)アクリレート(B)としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記多官能(メタ)アクリレート(B)としては、前記ハードコート層(X)の耐擦傷性等の耐久性をより一層向上させるうえで、その(メタ)アクリロイル基当量が50g/eq.〜200g/eq.の範囲のものを使用することが好ましく、70g/eq.〜150g/eq.の範囲のものを使用することがより好ましく、80g/eq.〜120g/eq.の範囲のものを使用することがさらに好ましい。前記範囲の(メタ)アクリロイル基当量を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(アクロイル基当量:88g/eq.)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(アクロイル基当量:118g/eq.)等が挙げられる。
前記多官能(メタ)アクリレート(B)は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)と組み合わせ使用することが好ましい。
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)と前記多官能(メタ)アクリレート(B)との質量比[(A)/(B)]は、ハードコートフィルムの耐擦傷性等の耐久性をより一層向上するうえで、90/10〜10/90の範囲であることが好ましく、80/20〜20/80の範囲であることがより好ましく、75/25〜25/75の範囲であることがさらに好ましい。
前記ウレタンアクリレート(A)と前記多官能(メタ)アクリレート(B)との合計使用量は、前記ハードコート剤の不揮発分100質量部に対し、10質量部〜99.95質量部であることが好ましく、20質量部〜99.5質量部であることが好ましい。
前記ハードコート層(X)の形成に使用可能なハードコート剤としては、前記したもののほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するモノ(メタ)アクリレート、分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリレートを含有するものを使用することができる。それらは、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して、40質量部以下で使用することが好ましく、20質量部以下で使用することがより好ましい。
前記ハードコート層(X)の形成に使用可能なハードコート剤としては、活性エネルギー線を照射することによって硬化反応を開始しうる光重合開始剤を含有するものを使用することができる。
前記光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルサルフォニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、前記ハードコート剤としては、光増感剤を含有するものを使用することができる。
前記光増感剤としては、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物等が挙げられる。
前記光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、前記ハードコート剤の不揮発成分100質量部に対し、各々0.05質量部〜20質量部であることが好ましく、0.5質量部〜10質量部であることがより好ましい。なお、前記活性エネルギー線として電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を使用する必要はない。
前記ハードコート剤としては、適当な溶媒で希釈されたものを使用することができる。
前記溶媒としては、例えば、アセトン、イソブチルアルコール、2−プロパノール、イソペンチルアルコール、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、オルト−ジクロルべンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸ノルマル−ブチル、酢酸ノルマル−プロピル、酢酸ノルマル−ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、ジクロルメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、スチレン、テトラクロルエチレン、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロルエタン、トルエン、ノルマルヘキサン、1−ブタノール、2−ブタノール、メタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル−ノルマル−ブチルケトン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
また、前記ハードコート剤としては、必要に応じて、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤等を含有するものを使用することができる。
前記ハードコート剤を用いて形成される前記ハードコート層(X)は、3μm〜25μmの厚さであることが好ましく、5μm〜15μmの厚さであることが、耐擦傷性等の耐久性及び滑り性に優れ、例えば薄型化の要請の高い情報表示装置に使用可能なハードコートフィルムを得るうえでより好ましい。
また、前記ハードコート層(X)としては、その表面の水接触角が90°以下であるものを使用することが好ましく、80°以下であるものを使用することがより好ましい。前記範囲の水接触角を備えたハードコート層(X)を使用することによって、前記ハードコート層(X)と前記プライマー層(Y)との密着性をより一層向上でき、その結果、防汚性を長期間持続でき、かつ、耐久性のより一層優れたハードコートフィルムを得ることができる。
また、前記ハードコート層(X)は、前記基材の片面に積層した際の表面の鉛筆硬度が2H以上であることが好ましく、3H以上であることが、タッチペン等による強い押圧を受けた場合にも凹みや傷を防止可能なハードコートフィルムを得るうえでより好ましい。
[プライマー層(Y)]
本発明のハードコートフィルムを構成するプライマー層(Y)は、前記ハードコート層(X)と前記表面層(Z)との密着性等を向上させることを目的として設けられる。
前記プライマー層(Y)は、前記ハードコート層(X)及び表面層(Z)の両方と、それぞれ結合を形成し得るものであることが、より一層優れた密着性を備えたハードコートフィルムを形成するうえで好ましい。
前記プライマー層(Y)は、活性エネルギー線硬化性組成物からなるプライマー剤を用いて形成することができる。
前記プライマー剤としては、例えばアルコキシシリル基またはシラノール基を有するシラン化合物を含有するものを使用することができる。ここで、前記アルコキシシリル基は、ケイ素原子にアルコキシ基が結合した官能基を指し、シラノール基はケイ素原子に水酸基が結合した官能基を指す。
特に、前記表面層(Z)として前記アルコキシシリル基やシラノール基や、金属原子に水酸基が結合した官能基等を有する層を使用する場合、前記プライマー剤としては、前記アルコキシシリル基またはシラノール基を有するシラン化合物を含有するプライマー剤を使用することが、前記プライマー層(Y)と前記表面層(Z)との界面に結合(yz)を形成し、その結果、耐久性や防汚性、耐擦傷性に優れ、かつ、前記防汚性を長期間持続可能なハードコートフィルムを得るうえで好ましい。
前記シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシオクチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシオクチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等を使用することができる。
前記シラン化合物としては、とりわけ、前記アルコキシシリル基やシラノール基等の脱水縮合しうる官能基と、(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和基とを有するシラン化合物を使用することが、前記ハードコート層(X)とプライマー層(Y)との間で結合(xy)を形成でき、かつ、前記プライマー層(Y)と前記表面層(Z)との間で結合(yz)を形成でき、その結果、高硬度で耐擦傷性等の耐久性に優れ、防汚性等の効果を長期間持続可能なハードコートフィルムを得ることができるため好ましい。
なかでも、前記シラン化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物(y1)、または、下記一般式(2)及び一般式(3)で示される構造を有する化合物(y2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(C)を使用することが、より高い耐久性を持ち、防汚性等の効果を長期間持続可能なハードコートフィルムを得るうえで好ましい。
(一般式(1)中のR
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、R
4は炭素原子数4〜10のアルキレン基を表し、R
5は水素原子またはメチル基を表す。)
(一般式(2)中のR1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、一般式(3)中R5は水素原子またはメチル基を表す。)
前記一般式(1)で示される化合物(y1)としては、具体的には、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシオクチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、前記化合物(y2)としては、具体的には、前記一般式(2)及び一般式(3)で示される構造を有する化合物等を使用することができる。また、前記化合物(y2)としては、信越化学工業株式会社製の「X−12−1048」や「X−12−1050」等を使用することができる。
なかでも、前記化合物(y2)としては、前記一般式(3)で示される構造に対する前記一般式(2)で示される構造のモル比[一般式(2)で示される構造/一般式(3)で示される構造]が5/1〜1/5である化合物(y2−1)を使用することが好ましく、3/1〜1/3である化合物を使用することが、前記プライマー層(Y)内部の架橋密度の低下を抑制でき、かつ、前記プライマー層(Y)と表面層(Z)との間で結合(yz)を形成でき、その結果、より一層高硬度で耐擦傷性等の耐久性に優れ、かつ、防汚性等の効果を長期間持続可能なハードコートフィルムを得ることができるため好ましい。
前記プライマー層(Y)の形成に使用可能なプライマー剤としては、前記したもののほかに、必要に応じて、その他の成分、例えば(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線硬化性化合物を含有するものを使用することができる。
前記(メタ)アクリレートとしては、例えば分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(D)等を使用することが、高硬度で耐擦傷性等の耐久性に優れ、かつ、防汚性等の効果を長期間持続可能なハードコートフィルムを得ることができる。
前記多官能(メタ)アクリレート(D)としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記多官能(メタ)アクリレート(D)としては、前記プライマー層(Y)の耐擦傷性等の耐久性をより一層向上させるうえで、その(メタ)アクリロイル基当量が50g/eq.以上であるものを使用することが好ましく、70g/eq.以上であるものを使用することがより好ましく、80g/eq.以上であるものを使用することがさらに好ましい。
前記多官能(メタ)アクリレート(D)の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(アクロイル基当量:88g/eq.)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(アクロイル基当量:118g/eq.)等が挙げられる。
前記多官能(メタ)アクリレート(D)は、前記プライマー剤の不揮発分100質量部に対して、30質量部〜99.9質量部含まれることが好ましく、50質量部〜99.9質量部含まれることがより好ましく、60質量部〜99.9質量部含まれることがさらに好ましい。
前記プライマー層(Y)の形成に使用可能なプライマー剤としては、前記(メタ)アクリレートとして、各種ウレタン(メタ)アクリレートを含有するものを使用することができる。前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、前記ハードコート層(X)の製造に使用可能なものとして例示したウレタン(メタ)アクリレート(A)と同様のものを使用することができる。
従来、前記プライマー剤としては、優れた防汚性を備えたハードコートフィルムを得るうえで、例えば前記多官能(メタ)アクリレート(D)等と反応し得る官能基を有しないシラン化合物を、前記多官能(メタ)アクリレート(D)や前記ウレタン(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(不揮発分)の全量に対して、0.1質量%以上含有するものを使用することがある。
しかし、前記シラン化合物は、前記多官能(メタ)アクリレート(D)等の架橋反応を阻害する場合や相溶性不良を起こす場合があり、ハードコートフィルムの耐擦傷性を若干低下させる場合がある。
一方、前記プライマー剤としては、プライマー層(Y)の架橋密度を高め、優れた防汚性を備えたハードコートフィルムを得るうえで、前記多官能(メタ)アクリレート(D)等と反応し得る官能基を有するシラン化合物含有するものを使用することがある。
しかし、単に前記官能基を有するシラン化合物を含有するプライマー剤を使用すると、形成されるプライマー層の架橋密度が、むしろ低下する傾向を示し、その結果、優れた防汚性を備えたハードコートフィルムを得ることができない場合があった。
ところが、前記シラン化合物のうち、前記化合物(y1)及び化合物(y2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(C)を選択し使用した場合であれば、その含有量が前記多官能(メタ)アクリレート(D)等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(不揮発分)の全量に対して、0.1質量%以上であっても、耐擦傷性の低下を引き起こすことがなく、したがって、優れた耐擦傷性と優れた防汚性とを両立でき、かつ、優れた防汚性を長期間持続可能なハードコートフィルムを得ることができることを見出した。
前記化合物(y1)及び前記化合物(y2)からなる群より選ばれる1種以上の化合物(C)は、前記多官能(メタ)アクリレート(D)等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物と組み合わせ使用する場合には、前記多官能(メタ)アクリレート(D)等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で使用することが、より一層優れた耐擦傷性と優れた防汚性とを両立でき、かつ、優れた防汚性を長期間持続可能なハードコートフィルムを得るうえで好ましい。
前記プライマー層(Y)の形成に使用可能なプライマー剤としては、活性エネルギー線を照射することによって硬化反応を開始しうる光重合開始剤を含有するものを使用することができる。
前記光重合開始剤としては、前記ハードコート層(X)を形成する際に使用可能なものとして例示した光重合開始剤と同様のものを使用することができる。
また、前記プライマー剤としては、光増感剤を含有するものを使用することができる。
前記光増感剤としては、前記ハードコート層(X)を形成する際に使用可能なものとして例示した光重増感剤と同様のものを使用することができる。
前記光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、前記プライマー剤に含有される活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、各々0.05質量部〜20質量部であることが好ましく、1質量部〜15質量部であることがより好ましい。なお、前記活性エネルギー線として電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を使用する必要はない。
また、前記プライマー剤としては、必要に応じて、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤等を含有するものを使用することができる。
前記プライマー剤を用いて形成される前記プライマー層(Y)は、0.1μm〜3μmの厚さであることが好ましく、0.5μm〜2μmの厚さであることがより好ましく、0.8μm〜1.2μmの厚さであることが耐擦傷性等の耐久性や、滑り性により一層優れ、防汚性等の効果を長期間持続可能で、かつ、例えば薄型化の要請の高い情報表示装置に使用可能なハードコートフィルムを得るうえでより好ましい。
[表面層(Z)]
本発明のハードコートフィルムを構成する表面層(Z)は、前記プライマー層(Y)の表面に積層される層であり、前記ハードコートフィルムに各種機能を付与する。
また、前記表面層(Z)は、優れた滑り性(低摩擦係数)や防汚性をハードコートフィルムに付与することができる。
前記滑り性や防汚性に優れた表面層(Z)としては、例えばフッ素系化合物やシリコーン系化合物を含有する層が挙げられる。
前記表面層(Z)は、前記プライマー層(Y)の表面の一部または全部にフッ素系化合物を含有するコーティング剤等を塗布等することによって形成することができる。
前記フッ素系化合物としては、従来知られるフッ素系化合物を使用することができる。なかでも、前記フッ素系化合物としては、前記プライマー層(Y)との間で結合(yz)を形成することによって、層間の密着性をより一層高め、優れた耐擦傷性や滑り性や防汚性と、優れた防汚性を長期間持続可能な表面層(Z)を形成するうえで、末端にアルコキシシリル基またはシラノール基等を有するフッ素系化合物を使用することが好ましい。
前記末端にアルコキシシリル基またはシラノール基等を有するフッ素系化合物としては、本発明のハードコートフィルムに、より一層高い滑り性を付与するうえで、例えば末端にアルコキシシリル基またはシラノール基を有するとともに、ポリパーフルオロポリエーテル鎖を有するフッ素系化合物を使用することが好ましい。
前記ポリパーフルオロポリエーテル鎖としては、例えば炭素原子数1〜6の2価フッ化アルキレン基と酸素原子とが交互に連結した構造を有するものが挙げられる。
前記ポリパーフルオロポリエーテル鎖としては、例えば下記構造式(1)で表されるものが挙げられる。
前記一般式(1)中、Xは下記式(1−1)〜(1−3)である。また、Xは下記式(1−1)〜(1−3)のいずれか1種類のものであってもよいし、下記式(1−1)〜(1−3)のうち2種以上を有するのものであってもよい。例えば、前記Xとして下記式(1−1)〜(1−3)のうち2種以上を有する構造としては、−(CF2CF2−O)n−(CF2−O)n−で示されるような構造が挙げられる。前記Xとして式(1−1)〜(1−3)で示される構造を2種類以上含む場合には、−(X−O)−の構造単位からなるランダム構造またはブロック構造を有していてもよい。また、nは繰り返し単位を表す2〜200の整数である。
(式中aは1〜6の整数である。)
前記フッ素系化合物としては、前記パーフルオロポリエーテル鎖等のフッ素原子含有基とともに、アルコキシシリル基またはシラノール基を有するものを使用することが、前記プライマー層(Y)と前記表面層(Z)との間に結合(yz)を形成でき、その結果、優れた耐擦傷性や滑り性や防汚性と、優れた防汚性を長期間持続可能なハードコートフィルムを得ることができるため好ましい。前記結合(yz)としては、ケイ素原子及び酸素原子によって構成される結合が挙げられ、例えば−Si−O−Si−結合が挙げられる。
前記結合(yz)を形成可能なフッ素系化合物としては、具体的には、ダイキン工業(株)製の「オプツールDSX」、信越化学工業(株)製の商品名「KY−164」「KY−130」「KY−108」「X−71−190」、3M社製「Novec1720」等が挙げられる。
前記フッ素系化合物の含有量としては、前記表面層(Z)を形成するコーティング剤の不揮発分100質量部に対し、80質量部〜100質量部であることが好ましく、90質量部〜100質量部であることがより好ましく、95質量部〜100質量部であることが更に好ましい。
前記表面層(Z)の形成に使用可能なコーティング剤としては、前記フッ素系化合物と溶媒とを含有するものを使用することができる。
前記溶媒としては、例えばパーフルオロヘプタン等のフッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤;m−キシレンヘキサフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤;ハイドロフルオロエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテルやパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のフッ素変性エーテル系溶剤;パーフルオロトリブチルアミン等のフッ素変性アルキルアミン系溶剤;石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤を使用することができる。
なかでも、前記コーティング剤としては、前記フッ素系化合物に対する良好な溶解性と、コーティング剤の良好な濡れ性等とを両立するうえで、m−キシレンヘキサフロライド、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン等を使用することが好ましい。
前記表面層(Z)は、その形成に使用するコーティング剤の凝集物に起因した白濁を抑制し、かつ、より一層優れた防汚性を付与するうえで、0.001μm〜0.1μmの厚さであることが好ましく、0.001μm〜0.05μmの厚さであることがより好ましい。
前記コーティング剤としては、前記したもののほかに、必要に応じて縮合触媒を含有するものを使用することができる。
前記縮合触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクトエート等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のグアニジル基含有有機ケイ素化合物;有機酸(酢酸、メタンスルホン酸等)、無機酸(塩酸、硫酸等)を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記硬化触媒としては、酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジブチルスズジアセテートを使用することが好ましい。前記硬化触媒は、通常、前記フッ素化合物100質量部に対して0.01質量部〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1質量部〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、例えば(i)前記基材の少なくとも一方の面に、前記ハードコート剤を用いてハードコート層(X)を形成する工程、(ii)前記ハードコート層(X)の表面に、前記プライマー剤を用いてプライマー層(Y)を形成する工程、及び、(iii)前記プライマー層(Y)の表面に、前記コーティング剤等を用いて表面層(Z)を形成する工程を経ることによって製造することができる。
なお、前記ハードコート剤及びプライマー剤として活性エネルギー線硬化性組成物を使用する場合、未硬化または半硬化状態のハードコート層(X’)の表面に、プライマー剤を用いて未硬化または半硬化状態のプライマー層(Y’)を形成した後、活性エネルギー線を照射することによって、ハードコート層(X)及びプライマー層(Y)を一括して硬化させることが好ましい。これにより、前記ハードコート層(X)と前記プライマー層(Y)との間に結合(xy)を形成でき、より一層優れた耐久性と、防汚性とを両立し、かつ、前記防汚性等の効果を長期間持続することが可能となる。
はじめに、前記工程(i)について説明する。
前記工程(i)によりハードコート層(X)を形成する方法は、具体的には、前記基材の片面または両面の一部または全部に前記ハードコート剤を塗布及び乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。
前記基材の片面または両面の一部または全部に前記ハードコート剤を塗布する方法としては、例えばダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等の方法が挙げられる。
前記硬化方法としては、例えば前記ハードコート剤が活性エネルギー線硬化性組成物を含有するものであれば、前記ハードコート剤を塗布し乾燥した塗布面に活性エネルギー線を照射し硬化させる方法が挙げられる。
前記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線が挙げられる。
前記活性エネルギー線を照射する装置としては、例えば紫外線であれば、その発生源として低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。
本発明のハードコートフィルムを製造する際には、前記した方法によって、基材の表面にハードコート層(X)を形成した後、後述するプライマー層(Y)及び表面層(Z)を順に積層する工程を行ってもよいが、ハードコート層(X)とプライマー層(Y)の界面で高い密着性を得る観点から、基材の表面に前記ハードコート剤を塗布し乾燥した後、活性エネルギー線を照射しない、または、完全硬化に十分な量の活性エネルギー線を照射しないことで、未硬化または半硬化状態のハードコート層(X’)形成し、次いで、後述する前記プライマー剤、または、前記プライマー剤と表面コーティング剤とを塗布及び乾燥させた後、活性エネルギー線を照射することによってハードコートフィルムを製造してもよい。この場合、前記ハードコート層(X’)は、前記プライマー層(Y)を形成するときに照射される活性エネルギー線によって完全硬化され、ハードコート層(X)を形成することができる。
前記ハードコート層(X)の表面は、後述するプライマー層(Y)と積層した際の層間密着性をより一層向上するうえで、コロナ処理、プラズマ処理等が施されていてもよい。
次に、前記工程(ii)について説明する。
前記工程(ii)は、前記工程(i)で形成したハードコート層(X)または前記ハードコート層(X’)の表面に、前記プライマー剤を塗布及び乾燥し、硬化させる工程である。
前記プライマー剤を塗布する方法としては、例えばダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等の方法が挙げられる。
前記硬化方法としては、例えば前記プライマー剤が活性エネルギー線硬化性組成物を含有するものであれば、前記プライマー剤を塗布し乾燥した塗布面に活性エネルギー線を照射し硬化させる方法が挙げられる。
前記活性エネルギー線としては、例えば紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線が挙げられる。
前記活性エネルギー線を照射する装置としては、例えば紫外線であれば、その発生源として低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。
また、前記プライマー剤を、未硬化または半硬化状態のハードコート層(X’)の表面に塗布等した場合には、前記プライマー剤の塗布面に活性エネルギー線を照射することによって、前記ハードコート層(X)と前記プライマー層(Y)とを形成することが、前記層間の密着性をより一層向上させ、より一層優れた耐擦傷性と、優れた防汚性等の効果を長期間持続可能とするうえで好ましい。
前記プライマー層(Y)は、後述する表面層(Z)との間で結合(yz)を効率よく形成すべく、前記プライマー層(Y)に含まれていてもよいアルコキシシリル基を加水分解させシラノール基を形成することを目的として、水蒸気雰囲気下または微量の水分が存在する雰囲気下で常温放置または加熱処理をしてもよい。
また、前記プライマー層(Y)の表面は、後述する表面層(Z)と積層した際の層間密着性をより一層向上するうえで、コロナ処理、プラズマ処理等が施されていてもよい。
次に、前記工程(iii)について説明する。
前記工程(iii)は、前記工程(ii)で形成したプライマー層(Y)の表面に、前記コーティング剤等を塗布及び乾燥することで表面層(Z)を形成する工程である。
前記プライマー層(Y)に表面層(Z)を積層する方法としては、例えば前記プライマー層(Y)に前記コーティング剤等を塗布し、乾燥して溶剤を除去した後に、加熱処理を施して表面層(Z)を形成する方法が挙げられる。この時の処理温度としては、20℃以上であれば十分であるが、プライマー層(Y)と表面層(Z)の界面に結合(yz)を速やかに形成させることを目的として、さらに高い温度で処理をすることも可能である。例えば、40℃以上の環境で処理することが好ましく、60℃以上の環境で処理することが更に好ましい。
前記プライマー層(Y)に前記コーティング剤等を塗布する方法としては、例えばダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、真空蒸着等の方法が挙げられる。
また、コーティング剤等に含有しているアルコキシシリル基を予め加水分解して用いることもできる。加水分解によって生成したシラノール基は、複数分子の間で脱水縮合してSi−O−Siを生成する。脱水縮合は速やかに進み、オリゴマーが生成する。脱水縮合が十分に進むように、加水分解後、養生してもよい。このように加水分解、部分縮合したオリゴマーを用いることにより、コーティング剤が硬化して表面層(Z)を形成するまでの硬化時間を短縮することができる。
また、前記プライマー層(Y)の表面に前記コーティング剤を塗布等し表面層(Z)を形成したものを、水蒸気雰囲気下または微量の水分が存在する雰囲気下で加熱等することが、前記プライマー層(Y)及び表面層(Z)に含まれていてもよいアルコキシシリル基を加水分解させシラノール基を形成でき、その結果、前記シラノール基間またはシラノール基とアルコキシシリル基間で、ケイ素原子及び酸素原子によって構成された結合等の結合(yz)を効率よく形成できるため好ましい。
前記方法で得られる本発明のハードコートフィルムは、表層の少なくとも一部に表面層(Z)が露出している構成であればよく、上記構成以外にも、適宜任意の層を有していてもよい。
本発明のハードコートフィルムは、その片面または両面の一部または全部に、加飾層や粘着剤層を有していてもよい。前記加飾層が一部または全部に設けられた本発明のハードコートフィルムは、加飾フィルムとして使用することができる。また、前記粘着剤層が一部または全部に設けられた本発明のハードコートフィルムは、保護フィルムとして使用することができる。
前記加飾層としては、例えば文字、図形、記号をはじめ、隠ぺい性やデザインを付与することを目的とした額縁状の縁取り等によって構成されるものが挙げられる。
[加飾層]
本発明のハードコートフィルムには、加飾層を設けて加飾フィルムとして使用してもよい。加飾層は、前記ハードコートフィルムに一般的な印刷により設けることができる。印刷方法は、例えば、シルク印刷、スクリーン印刷、熱転写印刷、グラビア印刷等が挙げられる。
加飾層は、ハードコートフィルムに各種の意匠性を付与するものであれば特に制限されず、例えば、情報表示パネルとして使用する際の情報表示部の周囲に視認される文字や図形、あるいは、情報表示部に額縁状に設けられる黒色の縁取り状の加飾層等が挙げられる。
加飾層の厚さとしては、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。当該厚さの加飾層とすることで、好適な意匠性を得やすくなる。
加飾層はハードコートフィルムの片面又は両面の任意の箇所に設けることができるが、表面層(Z)上に設ける場合には、表面層(Z)の一部が露出するように設けられる。また、ディスプレイ用途で使用する場合には、通常はディスプレイ以外の箇所に設けられる。
[粘着剤層]
本発明のハードコートフィルムの一方の面側にのみ表面層(Z)を有する場合、その他方の面に粘着剤層を設けたものは、保護フィルムとして使用することができる。前記保護フィルムは、前記ハードコートフィルムの他方の面に粘着テープを貼り合わせる方法、ハードコートフィルムの他方の面に直接粘着剤を塗布等し粘着剤層を設ける方法によって製造することができる。
前記粘着剤層の厚さは、5μm〜50μmの範囲であることが好ましく、8μm〜30μmの範囲であることがより好ましく、10μm〜25μmの範囲であることがさらに好ましい。前記厚さの粘着剤層を設けることによって、接着信頼性に優れ、またハードコートフィルムの表面硬さを著しく損なわない保護フィルムを得ることができる。
前記粘着剤層の形成に使用可能な粘着剤としては、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着樹脂を使用することができる。なかでも、アクリル系重合体を含有するアクリル系粘着剤を使用することが、干渉縞を低減し、前記基材との密着性や、透明性、耐候性等の優れた保護フィルムを得るうえで好ましい。
前記アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル単量体を重合して得られるものを使用することができる。前記(メタ)アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリレートが挙げられ、炭素原子数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含有するものを使用することが好ましい。
前記炭素原子数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
前記の(メタ)アクリレートとしては、前記したなかでも、炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキルアクリレートを使用することがより好ましい。
前記炭素原子数4〜9のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレートが、好適な粘着力を確保しやすいためさらに好ましい。
前記炭素原子数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、前記(メタ)アクリル単量体の全量に対して90質量%〜99質量%の範囲で使用することが好ましく、90質量%〜96質量%の範囲で使用することが好適な粘着力を確保しやすいためより好ましい。
前記アクリル系重合体としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミド基等の極性基を有するものを使用することができる。
前記アクリル系重合体は、例えば水酸基、カルボキシル基、アミド基等の極性基を有する(メタ)アクリル単量体を含有する(メタ)アクリル単量体を重合することによって製造することができる。
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸又はメタクリル酸の2量体、エチレンオキサイド変性コハク酸アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、アクリル酸を使用することが好ましい。
前記アミド基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−(パーヒドロフタルイミド−N−イル)エチルアクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリンを使用することが好ましい。
前記その他の極性基を有するビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
極性基を有する(メタ)アクリル単量体は、前記アクリル系重合体の製造に使用する(メタ)アクリル単量体の全量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲で使用することが好ましく、1質量%〜13質量%の範囲で使用することがより好ましく、1.5質量%〜8質量%の範囲で使用することが、凝集力、保持力、接着性を好適な範囲に調整しやすいためさらに好ましい。
前記アクリル系重合体の重量平均分子量は40万〜140万であることが好ましく、60万〜120万であることが、接着力を特定範囲に調整しやすいためより好ましい。
なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。より具体的には、GPC測定装置として、東ソー株式会社製「SC8020」を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定して求めることができる。
(GPCの測定条件)
・サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H」
・検出器:示差屈折
前記粘着剤としては、より一層凝集力を高めるうえで、前記アクリル系重合体等のほかに、架橋剤を含有するものを使用することが好ましい。
前記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。
前記架橋剤は、形成される粘着剤層のゲル分率が25質量%〜80質量%となる範囲で使用することが好ましく、ゲル分率が40質量%〜75質量%となる範囲で使用することがより好ましく、50質量%〜70質量%となる範囲で使用することが、保護フィルムを基材に貼付した際の表面鉛筆硬度の低下を抑制することができ、接着性も十分なものとすることができる。なお、本発明におけるゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対して百分率で表したものである。
前記粘着剤としては、より一層接着力を高めるうえで、粘着付与樹脂を含有するものを使用することができる。
前記粘着付与樹脂は、前記アクリル系重合体100質量部に対して、10質量部〜60質量部の範囲で使用することが好ましい。さらに接着性を重視する場合は、20質量部〜50質量部の範囲で添加するのが好ましい。
前記粘着剤としては、前記以外に公知慣用の添加剤を含有するものを使用することができる。
前記添加剤としては、例えばガラス基材への接着性を向上するために、粘着剤100質量部に対して、0.001質量部〜0.005質量部の範囲でシランカップリング剤を添加することが好ましい。さらに、必要に応じて、その他の添加剤として、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、難燃剤等を添加することもできる。
[実施態様]
本発明のハードコートフィルムは、好適な耐擦傷性等の耐久性や滑り性や防汚性を有することから各種用途で使用することができる。なかでも、本発明のハードコートフィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ等の表面に設置し使用することができる。特に、本発明のハードコートフィルムは、好適な耐擦傷性等の耐久性や滑り性を実現できることから、電子手帳、携帯電話、スマートフォン、携帯オーディオプレイヤー、モバイルパソコン、タブレット端末等の小型化や薄型化の要請の高い携帯電子端末のディスプレイを保護する用途で好適に使用することができる。
本発明のハードコートフィルムは、例えば、LCDモジュールや有機ELモジュール等の情報表示モジュールを保護するために設けられる透明パネルの表面または裏面に貼り付けて使用することができる。
また、本発明のハードコートフィルムと偏光板とを、予め高透明粘着テープを介して貼り合わせた積層体は、前記情報表示モジュールの表側に設ける保護フィルムとして使用することができる。前記積層体は、局所的な応力を受けた場合にも偏光板の凹み等を生じにくい。そのため、前記構成は、落下等によって局所的な応力を受けた場合でも偏光板や画像表示モジュールへの凹みや衝撃を好適に緩和できる。
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。
(合成例1:ウレタンアクリレート(A1)の合成)
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル250質量部、ノルボルナンジイソシアネート206質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、空気を吹き込みながら、70℃に昇温した後、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PE3A」と省略。)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PE4A」と省略。)との混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、70℃で3時間、前記反応を継続させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、ウレタンアクリレート(A1)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A1)溶液」と省略。)を得た。前記ウレタンアクリレート(A1)の分子量(計算値)は802であった。
(合成例2:ウレタンアクリレート(A2)の合成)
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、PE3AとPE4Aとの混合物(質量比75/25の混合物)795質量部を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、70℃で3時間、前記反応を継続させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、ウレタンアクリレート(A2)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A2)溶液」と省略。)を得た。前記ウレタンアクリレート(A2)の分子量(計算値)は818であった。
(合成例3:ウレタンアクリレート(A3)の合成)
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル254質量部、イソホロンジイソシアネート222質量部、p−メトキシフェノール0.5質量部、ジブチル錫ジアセテート0.5質量部を仕込み、70℃に昇温した後、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート369質量部、及び、PE3AとPE4Aとの混合物(質量比75/25の混合物)398質量部を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、70℃で3時間、前記反応を継続させ、さらにイソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルが消失するまで反応させることによって、ウレタンアクリレート(A3)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A3)溶液」と省略。)を得た。前記ウレタンアクリレート(A3)の分子量(計算値)は889であった。
(合成例4:ウレタンアクリレート(A4)の合成)
撹拌機、ガス導入管、コンデンサーおよび温度計を備えたフラスコに、PEA3とPEA4との混合物(質量比60/40の混合物)549.1質量部、ジブチル錫ジアセテート0.1質量部、スミライザーBHT〔住友化学工業(株)製、酸化防止剤〕0.6質量部、メトキノン〔精工化学工業(株)製、重合禁止剤〕0.1質量部、および、酢酸ブチル160.0質量部を加え、均一に混合しながら徐々に昇温した。60℃に達したところでデスモジュールH〔住友バイエルウレタン(株)製ヘキサメチレンジイソシアネート、NCO%=50%)90.9質量部を加えた後、80℃で5時間反応させることによって、ウレタンアクリレート(A4)とPE4Aとを含有する酢酸ブチル溶液(不揮発分80質量%、以下、「ウレタンアクリレート(A4)溶液」と省略。)を得た。
(調製例1:ハードコート剤(1)の調製)
合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)溶液31.3質量部、合成例2で得られたウレタンアクリレート(A2)溶液31.3質量部、合成例3で得られたウレタンアクリレート(A3)溶液25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=60/40(質量比))30質量部、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)4.5質量部を均一に攪拌した後、酢酸エチルで希釈して、不揮発分40質量%のハードコート剤(1)を調製した。
(調製例2:ハードコート剤(2)の調製)
合成例4で得られたウレタンアクリレート(A4)溶液に酢酸ブチルを添加して不揮発分濃度が35質量%になるように希釈した後、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)3.2質量部を配合し、ハードコート剤(2)を調製した。
(調製例3:ハードコート剤(3)の調製)
合成例1で得られたウレタンアクリレート(A1)溶液31.3質量部、合成例2で得られたウレタンアクリレート(A2)溶液31.3質量部、合成例3で得られたウレタンアクリレート(A3)溶液25質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=60/40(質量比))30質量部、反応性フッ素防汚剤(オプツールDAC−HP;ダイキン工業株式会社製、不揮発分20質量%)2.0質量部及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)4.5質量部を均一に攪拌した後、酢酸エチルで希釈して、不揮発分40質量%のハードコート剤(3)を調製した。
(調製例4:プライマー剤(1)〜(8)の調製)
ウレタンアクリレート(A1)溶液、ウレタンアクリレート(A2)溶液、ウレタンアクリレート(A3)溶液、多官能モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート=60/40(質量比)))、シランカップリング剤(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、シランカップリング剤(3−アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、前記化合物(y1)に相当)、シランカップリング剤(「X−12−1048」、一般式(2)中のR1とR2とR3とがメチル基である構造と、一般式(3)中のR5が水素原子である構造とを有する化合物を含有する。前記一般式(3)で示される構造に対する前記一般式(2)で示される構造のモル比[一般式(2)で示される構造/一般式(3)で示される構造]=1:1)、シランカップリング剤(「X−12−1050」、一般式(2)中のR1とR2とR3とがメチル基である構造と、一般式(3)中のR5が水素原子である構造とを有する化合物を含有する。前記化合物(y2)に相当、前記一般式(3)で示される構造に対する前記一般式(2)で示される構造のモル比[一般式(2)で示される構造/一般式(3)で示される構造]=1:5)、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア754」)、酢酸エチル、2−プロパノールを下記表1記載の質量部に混合することでプライマー剤(1)〜(8)を調製した。
(調製例5:表面層形成用のコーティング剤(1)の調製)
信越化学工業株式会社製「X−71−190」1質量部を3M社製「Novec7200」199質量部で希釈して、不揮発分0.1質量%のコーティング剤(1)を調製した。
(調製例6:表面層形成用のコーティング剤(2)の調製)
ダイキン工業株式会社製「オプツールDSX」1質量部を3M社製「Novec7200」199質量部で希釈して、不揮発分0.1質量%のコーティング剤(2)を調製した。
(実施例1)
ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、厚さ100μm)上に、ワイヤーバーを用いて前記ハードコート剤(1)を塗布し、80℃で1分間乾燥した後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製「MIDN−042−C1」、ランプ:120W/cm、高圧水銀灯)を用いて、照射光量0.25J/cm2の紫外線を照射することによって、厚さ10μmのハードコート層(x1)を有するフィルムを得た。
得られたフィルムのハードコート層(x1)の表面に、プライマー剤(1)をワイヤーバーを用いて塗布し、85℃で2分間乾燥した後、空気雰囲気下で上記と同じ紫外線照射装置を用い、照射光量0.20J/cm2の紫外線を照射することによって、厚さ1μmのプライマー層(y1)が積層されたフィルムを得た。
次に、前記フィルムのプライマー層(y1)の表面に、前記コーティング剤(1)をワイヤーバーを用いて塗布し、85℃で2分間乾燥した後、窒素雰囲気下で上記と同じ紫外線照射装置を用い、照射光量0.20J/cm2の紫外線を照射し、空気雰囲気下60℃の環境で一週間放置することによって、前記プライマー層(y1)が積層された表面層(z1)を備えたハードコートフィルムを作製した。
(実施例2)
実施例1のハードコート層(x1)の厚さを10μmから8μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例3)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例4)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例5)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(4)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例6)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例7)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(6)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例8)
ハードコート剤(1)の代わりにハードコート剤(2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(実施例9)
表面層形成用のコーティング剤(1)の代わりに表面層形成用のコーティング剤(2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(比較例1)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(7)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(比較例2)
プライマー層(y1)を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(比較例3)
プライマー層(y1)と表面層(z1)を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(比較例4)
ハードコート剤(1)の代わりにハードコート剤(3)を使用し、かつ、プライマー層(Y)と表面層(Z)とを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(比較例5)
ハードコート層(x1)を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
(比較例6)
プライマー剤(1)の代わりにプライマー剤(8)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でハードコートフィルムを得た。
上記実施例及び比較例にて得られたハードコートフィルムについて、以下の評価を行った。
[塑性硬さの測定]
ハードコートフィルムの裏面(ハードコート層、プライマー層及び表面層を有しない面)に、DIC株式会社製の高透明粘着テープ「ZB7010W−15」を貼り合わせ、それをガラス板上に貼り合わせた。
前記ハードコートフィルムを構成する表面層の塑性硬さを、フィッシャースコープHM2000Xyp(フィッシャーインストルメンツ社)を用い、稜間角136°のビッカース圧子を1mN荷重にて押し込むことによって測定した。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの塑性硬さは、その最表面を構成する層の塑性硬さを、上記と同様の方法で測定した。
[鉛筆硬度の測定]
ハードコートフィルムを10cm角に切りとったものを、その表面層が上になるようにセロハンテープを用いてガラス板に固定した後、その表面層の鉛筆硬度を、JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(荷重:750g 手動式)を用いて測定した。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの鉛筆硬度は、その最表面を構成する層の鉛筆硬度を、上記と同様の方法で測定した。
[水接触角の測定]
協和界面科学株式会社製の自動接触角計「DROMPAMSTER500」を用いて、前記で得られたハードコートフィルムの表面層の表面に精製水3μLを着滴させた後、1秒後の接触角を測定した。前記水接触角の算出方法は、JIS R3257に記載の試験方法のうち、静滴法にしたがった。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの水接触角は、その最表面を構成する層の水接触角を、上記と同様の方法で測定した。
[防汚性の評価]
前記ハードコートフィルムの表面層の表面に、人差し指を、500g荷重をかけた状態で10秒間押し付けた後、その表面を、3波長蛍光灯下で、10人のモニターが目視観察し、下記の基準にしたがって防汚性を判定した。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの防汚性は、その最表面を構成する層の表面の防汚性を、上記と同様の方法で測定した。
◎:10〜8人のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面に指紋の付着がほとんどないと評価した。
○:7〜5人のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面に指紋の付着がほとんどないと評価し、残りのモニターは前記表面に指紋の付着があると評価した。
△:4〜2人のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面に指紋の付着がほとんどないと評価し、残りのモニターは前記表面に指紋の付着があると評価した。
×:2人未満のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面に指紋の付着がほとんどないと評価し、残りのモニターは前記表面に指紋の付着があると評価した。
<防汚性の持続性1(耐久性)[指紋付着性に基づく評価]>
前記ハードコートフィルムの表面層の表面を、スチールウール(ボンスター#0000)で荷重500g/cm2をかけながら、速度60回/分で10000回摩擦した。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの場合、その最表面を上記方法で摩擦した。
前記ハードコートフィルムの摩擦した箇所の表面に、人差し指を、500g荷重をかけた状態で10秒間押し付けた後、その表面を、3波長蛍光灯下で、10人のモニターが目視観察し、下記の基準にしたがって防汚性を判定した。
◎:10〜8人のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面の摩耗箇所に指紋の付着がほとんどないと評価した。
○:7〜5人のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面の摩耗箇所に指紋の付着がほとんどないと評価し、残りのモニターは前記表面に指紋の付着があると評価した。
△:4〜2人のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面の摩耗箇所に指紋の付着がほとんどないと評価し、残りのモニターは前記表面に指紋の付着があると評価した。
×:2人未満のモニターが、前記ハードコートフィルムの表面の摩耗箇所に指紋の付着がほとんどないと評価し、残りのモニターは前記表面に指紋の付着があると評価した。
<防汚性の持続性2(耐久性)[摩耗試験後の水接触角に基づく評価]>
前記ハードコートフィルムの表面層の表面を、スチールウール(ボンスター#0000)で荷重500g/cm2をかけながら、速度60回/分で10000回摩擦した。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの場合、その最表面を上記方法で摩擦した。
次に、協和界面科学株式会社製の自動接触角計「DROMPAMSTER500」を用いて、前記摩擦された箇所に精製水3μLを着滴させた後、1秒後の接触角を測定した。前記水接触角の算出方法は、JIS R3257に記載の試験方法のうち、静滴法にしたがった。
[耐久性(耐擦傷性)の評価]
前記ハードコートフィルムの表面層の表面に、スチールウール(ボンスター#0000)を荷重500g/cm2をかけながら、速度60回/分で10000回摩擦した。摩擦箇所の状態を目視で観察し、下記の基準にて耐久性(耐擦傷性)を判定した。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの場合、その最表面を上記方法で摩擦し、上記と同様の方法で評価した。
◎:摩擦箇所にキズは発生していなかった。
○:摩擦箇所にキズが1〜5本発生した。
×:摩擦箇所にキズが5本以上発生した。
[滑り性1の評価方法]
前記ハードコートフィルムの表面層の表面に人差し指で擦った際の滑りやすさを、10人のモニターが評価した。判定基準は以下のとおりとした。なお、表面層を有さないハードコートフィルムの滑り性は、その最表面の滑り性を、上記と同様の方法で評価した。
◎:10〜8人のモニターがよく滑ると評価した。
○:7〜5人のモニターがよく滑ると評価し、残りのモニターは滑りにくいと評価した。
×:5人未満のモニターがよく滑ると評価し、残りのモニターは滑りにくいと評価した。
[滑り性の評価方法2(動摩擦係数)]
前記ハードコートフィルムの表面層を、直径10mmのステンレス製の丸棒(重さ約82g)の先端に両面粘着テープで固定し、蒸留水0.01gを含浸させた綿帆布#11を摩擦子として、速度1000mm/分の速さで摩擦した際の荷重を測定し、動摩擦係数を算出した。なお、表面層を設けていない比較例3〜4で得たハードコートフィルムについては、その最表面の滑り性を評価した。
上記表から明らかなとおり、実施例1〜9の本発明のハードコートフィルムは、表面硬度、防汚性、滑り性に優れ、かつ各特性の耐久性にも優れるハードコートフィルムであった。一方、比較例1〜6のハードコートフィルムは、滑り性、耐久性が十分でなかった。