本発明の不織布の製造装置及びその製造方法の実施形態の説明に先立って、本発明の不織布の製造装置及びその製造方法の実施形態で用いられるウェブ状繊維層について説明する。また、本発明の不織布の実施形態の製造装置の構成部材となる、ウェブ状繊維層を搬送するネットコンベヤーと、ネットコンベヤーの上方に配置される受けプレートと、受けプレートの上方に配置され受けプレート上のウェブ状繊維層に流体を噴射しウェブ状繊維層を交絡する流体噴射ユニットと、について説明する。
(ウェブ状繊維層)
ウェブ状繊維層は、種々の繊維をウェブ化して成る繊維ウェブ単独あるいは繊維ウェブと基材とを重ね合せた積層シート(複層シート)として存在する。
繊維ウェブとしては例えばPE樹脂系、PP樹脂系、PET樹脂系、ナイロン系、アクリル系、及びこれらの複合繊維等の合成繊維ステープル(短繊維);コットン、麻、レーヨン、リヨセル、アセテート等のセルロース系の天然繊維や化学繊維ステープル;をウェブ化した構成繊維間相互が未結合状態のもの、あるいはすでに構成繊維間相互が結合され不織布化された嵩高のウェブが選択される。構成繊維の繊度は0.5d〜20dの広範囲で使用可能であるが、形状賦形の観点からは嵩高になるのが望ましく3d〜7dが望ましい。中空の繊維や細繊度、例えば1.5dと太繊度7dの混合繊維等も好んで使用される。繊維長は特に範囲の制約はないが入手しやすい10mm〜70mmのものが好ましい。目付は5g/m2〜60g/m2の範囲が好ましい。5g/m2以下のウェブは工業的に得るのが難しく、60g/m2以上になるとコスト的に不利になり、交絡処理も難しくなる。
基材とは繊維ウェブを支える支持体であって既にシート状の形態を持ち、繊維ウェブとして、強度が弱く伸びやすい、化合繊短繊維をカード法でウェブ化した未結合カードウェブを使用するような場合は、キャリヤーシート(搬送シート)としての役割を果たす。基材としては、例えば木材パルプを主成分とするティシュペーパ;レーヨン、リヨセル、PE繊維、PP繊維、PET繊維、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PE/PE共重合体複合繊維、PP/PP共重合体複合繊維等の、天然繊維、化学繊維、合成繊維の単独または混合の構成をもつ湿式及び乾式不織布類;PE繊維、PP繊維、PET繊維、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PE/PE共重合体複合繊維、PP/PP共重合体複合繊維等の連続フィラメントから構成されるスパンボンド(SB)不織布、メルトブローン(MB)不織布、SBとMBの複層体であるSMS・SMMS不織布等のスパンメルト不織布類;などのシートで比較的目付の薄いものが使用される。目付としては2g/m2〜40g/m2の範囲が好ましい。2g/m2以下のシートは工業的に得るのが難しく、40g/m2以上になるとコスト的に不利になり、交絡処理も難しくなる。本実施形態には特に目付30g/m2以下のスパンメルト不織布が好ましく使用される。
なお流体噴射により交絡処理を施したウェブ状繊維層は「交絡したウェブ状繊維層」と称する。また流体噴射により交絡処理を行っていないウェブ状繊維層は「未交絡ウェブ状繊維層」と称することもある。
(ネットコンベヤー)
ネットコンベヤーは、本技術分野公知のものを用いればよく、たとえばブロンズ製、ステンレス製のメタルワイヤー、プラスティック製ワイヤ―などが挙げられる。プラスティック材料は処理する化学的環境や温湿度によって適宜選択すればよいが、動作的に安定で、湿熱に耐え、保守も容易なポリエステル製が好ましい。ネットの組織としては平織(plain weave)、綾織(twill weave)、サテン織(satin weave)などが挙げられる。強度、透液性、通気性、目詰まりし易さ等を考慮し、更に継手構造の作製の容易な平織が好ましい。従来のWJ法においては、ネットへの繊維の噛みこみやネットパターンの不規則な転写を防ぐため、メッシュが50〜100と細かく、空間率(opening area)30%以下のものが好んで使用されるが、本実施形態の装置にはそのような制約はない。また従来のWJ法においては継ぎ目のないエンドレス型のネットが使用されるが、ネットコンベヤーに水流が直接衝突しない本実施形態の装置では継ぎ目があって良い。継手方法はループ継(loop lacing)、織継(woven lacing)のいずれでもよく、エンドレスタイプに比較して装置自体も保守コストも大幅に安価になる。更に重要なのは、本実施形態ではネットの繊維噛み込みによるよごれ発生が殆ど生じないので、ネットの寿命が大幅に長くなる。
(WJユニット)
本実施形態に用いられる流体噴射ユニットの代表例として、WJユニットについて説明する。流体噴射ユニットとして一般的にはWJユニットが用いられる。これは、水が入手容易で安価なためであるが、流体(液体)は水に限定するものではない。流体は水蒸気であってもよい。
WJユニットは、WJノズルとノズルホルダーから構成されている。WJノズルは図14に示すように通常の水流交絡法に使用されるものでよく、例えば図14(A)の平面図に示したようなノズルプレート91であり、図14(B)の横断面図に示したような漏斗状断面を持つものである。ノズルプレート91は図15に示したようなノズルホルダー93に組み込まれる。ノズルプレート91は図14(A)に示すように幅14mm、全長1612mm、厚さ1mmのSUS631製のプレートに、9mm間隔で160個の細孔が設けられている。噴出口となる細孔は図14(B)の断面図に示すように入口0.427mm径、出口0.18mm径の漏斗形状を呈し、異物のつまりを無くし、出口での液流の膨化(ベラス効果と称する)の生じにくいような構造にしている。ノズル口径とは出口の口径(直径)を意味し、この例では0.18mmで比較的大きい例である。本実施形態ではノズル口径は0.07mm〜0.25mmの範囲から選択されるのが好ましく、ノズル間隔は1mmピッチ〜15mmピッチの範囲から選択されるのが好ましい。図15のノズルホルダー93はSUS304製で全体が中空の砲身のような形状で、水圧に対してひずみを生じさせないような構造を持っている。ノズルプレート91は図15(B)の縦側面図、図15(C)の横断面図に示すように、最下部に挿入するように取り付けられ、押さえボルト92を用いて支持板によって把持される。水液流はノズルホルダー内に設けられている整流板と微細フィルターを経由してノズルプレートに供給される。
(受けプレート)
受けプレートとは文字通り流体噴出ユニットから噴出される流体を受け取るプレートという意味である。上記のように流体噴出ユニットとしてWJユニットを用いるときには、水流を受けることになる。この受けプレートの効果を説明するため、まず図19(参考図)によりWJノズルから噴出された水流の受けプレー上で起こる干渉状態について説明する。高圧水流が受けプレートに衝突すると(実際にはウェブ状繊維層を介してではあるが)、水流体はプレートから跳ね返り空中に飛散するもの、ウェブ状繊維層中を移動・滞留するもの、受けプレート上とウェブ状繊維層との隙間を四方八方に移動・滞留するものと3種類の状態で存在する。交絡性に特に影響する受けプレート上を移動する水流体については、ウェブ状繊維層がネットコンベヤーとともに走行しているため、前後方向、特に後方への移動が相対的に大きくなる。従って交絡状態に大きな影響を与えるのは、たがいに左右に隣接するノズル間の干渉で生ずる水液の滞留である。以下これを「干渉滞留」と称することにする。図19(A)〜(C)はWJ噴出流が受けプレートに衝突した衝突ポイントから水流がプレート表面をどのように移動するか、その状態をウェブ状繊維層が存在しない状態で模式的に表現したものである。ノズルの口径は比較的大きい0.2mm前後、ノズル間隔も左右間に余裕のある10mm前後を想定している。
図19(A)は特許文献9に記載されている前後幅50mm以下の表面平滑な無孔で幅の狭い受けプレートで、ノズル間隔が10mmと広い例である。例ではW1=40mmの場合であるが、大部分のWJ水流体は、衝突ポイントから瞬間的に前後に溢流するので左右に移動する液流は少なく、干渉滞留は発生しない。しかしこのような幅の狭い受けプレートでも、後述するようなノズル間隔を2mmと左右間が狭くなると干渉滞留は防止できない。実際にはこの狭い受けプレートの場合は、ノズル間隔を狭くすると、干渉滞留の発生以前に大量すぎるWJ流の衝撃で受けプレートがおおきく撓み操業するのが困難になる。
図19(B)は無孔のプレートの前後幅を50mm以上ここではW1=150mmにまで広げて受けプレートとした想定例である。前後の移動距離が広がり、前後の移動水流が少なくなるので、左右に移動する水流が増加し、干渉滞留が発生する。干渉滞留により、しわの発生や部分的なふくらみの発生でウェブ状繊維層の表面が乱れ、ウェブ状繊維層の安定走行が難しくなる。更に例えばノズル間隔を2mmと左右間がより狭くなると、ウェブ状繊維層は流され切断に至る場合もある。
図19(C)は図19(B)の無孔のプレートに直径2mm(開口面積約3mm2)の円形開孔を全面に設けた例で、W1=150mm幅の受けプレートとした例である。本実施形態の受けプレートの一例に相当する。本実施形態の受けプレートは、噴射された流体が衝突する上表面と、その反対面である下表面と、噴射された流体が上表面から下表面に透過する貫通孔が設けられている。
WJ水流はまず衝突ポイント周辺の開孔から直接下へ、即ち走行するネットコンベヤー上に排出され、更に受けプレート上を前後にも移動するので、左右に移動する液流は少なくなり、干渉滞留の発生が防止される。ノズル間隔を2mmと左右間が狭い場合においても、開孔からの排出効果が大きいため干渉滞留の発生は少なくなる。更に本実施形態のように受けプレート表面を上に凸型にして前後への傾斜を設け、水流が前後に移動し易い構造にすると、干渉滞留の発生はほぼ完全に防止できる。
以上、図19を用いて、受けプレートの効果を説明したが、次に貫通孔を有する受けプレートの構成について説明する。
受けプレートの上表面はウェブ状繊維層を滑走させる面であり、上表面の素材の滑りやすさも一つの要素であるが、受けプレートの上表面とウェブ状繊維層の間に存在する水液膜がウェブ状繊維層を抵抗なく滑走させるための大きな役割を果たす。これは一般的にhydroplaning現象と呼ばれる。hydroplaning現象を生じさせるには受けプレートの上表面を流れる水膜の存在は必須であるが、逆に水の滞留が起こると高圧のWJ水流によりウェブ状繊維層が乱され均一な交絡ができなくなる。水の滞留を抑制するために、ウェブ状繊維層を通過した水液を受けプレートの下を走行するネットコンベヤー上に透過させるためのプレート貫通孔を受けプレートに設けており、特に幅広の受けプレートを使用する場合に効果的である。これは図19を用いて説明した通りである。
受けプレートの前後幅(長さ)は、50mm未満であってもよいが、50mm以上で500mm以下が望ましく、更に望ましくは120mm〜200mmの範囲である。50mm未満であると2本のWJノズルを前後に並べて設置するのが難しく、500mmを超えると受けプレートの重量が重くなり、支持する構造が複雑になり、また交換作業等も難しくなるからである。なお、受けプレートの前後幅は、受けプレートの上表面が曲面の場合は、前後に平面状に伸長されたときの幅をいうものとする。
受けプレートに設けられた貫通孔は、流体を貫通孔から水流等の流体を排出できればよいので、流体を排出可能であれば、さまざまの形状を取り得るし、孔の大きさの選択範囲にも制約はない。貫通孔の開口の形状としては、流体が上表面から下表面に透過する円形、楕円形、四角形、スリット形等の種々の形状をとることができる。スリット形は、ネットコンベヤーの移動方向に対して、平行な横スリット、垂直な縦スリット、斜めスリットがあり、またクロス形スリット等がある。円形、楕円形、四角形、スリット形を適宜、円形と横スリット等のように組み合わせたり、小さい円孔とそれより大きい円孔のように同じ形状でも大きさを変えて組み合わせることも可能である。孔の大きさは、流体を貫通孔から水流等の流体を自然落下で排出することを考慮すると、好ましい大きさは、開口面積で示すと、好ましくは0.8mm2以上(因みに0.8mm2は、円形を想定した場合、直径約1mmの孔に相当する)、更に好ましくは3mm2以上(因みに3mm2は、円形を想定した場合、直径約2mmの孔に相当する)である。ただし、孔の大きさは0.8mm2未満の孔であってもよいことは無論である。WJ水流が衝突するポイントでの孔は0.8mm2未満の孔でよく、それ以外の領域の孔の大きさも自然落下が可能な大きさであればよい。具体的には、0.008mm2(因みに0.008mm2は、円形を想定した場合、直径約0.1mmの孔に相当する)以上であればよく、後述する図4(A)の例では、開口面積0.07mm2(直径約0.3mm)の円形の小孔が受けプレートのほぼ全面に均等に配置されている場合を示している。
受けプレートの上表面(貫通孔の開口を含む)の面積に対する、全ての貫通孔の開口面積(合計の開口面積)の比率は1%〜50%とすることが好ましい。流体を貫通孔から水流等の流体を排出するには1%以上が好ましく、受けプレートの上表面をウェブ状繊維層がスムーズに滑走するには50%以下が好ましいからである。
受けプレートの断面形状は、長方形(例えば図1(A)、図2(A),(B)の形状)、山形(例えば図1(B)の形状)、屋根型(例えは、図1(C)の形状)、台形(例えば図5(A)の形状)等、又は平板を山形、屋根型に湾曲させた形状(それぞれ図3、図2(C))、平板を台形に湾曲させた形状(不図示)等が可能である。
貫通孔の断面形状にも特に制約はないが、受けプレート上に噴出された流体が上から下に移動する場合に、たとえば図20の(A)〜(D)に例示するような形状が採用される。図20(A)は入口と出口が同径の場合であり、図20(B)は入口径が大きく出口径が小さくなっている場合であり、図20(C)は(B)とは逆に入口径が小さく出口径が大きくなっている場合であり、図20(D)は入口径と出口径が大きく、厚みの中心付近で径が小さくなっている場合を示している。
受けプレートの孔部を除く上表面は通常平滑になっている。つまり、通常、受けプレートの上表面は平滑部位と、貫通孔の開口部位の2領域から構成されている。しかし、ウェブ状繊維層との接触抵抗を低減するために、受けプレートの上表面の少なくとも一部にエンボス加工等による凹凸を設けてもよい。
受けプレートの上表面はWJ水流の衝撃を受けるため、局部的な摩耗や腐食を生じやすい。そのため耐摩耗性と耐食性に優れた材料を使用することが望ましい。例えば耐食性の高いステンレススチール材料、スチール製素材の表面をクロムメッキ処理した材料、チタン製材料、等が望ましい。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1(A)〜(C)は本実施形態の水流噴出部/受けプレート/ネットコンベヤー及びサクションボックスの配置状態にある装置の構造模式図である。
図1(A)〜(C)において共通の構造は、
第一に、WJノズル11,12、受けプレート13−1〜13−3、ネットコンベヤー14及びサクションボックス15という4つの構成ユニットプロセスを持つこと、
第二に、2本のWJノズル11,12が川上から一枚の受けプレート13の上方に設置されていること、
第三に、受けプレート13−1〜13−3の下表面とネットコンベヤー14の上表面との間隙が前部から後部にかけて一定で両者が平行する状態で配置していること、
第四に、受けプレート13−1〜13−3の上表面から下表面に貫通する開孔(貫通孔)を有していることである。上表面は噴射された流体が衝突し、下表面は上表面の反対面となる。
図1(A)〜(C)における受けプレート13−1〜13−3の違いは受けプレートの形状である。
図1(A)は受けプレートの基本的な例で、受けプレート13−1の上表面及び下表面が平面で、全体に曲面のないフラットなシンプルな構造を持っている。
まず、受けプレート13−1、WJノズル11,12、サクションボックス15の前後の配置状態について、図1(A)を用いて説明する。
間隔W0は、WJノズル11の中心とWJノズル12の中心との間隔であり、WJノズル11のノズルホルダーとWJノズル12のノズルホルダーが接触する状態を最短にして、WJノズル11が受けプレートの前端を、WJノズル12が受けプレート13−1の後端を外れない範囲が最長となる範囲で可変である。
幅W1は、受けプレート13−1の前後幅(長さ)であり、50mm以上で500mm以下が望ましく、更に望ましくは120mm〜200mmの範囲である。50mm未満であると2本のWJノズルを前後に並べて設置するのが難しく、500mmを超えると受けプレートの重量が重くなり、支持する構造が複雑になり、また交換作業等も難しくなる。
なお、図1(B)、(C)において、前後幅とは受けプレートの上表面が曲面なので、前後に平面状に伸長されたときの幅をいうものとする。
幅W2は、サクションボックス15の前後幅であり、受けプレート13−1の前部、後部からネット上に溢流する水液流及び受けプレートの貫通孔よりネットコンベアー14上に落下してくる水液流を捕捉し、系外へ排出する目的のため、受けプレート13−1の前後幅W1より幅を広くする。 従って間隔W0<幅W1<幅W2という関係が成り立つ。
次に、受けプレート13−1、WJノズル11,12、ネットコンベアー14、サクションボックス15の上から下への配置状態、すなわちWJノズルの下面と受けプレートの上面(上表面)との距離d0、受けプレートの下面(下表面)とネットコンベヤーの上面との距離d1、ネットコンベヤーの下面とサクションボックスの天板との距離d2及び受けプレートの厚みtについて説明する。
WJノズルの下面と受けプレートの上表面との間隔(距離)d0であるが、この間隙をウェブ状繊維層が通過するため、ノズル下面とウェブ状繊維層との接触を避けることが求められ、ウェブ状繊維層の厚みが配慮されなければならない。ウェブ状繊維層の厚みは、受けプレート13−1の前部に導入される状態によって大きく変わる。ウェブ状繊維層が形成された乾燥状態では、目付と構成繊維の繊度及び捲縮形態により厚みの変化が大きいが、ウェブ状繊維層を水液のシャワー等により前処理して脱気した湿潤状態では、厚みは大幅に減少し厚みの変動も少なくなる。これらを考慮すると距離d0は大略2mm〜20mmの範囲である。WJノズル11とWJノズル12とで距離d0を変えることもできるが、受けプレート13−1の上面に対して垂直になるように配置するのが望ましい。
受けプレート13−1の下面とネットコンベヤー14の上面との距離d1の設定の目的は受けプレート13−1の下面とネットコンベヤー14の上面との接触を避け、受けプレート13−1やネットコンベヤー14の摩耗や損傷を避けるためである。ところが一方ではネットコンベヤー14上に搬送してきたウェブ状繊維層をネットコンベヤー14上から剥離して受けプレート13−1の上面に導入するための位置変化「導入ギャップ」及び交絡されたウェブ状繊維層をネットコンベヤー上に復帰させるための位置変化「復帰ギャップ」の2つのギャップ、とくに「導入ギャップ」を出来るだけ少なくすることが求められる。このためには受けプレート自体の厚さtを薄くするとともに、d1も小さくすることが望ましい。距離d1は好ましくは略0mm以上〜20mm以下の範囲である。
ネットコンベヤー14の下面とサクションボックス15の天板との距離d2は、サクションボックス15内を減圧に保つために、0mmすなわち常時接触状態に保つことが望ましい。そのためサクションボックスの天板材料には製紙業界等で多用されている、摩擦抵抗の小さく同時に摩耗しにくいテフロン(登録商標)や超高圧ポリエチレン等の特殊の材料が選択される。
受けプレート自体の厚さtは、図1(A)の場合は前後に均一であるが、前後を薄くし中央を厚くするのがより好ましい。厚さtは、貫通孔の開口面積や開口の形状によっても異なる。開口面積の割合が大きい場合は相対的に厚くなる。詳細は実施態様に応じて後述する。
更に、受けプレート13−1の上面(上表面)の形成状態について説明する。受けプレート13−1の上面は走行方向に対して、WJノズル11の前部にあたる前部導入部(P)、WJノズル11の後部(Q)及びWJノズル12の前部(R)からなる中央部、そしてWJノズル12の後部にあたる後部復帰部(S)の4つの部位から構成される。なお、WJノズルが1本の場合はPとSの2つの部位となる。図1(A)の受けプレート13−1は4つの部位とも開口の状態も厚さtも同一であるが、詳細は実施態様に応じて後述する。
図1(B)の例では基本構造は図1(A)と同じであるが、受けプレート13−2の上面が中心線の前後に対照の曲面状を呈し、P部とS部が薄く、Q部とR部が厚くなっている。曲面に応じて、WJノズル11とWJノズル12とを曲面に対して垂直に近づくように傾向けて配置されている点で異なる。受けプレート13−2の上表面は曲率半径が50mm以上の比較的なだらかな曲面となるようにすることが望ましい。ネットコンベヤー14上に搬送してきたウェブ状繊維層がネットコンベヤー14上から剥離して受けプレート13−2の上表面に導入しやすく、更に交絡したウェブ状繊維層をネットコンベヤー14上に復帰させやすい。
図1(C)の例では基本構造は図1(A)と同じであるが、受けプレート13−3の上面が中心線の前後に対照の斜面状あるいは屋根型形状を呈し、前後のP部とS部が薄く、中央に向うQ部とR部が厚くなっている。ネットコンベヤー14の走行方向に対して、前方向(前方)及び後方向(後方)に対して傾斜する傾斜面に応じて、WJノズル11とWJノズル12とを傾斜面に対して垂直になるように傾向けて配置されている点で異なる。
図2(A)〜図2(C)の例も基本構造は図1(A)と同じ表面がフラットの板状体の構造模式図であるが、受けプレート全体が前後、あるいは中央に向かって傾斜を有する点で異なる。図2(A)〜図2(C)において、受けプレートの上表面は、ネットコンベヤー14の走行方向に対して、前方向(前方)または/及び後方向(後方)に傾斜する傾斜面を有する。
図2(A)は図1(A)の受けプレート13−1の前端をネットコンベヤー14にすれすれになるように近接し、後部が高くなるように(ネットコンベヤーと離間するように)傾斜して、P部、Q部、R部、S部が「前下がり」になるように配置し、受けプレート13−1の下面(下表面)とネットコンベヤーとの間隔d1をd1a<d1b<d1cとなるように設定した例である。未交絡のウェブ状繊維層を受けプレート13−1上に導入するのに適し、水抜けも良い。
図2(B)は図1(A)の受けプレート13−1の前端をネットコンベヤー14から離間し、後部はネットコンベヤー14に近接するように傾斜して、P部、Q部、R部、S部が「後下がり」になるように配置し、受けプレート13−1の下面とネットコンベヤー14との間隔d1をd1a>d1b>d1cとなるように設定した例である。交絡したウェブ状繊維層をネットコンベヤー14上に復帰させるのに適している。
図2(C)は受けプレート13−4の前端をネットコンベヤー14にすれすれになるように近接し、中央部を高くして、P部、Q部が「前下がり」とし、後端がネットコンベヤー14にすれすれになるように近接させ、R部、S部が「後下がり」になるように屋根型形状に配置し、受けプレート13−4の下面とネットコンベヤー14との間隔d1をd1a<d1b>d1cとなるように設定した例である。未交絡のウェブ状繊維層を受けプレート上に導入するのに適し、交絡したウェブ状繊維層をネットコンベヤー上に復帰させるにも適している。
図3(A)〜図3(C)の例も基本構造は図2と同じコンセプトを持つ構造模式図であるが、受けプレート全体が上に凸状の曲面体で形成されている点で異なる。受けプレート13−5の上表面は曲率半径が50mm以上の比較的なだらかな曲面となるようにすることが望ましい。曲率半径が50mm未満になると、曲面が強すぎて、水流の前後への均一な移動や、ウェブ状繊維層と受けプレートとの表面抵抗が大きくなるので好ましくない。図3(A)では、ネットコンベヤー14上に搬送してきたウェブ状繊維層がネットコンベヤー14上から剥離して受けプレート13−5の上表面に導入しやすく、更に交絡したウェブ状繊維層をネットコンベヤー14上に復帰させやすくしている。図3(B)では、特にネットコンベヤー14上に搬送してきたウェブ状繊維層がネットコンベヤー14上から剥離して受けプレート13−5の上表面に導入しやすくしている。図3(C)では、交絡したウェブ状繊維層が受けプレート13−5の上表面からネットコンベヤー14上に復帰しやすくしている。
図3(A)は図2(C)の屋根型形状に対して上に凸状の曲面にしている点で異なる。受けプレート13−5の前端をネットコンベヤー14にすれすれになるように近接し、中央部を高くして、P部、Q部が「前下がり」とし、後端がネットコンベヤー14にすれすれになるように近接させ、R部、S部が「後下がり」になるように配置し、受けプレート13−5の下面とネットコンベヤー14との間隔d1をd1a<d1b>d1cとなるように設定した例である。
図3(B)は図2(A)に類似しているが、受けプレート13−5のP部、Q部、R部、S部が全体として「前下がり」になるような曲面で配置され、S部の後端が「後下がり」になっている点で異なる。
図3(C)は図2(B)に類似しているが、受けプレート13−5のP部,Q部,R部,S部が全体として「後下がり」になるような曲面で配置され、P部の前端が「前下がり」になっている点で異なる。
既に説明したように、受けプレートの上表面はWJ水流の衝撃を受けるため、局部的な摩耗や腐食を生じやすい。そのため耐摩耗性と耐食性に優れた材料を使用することが望ましい。例えば耐食性の高いステンレススチール材料、スチール製素材の表面をクロムメッキ処理した材料、チタン製材料、等が望ましい。本例ではSUS631に貫通孔を設けたあとに表面をバフ研磨仕上げして使用している。
図4は走行方向に対してW1の前後幅で配置された受けプレートの表面形状例を示した模式図である。図4(A)〜(I)のすべての例はフラットな前後幅W1を持つ平面状態で示しているが、曲面の場合は真横に伸長された状態の模式図として解釈される。図中小孔とは比較的開口面積の小さい上下の貫通孔であり、便宜上0.8mm2未満の孔を意味し、円形孔とは比較的開口面積の大きい上下の貫通孔であり、便宜上0.8mm2以上80mm2未満の孔を意味する。孔の開口形状は、円くても角ばりがあっても良い。細くて長い形状の切欠きをスリットと総称する。図4(A)は開口面積0.07mm2(直径約0.3mm)の円形の小孔が受けプレートのほぼ全面に均等に配置されている例である。図4(B)は開口面積3mm2(直径約2mm)の円形孔が受けプレート全面に均等に配置されている例である。図4(C)は開口面積20mm2(直径約5mm)の円形孔と開口面積0.2mm2(直径約0.5mm)の円形の小孔が受けプレート全面に交互に配置されている例である。図4(D)は開口面積0.2mm2(直径約0.5mm)の円形の小孔が受けプレートの前半部位に、開口面積3mm2(直径約2mm)の円形孔が受けプレートの後半部に前後に分かれて配置されている例である。図4(E)は開口面積15mm2(幅約1mm長さ15mm)の縦長のスリットが受けプレート全面に均等に配置されている例である。図4(F)は開口面積0.2mm2(直径約0.5mm)の円形孔と開口面積3mm2(幅約0.3mm長さ10mm)の横長のスリットがある規則性を持って混ざり合って受けプレートの全面に配置されている例である。図4(G)は開口面積7.5mm2(幅約0.5mm長さ15mm)の右斜めのスリットが受けプレート全面に均等に配置されている例である。図4(H)は開口面積7.5mm2(幅約0.5mm長さ15mm)の右斜めのスリットと左斜めのスリットが交互に組み合わされて受けプレート全面に均等に配置されている例である。図4(I)は開口面積29mm2(幅約1mm長さ15mm)のクロス型のスリットが受けプレート全面に均等に配置されている例である。
図5及び図6は受けプレートの貫通孔とWJノズル列との配置例を模式的に示したものである。図5は受けプレート22に1セットのWJノズル21を組み合わせた例、図6は受けプレート32に2セットのWJノズル31−1,31−2を組み合わせた例を示す。必要に応じて3セット以上のWJノズルを用いてもよい。図5(A)、図5(B)はW1a=70mm、W1b=80mm、t=2.0mm、長さ1700mmのSUS631のプレートに、斜めに幅1.5mm×長さ20mmの四辺形状のスリットが15mm間隔で、ほぼ全長に設けて受けプレート22としている。
受けプレート22の全体形状は図9に図示している構造と同一である。図14、図15で説明した1セットのWJノズル列が受けプレートの上表面とd0=8mmの間隔を持ち、スリット状開口を左右に横切るように配置され、受けプレートの上表面には、先端にテーパ状傾斜を持つ前部導入部(P)と後端にテーパ状傾斜を持つ後部復帰部(S)の2つの部位が存在している。
図6(A)、図6(B)は、W1a=140mm、W1b=150mm、t=2.5mm、長さ1700mmのSUS631のプレート全体にほぼ均等に開口面積7mm2(直径約3mm)の円形孔が、左右端にそれぞれ10mmずつ余白を残して設けられ受けプレート32としている。受けプレート32の全体形状は図9に図示している構造と同一である。図14、図15で説明した2セットのWJノズル列が受けプレートの上表面とd0=10mmの間隔を持ち、円形開口を左右に横切るように配置され、受けプレートの上表面には先端にテーパ状傾斜を持つ前部導入部(P)、WJノズル31−1の後部(Q)及びWJノズル31−2の前部(R)からなる中央部、そしてWJノズル31−2の後部にあたる後端にテーパ状傾斜を持つ後部復帰部(S)の4つの部位が存在している。
図5及び図6の受けプレートは静止・固定した状態で交絡処理を行う場合もあるが、受けプレート全体を前後あるいは左右に往復して、摺動させた状態で交絡処理を行う場合もある。受けプレートは静止・固定した状態で走行するウェブ状繊維層の交絡処理を行う場合について説明する。
平滑部やスリットの狭い部分の開口部や小孔の開口部(小さい開口部)にWJが当たった部位は強く交絡され、繊維密度が高まり薄くなり、ミシン目状のシームラインが形成され、見かけ状の凹部が形成される。スリットの広い部分の開口部や円形孔の開口部(大きい開口部)にWJが当たった部位には、水流の衝突力が弱まり、交絡度合いは低くなり、繊維の流れ込み効果と相まって、厚くなった見かけ状の凸部が形成される。結果として薄い凹部と厚い凸部が連続したパターンを持った交絡したウェブ状繊繊層が形成される。
受けプレート全体を前後あるいは左右に摺動させた状態で交絡処理を行う場合には、開口部にWJが当たった部位に発生する繊維の多い嵩高の凸部と、平坦部にWJが当たった部位に発生する薄くなったミシン目線状(シームライン)の交絡線が、ある周期で交互に形成された不連続なパターンを持った交絡したウェブ状繊繊層が形成される。周期性の違いはパターンの違いとして現われ、受けプレートの摺動速度とウェブ状繊繊層を搬送するネットコンベヤーの走行速度によって規定される。受けプレートを前後左右に動かす範囲(以下摺動範囲と称する)は受けプレートのパターン形状にもよるが、大きく動かしても50mm以下であり、好ましくは2mm〜10mmの範囲である。この範囲であれば、前述したhydroplaning現象の効果もあって、ウェブ状繊繊層の走行安定性にほとんど影響を与えない。
図7及び図8に凹凸パターン形成の例を示す。図7は受けプレートを静止・固定条件下でウェブ状繊繊層に交絡処理を施した例の模式図で、連続した畝状の凸部とシームライン状の凹部との凹凸パターンを持った交絡ウェブ状繊繊層が得られる実施例である。図7(A)、(B)は受けプレートとして図2(C)の屋根型で、図4(A)に図示した表面に開口面積0.07mm2(直径約0.3mm)の円形の小孔を全面に備えた多孔プレートを使用し、その上方に、2セットのWJユニット11,12を配置した例である。WJユニット11,12とも同じ仕様のWJユニットでいずれも口径0.18mmのノズルを9mm間隔で配置したノズルプレートを装備している。WJユニット11,12を左右に4.5mmずらして配置・固定する。この条件下でウェブ状繊繊層を50m/min.で走行させながら水圧6.5MPaで交絡処理を行う(詳しい製造条件は実施例1を参照されたい)と、図7(A)の平面図、図7(B)のVIIB−VIIB断面図で示すように、約5mm間隔で薄くなったミシン状のシームライン(シーム状交絡部)を持ち、その間に未交絡の嵩高部位(未交絡部)を持った、連続した畝状の凹凸パターンを持つ交絡ウェブ状繊繊層が得られた。厚さと目付から計算したシームラインの見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.05〜0.15の範囲にあり、嵩高な未交絡部の見掛け嵩密度(g/cm3)は0.01〜0.05の範囲にあった。
図7(C)、(D)は受けプレートとして図4(D)の前半部位は表面に開口面積0.2mm2(直径約0.5mm)の開孔を備えた多孔部と、後半部位には開口面積7mm2(直径約3mm)の開口を備えた円形孔部とから構成されるプレートを使用し、その上方に2セットのWJユニット11,12を配置した例である。WJユニット11は口径0.1mmのノズルを1.5mm間隔で配置したノズルプレートを装備し、WJユニット12では口径0.18mmのノズルを9mm間隔で配置したノズルプレートを装備している。WJユニット11は多孔部上に、WJユニット12は円形孔部にノズル位置が合うように調節して、前後に配置・固定する。この条件下でウェブ状繊繊層を50m/min.で走行させながら水圧6.5MPaで交絡処理を行う(詳しい製造、条件は実施例1を参照されたい)と、図7(C)の平面図、図7(D)のVIID−VIID断面図で示すように、基材上に、約10mm間隔で厚く突起した部位(WJユニット12の第2ノズルによる開口交絡部)と、その間の部位は多条のミシン状のシームラインから構成されるシート状の薄い部位(WJユニット11の第1ノズルによるシーム状交絡部)からなる、連続した凹凸パターンを持つ交絡ウェブ状繊繊層が得られた。厚さと目付から計算した突起部分の見掛け嵩密度(g/cm3)は0.01〜0.02の範囲にあり、薄い部分の見掛け嵩密度(g/cm3)は0.07〜0.20の範囲にあった。
図8は受けプレートを左右に摺動した状態で、ウェブ状繊繊層に交絡処理を施した例の模式図で、不連続した凹凸パターンを持った交絡ウェブ状繊繊層が得られる実施例である。
図8(A)、(B)は受けプレートとして図2(C)の屋根型で表面に開口面積3mm2(直径約2.0mm)の円形孔を全面に備えた図4(B)の開口プレートを使用し、その上方に2セットのWJユニット11,12を配置した例である。開口を持つ受けプレートには左右端に図12で図示している装置と同様の機構を持つ、左に3mm、右に3mmの6mmの範囲で、20回/min.往復運動するような、左右摺動機構が組み込まれている。WJユニット11,12は同じ仕様のWJユニットで、いずれも口径0.1mmのノズルを1.5mm間隔で配置したノズルプレートを装備している。WJユニット11,12を前後に配置・固定する。この条件下で受けプレートを摺動させた状態で、ウェブ状繊繊層を50m/min.で走行させながら水圧6.5MPaで交絡処理を行う(詳しい製造条件は実施例2を参照されたい)ことにより、図8(A)の平面図、図8(B)のVIIIB−VIIIB断面図で示すように、開口プレートパターンに対応した蛇行する突起部(WJユニット11の第1ノズルによる開口交絡部とWJユニット12の第2ノズルによる開口交絡部)とその間を埋めるように薄くなったミシン状の多条のシームライン(WJユニット11,12の第1及び第2ノズルによるシーム状交絡部)を持つ、不連続状の凹凸パターンを持つ交絡ウェブ状繊繊層が得られた。
図8(C)、(D)は受けプレートとして図2(C)の屋根型で表面に開口面積3mm2(直径約2.0mm)の円形孔を全面に備えた図4(B)の開口プレートを使用し、その上方に2セットのWJユニット11,12を配置した例である。開口を持つ受けプレートには左右端に図12で図示していると同様の機構を持つ、左に5mm、右に5mmの10mmの範囲で、15回/min.往復運動するような、左右摺動機構が組み込まれている。WJユニット11,12は同じ仕様のWJユニットでいずれも口径0.18mmのノズルを9mm間隔で配置したノズルプレートを装備している。WJユニット11,12を左右に4.5mmずらして前後に配置・固定する。この条件下で受けプレートを摺動させた状態で、ウェブ状繊繊層を50m/min.で走行させながら水圧6.0Mpaで交絡処理を行う(詳しい製造条件は実施例3を参照されたい)ことにより図8(C)の平面図、図8(D)のVIIID−VIIID断面図で示すように、幅方向に約5mm間隔で薄くなったミシン状のシームラインと開口パターンに基づく突起部を交互に持つ部位を持ち、その間を埋めるように未交絡部位を持った、3種類の形状が共存する不連続した凹凸パターンを持つ交絡ウェブ状繊繊層が得られた。図8(C)、(D)では、WJユニット11の第1ノズルによるシーム状交絡部と開口交絡部と、WJユニット12の第2ノズルによるシーム状交絡部と開口交絡部と、未交絡部とが示されている。
受けプレートはネットコンベヤーの走行方向に直交するように設置されるが、安定して、しかも精度を持って把持するために、左右端に取付け部として支持板を接合することが行われる。図9〜図13は取付け部の構造例を示す。
図9は斜めスリット状切欠きを持つ受けプレート41の左右端の上面に、長方形状の支持板42−1,42−2を設置し接合ボルト43で固定する構造例である。図9(A)はその全体の平面図、図9(B)は支持板と受けプレートの接合状態を示すIXB−IXB横断面図、図9(C)は切欠き状貫通孔をもつ受けプレートと支持板の接合状態を示すIXC−IXC縦断面図である。
図10は円形孔を持つ受けプレート51の左右端の下面に長方形状の支持板52−1,52−2を設置し、溶接により接合して受けプレート51と一体化している構造例であり、図10(A)はその全体の平面図、図10(B)は支持板と受けプレートの接合状態を示すXB−XB横断面図、図10(C)は開口部を持つ受けプレートと支持板の存在状態を示すXC−XC縦断面図である。円形の貫通孔は水液の透過がスムースに行われるように漏斗状のテーパを持っている。接合部53は溶接部を示している。
なお、貫通孔に漏斗状のテーパを持たせることは、本願で説明する実施形態で説明するすべての貫通孔に適用できる。例えば、図4(A)−(I)の小孔、円形孔、及び各種のスリットの流体の入口に対して出口の面積が小さくなるようにテーパを持たせることができる。
図11は受けプレートを前後に摺動するタイプの一例を示す説明図である。図11(A)はその全体の平面図で、円形孔を持つ受けプレート61の左右両端の取付け部には摺動ユニット(摺動装置となる)62が取り付けられている。摺動ユニット62は受けプレート61を上下に把持する支持ホルダー621と回転運動をする円筒状のカム622から構成され、支持ホルダー621には前後方向に摺動レール溝623が掘られている。受けプレート61には左右上下にレール溝623を滑る突起と円筒カム622に噛みこむ従動節624を具備する。図11(B)は図11(A)の摺動ユニット62のXIB−XIB横側面図を示す。図11(B)は受けプレート61と、摺動ユニット62を構成する支持ホルダー621、摺動レール溝623、従動節624そして円筒カム622との存在位置関係と動作機構を図示している。図11(C)は受けプレートとその左右両端に取付けられた摺動ユニットのXIC−XIC縦側面図である。円形孔を持つ受けプレート61と、摺動ユニット62を構成する支持ホルダー621、摺動レール溝623、従動節624そして円筒カム622の存在位置関係を示す。
図12は受けプレートを左右に摺動するタイプの一例を示す説明図である。図12(A)はその全体の平面図で、受けプレート71の左右両端の取付け部には摺動ユニット(摺動装置となる)72が取り付けられている。摺動ユニット72は受けプレート71を上下に把持する支持ホルダー721と回転運動をする円筒状のカム722から構成され、支持ホルダー721には左右方向に摺動レール溝723が掘られている。受けプレート71には図11と同様に、左右上下にレール溝723を滑る突起と円筒カム722に噛みこむ従動節724を具備する。図12(B)は受けプレートとその左右両端に取付けられた摺動ユニット72のXIIB−XIIB縦部分側面図である。円形孔部を持つ受けプレート71と、摺動ユニット72を構成する支持ホルダー721、摺動レール溝723、従動節724そして円筒カム722の存在位置関係と動作機構を図示している。
図13は受けプレートの貫通孔を開閉するタイプの一例を示す説明図であり、受けプレート81の左右端に支持板82と孔開閉ユニット83を備える例である。図13(A)は平面模式図で円形孔と支持板を持つ点で図10と類似しているが、円板カム831、従動節832、孔遮蔽プレート833から構成される開閉ユニット83を備える点で異なる。図13(B)は図13(A)のXIIIB−XIIIB横断面図で、受けプレート81に対する開閉ユニット83の配置状態を示す。開閉は円板カム831を矢印の方向に回転させ、孔遮蔽プレート833を、矢印のように上下させて行う。その際受けプレート81の下面と孔遮蔽プレート833の上面とが、衝突せずにスムースに、ソフトに接触するようにバネや合成ゴムシートを介在させることが望ましい。この図では支持バネ84を使用している例である。図13(C)は図13(A)のXIIIC−XIIIC縦部分側面図で、受けプレート81に対する支持板82、支持バネ84及び開閉ユニット83を構成する孔遮蔽プレート833、従動節832、円板カム831それぞれの配置状態を示す。
図11、図12に受けプレートの摺動する装置例について説明したが、この装置は摺動をしない固定状態で使用する場合もあり、その場合この摺動機構は、ノズルの噴射位置と開口の位置を微調整し、正確に設定するのにも便利な機構である。摺動する範囲は0〜100mm(左右に0mm〜50mm)あれば十分であり、隣接する開口を横切る、あるいは縦切る距離を動けば良く、通常は5mm〜50mmの範囲で使用される。摺動スピードは1分間に往復運動する回数で示すと、摺動範囲やコンベアーの走行速度によっても違うが、5回/min.〜100回/min.の範囲であり、通常は10回/min.〜60回/min.の範囲で使用される。摺動する動き方(摺動パターン)は直線的往復運動でもよく、往路と復路の速度を変えても良く、サインカーブを描くような速度設定をしても良く、交絡後のウェブ状繊維層交絡パターンを観察して、円筒カムの回転スピードを変えたり、円筒カムを交換等をして任意に設定する。
(水(Wetting)スプレー装置)
本実施形態の不織布製造装置は水スプレー装置を更に有しても良い。ウェブ状繊維層は直接受けプレートにガイドするか、受けプレートに導入される前に水スプレーにより水で飽和して、含有空気を水で置換・除去することが行われる。この工程は必須な工程ではないが、比較的目付の大きいウェブ状繊維層を交絡処理する場合や、高速走行で交絡処理をする場合に、ウェブ状繊維層中に含有する空気の影響を少なくするには有効な方法である。この工程には水圧は必要ではなく、シャワーやトレーを利用したサチュレータ−でウェブ状繊維層を水液で飽和させればよい。水スプレーの水が飛散するネットの下にはサクションボックスが設けられて、漏れ出る水液を系外に排出する。
(吸引(サクション)装置)
本実施形態の不織布製造装置は、ネットコンベヤーの下部に設けられる吸引(サクション)機能を有する水分除去装置を更に有しても良い。サクション装置には真空ポンプやブロワーが組み合わされて減圧状態にして水分を吸引するが、本実施形態では減圧度は低いが風量の大きいブロワータイプが好ましい。後述する本実施例の不織布製造装置には3か所のサクション装置が設けられている。すなわち、
(1) 水スプレー装置に組み合わせて設けられるWSサクション装置
ネットを経て伝い落ちる水液を除去するためで、減圧度はほとんど不要で、場合によっては受けトレーだけであっても良い。
(2) 受けプレートの下部とその前後にわたって設けられているWJサクション装置
WJユニットから噴出された水液流を捕集・吸引除去するためのもので、ある程度の減圧度が必要である。受けプレートに対してウェブ状繊維層の走行方向の上流にあるサクション部分は、受けプレートの前部から溢流しウェブ状繊維層を透過してくる水液を吸引捕集するとともに、ウェブ状繊維層をネットコンベヤーに密着させることにより、ネットコンベヤーから受けプレート入口へのウェブ状繊維層の剥離位置を規定する役割を演ずる。一方ウェブ状繊維層の走行方向の下流にあるサクション部分は、受けプレートの後部から溢流し交絡したウェブ状繊維層を透過してくる水液を吸引捕集するとともに、交絡したウェブ状繊維層をネットコンベヤーに密着させることにより、受けプレート出口位置でネットコンベヤーの走行速度に交絡したウェブ状繊維層の走行速度を同期させる役割を演ずる。
(3) ネットコンベヤーの後部にあるAirサクション装置
このサクション装置は乾燥機を設けない製造プロセスに特有の装置で、WJサクションを受けた交絡したウェブ状繊維層に、エアーブロワ―からの空気流で、交絡したウェブ状繊維層中に残存する水分を空気とともに除去する機能を果たす。減圧度はほとんど不要であるが、風量が大きいことが望ましい。
なお上記(1)と(2)のサクション装置は、結合して一緒にしても良い。
以上説明したように本実施形態の受けプレートは、特許文献9に記載された受けプレートに比べて顕著な作用効果を奏する。即ち、噴射された水流を受けプレートの前後だけでなく、直接下方にも移動・排出することが出来る。このような装置機能の付加により、
(a) WJ処理ゾーンの前後幅を大幅に広げることが可能になり、噴射された水流の排出能力が上がり、均一化されるため、受けプレートの幅を従来の特許文献9の技術では限界であったWJ処理面50mm幅を500mm前後まで大幅に拡幅することが出来、それにより開口部の存在によって生ずる交絡に要する表面積の減少を相殺できる。
(b) 受けプレートの表面状態と開孔・開口パターン形状の組み合わせ効果により、被射体ウェブに多彩な表面賦形を施すことを可能にした。
(c) 更に受けプレートの幅が広がり、開口の存在により水の逃げ道が出来るため、プレート全体の受ける水圧による撓み度合も大幅に減少するため撓み防止機構が必要なくなり、装置構造及びその装置の脱着が大幅に簡略化される。
(d) 受けプレートに配置されるWJノズルラインのノズル配置間隔も1mm前後まで狭くすることが可能になり、ノズルプレートへの配置されるノズル数を約5倍近く増加させることが出来る。
本実施形態は、上記(a)〜(d)のような改良効果を実現することにより低い流体圧で繊維ウェブの交絡処理を行うことが可能となり、従来技術に比較してエネルギーコスト及び設備コストが低下し、併せてパターンの違った受けプレートに交換、変更することにより様々な模様に賦形された多様な不織布を製造することが可能になる。
本実施形態では、50mm〜500mmの狭い幅に短冊状に切り出した多孔性の受けプレートをネットコンベヤー上に設置し、その受けプレート上を被射体ウェブを滑走させながらWJ処理を行うことにより、シンプルで設備コストも安く、しかも操作性に優れた装置とWJ処理方法を提供することができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、特許文献8に記載された多孔シリンダー方式に比べて、構成上の違いがあり、顕著な作用効果を奏する。表1は多孔シリンダー方式と本実施形態の貫通孔を有する受けプレート方式の代表的例との比較を示す表である。表1に示すように、特許文献8に記載された多孔シリンダー方式はスリーブに0.2〜1.0mm径(直径)(開口面積約0.03〜0.8mm2)、一般的には0.5mm径(直径)(開口面積約0.2mm2)の円形の貫通孔が形成されるが、本実施形態では、受けプレートに1.0mm径(直径)(開口面積0.8mm2)以上の貫通孔が望ましい。なぜなら、本実施形態では、特許文献8に記載された多孔シリンダー方式と比べて、受けプレート下にはネットコンベヤーが配置されているために、受けプレートから真空による強制脱水が難しく、貫通孔から水流の自然落下により脱水されるので、貫通孔は大きい方が望ましいからである。1.0mm径(直径)(開口面積0.8mm2)以上の貫通孔は受けプレートに設けられた貫通孔の一部であってもよいが、全部であってもよい。また、特許文献8に記載された多孔シリンダー方式では、スリーブ表面の開口から繊維切断片から入りこむと孔詰まりの原因となるため開口の径を大きくすることは好ましくないが、本実施形態では受けプレート下にはネットコンベヤーが配置されているために、貫通孔から繊維切断片から入りこんでも移動するネットコンベヤーにより排出され、仮に孔詰まりを起こしても着脱が容易なので除去が容易である。
(実施例1)
図16はWJユニットと受けプレートが組み込まれた本発明の製造プロセスの一実施形態を示す図である。プロセスの流れは左から右の方向に進行する。プロセスの構成は左から基材巻出し機1001、2台の直列に配置されたカード機1002,1003、ウェブ搬送コンベアー1004、ネットコンベヤー1005、水スプレー1006、曲面状の多孔受けプレート1007、WJユニット1008、WJユニット1009、水スプレー用サクション1010、WJ用サクション1011、エアーブロワ―1012、エアー用サクション1013、フィードロール1014、スイングピドラー1015、ウェブ収容コンテナー1016となっている。なお図16においては受けプレート1007とWJユニット1008,1009の配置部位(点線で囲んだ部位)については詳細がわかるように相対的に拡大して図示した。
基材としては1600mm幅のPE/PP製SB不織布13g/m2(チッソ社製)を巻出し機(大昌鉄工製)1001に装着し、カード機(鳥越製作所製)に6d×51mmのPET繊維(テイジン製)10g/m2を供給してカード機1002とし、1.5d×45mmのPET繊維(テイジン製)10g/m2を供給してカード機1003とする。そして、カード機1002,1003を用いて、1500mm幅20g/m2のカードウェブをPE/PP製SB不織布基材上に重ねて、搬送コンベアー1004の出口に設けられた一定の隙間を持つスムースロール(詳細説明割愛)によりカードウェブの表面を平滑にして、50m/min.で走行するネットコンベヤー1005へ供給する。PE/PP製SB不織布に重ねられたカードウェブの積層体であるウェブ状繊維層は、水スプレー1006によりウェブ状繊維層を水によって飽和させ、含有空気を除去し、受けプレート1007へとガイドする。受けプレート1007は曲率半径200mmの、上に凸型の曲面形状の表面を持つ、厚さ2mmのSUS36製のものである。
受けプレート1007は図4(D)に類似した表面パターンを有し、前半分の前後幅約50mmのゾーンには開口面積0.07mm2(直径約0.3mm)の開孔が約1.5mmピッチでほぼ全面に存在し、後半分の前後幅約50mmのゾーンには開口面積3mm2(直径約2mm)の開口が設けられ、開孔のない部位は平滑である。受けプレート1007の上表面(貫通孔の開口を含む)の面積に対する、全ての貫通孔の開口面積(合計の開口面積)の比率は約10%である。
更に表面をバフ仕上げして平滑にしている。この受けプレートの左右縁部は図10(A)〜(C)で図示した構造を持ち、左右の支持板に接合され、左右のフレームに取り付けられて、ネットコンベヤー1005上に配置されている。
1枚の受けプレート1007に2つのWJユニット1008,1009が配置され、図3(A)と同様な配置状態を持つ、この部分の詳細を図1(A)の間隔、幅、距離の表示に従って説明する。すなわち、
間隔W0は、WJノズル1008の中心とWJノズル1009の中心との間隔は約60mmになるように固定される。
前後幅W1は、受けプレート1007の前後幅(局面とした場合の周長)であり、この例では126mmである。
前後幅W2は、サクションボックス1011の前後幅であり400mmで、受けプレート1007の前部、後部からネット上に溢流する水液流及び受けプレートの開孔よりネット上に落下してくる水液流及び空中に飛散しネット上に落下してくる水滴を捕捉し、系外へ排出する目的のため、受けプレートの前後幅W1より幅を広くする。
距離d0は、WJノズル1008,1009の下面と受けプレート1007の上面(上表面)との間隙(距離)であるが、この間隙をウェブ状繊維層が通過するためこの例では10mmに設定している。
距離d1は、受けプレート1007の下面(下表面)とネットコンベヤー1005の上面との距離であり、この距離の設定の目的は受けプレート1007の下面とネットコンベヤー1005の上面との接触を避けプレート1007やネットコンベヤー1005の摩耗や損傷を避けるために3mmに固定している。より詳しく図3(A)の表示に合わせて説明するとd1a=3mm、d1b=13mm、d1c=3mmとなっている。
距離d2は、ネットコンベヤー1005の下面とサクションボックス1011の天板との距離であり、この距離については、サクションボックス1011内を減圧に保つために0mmすなわち常時接触状態に保つことが望ましい。そのためサクションボックス1011の天板材料には超高圧ポリエチレンを採用している。
厚さtは、受けプレート1007自体の厚さであり、この厚さは前後に均一であり、開孔の安定性を維持するため2mmにしている。WJユニット1008、WJユニット1009も図14、図15で図示したものと同様の構造をもち、WJユニット1008には口径0.13mm、ノズル間隔1.5mmのノズルプレートが組込まれ、WJユニット1009には口径0.18mm、ノズル間隔9mmのノズルプレートが組込まれている。いずれのユニットにも1台の高圧ポンプから7Mpaの高圧イオン交換水が供給される。前記ウェブ状繊維層は受けプレート1007上を図3(A)で示すP部、Q部、R部、S部を滑走させつつ、WJユニット1008、WJユニット1009による水流噴射を受け、上記d0=10mmの間隙を走行し、交絡処理を経て、ネットコンベヤー1005上に復帰する。交絡ウェブ状繊維層はWJサクション1011を経て40℃前後の温風を供給するエアーブロワー1012を通過させたのち、そのままスウィングピドラー1015を利用して折り畳みながらコンテナー1016に収容した。
残存水分率を測定すると、WJサクション1011通過後の交絡ウェブ状繊維層には35wt%程度の水分が残存していたが、Airサクション1013通過後の交絡ウェブ状繊維層には15wt%程度の水分が残存する状態で、少し湿った感触はあったが手に水分が付くようなこともなく、外見上乾燥している状態になっていた。ウィングピドラーを利用しての折り畳み状況も静電気の発生は全く観察されず均一に折り畳まれた。ちなみに本実施例のように合成繊維100%のWJ交絡不織布の場合、熱乾燥した水分率10wt%以下の状態では、巻き取り、スリット加工、フェストーニング加工(折り畳み加工)する場合、静電気トラブルを回避するため、水分の噴霧により加湿して静電気の発生を防いで作業を行うのが一般的である。
本実施例で得られた交絡ウェブ状繊維層は非常に嵩高の不織布で、図7(C)の模式図に類似する畝状の連続的な厚みのある突起部と薄くなった平滑部を持っている。
得られた不織布は、目付35g/m2で、厚みのある突起部は厚み3mm(無加重下)で見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.01、薄くなった平滑部は厚み0.5mmで見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.07あった。突起部ではPE/PP製SBの基材側にも起毛状にPET繊維が飛出し、極めて柔らかい表面感触を示した。
(実施例2)
図17はWJユニットと受けプレートが組み込まれた本発明の製造プロセスの他の実施形態を示す図である。プロセスの流れは左から右の方向に進行する。プロセスの構成は左から基材巻出し機2001、2台の直列に配置されたカード機2002,2003、ウェブ搬送コンベアー2004、ネットコンベヤー2005、水スプレー2006、屋根状の多孔受けプレート2007、WJユニット2008、WJユニット2009、水スプレー用サクション2010、WJ用サクション2011、熱風乾燥機2012、巻き取り機2013を備えている。図16のプロセスとは、受けプレートの形状が異なり、乾燥機、巻き取り機の構造が異なる。なお図17においても受けプレート2007とWJユニット2008,2009の配置部位(点線で囲んだ部位)については詳細がわかるように相対的に拡大して図示した。
ウェブ状繊維層は基材としてPE/PET製スパンボンド(ユニチカ製)15g/m2を採用し、カードウェブとして、レーヨン繊維(ダル、1.5d×45mm、ダイワボウレーヨン製)8g/m2の2層からなる16g/m2を、基材上に重ねて積層体として構成した。得られたウェブ状繊維層は搬送コンベアー2004の出口に設けられた、一定の隙間を持つスムースロール(詳細説明割愛)によりカードウェブの表面を平滑にして、50m/min.で走行するコンベアー2005へ供給する。水スプレーに2006よりウェブ状繊維層を水によって飽和させ、含有空気を除去し、受けプレートへ2007とガイドする。
受けプレート2007は図2(C)で示した屋根型の、上に凸型の曲面形状の表面を持つ、厚さ2.5mmのSUS36製のものである。受けプレートは図4(B)に類似した表面パターンを有し、開口面積3mm2(直径約2mm)の開口がほぼ全面に存在し、開口のない部位は平滑である。受けプレート2007の上表面(貫通孔の開口を含む)の面積に対する、全ての貫通孔の開口面積(合計の開口面積)の比率は約15%である。更に表面をバフ仕上げして平滑にしている。この受けプレート2007は左右に摺動させる機能を持ち図12(A)、(B)で図示した構造を持つ、左右摺動ユニットを備え、左右のフレームに取り付けられネットコンベヤー2005上に配置されている。受けプレート2007には2つのWJユニット2008,2009が配置され、図2(C)と同様な配置状態を持つ、この部分の詳細を図1(A)の部位表示に従って説明する。すなわち、
間隔W0は、No.1WJノズル2008の中心とWJノズル2009の中心との間隔は約80mmになるように固定される。
前後幅W1は、受けプレート2007の前後幅(屋根面を伸ばした場合の全長)であり、この例では150mmである。
前後幅W2は、サクションボックス2011の前後幅であり、500mmで、前記受けプレート2007の前部、後部からネット上に溢流する水液流及び受けプレートの開孔よりネット上に落下してくる水液流及び空中に飛散しネット上に落下してくる水滴を捕捉し、系外へ排出する目的のため、受けプレートの前後幅W1より幅を広くする。
距離d0は、WJノズル2008,2009の下面と受けプレート2007の上面との間隙(距離)であるがこの間隙をウェブ状繊維層が通過するためこの例では20mmに設定している。
距離d1は、受けプレート2007の下面とネットコンベヤー2005の上面との距離であり、この距離の設定の目的は受けプレート2007の下面とネットコンベヤー2005の上面との接触を避けプレート2007やネットコンベヤー2005の摩耗や損傷を避けるために4mmに固定している。より詳しく図3(A)の表示に合わせて説明するとd1a=4mm、d1b=17mm、d1c=4mmとなっている。
距離d2は、ネットコンベヤー2005の下面とサクションボックス2011の天板との距離であり、この距離については、サクションボックス2011内を減圧に保つために0mmすなわち常時接触状態に保つことが望ましい。そのためサクションボックス2011の天板材料には超高圧ポリエチレンを採用している。
厚さtは、受けプレート2007自体の厚さであり、この厚さは前後に均一であり、開孔の安定性を維持するため2.5mmにしている。WJユニット2008、WJユニット2009も図14、図15で図示したものと同様の構造をもち、WJユニット2008とWJユニット2009には口径0.18mm、ノズル間隔9mmの同じノズルプレートが組込まれている。いずれのユニットにも1台の高圧ポンプから7MPaの高圧イオン交換水が供給される。前記ウェブ状繊維層は左右に20mmずつ、全体が40mm幅の範囲で、30回/min.の往復運動を繰り返す受けプレート2007の上を、図3(A)で示すP部、Q部、R部、S部を滑走させつつ、WJユニット2008、WJユニット2009による水流噴射を受け、上記d0=20mmの間隙を走行し、交絡処理を経て、ネットコンベヤー2005上に復帰する。交絡ウェブ状繊維層はWJサクション2011を経て120℃のドラム式熱風乾燥機2012で残存水分率10wt%前後まで乾燥し、巻き取り機2013で巻き取り製品とした。
本実施例で得られた交絡ウェブ状繊維層は凹凸を持つ比較的嵩高の不織布で、図8(C)の模式図に類似するPE/PETスパンボンドとレーヨンウェブが一体となったシーム状交絡部と、PE/PETスパンボンドが帯状に除去され開口しレーヨンウェブのみが存在する開口交絡部と、PE/PETスパンボンドとレーヨンウェブがそのままとどまる未交絡部との3種類の交絡状態を持って構成されている。なおシーム状交絡部ではレーヨンウェブがPE/PETスパンボンド側に起毛状に飛出していた。
得られた不織布は、目付30g/m2で、一番厚みのある開口交絡部は厚み2mm(無加重下)で見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.02、未交絡部は厚み1.2mmで見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.03、シーム状交絡部は厚み0.5mmで見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.06であった。
PE/PETスパンボンド側を上面とし、レーヨンウェブ側を下面にして、ティシュを20枚重ねたマット上に設置し、生理食塩水を注ぐと、生理食塩水の殆どは開口交絡部から素早く通過し、下面全体に直ちに拡散した。PE/PETスパンボンド側の上面を手で擦っても濡れた感じがなく、しかも起毛状のレーヨン繊維のためソフトな感触を呈しているため、ドライな感触のコットンという意味で「ドライコット」と俗称することとした。
(実施例3)
図18はWJユニットと受けプレートが組み込まれた本発明の製造プロセスの他の実施形態を示す図である。プロセスの流れは左から右の方向に進行する。プロセスの構成は左から不織布巻出し機3001、基材巻出し機3002、ガイドロール3003、プレスロール3004、ネットコンベヤー3005、水スプレー3006、屋根状の多孔受けプレート3007、WJユニット3008、WJユニット3009.WJ用サクション3010、熱風乾燥機3011、巻き取り機3012を備えている。図17のプロセスとはカード機から得られるカードウェブの代わりに不織布を使用している点と受けプレートの形状が異なる。なお図18においても受けプレート3007とWJユニット3008,3009の配置部位(点線で囲んだ部位)については詳細がわかるように相対的に拡大して図示した。
本例のウェブ状繊維層は不織布としてTCF(フタムラ化学社製、品番403)30g/m2を基材PP−SMS(AVGOL社製)12g/m2上に重ね合せ、積層体として構成した。得られたウェブ状繊維層は、一定の隙間を持つスムースロール(詳細説明割愛)によりカードウェブの表面を平滑にして、50m/min.で走行するコンベアー3005へ供給する。水スプレー3006によりウェブ状繊維層を水によって飽和させ、含有空気を除去し、受けプレート3007へとガイドする。
受けプレート3007は図2(C)で示した屋根型に、上に凸型折り曲げられ、頂点を滑らかになるよう加工した表面を持つ、厚さ1.5mmのSUS36製のものである。受けプレート3007は図4(B)に類似した表面パターンを有し、開口面積1.8mm2(直径約1.5mm)の開口がほぼ全面に存在し、開口のない部位は平滑である。受けプレート3007の上表面(貫通孔の開口を含む)の面積に対する、全ての貫通孔の開口面積(合計の開口面積)の比率は約7%である。更に表面全体をバフ仕上げして平滑にしている。この受けプレート3007は左右に摺動させる機能を持ち図12(A)、(B)で図示した構造を持つ、左右摺動ユニットを備え、左右のフレームに取り付けられネットコンベヤー3005上に配置されている。
受けプレート3007には2つのWJユニット3008,3009が配置され、図2(C)と同様な配置状態を持つ、この部分の詳細を図1(A)の部位表示に従って説明する。すなわち、
間隔W0は、WJノズル3008の中心とWJノズル3009の中心との間隔は約80mmになるように固定される。
前後幅W1は、受けプレート3007の前後幅(屋根面を伸ばした場合の全長)であり、この例では200mmである。
前後幅W2は、サクションボックス3010の前後幅であり、1000mmで、wettingスプレー、受けプレート3007の前部、後部からネット上に溢流する水液流及び受けプレートの開孔よりネット上に落下してくる水液流及び空中に飛散しネット上に落下してくる水滴を捕捉するため幅を広くしている。
距離d0は、WJノズル3008,3009の下面と受けプレート3007の上面との間隙(距離)であるが、この間隙をウェブ状繊維層が通過するためこの例では20mmに設定している。
距離d1は、受けプレート3007の下面とネットコンベヤー3005の上面との距離であり、この距離の設定の目的は受けプレート3007の下面とネットコンベヤー3005の上面との接触を避けプレート3007やネットコンベヤー3005の摩耗や損傷を避けるために4mmに固定している。より詳しく図3(A)の表示に合わせて説明するとd1a=4mm、d1b=20mm、d1c=4mm となっている。
距離d2は、ネットコンベヤー3005の下面とサクションボックス3010の天板との距離であり、この距離については、サクションボックス3010内を減圧に保つために0mmすなわち常時接触状態に保つことが望ましい。そのためサクションボックス3010の天板材料には超高圧ポリエチレンを採用している。
厚さtは、受けプレート3007自体の厚さであり、この厚さは前後に均一であり、開孔の安定性を維持するため1.5mmにしている。WJユニット3008、WJユニット3009も図14、図15で図示したものと同様の構造をもち、WJユニット3008とWJユニット3009には口径0.12mm、ノズル間隔2.0mmの同じノズルプレートが組込まれている。いずれのユニットにも1台の高圧ポンプから7Mpaの高圧イオン交換水が供給される。前記ウェブ状繊維層は左右に10mmずつ、全体が20mm幅の範囲で、60回/min.の往復運動を繰り返す受けプレート3007の上を図3(A)で示すP部、Q部、R部、S部を滑走させつつ、WJユニット3008、WJユニット3009による水流噴射を受け、上記d0=20mmの間隙を走行し、交絡処理を経て、ネットコンベヤー3005上に復帰する。交絡ウェブ状繊維層はWJサクション3010を経て120℃のドラム式熱風乾燥機3011で残存水分率10wt%前後まで乾燥し、巻き取り機3012で巻き取り製品とした。
本実施例で得られた交絡ウェブ状繊維層は凹凸を持つが比較的フラットな不織布で、図8(A)の模式図に類似するPP製SMSとTCFとが一体となった大部分の面積を占めるシーム状交絡部と、SMSから部分的にTCFが突起状した開口交絡部から構成されている。なおシーム状交絡部ではTCFの構成繊維がSMS側に起毛状に飛出していた。
得られた不織布は、目付42g/m2で、開口交絡部は厚み1.2mmで見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.04、シーム状交絡部は厚み0.4mmで見掛け嵩密度(g/cm3)は約0.11であった。