JP7461739B2 - 複合型不織布の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
ところで、従来にあって、湿式抄紙法によるシート製造技術を流用して、パルプ繊維を含む不織布を製造する際に、パルプ繊維に紙力剤を予め添加して製造することが知られている(例えば、特許文献2、3)。このように製造されたパルプ繊維ウエブでは、構成している繊維の状態が安定化されるので繊維の脱落を抑止できる。
しかしながら、乾式製造を採用した場合と比較して、湿式抄紙法によってパルプ繊維ウエブを製造すると製造設備が大型化するので製造コストが増加し、しかも抄紙工程では白水中を循環する異物を完全に除去することができないので、製造される複合型不織布にも異物が混入し易いという問題がある。
また湿式抄紙法によって紙力剤を含んだパルプ繊維ウエブを製造する際、パルプに定着できず白水に流れ出てしまう紙力剤多くなり、紙力剤の歩留まりが悪くなる(コストアップする)という点も問題となる。
そこで、乾式製造を採用することとなるが、乾式によるパルプ繊維ウエブは複合型不織布にした場合に、加工時及び使用時にはパルプ繊維の脱落が生じやすい。
また、前記紙力剤の添加がスプレー塗布であることが好ましい。
また、前記紙力剤の濃度を0.5~2.0%、吐出圧力を0.1~1.0Mpaとしてスプレー塗布するのが好ましい。
そして、複数の前記スプレーノズルを、所定間隔をもって前記幅方向に対して傾けて配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互いに干渉しないようにしてスプレー塗布するのがより好ましい。
また、複数の前記スプレーノズルを、前記幅方向に対して平行な複数列で、前後で互い違いとなるようにして所定間隔をもって配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互い干渉しないようにしてスプレー塗布することも好ましい。
前記紙力剤は、例えばポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、及びポリアミドポリアミン系よりなる群から少なくとも1つを選択して用いることができる。
本発明は、湿式設備を採用した場合よりも、設備コストを抑制できるエアレイド方式でパルプ繊維ウエブを供給して複合型不織布を製造する際に、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し水流交絡処理して一体化した後に、パルプ繊維ウエブに紙力剤を添加して複合型不織布を製造することを提案するものである。
先ず、複合型不織布の製造装置1の概略構成を説明する。図1に示す製造装置1は、上流側にパルプ繊維ウエブを供給するためのエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、脱水処理を行うためのサクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布WPを巻き取るための巻取装置8が設けてある。
上記のように、エアレイド装置2は乾式でパルプ繊維ウエブを供給できる装置設備であり、湿式抄紙法を応用し湿式でパルプ繊維ウエブを製造する装置よりも設備コストを抑制できる。また、エアレイド装置2ではパルプの解繊から分散、降下まで閉鎖系空間となっており異物の混入が防止されているので、湿式抄紙法でパルプ繊維ウエブを供給する場合と比較して、異物の混入を圧倒的に低く抑えることができる。
なお、図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウエブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布に含まれるパルプ繊維ウエブPFWの坪量は例えば30.0~75.0g/m2であり、従来の一般的な複合型不織布よりもパルプ繊維ウエブの比率が高くなるように設計するのが望ましい。そして、スパンボンド不織布SWの坪量は例えば10.0~25.0g/m2であり、製造される複合型不織布(スパンボンド不織布SW+パルプ繊維ウエブPFW)は例えば45.0~90.0g/m2とするのが好ましい。パルプ繊維ウエブの搬送速度やパルプ繊維ウエブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布のパルプ繊維ウエブPFWの坪量を確認することで、坪量が所望の範囲となるように設定すればよい。パルプ繊維ウエブの搬送速度は例えば150~300m/minとするのが好ましい。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、図1では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向CD)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
化が促進される。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の複合型不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
しかしながら、先に指摘したように、複合型不織布WP上のパルプ繊維ウエブから離脱するパルプ繊維を確実に抑止できる複合型不織布とする必要がある。そのため、本製造装置1には、パルプ繊維の脱落を抑止するための紙力剤を添加するための紙力剤添加装置9が配置されている。
紙力剤添加装置9は、水流交絡装置5で複合化された後の複合型不織布WPの上側、すなわちパルプ繊維ウエブPWFから紙力剤を添加する。複合化が完了した複合型不織布のパルプ繊維ウエブ表面に紙力剤を添加するので、紙力剤が効率的に作用してパルプ繊維同士を接続する機能を果たす。紙力剤添加装置9より下流では乾燥処理されるので、添加された紙力剤が洗い流されて流出するなどの無駄もない。
また、下側にはサクション装置があるので、紙力剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのに優位であり、これによってパルプ繊維の脱落を更に確実に抑止することができる。添加は、スプレー塗布とすることにより、噴霧液状となった紙力剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのにより一層優位となる。そして、紙力剤添加装置9では、製造される複合型不織布WPの状態を確認して、紙力剤の量をコントロールすることも容易に行える。
なお、上記紙力剤添加装置9で紙力剤がスプレー塗布される際のパルプ繊維ウエブPWF部分の水分(紙力剤添加装置9に進入する直前の入口水分%)は120~400%となるように調整しておくのが好ましい。
また、紙力剤のスプレー塗布後、10秒以内に脱水処理しておくのが好ましい。すなわち、上記図1により説明したように紙力剤をスプレー塗布した直下で脱水してもよいし、スプレー塗布から少し離れた位置(搬送時間10秒以内の位置)で脱水処理してもよい。要するに、紙力剤をスプレー塗布した際のパルプ繊維ウエブPWF内部への薬液の浸透拡散状態を確認して、最適な時間(ただし、スプレー塗布後10秒以内)を適宜に決定すればよい。
上記紙力剤添加装置9としては、サイズプレス、スプレー、ロールコーティング、グラビアコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング等、公知の装置を用いて紙力剤を添加することできる。ここで特に限定はされないが、スプレーが好ましい。
また、スプレー塗布する場合には、前記紙力剤は好ましくは濃度0.5~2.0%、より好ましくは、0.7~1.5%とし、好ましくは吐出圧力0.1~1.0Mpa、より好ましくは、0.3~0.8Mpaとしてパルプ繊維ウエブPWFにスプレー塗布する。圧力が低いと、搬送されているパルプ繊維ウエブによって起こされる風により紙力剤が飛び散ってしまい、歩留りが低下する。一方で、圧力が高すぎると、搬送されているパルプ繊維ウエブの紙面で跳ね返りが発生して、この場合も歩留りが悪化する。
そして、上記紙力剤としては、例えばポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、ポリアミドポリアミン系などから少なくとも1つを選択して用いることできる。この中では、ポリアミドエピクロロヒドリン系のものを用いるのが好ましく、例えば星光PMC社製の湿潤紙力剤WS4030、WS4038、WS4027等を用いることができる。ポリアミドエピクロロヒドリン系の紙力剤を用いることで、繊維脱落抑止の効果が好適に得られると共に、複合型不織布の使用感が良いものとなる。
図2(a)で示すように、噴霧液の形状が猫の目形状CSとなるように、猫の目型の吐出口を有するスプレーノズルを用いてスプレー塗布するのが好ましい。
図2(b)はパルプ繊維ウエブの搬送方向TDに対して直角な幅方向CDに沿って、噴霧液がパルプ繊維ウエブPWFに均一塗布されるように、横長である猫の目形状CSがその両端部で互いに重なるように設定した場合を例示している。この場合、噴霧液形状に対応して、猫の目型の吐出口を有するスプレーノズルを複数、所定間隔をもって幅方向CDに直線状に配置した紙力剤添加装置9を採用することになる。
このように連続的に製造される複合型不織布WPは乾燥後に巻取装置8のロール81に巻取られる。
以下、上記製造装置で紙力剤を添加して製造した場合の複合型不織布について説明する。
パルプ繊維ウエブPFWへの紙力剤の添加量、その際の吐出圧、紙力剤の添加濃度、ノズルの配置、複合型不織布の坪量、搬送速度を、表1に示す通りにして製造した、実施例1~3の複合型不織布、並びにその比較例1~2及び3について、複合型不織布の脱落繊維の少なさ(パルプ繊維脱落の抑止性)および使用感(柔らかさ)について使用時の官能評価をした。
なお、比較例3は、湿式抄紙法によるパルプ繊維ウエブを使用した。また、紙力剤はエアレイド方式および湿式抄紙法の場合共に、星光PMC社製WS4030(ポリアミドエピクロロヒドリン系)を使用した。なお、いずれの複合型不織布もパルプ繊維ウエブについてはサザンパインを用いている。
1)脱落繊維の少なさ:複合型不織布使用時の脱落繊維
脱落繊維がほぼ見られない(優◎)
脱落繊維がややみられるものの、問題なく使用できるレベル(良○)
脱落繊維が多く使い難い(不可×)
2)使用感(柔らかさ):複合型不織布をワイプ用途で使用した際の使用感、柔らかさ
柔らかく使用感良好(優◎)
少し硬く感じるが問題なく使用できる(良○)
硬く使用感が劣る(不可×)
3)異物混入:複合型不織布表面の異物
1m×1mの範囲で異物が全く見られない(良○)
1m×1mの範囲で1mm2以上の白色以外の色の異物が1個以上認められる(不可×)
なお、紙力剤の歩留まり(%)は、流量計等から求めた紙力剤の添加量に対する製造した複合不織布中の紙力剤含有量(wt/wt%)であり、紙力剤の添加量を複合型不織布のパルプ繊維部分より微量窒素計を用いた紙力剤の添加量で除して求めた。
上記実施例1~3は、紙力剤の固形分で換算した添加量がパルプ繊維ウエブの固形重量に対して0.05~2.0%の範囲内となるようにスプレー塗布されて複合型不織布が製造されている。また、紙力剤の濃度が0.5~2.0%、そして吐出圧力が0.1~1.0Mpaの範囲内にある。
一方、比較例1、2から、紙力剤の濃度および吐出圧により、添加量が少なすぎると繊維脱落の十分な抑止効果を期待できず、逆に添加量が多すぎると使用感が劣ってくることが確認できる。
また、実施例1~3の複合型不織布は紙力剤の歩留まりが50%以上と極めて高く、紙力剤が効率的に使用され、効果的に機能していることも確認できる。なお、比較例3は湿式抄紙法によるパルプ繊維ウエブを使用したので、異物混入の抑止が困難であることが確認された。
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
9 紙力剤添加装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW スパンボンド不織布
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合型不織布
TD 搬送方向
CD 幅方向
CS 猫の目形状(噴霧液の形状)
Claims (10)
- スパンボンド不織布上に、エアレイド方式で供給されるパルプ繊維ウエブを載置した後、水流交絡処理を施して得られる複合型不織布の製造方法であって、
前記水流交絡処理後に、前記複合型不織布の下側から吸引する脱水処理が実施され、前記脱水処理の際に前記パルプ繊維ウエブ側に紙力剤が添加される、ことを特徴とする複合型不織布の製造方法。 - 前記パルプ繊維ウエブにおける前記紙力剤の固形分で換算した添加量が、前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、0.05~2.0%となるように添加する、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型不織布の製造方法。
- 前記紙力剤の添加がスプレー塗布であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合型不織布の製造方法。
- 前記紙力剤の濃度を0.5~2.0%、吐出圧力を0.1~1.0Mpaとしてスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項3に記載の複合型不織布の製造方法。
- 吐出口の形状が猫の目型であるスプレーノズルを用い、スプレーされて噴霧液状となった前記紙力剤が前記パルプ繊維ウエブに均一に塗布されるように、前記パルプ繊維ウエブの幅方向に前記スプレーノズルを複数配置してスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の複合型不織布の製造方法。
- 前記噴霧液状となった前記紙力剤が両端部で互いに重なり、前記幅方向に沿って複数の前記スプレーノズルを直線状に配置してスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項5に記載の複合型不織布の製造方法。
- 前記猫の目型の前記吐出口における内周上の2点及び中心を通る直線を仮想し、その仮想した前記直線のうち最長の直線を長軸とした場合に、複数の前記スプレーノズルを、所定間隔をもって前記幅方向に対して前記長軸を傾けて配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互いに干渉しないようにしてスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項5に記載の複合型不織布の製造方法。
- 複数の前記スプレーノズルを、前記幅方向に対して平行な複数列で、前後で互い違いとなるようにして所定間隔をもって配置し、前記噴霧液状となった前記紙力剤が互いに干渉しないようにしてスプレー塗布する、ことを特徴とする請求項5に記載の複合型不織布の製造方法。
- 前記紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、及びポリアミドポリアミン系よりなる群から少なくとも1つが選択される、ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の複合型不織布の製造方法。
- スパンボンド不織布上に、エアレイド装置によって供給されるパルプ繊維ウエブを載置した後、水流交絡装置により水流交絡処理を施して複合型不織布を製造する複合型不織布製造装置であって、
前記水流交絡装置の下流に、前記複合型不織布を下側から脱水処理する脱水装置を備えると共に、
前記脱水装置の上方には、前記複合型不織布の前記パルプ繊維ウエブに紙力剤を添加する添加装置が設けてある、ことを特徴とする複合型不織布の製造装置。
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