JP2016079146A - β−ANPに対する特異的測定方法 - Google Patents
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【課題】β−ANPを特異的に認識することを特徴とするモノクローナル抗体を得て、それを用いて特異性が高く高感度なβ−ANPの免疫学的測定方法を提供することである。【解決手段】β−ANPを特異的に認識することを特徴とするモノクローナル抗体、好ましくはβ−ANPのジスルフィド結合を含むアミノ酸配列を認識するモノクローナル抗体を調製し、そのモノクローナル抗体とα−ANPを認識するモノクローナル抗体やポリクローナル抗体とを用いてサンドイッチ測定法により免疫学的測定を行う。【選択図】 図3
Description
本発明はβ−ANPを認識する抗体およびβ−ANPの免疫学的測定方法に関する。さらに詳しくは、β−ANPの特定の位置のアミノ酸残基や構造を認識するモノクローナル抗体とα−ANPを認識するモノクローナル抗体、あるいはポリクローナル抗体用いるβ−ANPの免疫学的測定方法に関する。
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP:atrial natriuretic peptide)は松尾・寒川らにより1984年に報告されたペプチドホルモンで(非特許文献1参照)、心臓で産生され強力な利尿、ナトリウム利尿活性と平滑筋弛緩活性を持つ。ANPはヒトばかりでなく、げっ歯類以外の哺乳類では同一のアミノ酸配列を有し、例えばヒト、ウシ、ブタのANPは同一である。ANPには、分子量約3000のα型、α型の逆平行二量体であるβ型、α型の前駆物質であるγ型の3種類の分子型が確認されている(図1参照)。
ANPは、心臓、特に心房から分泌されるホルモンで、利尿作用、Na利尿作用、血管拡張作用、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系や交感神経系の抑制作用など多様な生物活性を有し、体液量、血圧の調節に重要な役割を担っている(非特許文献2,3参照)。
ANPは心血行動態的負荷、特に心房内圧の増加が主要な産生、分泌刺激になると考えられ、体液量あるいは心房内圧の増加する各種心疾患、腎疾患において血中濃度の増加が認められることから、これら病態の把握、重症度の指標として極めて有用であり、ルーチンの検査項目として日常臨床に応用されている(非特許文献4〜6参照)。
α−ANPは血中に存在するANP類の中心となる分子種であり、28アミノ酸残基からなり、N末端から7番目のCysと23番目のCysが分子内でジスルフィド結合し、その間の配列が環状構造をなしている。一方、β−ANPは、2分子のα−ANPが分子間でジスルフィド結合した、α−ANPの逆平行二量体である(特許文献1参照)。γ−ANPは126アミノ酸残基からなり、そのC末端にα−ANP配列を有する。健常者においては、γ−ANPは心房中に保存されており、分泌時にα−ANPとN末端ペプチドに切断され、血中ではこの2つの分子で存在する(非特許文献7参照)。
α−ANPの有用性は多く報告されているが、β−ANPとγ−ANPについても重症心不全症例で増加していることが報告されている(非特許文献8参照)。この報告ではα型、β型、γ型の各分子型の共通領域(即ちα−ANP)を用いる抗体と逆相高速液体クロマト(RP−HPLC)法を用いた測定法により確認している。
ANPの測定は、酵素やラジオアイソトープで標識した抗体と、担体に固定化した固定化抗体とでサンドイッチされる免疫学的測定法が利用されており、特に臨床検査薬として広く医療現場で使用されており(非特許文献9参照)、α型、β型、γ型の3種類の総和が測定されるものである。その他にα−ANPを測定できる方法が記載されている(特許文献2,3参照)。特許文献2には、KY−ANP−I(環状部位N末端側を認識)とC末端認識ポリクローナル抗体とのサンドイッチEIAが記載されているが、β−ANPとの交差反応性は4.7%と記載され、またγ−ANPとも交差反応すると推定され、α−ANPに高度に特異的とは言い難いものである。一方、特許文献3にはKY−ANP−II(α−ANPのN末端部を認識すると推定される)が記載されているが、RIAにおけるβ−ANP、γ−ANPとの交差反応性はそれぞれ20%,50%であり、α−ANPに特異的とは言い難いものである。β−ANPの測定を可能にするサンドイッチ酵素免疫測定法(特許文献4参照)は、α−ANPの同一のエピトープを認識する抗α−ANP抗体でβ−ANPをサンドイッチすることを特徴とする免疫学的測定方法である。この測定方法では、共存するα−ANPの濃度の影響を受けやすく高感度化するのは難しい。γ−ANPについては、γ−ANPのN末端認識抗体を用いたRIAが記載されており(特許文献5参照)、サンドイッチ法の可能性を具体例をあげて記しているが、実施例はない。このように、従来は、ANPの各分子型に非常に特異的な抗体や測定方法は見出されていなかった。
Biochem. Biophys. Res. Commun.,118;131,1984
成瀬光栄,成瀬清子:呼吸と循環,37:37:375−86,1989
lnagami, T. & Naruse, M.:Encyclopedia of Human Biology Vol. 1, Academic Press,1991,p.467
Yoshinaga, K. et al.,Biomed. Res. 7:173−9,1986
Hasegawa, K., et al., J. Clin. Endocrinol. Metab 63:819−22,1986
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Sugawara, A., et al., Hypertension 8(Suppl.1), I−151−155, 1986
Akimoto, K. et el. J. Clin. Endocrinol. Metab.,67:93−97,1988
浜典男ら,基礎と臨床 25:4205−12,1991
市販されているANPを測定するサンドイッチ免疫測定法においては、ANPの異なるエピトープ(C末端と環状部位)を認識する2種類の抗体を用いる測定系であり、α型、α型の2量体であるβ型、α型の前駆物質とされるγ型の3種類の分子型も測定される。
α−ANPの測定に関しては、多くの報告が成されているが、これらの測定系がβ−ANPと交差反応性を示すことが明らかにされている。
β−ANPに特異的な測定系については、α−ANPのホモダイマーであることから、同一のモノクローナル抗体を用いてβ−ANPを測定する測定系は報告(特許文献4参照)されているが、β−ANPに特異的な抗体を用いているわけではなく、α−ANP濃度が高くなると競合阻害を受けることになり測定系によっては感度が低くなることがあり、依然、高感度にβ−ANPのみを測定するためには、課題が残っている。
本発明の目的は、β−ANPを特異的に測定できる免疫測定法を提供することである。
本発明者らは、β−ANPを特異的に認識するモノクローナル抗体の研究をつづけた結果、α−ANPの逆平行ダイマーが特異的につくるジスルフィド結合を含むアミノ酸配列や構造をエピトープとして認識する抗体を獲得し、それを利用するβ−ANPの高感度測定法を完成させた。
即ち本発明は以下のとおりである。
(1)β−ANPを特異的に認識することを特徴とするモノクローナル抗体。
(2)β−ANPのジスルフィド結合を含むアミノ酸配列を認識する、(1)に記載のモノクローナル抗体。
(3)上述の(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
(4)上述の(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とするβ−ANPの免疫学的測定方法。
(5)上述の(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体と、α−ANPを認識する抗体とを用いたサンドイッチ測定法により測定する、(4)に記載の免疫学的測定方法。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
(1)β−ANPを特異的に認識することを特徴とするモノクローナル抗体。
(2)β−ANPのジスルフィド結合を含むアミノ酸配列を認識する、(1)に記載のモノクローナル抗体。
(3)上述の(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
(4)上述の(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とするβ−ANPの免疫学的測定方法。
(5)上述の(1)又は(2)に記載のモノクローナル抗体と、α−ANPを認識する抗体とを用いたサンドイッチ測定法により測定する、(4)に記載の免疫学的測定方法。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のモノクローナル抗体は、β−ANPを特異的に認識するものであり、好ましくはβ−ANPのジスルフィド結合を含むアミノ酸配列を認識するものであり、さらに好ましくはβ−ANPのジスルフィド結合とその周辺のアミノ酸配列を認識するものである。これにより、本発明のモノクローナル抗体はβ−ANPを特異的に認識することができ、α−ANPやγ−ANPを実質的に認識しないものである。
本発明のモノクローナル抗体の親和定数は、後述の実施例で示すように、β−ANPに対してKd値が10−11Mオーダーであるのに対して、α−ANPに対するKd値が10−8Mオーダーであり、β−ANPに対して極めて高い親和性を有するものが得られ、即ちβ−ANPを特異的に認識するものが得られた。
本発明のモノクローナル抗体の製法としては特に限定されるものではなく、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを用いる方法や遺伝子組換えの手法を用いて作製することができ、β−ANPを特異的に認識するモノクローナル抗体を回収すればよい。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをマウス腹腔中で増殖させ、得られた腹水や抗血清からモノクローナル抗体を回収するには、DEAE−セルロースカラムやプロテインA−セファロースカラム、プロテインG-セファロースカラムを用いることができる。得られたモノクローナル抗体は、そのまま本発明の免疫学的測定方法に用いてもよく、またさらにペプシンで消化して得られるF(ab’)2断片、また、さらに2−メルカプトエチルアミンなどで還元して得られるFab’断片などを用いることも可能である。
本発明の免疫学的測定方法は、本発明のモノクローナル抗体を用いるものであれば特に限定されるものではないが、本発明のモノクローナル抗体と、α−ANPを認識する抗体とを用いたサンドイッチ測定法であることが好ましい。ここで用いられるα−ANPを認識する抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、またα−ANPの認識部位は特に限定されるものではないが、ジスルフィド結合の結合部を認識しないものが好ましく、例えばα−ANPの環状部位を認識するものが好ましい。
本発明の免疫学的測定方法では、標識を用いることができる。標識としては、125I、3Hなどの放射性物質、西洋わさびペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素、フルオレッセインなどの螢光物質、金コロイド、セレンコロイド、ルシフェリンなどの発光又は発色物質などが用いられ、標識された抗原あるいは抗体が試薬として用いられている。また、直接これらの物質を検出に用いる物質に標識せず、ビオチン−アビジン等を利用して間接的に標識してもよい。抗原に結合した標識物質を検出することは、例えば、公知の酵素免疫測定法(EIA、ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(LIA)又は発光酵素免疫測定法(CLEIA)等により行うことができる。
本発明の免疫学的測定法においては、不溶性担体を用いることができる。不溶性担体に関しては、よく知られているガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、デキストランなどの物質からなるビーズ、チューブ、プレート、磁性微粒子など用いることができ、反応後にB/F分離可能な担体が好ましく、その材質などは問わない。また、不溶性担体と抗体(あるいはレセプター、結合蛋白質)との結合は、物理的結合あるいは化学的に中間体を介した結合等、B/F分離時に結合能が失われない方法が好ましい。
本発明により、β−ANPを特異的に認識するモノクローナル抗体を得ることができ、これを用いた本発明の測定法によれば、従来のβ−ANPの測定法よりも特異性が高く高感度な測定が可能となる。この測定方法はβ−ANP測定による心疾患の診断に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例により限定されるものではない。
(1)モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製とモノクローナル抗体の産生
[抗原の調製]
固相法で合成、精製した還元型ヒトα−ANP(シグマジェノシス社製、2.1mg)を、ジスルフィド結合を形成しない状態で、マレイミド活性化キーホールリンペットヘモシアニン(3mg、Thermo Scientific社 77605)と結合した。これを透析し、生理的食塩水で1mg/mLの溶液とした。
[抗原の調製]
固相法で合成、精製した還元型ヒトα−ANP(シグマジェノシス社製、2.1mg)を、ジスルフィド結合を形成しない状態で、マレイミド活性化キーホールリンペットヘモシアニン(3mg、Thermo Scientific社 77605)と結合した。これを透析し、生理的食塩水で1mg/mLの溶液とした。
[モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製]
抗原溶液100μLとアジュバント100μL(Freund complete adjuvant,三菱化学ヤトロン社 RM606−1)を十分に混合して安定したエマルジョンにして、4週齢のC3H系マウス(4匹)の足の裏に各50μLずつ免疫した。これを合計5回、3日おきに実施した。最終免疫の3日後にマウス両足からリンパ節を収集し、リンパ節内の細胞を回収した。リンパ節由来細胞と増殖させたミエローマ細胞(P3U1)を2:1〜10:1の割合で混和し、遠心して回収後、50%ポリエチレングリコールを加えて細胞を融合させた。
抗原溶液100μLとアジュバント100μL(Freund complete adjuvant,三菱化学ヤトロン社 RM606−1)を十分に混合して安定したエマルジョンにして、4週齢のC3H系マウス(4匹)の足の裏に各50μLずつ免疫した。これを合計5回、3日おきに実施した。最終免疫の3日後にマウス両足からリンパ節を収集し、リンパ節内の細胞を回収した。リンパ節由来細胞と増殖させたミエローマ細胞(P3U1)を2:1〜10:1の割合で混和し、遠心して回収後、50%ポリエチレングリコールを加えて細胞を融合させた。
無血清培地で洗浄後、レスキュー用supplement含有の15%ウシ胎児血清含有HAT培地に懸濁し、96穴プレート3枚に播種した。1〜2週間後に、ハイブリドーマのコロニー形成を確認し、各ウェルから培養上清を一部回収した。
[ハイブリドーマの1次スクリーニング]
1次スクリーニングは標準的なELISA法(Methods in Immunodiagnosis 2nd Edition, Rose and Bigazzi, eds., John Wiley and Sons, 1980; Campbell, et al., Methods and Immunology, W. A. Benjamin, Inc., 1964; Oellerich, M., J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 22:895−904, 1984; 羊土社 タンパク質実験ノート(下)岡田雅人編集 改訂第4版 2011年11月1日発行)で実施した。抗原を1μg/mLに希釈後、96穴プレート(NUNC 468667)に分注し、4℃で一晩、静置した。抗原溶液を除去後、Blocking Bufferを100μL/wellで分注し、ブロッキングを行った。培養上清50μLを各ウェルに添加して反応させた。洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼで標識した抗マウスIgGヤギ抗体と反応後、発色剤を添加し、450nmの吸光度を測定した。ヘモシアニンに対する吸光度が0.2以下で、抗原に対する特異的な吸光度を0.2以上有するクローンを陽性として選択した。
1次スクリーニングは標準的なELISA法(Methods in Immunodiagnosis 2nd Edition, Rose and Bigazzi, eds., John Wiley and Sons, 1980; Campbell, et al., Methods and Immunology, W. A. Benjamin, Inc., 1964; Oellerich, M., J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 22:895−904, 1984; 羊土社 タンパク質実験ノート(下)岡田雅人編集 改訂第4版 2011年11月1日発行)で実施した。抗原を1μg/mLに希釈後、96穴プレート(NUNC 468667)に分注し、4℃で一晩、静置した。抗原溶液を除去後、Blocking Bufferを100μL/wellで分注し、ブロッキングを行った。培養上清50μLを各ウェルに添加して反応させた。洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼで標識した抗マウスIgGヤギ抗体と反応後、発色剤を添加し、450nmの吸光度を測定した。ヘモシアニンに対する吸光度が0.2以下で、抗原に対する特異的な吸光度を0.2以上有するクローンを陽性として選択した。
[ハイブリドーマの2次スクリーニング]
ヒトα−ANP(ペプチド研究所製)を還元後、カルボキシアミドメチル(CAM)化し、RP−HPLCで精製した。精製したCAM−α−ANPをラクトペルオキシダーゼ法によりヨード125(125I)で標識し、RP−HPLCで精製することにより、1分子の125Iで標識されたペプチドを調製した。以下の反応には、RIA用標準バッファー(RIAバッファー、50 mMリン酸緩衝液、80mM NaCl、25mM EDTA、0.05% NaN3、0.5% N−エチルマレイミド処理済BSA(SIGMA−Aldrich社 A7888)、0.5% Triton X−100、pH7.4)(Katafuchi T, et al., J. Biol. Chem., 278:12046−12054, 2003)を使用した。
ヒトα−ANP(ペプチド研究所製)を還元後、カルボキシアミドメチル(CAM)化し、RP−HPLCで精製した。精製したCAM−α−ANPをラクトペルオキシダーゼ法によりヨード125(125I)で標識し、RP−HPLCで精製することにより、1分子の125Iで標識されたペプチドを調製した。以下の反応には、RIA用標準バッファー(RIAバッファー、50 mMリン酸緩衝液、80mM NaCl、25mM EDTA、0.05% NaN3、0.5% N−エチルマレイミド処理済BSA(SIGMA−Aldrich社 A7888)、0.5% Triton X−100、pH7.4)(Katafuchi T, et al., J. Biol. Chem., 278:12046−12054, 2003)を使用した。
1次スクリーニング陽性クローンの培養上清を,1/10希釈より3倍希釈系列液を各100μL作製し、これに約20,000cpmの125I標識CAM−α−ANP(125I−CAM−α−ANP)を含む溶液100μL、RIAバッファー100μLを添加、撹拌し、4℃で40時間静置した。抗体に結合した125I−CAM−α−ANPの放射活性量をポリエチレングリコール分離法で分離し測定した(Katafuchi T, et al. 同上文献)。具体的には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、50mMリン酸緩衝液、80mM NaCl、0.05% NaN3、pH7.4)を用いて作製した100μLの1% ウシγ−グロブリン(Sigma−Aldrich社 G5009)溶液および500μの23%ポリエチレングリコール(#6000、ナカライテスク社 28254−85)溶液を加え、混合し、氷上で10分間静置した後、遠心分離(4℃、3000rpm、15分間)し、上清を除去した。得られた沈殿の1分間の放射活性をγカウンター(ARC−1000M、Aloka社)にて測定した。希釈された培養上清でも125I−CAM−α−ANPに対する結合能力のあるクローン5種選択した。
[限界希釈法によるモノクローン化]
上記5種のクローンを増殖し、対数増殖期の状態でハイブリドーマを分散させ、培地で希釈後、96穴プレートに播種した。1〜2週間後にハイブリドーマのシングルコロニーの形成が確認された段階で、各ウェルから培養上清をサンプリングし、上述の「ハイブリドーマの1次スクリーニング」に記載した方法に従い、活性を評価した。抗原に対する特異的な吸光度の強いクローンを各3種、合計15種を選択した。
上記5種のクローンを増殖し、対数増殖期の状態でハイブリドーマを分散させ、培地で希釈後、96穴プレートに播種した。1〜2週間後にハイブリドーマのシングルコロニーの形成が確認された段階で、各ウェルから培養上清をサンプリングし、上述の「ハイブリドーマの1次スクリーニング」に記載した方法に従い、活性を評価した。抗原に対する特異的な吸光度の強いクローンを各3種、合計15種を選択した。
[ハイブリドーマの3次スクリーニング]
CAM−α−ANPに加えて、α−ANP、β−ANP(ペプチド研究所製)をそれぞれラクトペルオキシダーゼ法により125Iで標識後、RP−HPLCで精製し、1分子の125Iで標識されたペプチドを調製した(125I−α−ANP、125I−β−ANP)。
CAM−α−ANPに加えて、α−ANP、β−ANP(ペプチド研究所製)をそれぞれラクトペルオキシダーゼ法により125Iで標識後、RP−HPLCで精製し、1分子の125Iで標識されたペプチドを調製した(125I−α−ANP、125I−β−ANP)。
上記5種のクローンより調製した各3種のクローンについて、連続した希釈液を作製し、125I−CAM−α−ANPに対する結合能力を評価し、2次スクリーニングより得られた5種のクローンより得られた各3種のクローンの中で、最も結合能力の高いクローンを選択した。
これら5種について、連続した希釈液を作製し、125I−α−ANP、125I−β−ANPを用いて2次スクリーニングに記載した方法に従い、各ペプチドに対する結合能力を評価した。
次に、通常のRIA法に従い、125I−β−ANP、125I−CAM−α−ANP、125I−α−ANPをトレーサーとして、それぞれについてβ−ANP、α−ANP、CAM−α−ANPの標準曲線あるいは交差活性曲線を作成し、各クローンの特異性、感度を評価した。その結果、β−ANPに対して強い結合活性を有し、α−ANP、CAM−α−ANPとの交差性が少なく、かつRIA法において高感度にβ−ANPを測定できるクローン(#32−3)を選択した。
[モノクローナル抗体#32−3の産生]
腹水採取用にはヌードマウスを使用し、アジュバントとしてプリスタンを腹腔に注射して1週間後のマウスを用いた。選定したクローン(#32−3)を増殖、培養し、PBSにて懸濁し、上記のマウスに1匹当たり約1×106細胞を腹腔に注射した。2週間後ごろになると腹水がたまるので、経過をよく観察して腹水を複数回にわたり回収した。回収する容器には、予め保存用抗凝固剤(ACD液)を添加して凝固を抑制した。遠心により血球成分や不要物を除去し、上清を凍結保存した。
腹水採取用にはヌードマウスを使用し、アジュバントとしてプリスタンを腹腔に注射して1週間後のマウスを用いた。選定したクローン(#32−3)を増殖、培養し、PBSにて懸濁し、上記のマウスに1匹当たり約1×106細胞を腹腔に注射した。2週間後ごろになると腹水がたまるので、経過をよく観察して腹水を複数回にわたり回収した。回収する容器には、予め保存用抗凝固剤(ACD液)を添加して凝固を抑制した。遠心により血球成分や不要物を除去し、上清を凍結保存した。
(2)抗体の精製
[精製モノクローナル抗体#32−3の調製]
腹水の上清画分からのモノクローナル抗体の精製にはAffi Gel Protein A(BioRad社 153−6153)を用いたプロテインA結合アフィニティーカラムを使用した。アフィニティーカラムへのサンプルの結合、洗浄、溶出は製造業者のマニュアルに従った。溶出液を500μLごとに、予め1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)160μLを加えた1.5mL容チューブに回収した。精製モノクローナル抗体を含む画分を、PBS中で4℃、オーバーナイトにて透析した。精製した溶液中のタンパク質量をBCA Protein Assay Kit(Pierce社 23227)を用いて定量した。
[精製モノクローナル抗体#32−3の調製]
腹水の上清画分からのモノクローナル抗体の精製にはAffi Gel Protein A(BioRad社 153−6153)を用いたプロテインA結合アフィニティーカラムを使用した。アフィニティーカラムへのサンプルの結合、洗浄、溶出は製造業者のマニュアルに従った。溶出液を500μLごとに、予め1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)160μLを加えた1.5mL容チューブに回収した。精製モノクローナル抗体を含む画分を、PBS中で4℃、オーバーナイトにて透析した。精製した溶液中のタンパク質量をBCA Protein Assay Kit(Pierce社 23227)を用いて定量した。
[精製ポリクローナル抗体#131−7の調製]
ポリクローナル抗体#131−7は、A. Sasaki, et al. Hypertension 10;308−312, 1987に記載の方法で調製した。得られたウサギ抗血清にキャリアタンパク質として使用したサイログロブリン(Sigma−Aldrich社 T1001、17mg/mL抗血清)およびアジュバント(M. Butyricum、DIFCO社 526−02651、10mg/mL抗血清)を加え、ローテーターにより撹拌しながら4℃、一晩インキュベートした後、遠心分離(4℃、13,000×g、15分間)し、上清を回収した。上清は直ちに上述のプロテインA結合アフィニティーカラムによる精製に供した。アフィニティーカラムへのサンプルの結合、洗浄、溶出は製造業者のマニュアルに従った。溶出液を500μLごとに、予め1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)160μLを加えた1.5mL容チューブに回収した。精製ポリクローナル抗体を含む画分を、PBS中で4℃、一晩、透析した。精製した溶液中のタンパク質量をBCA Protein Assay Kitを用いて定量した。このようにして精製ポリクローナル抗体#131−7を得た。これはヒトα−ANPの13〜17残基目をエピトープとするウサギポリクロ―ナル抗体である(Nagai C, Minamino N., Anal. Biochem., 461:10−16, 2014)。
ポリクローナル抗体#131−7は、A. Sasaki, et al. Hypertension 10;308−312, 1987に記載の方法で調製した。得られたウサギ抗血清にキャリアタンパク質として使用したサイログロブリン(Sigma−Aldrich社 T1001、17mg/mL抗血清)およびアジュバント(M. Butyricum、DIFCO社 526−02651、10mg/mL抗血清)を加え、ローテーターにより撹拌しながら4℃、一晩インキュベートした後、遠心分離(4℃、13,000×g、15分間)し、上清を回収した。上清は直ちに上述のプロテインA結合アフィニティーカラムによる精製に供した。アフィニティーカラムへのサンプルの結合、洗浄、溶出は製造業者のマニュアルに従った。溶出液を500μLごとに、予め1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)160μLを加えた1.5mL容チューブに回収した。精製ポリクローナル抗体を含む画分を、PBS中で4℃、一晩、透析した。精製した溶液中のタンパク質量をBCA Protein Assay Kitを用いて定量した。このようにして精製ポリクローナル抗体#131−7を得た。これはヒトα−ANPの13〜17残基目をエピトープとするウサギポリクロ―ナル抗体である(Nagai C, Minamino N., Anal. Biochem., 461:10−16, 2014)。
(3)モノクローナル抗体の特性
ヒトα−ANPおよびβ−ANPに対する精製モノクローナル抗体#32−3の親和定数はRIA法を用いて算出した。具体的には、RIAバッファーを用いて精製モノクローナル抗体の5倍希釈系列液(200μL)を作製し、試験管内にて125Iで標識したα−ANPおよびβ−ANP(20,000cpm、100μL)と混合し、4℃で40時間インキュベートした。抗体に結合した125I−α−ANPまたは125I−β−ANPの放射活性量を上述のポリエチレングリコール分離法で分離し、測定した。125I−α−ANPまたは125I−β−ANPの結合量が50%となる抗体濃度をKd値として算出したところ、モノクローナル抗体#32−3はヒトα−ANPに対して1.34×10−8M、ヒトβ−ANPに対して1.69×10−11MのKd値を示し、この抗体がβ−ANPを選択的に認識することが実証された。
ヒトα−ANPおよびβ−ANPに対する精製モノクローナル抗体#32−3の親和定数はRIA法を用いて算出した。具体的には、RIAバッファーを用いて精製モノクローナル抗体の5倍希釈系列液(200μL)を作製し、試験管内にて125Iで標識したα−ANPおよびβ−ANP(20,000cpm、100μL)と混合し、4℃で40時間インキュベートした。抗体に結合した125I−α−ANPまたは125I−β−ANPの放射活性量を上述のポリエチレングリコール分離法で分離し、測定した。125I−α−ANPまたは125I−β−ANPの結合量が50%となる抗体濃度をKd値として算出したところ、モノクローナル抗体#32−3はヒトα−ANPに対して1.34×10−8M、ヒトβ−ANPに対して1.69×10−11MのKd値を示し、この抗体がβ−ANPを選択的に認識することが実証された。
(4)サンドイッチ酵素免疫測定法
[実験用試薬等]
・固相化用緩衝液:50mM炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.5)
・PEG化試薬溶液:5μM methyl−PEG12−NHS ester(Thermo Scientific社 22685)、PBS(pH7.4)
・ブロッキング溶液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、2% BlockAce(DSファーマバイオメディカル社 UK−B80)、5% ウマ血清、20% スクロース
・洗浄液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05% Triton X−100、0.05% NaN3
・反応液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.5mM EDTA−2Na、5% BSA、0.05% Triton X−100、500KIU/mL アプロチニン(和光純薬社)、0.05% NaN3
・検出抗体希釈用緩衝液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.4% BlockAce、0.05% NaN3
・化学発光基質:CDP−Star with Emerald II(Applied Biosystems社 T2216)
[ヒト血漿抽出物の調製]
ヒト正常血漿は市販品(EDTA−2Na、コージンバイオ社 12271440)を使用した。血漿抽出物の調製には固相抽出カートリッジ(Sep−Pak C18 Plus、Waters社 WAT020515)を用いた。具体的には、固相抽出カートリッジを5mLの60% アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)溶液にて洗浄し、5mLの0.1%TFA溶液にて平衡化した後、300μLの血漿を添加した。5mLの10% アセトニトリル/0.1% TFA溶液にて2回洗浄した後、6mLの40% アセトニトリル/0.1% TFA溶液にて溶出した。溶出液を濃縮した後、凍結乾燥し、反応液に溶解して測定に用いた。
[実験用試薬等]
・固相化用緩衝液:50mM炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.5)
・PEG化試薬溶液:5μM methyl−PEG12−NHS ester(Thermo Scientific社 22685)、PBS(pH7.4)
・ブロッキング溶液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、2% BlockAce(DSファーマバイオメディカル社 UK−B80)、5% ウマ血清、20% スクロース
・洗浄液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05% Triton X−100、0.05% NaN3
・反応液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.5mM EDTA−2Na、5% BSA、0.05% Triton X−100、500KIU/mL アプロチニン(和光純薬社)、0.05% NaN3
・検出抗体希釈用緩衝液:25mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.4% BlockAce、0.05% NaN3
・化学発光基質:CDP−Star with Emerald II(Applied Biosystems社 T2216)
[ヒト血漿抽出物の調製]
ヒト正常血漿は市販品(EDTA−2Na、コージンバイオ社 12271440)を使用した。血漿抽出物の調製には固相抽出カートリッジ(Sep−Pak C18 Plus、Waters社 WAT020515)を用いた。具体的には、固相抽出カートリッジを5mLの60% アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)溶液にて洗浄し、5mLの0.1%TFA溶液にて平衡化した後、300μLの血漿を添加した。5mLの10% アセトニトリル/0.1% TFA溶液にて2回洗浄した後、6mLの40% アセトニトリル/0.1% TFA溶液にて溶出した。溶出液を濃縮した後、凍結乾燥し、反応液に溶解して測定に用いた。
[組換えヒトγ−ANP(FLAG−proANP)の調製]
FLAG−proANPは、γ−ANP(図1参照)のN末端にFLAGタグ(DYKDDDDK(配列番号1))およびスペーサー配列(GMASGSGSGLVPRGSRSIEGR(配列番号2))を有する155残基のタンパク質である。この組換え体はカイコ蛹発現系を用いて調製した。具体的には、FLAG−proANPを発現させたカイコ蛹を100℃で10分間加熱処理した後、1% CHAPSO/PBS(pH7.4)を添加してホモジナイズし、遠心分離(4℃、20,000×g、10分間)した。得られた上清をAnti DYKDDDDK tag Antibody Beads(和光純薬社 012−22781)を用いて作製した抗FLAG抗体固相化カラムに供し、製造業者のマニュアルに従い溶出した。アフィニティー精製後のFLAG−proANP溶液をさらにゲル濾過クロマトグラフィーカラム(Superdex 75 10/300 GL、 GE healthcare社 17−5174−01)を用いたゲル濾過(30%アセトニトリル/0.1% TFA、流速0.4mL/min)により精製した。ゲル濾過精製後のFLAG−proANP溶液を逆相クロマトグラフィーカラム(Symmetry300 C18、4.6φ×250mm、5μm、Waters社 WAT106160)を用いた逆相HPLC(10〜60%アセトニトリル/0.1% TFAのリニアグラジエント、流速1mL/min)により精製した。得られた精製FLAG−proANPを110℃で22時間の酸加水分解後、アミノ酸分析(L−8500、日立製作所)に供し、純度の確認および定量を行った。
FLAG−proANPは、γ−ANP(図1参照)のN末端にFLAGタグ(DYKDDDDK(配列番号1))およびスペーサー配列(GMASGSGSGLVPRGSRSIEGR(配列番号2))を有する155残基のタンパク質である。この組換え体はカイコ蛹発現系を用いて調製した。具体的には、FLAG−proANPを発現させたカイコ蛹を100℃で10分間加熱処理した後、1% CHAPSO/PBS(pH7.4)を添加してホモジナイズし、遠心分離(4℃、20,000×g、10分間)した。得られた上清をAnti DYKDDDDK tag Antibody Beads(和光純薬社 012−22781)を用いて作製した抗FLAG抗体固相化カラムに供し、製造業者のマニュアルに従い溶出した。アフィニティー精製後のFLAG−proANP溶液をさらにゲル濾過クロマトグラフィーカラム(Superdex 75 10/300 GL、 GE healthcare社 17−5174−01)を用いたゲル濾過(30%アセトニトリル/0.1% TFA、流速0.4mL/min)により精製した。ゲル濾過精製後のFLAG−proANP溶液を逆相クロマトグラフィーカラム(Symmetry300 C18、4.6φ×250mm、5μm、Waters社 WAT106160)を用いた逆相HPLC(10〜60%アセトニトリル/0.1% TFAのリニアグラジエント、流速1mL/min)により精製した。得られた精製FLAG−proANPを110℃で22時間の酸加水分解後、アミノ酸分析(L−8500、日立製作所)に供し、純度の確認および定量を行った。
[アルカリホスファターゼ標識#32−3の調製]
#32−3のアルカリホスファターゼ標識にはAlkaline Phosphatase Labeling Kit−NH2(同仁化学社 L12)を用いた。標識および標識抗体の精製は製造業者のマニュアルに従い行った。
#32−3のアルカリホスファターゼ標識にはAlkaline Phosphatase Labeling Kit−NH2(同仁化学社 L12)を用いた。標識および標識抗体の精製は製造業者のマニュアルに従い行った。
[#131−7固相化プレートの作製]
本CLEIA法では、ヒトα−ANPの13〜17残基目をエピトープとするウサギポリクローナル抗体#131−7(Anal. Biochem., 461;10−16,2014)を固相化抗体として用いた。固相化プレートの作製では、プレートへの非特異的吸着および固相化抗体のFc領域への血漿由来成分の結合を低減するため、従来のCLEIA法と比較して、固相化抗体のFc領域を標的としたポリエチレングリコール修飾(PEG化)を追加した方法(Anal. Biochem., 461;10−16,2014)を採用した。具体的には、固相化用緩衝液に溶解した#131−7(3μg/mL、150μL)を96穴プレート(Fluoro−Nunc Maxi−Sorp、Nunc社 437796)に添加し、4℃で24時間インキュベートした。抗体溶液を除去し、PEG化試薬溶液(100μL)を添加し、室温で30分間インキュベートした。PEG化試薬溶液を除去し、ブロッキング溶液(200μL)を添加し、室温で2時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去した#131−7固相化プレートをデシケーターにより乾燥させ、酸素吸収剤(アズワン社 1−6655−02)およびゼオライト乾燥剤(アズワン社 1−6655−03)と同封して密閉し、使用時まで−20℃にて保存した。
本CLEIA法では、ヒトα−ANPの13〜17残基目をエピトープとするウサギポリクローナル抗体#131−7(Anal. Biochem., 461;10−16,2014)を固相化抗体として用いた。固相化プレートの作製では、プレートへの非特異的吸着および固相化抗体のFc領域への血漿由来成分の結合を低減するため、従来のCLEIA法と比較して、固相化抗体のFc領域を標的としたポリエチレングリコール修飾(PEG化)を追加した方法(Anal. Biochem., 461;10−16,2014)を採用した。具体的には、固相化用緩衝液に溶解した#131−7(3μg/mL、150μL)を96穴プレート(Fluoro−Nunc Maxi−Sorp、Nunc社 437796)に添加し、4℃で24時間インキュベートした。抗体溶液を除去し、PEG化試薬溶液(100μL)を添加し、室温で30分間インキュベートした。PEG化試薬溶液を除去し、ブロッキング溶液(200μL)を添加し、室温で2時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去した#131−7固相化プレートをデシケーターにより乾燥させ、酸素吸収剤(アズワン社 1−6655−02)およびゼオライト乾燥剤(アズワン社 1−6655−03)と同封して密閉し、使用時まで−20℃にて保存した。
[CLEIA法を用いた測定手順]
マイクロプレートウォッシャー(AMW−8R、バイオテック社)を用いて#131−7固相化プレートを洗浄液(350μL)で3回洗浄した。反応液(50μL)を各ウェルに添加した後、標準β−ANP溶液(反応液に溶解した定量済の合成β−ANP溶液、ペプチド研究所)またはヒト血漿抽出物溶液(50μL)を添加し、マイクロプレートシェーカー(N−704、日伸理化社)を用いて振盪撹拌しながら4℃で24時間インキュベートした。上記と同様に3回洗浄した後、検出抗体希釈用緩衝液で0.2ng/mLに希釈したアルカリホスファターゼ標識#32−3溶液(100μL)を添加し、マイクロプレートシェーカーを用いて振盪撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。上記と同様に4回洗浄した後、化学発光基質(100μL)を添加し、室温で20分間インキュベートした。マイクロプレートルミノメーター(SpectraMax L、Molecular Devices社)により1秒間に生ずる発光量を測定した。各試料は異なる2ウェルで個別に測定し、その平均値より定量値を算出した。
マイクロプレートウォッシャー(AMW−8R、バイオテック社)を用いて#131−7固相化プレートを洗浄液(350μL)で3回洗浄した。反応液(50μL)を各ウェルに添加した後、標準β−ANP溶液(反応液に溶解した定量済の合成β−ANP溶液、ペプチド研究所)またはヒト血漿抽出物溶液(50μL)を添加し、マイクロプレートシェーカー(N−704、日伸理化社)を用いて振盪撹拌しながら4℃で24時間インキュベートした。上記と同様に3回洗浄した後、検出抗体希釈用緩衝液で0.2ng/mLに希釈したアルカリホスファターゼ標識#32−3溶液(100μL)を添加し、マイクロプレートシェーカーを用いて振盪撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。上記と同様に4回洗浄した後、化学発光基質(100μL)を添加し、室温で20分間インキュベートした。マイクロプレートルミノメーター(SpectraMax L、Molecular Devices社)により1秒間に生ずる発光量を測定した。各試料は異なる2ウェルで個別に測定し、その平均値より定量値を算出した。
(5)検出感度と再現性
本サンドイッチCLEIA法では、固相化抗体のPEG化によりβ−ANPの標準曲線の直線性が改善し、0.1〜250pMの範囲で直線性を示した(図2参照)。
本サンドイッチCLEIA法では、固相化抗体のPEG化によりβ−ANPの標準曲線の直線性が改善し、0.1〜250pMの範囲で直線性を示した(図2参照)。
検出限界は、試料非添加の20ウェルの平均測定値に標準偏差の2倍を加えた発光強度を、標準曲線を用いて定量することにより算出した。固相化抗体をPEG化しなかった場合の検出限界は1.77pMであったが、PEG化した場合には、0.23pMとなり、感度が7.7倍向上した。この値は、同一の抗α−ANPモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ酵素免疫測定法(特許文献4)において得られる検出限界(0.33pM、算出方法は異なる)を超える値であり、サンドイッチCLEIA法で得られる検出限界としては成績が良いといえる値であった。
再現性の評価として、同一プレートにて同一の試料を測定したintraassay、および、異なるプレートにて同一の試料を測定したinterassayにおける測定値のばらつきを検討した。標準β−ANP溶液およびヒト血漿抽出物のいずれを試料として用いた場合にも、intraassayおよびinterassayにおけるCV値は10%未満であり(表1参照)、サンドイッチCLEIA法では充分な再現性を示した。
本サンドイッチCLEIA法では、検出抗体としてα−ANPに対する親和性が低く、かつβ−ANPに高い親和性を示すモノクローナル抗体、即ちβ−ANPを特異的に認識する抗体を使用することを特徴とする。本CLEIA法における、0.2pM〜1250pMのα−ANP、β−ANP、FLAG−proANP、ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP−32)、ヒトC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP−22)およびヒトγ−ANP(proANP)のN末端断片ペプチド(ヒトproANP1−31+Tyr)の交差反応性を測定した。その結果、β−ANPに対し、BNP−32、CNP−22、およびproANP1−31+Tyrは0.3%以下、α−ANPおよびFLAG−proANPは約1.0%の交差反応性しか示さなかったことから(図3、表2参照)、当該CLEIA法ではβ−ANPを選択的に測定できることが実証された。また、1nMのα−ANPまたはFLAG−proANPを共添加した場合にもβ−ANPの標準曲線には差が見られなかった。この結果から、本CLEIA法では、血漿のようにβ−ANPよりも高濃度のα−ANPやγ−ANPを含む試料においても、α−ANPやγ−ANPの干渉を受けることなく正確にβ−ANPを定量できると考えられる。同一の抗α−ANPモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ酵素免疫測定法(特許文献4)では、100fmol(500pM)以上のα−ANPを共添加した場合にβ−ANPの測定に影響が出ていたことから、本発明を用いたCLEIA法では従来法と比較してβ−ANPの測定選択性が改善したといえる。
Claims (5)
- β−ANPを特異的に認識することを特徴とするモノクローナル抗体。
- β−ANPのジスルフィド結合を含むアミノ酸配列を認識する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
- 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とするβ−ANPの免疫学的測定方法。
- 請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体と、α−ANPを認識する抗体とを用いたサンドイッチ測定法により測定する、請求項4に記載の免疫学的測定方法。
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- 2014-10-21 JP JP2014214103A patent/JP2016079146A/ja active Pending
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