以下、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る顕微鏡システムの外観図である。
第1実施形態に係る顕微鏡システム1は正立顕微鏡である。顕微鏡システム1の本体部4は、ベース部7と、ベース部7の上方に該ベース部7と対向して配置された片持ちアーム10と、ベース部7と片持ちアーム10とを連結する支柱部13とによって構成されている。片持ちアーム10の下面とベース部7の上面とは対向しており、本体部4は図1に示すように側方から見て略コの字形状をしている。片持ちアーム10の上面には鏡筒16が設けられ、鏡筒16には一対の接眼レンズ19が備えられている。片持ちアーム10の下面にはレボルバ22が設けられている。レボルバ22には複数の対物レンズ25が取り付けられている。レボルバ22は電動でも手動でも良いが、観察光路に配置された対物レンズ25の種類を検出するためのセンサ等の装備は備えていない。
ベース部7の上面には、試料28を載置するためのステージ31が設けられている。ステージ31の下部にはコンデンサレンズ34が設けられている。ステージ31はベース部7に設けられた上下動ハンドル37を操作することで上下方向に移動し、これによってステージ31上の試料28の観察面に対物レンズ25の焦点を合わせることができるようになっている。また、ベース部7にはランプハウス40が設けられている。ランプハウス40には光源が内蔵されている。本実施形態では光源としてLED光源(以下、LEDと略記する。)を用いている。ベース部7には光源の光量を調節するための調光ボリューム46が設けられている。光源から発せられた照明光は試料28の表面で反射する。試料28の表面で反射した光は対物レンズ25を通過し、接眼レンズ19に入射する。観察者は接眼レンズ19に入射した光を像として観察する。
図2(a)は、本実施形態に係る顕微鏡システムの照明装置の構成を示すブロック図であり、(b)は当該照明装置の調光制御機能を示すブロック図である。
照明装置は、LED43と、エンコーダ49を備えた調光ボリューム46と、CPU52と、DAコンバータ55と、定電流回路58と、レボルバ22とを備えている。LED43の光量は調光ボリューム46を回転操作することで調節する。調光ボリューム46の回転方向は、図3に示すように、一方をCWとし、他方をCCWとする。エンコーダ49は調光ボリューム46の回転を検知し、パルス信号を出力する。エンコーダ49から出力され、CPU52に入力されるパルス信号は、図4に示すように、90°の位相差を持ったA相およびB相の2つの信号である。CPU52はエンコーダ49からバッファ回路59を介して入力されたA相およびB相のパルス信号から調光ボリューム46の回転方向を判別する。また、入力されたパルス信号を4逓倍し、内部カウンタ61にてパルス信号の周期数(パルス数)をカウントする。周期数のカウントは、調光ボリューム46の回転方向により内部カウンタ61のカウント数をアップまたはダウンさせることで行なう。回転方向がCWであればカウント数をアップし、CCWであればカウント数をダウンする。すなわち、内部カウンタ61のカウント数は、調光ボリューム46の回転量を表している。
CPU52は、内部カウンタ61のカウント数すなわち調光ボリューム46の回転量に基づき、後述する駆動テーブル64を参照して調光ボリューム46の回転量に対応する制御信号をDAコンバータ55へ出力する。CPU52からDAコンバータ55へ制御信号が出力されることにより、バッファ回路62を介して定電流回路58に調光ボリューム46の回転量に対応する大きさの電流が流れる。定電流回路58に流れる電流はLED43の駆動電流である。すなわち、定電流回路58に流れる電流の大きさと同じ大きさの電流がLED43に流れる。従って、定電流回路58に流れる電流の値によりLED43の光量が調節される。このように、CPU52は内蔵する駆動テーブル64を参照し、DAコンバータ55を介して定電流回路58に流れる電流を変化させることでLED43の光量を制御している。
本実施形態に係る顕微鏡システム1では、対物レンズ25の倍率は、4倍、10倍、20倍、40倍、および100倍の5タイプが用意され、これらがレボルバ22に取り付けられるようになっている。接眼レンズ19で観察される像は、照明光が通過する対物レンズ25の倍率によってその明るさが異なり、対物レンズ25の倍率が低ければ明るく、高倍率であれば暗くなる。言い換えると、対物レンズ25の倍率が低ければ視野内は明るく、高倍率であれば暗くなる。従って観察光路に配置される対物レンズ25の倍率が異なれば、観察に必要な最適光量が異なる。
図5(a)は、本実施形態に係る顕微鏡システム1の接眼レンズ19に照度計を取り付け、定電流回路58に流れる電流すなわちLED43の駆動電流を変化させ、このときの電流変化に対するLED43の照度の変化を対物レンズ25ごとに示したグラフである。図5(a)に示すように、各グラフの傾きは異なっている。つまり、倍率によってLED43の駆動電流に対する照度が異なっている。明るさが一番明るい4倍の対物レンズ25を基準とし、これより高倍になるに従い照度の傾きが緩くなり明るさは暗くなる。すなわち、LED43の電流変化に対する照度変化は、対物レンズ25が高倍になるに従い小さくなっている。
ここで本実施形態の光源として用いたLED43は、定格電流が350mAであり、定格電流を流した時の4倍の対物レンズ25における接眼レンズ19の位置での照度を800lxとする。一般に、視野内が明るいほど試料28の見え方は顕著であり、LED43の光量を調節するのに必要な電流を変化させるための分解能(以下、電流を変化させるための分解能を「電流変化の分解能」と表す。)を細かくしないと調光ボリューム46の操作時に明るさが階段状に変化し、操作性を損なってしまう。本実施形態に係る顕微鏡システム1において、LED43の光量を最小から最大まで調節するのに必要な電流変化の分解能が14bitとすると、CPU52がLED43の光量を最小から最大まで調節するための駆動テーブル64は16384のステップ数(ステップ0〜ステップ16383)が必要となり、DAコンバータ55の分解能(入力bit数)も14bitすなわち16384のステップ数(ステップ0〜ステップ16383)が必要となる。なお、1ステップ当たりの電流変化量は約0.02mAである。
この場合においてLED43の光量を最大にするには、調光ボリューム46をCW方向に最大に回転させる。CPU52はエンコーダ49から入力されるパルス数から調光ボリューム46の回転量をカウントし、駆動テーブル64を参照して調光ボリューム46の回転量に対応する制御信号をDAコンバータ55へ出力する。この場合、CPU52からDAコンバータ55へ出力される制御信号は、DAコンバータ55の値が0から16383までを取るように信号を出力する。つまりDAコンバータ55の入力ステップ数は、ステップ0からステップ16383までの16384となる。なお、このときのエンコーダ49からCPU52への入力パルス数は、16383/4=4095.75パルスとなる。このとき256P/Rのエンコーダ49を選定したとしても、調光ボリューム46を最小から最大まで操作するのに、4095.75/256≒16回転必要となり、操作性は良くない。
なお、以後本明細書においては、「LED43の光量を調節する」と「LED43を駆動する」とは同じ意味内容を表している。従って、「LED43の光量を調節するための電流変化の分解能」を「LED43を駆動する電流変化の分解能」と表現し(ただし、「LED43の駆動分解能」とする場合もある。)、「LED43の光量を調節するためのテーブル64」を「LED43の駆動テーブル64」と表現する場合もある。
ところで、実際の観察においては、LED43が高輝度で明るさが充分足りている場合、例えば明視野4倍観察においては、ある一定以上の照度では眩しく感じ、試料28を直視できない。本実施形態では、この一定の照度の値を40lxとしている(図5(a)参照)。つまり、照度が40lxを超えると、それ以上明るくなるようにLED43に電流を多く流しても、眩しくて試料28を直視できないことに変わりがない。図5(a)に示すように、この場合に必要となるLED43の駆動電流は、最大で約16mAである。そしてこの状態で、CPU52から出力され、DAコンバータ55へ入力される制御信号の最大値をステップ800、つまりDAコンバータ55のステップ1からステップ800までの範囲のステップ全てに入力される信号とすると、エンコーダ49からの入力パルス数は800/4=200パルスとなる。その結果、256P/Rのエンコーダ49を用いたとすると、調光ボリューム46は、200/256≒0.78回転となり、1回転せずに最小から最大光量まで調節することができることとなる。
同様に、10の倍対物レンズ25の場合、照度40lxの状態でCPU52からDAコンバータ55へ出力される制御信号の最大値をステップ930とすると、入力パルス数は930/4=232.5パルスとなる。その結果、256P/Rのエンコーダ49を用いたとすると、調光ボリューム46は、232.5/256≒0.91回転となり、最小から1回転弱で最大光量まで調節することができる。20倍の対物レンズ25の場合では、照度40lxの状態でCPU52からDAコンバータ55へ出力される制御信号の最大値をステップ1500とすると、入力パルス数は1500/4=375パルスとなる。その結果、256P/Rのエンコーダ49を用いたとすると、調光ボリューム46は、375/256≒1.46回転となり、最小から約1回転半で最大光量まで調節することができる。
このように低倍側の対物レンズ25において操作性を良くすれば、全体としては操作性の向上を図ることができる。
ところが、対物レンズ25の倍率が高くなるに従い接眼部での明るさは暗くなるので、対物レンズ25の倍率がさらに高くなれば試料28の観察に必要な光量をさらに増やす必要がある。
例えば100倍の対物レンズ25の場合、LED43に駆動電流である220mAの電流を流して接眼部での照度を40lxの光量にすることが出来る(図5(a)参照)。駆動電流である220mAを流した状態を考えると、CPU52からDAコンバータ55へ出力される制御信号はステップ10300、つまりDAコンバータ55のステップ1からステップ10300までの全てのステップに入力される信号となる。そうすると、エンコーダ49からの入力パルス数は10300/4=2575パルスとなる。このとき256P/Rのエンコーダ49を選定したとしても、調光ボリューム46を最大光量となるまで操作するのに、2575/256≒10.06回転必要となる。
このように、照度40lxを接眼部での照度の上限と考え、CPU52からDAコンバータ55へ出力される制御信号のステップ数を上記のように設定すると、低倍率の対物レンズ25であれば調光ボリューム46での光量の調節は少ない回転数で光量を最大(この場合40lx)まで調節できるが、高倍率である100倍の対物レンズ25で光量を増やそうとすると回転数が多くなり、高倍側の操作性が良くない。従って高倍側ではさらに操作性を良くする余地がある。
そこで本実施形態においては、各対物レンズ25において、LED43の電流変化に対する照度変化、すなわち図5(a)の各グラフの傾きに着目した。上述したように、明るさが一番明るい4倍の対物レンズ25を基準とし、高倍になるに従い照度の傾きが緩くなり明るさは暗くなっている。つまり電流変化量に対する照度の変化量は小さくなっている。このことより、高倍側ではLED43を駆動する電流変化の分解能を粗くすることが可能である。つまり電流変化量を大きくしても照度は低倍側ほど大きくは変化しない。高倍の対物レンズ25での観察では、LED43の駆動分解能を粗くしても視野内の光量は階段状に変化せず、操作感に違和感も生じないので操作性を損なうことはない。図5(a)の各グラフの傾きより、対物レンズ25がより高倍になれば、LED43の駆動分解能をより粗くすることが可能となる。以下にLED43の駆動分解能をどの程度粗くするかについて説明する。なお、LED43の駆動分解能を粗くすれば、これに対応してDAコンバータ55の分解能(入力bit数)も間引くことができる。
図5(b)は、図5(a)中の4倍の対物レンズ25と20倍の対物レンズ25の照度変化量を抽出して示す図である。また、図6(a)は、4倍の対物レンズ25における所定の電流変化量に対する照度変化量を1としたときの他の対物レンズ25における同じ電流変化量に対する照度変化量を示している。
図5(b)および図6(a)を参照して説明すると、4倍の対物レンズ25の所定の電流変化量に対する照度変化量を1としたときに、20倍の対物レンズ25では照度変化量は0.5である。つまり、4倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の1ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量と、20倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の2ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量とは等しい。従って、LED43の必要な駆動分解能は、4倍の対物レンズ25では14bitなので、20倍の対物レンズ25では13bitとなる。
同様に考えると、10倍の対物レンズ25の照度変化量を0.8として計算すると、4倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の1ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量と、10倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の1.25ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量とは等しい。従って、LED43の必要な駆動分解能を4倍の対物レンズ25と同様の14bitとする。また、40倍の対物レンズ25の照度変化量を0.25とすると、4倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の1ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量と、40倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の4ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量とは等しい。従って、LED43の必要な駆動分解能を12bitとする。100倍の対物レンズ25の照度変化量を0.06とすると、4倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の1ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量と、100倍の対物レンズ25におけるLED43の駆動分解能の約16.6ステップ分に対応する電流変化量に対する照度変化量と等しい。従って、LED43の必要な駆動分解能を10bitとする。
図6(b)に各対物レンズ25におけるLED43の必要な駆動分解能を示す。このように、高倍になるにつれてLED43の必要な駆動分解能すなわちbit数を間引くことができる。各対物レンズ25において駆動分解能を間引くことができれば、これに対応してDAコンバータ55の分解能(入力bit数)も間引くことができる。従って各対物レンズ25に対応するDAコンバータ55の必要な分解能も図6(b)に示す値と同じである。
そして各対物レンズ25において、CPU52からDAコンバータ55へ出力される制御信号のステップ数、すなわちDAコンバータ55の入力ステップ数の最大設定値をそれぞれ図6(c)に示す値とする。そうすると、LED43の駆動分解能を間引いた後の実際に必要となるDAコンバータ55の入力ステップ数は、次の通りとなる。4倍の対物レンズ25に対応するDAコンバータ55の入力ステップ数は800、すなわちDAコンバータ55のステップ1からステップ800までのステップに入力される信号に対応する数であり、LED43の必要な駆動分解能は14bitなので、実際必要となる入力ステップ数はそのまま800である。10倍の対物レンズ25におけるDAコンバータ55の入力ステップ数は、DAコンバータ55のステップ801からステップ930までのステップに入力される信号に対応する数であり、LED43の必要な駆動分解能は14bitなので、10倍の対物レンズ25に対応する実際必要なステップ数は930−800=130となる。20倍の対物レンズ25におけるDAコンバータ55の入力ステップ数は、DAコンバータ55のステップ931からステップ1500までのステップに入力される信号に対応する数であり、LED43の必要な駆動分解能は13bitなので、20倍の対物レンズ25に対応する実際必要なステップ数は(1500−930)/2=285となる。40倍の対物レンズ25におけるDAコンバータ55の入力ステップ数は、DAコンバータ55のステップ1501からステップ2500までのステップに入力される信号に対応する数であり、LED43の必要な駆動分解能は12bitなので、40倍の対物レンズ25に対応する実際必要なステップ数は(2500−1500)/4=250となる。100倍の対物レンズ25におけるDAコンバータ55の入力ステップ数は、DAコンバータ55のステップ2501からステップ10300までのステップに入力される信号に対応する数であり、LED43の必要な駆動分解能は10bitなので、100倍の対物レンズ25に対応する実際必要なステップ数は(10300−2500)/16≒488となる。なお、本実施形態においては、実際必要となるステップ数を求める際、上記各式のように、DAコンバータ55の入力ステップ数を図6(a)に示す照度変化量の逆数(小数点以下は無視)で割っている。
また、これらのDAコンバータ55の入力ステップ数と実際必要となるステップ数との関係を示したのが図7である。図7において、上段の数は対物レンズ25の倍率ごとに設定したDAコンバータ55の入力ステップ数の最大設定値を示している。中段のbit数は対物レンズ25の倍率ごとに必要となるLED43の駆動分解能を示している。下段の数および数式はLED43の駆動分解能を間引いた後の実際に必要となるDAコンバータ55の入力ステップ数を示している。
以上より、本実施形態に係る顕微鏡システム1において、CPU52がLED43の光量を変化させるときに参照する駆動テーブル64は次のような構成となる。DAコンバータ55のステップ1からステップ10300までの全範囲を、ステップ1からステップ930までの第1範囲と、ステップ931からステップ1500までの第2範囲と、ステップ1501からステップ2500までの第3範囲と、ステップ2501からステップ10300までの第4範囲との4つの範囲に区分し、DAコンバータ55に入力される制御信号のステップ数を、第1範囲ではLED43の駆動分解能を14bitとして演算し、第2範囲ではLED43の駆動分解能を13bitとして演算し、第3範囲ではLED43の駆動分解能を12bitとして演算し、第4範囲ではLED43の駆動分解能を10bitとして演算するようになっている。本実施形態では、LED43の光量を調節するために、このようにプログラムされた駆動テーブル64が予めCPU52に内蔵されている。
そして、これらの各対物レンズ25に対応する実際必要となるDAコンバータ55の入力ステップ数から入力パルス数、および256P/Rのエンコーダ49を用いたときの調光ボリューム46の回転パルス数を求めると、次のようになる。4倍の対物レンズ25における入力パルス数は、800/4=200パルスで、調光ボリューム46の回転数は、200/256≒0.78回転となる。10倍の対物レンズ25における入力パルス数は、130/4=32.5パルスで、調光ボリューム46の回転数は、32.5/256≒0.13回転となる。つまり、駆動分解能が14bitに対応する部分は、合計で232.5パルスであり、調光ボリューム46の回転数は約0.91回転である。また、20倍の対物レンズ25における入力パルス数は、285/4=71.25パルスで、調光ボリューム46の回転数は、71.25/256≒0.28回転となる。40倍の対物レンズ25における入力パルス数は、250/4=62.5パルスで、調光ボリューム46の回転数は、62.5/256≒0.24回転となる。また、100倍の対物レンズ25における入力パルス数は、488/4=122パルスで、調光ボリューム46の回転数は、122/256≒0.48回転となる。
従って、トータルの必要なステップ数は、上記式および図7より、800+130+285+250+488=1953となる。また、必要なエンコーダ49のパルス数は、200+32.5+71.25+62.5+122=488.25パルスである。よって、256P/Rのエンコーダ49を用いたとすると、調光ボリューム46は、0.78+0.13+0.28+0.24+0.48=1.91回転となり、低倍から高倍まで2回転弱で光量を操作可能となり、操作性を向上させることができる。
以下に具体的な操作例を示す。まず4倍の対物レンズ25を装着した状態で調光ボリューム46を最小の状態からCW方向に約0.78回転させる。するとこの範囲は4倍の対物レンズ25に適した分解能でLED43が駆動されるので、観察者にとって違和感なく、つまり明るさが階段状に変化することなくLED43の光量が調光ボリューム46の回転量に応じて増加し、照度が40lxに達する。この状態で4倍の対物レンズ25から10倍の対物レンズ25に切り替える。すると、倍率が高くなったので観察視野は暗くなる。そこで調光ボリューム46をさらにCW方向に回転操作して光量を増加する。10倍の対物レンズ25に交換したときの状態から調光ボリューム46を約0.13回転(すなわち最小の状態から約0.91回転)させる。するとこの範囲は10倍の対物レンズ25に適した分解能でLED43が駆動されるので、観察者にとって違和感なくLED43の光量が調光ボリューム46の回転量に応じて増加し、視野の照度が40lxに達する。この状態でさらに20倍の対物レンズ25に切り替えて調光ボリューム46を約0.28回転(すなわち最小の状態から約1.19回転)させる。するとこの範囲は20倍の対物レンズ25に適した分解能でLED43が駆動されるので、観察者にとって違和感なくLED43の光量が調光ボリューム46の回転量に応じて増加し、視野の照度が40lxに達する。
以下同様に、40倍の対物レンズ25に切り替えて調光ボリューム46をさらに約0.24回転(すなわち最小の状態から約1.43回転)させ、100倍の対物レンズ25に切り替えて調光ボリューム46をさらに約0.48回転(すなわち最小の状態から約1.91回転)させて光量を増加させる。以上明るさが顕著な明視野観察に関して述べているが、他の観察法では照度変化は緩くなりLED43の定格電流まで使用したい。例えば、位相差観察においては照度の傾きが更に緩くなりこの場合定格350mAを流したとしても照度は40lxには達しない。
明視野観察での100倍対物レンズ25の照度変化よりも位相差観察では照度変化が更に緩やかであるので、これを考慮し回転量を計算すると図7より次のようになる。
LED43の定格電流における入力パルス数は、868/4=217パルスで、調光ボリューム46の回転数は、217/256≒0.85回転となる。
LED43の最小から最大光量を得るには調光ボリューム46を、最小の状態から約2.28回転させて光量を増加させることが出来る。上記のようにLED43を定格電流まで駆動させた場合でもそれぞれの倍率に適した分解能でLED43が駆動されるので、調光ボリューム46の回転量に応じて違和感なく光量を増加させることができる。このように、本実施形態によれば、各対物レンズ25において調光ボリューム46の回転数を少なく、かつ観察者に違和感を与えることなく光量を増加させることができる。
本実施形態においては、観察光路に配置された対物レンズ25の種類を検出するための装備は備えていないので、対物レンズ25を交換する際、観察光路に配置された対物レンズ25の倍率は観察者が自身で認識する。上記のようにプログラムされた駆動テーブル64を備えていれば、試料28の観察中に対物レンズ25を切り替えても、調光ボリューム46の操作性を損なうことなく新たに観察光路に配置された対物レンズ25の調光を行なうことができる。
このように本実施形態に係る顕微鏡システム1は、上述した駆動テーブル64が予めCPU52に内蔵されているので、ユーザーが光量調節に関して様々な情報を入力あるいは設定するための操作を省くことができる。さらに、レボルバ22に装着されたどの対物レンズ25を用いる場合であっても、調光時に調光ボリューム46を数多く回転させる必要がなく、操作性に優れたものとなっている。
次に、本実施形態に係る顕微鏡システム1の調光制御の動作について説明する。図8は、本実施形態に係る顕微鏡システム1における調光制御のフロー図である。
まず顕微鏡システム1に電源を投入する(ステップS1001)。顕微鏡システム1の電源が投入されている状態で調光ボリューム46が回転操作されると、CPU52へエンコーダ49の回転パルスが入力される。エンコーダ49から出力され、CPU52へ入力されるパルスは、図4に示すように、90°の位相差を持ったA相およびB相の2つの信号である。CPU52は入力されたA相およびB相の信号より調光ボリューム46の回転方向を判別する(ステップS1002)。ステップS1003で調光ボリューム46の回転方向がCWであればステップS1004に進んで内部カウンタ61のカウント数をアップする。一方、ステップS1003で調光ボリューム46の回転方向がCCWであればステップS1005に進んで内部カウンタ61のカウント数をダウンする。そして調光ボリューム46の回転量に基づき、駆動テーブル64を参照して調光ボリューム46の回転量に対応する制御信号をDAコンバータ55へ出力する(ステップS1006)。そして定電流回路58に調光ボリューム46の回転量に対応する大きさの電流が流れ、上述したようにLED43の光量が調節される。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態に係る顕微鏡システム201の照明装置の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る顕微鏡システム201の構成は、第1実施形態と略同様であり、同じ構成については同じ符号を用いて説明する。
本実施形態に係る顕微鏡システム201は、第1実施形態の顕微鏡システム1の構成に加えて、観察光路に配置された対物レンズ25の種類を検知するための構成を備えている。レボルバ22の対物レンズ25を装着するための各装着部には、番地情報を示すためのマグネット(図示省略)が設けられ、各装着部の番地をマグネットの配置で表している。これらの番地はホールICを用いたアドレス基板67で読み出し、このアドレス基板67からの信号がCPU52の番地判別回路70に入力される。これによりCPU52は観察光路に現在配置されている番地を識別する。本実施形態においては、観察者はレボルバ22の各番地へ対物レンズ25を取り付け、その番地情報を操作部(図示省略)よりCPU52に入力する。これによりCPU52は現在観察光路に配置されている対物レンズ25を識別することができる。
第1実施形態においては、図5(a)の各グラフの傾きに着目して、各対物レンズ25においてLED43を駆動する電流変化の分解能を最適にする駆動テーブル64を構成した。ところで、第1実施形態における駆動テーブル64を用いても、各対物レンズ25の光量の低い部分、例えば図5(a)における駆動電流が16mAより小さい領域は、対物レンズ25の倍率にかかわらず14bitの分解能でLED43の駆動を行なっている。しかし、第1実施形態で示したように、20倍以上の対物レンズ25にあっては、LED43の駆動分解能は14bitである必要はない(図6(b)参照)。例えば20倍の対物レンズ25では13bitの駆動分解能で良い。そうすると、20倍の対物レンズ25におけるDAコンバータ55の入力ステップ数の最大設定値を図6(c)に示すように1500としても、実際必要となるステップ数は1500/2=750ステップとなる。その結果、入力パルス数は750/4=187.5パルスとなり、調光ボリューム46の回転数は、187.5/256≒0.73回転となる。その結果、最小から最大(この場合照度40lx)まで0.73回転となり、一回転以内で操作することができるようになる。
同様に、図6(b)および図6(c)を参照すると、40倍の対物レンズ25においてはLED43の駆動分解能は12bitなので、実際必要となるステップ数は2500/4=625ステップとなる。その結果、入力パルス数は625/4=156.25パルスとなり、調光ボリューム46の回転数は、156.25/256≒0.61回転となる。100倍の対物レンズ25においてはLED43の駆動分解能は10bitなので、実際必要となるステップ数は10300/16=643.75ステップとなる。その結果、入力パルス数は643.75/4=160.9375パルスとなり、調光ボリューム46の回転数は、160.9375/256≒0.63回転となる。
以上より、観察光路に配置された対物レンズ25の倍率が識別できれば、その対物レンズ25で観察する際の調光ボリューム46の回転数をさらに少なくすることができる。そこで本実施形態に係る顕微鏡システム201において、CPU52がLED43の光量を変化させるときに参照する駆動テーブル264は次のような構成となる。DAコンバータ55のステップ1〜ステップ10300の全範囲について、ステップ1からステップ930までの第1範囲と、ステップ1からステップ1500までの第2範囲と、ステップ1からステップ2500までの第3範囲と、ステップ1からステップ10300までの第4範囲との4つの範囲に分類し、DAコンバータ55に入力される制御信号のステップ数を、観察光路に配置された対物レンズ25の倍率が4倍または10倍であれば第1範囲を適用してLED43の駆動分解能を14bitとして演算し、対物レンズ25の倍率が20倍であれば第2範囲を適用してLED43の駆動分解能を13bitとして演算し、対物レンズ25の倍率が40倍であれば第3範囲を適用してLED43の駆動分解能を12bitとして演算し、対物レンズ25の倍率が100倍であれば第4範囲を適用してLED43の駆動分解能を10bitとして演算するようになっている。
上記は明視野観察を例にしているが、他の観察でも観察法をCPUへ入力しCPUが観察情報を持つことにより最適な駆動テーブルとすることが出来る。例えば位相差観察を例にすれば、図7より、全範囲で10bitで演算すれば良い。この時、LED43の定格電流における入力パルス数は、1023.9375/4≒256パルスで、調光ボリューム46の回転数は、256/256=1回転となる。
本実施形態では、LED43の光量を調節するために、このようにプログラムされた駆動テーブル264が予めCPU52に内蔵されている。従ってユーザーは、光量調節に関して、レボルバ22へ取り付けた対物レンズ25の番地情報をCPU52に入力する以外は、入力あるいは設定操作を省くことができる。さらに、レボルバ22のどの対物レンズ25を用いる場合であっても、調光時に調光ボリューム46を数多く回転させる必要がなく、操作性に優れたものとなっている。
次に、本実施形態に係る顕微鏡システム201の調光制御の動作について説明する。図10は、本実施形態に係る顕微鏡システム201における調光制御のフロー図である。
まず顕微鏡システム201に電源を投入する(ステップS2001)。その後観察者は、操作部(図示省略)より、レボルバ22へ取り付けた対物レンズ25の番地情報をCPU52に入力する(ステップS2002)。顕微鏡システム201の電源が投入されている状態で調光ボリューム46が回転操作されると、CPU52へエンコーダ49の回転パルスが入力される。エンコーダ49から出力され、CPU52へ入力されるパルスは、図4に示すように、90°の位相差を持ったA相およびB相の2つの信号である。CPU52は入力されたA相およびB相の信号より調光ボリューム46の回転方向を判別する(ステップS2003)。ステップS2004で調光ボリューム46の回転方向がCWであればステップS2005に進んで内部カウンタ61のカウント数をアップする。一方、ステップS2004で調光ボリューム46の回転方向がCCWであればステップS2006に進んで内部カウンタ61のカウント数をダウンする。CPU52はアドレス基板67が読み出したアドレス信号から観察光路に配置された対物レンズ25を判別する(ステップS2007)。そして判別した対物レンズ25の倍率および調光ボリューム46の回転量に基づき、駆動テーブル264を参照して調光ボリューム46の回転量に対応する制御信号をDAコンバータ55へ出力する(ステップS2008)。そして定電流回路58に調光ボリューム46の回転量に対応する大きさの電流が流れ、LED43の光量が調節される。
以上で各実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されず適宜変更が可能である。
(請求項1)
観察試料を照明するための光源と、
前記光源の光量を調節するための光量調節手段と、
前記光量調節手段の操作量を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された前記光量調節手段の前記操作量に応じて、前記光量調節手段による前記光量の調節量を変化させる制御手段とを備え、
前記光量の前記調節量は、前記光源の駆動電流を変化させるための分解能であり、前記分解能は、倍率の異なる対物レンズごとの、前記光源の駆動電流の所定の変化量に対する接眼部での照度変化量に基づいて設定されていることを特徴とする顕微鏡システム。
(請求項2)
前記光量の前記調節量は、対物レンズの倍率に応じて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
(請求項3)
前記光源の駆動電流を変化させるための前記分解能は、最も倍率の低い前記対物レンズを用いる場合に比べて、最も倍率の高い前記対物レンズを用いる場合のほうが粗く設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡システム。
(請求項4)
前記顕微鏡システムは、前記光源としてLED光源と、
前記LED光源の駆動分解能と前記光量調節手段の調節情報との関係を予め記憶した記憶部とを備え、
前記制御手段は前記記憶部に記憶された前記調節情報に基づいて前記LED光源の光量調節を行なうことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の顕微鏡システム。
(請求項5)
観察試料を照明するための光源と、
前記光源の光量を調節するための光量調節手段と、
前記光量調節手段の操作量を検出する検出手段と、
前記光量の調節を制御する制御手段とを備えた顕微鏡システムを制御するプログラムであって、
前記光量調節手段による前記光量の調節量は、前記光源の駆動電流を変化させるための分解能であり、前記分解能は、倍率の異なる対物レンズごとの、前記光源の駆動電流の所定の変化量に対する接眼部での照度変化量に基づいて設定されており、
前記検出手段で検出された前記光量調節手段の前記操作量に応じて、前記光量調節手段による前記光量の調節量を変化させる制御を実行することを特徴とするプログラム。