JP2016074762A - 固形マーカーとこれを含む塗装具 - Google Patents

固形マーカーとこれを含む塗装具 Download PDF

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Abstract

【課題】被塗装面に塗装する際に塗りかすが生じず、特に、屋外の被塗装面の塗装に適し、大面積の被塗装面の塗装にも適する固形マーカーを提供する。
【解決手段】本発明によれば、有機溶剤、着色剤、ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類、ゲル化助剤及び樹脂を含む固形マーカーにおいて、上記ゲル化剤を2〜20重量%の範囲で含むと共に、上記ゲル化助剤がフェノール基を有する化合物とピペリジン基を有する化合物の組み合わせであって、上記フェノール基を有する化合物を0.1〜5重量%の範囲で含み、上記ピペリジン基を有する化合物を0.1〜4重量%の範囲で含むことを特徴とする固形マーカーが提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は固形マーカーに関し、特に、傾斜していたり、場合によっては、垂直の被塗装面や垂直に近く傾斜している被塗装面に塗装を施す際に塗りかすが生じず、従って、塗膜からの塗りかすの剥落がなく、例えば、屋外の被塗物の塗装に適する固形マーカーに関する。
更に、本発明は、そのような固形マーカーを容器の先端の開口から露出自在に容器内に収容した簡便な塗装具に関する。
屋外にある高層構造物の一部を塗料を用いて塗装する場合、被塗装面が垂直又はそれに近く傾斜しているような場合には、被塗装面で液垂れが起こったり、被塗装面から落下したりすることがあるほか、強風によって塗料が飛散することもある。
高所における塗装の具体的な例として、高圧線用鉄塔における回線識別塗装を挙げることができる。即ち、高圧線用鉄塔には、通常、複数の高圧回線が架設されており、例えば、その複数の回線のうち、特定の回線のみを送電停止し、その他の回線を送電状態に保ちながら、回線を構成する電線や、また、電線を支持する鉄塔部材や碍子を点検・修理することがある。
従来、このような点検・修理の作業に従事する作業者は、いずれの回線が送電中の回線であり、いずれの回線が停電中の回線であるかは、その回線を支持する鉄塔部材やその近傍の鉄塔部材に色分けして施した塗装によって識別している。このような送電状態の回線と停電中の回線を区別するために、その回線やその近傍の部材を支持する鉄塔部材に直接に色分けして施した塗装が回線識別塗装である。
このような回線識別塗装は、高圧線用鉄塔において高圧回線が架設されている高所にあって、日光や風雨に曝されて、塗装が短期間に退色したり、変色したりするので、頻繁に塗装を行う必要があるが、回線識別塗装自体が危険で煩瑣な作業であるうえに、高圧線用鉄塔が市街地に建造されているような場合には、高所で回線識別塗装を行うに際して、前述したように、塗料が飛散したり、地上に落下したりすれば、地域に環境問題を生じさせるおそれもある。
一方、従来、塗料に代わる固形の塗装材料として、クレヨンを代表例とする固形マーカーが例えば、固形ペンキ等として知られており、特に、着色剤、有機溶剤、樹脂及びゲル化剤を主成分としてなるものがよく知られている。一例を挙げれば、例えば、ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類と樹脂と着色剤を有機溶剤に溶解又は分散させた後、冷却し、固化させてなるクレヨンが知られている(特許文献1及び2参照)。
その後、近年において、安全性の基準が厳しくなっていることから、グリコールモノアルキルエーテル系有機溶剤を用いたクレヨンが提案されており(特許文献3参照)、また、厳しい環境下や種々の材質の被塗装面への塗装性の改善を図ったクレヨンも提案されている(特許文献4参照)。
しかし、従来の固形マーカー、即ち、クレヨンは、マーキングを主たる用途としており、比較的小面積の描画面に用いられるものであり、屋外において、特に、垂直又はそれに近く傾斜しているような被塗装面への塗装の用途は考慮されておらず、従って、上述したように、垂直又はそれに近く傾斜している被塗装面に塗装を施すときは、粉体状の塗りかすが生じ、その塗りかすが被塗装面から剥落して飛散すれば、塗料の被塗装面からの落下と同じ問題が生じる。
特公昭54−23619号公報 特公昭55−41716号公報 特開平11−209679号公報 特開2006−274246号公報
本発明は、塗料に代わる固形マーカーにおける上述した問題を解決するためになされたものであって、被塗装面に塗装する際に塗りかすが生じない固形マーカーを提供することを目的とする
本発明によれば、有機溶剤、着色剤、ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類、ゲル化助剤及び樹脂を含む固形マーカーにおいて、上記ゲル化剤を2〜20重量%の範囲で含むと共に、上記ゲル化助剤がフェノール基を有する化合物とピペリジン基を有する化合物の組み合わせであって、上記フェノール基を有する化合物を0.1〜5重量%の範囲で含み、上記ピペリジン基を有する化合物を0.1〜4重量%の範囲で含むことを特徴とする固形マーカーが提供される。
本発明によれば、上記固形マーカーは、その形状において特に限定されるものではないが、例えば、概ね、円柱状や角柱状であってよいが、固形マーカーの先端部を被塗装面に押し付け、固形マーカーを塗布して、被塗装面を塗装する際に、固形マーカーの塗布が被塗装面において、固形マーカーの幅方向に均一であるように、四角柱状、即ち、ほぼ直方体形状を有するものが好ましい。
更に、本発明によれば、上記固形マーカーを含む塗装具であって、先端部に開口を有し、後端部に後端面を有する筒体容器と、この筒体容器内に収容された上記固形マーカーを含み、上記容器の後端面は容器内の固形マーカーを容器の先端部の方向に押して移動させる挿入体のための貫通孔を有し、上記固形マーカーがその先端部が上記開口から露出自在に上記筒体容器内に収容されていることを特徴とする塗装具が提供される。
本発明による固形マーカーは、有機溶剤、ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類、ゲル化助剤及び樹脂を含む固形マーカーにおいて、上記ゲル化助剤としてフェノール基を有する化合物とピペリジン基を有する化合物の組み合わせを含むと共に、上記フェノール基を有する化合物と上記ピペリジン基を有する化合物をそれぞれ所定量含み、かくして、このような固形マーカーは被塗装面を塗装する際に塗りかすが生じず、従って、前述したように、屋外の高所の被塗装面の塗装に好適に用いることができる。
本発明による固形マーカーを備えた使用状態にある塗装具の一例を先端側から見た斜視図である。 上記塗装具を後端側から見た斜視図である。 上記塗装具の長手方向に沿う部分断面図である。 上記塗装具の未使用状態の長手方向に沿う部分断面図である。
本発明による固形マーカーは、有機溶剤、着色剤、ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類、ゲル化助剤及び樹脂を含む固形マーカーにおいて、上記ゲル化剤を2〜20重量%の範囲で含むと共に、上記ゲル化助剤がフェノール基を有する化合物とピペリジン基を有する化合物の組み合わせであって、上記フェノール基を有する化合物を0.1〜5重量%の範囲で含み、上記ピペリジン基を有する化合物を0.1〜4重量%の範囲で含むものである。
本発明による固形マーカーにおいて用いられる有機溶剤は、特に限定されるものではないが、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類及びグリコールエーテルエステル類よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。このような好ましい有機溶剤の具体例としては、アルコール類として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等を挙げることができ、グリコール類として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等を挙げることができ、グリコールエーテル類として、例えば、上記グリコール類のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、フェニルエーテル等を挙げることができ、グリコールエーテルエステル類として、例えば、上記グリコールエーテル類のアセテート等を挙げることができる。
本発明においては、特に、これらのなかでも、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテール及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
本発明において、固形マーカーにおける上記有機溶剤の量は、着色剤、ゲル化剤、樹脂成分等の成分との関係において適宜に定められるが、通常、固形マーカーの重量に基づいて、20〜80重量%、好ましくは、30〜60重量%の範囲である。有機溶剤の量が多すぎるときは、得られる固形マーカーが柔らかすぎるおそれがあるうえに、固形マーカーの製造時に所要の各成分をまとめてゲル化することが困難となるおそれがある。他方、有機溶剤が少なすぎるときは、固形マーカーの製造時に所要の各成分をこれに溶解させることが困難となって、均一なゲルを形成できないおそれがある。
本発明による固形マーカーは、着色剤を含有しており、これによって、白色を含む種々の色分け塗装を被塗装面上に施すことができる。着色剤としては、場合によっては、染料も用いられるが、好ましくは、顔料が用いられる。このような顔料は、有機顔料でもよく、無機顔料でもよい。用い得る顔料は、例えば、銅フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料、スレン系、アゾ系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、インドレノン系、アゾ−アゾメチン系等のほか、酸化チタンやカーボンブラックを含む。更に、必要に応じて、酸化鉄、弁柄、酸化クロム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等のような無機顔料、蛍光顔料、着色した樹脂粒子、アルミニウム粉のような金属粉顔料等を挙げることができる。しかし、本発明において、用い得る顔料は、上記例示に限定されるものではない。
本発明において、固形マーカーにおける上記着色剤の量は、固形マーカーの重量に基づいて、通常、5〜50重量%の範囲である。固形マーカーにおける着色剤の量が5重量%よりも少ないときは、得られる固形マーカーが十分な発色性をもたない。しかし、着色剤の量が50重量%を超えるときは、得られる固形マーカーにおいて、着色剤以外のその他の成分の相対的な割合が低すぎて、それぞれの果たすべき役割が十分に発揮されないので、性能にすぐれる固形マーカーを得ることができない。また、固形マーカーの製造に際して、所要の成分を有機溶剤に溶解、分散させ、かくして、得られた流動性混合物の粘度が高すぎて、成形容器への注入が困難となる。固形マーカーにおける着色剤の最適の配合量は、着色剤の種類によって幾分異なるが、通常、10〜40重量%の範囲である。
本発明において、ゲル化剤としては、ベンジリデンソルビトール類が好ましく用いられる。ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類は、その使用量を含めて、クレヨンの製造においてよく知られている。
上記ベンジリデンソルビトール類は、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
上記ジベンジリデンソルビトールの誘導体としては、例えば、ジベンジリデンソルビトールのベンジリデン基中のベンゼン核が任意の位置にて炭素数1〜3のアルキル基やハロゲン原子で置換された化合物を例示することができ、具体例としては、〔ジ(p−メチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔ジ(m−エチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔ジ(p−クロルベンジリデン)〕ソルビトール等を挙げることができる。
トリベンジリデンソルビトールの誘導体としては、例えば、トリベンジリデンソルビトールのベンジリデン基中のベンゼン核が任意の位置にて炭素数1〜3のアルキル基やハロゲン原子で置換された化合物を例示することができ、具体例としては、〔トリ(p−メチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔トリ(m−エチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔トリ(p−クロルベンジリデン)〕ソルビトール等を挙げることができる。上記例示したゲル化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
本発明による固形マーカーにおいて、ゲル化剤の含有量は、固形マーカーに基づいて、通常、3〜15重量%の範囲であり、好ましくは、5〜10重量%の範囲である。固形マーカーにおいて、ゲル化剤が多すぎるときは、得られる固形マーカーのゲル硬度が高すぎて、被塗装面の塗装に際して、その着色性等が低下するので、好ましくなく、他方、ゲル化剤が少なすぎるときは、得られる固形マーカーにて被塗装面を塗装するに際して塗りかすが生じやすく、また、固形マーカーの製造において、各成分を一体にまとめてゲル化することが困難となる。
本発明による固形マーカーは上述したゲル化剤と共にゲル化助剤を含む。本発明において、上記ゲル化助剤は上記ゲル化剤によるゲル化を遅延させるフェノール基を有する化合物と、上記ゲル化剤によるゲル化を促進するピペリジン基を有する化合物の組み合わせからなる。
本発明によれば、その理由は必ずしも明らかではなく、また、その理由において制約を受けるものではないが、上記フェノール基を有する化合物と上記ピペリジン基を有する化合物をそれぞれ適量用いることによって、前記流動性混合物を成形容器内でゲル化させて固形マーカーに成形する際に流動性混合物のゲル化速度を表面と内部において均一にし、得られる固形マーカーにいわば適度の粘りを与えて、塗装時、固形マーカーの崩れを防止することによって、被塗装面に塗装を施す際に塗りかすを生じずに円滑に塗装を施すことができる。
上記フェノール化合物を単独で用いても、得られる固形マーカーは、被塗装面に円滑に塗装を施すことができない。一方、上記ピペリジン化合物を単独で用いた場には、被塗装面の塗装に際して塗りかすが生じる。
本発明において、上記フェノール基を有する化合物とはヒドロキシフェニル基を有する化合物を意味し、特に、ヒドロキシ基と共に嵩高い置換基を有する化合物が好ましい。
そのようなフェノール基を有する化合物の具体例として、例えば、
3−(2H−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクチルエステル、
2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−(2’−ヒドロキシ−5’−ジ−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル),α−(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル〉−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〉−オキソプロピル)−ω−ヒドロキシ−
等を挙げることができる。
本発明においては、上記フェノール基を有する化合物として、例えば、上記例示したものを単独で、又は2種以上を併用することができる。
また、本発明において、上記ピペリジン基を有する化合物とは、ピペリジノ基、ピペリジル基及び/又はピペリジリデン基を有する化合物であって、特に、ピペリジン基と共に嵩高い置換基を有する化合物が好ましい。
そのようなピペリジン基を有する化合物の具体例として、例えば、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、
8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル)−4−ピペリジニル〉−2−ブチル−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジル)プロパンジオエート
等を挙げることができる。
本発明においては、上記ピペリジン基を有する化合物として、例えば、上記例示したものを単独で、又は2種以上を併用することができる。
本発明による固形マーカーは、ゲル化助剤として、上記フェノール基を有する化合物を0.1〜5重量%の範囲で含み、上記ピペリジン基を有する化合物を0.1〜4重量%の範囲で含む。
このように、上記フェノール化合物と上記ピペリジン化合物を併用した場合であっても、上記フェノール基を有する化合物の固形マーカーにおける割合が0.1重量%よりも少ないときは、被塗装面に塗装を施すときに塗りかすが生じやすく、一方、5重量%を超えるときは、得られる固形マーカーが過度にべたつきを生じて、被塗装面に円滑に均一な塗膜を形成し難い。
同様に、上記ピペリジン基を有する化合物の固形マーカーにおける割合が0.1重量%よりも少ないときは、被塗装面に塗装を施すときに塗りかすが生じやすく、一方、4重量%を超えるときは、得られる固形マーカーが過度にべたつきを生じて、被塗装面に円滑に均一な塗膜を形成し難い。
特に、本発明による固形マーカーは、上記フェノール基を有する化合物と上記ピペリジン基を有する化合物を合計にて0.2〜8重量%の範囲で含み、好ましくは、0.3〜6重量%の範囲で含むと共に、上記フェノール基を有する化合物/上記ピペリジン基を有する化合物の重量比が1〜3の範囲であるように上記フェノール基を有する化合物/上記ピペリジン基を有する化合物を含むことが好ましい。
本発明において、最も好ましくは、固形マーカーは、上記フェノール基を有する化合物を0.2〜4重量%の範囲で含み、上記ピペリジン基を有する化合物を0.1〜3重量%の範囲で含む。
本発明において、樹脂は、固形マーカーの製造に際して、各成分をまとめる役割を果たすのみならず、得られた固形マーカーにて被塗装面に塗装を施すとき、形成された塗膜の定着剤としての役割を果たす。本発明において、このような樹脂として、好ましくは、以下に説明するフィルム形成性樹脂と接着性樹脂が併用される。
フィルム形成性樹脂は、固形マーカーの硬度を高めると共に、被塗装面に形成された塗膜を強固にするためのものであって、そのような性質を有するものであれば、特に限定されるものではないが、なかでも、ポリビニルブチラール樹脂やセルロース樹脂が好ましく用いられる。
上記セルロース樹脂としては、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース、アセチルセルロース等が好ましく用いられる。これらフィルム形成性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、ポリビニルブチラール樹脂とセルロース樹脂のなかでは、ポリビニルブチラール樹脂が顔料分散性にすぐれると共に、ポリビニルブチラール樹脂を用いて得られる固形マーカーにて被塗装面に塗装を施すとき、形成される塗膜が適度の粘りを有し、その結果、塗装に際して塗りかすが生じない効果にすぐれるので、ポリビニルブチラール樹脂が特に好ましく用いられる。
一方、接着性樹脂としては、固形マーカーによる塗膜の被塗装面への付着性を高めるためのものであって、そのような性質を有する限り、特に限定されるものではないが、通常、例えば、ケトン樹脂、アクリル樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ロジンエステル、水添ロジンエステル、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等が用いられる。
ケトン樹脂としては、例えば、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドとの縮合物を例示することができる。アクリル樹脂としては、例えば、熱可塑性のポリアクリル酸エステルを例示することができる。キシレン樹脂としては、例えば、メタキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を例示することができる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ダイマー酸とジ−又はポリアミンの縮重合によって得られる熱可塑性樹脂であって、分子量4000〜9000程度のものを例示することができる。これらの接着性樹脂も、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、上記フィルム形成性樹脂と接着性樹脂との割合は、他の成分との関係によって適宜に定められるが、通常、フィルム形成性樹脂:接着性樹脂の重量比は1:0.1〜5程度、好ましくは、1:0.2〜3程度である。
また、固形マーカーにおいて、上記フィルム形成性樹脂と接着性樹脂の含有量は、両者の合計量にて、通常、10〜60重量%の範囲であり、好ましくは、20〜50重量%の範囲である。樹脂の割合が多すぎるときは、得られる固形マーカーのゲル硬度が高すぎて、着色性とレベリング性が悪く、他方、樹脂の割合が少なすぎるときは、得られる固形マーカーが形成する塗膜が十分な定着性や強度を有しない。
本発明による固形マーカーは、樹脂と協力して、得られる固形マーカーに適度の硬さ、即ち、すぐれた塗装性を有せしめると共に、その塗膜が柔軟性を有するように可塑剤を含むことが好ましい。
上記可塑剤としては、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルや、また、アジピン酸ジイソノニル、アセチルクエン酸トリブチル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、アルキルスルホン酸フェニルエステル等の非フタル酸エステル系可塑剤が用いられる。これらの可塑剤は単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
本発明による固形マーカーは、このような可塑剤を固形マーカーの重量に基づいて、通常、1〜10重量%、好ましくは、2〜6重量%の範囲にて含有する。固形マーカーにおけるこれらの可塑剤の割合が1重量%よりも少ないときは、耐水性を有する塗膜を与えない。しかし、可塑剤の割合が10重量%よりも多いときは、得られる固形マーカーの塗装性が悪くなる。
本発明による固形マーカーは、上述した成分に加えて、必要に応じて、種々の防錆剤、充填剤、レベリング剤、粘度調節剤、構造粘性付与剤、乾燥性付与剤等、従来から、固形マーカーにおける添加剤として知られているものを適宜に含有していてもよい。
本発明による固形マーカーは、その形状において、特に限定されるものではないが、通常、柱状であって、例えば、断面が円である円柱状、断面が多角形である多角柱状、例えば、断面が方形である直方体又は四角柱形状等の形状を有するものであってよい。いずれの場合であっても、このような固形マーカーを用いて被塗装面を塗装するには、一般の固形マーカーと同様に、柱状物である固形マーカーの先端部を被塗装面に押し付けつつ、走行させて、被塗装面に固形マーカーを塗り付ければよい。
また、本発明による固形マーカーは、その寸法、大きさにおいても、特に限定されるものではなく、被塗装面の大きさや取り扱いの容易さ等によって適宜に設定されるが、一例として、固形マーカーがほぼ直方体形状を有する場合であれば、取り扱いに便利であるように、横断面の縦が1.5〜3cm、横が3〜6cm、長さが8〜15cmとすることができる。
更に、本発明による固形マーカーは、実際の塗装作業に便利であるように、適宜の開口を有する容器に固形マーカーの先端部を容器の上記開口から一部、露出自在であるように容器内に収容してなる塗装具として用いられる。
即ち、本発明による塗装具は、上述した固形マーカーを含む塗装具であって、先端部に開口を有し、後端部に後端面を有する筒体容器と、この筒体容器内に収容された上記固形マーカーを含み、上記容器の後端面は容器内の固形マーカーを容器の先端部の方向に押して移動させる挿入体のための貫通孔を有し、上記固形マーカーがその先端部が上記開口から露出自在に上記筒体容器内に収容されているものである。
必要に応じて、固形マーカーの後端部を挿入体、例えば、棒体や手指を用いて容器の先端部方向に押す際に、上記挿入体による押圧力が固形マーカーに均一に伝わるように、固形マーカーの後端部に容器の断面形状を有するいわば盆状の支持台を有していてもよい。
ここに、固形マーカーを収容する上記容器は、固形マーカーが容器内をその軸方向に移動し得るように、固形マーカーと密着しておらず、固形マーカーとの間に好ましくは僅かに空隙を有するように構成される。
本発明によれば、塗装具の好ましい一つの態様によれば、上記容器は、後端面に貫通孔を有し、この貫通孔から上記挿入体を挿入して、容器内の固形マーカーの後端を容器の先端側に押して、固形マーカーを容器内で先端側に移動させ、かくして、固形マーカーの先端部を容器の上記開口から自在に露出させることができる。容器の開口からその先端が露出している固形マーカーを容器内に再び収容するには、固形マーカーの先端を容器内に押し戻して、固形マーカーを容器内に収容すればよい。
このような本発明による塗装具の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明による固形マーカーを容器内に収容した塗装具を容器の先端側から見た斜視図であり、図2は上記塗装具をその後端側から見た斜視図である。図3は上記塗装具の長手方向に沿う部分断面図である。図4は上記塗装具の未使用状態の長手方向に沿う部分断面図であって、固形マーカーは全部が容器内に収容されている。
図1から図3は本発明による塗装具1の使用状態を示す。図示した実施例においては、固形マーカー2はほぼ直方体の形状を有しており、従って、このような固形マーカーを収容する容器3もまた、後端面(底面)4を有する四角筒体であって、固形マーカーはその先端部5が容器の先端部6の開口7から露出するように容器の長手方向に延びるように収容されている。しかし、塗装具が使用されていないときは、図4に示すように、固形マーカー2は先端部5から後端部8まで、全体が容器3内に収容されている。
本発明による塗装具は、図2から図4に示すように、容器の後端面4に貫通孔9を有し、この貫通孔に前記挿入体10を容器の長手方向に挿入し、固形マーカーの後端部8を容器の先端部6の方向に押して、容器内を先端側に移動させることができる。
かくして、塗装具の使用に際して、固形マーカーの先端部5を容器の先端部の開口7から露出させ、又は塗装作業の間に必要に応じて固形マーカーを容器内で先端側に押して、容器の先端部の開口から更に露出させることができる。但し、本発明による塗装具は、容器内の固形マーカーを先端側に押して移動させるための構造又は機構は上記例示に限定されるものではない。
更に、本発明による塗装具は、必要に応じて、容器3の後端部11に貫通孔12を有する延伸体13を有し、例えば、繋留紐(図示しない)の一端をこの貫通孔に取り付け、他端を塗装者に繋ぐことによって、例えば、高所における塗装作業において、作業者が万一、塗装具を手から離しても、塗装具は地上に落下することがない。
図示しないが、本発明による塗装具においては、固形マーカーが容器の内壁に貼り付くことなく、容器内をその軸方向に容易に移動させることができると共に、固形マーカーが容器から容易に抜け落ちることのないように、バランスよく容器内に収容されるように、容器の各内壁に溶媒の軸方向に延びる突条を1つ又は複数設けることができる。本発明による塗装具においては、そのような突条によって、固形マーカーと容器の内壁との間に適度の摩擦が生じる。このような容器の内壁の突条は、例えば、容器の外壁に容器の軸方向に延びる溝を形成し、容器の内壁において、上記溝の底部を上記突条とすることもできる。
更に、本発明による塗装具は、容器の開口を必要に応じて開け閉めすることができるように、容器の開口に着脱自在の蓋体を有するものであってもよく、また、容器の開口の一つの縁に例えば、ヒンジにて蓋体を回動可能に取り付けて、容器の開口を開け閉めすることができるようにしてもよい。
また、このように、容器の開口に蓋体を取り付けるに際して、必要に応じて、蓋体の一部として、上記開口を臨んで対向する一対の蓋体を容器の内側に折込み可能に形成すれば、このように容器の内側に折り込んだ蓋体もまた、固形マーカーが容器からの抜け落ちを防止する手段として有効である。
このような本発明による塗装具において、上記容器は、剛性を有することが必要であるので、通常、剛性を有する幾分、厚手の紙や、種々の硬質の合成樹脂から構成されていてもよく、必要ならば、木材や金属や、又はこれらと上記紙や合成樹脂との複合材料から構成されていてもよい。
このような本発明による塗装具を用いて、被塗装面を塗装するには、容器の先端の開口から固形マーカーの先端部を一部、露出させ、前述したように、この先端部を被塗装面に押し付けつつ、走行させて、固形マーカーを被塗装面に塗り付ければよい。
本発明による固形マーカーによれば、被塗装面に塗装を施す際に、固形マーカーの塗りかすが生じない。従って、例えば、前述した高圧線用鉄塔における回線識別塗装、特に、垂直の鋼材表面や、垂直に近く傾斜している鋼材表面に回線識別塗装を行うために好適に用いることができる。
本発明による固形マーカーは、その製造方法において、何ら限定されるものではない。基本的には、上述した各成分を予め加熱した有機溶剤に溶解させ、又は分散させて、均一な流動性混合物を調製し、この混合物を角筒状の成形容器に流し込み、冷却して、一体にゲル化(固化)させれば、本発明による直方体形状の固形マーカーを得ることができる。
以下に本発明の実施例と共に比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において用いた有機溶剤、樹脂、ゲル化助剤及びゲル化剤は下記のとおりである。
有機溶剤1:エチレングリコールモノブチルエーテル
有機溶剤2:プロピレングリコールモノブチルエーテル
有機溶剤3:3−メチル−3−メトキシブタノール
有機溶剤4:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
有機溶剤5:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
樹脂1:(株)クラレ製ポリビニルブチラールMOWITAL B20H(重量平均重合度約300)
樹脂2:(株)クラレ製ポリビニルブチラールMOWITAL B30H(重量平均重合度約500)
樹脂3:日立化成(株)製ケトン樹脂ハイラック111
樹脂4:ヘンケル白水(株)製ポリアミド樹脂バーサミド335
ゲル化助剤1:3−(2H−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクチルエステル
ゲル化助剤2:2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル)−5−クロロベンゾトリアゾール
ゲル化助剤3:2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
ゲル化助剤4:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
ゲル化助剤5:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
ゲル化助剤6:8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン
ゲル化剤:新日本理化(株)製ゲル化剤ゲルオールD(ジベンジリデンソルビトール)
実施例1
表1に示す量の各成分を予め加熱した有機溶剤に溶解させ、又は分散させて、ミルを用いて十分に混合して、均一な流動性混合物を得た。
この混合物を角筒状の成形容器に注入し、冷却、固化させて、固形物を固形マーカーとして上記容器から取り出した。
実施例2〜4
表1に示す成分を表1に示す量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、固形マーカーを得た。
比較例1〜3
表1に示す成分を表1に示す量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、固形マーカーを得た。
以上のようにして得られたそれぞれの固形マーカーにて鋼材表面上に塗装を施して塗膜を形成し、その際の塗装性と塗りかす生成性を目視にて評価した。この際、固形マーカーを鋼材の所定の面積の表面に接触させ、押圧しつつ、縦横の方向に各2回ずつ、走行させて、鋼材表面の塗装を行った。
塗装性の評価は、上述したようにして、鋼材表面に固形マーカーを用いて塗装を施す際に、円滑に均一な塗膜を形成することができたときをAとし、鋼材表面に塗装を施す際、固形マーカーが鋼板表面でべたつきを生じて、均一な塗膜を得ることができなかったときをCとした。
また、塗りかす生成性の評価は、上述したようにして、鋼材表面に固形マーカーを用いて塗装を施した際に、固形マーカーの先端部に崩れがみられず、塗膜に塗りかすが生じなかったときをA、固形マーカーの先端部に僅かの崩れがみられて、塗膜に僅かに塗りかすが生じたときをB、固形マーカーの先端部に崩れが顕著にみられて、塗膜に塗りかすが顕著に生じたときをCとした。結果を表1に示す。
本発明による固形マーカーはいずれも、鋼材表面に円滑に均一な塗膜を形成することができ、また、塗膜に塗りかすも生じなかった。
しかし、比較例1による固形マーカーは、ゲル化助剤を含まないので、鋼材表面の塗装に際して著しく塗りかすが生じる。比較例2による固形マーカーは、ゲル化助剤の含有量が多すぎる結果、鋼材表面の塗装に際して、固形マーカーが鋼材表面に著しくべたついて、均一な塗膜を形成することができなかった。
比較例3による固形マーカーは、ゲル化助剤として、フェノール化合物のみを含むので、鋼材表面の塗装に際して、均一な塗膜を形成することができなかった。比較例4による固形マーカーは、ゲル化助剤として、ピペリジン化合物のみを含むので、鋼材表面の塗装に際して、著しく塗りかすが生じた。
1…塗装具
2…固形マーカー
3…容器
4…容器の後端面
5…固形マーカーの先端部
6…容器の先端部
7…容器の先端部の開口
8…固形マーカーの後端部
9…容器の後端面の貫通孔
10…挿入体
11…容器の後端部
12…延伸体の有する貫通孔
13…延伸体

Claims (4)

  1. 有機溶剤、着色剤、ゲル化剤としてのベンジリデンソルビトール類、ゲル化助剤及び樹脂を含む固形マーカーにおいて、上記ゲル化剤を2〜20重量%の範囲で含むと共に、上記ゲル化助剤がフェノール基を有する化合物とピペリジン基を有する化合物の組み合わせであって、上記フェノール基を有する化合物を0.1〜5重量%の範囲で含み、上記ピペリジン基を有する化合物を0.1〜4重量%の範囲で含むことを特徴とする固形マーカー。
  2. 前記フェノール基を有する化合物が
    3−(2H−ベンゾトリアゾリル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクチルエステル、
    2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
    2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
    2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
    2−(2’−ヒドロキシ−5’−ジ−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び
    ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル),α−(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル〉−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〉−オキソプロピル)−ω−ヒドロキシ−
    から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記ピペリジン基を有する化合物が
    ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、
    ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、
    8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン及び
    ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル)−4−ピペリジニル〉−2−ブチル−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジル)プロパンジオエート
    から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の固形マーカー。
  3. 上記フェノール基を有する化合物と上記ピペリジン基を有する化合物を合計にて0.2〜8重量%の範囲で含むと共に、上記フェノール基を有する化合物/上記ピペリジン基を有する化合物の重量比が1〜3の範囲である請求項1又は2に記載の固形マーカー。
  4. 請求項3に記載の固形マーカーを含む塗装具であって、先端部に開口を有し、後端部に後端面を有する筒体容器と、この筒体容器内に収容された上記固形マーカーを含み、上記容器の後端面は容器内の固形マーカーを容器の先端部の方向に押して移動させる挿入体のための貫通孔を有し、上記固形マーカーがその先端部が上記開口から露出自在に上記筒体容器内に収容されていることを特徴とする塗装具。

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