JP2016074056A - ボーリングツール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バー52には傾斜スライダ62と可動傾斜ブロック60とが設けられる。バー52の軸方向の移動により、切刃80c,81c,100cが一括して切削位置とリトラクト位置との間で移動可能とされる。また、ブロック位置調整部110がオペレータによる手動または外部装置により作動させられると、可動傾斜ブロック60が半径方向に移動させられ、切刃100cの刃先位置が調整される。
【選択図】図3
Description
また、特許文献2〜4には、刃先位置調整機構を含むボーリングツールが記載されている。そのうちの特許文献2に記載の刃先位置調整機構は、(a)軸方向に移動可能なバーと、(b)バーに設けられたカム面と、そのカム面に係合させられるとともに刃具ホルダに係合させられる伝達部材とを備えた移動方向変換部とを含み、バーの軸方向の移動により伝達部材が半径方向へ移動させられ、刃具ホルダが半径方向へ移動させられ、切刃の刃先位置が調整される。
特許文献5には、軸方向の同じ位置(同一円周上)に周方向に隔てて複数の切刃を備えたボーリングツールが記載されている。このボーリングツールにおいては、複数の切刃が、切削位置とリトラクト位置とで移動可能とされている。
複数の切刃がリトラクト位置、すなわち、ワークの下穴より内側に退避可能とされるため、切削開始時、切削終了時等、ボーリングツールを軸方向へ移動させる場合に、切刃とワークとの接触を良好に防止することができる。また、特許文献1に記載のボーリング加工装置におけるように、ワークを上下方向に移動させる構造が不要となり、ボーリング加工装置の構造を簡単にすることができる。
また、複数の切刃のうちの、例えば、仕上げ加工用の切刃等、刃先位置精度が要求される切刃について、刃先位置が調整可能とされる。それにより切削加工精度を向上させることができる。なお、複数の切刃すべての刃先位置を調整可能とすることもできる。
(1)長手の軸状を成し、軸方向の一端部である基端部が工作機械の回転主軸に固定的に保持されて回転させられるとともに、軸方向に隔たった複数の切刃を備えたツール本体と、
前記複数の切刃を切削位置とリトラクト位置とに移動可能なリトラクト機構と、
前記複数の切刃のうちの少なくとも1つの刃先位置を調整可能な刃先位置調整機構と
を含むことを特徴とするボーリングツール。
複数の切刃のうちの少なくとも1つについては、切削位置とリトラクト位置との間で移動可能、かつ、刃先位置が調整可能とされているが、リトラクト機構と刃先位置調整機構とで、少なくとも1つの構成要素を共通とすることができる。それにより、部品点数の増加を抑制し、コストアップを抑制することができる。
(2)前記ツール本体が、前記複数の切刃をそれぞれ有する刃具をそれぞれ保持する刃具ホルダを複数備え、
前記リトラクト機構が、(i)軸状を成し、前記軸方向に移動可能なバーと、(ii)前記複数の刃具ホルダの各々に対応して、前記バーに前記軸方向に一体的に移動可能に設けられた複数の傾斜部材を備えた移動方向変換部とを含む(1)項に記載のボーリングツール。
バーの軸方向の移動が傾斜部材等により軸方向と交差する方向の移動に変換され、それぞれ、刃具ホルダに伝達される。複数の切刃は、それぞれ、切削位置とリトラクト位置との間で軸方向と交差する方向に移動可能とされる。
傾斜部材と刃具ホルダとは係合させられた状態にあるが、直接係合させられても間接的に係合させられてもよく、後述するように、伝達部材を介して係合させられるようにすることができる。
(3)前記複数の傾斜部材のうちの前記刃先位置が調整可能な前記少なくとも1つの切刃を備えた少なくとも1つの刃具ホルダの各々に対応して設けられた少なくとも1つの傾斜部材が、それぞれ、前記バーに前記軸方向と直交する方向に相対移動可能に設けられた可動傾斜部材とされ、
前記刃先位置調整機構が、前記少なくとも1つの可動傾斜部材と、その少なくとも1つの可動傾斜部材の各々の前記軸方向と直交する方向における位置をそれぞれ調整可能な少なくとも1つの傾斜部材位置調整部とを含む(2)項に記載のボーリングツール。
(4)前記刃先位置調整機構が、前記少なくとも1つの可動傾斜部材の各々と前記少なくとも1つの刃具ホルダの各々との間に、前記軸方向と直交する方向に移動可能に設けられ、それぞれ、一端部が前記可動傾斜部材に当接し、他端部が前記刃具ホルダに当接する少なくとも1つの伝達部材を含み、
その少なくとも1つの伝達部材が、前記移動方向変換部の構成要素も兼ねたものとされる(3)項に記載のボーリングツール。
傾斜部材位置調整部は、例えば、ねじ機構を含むものとすることができる。ねじ機構の構成要素であるナットが、オペレータの手動または外部装置(例えば、ナットランナ)により作動させられることにより、可動傾斜部材が軸方向と直交する方向へ移動させられ、切刃が軸方向と直交する方向へ移動させられるのであり、刃先位置が調整される。
刃先位置は、ボーリングツールの中心軸線からの距離で規定される。このことから、軸方向と直交する方向を半径方向と規定できる場合がある。また、可動傾斜部材の軸方向と直交する方向における位置も同様であり、可動傾斜部材上の予め定められた点または面の中心軸線からの距離で規定することができる。
なお、傾斜部材位置調整部を、ボーリングツールの構成要素とすることは不可欠ではなく、刃先位置調整時に、ボーリングツールに取り付けられるものとすることができる。
(5)前記少なくとも1つの可動傾斜部材が、それぞれ、前記軸方向に対して傾斜した傾斜面と、前記軸方向と平行に延びた平坦面とを有するカム面を含み、
前記リトラクト機構が、前記少なくとも1つの可動傾斜部材の各々の前記平坦面と前記少なくとも1つの伝達部材の各々とが係合した状態で、前記少なくとも1つの切刃をそれぞれ切削位置とするものである(4)項に記載のボーリングツール。
可動傾斜部材のカム面により切刃が切削位置とリトラクト位置との間で移動可能とされ、可動傾斜部材の軸方向と直交する方向の移動により切刃の刃先位置が調整されるのであり、可動傾斜部材は、リトラクト機構と刃先位置調整機構とに共通の構成要素とされる。
また、本項に記載のボーリングツールにおいては、伝達部材と可動傾斜部材の傾斜面とが係合する状態で切刃のリトラクト位置とされ、平坦面とが係合する状態で切削位置とされる。仮に、伝達部材と傾斜面とが係合する状態で切削位置とされる場合には、バーの軸方向の変位(熱に起因する場合、軸方向に作用する力に起因する場合がある)によって切削位置における切刃の刃先位置が変化する等の問題がある。それに対して、伝達部材と平坦面とが係合する状態で切削位置とされるようにすれば、バーの軸方向の変位の切削位置における刃先位置への影響が小さくなる。その結果、切削位置における刃先位置を正確に規定することができ、加工精度を向上させることができる。
なお、伝達部材が平坦面に係合した状態で、可動傾斜部材の軸方向と直交する方向における位置が調整され、刃先位置が調整されるようにすることが望ましい。それにより、刃先位置を精度よく調整することができる。また、可動傾斜部材は、刃先位置の調整後の位置において軸方向に移動させられるのであり、切刃はリトラクト位置と切削位置(刃先位置が調整された位置)との間で、軸方向に交差する方向に移動させられる。
(6)前記少なくとも1つの刃具ホルダが、それぞれ、前記軸方向に長い長手形状を成し、中間部において前記ツール本体に回動可能に保持されるとともに、前記軸方向の一端部に前記切刃を有する前記刃具が取り付けられ、他端部にスプリングが取り付けられたものである(2)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のボーリングツール。
本項に記載の刃具ホルダ、刃具等を備えたカートリッジは回動式のものであり、刃具ホルダの他端部にはスプリングにより中心軸線から離れる向きの弾性力が加えられ、一端部にはリトラクト機構により中心軸線から離れる向きの力が加えられる。
一端部が可動傾斜部材の平坦面に(直接または間接的に)係合させられた場合には、刃具ホルダは、一端部が中心軸線から離れ、他端部が中心軸線に近づく向きにスプリングの弾性力に抗して回動させられ、切刃が切削位置に移動させられる。一端部が可動傾斜部材の傾斜面に係合させられた場合には、スプリングにより、刃具ホルダは、他端部が中心軸線から離れ一端部が中心軸線に近づく向きに回動させられ、切刃は切削位置より内側(リトラクト位置)に移動させられる。
本項に記載の刃具ホルダ、刃具等を備えたカートリッジはベンディング式のものであり、刃具ホルダの中間部に中心軸線から離れる向きの力により弾性変形し易い薄肉部が設けられる。
一端部に中心軸線から離れる向きの力が加えられると、薄肉部の弾性変形により、刃具ホルダの薄肉部より一端部側の部分が中心軸線から離れる向きへ移動させられるのであり、切刃が切削位置に移動させられる。一端部に加えられる中心軸線から離れる向きの力が小さくなると、薄肉部の復元力により刃具ホルダの一端部側の部分が中心軸線に近づけられるのであり、切刃がリトラクト位置に移動させられる。
(8)前記ツール本体が、(i)前記バーの基端側の端部に連結され、流体圧により前進可能なピストンと、(ii)前記バーの先端側の部分に設けられ、後方に向かって弾性力を加えるスプリングとを含む(2)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のボーリングツール。
ボーリングツールが工作機械の回転主軸に保持された状態で流体としてのクーラントが供給されると、流体圧としてのクーラント圧によりピストンが前進させられ、バーが前進させられる。それにより、切刃が切削位置に突出させられる。クーラントが供給されなくなると、スプリングによりバーが後退端まで戻され、切刃はリトラクト位置に退避させられる。
なお、ピストンは流体圧に限らず、ロッド等を介して伝達される軸方向力により前進可能なものとすることができる。
(9)前記刃先位置調整機構が、前記複数の切刃のうちの2つ以上の切刃の前記刃先位置を、それぞれ、個別に調整可能な個別刃先位置調整機構を2つ以上含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のボーリングツール。
少なくとも1つの切刃の各々について、剛性等がすべて同じであるとは限らず、摩耗の程度が同じであるとは限らないが、本項に係るボーリングツールにおいては、刃先位置が個別に調整可能とされているため、個別の摩耗に適切に対処することができる。
(10)前記複数の切刃が、2つ以上の仕上げ加工用切刃と2つ以上の中仕上げ加工用切刃とを含み、前記個別刃先位置調整機構が、前記2つ以上の仕上げ加工用切刃にそれぞれ対応して設けられた(9)項に記載のボーリングツール。
(11)長手の軸状を成し、軸方向の一端部である基端部が工作機械の回転主軸に固定的に保持されて回転させられるとともに、切刃を有する刃具を保持する刃具ホルダを備えたツール本体と、
(i)前記軸方向に移動可能なバーと、(ii)前記刃具ホルダに対応して、(ii-1)前記バーに前記軸方向に一体的に移動可能、かつ、前記軸方向と直交する方向に相対移動可能に設けられた可動傾斜部材と、(ii-2)前記可動傾斜部材と前記刃具ホルダとの間に設けられ、前記軸方向と直交する方向に移動可能な伝達部材とを有する移動方向変換部とを備えたリトラクト機構と、
(a)前記可動傾斜部材と、(b)前記伝達部材と、(c)前記可動傾斜部材の前記軸方向と直交する方向における位置をそれぞれ調整可能な傾斜部材位置調整部とを備えた刃先位置調整機構と
を含むことを特徴とするボーリングツール。
本項に記載のリトラクト機構と刃先位置調整機構とは、切刃が1つであるボーリングツールに適用することもできる。リトラクト機構、刃先位置調整機構には、(2)項ないし(8)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
スピンドルヘッド12は、回転主軸20と、回転主軸20を回転させる電動モータ22とを含み、ヘッド移動装置14により軸線L(本実施例において、回転主軸20、ボーリングツールの回転中心軸線Lをいう)と平行な方向(以下、軸方向と略称する)に移動させられる。回転主軸20には、ボーリングツール26が基端部28において(図2参照)一体的に回転可能に取り付けられる。
ワーク保持台16はワークを保持するものであるが、ボーリングツール26を軸線Lの周りに相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に支持するサポータ30,32も設けられる。サポータ30はボーリングツール26の先端部を支持するエンドサポータであり、サポータ32は中間部を支持する中間サポータである。ワーク保持台16はワーク保持台移動装置18により軸線Lと直交する方向に移動させられる。図1には、ワーク保持台16にワークである自動車のエンジン用のシリンダブロックCBが保持された状態を示す。
また、ボーリング加工装置には、ボーリングツール26にクーラントを供給可能なクーラント供給装置34が設けられる。クーラント供給装置34は、クーラントタンク、クーラントをボーリングツールに供給する状態と供給しない状態とに切換え可能な切換装置等を含む。
リトラクト機構44は、図3,4に示すように、5つの加工部42の各々の切刃を、切削位置とリトラクト位置との間で一括して軸方向と直交する方向(以下、半径方向と称する場合がある)に移動可能なものであり、(a)ツール本体40の中央部に軸方向に設けられた長穴50に、軸方向に移動可能に配設された軸状のバー52、(b)バー52の軸方向の移動を半径方向の移動に変換する5つの移動方向変換部54等を含む。5つの移動方向変換部54は、5つの加工部42に対応してそれぞれ設けられ、それぞれ、(a)傾斜部材としての傾斜スライダ62、(b)可動傾斜部材としての可動傾斜ブロック60、(c)伝達部材61等を含む。傾斜スライダ62が中仕上げ加工部48に対応し、可動傾斜ブロック60および伝達部材61が仕上げ加工部46に対応して設けられたものである。
5つの移動方向変換部54は互いに同じ構造を成したものであるため、以下、5つの移動方向変換部54のうちの1つについて説明する。
また、ツール本体40の可動傾斜ブロック60のカム面67に対向する部分には、長穴50と連通する状態で嵌合穴71が形成され、嵌合穴71に伝達部材61が半径方向に移動可能に嵌合される。伝達部材61は、半径方向内側の端部がカム面67に当接し、半径方向外側の端部が仕上げ加工部46のチップホルダに当接する状態とされる。
5つの加工部42の各々において、中仕上げ加工部48が仕上げ加工部46の基端側に位置する。5つの中仕上げ加工部48のうち、中央に位置する中仕上げ加工部48を除く4つの構造は互いに同じであるため、以下、4つの中仕上げ加工部48のうちの1つについて説明する。
中仕上げ加工部48は、図3(b),(c)に示すように、傾斜スライダ62を囲む状態で設けられる。中仕上げ加工部48は、(1)ツール本体40に半径方向に貫通して形成された嵌合穴72に、軸方向に移動不能かつ半径方向に移動可能に嵌合された一対の加工部本体73,74と、(2)加工部本体73に取り付けられたカートリッジ75とを含む。加工部本体73,74の互いに対向する面には、それぞれ、傾斜スライダ62の傾斜面64,65に当接可能な傾斜溝76,77が形成される。本体73,74が対向させられ、傾斜溝76,77が対向させられることにより傾斜した穴が形成されるのであり、この穴に傾斜スライダ62が位置する。この状態で、傾斜溝76,77の底面は、それぞれ、傾斜スライダ62の傾斜面64,65と当接した状態にある。なお、一対の加工部本体73,74は、ボルト78によって連結され、一体的に移動可能とされる。
なお、中央に位置する中仕上げ加工部48においては、チップ81が設けられていないが、他の部分の構造については両側の4つの中仕上げ加工部48の構造と同じである。
傾斜スライダ62の軸方向の移動により(傾斜面64,65により)、加工部本体73,74が半径方向に移動させられるのであり、切刃80c,81cが切削位置とリトラクト位置との間で軸方向に直交する方向に移動させられる。
図3(a)、(c)に示すように、ツール本体40の可動傾斜ブロック60に対応した部分には、直径方向に隔たって一対の凹部90,91が設けられ、それらのうちの一方の凹部90(取付座)に仕上げ加工部46が設けられる。
仕上げ加工部46は、回動式のカートリッジ94を含む。カートリッジ94は、(a)軸方向に長い長手形状を成した刃具ホルダとしてのチップホルダ96と、(b)チップホルダ96の基端側の端部に設けられたスプリング98と、(c)先端側の端部に着脱可能に取り付けられた刃具としてのチップ100とを含む。チップホルダ96は、中間部においてピン102によってツール本体40に回動可能に保持される。スプリング98は、チップホルダ96とツール本体40との間に設けられ、チップホルダ96の基端側の端部を半径方向外方へ、チップ100が半径方向内方(切刃100cがリトラクト位置)へ向かう向き、換言すれば、図3(c)においてチップホルダ96を時計方向に回動させる向きに弾性力(モーメント)を付与する。
刃先位置調整機構45は、図2,3に示すように、切刃100cの刃先位置(軸線Lからの隔たり)を個別に調整可能なものであり、5つの仕上げ加工部46に対応してそれぞれ設けられた5つの個別刃先位置調整機構92を含む。5つの個別刃先位置調整機構92は互いに同じ構造を成したものであるため、以下、そのうちの1つについて説明する。
個別刃先位置調整機構92は、図3(a)、(c)に示すように、それぞれ、前述の可動傾斜ブロック60、伝達部材61と、凹部91に設けられた可動部材位置調整部、傾斜部材位置調整部としてのブロック位置調整部110とを含む。凹部91は、長穴50に連通して形成され、ブロック位置調整部110が、可動傾斜ブロック60のカム面67に対向する対向面112に当接する状態で設けられる。ブロック位置調整部110は、2重に重ねられたねじを備えたねじ機構を成したものであり、ねじの進退により可動傾斜ブロック60を半径方向に移動可能なものである。可動傾斜ブロック60が半径方向に移動させられると、伝達部材61が半径方向へ移動させられ、チップホルダ96がピン102の周りに回動させられ、切刃100cの刃先位置が移動させられる。ブロック位置調整部110は、オペレータの手動によってまたは外部装置114(例えば、ナットランナ)によって作動させられる。
本実施例において、ブロック位置調整部110は、2重のねじのピッチ差を利用してねじの進み量が調整可能なものであるため、可動傾斜ブロック60の半径方向位置の微調整が可能である。また、刃先位置の調整は可動傾斜ブロック60の平坦面と伝達部材61とが当接する状態で行われるため、刃先位置を、精度よく調整することが可能となる。
なお、可動傾斜ブロック60の半径方向の位置が調整された後は、可動傾斜ブロック60はその半径方向の位置において軸方向に移動させられる。切刃100cは、その可動傾斜ブロック60のカム面67によりリトラクト位置と切削位置とに移動させられるのであり、切削位置における刃先位置は調整された位置となる。
ツール本体40にはクーラント通路130が設けられ、ボーリングツール26が回転主軸20に取り付けられた状態でクーラント供給装置34に接続される。クーラント通路130は、図2,3(a),(b)に示すように、軸方向に伸びた主通路132と、主通路132に連通し、かつ、軸方向に交差する方向に伸びた副通路134とを含む。それにより、切刃80c,81c,100cの近傍にクーラントが供給される。
また、図2に示すように、ツール本体40の基端部にはピストン136が軸方向に移動可能に設けられる。ピストン136は、バー52の基端側の端部に、軸方向に一体的に移動可能に取り付けられる。ピストン136は、クーラント圧により前進可能なものであり、ピストン136の前進によりバー52も前進させられる。ピストン136の前進端、後退端は、ツール本体40に設けられた前進側ストッパ137、後退側ストッパ138により規定される(図2は、前進端位置にある状態を示す)。
一方、バー52の先端側の端部にはスプリング140が設けられ、バー52に後退方向の弾性力を付与する。バー52は、クーラントが供給されない状態においてスプリング140の弾性力により後退端位置にある。クーラントが供給されると、スプリング140の弾性力に抗してピストン136により前進端位置まで移動させられる。バー52の前進端、後退端は、ピストン136の前進端、後退端により規定される。
ボーリングツール26が回転主軸20に取り付けられ、ワーク保持台16にシリンダブロックCBが取り付けられる。ボーリングツール26においてバー52は後退端位置にあり、切刃80c,81c,100cはリトラクト位置にある。スピンドルヘッド12が軸方向へ前進させられることにより、図5(A)に示す切削開始位置とされる。また、ボーリングツール26の先端部がサポータ30によって支持され、中間部がサポータ32によって支持される。サポータ32の内周面の周方向の一部には軸方向に伸びた溝142が設けられるため、切刃80c、81c、100cの軸方向の移動が、切削位置においても許容される。
図5(A)に示す切削開始位置において、中仕上げ加工用切刃80c,81cが被加工部J(図5には被加工部2Jについて記載したが、他の被加工部についても同様であるため、被加工部Jと記載する)の後方の近接した位置にある。この状態において、クーラント供給装置34からクーラントが供給されるとともに、回転主軸20が電動モータ22の作動により回転させられる。バー52が前進させられ、切刃80c,81c,100cが切削位置へ突出させられ、ツール本体40およびバー52等が一体的に軸線Lの周りに回転させられつつ前進させられる。被加工部Jに対して切刃80cにより中仕上げ加工が行われ、切刃80cが被加工部Jの前方に達し、切刃81cにより被加工部Jの基端側の端部の面取り加工が行われると、中仕上げ加工が終了する。
図5(B)に示す中上げ加工終了位置から、スピンドルヘッド12が後退させられる。後退の間、切刃80cにより被加工部Jに切削加工が行われることはない。そして、仕上げ加工用切刃100cが被加工部Jの前方の近接した位置に達した状態から切刃100cにより仕上げ加工が行われる。切刃100cが被加工部Jの後方に達すると、仕上げ加工が終了し、切削加工が終了する。
図5(C)に示す切削加工終了位置において、クーラントの供給が停止させられる。バー52はスプリング140により後退端に戻され、切刃80c,81c,100cはリトラクト位置まで戻される。スピンドルヘッド12が後退され、ボーリングツール26が、先端部がワークCBから外れる位置まで後退させられるが、切刃80c,81c,100cはリトラクト位置にあるため、ワークCBに傷がつくことがない。なお、中央に位置する中仕上げ加工部48においては、チップ81が取り付けられていないため、被加工部3Jにおいては、面取りが行われないことになる。
また、刃先調整が行われると、可動傾斜ブロック60の半径方向の位置が変わるが、その後、その調整後の位置において、可動傾斜ブロック60は軸方向へ移動させられる。切刃100cは、その可動傾斜ブロック60のカム面67と伝達部材61とによりリトラクト位置と切削位置とに移動させられるのであり、切削位置において、切刃100cの刃先位置は調整後の位置とされる。
なお、刃先位置の調整は、図5(A)に示す切削開始位置において行われるようにすることもできる。
また、本実施例においては、チップホルダ96が伝達部材61を介して平坦面70に係合した状態において、切刃100cが切削位置とされる。一方、仮に、傾斜面68に係合した状態で切削位置とされる場合には、バー52の軸方向の変位{例えば、熱に起因する変位、軸方向に作用する圧縮力や引張り力に起因する変位}が生じると、切刃100cの刃先位置が変わるという問題がある。それに対して、伝達部材61が平坦面70に当接した状態で切刃100cが切削位置とされるようにすれば、バー52の軸方向の変位の影響を受け難くすることができ、切削位置における刃先位置精度を向上させ、加工精度を向上させることができる。
さらに、本実施例においては、5つの仕上げ加工用切刃100cの各々に対応して、それぞれ、個別刃先位置調整機構92が設けられ、個別刃先位置調整機構92により、5つの仕上げ加工用切刃100cの刃先位置がそれぞれ、個別に調整可能とされる。例えば、5つの仕上げ加工用切刃100cの各々において摩耗の程度が異なる場合であっても、個別に刃先位置を調整できるのであり、5つの仕上げ加工用切刃100cに対して一括して調整可能とされている場合に比較して、ボーリングツールの使い勝手を向上させることができる。
また、リトラクト機構44と刃先位置調整機構45とで、カム面67を有する可動傾斜ブロック60、伝達部材61が共通の構成要素とされる。その結果、部品点数の増加を抑制し、コストアップを抑制することができる。
本実施例に係るボーリングツール148の仕上げ加工部150は、ベンディング式のカートリッジ152を含み、チップホルダの弾性変形により切刃が切削位置とリトラクト位置との間で移動可能とされる。
カートリッジ152は、(a)ツール本体153に設けられた凹部154(取付座)に配設された刃具ホルダとしてのチップホルダ156と、(b)チップホルダ156の中間部に取り付けられた刃具としてのチップ160とを含む。チップホルダ156は、基端部において、ボルト162によりツール本体153に取り付けられる。また、チップホルダ156の中間部のチップ160より基端側の部分に半径方向内側が切り欠かれた形状を成す薄肉部164が形成される。このように、半径方向内側が切り欠かれた形状を成しているため、チップホルダ156の薄肉部164は半径方向外向きの力により弾性変形し易くなる。
可動傾斜ブロック60が前進させられると、薄肉部164が弾性変形させられ、切刃160cが切削位置に突出させられる。可動傾斜ブロック60が後退させられると、薄肉部164の復元力により切刃160cがリトラクト位置に戻される。
また、伝達部材61が平坦部70に当接する状態で、個別刃先位置調整機構92により切刃160cの刃先位置が調整される。
また、上記実施例に記載のリトラクト機構、刃先位置調整機構は、軸方向に切刃が1つしか設けられていないボーリングツールに適用することもできる等、本発明は上記実施例に限らず、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
Claims (8)
- 長手の軸状を成し、軸方向の一端部である基端部が工作機械の回転主軸に固定的に保持されて回転させられるとともに、互いに軸方向に隔たった複数の切刃を備えたツール本体と、
前記複数の切刃を切削位置とリトラクト位置とに移動可能なリトラクト機構と、
前記複数の切刃のうちの少なくとも1つの刃先位置を調整可能な刃先位置調整機構と
を含むことを特徴とするボーリングツール。 - 前記ツール本体が、前記複数の切刃をそれぞれ有する刃具をそれぞれ保持する刃具ホルダを複数備え、
前記リトラクト機構が、(i)軸状を成し、前記軸方向に移動可能なバーと、(ii)前記複数の刃具ホルダの各々に対応して、前記バーに前記軸方向に一体的に移動可能に設けられた複数の傾斜部材を備えた移動方向変換部とを含み、
前記複数の傾斜部材のうち、前記刃先位置が調整可能とされた前記少なくとも1つの切刃を備えた少なくとも1つの刃具ホルダの各々に対応して設けられた少なくとも1つの傾斜部材が、それぞれ、前記バーに前記軸方向と直交する方向に相対移動可能に設けられた可動傾斜部材とされ、
前記刃先位置調整機構が、前記少なくとも1つの可動傾斜部材と、その少なくとも1つの可動傾斜部材の各々の前記軸方向と直交する方向における位置をそれぞれ調整可能な少なくとも1つの可動部材位置調整部とを含む請求項1に記載のボーリングツール。 - 前記刃先位置調整装置が、前記少なくとも1つの可動傾斜部材の各々と前記少なくとも1つの刃具ホルダの各々との間に、前記軸方向と直交する方向に移動可能に設けられ、それぞれ、一端部が前記可動傾斜部材に当接し、他端部が前記刃具ホルダに当接する少なくとも1つの伝達部材を含み、その少なくとも1つの伝達部材が、それぞれ、前記移動方向変換部の構成要素も兼ねたものとされた請求項2に記載のボーリングツール。
- 前記少なくとも1つの可動傾斜部材が、それぞれ、前記軸方向に対して傾斜した傾斜面と、前記軸方向と平行に延びた平坦面とを有するカム面を含み、
前記リトラクト機構が、前記少なくとも1つの可動傾斜部材の各々の前記平坦面と前記少なくとも1つの刃具ホルダの各々とが前記伝達部材を介して係合する状態で、前記少なくとも1つの切刃をそれぞれ切削位置とするものである請求項3に記載のボーリングツール。 - 前記ツール本体が、(i)前記バーの基端側の端部に連結され、流体圧により前進可能なピストンと、(ii)前記バーの先端側の部分に設けられ、後方に向かって弾性力を加えるスプリングとを含む請求項2ないし4のいずれか1つに記載のボーリングツール。
- 前記刃先位置調整機構が、前記複数の切刃のうちの2つ以上の切刃の前記刃先位置を、それぞれ、個別に調整可能な個別刃先位置調整機構を2つ以上含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載のボーリングツール。
- 前記複数の切刃が、2つ以上の仕上げ加工用切刃と2つ以上の中仕上げ加工用切刃とを含み、前記個別刃先位置調整機構が、前記2つ以上の仕上げ加工用切刃にそれぞれ対応して設けられた請求項6に記載のボーリングツール。
- 長手の軸状を成し、軸方向の一端部である基端部が工作機械の回転主軸に固定的に保持されて回転させられるとともに、切刃を有する刃具を保持する刃具ホルダを備えたツール本体と、
(i)前記軸方向に移動可能なバーと、(ii)前記刃具ホルダに対応して、(ii-1)前記バーに前記軸方向に一体的に移動可能、かつ、前記軸方向と直交する方向に相対移動可能に設けられた可動傾斜部材と、(ii-2)前記可動傾斜部材と前記刃具ホルダとの間に設けられ、前記軸方向と直交する方向に移動可能な伝達部材とを有する移動方向変換部とを備えたリトラクト機構と、
(a)前記可動傾斜部材と、(b)前記伝達部材と、(c)前記可動傾斜部材の前記軸方向と直交する方向における位置をそれぞれ調整可能な傾斜部材位置調整部とを備えた刃先位置調整機構と
を含むことを特徴とするボーリングツール。
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