《実施形態1》
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に、車両駆動ユニットの制御装置のブロック図を示す。
車両駆動ユニットの制御装置は、パワートレインPTと制御部100とを備えている。
パワートレインPTは、複数の気筒を有する4サイクル火花点火式エンジン(以下、「エンジン」という)11と、左右の車輪(駆動輪)12,12と、変速を行う変速装置13と、変速装置13からの出力を左右の車輪12,12に分配する差動装置14と、エンジン11と変速装置13との間に介設されたトルクコンバータ15と、スタータと発電機とを兼用しているベルト駆動スタータジェネレータ(以下、「BISG」という)16とを有している。変速装置13及びトルクコンバータ15は、断続装置の一例である。BISG16は、発電機及び発電電動機の一例である。
変速装置13は、多段自動変速機である。変速装置13は、詳細な図示は省略するが、複数の遊星歯車機構と、遊星歯車機構に含まれる各回転要素の回転を選択的に規制する摩擦締結要素としての複数のクラッチ要素及びブレーキ要素とを有している。変速装置13は、複数のクラッチ要素及びブレーキ要素の中から選択された要素を締結することによって、各変速段を実現するように構成されている。図1では、複数のクラッチ要素をクラッチ要素13aとして模式的に図示している。
トルクコンバータ15は、ポンプ、タービン及びステータを有し、エンジン11の動力(トルク)を作動油を介して変速装置13に伝達する。トルクコンバータ15は、エンジン11の出力軸とタービンとを直結するロックアップクラッチ15aを有している。
制御部100は、VCM17、PCM18及びTCM19を有している。VCM17、PCM18及びTCM19は、それぞれ、プロセッサ、ROM、RAM、I/Oインターフェース回路及びデータバスを有している。
VCM17は、主に車両全体を制御している。VCM17には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ21、車速を検出する車速センサ22、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ23、ブレーキ操作の有無を検出するブレーキスイッチ24、運転者がブレーキペダル31に足を載せたことを検出するブレーキタッチセンサ25、運転者がアクセルペダル32に足を載せたことを検出するアクセルタッチセンサ26、運転者がシフトノブ33に触ったことを検出するシフトノブタッチセンサ27、運転者がECO運転モードを選択するためのECOスイッチ28及び運転者がフットレスト34に足を載せたことを検出するフットレストタッチセンサ29からの信号が入力される。ブレーキタッチセンサ25は、例えば、赤外線センサであって、ブレーキペダル31上の物体の有無を検知する。同様に、アクセルタッチセンサ26は、アクセルペダル32上の物体の有無を、シフトノブタッチセンサ27は、シフトノブ33上の物体の有無を、フットレストタッチセンサ29は、フットレスト34上の物体の有無を検知する。フットレスト34は、アクセルペダル32の右隣りに設けられている。ECOスイッチ28は、例えば、インストゥルメントパネル上に配置され、ECO運転の実行/解除を切り替えるスイッチである。ECOスイッチ28は、選択スイッチの一例である。ECO運転モードは、通常運転よりも燃費性能を自動的に向上させた運転を行うモードである。
また、VCM17は、PCM18及びTCM19と信号の授受可能に接続されている。例えば、VCM17は、エンジン11を作動させるオン指令、エンジン11を停止させるオフ指令、エンジン11に対する要求トルクに関するトルク指令をPCM18に送信する。また、VCM17は、変速装置13に対する要求ギヤ段に関する指令及び変速装置13及びトルクコンバータ15に対するクラッチの締結/開放に関する指令を変速装置13及びトルクコンバータ15に送信する。
PCM18は、主にエンジン11及びBISG16を制御している。例えば、PCM18は、VCM17からの信号を受けて、燃料噴射に関する指令や点火に関する指令をエンジン11へ、発電指令又は力行指令をBISG16へ送信する。
TCM19は、主に変速装置13及びトルクコンバータ15を制御している。例えば、TCM19は、VCM17からの信号を受けて、クラッチ要素及びブレーキ要素の作動指令を変速装置13へ、ロックアップクラッチ15aの作動指令をトルクコンバータ15へ送信する。
VCM17は、ECOスイッチ28が運転者により選択されている場合には、通常運転よりも燃費性能を向上させた運転であるECO運転を実行するECO運転モードとなる。例えば、ECO運転においては、VCM17は、通常運転に比べて燃費性能が向上するタイミングで変速段が切り替わるように、TCM19へ指令を出力する。つまり、ECO運転では、動力性能よりも燃費性能が優先される。
このように構成された車両駆動ユニットの制御装置は、アクセルがオフのときに、エンジンブレーキを作用させない開放運転と、エンジンブレーキを作用させるエンジンブレーキ運転とを切り替えている。図2,3に、アクセルオフ時の運転制御のフローチャートを示す。
まず、制御部100は、ステップSa1において、各種センサの検出信号を読み込む。具体的には、制御部100は、アクセル開度センサ21からのアクセル開度Acc、車速センサ22からの車速V、エンジン回転数センサ23からのエンジン回転数Ne、ブレーキスイッチ24からのブレーキスイッチのオン/オフ状態、ブレーキタッチセンサ25からのブレーキペダル31への足載せの有無、アクセルタッチセンサ26からのアクセルペダル32への足載せの有無、シフトノブタッチセンサ27からのシフトノブ33への接触の有無及びECOスイッチ28からのECO運転モードの選択の有無を読み込む。
次に、ステップSa2において、制御部100は、車両が走行中であり且つアクセルがオンからオフになったか否かを判定する。例えば、制御部100は、車速Vが所定速度以上且つエンジン回転数Neが所定回転数以上である場合に、走行中であると判定する。制御部100は、アクセル開度Accが零になったときに、アクセルがオンからオフになったと判定する。制御部100は、車両が走行中であり且つアクセルがオンからオフになった場合にはステップSa3へ進む一方、車両が走行中ではなく又はアクセルがオンからオフになっていない場合(例えば、アクセルがオンの場合や、アクセルが単にオフの場合)にはステップSa5へ進む。
ステップSa3において、制御部100は、ブレーキがオフか否かを判定する。例えば、制御部100は、ブレーキスイッチ24がオフの場合にブレーキがオフであると判定する。制御部100は、ブレーキがオフの場合にはステップSa7へ進む一方、ブレーキがオフでない場合にはステップSa4へ進む。
ブレーキがオフでない場合、即ち、ブレーキがオンの場合には、制御部100は、ステップSa4においてエンジン11の燃料供給及び点火を停止し、ステップSa1へ戻り、ステップSa1,Sa2の処理を再び実行する。つまり、ブレーキがオンの場合には、エンジンブレーキ運転や開放運転を行うことなく、単に燃料供給及び点火を停止する。ここで、再度のステップSa2においては、前回のステップSa2以降にアクセルがオンになっていない限りアクセルがオンからオフになったと判定されることはないので、NOと判定され、制御部100は、ステップSa5へ進む。
ステップSa5では、制御部100は、燃料供給及び点火停止中であり且つアクセルがオンになったか、又は燃料供給及び点火停止中であり且つエンジン回転数が所定の復帰回転数以下になったかを判定する。燃料供給及び点火停止中にアクセルがオンになったか又は燃料供給及び点火停止中にエンジン回転数が所定の復帰回転数以下になった場合には、制御部100は、ステップSa6において燃料供給及び点火を再開し、ステップSa1へ戻る。一方、ステップSa5の何れの条件も満たさない場合には、制御部100は、ステップSa1へ戻る。
例えば、運転者がアクセルをオンにして運転している場合には、制御部100は、ステップSa2からステップSa5へ進み、燃料供給及び点火停止中ではないのでNOと判定され、ステップSa1へ戻る。こうして、ステップSa1,Sa2,Sa5の処理が繰り返される。アクセルがオンからオフになると、制御部100は、ステップSa2からステップSa3へ進む。アクセルをオンからオフにした後にブレーキが踏まれた場合には、制御部100は、ステップSa3からステップSa4へ進み、燃料供給及び点火停止を実行して、ステップSa1へ戻る。その後のステップSa2では、アクセルオフの状態が継続している限りNOと判定され、制御部100は、ステップSa5へ進む。そして、アクセルが再びオンとなり、そのアクセルがオンからオフになるまで、ステップSa1,Sa2,Sa5の処理が繰り返される。
走行中にアクセルがオンからオフになり且つブレーキがオフの場合には、制御部100は、ステップSa1〜Sa3を経て、ステップSa7に進む。ステップSa7において、制御部100は、運転者の足がブレーキペダル31に載せられているか否かを判定する。制御部100は、ブレーキタッチセンサ25がブレーキペダル31上の物体(足)を検知しているときに、運転者の足がブレーキペダル31に載せられていると判定する。制御部100は、ブレーキペダル31への足載せが有る場合にはステップSa8へ進む一方、ブレーキペダル31への足載せが無い場合にはステップSa12へ進む。
制御部100は、ブレーキペダル31への足載せが有る場合には運転者の減速意思が強いと判断して、ステップSa8以降において回生制動を伴うエンジンブレーキ運転である回生エンジンブレーキ運転を実行する。具体的には、制御部100は、ステップSa8において、変速装置13のクラッチ要素13aの締結及びトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aの締結を維持し、ステップSa9において、エンジン11の燃料供給及び点火を停止し、ステップSa10において、BISG16を発電機として機能させる。ここで、「変速装置13のクラッチ要素13aの締結」とは、変速装置13の複数のクラッチ要素の全てを締結することを意味するのではなく、複数のクラッチ要素及びブレーキ要素のうち、エンジン11と車輪12,12との間でのトルク伝達をそのときの運転状況に応じた適切な変速段で実現するために必要な要素を締結することを意味する。つまり、運転状況に応じて、2つのクラッチ要素を締結する場合もあれば、1つのクラッチ要素及び1つのブレーキ要素を締結する場合もある。
つまり、エンジン11と車輪12,12との間のトルク伝達が維持された状態で燃料供給及び点火が停止されるので、エンジン11は、車輪12,12にとって抵抗として作用し、エンジンブレーキとして機能する。それに加えて、BISG16が発電機として機能し、回生制動を行う。回生エンジンブレーキ運転では、エンジン11の抵抗に加えて、BISG16の駆動力がエンジンブレーキとして作用する。そのため、車輪12,12には、比較的大きな減速度が付与される。
こうして、ブレーキペダル31への足載せが検出された場合には、強い減速意思があるとして、比較的大きな減速度の回生エンジンブレーキ運転が実行される。
尚、エンジン回転数が所定の下限回転数未満になると、ステップSa11において、制御部100は、変速装置13のクラッチ要素13aを開放し且つトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aを開放する。エンジン11が停止するまでエンジン11と車輪12,12とが連結されていると、車両の快適性、即ち、NVH(Noise, Vibration and Harshness)が悪化する。そこで、エンジン回転数が所定の下限回転数未満となったときにクラッチ要素13a及びロックアップクラッチ15aを開放することによって、エンジン11をスムーズに停止させることができる。
一方、ステップSa7においてブレーキペダル31への足載せが検出されたかった場合には、制御部100は、ステップSa12において、運転者の足がアクセルペダル32に載せられているか否かを判定する。制御部100は、アクセルタッチセンサ26がアクセルペダル32上の足を検知しているときに、運転者の足がアクセルペダル32に載せられていると判定する。尚、アクセルペダル32への運転者の足載せには、運転者が足をアクセルペダル32から放した状態から足をアクセルペダル32へ再び載せる再足載せも含む。制御部100は、アクセルペダル32への足載せが有る場合にはステップSa13へ進む一方、アクセルペダル32への足載せが無い場合にはステップSa14へ進む。
ステップSa14では、運転者のシフトノブ33への非接触状態からの接触が有ったかを確認する。ステップSa14において、制御部100は、シフトノブタッチセンサ27がシフトノブ33上の物体(手)を検知していない状態から、シフトノブ33上の物体を検知するようになったときに、シフトノブ33への非接触状態からの接触があったと判定する。つまり、ここでのシフトノブ33への接触は、非接触状態からの接触を意味し、接触状態が継続している際の接触を意味するものではない。例えば、アクセルオフ時からずっとシフトノブ33に接触している場合には、ステップSa14ではNOと判定される。以下、シフトノブ33への非接触状態からの接触を「再接触」と称する。
制御部100は、シフトノブ33への再接触が有った場合にはステップSa15へ進む一方、シフトノブ33への再接触が無い場合にはステップSa17へ進む。
アクセルペダル32への足載せが無く且つシフトノブ33への再接触も無い場合には、制御部100は、ステップSa17以降においてエンジンブレーキが作用しない開放運転を実行する。具体的には、制御部100は、ステップSa17において、変速装置13のクラッチ要素13a及びトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aを開放し(即ち、締結を解除する)、ステップSa18において、エンジン11の燃料供給及び点火を停止する。つまり、エンジン11と車輪12,12との間のトルク伝達が遮断された状態で燃料供給及び点火が停止されるので、エンジン11はエンジンブレーキとして作用しない。
こうして、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32への足載せが無く且つシフトノブ33への再接触が無い場合には、減速意思が非常に弱いとして、減速度の小さい開放運転が実行される。開放運転では、運転者の弱い減速意思に応じた小さな減速度で走行できると共に、走行距離当たりの燃料消費を抑制して燃費を向上させることができる。
尚、シフトノブ33への再接触が有った場合には、制御部100は、ステップSa15以降において、後述する通常エンジンブレーキ運転を実行する。
また、開放運転中は車速が監視され、車速に応じて通常エンジンブレーキ運転と開放運転との切り替えが行われる。詳しくは、制御部100は、ステップSa19において、開放運転を開始してから車速が増大したか否かを判定する。具体的には、制御部100は、開放運転を開始してから車速Vの変化量ΔVが所定値α以上となったか否かを判定し、車速Vが所定値α以上増大している場合にはステップSa20へ進む一方、それ以外の場合はステップSa19において車速Vの監視を継続する。
ステップSa20において、制御部100は、変速装置13のクラッチ要素13aの締結及びトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aを締結する。この時点において、エンジン11への燃料供給及び点火が停止されているので、クラッチ要素13a及びロックアップクラッチ15aを締結するとエンジンブレーキが作用するようになる。つまり、開放運転から通常エンジンブレーキ運転に移行する。
例えば、降坂走行時に開放運転を行うと、車速が上昇していく可能性がある。そのような場合には、開放運転から通常エンジンブレーキ運転に移行し、減速度を増大させて、車速の上昇を抑制する。
こうして、開放運転から通常エンジンブレーキ運転に移行した後は、車速が低下し過ぎないかが監視される。詳しくは、制御部100は、ステップSa21において、車速Vが所定車速V0以下となったか否かを判定する。制御部100は、車速VがV0以下となった場合にはステップSa22へ進む一方、それ以外の場合はステップSa21において車速Vの監視を継続する。ここで、所定車速V0は、例えば、アクセルオフになったときの車速、開放運転を開始したときの車速、又は、それらの車速から所定値だけ減じた車速等、任意に設定することができる。ここでの通常エンジンブレーキ運転は、車速の上昇を抑制することを目的としており、減速のためではないので、所定車速V0は、減速し過ぎと想定される車速に設定すればよい。
例えば、前述の如く、降坂走行中に開放運転から通常エンジンブレーキ運転に移行した場合には、降坂走行から平坦な道の走行へ移行すると、車速の上昇は自然と無くなるので、通常エンジンブレーキ運転を継続していると、運転者の意思以上に減速する可能性がある。そこで、車速が或る程度低下したときには、車速上昇の可能性が無いとして、元の開放運転に戻るようになっている。
こうして、開放運転中は、制御部100は、ステップSa19〜Sa22を繰り返し、車速を監視しながら、通常エンジンブレーキ運転と開放運転とを切り替える。
尚、ステップSa17以降にシフトノブ33への再接触若しくはアクセルペダル32への足載せが検知された場合には、制御部100は、ステップSa15へ進んで、クラッチを締結して、通常エンジンブレーキ運転へ移行する。一方、ステップSa17以降にブレーキペダル31への足載せが検知された場合には、制御部100は、ステップSa8へ進んで、クラッチ締結して、回生制動を伴う回生エンジンブレーキ運転へ移行する。
一方、アクセルペダル32への足載せが有る場合には、制御部100は、ステップSa13以降において回生制動を伴わないエンジンブレーキ運転である通常エンジンブレーキ運転を実行する。具体的には、制御部100は、ECO運転モードが選択されていないか(ステップSa13)を確認する。制御部100は、ECOスイッチ28がオンの場合には、ECO運転モードが選択されているとしてステップSa14へ進む一方、ECOスイッチ28がオフの場合には、ECO運転モードが選択されていないとしてステップSa15へ進む。ステップSa14以降では、前述の如く、シフトノブ33への再接触が無いことを条件に開放運転が行われる。つまり、ECO運転モードが選択されている場合には、原則として、通常エンジンブレーキ運転ではなく開放運転が行われる。
ECO運転モードではない場合には、制御部100は、ステップSa15において、変速装置13のクラッチ要素13aの締結及びトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aの締結を維持し、ステップSa16において、エンジン11の燃料供給及び点火を停止する。
つまり、エンジン11と車輪12,12との間のトルク伝達が維持された状態で燃料供給及び点火が停止されるので、エンジン11は、車輪12,12にとって抵抗として作用し、エンジンブレーキとして機能する。通常エンジンブレーキ運転では、回生制動が行われないので、回生エンジンブレーキ運転よりは小さく且つ開放運転よりは大きい減速度が付与される。
こうして、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32への足載せが有る場合には、減速意思が非常に弱く且つ加速意思があるとして、通常エンジンブレーキ運転が実行される。通常エンジンブレーキの減速度は、開放運転よりは大きいものの回生エンジンブレーキ運転よりは小さい。それに加え、通常エンジンブレーキ運転は、エンジン11と車輪12,12とのトルク伝達が維持されているので、開放運転に比べて加速応答性が高い。つまり、減速度を低減しつつ、加速応答性の高い運転を実行することができる。
ただし、ECO運転モードが選択されている場合には、通常エンジンブレーキではなく、減速度がより小さな開放運転が選択される。つまり、アクセルペダル32への足載せが有る場合に通常エンジンブレーキ運転を選択するという制御は、減速度を小さくすることよりも加速応答性を優先した制御である。そのため、運転者が減速を過剰と感じた場合にはアクセルペダル32が踏まれる可能性がある。仮に、より減速度の小さな開放運転が選択されていれば、アクセルペダル32の操作(即ち、燃料消費)を防ぐことができた可能性がある。このように、通常エンジンブレーキ運転は、加速性能を向上させる反面、燃費性能を悪化させている可能性がある。ECO運転モードは動力性能よりも燃費性能を優先する運転モードなので、ECO運転モードにおいては加速応答性よりも弱い減速度を優先すべく、開放運転が選択される。
尚、アクセルオフの走行中に運転者がシフトノブ33に再接触する場合は、運転者がエンジンブレーキを増大させるための操作を行う可能性がある。エンジンブレーキを増大させる方法は、車両によって様々である。例えば、マニュアルモード又はスポーツモードを有する場合には、マニュアルモード又はスポーツモードへ移行すること(あるいは、マニュアルモード又はスポーツモードへ移行して変速段を下げること)によってエンジンブレーキが増大する。そこで、制御部100は、シフトノブ33への再接触があった場合には、運転者の減速意思が有ると判定して通常エンジンブレーキ運転を選択する。
このように、アクセルがオンからオフになった後において、ブレーキペダル31への足載せが有る場合には回生エンジンブレーキ運転が選択され、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32へ足載せが有る場合には通常エンジンブレーキ運転が選択され、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32への足載せが無い場合には開放運転が選択される。そして、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32への足載せが有る場合であっても、例外的に、ECO運転が選択されている場合には開放運転が選択される。また、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32への足載せが無い場合であっても、例外的に、シフトノブ33への再接触があった場合には通常エンジンブレーキ運転が選択される。
尚、開放運転、通常エンジンブレーキ運転及び回生エンジンブレーキ運転の何れの運転においても、燃料供給及び点火を停止した後にアクセルがオンになると、燃料供給及び点火が再開される。
以上のように、車両駆動ユニットの制御装置は、エンジン11と車輪12,12との間の動力の伝達及び遮断を切り替える変速装置13及びトルクコンバータ15と、変速装置13及びトルクコンバータ15を制御する制御部100とを備えている。制御部100は、アクセルオフ後の運転者の操作から加減速意思を予測し、予測した加減速意思に応じて、変速装置13及びトルクコンバータ15の締結によりエンジンブレーキを作用させる運転であるエンジンブレーキ運転と変速装置13及びトルクコンバータ15を開放させた運転である開放運転とを切り替える。
この構成によれば、エンジンブレーキ運転は、減速度が比較的大きい一方で、加速する際の応答性が高いという特性がある。一方、開放運転は、減速度が比較的小さいという特性がある。そこで、アクセルオフ後の運転者の操作に基づいて、運転者が減速したいのか加速したいのか、さらには所望する減速度はどの程度かを予測して、エンジンブレーキ運転と開放運転とを使い分けることによって、運転者の加減速意思に応じた運転を自動的に実行することができる。これにより、無駄なブレーキ操作やアクセル操作を省略することができ、ひいては燃費性能を向上させることができる。
また、制御部100は、駆動力に関連する操作部に対する運転者の操作に基づいて加減速意思を予測する。
つまり、駆動力に関連する操作部に対する運転者の操作には、運転者の加減速意思がよく表れている。そのため、駆動力に関連する操作部に対する運転者の操作に基づいて加減速意思を予測することによって、運転者の加減速意思を的確に予測することができる。
例えば、駆動力に関連する操作部は、アクセルペダル32、ブレーキペダル31及びシフトノブ33の少なくとも1つである。アクセルペダル32への運転者の操作には、加速意思が現れる。ブレーキペダル31への運転者の操作には、減速意思が現れる。シフトノブ33への運転者の操作には、減速意思が現れる。
また、制御部100は、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知された場合にはエンジンブレーキ運転を行う一方、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知されていない場合には開放運転を行う。尚、前記実施形態では、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知されていない場合に常に開放運転が行われるのではなく、さらに、アクセルペダル32への足載せが検知されていないこと等の条件を満たす場合に開放運転が行われる。
この構成によれば、アクセルオフ後の走行中に運転者がブレーキペダル31へ足を載せている場合には、減速に備えている、即ち、将来的に減速しようとしている可能性がある。つまり、かかる操作には、運転者の減速意思が現れている。そこで、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知されたときにはエンジンブレーキ運転を行うことによって、開放運転に比べて減速度を大きくすることができ、運転者の減速意思に対応した運転を実行することができる。一方、アクセルオフ後の走行中に運転者がブレーキペダル31へ足を載せていない場合には、減速に備えていない、即ち、減速しようとはしていない可能性がある。つまり、かかる操作は、運転者の減速意思が非常に弱いことを表している。そこで、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知されていないときには開放運転を行うことによって、エンジンブレーキ運転に比べて減速度を小さくすることができ、運転者の減速意思に対応した運転を実行することができる。
また、制御部100は、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合にはエンジンブレーキ運転を行う一方、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知されていない場合には開放運転を行う。
アクセルオフ後に運転者がアクセルペダル32から足を一旦放し、足をアクセルペダル32へ再び載せる場合には、運転者が加速不足を感じて加速に備えている可能性が高く、運転者の加速意思が現れている。そこで、アクセルペダル32への運転者の足載せがある場合には、制御部100は、加速意思があると判断し、エンジンブレーキ運転を選択する。これにより、将来的な加速意思に備えて、加速応答性を高めておくことができる。一方、アクセルペダル32への運転者の足載せがない場合には、運転者が現状の車速及び減速度に満足している可能性が高く、運転者の加速意思が非常に弱いことの現れである。そこで、制御部100は、開放運転を選択することによって、燃費性能を向上させることができる。
また、制御部100は、ブレーキペダル31への運転者の足載せ及びアクセルペダル32への運転者の足載せが検知されていない場合には開放運転を行う一方、ブレーキペダル31への運転者の足載せ又はアクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合にはエンジンブレーキ運転を行う。
この構成によれば、開放運転とエンジンブレーキ運転との選択に、ブレーキペダル31への操作だけでなく、アクセルペダル32への操作も考慮される。ブレーキペダル31への足載せが検知されている場合には、減速意思が現れているので、エンジンブレーキ運転を選択することによって適度な減速度が付与される。また、アクセルオフ後の走行中にアクセルペダル32への足載せが検知された場合には、運転者の加速意思が現れているので、エンジンブレーキ運転を選択することによって加速応答性が高められる。一方、アクセルオフ後の走行中にアクセルペダル32への足載せが検知されていない場合には、運転者の加速意思が非常に弱いので、加速応答性を求めてエンジンブレーキ運転を選択する必要性がない。それに加えて、ブレーキペダル31への足載せが検知されていない場合には、前述の如く、減速意思が非常に小さい。そこで、ブレーキペダル31及びアクセルペダル32への運転者の足載せが検知されていない場合には開放運転を選択することによって、運転者の弱い減速意思に応じた小さな減速度で走行できる。
また、車両駆動ユニットの制御装置は、BISG16をさらに備え、制御部100は、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知されたことによってエンジンブレーキ運転を行う際には、エンジンブレーキを作用させると共にBISG16による回生制動を伴う回生エンジンブレーキ運転を行う一方、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知されたことによってエンジンブレーキ運転を行う際には、BISG16による回生制動を伴うことなくエンジンブレーキを作用させる通常エンジンブレーキ運転を行う。
この構成によれば、エンジンブレーキ運転には、回生制動を伴わない通常エンジンブレーキ運転と、回生制動を伴う回生エンジンブレーキ運転とが含まれている。回生エンジンブレーキ運転の方が、回生制動を伴う分、通常エンジンブレーキ運転よりも減速度が大きい。そして、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知された場合、及びアクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合は共にエンジンブレーキ運転が行われるが、ブレーキペダル31の場合は回生エンジンブレーキ運転が選択され、アクセルペダル32の場合は通常エンジンブレーキ運転が選択される。つまり、ブレーキペダル31への運転者の足載せが検知された場合の方が、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合に比べて減速意思が強いので、より減速度の大きな回生エンジンブレーキ運転が選択される。こうすることで、エンジンブレーキ運転を行う際の減速度を運転者の加減速意思に適合させることができる。
また、車両駆動ユニットの制御装置は、燃費性能が向上する運転モードを運転者が選択するためのECOスイッチ28をさらに備え、制御部100は、ECOスイッチ28により燃費性能が向上する運転モードが選択されている場合には、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合であっても開放運転を行う。
この構成によれば、ECO運転が選択されていない通常運転時には、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合には基本的には加速応答性を高めるべくエンジンブレーキ運転が選択される。つまり、運転者のアクセルペダル32への足載せは、加速意思の現れである一方、減速意思が非常に弱いことの現れでもある。通常運転時には、加速意思に応えることを優先し、エンジンブレーキ運転が選択される。しかしながら、ECO運転モードが選択されているときには、燃費性能を向上させる必要がある。そこで、ECO運転時には、アクセルペダル32への運転者の足載せが検知された場合であっても開放運転が選択される。これにより、ECO運転時には、燃費性能を優先しつつ、運転者の加減速意思に対応した運転を実行することができる。
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係る車両駆動ユニットの制御装置について説明する。図4は、実施形態2に係る、アクセルオフ時の運転制御のフローチャートである。実施形態2に係るアクセルオフ時の運転制御は、ステップSa6よりも後の処理が実施形態1と異なる。そこで、ステップSa6よりも後の処理、即ち、ステップSb7以降の処理を、図4を参照しながら説明する。
制御部100は、ステップSb7において、運転者の足がブレーキペダル31に載せられているか否かを判定する。制御部100は、ブレーキペダル31への足載せが有る場合にはステップSb8へ進む一方、ブレーキペダル31への足載せが無い場合にはステップSb12へ進む。
制御部100は、ステップSb8〜Sb11において回生エンジンブレーキ運転を実行する。ステップSb8〜Sb11の処理は、実施形態1のステップSa8〜Sa11の処理と同様である。尚、この制御では、回生エンジンブレーキ運転が実行されているが、ステップSb10を省略して通常エンジンブレーキ運転が実行されてもよい。
一方、ステップSb7においてブレーキペダル31への足載せが検出されたかった場合には、制御部100は、ステップSb12において、変速装置13のクラッチ要素13aを開放し且つトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aを開放し、ステップSb13において、エンジン11の燃料供給及び点火を停止する。つまり、制御部100は、開放運転を実行する。これらステップSb12,Sb13の処理は、実施形態1のステップSa17,Sa18の処理と同様である。
その後、制御部100は、ステップSb14において、開放運転を開始してから所定時間経過したか否かを判定する。具体的には、クラッチ要素13a及びロックアップクラッチ15aが開放され且つ燃料供給及び点火が停止された時点から所定時間の計時が開始される。尚、アクセルがオンからオフになることが開放運転のトリガなので、アクセルがオンからオフになった時点から所定時間の計時が開始されてもよい。その他、開放運転の開始に関連するタイミングであれば、任意の時点から所定時間の計時を開始してもよい。
制御部100は、所定時間が経過するまで待機し、所定時間が経過するとステップSb15へ進む。この所定時間の経過を待機している間は開放運転が継続される。つまり、所定時間は、アクセルがオンからオフになった後、ブレーキペダル31への足載せが無い場合に、開放運転を継続すべき最小時間に設定される。
所定時間が経過すると、制御部100は、ステップSb15において、アクセルペダル32への運転者の再足載せが検知されたか否かを判定する。制御部100は、アクセルタッチセンサ26がアクセルペダル32上の足を検知していない状態から、アクセルペダル32上の足を検知するようになったときに、アクセルペダル32への運転者の再足載せが有ったと判定する。制御部100は、アクセルペダル32への再足載せが有る場合にはステップSb17へ進む一方、アクセルペダル32への再足載せが無い場合にはステップSb16へ進む。尚、ここで判定されるのは、運転者がアクセルペダル32へ足を載せていない状態から足をアクセルペダル32へ載せることであり、アクセルペダル32から足を放した時期はいつであってもよい。つまり、開放運転を開始した後であって所定時間経過する前にアクセルペダル32から足を放し、所定時間経過後に足をアクセルペダル32へ再び載せた場合には、ステップSb15においてYESと判定される。
制御部100は、ステップSb16において、ECO運転が選択されていないかを判定する。このステップSb16の処理は、実施形態1のステップSa13と同様である。ECO運転が選択されている場合には、ステップSb17へ進む。
ECO運転が選択されていない場合には、制御部100は、ステップSb18において、変速装置13のクラッチ要素13aの締結及びトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aを締結する。この時点において、エンジン11への燃料供給及び点火が停止されているので、クラッチ要素13a及びロックアップクラッチ15aを締結するとエンジンブレーキが作用するようになる。つまり、開放運転からエンジンブレーキ運転に移行する。尚、このエンジンブレーキ運転は回生制動を伴わない通常エンジンブレーキ運転である。その後、制御部100は、ステップSb11へ進み、エンジン回転数が下限回転数を下回ると、クラッチ要素13a及びロックアップクラッチ15aを開放して、エンジン11をスムーズに停止させる。
一方、ステップSb17においては、制御部100は、シフトノブ33への再接触があったか否かを判定する。制御部100は、シフトノブ33への再接触があった場合にはステップSb18へ進む一方、シフトノブ33への再接触が無い場合にはステップSb19へ進む。ステップSb18では、前述の如く、通常エンジンブレーキ運転への移行が行われる。一方、ステップSb19以降では、原則として開放運転が継続され、車速に応じて開放運転と通常エンジンブレーキ運転が切り替えられる。ステップSb19〜Sb22の処理は、実施形態1のステップSa19〜Sa22と同様である。
このように、実施形態2では、アクセルがオンからオフになった後、ブレーキペダル31への足載せが無い場合には、少なくとも運転者は減速不足とは感じていないと判断して、まずは開放運転を行う。そして、開放運転を少なくとも所定時間は継続する。その後、アクセルペダル32への再足載せを確認し、アクセルペダル32への再足載せが無ければ、そのまま開放運転を継続する。一方、アクセルペダル32への再足載せが有る場合には、実施形態1と同様に、加速応答性を高めるべく通常エンジンブレーキ運転を実行する。ただし、ECO運転が選択されている場合には、減速度の小さい運転を実行すべく、そのまま開放運転を継続する。また、開放運転中にシフトノブ33への再接触があった場合には、運転者が減速不足を感じているとして、通常エンジンブレーキ運転へ移行する。
以上のように、実施形態2に係る車両駆動ユニットの制御装置において、制御部100は、ブレーキペダル31への運転者の足載せの有無に基づいて開放運転を行う場合には、開放運転を開始してから所定期間は開放運転を継続し、運転者が足をアクセルペダル32から放した状態から足をアクセルペダル32へ再び載せる再足載せが所定期間の経過後に検知された場合にはエンジンブレーキ運転に移行する。
この構成によれば、開放運転が選択された場合には、少なくともその時点では運転者は減速不足を感じていないとして、少なくとも所定時間経過する間は開放運転が継続される。所定時間が経過する間に、アクセルペダル32への運転者の再足載せが検知されたとしても、開放運転が継続される。つまり、運転者がアクセルペダル32へ足を再び載せた場合は加速しようとしている可能性があるが、アクセルがオンからオフになった直後であるという状況からすると、直ちには加速しない可能性が高い。それに加えて、運転者がブレーキペダル31へ足を載せていないので、減速意思も小さい可能性がある。よって、アクセルがオンからオフにされ且つブレーキペダル31への足載せが無い場合には、制御部100は、加速意思も減速意思も非常に小さいと判断して開放運転を所定時間の間は継続する。その後、アクセルペダル32への運転者の再足載せが検知された場合には開放運転からエンジンブレーキ運転へ移行し、加速応答性が高められる。
なお、上記実施形態1のステップSa15及び実施形態2のステップSb18ではクラッチ締結とともにBISG16については回生制動を機能させないようにしたが、これに変えて、制御部100は、BISG16にエンジンブレーキ分の力行運転を行わせるようにしてもよい。この構成によりクラッチ締結による減速感の増大を防ぎつつアクセルを踏み込んだ際の加速応答性をさらに高めることが可能となる。このとき、制御部100は、BISG16に、エンジンブレーキ分及び車両抵抗分の力行運転を行わせるようにしてもよい。
また、上記実施形態1のステップSa12及び実施形態2のステップSb15でNOの後に制御部100がフットレストタッチセンサ29に基づいてフットレスト34への足載せの有無を判定するステップを追加し、フットレスト34への足載せが検知されない場合はその時点でステップSa13及びステップSb16へ進み、フットレスト34への足載せが検知された場合にはその時点で加速もしくは減速意思はないとしてステップSa14及びステップSb17へ進むようにしてもよい。
《実施形態3》
続いて、実施形態3に係る車両駆動ユニットの制御装置について説明する。図5は、実施形態3に係るアクセルオフ時の運転制御のフローチャートである。実施形態3に係るアクセルオフ時の運転制御は、ステップSa6よりも後の処理が実施形態1と異なる。そこで、ステップSa6よりも後の処理、即ち、ステップSc7以降の処理を、図5を参照しながら説明する。
制御部100は、ステップSc7〜Sc9において回生エンジンブレーキ運転を実行する。ステップSc7〜Sc9の処理は、実施形態1のステップSa8〜Sa10の処理と同様である。つまり、実施形態3では、アクセルオフになると、基本的にはエンジンブレーキ運転、より詳しくは、回生エンジンブレーキ運転が実行される。尚、この制御では、回生エンジンブレーキ運転が実行されているが、ステップSc9を省略して通常エンジンブレーキ運転が実行されてもよい。
続く、ステップSc10において、制御部100は、シフトノブ33への運転者の再接触が有ったか否かを判定する。制御部100は、シフトノブ33への再接触が無い場合にはステップSc11へ進む一方、シフトノブ33への再接触が有る場合にはステップSc12へ進む。つまり、回生エンジンブレーキ運転中にシフトノブ33への運転者の再接触がない場合には、運転者の加減速意思に特段の変更がないとして、回生エンジンブレーキ運転を継続して、ステップSc11へ進む。ステップSc11の処理は、実施形態1のステップSa11の処理と同様である。
一方、回生エンジンブレーキ運転中にシフトノブ33への運転者の再接触があった場合には、制御部100は、ステップSc12,Sc13において開放運転を実行する。これらステップSc12,Sc13の処理は、実施形態1のステップSa17,Sa18の処理と同様である。また、制御部100は、開放運転を開始した後、ステップSc14からSc17において、車速を監視して、車速に応じて開放運転と通常エンジンブレーキ運転とを切り替える。これらステップSc14〜Sc17の処理は、実施形態1のステップSa19〜Sa22の処理と同様である。
このように、実施形態3では、アクセルがオンからオフになった後にまず回生エンジンブレーキ運転を実行することを基本とし、回生エンジンブレーキ運転中にシフトノブ33への再接触が有った場合には開放運転に移行する。シフトノブ33への再接触は、運転者の加減速意思の変更が現れている。回生エンジンブレーキ運転は減速度が大きいため、回生エンジンブレーキ運転中にシフトノブ33への再接触が有る場合には、運転者が減速度を小さくしようとしている可能性がある。例えば、シフトポジションをニュートラルに移行する可能性がある。そこで、このような場合には、制御部100は、減速度を小さくすべく開放運転に移行する。これにより、運転者の加減速意思に応じた運転を実行することができる。
以上のように、実施形態3に係る車両駆動ユニットの制御装置において、制御部100は、アクセルオフ後にエンジンブレーキ運転を行い、運転者がシフトノブ33から手を放していた状態からのシフトノブ33への接触がエンジンブレーキ運転中に検知された場合には開放運転へ移行する。
この構成によれば、制御部100は、シフトノブ33への運転者の再接触に基づいて、運転者の減速意思を予測している。すなわち、アクセルオフ後のエンジンブレーキ運転中に運転者がシフトノブ33に再接触する場合には、シフトポジションをニュートラルに変更して減速度を低減する可能性がある。そこで、制御部100は、エンジンブレーキ運転中に運転者のシフトノブ33への再接触が検知された場合には開放運転を行うことによって、運転者のシフトチェンジを省略させることができる。
《実施形態4》
続いて、実施形態4に係る車両駆動ユニットの制御装置について説明する。図6は、実施形態4に係るアクセルオフ時の運転制御のフローチャートである。実施形態4に係るアクセルオフ時の運転制御は、ステップSa6よりも後の処理が実施形態1と異なる。そこで、ステップSa6よりも後の処理、即ち、ステップSd7以降の処理を、図6を参照しながら説明する。
制御部100は、ステップSd7,Sd8において開放運転を実行する。ステップSd7,Sd8の処理は、実施形態1のステップSa17,Sa18の処理と同様である。つまり、実施形態4では、アクセルオフになると、基本的には開放運転が実行される。
続く、ステップSd9において、制御部100は、シフトノブ33への運転者の再接触が有ったか否かを判定する。制御部100は、シフトノブ33への再接触が無い場合にはステップSd14へ進む一方、シフトノブ33への再接触が有る場合にはステップSd10へ進む。つまり、開放運転中にシフトノブ33への運転者の再接触がない場合には、運転者の加減速意思に特段の変更がないとして、開放運転を継続する。その後、制御部100は、ステップSd14からSd17において、車速を監視して、車速に応じて開放運転と通常エンジンブレーキ運転とを切り替える。これらステップSd14〜Sd17の処理は、実施形態1のステップSa19〜Sa22の処理と同様である。
一方、開放運転中にシフトノブ33への運転者の再接触があった場合には、制御部100は、ステップSd10〜Sd13において回生エンジンブレーキ運転を実行する。これらステップSd10〜Sd13の処理は、実施形態1のステップSa8〜Sa11の処理と同様である。尚、この制御では、回生エンジンブレーキ運転が実行されているが、ステップSd12を省略して通常エンジンブレーキ運転が実行されてもよい。
このように、実施形態4では、アクセルがオンからオフになった後にまず開放運転を実行することを基本とし、開放運転中にシフトノブ33への再接触があった場合には回生エンジンブレーキ運転に移行する。シフトノブ33への再接触は、運転者の加減速意思の変更が現れている。回生エンジンブレーキ運転は減速度が小さいため、開放運転中にシフトノブ33への再接触が有る場合には、運転者が減速度を大きくしようとしている可能性がある。例えば、マニュアルモード又はスポーツモードへ移行する可能性がある。そこで、このような場合には、制御部100は、減速度を大きくすべく回生エンジンブレーキ運転に移行する。これにより、運転者の加減速意思に応じた運転を実行することができる。
以上のように、実施形態4に係る車両駆動ユニットの制御装置において、制御部100は、アクセルオフ後に開放運転を行い、運転者がシフトノブ33から手を放していた状態からのシフトノブ33への接触が開放運転中に検知された場合にはエンジンブレーキ運転へ移行する。
この構成によれば、制御部100は、シフトノブ33への運転者の再接触に基づいて、運転者の減速意思を予測している。すなわち、アクセルオフ後の開放運転中に運転者がシフトノブ33に再接触する場合には、エンジンブレーキが増大する運転モードへ移行して減速度を大きくする可能性がある。そこで、制御部100は、開放運転中に運転者のシフトノブ33への再接触が検知された場合にはエンジンブレーキ運転を行うことによって、運転者の操作を省略させることができる。
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
例えば、実施形態では、変速装置13及びトルクコンバータ15を断続装置として採用しているが、断続装置の構成はこれに限られるものではない。様々な変速装置又はクラッチ機構を断続装置として採用することができる。例えば、自動変速機に限らず、手動変速機においても本技術を採用することができる。手動変速機においては、通常、運転者の操作によってクラッチの断続が制御されるが、それとは別に制御部100により制御される自動クラッチ機構を設けるようにする。そして、前述のようなアクセルがオンからオフになった状況では、アクセルオフ速度Vaccに応じて制御部100が自動クラッチ機構を制御し、開放運転及びエンジンブレーキ運転を選択するようにすればよい。
また、エンジン11と車輪12,12とのトルク伝達の断続を、変速装置13及びトルクコンバータ15の両方で行っているが、何れか一方だけで行ってもよい。つまり、前記実施形態では、エンジン11と車輪12,12との間のトルク伝達が遮断する際に、変速装置13のクラッチ要素13a及びトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aの両方を開放しているが、クラッチ要素13a及びロックアップクラッチ15aの少なくとも一方を開放する構成であればよい。また、ロックアップ機能を有さないトルクコンバータであれば、変速装置13によってトルク伝達の断続を切り替えればよい。
また、前記実施形態では、BISG16を発電機として採用しているが、発電機は、BISGに限られるものではない。例えば、発電機は、スタータとジェネレータとが統合されたものではなく、ジェネレータ、即ち、オルタネータであってもよい。
また、エンジンブレーキ運転においては、エンジン回転数が所定値以下になると変速装置13のクラッチ要素13aを開放し且つトルクコンバータ15のロックアップクラッチ15aを開放しているが、これに限られるものではない。エンジンブレーキ運転においてエンジン回転数が所定の復帰回転数以下になった場合に、制御部100が燃料供給及び点火を再開して、アイドル運転を実行するようにしてもよい。
さらに、開放運転において、エンジン11は最終的に停止するが、これに限られるものではない。開放運転中にエンジン回転数が所定の復帰回転数以下になった場合に、制御部100が燃料供給及び点火を再開して、アイドル運転を実行するようにしてもよい。
また、ブレーキタッチセンサ25、アクセルタッチセンサ26及びシフトノブタッチセンサ27は、赤外線センサに限られるものではない。ブレーキペダル31への足載せ、アクセルペダル32への足載せ、及びシフトノブ33への接触をそれぞれ検知できるセンサであれば、任意のセンサを採用することができる。シフトノブ33に対しては、接触を検知する代わりに近接を検知するセンサであってもよい。
実施形態1では、ブレーキペダル31への足載せが無く且つアクセルペダル32への足載せが有る場合には、通常運転時には通常エンジンブレーキ運転が選択され、ECO運転時には開放運転が選択されている。しかしながら、通常運転時であっても開放運転が選択されてもよい。つまり、実施形態1では、通常運転時に加速応答性を優先するために通常エンジンブレーキ運転を選択している。しかし、通常運転時でも加速応答性よりも燃費性能を優先させる場合には、開放運転を選択してもよい。
実施形態2では、アクセルがオンからオフになった後にブレーキペダルへの足載せが無い場合には、一旦、開放運転を行った後、アクセルペダルへの足載せが有った際には通常エンジンブレーキ運転は移行しているが、これに限られるものではない。つまり、アクセルがオンからオフになった後にブレーキペダルへの足載せが無い場合には、単に開放運転を行い、アクセルペダルへの足載せの有無に基づいた通常エンジンブレーキ運転への移行を実行しなくてもよい。
また、実施形態1,2においては、ECO運転モードか否かによって運転を変更しているが、この処理を省略してもよい。同様に、シフトノブ33への接触による運転の変更も省略してもよい。
また、実施形態では、燃費性能が向上する運転モードを運転者が選択するための選択スイッチの一例としてECOスイッチ28について説明しているが、該選択スイッチはECOスイッチ28に限られるものではない。例えば、コースティングスイッチのような、開放運転を直接選択するためのスイッチであってもよい。つまり、通常運転よりも燃費性能が向上する運転モードを選択するためのスイッチであればよく、当該運転モードの名称はどのようなものであってもよい。また、当該選択スイッチは、インストゥルメントパネルに配置されている場合に限られない。例えば、選択スイッチは、ステアリングやシフトノブに配置されていてもよい。さらには、選択スイッチは、フットレストに配置されていてもよい。
その他、本技術の作用効果を奏することができる限りは、各ステップの順番を入れ替えたり、複数のステップを並列に処理したり、別のステップを追加したりしてもよい。