本発明の活性光線硬化型インクジェットインク(以下において、「インクジェットインク」、又は単に、「インク」ともいう)は、ゲル化剤と、光重合性化合物と、光開始剤とを含んでいる。本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、温度により可逆的にゾルゲル相転移し、かつ一般式(1)で表される繰り返し単位と、親水性基を有する繰り返し単位とを有する重合体(A)を5〜20質量%含有することを特徴とする。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、本発明において「質量%」は特に注釈がない限り、インク全質量を100質量%としたときの各構成成分の含有量を、質量%で表したものを指す。
(活性光線硬化型インクジェットインク)
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、活性光線により硬化可能なインク組成物である。「活性光線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる光線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
(インク組成物)
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに係るインク組成物は、少なくとも、光重合性化合物、ゲル化剤及び光開始剤を含有することを特徴としており、さらに色材を含有してもよい。
以下において、本発明の活性光線硬化型インクジェットインクを構成する各種化合物等について詳細な説明をする。
(光重合性化合物)
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、活性光線を照射されることにより架橋又は重合する化合物である。光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物であり得る。好ましくはラジカル重合性化合物である。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物)である。インク中にラジカル重合性化合物が一種のみが含まれていてもよく、二種以上が含まれていてもよい。
光重合性化合物の含有量は、分散性やゾルゲル相転移、硬化性を良好にするために、インク全質量に対して1〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。
(光重合性化合物(A))
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、光重合性化合物として、一般式(1)で表される繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体(以下、「光重合性化合物(A)」ともいう)を含有する。
以下に、光重合性化合物(A)について説明する。
本発明に用いられる光重合性化合物(A)は、一般式(1)で表される繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体であれば、制限なく使用できる。一般式(1)で表される化合物を使用することで、インク組成物の重合反応を進めることができる。
一般式(1)は、下記一般式(5)で表される基を有する繰り返し単位を必須の構成として有する。
一般式(5)において、Ra及びRbは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRbは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。
一般式(5)において、Ra及びRbは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
Ra及びRbは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、炭素数1〜2(メチル基、エチル基)であることが好ましく、炭素数1(メチル基)であることが特に好ましい。
これらの基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を表す。あるいは、Ra及びRbは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。
一般式(5)で表される基の具体例を下記に示す。本発明はこれらに限定されない。
以下、光重合性化合物(A)における、一般式(1)で表される繰り返し単位(a1)、親水性基を有する繰り返し単位(a2)について詳細に説明をする。
(一般式(1)において、Ra及びRbは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRbは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。Rcは水素原子又はメチル基を表す。Zは単結合、−COO−*又は−CONRd−*を表し、Rdは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、*はXに結合する位置を表す。Xは2価の有機基を表す。)
一般式(1)において、Ra及びRbは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRbは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。一般式(1)におけるRa及びRbは、既述の一般式(5)におけるRa及びRbとして例示したものと(好ましい例示も含めて)同様である。
一般式(1)において、Rcは水素原子又はメチル基を表す。Rcはメチル基であることが好ましい。
一般式(1)において、Zは単結合、−COO−*、又は−CONRd−*を表し、Rdは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、*はXとの結合位置を表す。Zは−COO−*であることが好ましい。
また、Rdは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を表す。Rdは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、又は、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。なお、Rdは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
一般式(1)において、Xは2価の有機基を表す。2価の有機基としては、アルキレン基であることが好ましい。前記アルキレン基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよい。また、アルキレン基中には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アリーレン基が存在していてもよい。Xがアルキレン基である場合の炭素数は2〜20であることが好ましく、炭素数2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。
一般式(1)において、Ra及びRbは各々独立に炭素数1〜2のアルキル基であり、Rcはメチル基であり、Zは−COO−であり、Xは炭素数2〜12のアルキレン基であることが好ましい。
光重合性化合物(A)における一般式(1)の繰り返し単位の含有量は5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜90質量%であることがさらに好ましく、30質量%〜90質量%であることが特に好ましい。
光重合性化合物(A)が一般式(1)で表される構造を含む場合、光重合性化合物(A)は下記一般式(1−1)で表される単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。
一般式(1−1)におけるRa、Rb、Rc、Z及びXは、既述の一般式(1)における定義と同様である。
式(1−1)で表される単量体の好ましい例としては以下の化合物(1−1−1)〜(1−1−11)を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
本発明における上記一般式(1―1)で表される繰り返し単位を与えるモノマー(1−1−1)〜(1−1−11)は、例えば特開昭52−988号公報、特開平4−251258号公報等に記載の方法を参考に製造できる。
(親水性基を有する繰り返し単位(a2))
本発明の光重合性化合物(A)は、親水性基を有する繰り返し単位(a2)を有する。
(a2)繰り返し単位における親水性基とは、光重合性化合物(A)の親水性を高める機能を有する基であれば、ノニオン性親水性基でもよいし、アニオン性もしくはカチオン性のようなイオン性親水性基のいずれも使用することができ、限定的ではない。
なお、繰り返し単位(a2)中の親水性基の個数は、限定的ではないが、1個でも複数でもよく、その数は、親水性基の種類、光重合性化合物(A)の分子量等に応じて、適宜選択される。
本発明で用いられるノニオン性親水性基としては、限定的ではないが、例えば、窒素原子又は酸素原子を含む複素環化合物から水素原子を1個除いた残基、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基、及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることがさらに好ましく、アルコール性水酸基、及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが特に好ましい。
前記窒素原子又は酸素原子を含む複素環化合物としては、γ―ブチロラクトン等のラクトン類、2−ピロリドン、エチレンウレア等の環状ウレア類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、12−クラウン−4等のクラウンエーテル類が挙げられる。
前記アミド基としては、限定的ではないが、例えば、下記一般式(6)で表される基が好ましく挙げられる。
(一般式(6)において、R1a及びR1bは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R1a及びR1bは互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。*は結合位置を表す。)
一般式(6)におけるR1a及びR1bは、各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。前記R1a及びR1bにおけるアルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基を表し、−COO−結合、−O−結合、又は−NH−結合を含んでいても良い。前記アルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。R1a及びR1bは、互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。これらの基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。前記R1a及びR1bで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
一般式(6)において、R1a及びR1bが有していてもよい置換基としては、水酸基等が好ましい。
前記アルキル置換カルバモイル基としては、カルバモイル基のNに結合する水素原子がアルキル基で置換されたモノアルキルカルバモイル基、又は、カルバモイル基のNに結合する2つの水素原子がアルキル基で置換されたジアルキルカルバモイル基が挙げられる。具体的には、下記一般式(7)で表される基が好ましく挙げられる。
(一般式(7)において、R2a及びR2bは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R2a及びR2bは互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。*は結合位置を表す。)
一般式(7)におけるR2a及びR2bは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R2a及びR2bにおけるアルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基を表し、−O−結合、−COO−結合、−C(=O)―結合を含んでいても良い。前記アルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。R2a及びR2bは互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。前記R2a及びR2bで表されるアルキル基の具体例としては、限定的ではないが、メチレン基、エチレン基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
一般式(7)において、R2a及びR2bが有していてもよい置換基としては、炭素数1〜2のアルコキシ基、水酸基等が好ましい。
前記ポリアルキレンオキシ構造を有する基としては、限定的ではないが、例えば、下記一般式(8)で表される基が好ましく挙げられる。
(一般式(8)において、R3aはアルキレン基を表し、R3bは水素原子又はアルキル基を表す。n3は、4〜50の整数を表す。複数存在するR3aは各々同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を表す。)
一般式(8)におけるR3aはアルキレン基を表す。前記R3aで表されるアルキレン基としては、直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表し、−O−結合又は−COO−結合を含んでいてもよい。前記アルキレン基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6が好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。一般式(8)の基において複数存在するR3aは、各々同一であっても異なっていても良く、同一であることが好ましい。これらの基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。R3aで表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基等が挙げられる。
一般式(8)におけるR3aが有していてもよい置換基としては、炭素数1〜2のアルコキシ基、水酸基等が好ましい。
一般式(8)におけるR3bは水素原子又はアルキル基を表す。前記R3bで表されるアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。R3bで表されるアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
一般式(8)におけるn3は、4〜50の整数を表し、4〜40がより好ましく、5〜30が更に好ましい。
本発明で用いられるイオン性親水性基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基及びそれらの塩、並びに4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。塩としては、金属塩やオニウム塩等が挙げられる。
イオン性親水性基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基及びそれらの塩からなる群から選ばれる基であることがより好ましく、カルボキシル基、スルホ基及びこれらの塩からなる群から選ばれる基であることがさらに好ましく、カルボキシル基及びその塩であることが特に好ましい。
カルボキシル基の金属塩としては、カルボキシル基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、−COOLi、−COONa、−COOK、等が挙げられ、−COONa、−COOK等であることが好ましい。
カルボキシル基のオニウム塩としては、カルボキシル基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、カルボキシル基のテトラアルキルアンモニウム塩、カルボキシル基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、カルボキシル基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
スルホ基の金属塩としては、スルホ基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、−SO3Li、−SO3Na、−SO3K、等が挙げられ、−SO3Na、−SO3Kであることが好ましい。
スルホ基のオニウム塩としては、スルホ基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、スルホ基のテトラアルキルアンモニウム塩、スルホ基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、スルホ基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
リン酸基の金属塩としては、リン酸基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、リン酸基のナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられ、リン酸基のナトリウム塩であることが好ましい。
リン酸基のオニウム塩としては、リン酸基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、リン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩、リン酸基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、リン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
ホスホン酸基の金属塩としては、ホスホン酸基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、ホスホン酸基のナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられ、ホスホン酸基のナトリウム塩であることが好ましい。
ホスホン酸基のオニウム塩としては、ホスホン酸基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、ホスホン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩、ホスホン酸のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、ホスホン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
フェノール性水酸基の金属塩としては、フェノール性水酸基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、フェノール性水酸基のナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられ、フェノール性水酸基のナトリウム塩であることが好ましい。
フェノール性水酸基のオニウム塩としては、フェノール性水酸基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、フェノール性水酸基のテトラアルキルアンモニウム塩、フェノール性水酸基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、フェノール性水酸基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
光重合性化合物(A)における繰り返し単位(a2)は、下記一般式(9)で表される構造であることが好ましい。
一般式(9)において、Rcyは水素原子またはメチル基を表す。Zyは−COO−*、−CONRdy−*または単結合を表し、Rdyは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Ryは単結合、アルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表す。Aは親水性基を表す。なお、*はRyに結合する位置を表す。
一般式(9)において、Rcyは水素原子またはメチル基を表す。
一般式(9)において、Zyは−COO−*、−CONRdy−*または単結合を表し、−COO−*であることが好ましい。なお、*はRyに結合する位置である。Rdyは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を表す。Rdyは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、又は、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。なお、Rdyは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
前記Rdyが有していてもよい置換基としては、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)等が挙げられる。
一般式(9)において、Ryは単結合またはアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表し、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基であることが好ましい。これらの基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよい。また、これらの基の中には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合が存在していてもよい。一般式(9)において、Ryは単結合であることが好ましい。
前記Ryが有していてもよい置換基としては、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)等が挙げられる。
Ryが炭素数1〜20のアルキレン基である場合、前記アルキレン基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよい。Ryがアルキレン基である場合の炭素数は2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。Ryのアルキレン基の具体例としては、−CH2−、−C2H4−、−C(CH3)2−CH2−、−CH2C(CH3)2CH2−、−C6H12−、C4H7(C4H9)C4H8−、C18H36、1,4−trans−シクロヘキシレン基、−C2H4−OCO−C2H4−、−C2H4−OCO−、−C2H4−O−C5H10−、−CH2−OC5H9(C5H11)−、−C2H4−CONH−C2H4−、−C4H8−OCONH−C6H12−、−CH2−OCONHC10H20−、−CH2C(OH)CH2−等を挙げることができる。
Ryが炭素数6〜20のアリーレン基である場合、前記アリーレン基の炭素数は6〜18であることが好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることが特に好ましい。Ryのアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、−C6H4−CO−C6H4−、ナフチレン基等を挙げることができる。
Ryが炭素数7〜20のアラルキレン基である場合、前記アラルキレン基の炭素数は7〜18であることが好ましく、7〜14であることがさらに好ましく、7〜10であることが特に好ましい。アラルキレン基の具体例としては、−C3H6−C6H4−、−C2H4−C6H4−C6H4−、−CH2−C6H4−C6H4−C2H4−、−C2H4−OCO−C6H4−等を挙げることができる。
Aで表される親水性基としては、好ましい範囲も含めて、既述の親水性基と同様のものを挙げることができる。
一般式(9)において、Rcyは水素原子であり、Zyは−COO−であり、Ryは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基であり、Aはカルボキシル基、又はスルホ基であることが好ましい。
光重合性化合物(A)における一般式(9)の繰り返し単位の含有量は、光重合性化合物(A)に対し、10〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、10〜70質量%が特に好ましい。
一般式(9)で表される構造は、下記一般式(9−1)で表される単量体を重合して得ることができる。
一般式(9−1)において、Rcy、Zy、Ry、Aは一般式(9)における定義と好ましい範囲も含めて同様である。
一般式(9−1)で表される単量体の好ましい例としては以下の化合物(9−1−1)〜(9−1−27)を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
本発明における上記一般式(9−1)で表される繰り返し単位を与える例示化合物である(9−1−1)〜(9−1−27)は、市販の化合物若しくは、一般的に知られている公知慣用の方法により製造することができる。
更に、一般式(9−1)で表される単量体は、例えば酢酸ビニル等のエステル基のような保護基で水酸基を保護した単量体を用いて重合反応を行い、高分子化合物を形成した後に、ケン化により保護基を脱離することにより、本発明の光重合性化合物(A)を合成してもよい。
本発明の光重合性化合物(A)は、上述の化合物に加えて、さらに他の単量体成分を重合体として用いることができる。一般式(1−1)で表される単量体および一般式(9−1)に代表される構造を有する単量体と共重合し得るその他の単量体としては、スチレン、p−メトキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、p−スルファモイルフェニル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。式(1´−1)で表される単量体と共重合し得る単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、上記以外の公知のモノマーを、必要に応じて使用することもできる。
光重合性化合物(A)は、ビニル重合体の他、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリエチレンイミン類等の種々の高分子構造をとることができるが、インク組成物の吐出性や製造適性から光重合性化合物(A)は、ビニル重合体であることが好ましい。
本発明の光重合性化合物(A)は、(a1)として一般式で表される繰り返し単位を有し、かつ(a2)として一般式(9)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
光重合性化合物(A)が一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(9)で表される繰り返し単位を有する場合、一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(9)で表される繰り返し単位の共重合比一般式(5)で表される繰り返し単位:一般式(9)で表される繰り返し単位)は、質量換算で5:95〜90:10であることが好ましく、10:90〜90:10であることがさらに好ましく、30:70〜90:10であることが特に好ましい。なお、光重合性化合物(A)は、一般式(5)で表される繰り返し単位及び一般式(9)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むこともできる。
光重合性化合物(A)としては、限定的ではないが、例えば以下の例示化合物を挙げることができ、(A−1)〜(A−4)が好ましい。
光重合性化合物(A)は、重量平均分子量2,000〜100,000であることが好ましく、重量平均分子量2,000〜80,000が更に好ましく、2,000〜50,000が特に好ましい。
光重合性化合物(A)は一般式(5)で表される基を、光重合性化合物(A)一分子中に8個以上有することが好ましく、8個〜200個有していることがより好ましく、10個〜150個以上有していることがより好ましく、10〜120個有していることが特に好ましい。
一般式(5)で表される基の重合体中の個数は、光重合性化合物(A)の重量平均分子量と共重合比から求めることができる。例えば、二元系の共重合体であって、分子量MAの繰り返し単位と、分子量MBの繰り返し単位の共重合比が、XA:XBであり、重合体の重量平均分子量がMXである場合、光重合性化合物(A)中に含まれる基の個数は、{MX*[XA/(XA+XB)]}/MA(個)と算出することができる。
なお重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。
本発明における光重合性化合物(A)は、一般式(1―1)又は一般式(9−1)で表される前駆体等を公知の重合方法により重合し、必要に応じて酸性基をアルカリ金属の水酸化物等により中和することにより得ることができ、例えば、特開昭52−988号公報、特開昭55−154970号公報、Langmuir 18巻14号5414〜5421頁(2002年)等に記載の重合方法に準じた方法で製造することができる。
光重合性化合物(A)の含有量は、インク全質量に対して5〜20質量%が好ましい。
(光重合性化合物(B))
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、光重合性化合物として、(メタ)アクリレート化合物(以下、「光重合性化合物(B)」ともいう)を少なくとも1種類含むことが好ましい。光重合性化合物(B)は、光重合性基を2以上有することが好ましい。光重合性化合物(B)が光重合性基を2以上有する場合、少なくとも1つは光重合性基は(メタ)アクリル基である。
光重合性化合物(B)の分子量は、吐出安定性やインク粘度を良好にするために、280〜1500の範囲内にあることが好ましく、300〜800の範囲内にあることがより好ましい。
光重合性化合物(B)のClogP値は、ゲル化剤の溶解性、吐出安定性を良好にするために、4.0〜7.0の範囲内にあることが好ましく、4.5〜6.0の範囲内にあることがより好ましい。
ここで「logP値」とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPで示す。すなわち、「logP値」とは、1-オクタノール/水の分配係数の対数値であり、分子の親疎水性を表す重要なパラメータとして知られている。
「ClogP値」とは、計算により算出したlogP値である。ClogP値は、フラグメント法や、原子アプローチ法等により算出されうる。より具体的に、ClogP値を算出するには、文献(C.Hansch及びA.Leo、“Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology”(John Wiley & Sons, New York, 1969))に記載のフラグメント法または下記市販のソフトウェアパッケージ1又は2を用いればよい。
ソフトウェアパッケージ1:MedChem Software (Release 3.54,1991年8月、Medicinal Chemistry Project, Pomona College,Claremont,CA)
ソフトウェアパッケージ2:Chem Draw Ultra ver.8.0.(2003年4月、CambridgeSoft Corporation,USA)
本発明に記載したClogP値の数値は、ソフトウェアパッケージ2を用いて計算した「ClogP値」である。
光重合性化合物(B)の含有量は、ゲル化剤の溶解性や吐出安定性を良好にしたり、印字後のブルーミングを抑制するために、インク全質量に対して15〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
分子量及びClogP値が上述した範囲内の化合物の中でも、光重合性化合物(B)は分子内に(−C(CH3)H−CH2−O−)で表されるユニット構造を、3〜14個有している三官能以上のメタクリレート又はアクリレート化合物または分子内に環状構造を持つ二官能以上のメタクリレート又はアクリレート化合物であることが好ましい。
光重合性化合物(B)の(メタ)アクリレート化合物の例には、下記のものが挙げられるが、この限りではない。
Cognis社製3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレートPhotomer 4072(分子量471、ClogP4.90)、新中村化学社製1,10−デカンジオールジメタクリレート NKエステルDOD−N(分子量310、ClogP5.75)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート NKエステルA−DCP(分子量304、ClogP4.69)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート NKエステルDCP(分子量332、ClogP5.12)、Miwon社製ノニルフェノール8EO変性アクリレート Miramer M166(分子量626、ClogP値6.42)及び、Miwon社製トリメチロールプロパン3PO変性トリアクリレートMiramer M360(分子量471、ClogP値4.90)。
(その他の光重合性化合物)
本発明に係る光重合性化合物は、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等を用いることができる。
その他にも公知のあらゆる(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーを用いることができる。本発明でいう「及び/又は」は、モノマーであっても、オリゴマーであっても良く、更に両方を含んでもよいことを意味する。また、以下に述べる事項に関しても同様である。
単官能モノマーの例には、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等が含まれる。
2官能モノマーの例には、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等が含まれる。
3官能以上の多官能モノマーの例には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が含まれる。
この他、光重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合できる。光重合性オリゴマーの例には、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
なお、感作性、皮膚刺激性、眼刺激性、変異原性、毒性などの観点から、上記モノマーの中でも、特に、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラクトン変性可とう性アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
更に、これらの中でも、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが特に好ましい。
その他の光重合性化合物の例には、下記のものが含まれるが、この限りではない。
NKエステルAPG−100(新中村化学社製):ジプロピレングリコールジアクリレート、SR230(Sartomer社製):ジエチレングリコールジアクリレート、NKエステルA−DOG(新中村化学社製):ジオキサングリコールジアクリレート、NKエステルA−9300(新中村化学社製):イソシアヌレートトリアクリレート、NKエステルA−TMM−3L(新中村化学社製):テトラメチロールメタントリアクリレート、NKエステルA−9550(新中村化学社製):ジペンタエリスリトールポリアクリレート、SR355(Sartomer社製):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、GENOMER3414(RAHN社製):ポリエステルアクリレート、ETERCURE6234(長興化学):エポキシアクリレートオリゴマー。
(ゲル化剤)
本発明に係るインクは、インクを可逆的にゾルゲル相転移させることができるゲル化剤を含有している。
ゲルとは、ラメラ構造、非共有結合や水素結合により形成される高分子網目、物理的な
凝集状態によって形成される高分子網目、微粒子の凝集構造などの相互作用、析出した微
結晶の相互作用などにより、物質が独立した運動を失って集合した構造をいう。また、ゲ
ル化するとは、急激な粘度上昇や弾性増加を伴って固化したり、半固化したり、または増
粘したりすることをいう。
本発明において、「温度により可逆的にゾルゲル相転移する」とは、温度変化により、低粘性で流動性が高く、液体状の性質を示すゾル(sol)状態と、粘性が高く固体又は半固体状の性質を示すゲル(gel)状態と相互に、可逆的に転移(転換)しうることをいう。
また、「ゾルゲル相転移温度」とは、ゾル状態からゲル状態に変化(転移)する変化(転移)点の温度をいう。ゲル転移温度、ゲル溶解温度、ゲル軟化温度、ゾルゲル転移点、ゲル化点と称される用語と同義である。
本発明に係るインクのゾルゲル転移温度は、任意に設定されるが、吐出安定性を良好にするために、30〜100℃の範囲内であることが好ましい。また、本発明に係るインクのゾルゲル転移温度は、インクジェット記録ヘッド内でのインク温度と記録媒体の温度の間であることが好ましい。
前記ゾルゲル転移温度の測定方法は、例えば、ヒートプレート上にゲル状の試験片を置き、ヒートプレートを加熱していき、試験片の形状が崩れる温度を測定し、これをゾルゲル相転移温度として求めることができる。また、市販の粘弾性測定装置(例えば、Physica社製粘弾性測定装置 MCR300)を用いて測定できる。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクにおけるゲル化剤の含有量は、ゾルゲル相転移やブルーミング抑制を良好にするために、インク全質量に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることがより好ましい。
本発明で、特に好ましく用いられるゲル化剤は、一般式(2)、及び一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
(一般式(2)、及び一般式(3)中、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、炭素数が11〜24個の直鎖部分を持ち、かつ分岐を持ってもよいアルキル鎖を表す。)
上記の一般式(2)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数11以上の直鎖部分を含み、分岐部分を含んでもよい炭化水素基を表す。R1及びR2に含まれる直鎖部分の炭素原子数が11以上であると、十分な結晶性を有するためゲル化剤として良好に機能することができる。一方、ゲル化剤の融点を適当に抑え、インク中へのゲル化剤の溶解性を高めるため、R1及びR2に含まれる直鎖部分の炭素原子数は24以下であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される化合物の例には、ジリグノセリルケトン(C23−C23)、ジベヘニルケトン(C21−C21)、ジステアリルケトン(C17−C17、融点84℃)、ジエイコシルケトン(C19−C19)、ジパルミチルケトン(C16−C16、融点80℃)、ジミリスチルケトン(C13−C13)、ジラウリルケトン(C11−C11、融点68℃)、ラウリルミリスチルケトン(C11−C13)、ラウリルパルミチルケトン(C11−C15)、ミリスチルパルミチルケトン(C13−C15)、ミリスチルステアリルケトン(C13−C17)、ミリスチルベヘニルケトン(C13−C21)、パルミチルステアリルケトン(C15−C17)、バルミチルベヘニルケトン(C15−C21)、ステアリルベヘニルケトン(C17−C21)等が含まれる。なお、括弧内の炭素数は、(R1の炭素数)−(R2の炭素数)を表す。
上記一般式(2)で表される化合物の市販品の例には、10-Nonadecanone(東京化成工業社製)、12−Tricosanone(東京化成工業社製)、16−Hentriacontanone(東京化成工業社製)、18−Pentatriacontanon(Alfa Aeser社製)、Hentriacontan−16−on(Alfa Aeser社製)、カオーワックスT1(花王株式会社製)等が含まれる。
上記一般式(3)おいて、R3及びR4はそれぞれ独立に、炭素数11以上の直鎖部分を含み、分岐部分を含んでもよい炭化水素基を表す。R3及びR4に含まれる直鎖部分の炭素数は13以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。R3及びR4に含まれる直鎖部分の炭素原子数が11以上であると、十分な結晶性を有するためゲル化剤として良好に機能することができる。一方、ゲル化剤の融点を適当に抑え、インク中へのゲル化剤の溶解性を高めるため、R1及びR2に含まれる直鎖部分の炭素原子数は24以下であることが好ましい。
上記一般式(3)で表される化合物の例には、ベヘニン酸ベヘニル(C21−C22、融点70℃)、イコサン酸イコシル(C19−C20)、ステアリン酸ベヘニル(C17−C22、融点70℃)、ステアリン酸ステアリル(C17−C18、融点60℃)、ステアリン酸パルミチル(C17−C16)、ステアリン酸ラウリル(C17−C12)、パルミチン酸セチル(C15−C16、融点54℃)、パルミチン酸ステアリル(C15−C18)、ミリスチン酸ミリスチル(C13−C14、融点43℃)、ミリスチン酸セチル(C13−C16、融点50℃)、ミリスチン酸オクチルドデシル(C13−C20)、オレイン酸ステアリル(C17−C18)、エルカ酸ステアリル(C21−C18)、リノール酸ステアリル(C17−C18)、オレイン酸ベヘニル(C18−C22)、セロチン酸ミリシル(C25−C16)、モンタン酸ステアリル(C27−C18)、モンタン酸ベヘニル(C27−C22)、リノール酸アラキジル(C17−C20)、トリアコンタン酸パルミチル(C29−C16)、リグノセリン酸リグノセリル(C23−C24)等が含まれる。なお、括弧内の炭素数は、(R3の炭素数)−(R4の炭素数)を表す。
上記一般式(3)で表される化合物の市販品の例には、ユニスターM−2222SL(日油株式会社製)、エキセパールSS(花王株式会社製、融点60℃)、EMALEXCC−18(日本エマルジョン株式会社製)、アムレプスPC(高級アルコール工業株式会社製)、エキセパールMY−M(花王株式会社製)、スパームアセチ(日油株式会社製)、EMALEXCC−10(日本エマルジョン株式会社製)、SS−EMALEX EG−di−S(日本エマルジョン株式会社製)、ポエムB-100(理研ビタミン社製)等が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してもよい。
ゲル化剤として、一般式(2)、及び一般式(3)で表される化合物の含有量は、本発明の活性光線硬化型インクジェットインクの全質量に対して0.5〜3.5質量%が好ましく、0.7〜3.0質量%であることがより好ましい。
(ペンタエリスリトール構造を有する多価エステル化合物)
一般式(2)、又は一般式(3)で表される化合物中で、特に好ましく用いられるゲル化剤として、ペンタエリスリトール構造を有する多価エステル化合物が挙げられる。多価エステル化合物は、ペンタエリスリトール構造を有しエステル価が2以上である化合物、及びジペンタエリスリトール構造を有しエステル価が2以上である化合物、からなる群から選択される少なくとも一種類の化合物を含み、二種類以上の化合物を含んでもよい。本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる多価エステル化合物は、分岐構造を有するエステル価が2以上の化合物である。
ペンタエリスリトール構造を有しエステル価が2以上である化合物、及びジペンタエリスリトール構造を有しエステル価が2以上である化合物は、下記一般式(4−1)〜(4−11)で表される化合物であることが好ましいが、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば、これらの一般式(4−1)〜(4−11)で表される化合物に限定されるものではない。
一般式(4−1)〜(4−11)中のR1〜R39は、それぞれ独立に、炭素数9以上の直鎖状のアルキル基を表し、炭素数14以上の直鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、炭素数16以上の直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれる多価エステル化合物は、一般式(4−1)〜(4−11)で表される化合物から選択される1種類の化合物を含んでもよく、二種類以上の化合物を含んでもよい。
一般式(4−1)〜(4−11)で表される化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステル[C13、一般式(4−3)]、ペンタエリスリトールジステアリン酸エステル[C17、一般式(4−2)]、ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステル[C15、一般式(4−3)]、ジペンタエリスリトールテトラリグノセリン酸エステル[C23、一般式(4−6)または(4−7)]、ジペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル[C21、一般式(4−6)または(4−7)]、ペンタエリスリトールテトラアラキジン酸エステル[C19、一般式(4−1)]、ジペンタエリスリトールヘキサステアリン酸エステル[C17、一般式(4−4)]、ジペンタエリスリトールペンタパルミチン酸エステル[C15、一般式(4−5)]ジペンタエリスリトールトリベヘン酸エステル[C21、一般式(4−8)または(4−9)]、ジペンタエリスリトールジミリスチン酸エステル[C13、一般式(4−10)または(4−11)]等が挙げられる。またこれに限らず、脂肪酸の種類を複数混合しエステル化を行ってもよい。なお、括弧内の炭素数は、R1〜R39の炭素数を表す。
多価エステル化合物の含有量は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば任意の量でよいが、本発明の活性光線硬化型インクジェットインクの全質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上1質量%以下であることが更に好ましい。
(融点50〜65℃のゲル化剤)
一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4−1)〜(4−11)で表される化合物中で、融点50〜65℃を有するゲル化剤が特に好ましく用いられる。融点50〜65℃のゲル化剤の例には、ユニスター M−9676(日油社製):ステアリン酸ステアリル 融点60℃、ニッサンエレクトール(R)WEP−2(日油社製):エステルワックス 融点60℃、ステアリン酸ベヘニル 融点64℃、ステアリルアルコール (カルコール8098、花王社製)融点61℃、ペンタエリスリトールジステアリン酸エステル (ユニスターH−476D、日油社製) 融点62℃、ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステル 融点58℃などの化合物が好ましく挙げられるが、この限りではない。
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクに含まれるゲル化剤は、融点が50〜65℃であることが好ましく、含有量は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば任意の量でよいが、本発明の活性光線硬化型インクジェットインクの全質量に対して0.5質量%以上3.5質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
(その他のゲル化剤)
本発明に係るゲル化剤は、その他にも公知のあらゆるゲル化剤を含んでもよい。
その他のゲル化剤は特に限定されない。このようなゲル化剤の例には、脂肪族ケトン化合物;脂肪族エステル化合物;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド(例えば日本化成社製 ニッカアマイドシリーズ、伊藤製油社製 ITOWAXシリーズ、花王社製 FATTYAMIDシリーズ等);N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド;N,N'-エチレンビスステアリルアミド、N,N'-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N'-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物(例えば日本エマルジョン社製 EMALLEXシリーズ、理研ビタミン社製 リケマールシリーズ、理研ビタミン社製 ポエムシリーズ等);ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸のエステル(例えばリョートーシュガーエステルシリーズ 三菱化学フーズ社製);ポリエチレンワックス、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス(Baker−Petrolite社製 UNILINシリーズ等);ダイマー酸;ダイマージオール(CRODA社製 PRIPORシリーズ等);ステアリン酸イヌリン等の脂肪酸イヌリン;パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン等の脂肪酸デキストリン(千葉製粉社製 レオパールシリーズ等);ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル;ベヘン酸エイコサンポリグリセリル(日清オイリオ社製 ノムコートシリーズ等);N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能);1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール(ゲルオールD 新日本理化より入手可能)等のジベンジリデンソルビトール類;特開2005−126507号公報、特開2005−255821号公報および特開2010−111790号公報に記載の低分子オイルゲル化剤;等が含まれる。
その他のゲル化剤は、本発明のインク中に単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。また市販品を用いる場合は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製して用いてもよい。
その他のゲル化剤は、特に脂肪族ケトン化合物、脂肪族モノエステル化合物、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸アミドが好ましく、さらに好ましくは、脂肪族ケトン化合物もしくは脂肪族モノエステル化合物である。
(光開始剤)
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、光開始剤を含有する。
光開始剤は、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型とがある。分子内結合開裂型の光開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)−ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
分子内水素引き抜き型の光開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
光開始剤の例には、下記のものが含まれるが、この限りではない。
IRGACURE 819(BASF社製)、DETX(Lambson社製)、IRGACURE 369(BASF社製)、IRGACURE 907(BASF社製)、IRGACURE TPO(BASF社製)、IRGACURE 2959(BASF社製)。
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクにおける光開始剤の含有量は、活性光線や光重合性化合物の種類などにもよるが、0.01質量%〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、光開始剤として、光酸発生剤を含んでもよい。光酸発生剤の例には、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
(光開始助剤)
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて光開始剤助剤をさらに含んでもよい。光開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。これらの化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
(重合禁止剤)
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて重合禁止剤をさらに含んでもよい。重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。これらの化合物は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
(色材)
活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて色材をさらに含んでもよい。色材は、染料または顔料でありうるが、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料が好ましい。顔料は、特に限定されないが、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料でありうる。
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36から選ばれる顔料またはその混合物等が含まれる。青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60から選ばれる顔料またはその混合物等が含まれる。緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50から選ばれる顔料またはその混合物が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193から選ばれる顔料またはその混合物等が含まれる。黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26から選ばれる顔料またはその混合物等が含まれる。
顔料の市販品の例には、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(大日精化工業製); KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製);Colortex Yellow 301、314、315、316、P−624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA−414、U263、Finecol Yellow T−13、T−05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P−625、102、H−1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、ColortexBlue516、517、518、519、A818、P−908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製);Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP−S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG−02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製);Novoperm P−HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製);カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)などが挙げられる。
顔料の分散は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカー等により行うことができる。顔料の分散は、顔料粒子の体積平均粒子径が、好ましくは0.08〜0.5μm、最大粒子径が好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.3〜3μmとなるように行われることが好ましい。顔料の分散は、顔料、分散剤、および分散媒体の選定、分散条件、およびろ過条件等によって、調整される。
(分散剤)
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、顔料の分散性を高めるために、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテート等が含まれる。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて分散助剤をさらに含んでもよい。分散助剤は、顔料に応じて選択されればよい。
分散剤および分散助剤の合計量は、顔料に対して1〜50質量%であることが好ましい。
本発明による活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて顔料を分散させるための分散媒体をさらに含んでもよい。分散媒体として溶剤をインクに含ませてもよいが、形成された画像における溶剤の残留を抑制するためには、前述のような光重合性化合物(特に粘度の低いモノマー)を分散媒体として用いることが好ましい。
染料は、油溶性染料等でありうる。油溶性染料は、以下の各種染料が挙げられる。マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM−1450、MS Magenta HSo−147(以上、三井東圧社製)、AIZENSOT Red−1、AIZEN SOT Red−2、AIZEN SOTRed−3、AIZEN SOT Pink−1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR−31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)が含まれる。
シアン染料の例には、MS Cyan HM−1238、MS Cyan HSo−16、Cyan HSo−144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧社製)、AIZEN SOT Blue−4(保土谷化学社製)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z−BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB−LL 330%(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL−5 200、Light Blue BGL−5200(以上、日本化薬社製)、DAIWA Blue 7000、OleosolFast Blue GL(以上、ダイワ化成社製)、DIARESIN Blue P(三菱化成社製)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
イエロー染料の例には、MS Yellow HSm−41、Yellow KX−7、Yellow EX−27(三井東圧)、AIZEN SOT Yellow−1、AIZEN SOT YelloW−3、AIZEN SOT Yellow−6(以上、保土谷化学社製)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX FLUOR.Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Yellow SF−G、KAYASET Yellow2G、KAYASET Yellow A−G、KAYASET Yellow E−G(以上、日本化薬社製)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成社製)、HSY−68(三菱化成社製)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
ブラック染料の例には、MS Black VPC(三井東圧社製)、AIZEN SOT Black−1、AIZEN SOT Black−5(以上、保土谷化学社製)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Black A−N(日本化薬社製)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成社製)、HSB−202(三菱化成社製)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン社製)等が含まれる。
色材の含有量は、インク全量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.4〜10質量%であることがより好ましい。
(その他の成分)
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、必要に応じて他の成分をさらに含んでもよい。他の成分は、各種添加剤や他の樹脂等であってよい。添加剤の例には、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等も含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが含まれる。他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、およびワックス類等が含まれる。
(画像形成方法)
画像形成方法は、1)本発明の活性光線硬化型インクジェットインクを記録媒体に吐出する工程と、2)記録媒体に吐出されたインクに活性光線を照射して、インクを硬化させる工程とを含むことを特徴とする。
1)吐出工程においては、吐出用記録ヘッドに収納されたインクジェットインクを、ノ
ズルを通して記録媒体に向けて液滴として吐出すればよい。
2)硬化工程においては、記録媒体に着弾したインクに光を照射する。照射される光は、光重合性化合物の種類によって適宜選択すればよく、紫外線や電子線などでありうる。
記録媒体の搬送速度は、30〜120m/minであることが好ましい。
(記録媒体)
印刷物の記録媒体としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、合成紙ユポ、軟包装に用いられる各種プラスチックおよびそのフィルムを用いることが出来る。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムがある。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用出来る。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。記録媒体の表面エネルギーは、濡れ特性測定ペン型ツールDynePens等を使用して確認することができる。
インクジェット記録ヘッドからインク液滴を吐出することによって、記録媒体上にインク液滴が付着する。繰り返し再現性良く高画質を形成するためにインク液滴が着弾する際の記録媒体の温度は、20〜40℃に設定されていることが好ましい。
(インクジェット記録装置)
本発明の活性光線硬化型インクジェットが用いられる、活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置について説明する。活性光線硬化型インクジェット方式のインクジェット記録装置には、ライン記録方式(シングルパス記録方式)のものと、シリアル記録方式のものとがある。求められる画像の解像度や記録速度に応じて選択されればよいが、高速記録の観点では、ライン記録方式(シングルパス記録方式)が好ましい。
図1Aおよび図1Bは、ライン記録方式のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す図である。このうち、図1Aは側面図であり、図1Bは上面図である。図1Aおよび図1Bに示されるように、インクジェット記録装置10は、複数の吐出用記録ヘッド14を収容するヘッドキャリッジ16と、記録媒体12の全幅を覆い、かつヘッドキャリッジ16の(記録媒体の搬送方向)下流側に配置された活性光線照射部18と、記録媒体12の下面に配置された温度制御部19と、を有する。
ヘッドキャリッジ16は、記録媒体12の全幅を覆うように固定配置されており、各色ごとに設けられた複数の吐出用記録ヘッド14を収容する。吐出用記録ヘッド14にはインクが供給されるようになっている。たとえば、インクジェット記録装置10に着脱自在に装着された不図示のインクカートリッジなどから、直接または不図示のインク供給手段によりインクが供給されるようになっていてもよい。
吐出用記録ヘッド14は、各色ごとに、記録媒体12の搬送方向に複数配置される。記録媒体12の搬送方向に配置される吐出用記録ヘッド14の数は、吐出用記録ヘッド14のノズル密度と、印刷画像の解像度によって設定される。dpiとは、2.54cm当たりのインク滴(ドット)の数を表す。
活性光線照射部18は、記録媒体12の全幅を覆い、かつ記録媒体の搬送方向についてヘッドキャリッジ16の下流側に配置されている。活性光線照射部18は、吐出用記録ヘッド14により吐出されて、記録媒体に着弾した液滴に活性光線を照射し、液滴を硬化させる。
活性光線が紫外線である場合、活性光線照射部18(紫外線照射手段)の例には、蛍光管(低圧水銀ランプ、殺菌灯)、冷陰極管、紫外レーザー、数100Pa〜1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLED等が含まれる。硬化性の観点から、照度100mW/cm2以上の紫外線を照射する紫外線照射手段;具体的には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよびLED等が好ましく、消費電力の少ない点から、LEDがより好ましい。具体的には、Phoseon Technology社製 395nm、水冷LEDを用いることができる。
活性光線が電子線である場合、活性光線照射部18(電子線照射手段)の例には、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式等の電子線照射手段が含まれるが、処理能力の観点から、カーテンビーム方式の電子線照射手段が好ましい。電子線照射手段の例には、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC−200−20−30」、AIT(株)製の「Min−EB」等が含まれる。
温度制御部19は、記録媒体12の下面に配置されており、記録媒体12を所定の温度に維持する。温度制御部19は、例えば各種ヒータ等でありうる。
以下、ライン記録方式のインクジェット記録装置10を用いた画像形成方法を説明する。記録媒体12を、インクジェット記録装置10のヘッドキャリッジ16と温度制御部19との間に搬送する。一方で、記録媒体12を、温度制御部19により所定の温度に調整する。次いで、ヘッドキャリッジ16のインク吐出用記録ヘッド14から高温のインクを吐出して、記録媒体12上に付着(着弾)させる。そして、活性光線照射部18により、記録媒体12上に付着したインク滴に活性光線を照射して硬化させる。
インク吐出用記録ヘッド14からインクを吐出する際の、吐出用記録ヘッド14内のインクの温度は、インクの吐出性を高めるためには、当該インクのゲル化温度よりも10〜30℃高い温度に設定されることが好ましい。
インク吐出用記録ヘッド14の各ノズルから吐出される1滴あたりの最小液滴量は、画像の解像度にもよるが、高解像度の画像を形成するために、1pl〜10plであることが好ましく、0.5〜4.0plであることがより好ましい。
活性光線の照射は、隣り合うインク滴同士が合一するのを抑制するために、インク滴が記録媒体上に付着した後10秒以内、好ましくは0.001秒〜5秒以内、より好ましくは0.01秒〜2秒以内に行うことが好ましい。活性光線の照射は、ヘッドキャリッジ16に収容された全てのインク吐出用記録ヘッド14からインクを吐出した後に行われることが好ましい。
活性光線が電子線である場合、電子線照射の加速電圧は、十分な硬化を行うために、30〜250kVとすることが好ましく、30〜100kVとすることがより好ましい。加速電圧が100〜250kVである場合、電子線照射量は30〜100kGyであることが好ましく、30〜60kGyであることがより好ましい。
硬化後の総インク膜厚は、2〜25μmであることが好ましい。「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインク膜厚の最大値である。
図2は、シリアル記録方式のインクジェット記録装置20の要部の構成の一例を示す上面図である。図2に示されるように、インクジェット記録装置20は、記録媒体の全幅を覆うように固定配置されたヘッドキャリッジ16の代わりに、記録媒体の全幅よりも狭い幅であり、かつ複数のインク吐出用記録ヘッド24を収容するヘッドキャリッジ26と、ヘッドキャリッジ26を記録媒体12の幅方向に可動させるためのガイド部27と、を有する以外は図1Aおよび図1Bと同様に構成されうる。
シリアル記録方式のインクジェット記録装置20では、ヘッドキャリッジ26がガイド部27に沿って記録媒体12の幅方向に移動しながら、ヘッドキャリッジ26に収容された吐出用記録ヘッド24からインクを吐出する。ヘッドキャリッジ26が記録媒体12の幅方向に移動しきった後(パス毎に)、記録媒体12を搬送方向に送る。これらの操作以外は、前述のライン記録方式のインクジェット記録装置10とほぼ同様にして画像を記録する。
以下に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれ
らの例に限定されるものではない。
以下の成分により、各実施例および比較例の活性光線硬化型インクジェットインクを調製した。
(光重合性化合物)
<光重合性化合物(A)>
光重合性化合物(A)は、特開昭52−988号公報を参考に合成を行った。光重合性化合物(A)の各構造を下記に示す。
<光重合性化合物(B)>
Miramer M166(Miwon社製):ノニルフェノール8EO変性アクリレート(分子量626、ClogP値6.42)
Miramer M360(Miwon社製):トリメチロールプロパン3PO変性トリアクリレート(分子量471、ClogP値4.90)
NKエステルDOD−N(新中村化学社製):1,10−デカンジオールジメタクリレート(分子量310、ClogP値5.75)
NKエステルA−DCP(新中村化学社製):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(分子量304、ClogP値4.69)
<光重合性化合物(その他)>
NKエステルAPG−100(新中村化学社製):ジプロピレングリコールジアクリレート
SR230(Sartomer社製):ジエチレングリコールジアクリレート
NKエステルA−DOG(新中村化学社製):ジオキサングリコールジアクリレート
NKエステルA−9300(新中村化学社製):イソシアヌレートトリアクリレート
NKエステルA−TMM−3L(新中村化学社製):テトラメチロールメタントリアクリレート
NKエステルA−9550(新中村化学社製):ジペンタエリスリトールポリアクリレート
SR355(Sartomer社製):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
Miramer SP1106(Miwon社製):18官能アクリレートオリゴマー
Miramer SP1108(Miwon社製):13官能アクリレートオリゴマー
Miramer EA2255(Miwon社製):エポキシアクリレートオリゴマー
(ゲル化剤(ワックス))
<一般式(2)で表されるゲル化剤>
10−ノナデカノン (10−Nonadecanone、東京化成工業)約融点58℃
12−トリコサノン (12−Tricosanone、東京化成工業)約融点67℃
ジステアリルケトン (カオーワックスT1、花王)約融点78℃
ジパルミチルケトン (16−Hentriacontanone、東京化成工業)約融点70℃
22−トリテトラコンタノン(試薬)約融点68℃
<一般式(3)で表されるゲル化剤>
ステアリン酸ラウリル (Dodecyl Stearate、東京化成工業)約融点41℃
パルミチン酸セチル (アムレプスPC、高級アルコール工業)約融点56℃
ユニスター M−9676(日油社製):ステアリン酸ステアリル 約融点60℃
ニッサンエレクトール(R)WEP−2(日油社製):エステルワックス融点60℃(直鎖炭素数20未満)
ニッサンエレクトール(R)WEP−3(日油社製):エステルワックス融点70℃(直鎖炭素数20以上)
ステアリン酸ベヘニル (下記の方法により合成)約融点64℃
ベヘニン酸ベヘニル (ユニスターM−2222SL、日油社製)約融点70℃
ジステアリン酸グリコール (SS−EMALEX EG−di−S、日本エマルジョン社製)約融点70℃
ベヘン酸グリセリル (ポエムB-100、理研ビタミン社製)約融点72℃
〈ステアリン酸ベヘニルの合成〉
以下のように、ステアリン酸ベヘニルを合成した。
ベヘニルアルコール(カルコール220−80、花王社製)326.6gと、ステアリン酸(ルナックS−50V、花王社製)284.5gと、濃硫酸19.6gと、トルエン2Lとをフラスコに仕込み、80℃で4時間エステル化反応を行った。次にカラムクロマトグラフィーによりエステルを分離して、59.3gのステアリン酸ベヘニルを得た。
<一般式(2)、一般式(3)以外のゲル化剤>
ベヘン酸 (ルナックBA、日油社製)約融点77℃
ミリスチルアルコール (カルコール4098、花王社製)約融点38℃
ステアリルアルコール (カルコール8098、花王社製)約融点61℃
<一般式(4−1)〜(4−11)のいずれかで表されるゲル化剤>
ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステル (下記の方法により合成)約融点56℃
ペンタエリスリトールジステアリン酸エステル (ユニスターH−476D、日油社製) 約融点62℃
ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステル (下記の方法により合成)約融点58℃
〈ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステルの合成〉
以下のように、ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステルを合成した。
ペンタエリスリトール(Pentaerythritol、東京化成工業)136.2gと、ミリスチン酸(Myristic Acid 和光純薬工業社製)913.6gと、濃硫酸19.6gと、トルエン2Lとをフラスコに仕込み、80℃で4時間エステル化反応を行った。次にカラムクロマトグラフィーによりエステル価ごとの分離を行い、ペンタエリスリトールトリミリスチン酸エステル38gを得た。
〈ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステルの合成〉
以下のように、ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステルを合成した。
ペンタエリスリトール(Pentaerythritol、東京化成工業)136.2gとパルミチン酸(Palmitic Acid 和光純薬工業社製)1089.8gと、濃硫酸19.6gと、トルエン2Lとをフラスコに仕込み、80℃で4時間エステル化反応を行った。次にカラムクロマトグラフィーによりエステル価ごとの分離を行い、ペンタエリスリトールテトラパルミチン酸エステル27gを得た。
(界面活性剤)
BYK−307(BYK社製)
(光開始剤)
IRGACURE TPO(BASF社製)分子内結合開裂型
DETX(Lambson社製)分子内水素引き抜き型
IRGACURE 369(BASF社製)分子内結合開裂型
IRGACURE 2959(BASF社製)分子内結合開裂型
(光開始剤助剤)
Speedcure EHA(Lambson社製) 3級アミン化合物
(重合禁止剤)
Irgastab UV−10(チバ社製)
(顔料分散液の調製)
以下の手順で顔料分散液1〜4を調製した。
以下に示す2種の化合物を、ステンレスビーカーに入れた。これを65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌した。
BYK-9151(BASF社製) 9質量部
ジプロピレングリコールジアクリレート (APG−100、新中村化学社製 分子量242) 71質量部
室温まで冷却した後、これに下記のいずれかを顔料20質量部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓した。これをペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 5時間
顔料2:Pigment Blue 15:4(大日精化社製、クロモファインブルー6332JC) 4時間
顔料3:Pigment Violet19、 Red202の混晶(BASF社製、CINQUASIA MAGENTA RT−355D) 6時間
顔料4:Pigment Yellow 185(BASF社製、D1155) 6時間
(インクの調製)
下記の表に示す組成比で各化合物を混合し、混合液を80−100℃で加熱攪拌しゾルゲル相転移する活性光線硬化型インクを作成した(インク組成1〜7)。得られたインクを加熱下、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過した。表における成分の単位は質量部である。比較インクについても、表に示すような組成で作成した。
(画像形成)
各インク(試料番号1〜43)を、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に装填した。この装置から、A4サイズのコート紙(OKトップコートプラス;王子製紙社製、坪量157g/m2、厚さ0.129mm)、コート紙(サンカード+;王子製紙社製、坪量420g/m2、厚さ0.459mm)、厚紙(マリコート; 北越紀州製紙社製、坪量550g/m2、厚さ0.72mm)、厚紙(薄ダンボール; 厚さ1.0mm)にインクを吐出し、各色インクで3ptと5ptとのMS明朝体文字「希」を印字、各色インクでドット率100%のベタ画像、ドット径が測定できるドット率5%の画像を、印刷した。最小ドット径は、光学顕微鏡(キーエンス社製VHX−500)を用いて測定をした。
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなるものとした。インクジェット記録装置には、解像度が600dpiのピエゾヘッド(短尺記録素子列)2つ/色を搬送方向に配置し1200dpiの記録解像度とした。
サブインクタンクからヘッド部分までインクを80℃に加温した。さらに各液滴量が1dpdで3.5pl、2dpdで8.0plとなるように、ピエゾヘッドに電圧を印加し、各色印字した。ドット率50%までの領域では1dpdのみで印字、ドット率50%以上の領域では半分のドットを2dpdで8.0pl印字とした。なお、dpdとは、1dotあたりのdrop数の意味である。2dpdは、2滴(drop)で1dotの印字をするという意味である。
画像形成後、GSユアサ社製のメタルハライドランプ(MBL)から光を照射し、インクを硬化させた。このとき、記録媒体表面での最高照度は260mW/cm2だった。記録媒体の搬送速度は30m/minとした。照射した光量は、300mJ/cm2であった。光量の計測は、浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計 C9536、H9958で行った。
(画像評価)
上記で作成した各インク(試料番号1〜43)を、下記のように評価した。
(白ヌケ(ドット合一))
各試料のベタ画像部に白ヌケ(ドット合一による未印字部分)があるかを目視で確認した。評価は下記の基準で行った。
◎:白ヌケが見当たらず、良好なベタ画像が形成できている。
○:1、2箇所白ヌケがあるが、問題ないレベルである。
△:3〜8箇所程度白ヌケがあるが、実用上使用可能なレベルである。
×:白ヌケ多数発生あり、実用上使用可能なレベルとは言い難い。
(文字品質(色混じり))
各試料の印刷した文字画像を目視観察した。文字品質は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:3ポイント文字が細部まだ明瞭に記録されている。
○:3ポイント文字は判読が難しいが、5ポイント文字は明瞭判読可能である。
△:5ポイント文字に一部潰れ等が見られるが、判読可能である。
×:5ポイント文字が判読困難である。
(吐出安定性)
10枚目と500枚目の印刷時のベタ画像部の白ヌケ(ドットの合一による未印字部分)と文字品質を目視で確認した。
(ゲル化剤溶解安定性)
各インクを用いて、「100℃で4時間静置−25℃で4時間静置」を4回繰り返し、100℃での溶解状態を目視で観察した。
◎:分離、析出物は認められない。
○:油玉が少し表面に見られるが、溶解している。
△:少し層分離が見られるが、概ね溶解している。
×:析出物が認められる。
(ブルーミング抑制)
各試料のベタ画像出力物について、10枚目の100%印字部を「40℃80%RHの環境下2週間放置−25℃50%RHの環境下2週間放置」を4回繰り返し、画像表面を目視確認した。
○:析出物は認められない。
△:画像表面にうっすらと白く析出物が認められる。
×:画像表面全体が析出物で白くなっている。
(画像光沢値)
各試料のベタ画像出力物について、60°光沢値を測定した。
ランク4:光沢値が30以上。好んで使用されるレベルである。
ランク3:光沢値が20〜30。記録媒体との違和感が少なく、使えるレベルである。
ランク2:光沢値が10〜20。記録媒体との違和感があるものの、一部用途では使えるレベルである。
ランク1:光沢値10未満。好んで使用されるレベルとは言えない。
(擦過性評価)
各試料のベタ画像出力物について、10枚目の100%印字部を25℃・60%RHの環境下に24時間放置した後、印刷していない紙面に1kg/2cm2の荷重をかけて100%印字部上を往復10回擦った。擦った後に印刷していない紙面移った色を目視で評価した
○:色移りなし。
△:わずかに色移りが見られるが、実用上問題ないレベルである。
×:100%印字部の色濃度低下が見られるほど色移りしており、使えないレベルである。
(折り曲げ耐性)
各試料の画像出力物について、10枚目の100%印字部を25℃60%RHの環境下に24時間放置した後、二つ折り(山折り)にし、折った部分に3M社製セロテープ(登録商標)を貼りゆっくりと剥した。
○:画像膜が剥がれない。
△:折りの部分で画像膜がわずかに剥がれるが実用上問題ないレベルである。
×:折りの部分で画像膜が剥がれる。
インク比較1は、特開2012−162656の実施例インク6(マゼンタインク)を用いた。インク比較2は、特開2012−236998の実施例52のマゼンタインクを用いた。インク比較3は、国際公開第2012/114759号の実施例インク19を用いた。