JP2014070162A - インク組成物、画像形成方法及び印画物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物、式(2)で表される化合物、及び有機溶剤を含有するインク組成物である。式(1)中、Ra及びRbは各々水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRbの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。*は高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。式(2)中、R1、R2は、アルキル基等を表すか、互いに結合して環を形成する連結基を表す。R3〜R6は、水素原子、アルキル基等を表し、互いに結合して環を形成することはない。R3及びR4のいずれか一方で他の部分構造と結合する。
【選択図】なし
Description
電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安いという利点を有し、さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
近年、インク組成物により樹脂製の記録媒体上に形成されたインク画像が、大面積の広告や屋外広告などの用途に供されることが多くなってきた。特に屋外広告の場合には、高い耐水性を要求される。また、大面積の印画物や多数枚の印画物を連続して形成する場合、印刷装置の汚れを有機溶剤で除去する工程が必要となるが、清掃に使用する有機溶剤が飛散して形成されたインク画像に付着した場合、耐溶剤性が低い画像であると、溶剤が付着したところが溶解除去され、白ヌケなどの画像故障ができるため、耐水性、耐溶剤性を高いレベルで両立する画像を形成しうるインク組成物が求められている。
このような重合開始剤は、UV硬化型のインク組成物には必須ではあるが、低分子量成分であるためエネルギー付与時に臭気を発生するこのものがあったり、感度と安定性の双方を満足することが困難であったり、といった問題を有しており、重合開始剤を含有しない系においても優れた硬化性を発現するインク組成物が望まれていた。
また、本発明は、低エネルギー付与の条件下でも、画像を形成する際のにじみの発生が抑制され、耐溶剤性に優れた画像が形成される画像形成方法、及び、にじみが低減され、耐溶剤性に優れた画像を有する印画物を提供することを課題とする。
<1> (a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位(を含む高分子化合物、(b)下記一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物、及び(c)有機溶剤、を含有するインク組成物。
<3> 一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位が、下記一般式(3)で表される繰り返し単位である<1>又は<2>に記載のインク組成物。
<5> (a)高分子化合物が含む親水性基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が、アルコール性水酸基、アルキル置換カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の親水性基を有する繰り返し単位をさらに含む高分子化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<6> 前記(b)一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物が、下記一般式(2−1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物である<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインク組成物。下記一般式(2−1)中、*は、繰り返し単位との結合部位を表す。
物。
<8> インクジェット記録用である<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<9> 非浸透性の記録媒体への印刷用である<1>〜<8>のいずれか1項に記載のインク組成物。
また、本発明によれば、低エネルギー付与の条件下でも、画像を形成する際のにじみの発生が抑制され、耐溶剤性に優れた画像が形成される画像形成方法、及び、にじみが低減され、耐溶剤性に優れた画像を有する印画物を提供することができる。
なお、本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また、本発明のインク組成物において固形分量とは、25℃においてインク組成物中に含まれる成分のうち、溶剤を除く全ての成分の総質量に意味する。本明細書における固形分は、溶剤以外の低分子量成分などの液状の成分も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルのいずれか又は両方を意味するものである。
本発明のインク組成物は、(a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物、(b)下記一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物、及び(c)有機溶剤を含有するインク組成物である。
後述するように、(a)特定共重合体は、一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位(以下、繰り返し単位(a−1)と称することがある)に加え、目的に応じて、親水性基を有する繰り返し単位(a−2)及び疎水性基を有する繰り返し単位(a−3)から選ばれる1種以上を更に有していてもよい。
(a)特定共重合体は、前記一般式(2)で表される部分構造を同一分子内に有することはない。これは、一般式(1)で表される部分構造と、一般式(2)で表される構造とを同一分子に有する高分子化合物の製造時に、一般式(1)で表される構造と、一般式(2)で表される部分構造とが反応し、意図しない高分子化や架橋が起きるため、安定な製造が困難であり、高分子化合物の保存安定性や、当該高分子化合物を用いたインク組成物のインクジェット吐出性を損なうという問題があり、好ましくないためである。
ここで、本発明において、画像の耐溶剤性とは、形成された画像の有機溶剤に対する耐久性を意味する。
本発明における特定共重合体は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって重合しうる構造である一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位(a−1)を含むことを特徴とする。この部分構造同士はエネルギー付与により互いに二量化反応して硬化する。さらに、本発明においては、熱によりDiels−Alder反応を生起しうる部分構造を分子内に2つ以上有する特定ジエン化合物を共存させることで、上記二量化反応に加え、(a)特定共重合体と(b)特定ジエン化合物とが60℃以上の熱源により乾燥される際に、Diels−Alder反応を生起し両者も互いに反応して架橋構造が形成される結果、高密度の架橋構造が効率よく形成され、低エネルギー付与条件下においても架橋構造の形成が効率よく行われ、架橋密度の向上による画像の不溶化(耐溶剤性)がより一層向上したものと推測される。
また、本発明のインク組成物における架橋構造の形成による硬化反応は、重合開始剤を必須成分として含有しなくても、熱架橋と光架橋の双方が進行して画像形成がなされるために、にじみの発生抑制にも優れたものとなると考えられる。さらに、(a)特定共重合体や(b)特定ジエン化合物を溶解しうる(c)有機溶剤を含む限りにおいて、水系インク組成物にも、非水系インク組成物にも適用可能である。また、例えば、重合開始剤を含まない系であっても既述の如く、反応が進行することから、低分子量成分であって反応性の重合開始剤を含まない系とすることも可能であり、そのような場合には、重合開始剤や低分子量の重合性化合物に起因する臭気発生の懸念がないという利点をも有するものである。
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
本発明のインク組成物に含まれる特定共重合体について詳細に説明する。
特定共重合体としては、ビニル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、又はポリアミドであることが好ましく、ビニル系ポリマー、又はポリウレタンであることがより好ましい。
(a)特定共重合体は、下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位(a−1)を含む。
一般式(3)におけるRa及びRbは、前記一般式(1)におけるRa及びRbとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(3)において、Zは、単結合、−COO−**、又は−CONRd−**を表し、Rdは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、**はXとの結合位置を表す。Zは−COO−**であることが好ましい。
一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、例えば上記含有量の範囲において、より強固な画像を得る場合であれば、より多くするとよく、より柔軟な画像を得る場合であれば、より少なくするとよい傾向にある。
また、一般式(1)で表される部分構造は、高分子反応を用いた方法により、共重合体に導入することもできる。そのような方法としては、例えば、1級アミノ基を有するプレポリマーに、対応する無水物を反応して得る方法や、プレポリマー中の官能基と反応し結合を形成する官能基と一般式(1)で表される部分構造とを有する化合物を、プレポリマーと反応させる方法などが挙げられる。
(親水性基を有する繰り返し単位(a−2))
本発明における親水性基を有する繰り返し単位(a−2)に含まれる親水性基としては、特定共重合体の親水性を高める機能を有する基であれば特に限定されず、ノニオン性親水性基であってもよいし、イオン性親水性基(例えば、アニオン性親水性基又はカチオン性親水性基)であってもよい。なかでも、アルコール性水酸基、アルキル置換カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種の親水性基を有することが好ましい。
ノニオン性親水性基には、例えば、特に限定されないが、例えば、窒素原子又は酸素原子を含む複素環構造から水素原子を1個除いた残基、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基、又はポリアルキレンオキシ構造を有する基等のノニオン性親水性基が挙げられる。
一般式(4)中、Rcyは、水素原子又はメチル基を表す。
Ryが、アルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基である場合、これらの基は、置換基を有していても、置換基を有していなくてもよい。また、Ryで表されるアルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基は、その構造中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合が存在していてもよい。
一般式(4)において、Ryは単結合であることが好ましい。
一般式(4)における親水性基Aがイオン性親水性基である場合、一般式(4)で表される繰り返し単位の含有量は、特定共重合体中、5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%が更に好ましく、1質量%〜20質量%が特に好ましい。
一般式(4)における親水性基Aがノニオン性親水性基である場合、特定共重合体中、20質量%〜95質量%であることが好ましく、30質量%〜80質量%が更に好ましく、30質量%〜70質量%が特に好ましい。
ここで、特定共重合体が水溶性を示すとは、特定共重合体が、25℃の水に対して3質量%以上溶解できることを意味する。
親水性基を有する繰り返し単位(a−2)の含有量が上記範囲であることで、特定共重合体の極性がより適切に維持され、水系インク組成物において、形成された画像がより好適な耐水性を発現する。
特定共重合体には、親水性基を有する繰り返し単位(a−2)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
特定共重合体は、疎水性基を有する繰り返し単位(a−3)を含んでいてもよい。本発明のインク組成物を非水系インク組成物とする場合には、繰り返し単位(a−3)を含むことが好ましい。また、水系のインク組成物とする場合においても、繰り返し単位(a−3)は形成された画像の耐水性向上に有用である。
疎水性の官能基を有する繰り返し単位を含むことで、特定共重合体の極性がより適切に維持され、インク組成物により形成されたインク画像は、さらに耐水性に優れるとともに、非吸収性の記録媒体への密着性にも優れるものとなる。
なかでも、特定共重合体の極性を適切な範囲に調整するという観点から、疎水性基としては、アルキル基を有する総炭素数が5〜22のモノマーが好ましく、アルキル基を有する総炭素数8〜22のモノマーがより好ましく、アルキル基を有する総炭素数8〜14のモノマーがさらに好ましい。即ち、アルキルアクリレートの場合には、炭素数4〜19のアルキル基を有するエステルであり、炭素数4〜13のアルキル基を有するエステルが好ましい。アルキルメタクリレートの場合には、炭素数4〜18のアルキル基を有するエステルであり、炭素数4〜10のアルキル基を有するエステルが好ましい。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖を有するものであって、環状であってもよい。また、ベンジル基などのアラルキルエステルやフェノキシエチル基であってもよい。
疎水性基を有する繰り返し単位(a−3)は、共重合体の極性を低下させる観点から、特定共重合体中、5質量%〜72質量%の範囲が好ましく、20質量%〜65質量%がより好ましく、25質量%〜60質量%が最も好ましい。
本発明のインク組成物における特定共重合体の含有量としては、インク組成物の全質量に対して、2質量%〜20質量%であることが好ましく、にじみ抑制と硬化性を高める観点からは、5質量%〜20質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
本発明のインク組成物に含まれる特定ジエン化合物について詳細に説明する。
本発明に用いられる前記一般式(2)で表される共役ジエンとしては、一般的にDiels−Alder反応に用いられる公知の共役ジエンであれば任意に用いることができる。
前記一般式(2)においてR1及びR2で表される置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基であるか、或いは、R1とR2は互いに結合して環を形成する単結合又は2価の連結基であり、少なくともいずれかはアルキレン基又は、−O−である。
また、R1及びR2が環を形成する2価の連結基である場合には、それぞれ独立に単結合、アルキレン基又は、−O−を表す。これらの中で、R1が炭素数1〜2のアルキレン基、又は、−O−であり、R2は単結合である態様、即ち、R1とR2とが互いに結合して、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環又はフラン環を形成する態様が好ましく、R1が−O−であり、且つ、R2は単結合である態様、即ち、R1とR2とが互いに結合してフラン環を形成する態様がより好ましい。
R3〜R6はアルキル基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基であり、なかでも、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、又は炭素数1〜4のアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましい。また、R3〜R6は環を互いに結合して環を形成しない。なお、R3〜R6がそれぞれアルキル基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基を表す場合、これらはさらに置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、水酸基、ハロゲン原子などが挙げられる。
ここで、R3及びR4のうちいずれか一方は、(b)特定ジエン化合物における他の部分構造と結合する2価の連結基又は単結合を表す。
本発明において、(b)特定ジエン化合物が低分子化合物である場合、(b)特定ジエン化合物は、下記一般式(2−2)又は一般式(2−3)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2−3)中、Q2はp2価の連結基を表し、p2は2以上の整数を表す。p2は、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
ここで、一般式(2−2)又は一般式(2−3)で表される化合物は、一般式(2)で表される共役ジエン構造が、連結基Q1又はQ2に結合してなる、分子内に複数のジエン構造を有する化合物である。
連結基Q1及びQ2はそれぞれ独立に、既述の一般式(2)で表される構造と連結可能な基であれば特に制限はない。Q1及びQ2としては、それぞれ、例えば、炭素数1から12の分岐又は直鎖のアルキル基からp1個又はp2個の水素を除した構造が挙げられ、Q1及びQ2を形成するアルキル基は、その構造内にエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド結合、シリルエーテル基、チオール基などを含むものであってもよい。
一般式(2)で表される部分構造を高分子化合物が有する場合、その導入箇所は任意であり、主鎖の構成要素として含んでいてもよく、高分子の側鎖に含む所謂ペンダント構造で含んでいてもよく、高分子化合物の末端に含んでいてもよいが、当該部分構造の運動性がより良好となること、導入個数を制限し易いこと、一分子中に含まれる構造の数を増加しやすいこと、などの観点から、高分子化合物に、繰り返し単位として導入することが好ましい。
一般式(2)で表される構造を高分子化合物の繰り返し単位として含有させる場合には、一般式(2)で表される構造を有するモノマーを単独重合、又は共重合させて高分子化合物を得る方法や、高分子化合物の繰り返し単位に特定の官能基を有するものを用い、該官能基と共有結合を形成しうる部分構造と、一般式(2)で表される構造とを有する化合物を用いて、両者を反応させ、高分子化合物に一般式(2)で表される構造を導入する方法などが挙げられる。
本発明で(b)特定ジエン化合物として高分子化合物を用いる場合、合成中の安定性の観点から、一般式(2)で表される構造が、前記一般式(2−1)で表される構造であることが好ましい。一般式(2−1)で示す構造であれば、例えば、ビニルポリマーやポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドを合成する際に、一般式(2−1)で表される構造を導入したモノマーを重合させた場合でも、副反応を起こすことがなく、容易に当該部分構造を高分子化合物中に導入可能である。なお、前記一般式(2−1)中、*は、繰り返し単位との結合部位を表す。前記一般式(2−1)で表される構造は、繰り返し単位の主鎖に、*で示す位置で直接結合していてもよく、主鎖に適切な連結基を介して結合していてもよく、側鎖に*で示す位置で結合していてもよい。一般式(2−1)で表される構造の運動性が良好であるという観点からは、当該構造は主鎖から原子数で2〜8程度離れた位置で連結していることが好ましく、即ち、主鎖に適切な連結基を介して結合していること、側鎖に結合していることが好ましい。
本発明で用いられる一般式(2−1)で表される部分構造を含む高分子化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のインク組成物における(b)特定ジエン化合物の含有量としては、(a)特定共重合体が有する一般式(1)で表される部分構造と、(b)特定ジエン化合物が有する一般式(2)で表される部分構造が、モル比で、9:1から2:1の範囲となる量であることが好ましく、8:1から3:1の範囲となる量であることがより好ましく、8:1から4:1の範囲となる量であることが好ましい。(b)ジエン化合物の含有量が上記範囲であることで、インク組成物における熱硬化と光硬化のバランスがより良好となり、硬化性、画像の滲み抑制が卯より改善される。
このように、(a)特定共重合体と(b)特定ジエン化合物とは別異の化合物としてインク組成物中に共存することが反応性の観点から重要であり、たとえば、一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と一般式(2)で表される部分構造を有する繰り返し単位とを含む共重合体では、反応部位が固定されるために本発明の優れた効果は得難い。
インク組成物中の(b)特定ジエン化合物の存在は、例えば、NMR等の解析手段により確認することができる。
本発明のインク組成物は有機溶剤を含有する。
<水溶性有機溶剤>
本発明のインク組成物を水系インク組成物とする場合には、有機溶剤として、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水系インク組成物は、(c)有機溶剤に加え、主たる溶剤して後述する(d)水をさらに含有することが好ましい。
ここで水溶性有機溶剤とは、25℃の水に対する溶解度が10質量%以上である有機溶剤をいう。
・アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、
・多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−メチルプロパンジオール等)、
・多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、
・アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、メトキシプロピオンアミド、N−メチルメトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチルメトキシプロピオンアミド、n−ブトキシプロピオンアミド、N−メチルn−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチルn−ブトキシプロピオンアミド等)、・複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレンウレア等)、
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、
・スルホン類(例えば、スルホラン等)、
・その他(尿素、アセトニトリル、アセトン等)
複素環類としては、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンウレア等が好ましく、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。
特に沸点の高い溶剤は好ましく用いることができ、常圧での沸点が120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
本発明のインク組成物には、必須成分である(a)特定共重合体、及び(b)特定ジエン化合物、(c)有機溶剤に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、水、着色剤、及び公知の添加剤を併用することができる。以下、本発明のインク組成物に使用しうるその他の成分について説明する。
本発明のインク組成物は水を含有してもよい。本発明のインク組成物を水系インク組成物とする場合、水は主たる溶媒として含まれる。
(d)水としては、不純物を含まないイオン交換水、蒸留水などを用いることが好ましい。
本発明のインク組成物が水を含有する場合、水系インク組成物の主たる溶媒として含まれることから、その含有量は、10質量%〜97質量%であることが好ましく、30質量%〜95質量%であることがより好ましく、50質量%〜85質量%であることが最もより好ましい。
また、非水系インク組成物においても、併用成分の可溶性を向上させるなどの目的で、水を含んでもよく、その場合の好ましい含有量は、併用成分により適宜選択されるが、一般的には、5質量%以下であり、即ち、0質量%〜5質量%の範囲である。
本発明のインク組成物は、(e)着色剤を1種又は2種以上含有してもよく、着色剤を含有することにより着色インク組成物となる。
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられ、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点からは、顔料であることが好ましい。
着色剤として用いられる顔料としては、一般に用いられる有機顔料、無機顔料、さらには、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。通常、市販されている顔料はいずれも使用でき、さらに、市販の顔料分散体や表面処理剤などで予め処理された顔料、例えば、顔料を分散媒としての不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ5の如きΒ−ナフトール顔料、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ74等の如きナフトールAS顔料、C.I.ピグメントオレンジ61等の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16等の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72等の如きアセトロン顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34等の如きピラゾロン顔料、が挙げられる。
茶色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32等のナフトロン顔料などが挙げられる。
白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能であり、これらのなかでも、酸化チタンが好ましい。白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
また、顔料の最大粒径は、3μm以下、好ましくは1μm以下がより好ましい。顔料の粒径は、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができる。また、本発明のインク組成物を、白色のインク組成物として調製する場合であれば、顔料分散物に含有される顔料の平均粒径は、充分な隠蔽性を与える観点から、0.05μm〜1.0μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜0.4μm程度である。白色の顔料分散物とする場合についても、顔料の最大粒径は、3μm以下、好ましくは1μm以下であることが好ましい。
着色剤として顔料を用いる場合には、顔料粒子の分散物を調製する際に、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、用いることのできる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩を挙げることができる。
極性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくは、スルホン酸基である。
〔重合開始剤〕
本発明のインク組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合開始剤を1種又は2種以上含有してもよい。重合開始剤は水溶性であることが好ましく、水溶性の程度としては、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することが好ましく、1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。本発明における重合開始剤は、熱重合開始剤であっても、光重合開始剤であってもよいが、光重合開始剤であることが好ましい。また、非水性の重合開始剤を分散した状態でも用いることができる。
本発明のインク組成物には(a)特定共重合体、(b)特定ジエン化合物に加え、本発明の効果を損ねない範囲で、さらに、ラジカル重合性化合物を含有してもよい。
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性モノマーだけでなく、ラジカル重合性オリゴマーを添加することもできる。ラジカル重合性オリゴマーとは、オリゴマーの末端に少なくとも1つのラジカル重合性基を有する化合物であり、重量平均分子量が400〜10,000の範囲の化合物をいう。
ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも1つを表し、(メタ)アクリルアミド基とは、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基の少なくとも1つを表す。
エチレングリコール、エジレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル、1,5−ペンタンジオール、2−メチル,2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタンジオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、チオジグリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、糖類などのポリオール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン類。
本発明のインク組成物は、界面活性剤を含有することができる。
好ましく使用される界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
また、本発明にはポリアルキルシロキサンを有するシリコーン系界面活性剤や、フッ化アルキル基を有するフッ素系界面活性剤などを好ましく用いることができる。フッ素系界面活性剤は、市販品としても入手可能であり、例えば、ZONYL FSN(商品名:Aldrich社)などが挙げられる。
本発明においては、公知の増感色素を併用することができ、増感色素を併用することが好ましい。増感色素の溶解性としては、蒸留水に対して室温において、0.5質量%以上溶解するものが好ましく、1質量%以上溶解するものがより好ましく。3質量%以上溶解するものが特に好ましい。また、増感色素としては、非水溶性の増感色素を分散して用いることもできる。
本発明のインク組成物の調製方法としては、特に制限はなく、各成分を、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル、サンドミルなどの高速回転ミル、撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミル、ディスパーなどの簡単な分散機により撹拌、混合し、分散させることにより調製することができる。各成分の添加順序については任意である。好ましくは、顔料、高分子分散剤及び有機溶剤をプレミックスした後に分散処理し、得られた分散物を、特定共重合体を含む樹脂、水、及び有機溶剤とともに混合する。この場合、添加時や添加後、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザーなどの簡単な撹拌機にて均一に混合する。ラインミキサーなどの混合機を用いて混合してもよい。また、分散粒子をより微細化するために、ビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて混合してもよい。また、顔料や高分子分散剤の種類によっては、顔料分散前のプレミックス時に樹脂を添加するようにしてもよい。
本発明の画像形成方法は、本発明のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、記録媒体上に付与されたインク組成物を、60℃以上の熱源を用いて乾燥させ、インク組成物に含まれる液状成分の少なくとも一部を除去する乾燥工程と、前記付与し、乾燥されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程とを含む。これらの工程を行うことで、記録媒体上に定着したインク組成物による画像が形成される。
以下、本発明の画像形成方法における、インク付与工程について説明する。
本発明におけるインク付与工程は、本発明のインク組成物を記録媒体上に付与する工程であれば限定されない。
インク供給系としては、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルタ、ピエゾ型のインクジェットヘッド等が挙げられる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi(dot per inch)、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
本発明のインク組成物は、(a)特定共重合体を含有し、にじみを抑制できることから、非浸透性の記録媒体に対しても好適に使用することができる。ここで、非浸透性の記録媒体とは、表面にインク組成物を付与した場合において、内部にインク組成物が浸透しない性質を有する記録媒体を意味する。
非浸透性の記録媒体としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等のプラスチック基材が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂基材がより好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂シート又はフィルムがさらに好ましい。
本発明の画像形成方法は、インク付与工程後であって照射工程前に、更にインク乾燥工程(「加熱乾燥工程」とも称する。)を有する。乾燥工程は、記録媒体上に付与されたインク組成物を、60℃以上の熱源を用いて乾燥させ、インク組成物に含まれる液状成分の少なくとも一部を除去する工程であり、本工程における乾燥とは、必ずしも溶媒などの液状成分が完全に除去されることを意味する物ではない。なお、熱源の温度の上限は特に限定されないが、非吸収性の記録媒体として樹脂シートなどを用いる場合には、記録媒体の変形抑制などの観点から、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
加熱乾燥工程において、記録媒体上に吐出されたインク組成物は、加熱手段により、(c)有機溶剤及び必要に応じて併用される水が蒸発され、インク組成物に含まれる液体の量が減少される。
加熱手段としては、(c)有機溶剤及び必要に応じて併用される水を乾燥させることができればよく、特に限定されないが、ヒートドラムやヒート板などにより、支持体裏面から接触加熱する方法、温風、赤外線ランプ、熱オーブンなどによる非接触加熱などを使用することができる。非接触加熱の場合、通常は、インク画像形成面側から加熱されるが、さらに、インク画像の非形成面からも加熱してもよく、加熱ゾーン内を搬送することで加熱してもよい。
加熱温度は、60℃以上であり、60℃〜100℃程度がより好ましく、60℃〜80℃程度が更に好ましい。加熱乾燥工程により、インク画像の温度が上昇し、(a)特定共重合体における一般式(1)で表される部分構造と(b)特定ジエン化合物が有する一般式(2)で表される共役ジエン構造との間において、Diels−Alder反応が生起し、架橋構造が形成される。この反応は発熱反応であるために、Diels−Alder反応自体が順次促進されて連鎖的に反応が進行すると共に、インク画像の温度が上昇するため、引き続き行われる露光による硬化反応が効率よく進行される。このため、低エネルギー露光によっても高感度で硬化反応が進行することになる。
本明細書において乾燥工程における加熱温度とは、支持体表面の温度を測定して得た値である。支持体表面の温度の測定は、接触式熱電対温度計、非接触式温度計などにより常法により測定される。
乾燥/加熱時間は、用いるインク組成物の組成・印刷速度を加味して適宜設定することができる。
(照射工程)
以下、本発明の画像形成方法における、照射工程について説明する。
本発明における照射工程は、前記記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する工程であれば限定されない。
照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されているに開示されている照射条件及び照射方法を本発明においても同様に適用することができる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査する方式や、駆動を伴わない別光源によって行われる方式が好ましい。活性エネルギー線の照射は、インク着弾、加熱乾燥後、一定時間(例えば、0.01秒間〜120秒間、好ましくは、0.01秒間〜60秒間)をおいて行われることになる。
本発明の印画物は、本発明のインク組成物により形成された画像、或いは、本発明の画像形成方法によって形成された画像を有することを特徴とする。本発明の印画物は、にじみが低減され、耐溶剤性に優れた画像を有する。
このため、本発明のインク組成物、或いは、本発明の印画物は、一般的な用途に加え、加熱成形を行う成形品の形成用途にも好適に使用しうる。
なお、特定共重合体A−1〜A−6は、特定共重合体の例示化合物A−1〜A−6として前掲した化合物である。特定ジエン系化合物B−1〜B−3の構造は以下に示す。
<モノマー1及び2の合成>
トルエン75g、ジメチルマレイン酸無水物42.0g(シグマアルドリッチジャパン社製)をDean−Stark蒸留管を具備した500mlの三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌しながら加熱して50℃まで昇温した。3−アミノ−1−プロパノール 25.0gを30分かけて滴下後、4時間撹拌した。60℃まで降温後、p−メトキシフェノール0.042g(和光純薬製)と硫酸6.2g(和光純薬製)を添加し、さらにメタクリル酸(和光純薬製)43.0gを30分で滴下した。滴下終了後、溶媒が還流するまで昇温し、3時間反応した。反応溶液に50w/v%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬製)29gで中和後、トルエン200mlと水100mlを加え分液した。有機層を飽和食塩水で2度洗浄後、有機層にp−メトキシフェノール30mgを加え真空減圧により溶媒留去し、前記モノマー1を64.5g得た。
前記のモノマー3はモノマー1の合成に用いた3−アミノ−1−プロパノールの代わりに、6−アミノプロパノールを用い、同様の操作で合成した。各目的物の生成は1H NMRにて確認した。
2−ピロリドン(和光純薬製) 20gを窒素置換した200mLの前記撹拌機を具備した三口フラスコに添加した。窒素気流下で80℃に昇温後、2−ピロリドン 20g、前記モノマー1 10.0g、メタクリル酸n−ブチル 6.8g(和光純薬製)、メタクリル酸 3.2g、3−メルカプトプロピオン酸 0.030g(東京化成工業製)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(和光純薬製)0.079gの混合液を3時間かけて滴下した。滴下後、2時間後、4時間後にそれぞれ0.050gの、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルを加え、さらに2時間反応を行った。次いで、200mlのナス型フラスコに得られた溶液30g、0.70gの炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)及び水20gを加え60℃で撹拌した。ポリマーの溶解後、加水により固形分20%に調整し、特定共重合体A−1の水性溶液を得た。また、重合後の溶液をGPC測定し、重量平均分子量が72,300であることを確認した。
特定共重合体A−2〜A−6については、各共重合体の構造式として記載した構造になるように、原料モノマー、メルカプトプロピオン酸の量を適宜調整して重合し、所定の中和度になるように炭酸水素ナトリウムの量を調整して、それぞれ20%の水性溶液として得た。
2−ピロリドン7.00gを窒素置換した500mLの前記撹拌機を具備した三口フラスコに添加した。窒素気流下で80℃に昇温後、2−ピロリドン7.0g、メタクリル酸10.0g 3−メルカプトプロピオン酸0.022g、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.02gの混合液を2時間かけて滴下した。滴下後、2時間後、4時間後にそれぞれ0.013gの、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルを加え、さらに90℃で2時間反応を行った。次いで、グリシジルメタクリレートを8.75g、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.05g、p−メトキシフェノール0.05g、2−ピロリドン15.0g加えと60℃で2時間反応した。さらに、炭酸水素ナトリウム4.59g、水40.1g、2−ピロリドン11.1gを加え、50℃で2時間加熱し、20%の比較用ポリマーC−1(構造は後記する。)の水性溶液を得た。
フラン基を有するモノマーとして、フルフリルメタクリレート(和光純薬工業社製)を用いた以外は、合成例1に示されるポリマーA−1を合成したのと同様の方法で、下記構造のポリマーB−1及びポリマーB−2を合成した。得られた特定ジエン化合物B−1及びB−2は1H−NMRとGPCの測定を行い、目的の構造のポリマーの生成と、重量平均分子量がB−1が21,000であり、B−2が35,000であることを確認した。
特定ジエン化合物B−3は、2,2−ジ(2−フリル)プロパン(東京化成工業社製)を用いた。
マゼンタ顔料CINQUASIA MAGENTA RT355(キナクリドンの混晶、BASF社製)40質量部、ジエチレングリコールジエチルエーテル(和光純薬工業社製)49質量部、SOLSPERSE 32000(商品名:ポリエステル系高分子分散剤、日本ルーブリゾール(株)製) 11質量部を、撹拌機で均一になるまで撹拌し、顔料の予備分散液を調製した。得られた予備分散液を、さらに縦型ビーズミル(アイメックス(株)製、レディーミル)で0.1mmジルコニアビーズを用いて3〜6時間分散し、マゼンタ顔料分散物を作製した。得られた顔料分散物における顔料粒子の体積平均粒子径を、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定すると、180nmであった。この顔料分散物を用いる場合、下記表1〜表2には、「M分散物」と記載する。
その他の着色剤は以下に示す市販品を用いた。
・固形分濃度14%のマゼンタ色の顔料分散物(商品名:Projet Magenta APD 1000、富士フイルムイメージングカラーラント株式会社製)
・固形分濃度14%のシアン色の顔料分散物(商品名:Projet Cyan APD 1000(富士フイルムイメージングカラーラント株式会社製)
・ブラック色の顔料分散物(商品名:Projet Black APD 1000、富士フイルムイメージングカラーラント株式会社製)
・固形分濃度14%のイエロー色の顔料分散物(商品名:Projet Yellow APD 1000、富士フイルムイメージングカラーラント株式会社製)
1.インク組成物の調製
(a)特定共重合体又は比較高分子化合物、(b)特定ジエン化合物、(c)有機溶剤、(d)水、(e)着色剤、界面活性剤を、下記表1〜表2に示す組成になるように、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて、250回転/分にて混合撹拌し、粗インク組成物をそれぞれ調製した。
得られた各粗インク組成物を、プラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径5μmフィルタ(ミリポア社製のMillex−SV、直径25mm)にて濾過して完成品である実施例1〜13、比較例1〜8のインク組成物を得た。
1.インク組成物の調製
(a)特定共重合体又は比較高分子化合物、(b)特定ジエン化合物、(c)有機溶剤、(e)着色剤を、下記表2に示す組成になるように、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて、250回転/分にて混合撹拌し、粗インク組成物をそれぞれ調製した。
得られた各粗インク組成物を、プラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径5μmフィルタ(ミリポア社製のMillex−SV、直径25mm)にて濾過して完成品である実施例14〜15、比較例6〜7のインク組成物を得た。
なお、以下に示される(a)特定共重合体及び比較用ポリマーに併記した各構造単位の組成比は質量基準である。
合成例1にて得られた特定特定共重合体A−1〜A−6を用いた。
合成例2にて得られた比較用ポリマーC−1(下記構造)を用いた。
合成例2にて得られた高分子化合物である特定ジエン化合物B−1及びB−2と、低分子化合物である特定ジエン化合物B−3の構造を以下に示す。
・2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社製)
・γ−ブチロラクトン(BASFジャパン(株)製)
・2−メチル−1,3−プロパンジオール(東京化成工業(株)製)
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(東京化成工業(株)製)
(d)水としては、イオン交換水を用いた。
・ZONYL FSN(商品名:フッ素系界面活性剤、Aldrich社)
また、得られた各実施例のインク組成物の表面張力を、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定したところ、いずれも室温(25℃)で20mN/m〜40mN/mの範囲であった。
得られた実施例及び比較例の各インク組成物を用いて、以下に示す評価を行なった。評価結果を表1〜表2に示す。
インクジェット記録装置として、市販のインクジェットプリンタ(富士フイルムダイマティックス社製、製品名:DMP−2831)を用意した。
得られた各インク組成物を上記インクジェットプリンタに装填し、35℃で加熱したポリ塩化ビニル製基材(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)上のヘッド走査方向と垂直方向に、幅100μm、長さ1cmの直線を、間隔100μmで、20本印画した。得られた直線の形状を目視で観察し、下記基準で評価した。なお、A及びBのレベルが、実用上問題の無いレベルである。
−評価基準−
A:直線性が高く、エッジにほとんど乱れが無いもの。
B:直線のエッジ部はわずかに乱れがあるが、隣の直線と混合していないもの。
C:にじみが大きく、隣の直線と混合している箇所があるもの。
得られた各インク組成物を、RK PRINT COAT INSTRUMENTS社製 KハンドコーターのNo.2バーを用いて、8cm四方の塩化ビニルシート(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)に12μmの厚みで塗布した。さらに、60℃で3分間水分を乾燥した後、低圧水銀灯で1000mJ/cm2のエネルギーとなる条件で露光し、塩化ビニルシート上に硬化膜(ベタ画像)を有する印画物を得た。
得られた印画物における硬化膜(画像)を有する側の表面を、イソプロピルアルコールを含浸した綿棒にてこすり、以下の評価基準で評価した。なお、A及びBが実用上問題の無いレベルである。
−評価基準−
A:50回以上こすっても、画像に変化が認められなかった。
B:20〜49回のこすりで、画像の濃度が低下した。
C:10〜19回のこすりで、画像の濃度が低下した。
D:0〜9回のこすりで、画像の濃度が著しく低下した。
得られた実施例及び比較例の各インク組成物を、RK PRINT COAT INSTRUMENTS社製 KハンドコーターのNo.2バーを用いて、8cm四方の塩化ビニルシート(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)に12μmの厚みで塗布した。さらに、70℃で3分間水分を乾燥した後、低圧水銀灯で400mJ/cm2のエネルギーとなる条件で露光し、塩化ビニルシート上に硬化膜(ベタ画像)を有する印画物を得た。
得られた印画物における硬化膜を有する側の表面を、イソプロピルアルコールを含浸した綿棒にてこすり、以下の評価基準で評価した。評価結果は表に示す。なお、A及びBが実用上問題の無いレベルである。
A:50回以上こすっても、画像に変化が認められなかった。
B:20〜49回のこすりで、画像の濃度が低下した。
C:10〜19回のこすりで、画像の濃度が低下した。
D:0〜9回のこすりで、画像の濃度が著しく低下した。
インクジェット記録装置として、市販のインクジェットプリンタ(富士フイルムダイマティックス社製、製品名:DMP−2831)を用い、ポリ塩化ビニル製基材(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)上に、20cm×20cmのベタ画像を印画した。形成した画像を下記の評価基準に従って目視により評価した。
−評価基準−
A:吐出不良によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られた。
B:吐出不良によるドット欠けの発生がわずかに認められたが、実用上支障をきたさない程度であった。
C:吐出不良によるドット欠けの発生があり、実用に耐えない画像であった。
Claims (11)
- (a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物、(b)下記一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物、及び(c)有機溶剤、を含有するインク組成物。
(一般式(1)中、Ra及びRbは、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRbの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Ra及びRbは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は、高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。)
(一般式(2)中、R1及びR2は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基を表すか、或いは、R1とR2が互いに結合して環を形成する単結合、アルキレン基、及び−O−から選ばれる2価の連結基を表し、R1及びR2の双方が単結合であることはない。R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基を表し、R3及びR4のいずれか一方は、(b)一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物における他の部分構造と結合する単結合又は2価の連結基を表す。なお、R3、R4、R5及びR6のうち2以上が互いに結合して環を形成することはない。) - 前記(b)一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物が、共役ジエン構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物である請求項1に記載のインク組成物。
- 前記(a)一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
(一般式(3)中、Ra及びRbは、前記一般式(1)におけるRa及びRbと同義である。Rcは、水素原子又はメチル基を表す。Zは、単結合、−COO−**又は−CONRd−**を表し、Rdは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、**はXとの結合位置を表す。Xは2価の有機基を表す。) - さらに、(d)水を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 前記(a)一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が、アルコール性水酸基、アルキル置換カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種の親水性基を有する繰り返し単位をさらに含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 前記(b)一般式(2)で表される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物が、下記一般式(2−1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。下記一般式(2−1)中、*は、繰り返し単位との結合部位を表す。
- さらに、(e)着色剤を含有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
- インクジェット記録用である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 非浸透性の記録媒体への印刷用である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、
記録媒体上に付与されたインク組成物を、60℃以上の熱源を用いて乾燥させ、インク組成物に含まれる液状成分の少なくとも一部を除去する乾燥工程と、
記録媒体上に付与され、乾燥されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む画像形成方法。 - 記録媒体上に、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物により形成された画像、或いは、請求項10に記載の画像形成方法によって形成された画像を有する印画物。
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