JP2016068339A - 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置 - Google Patents

液体吐出ヘッド及び液体吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】液滴の吐出量を変化させる場合であっても、液滴の着弾位置の精度が高く維持される液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供する。【解決手段】液体吐出ヘッドは、発熱素子31を備えている。発熱素子31は、発熱抵抗体2の内側に接続される第1の電極4と、発熱抵抗体2を囲む位置で発熱抵抗体2に接続される第2の電極3とを備えている。【選択図】図5

Description

本発明は、発熱素子に印加する電力を変化させることで、吐出される液滴の吐出量を変化させることのできる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
液体吐出ヘッドの構造として、一つの発熱抵抗体に印加される電力を変化させることで、発熱抵抗体に対応する吐出口から吐出される液滴の吐出量を変化させるものがある。液滴の吐出量を変化させることにより、液滴が記録媒体に着弾したときの画像の階調を変化させることができる。発熱素子に印加される電力を変化させることで液滴の吐出量を変化させる形式の液体吐出ヘッドとして、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、発熱抵抗体の面方向に水平な方向へインクが吐出される液体吐出ヘッドが開示されている。また、特許文献1の液体吐出ヘッドでは、発熱素子における発熱抵抗体の幅の大きさを位置ごとに変化させることにより、発熱抵抗体を流れる電流密度に勾配を形成している。これによって、発熱抵抗体に印加される電圧が変化したときに、発熱抵抗体に印加される電圧の大きさに応じて気泡の大きさを効率良く変化させている。
特開昭55−132258号公報
しかしながら、特許文献1に開示された液体吐出ヘッドのように発熱抵抗体を流れる電流密度に勾配を形成することによって気泡の大きさを変化させる場合、生成される気泡の形状が印加される電圧の大きさに応じて大きく変化する可能性がある。特に、気泡の面方向の位置が電圧の大きさに応じて変動し、これによって気泡の形状が安定せずに大きく変化する可能性がある。
従って、このような発熱素子を、発熱素子が吐出口に対向した位置に配置される形式の液体吐出ヘッドに適用した場合には、発熱素子に印加する電圧の大きさを変化させると、吐出口に対向した気泡の形状が比較的大きく変化する可能性がある。また、気泡の面方向に沿った位置が、発熱素子に印加される電圧によって変化することにより、吐出口に対する気泡の位置が、電圧に応じて変化する場合がある。そのため、液滴の吐出方向にずれが生じ、液滴の着弾位置の精度が低下してしまう可能性がある。
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、液滴の吐出量を変化させる場合であっても、液滴の着弾位置の精度が高く維持される液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
本発明の液体吐出ヘッドは、液体を貯留することが可能な液室と、前記液室に面する位置に配置された発熱抵抗体を有し、前記液室に液体が貯留された状態で前記発熱抵抗体を電流が流れることにより発熱して液体内で気泡を生成することが可能な発熱素子と、前記発熱素子に対向する位置に形成され、前記発熱素子が発熱したときに前記液室内の液体を吐出する吐出口とを備え、前記発熱素子は、前記発熱抵抗体の内側の部分に接続される第1の電極と、前記発熱抵抗体を囲む位置に配置され、前記発熱抵抗体に接続される第2の電極とを備えていることを特徴とする。
発熱素子に対向した位置に吐出口の形成された形式の液体吐出ヘッドで吐出量を変化させるために発熱素子に印加する電圧を変化させたとしても、液滴の着弾位置の精度を高く維持することができる。従って、液体の吐出によって得られる画像の品質を高く維持することができる。
本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドの搭載されるインクジェット記録装置の斜視図である。 (a)は図1のインクジェット記録装置に搭載されるインクカートリッジについて示した斜視図であり、(b)はそのインクカートリッジについて示した側面図である。 図2のインクカートリッジに取り付けられた記録素子基板について示した斜視図である。 図3の記録素子基板の一部を破断して内部の構成について示した斜視図である。 図4の記録素子基板における発熱素子の周辺について拡大して示した断面図である。 図5の発熱素子について示した平面図である。 図5の発熱素子に異なる大きさの電圧を印加させた場合のそれぞれの場合の気泡の形状について示した説明図である。 図6の発熱素子の変形例について示した平面図である。 (a)は図6の発熱素子のさらなる変形例について示した平面図であり、(b)は(a)の発熱素子の断面図である。 (a)〜(d)は図6の発熱素子の別の変形例について示した平面図である。 (a)は本発明の第2実施形態に係る記録ヘッドにおける発熱素子の周辺について拡大して示した断面図であり、(b)は(a)の発熱素子の平面図である。 (a)〜(c)は図11の発熱素子に電圧を印加したときの気泡が生成されて消泡するまでの過程について示した説明図である。 (a)〜(d)は図11(b)の発熱素子の変形例について示した平面図である。 図11(b)の発熱素子のさらなる変形例について示した平面図である。 (a)は本発明の第3実施形態に係る記録ヘッドにおける発熱素子について拡大して示した平面図であり、(b)は(a)の発熱素子の周辺について拡大して示した断面図である。
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドについて説明する。但し、後述する実施形態は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明をこの技術分野における通常の知識を有する者に十分に説明するために提供されるものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの搭載される液体吐出装置について示した斜視図である。図1に示される液体吐出装置としてのインクジェット記録装置1000は、記録ヘッド(液体吐出ヘッド)150の取り付けられたインクカートリッジ101が搭載されるキャリッジ211を備えている。本実施形態では、記録ヘッド150とインクタンク160とが一体に形成されたインクカートリッジ101が、キャリッジ211に搭載される。
本実施形態のインクジェット記録装置1000において、キャリッジ211は、ガイドシャフト206に沿って主走査方向に移動自在にガイドされている。ガイドシャフト206は、記録媒体の幅方向に沿って延びるように配置されている。従って、キャリッジ211に搭載されたインクカートリッジ101は、記録媒体の搬送される搬送方向と交差する方向に走査しながら、記録ヘッド150の吐出口8からインクの吐出を行うことによって記録を行う。このように、インクジェット記録装置1000は、インクカートリッジ101における記録ヘッド150の主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送と、を伴って画像を記録するいわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置である。
キャリッジ211は、記録媒体の搬送方向に直交する方向に走査されるように、ガイドシャフト206によって貫通されて支持されている。キャリッジ211にはベルト204が取り付けられており、ベルト204にはキャリッジモータ212が取り付けられている。これにより、キャリッジモータ212による駆動力がベルト204を介してキャリッジ211に伝えられるので、キャリッジ211がガイドシャフト206によって案内されながら主走査方向に移動可能に構成されている。
また、キャリッジ211には、制御部からの電気信号を、インクカートリッジ101における記録ヘッド150の記録素子基板106に転送するためのフレキシブルケーブル213の一端が取り付けられている。また、インクジェット記録装置1000は、記録ヘッド150の回復処理を行うために用いられるキャップ241及びワイパブレード243が配置されている。また、インクジェット記録装置1000は、記録媒体を積層状態で蓄える給紙部215と、キャリッジ211の位置を光学的に読み取るエンコーダセンサ216を有している。
キャリッジ211は、キャリッジモータ及びその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構により、主走査方向に往復動される。記録媒体は、給紙部215に積載された後、搬送ローラによって矢印Bの副走査方向に搬送される。インクジェット記録装置1000は、インクカートリッジ101を主走査方向に移動させつつ、インクを吐出させる記録動作と、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって、記録媒体上に順次画像を記録する。
図2(a)に、記録ヘッド150とインクタンク160とが一体に構成されたインクカートリッジ101についての斜視図を示し、図2(b)に、図2(a)のインクカートリッジ101の側面図を示す。上述のように、インクカートリッジ101は、インクを収容するインク収納容器としてのインクタンク160と、インクタンク160に貯留されたインクを吐出して記録を行う記録ヘッド150とを有している。インクカートリッジ101におけるインクタンク160は、容器本体102及び蓋部材103を有している。容器本体102の上面を蓋部材103が覆うように、蓋部材103が容器本体102に取り付けられる。容器本体102に蓋部材103が取り付けられることによって、容器本体102と蓋部材103とにより囲まれた空間が閉塞される。容器本体102と蓋部材103とによって囲まれた空間には、インクを吸収可能な不図示のインク吸収体が配置される。
図3に、記録素子基板106についての斜視図を示す。図4に、図3における記録素子基板106の一部を破断して拡大した斜視図を示す。また、図5に、図4における領域Aについて拡大した断面図を示す。記録素子基板106では、基板1上に絶縁膜5が配置されている。絶縁膜5の上面に、発熱素子31が形成されている。また、絶縁膜5及び発熱素子31の上面には、パッシベーション膜6が配置されている。
記録素子基板106の表面側には、流路形成部材7が取り付けられている。流路形成部材7は、記録素子基板106上に、フォトリソグラフィ技術によって形成される。インクカートリッジ100における記録ヘッド150の記録素子基板106には、複数の液室30が画成されている。液室30の内部には、インクカートリッジ101から吐出される液体としてのインクが貯留されている。記録素子基板106には、液室30に連通して、液室30に貯留されたインクを吐出する吐出口8が形成されている。液室30の内部には、液室30に貯留されているインクを吐出口8から吐出するためにインクにエネルギーを付与する発熱素子31が形成されている。本実施形態では、流路形成部材7における発熱素子31に対応する位置に、インクを吐出するための吐出口8が形成されている。本実施形態では、発熱素子31に対向した位置に吐出口8の形成された、いわゆるサイドシューター型の記録ヘッド150が適用されている。記録素子基板106と流路形成部材7との間に、発熱素子31に対応する複数のインク流路及びインクの貯留される液室30が画成されている。また、記録素子基板106には、発熱素子31に電気エネルギーを伝送するために発熱素子31から延びている配線の端部に形成され、電流の授受が行われる電極パッド108が形成されている。
また、記録素子基板106には、電流を発熱素子31に伝送するための電気配線が配置されている。記録素子基板106には、アルミニウム(Al)等によって形成された電気配線が、成膜技術により形成されている。
このように、本実施形態では、記録素子基板106は、インクを吐出するためのエネルギーを発生させる記録素子として、発熱素子(電気熱変換素子)31が用いられている。それぞれの発熱素子31に電力を供給することによって、発熱素子31が駆動される。発熱素子31が駆動されることによって発熱素子31の周囲のインクに熱エネルギーが与えられ、液室30に貯留されているインク内で膜沸騰を生じさせている。液室30の内部で膜沸騰が引き起こされると、これにより吐出口8から記録媒体に向かってインクが吐出される。
また、記録素子基板106には、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口(液体供給口)105が、記録素子基板106を貫通して形成されている。
次に、本実施形態における発熱素子31の構成について説明する。図6に、本実施形態の記録ヘッド150に形成された発熱素子31について拡大した平面図を示す。図6では、説明のために、発熱素子31における配線については図示していない。また、図6は、発熱素子31を裏面から見た図である。発熱素子31は、第1の電極4、第2の電極3、発熱抵抗体2を備えて構成されている。
本実施形態の発熱素子31では、円板状に形成された発熱抵抗体2の中心の位置で、発熱抵抗体2に電流を供給する第1の電極4と発熱抵抗体2とが接続されている。第1の電極4は、発熱抵抗体2の中心から裏面に向かって延び、絶縁膜5の内部で下部配線9に接続されている。ここでは、下部配線9は、発熱抵抗体2に電流を供給する配線である。第1の電極4は、発熱抵抗体2と下部配線9との間に接続されている。このように発熱素子31が形成されているので、高さの異なる発熱抵抗体2と下部配線9との間が接続される。
発熱抵抗体2は、円板状の形状を有している。そのため、本実施形態では、発熱抵抗体2をインクの吐出方向に沿って見た場合、円形の形状を有している。また、円板状の発熱抵抗体2の外周を取り囲むように、発熱抵抗体2の外側に、第2の電極3が配置されている。発熱抵抗体2の外縁で、発熱抵抗体2と第2の電極3とが接続されている。第2の電極3は、発熱抵抗体2に接続されているので、発熱抵抗体2を流れる電流は第2の電極3に流入する。本実施形態では、発熱抵抗体2の外周11の全体を連続して囲うように、第2の電極3が発熱抵抗体2の外側に環状に配置されている。
第1の電極4は、発熱抵抗体2によって周囲を取り囲まれた位置に配置されている。本実施形態では、発熱抵抗体2が円板状に形成され、円板状の発熱抵抗体2の中心の位置に第1の電極4が配置されている。また、円板状に形成された発熱抵抗体2の周囲を取り囲むように、発熱抵抗体2の半径方向の外側に第2の電極3が配置されている。第2の電極3には、発熱抵抗体2から電流を送り出す配線15が接続されている。配線15は、下部配線9に、発熱抵抗体2を介して接続されている。配線15と発熱抵抗体2との間に、第2の電極3が接続されている。発熱素子31を出た電流は、記録ヘッドの外部に供給されるように、記録ヘッドが構成されている。
図5に示されるように、第1の電極4は、円板状の発熱抵抗体2の中心の位置と、下部配線9との間に延びている。発熱抵抗体2よりも記録素子基板106における裏面側の位置で、第1の電極4が、下部配線9に接続されている。また、発熱抵抗体2よりも発熱素子31における裏面側には、第1の電極4及び下部配線9の周囲を覆うように、絶縁膜5が配置されている。発熱素子31における液室30に面した位置には、液室30に面した部分を覆うように、発熱素子31の上方に、パッシベーション膜6が配置されている。
パッシベーション膜6は、液室30にインクが充填された状態のときにインクと発熱素子31の間の位置に配置される。パッシベーション膜6が発熱素子31を覆うように、インクと発熱素子31との間に配置されることにより、発熱素子31内を流れる電流がインクに流出することを抑えることができる。従って、発熱素子31を、インク内で電気的に絶縁させることができる。また、必要であれば、発熱素子31上で気泡が生成されその後気泡が消泡する際に生じるキャビテーションによる衝撃から発熱素子31の表面を保護するために、パッシベーション膜6とインクとの間に耐キャビテーション膜がさらに配置されてもよい。
このような記録ヘッド150によって吐出口8からインクを吐出する際には、液室30にインクが充填された状態で発熱素子31に電圧が印加される。発熱素子31の駆動によって液体内で発泡させることで、吐出口8からインク滴が吐出される。本実施形態では、発熱素子31に電力が印加される際には、電流は、下部配線9を通って第1の電極4に流入する。このように、発熱素子31に電流を流す際には、第1の電極4から発熱抵抗体2に電流が供給されるように、第1の電極4を介して発熱素子31に電流を流す。第1の電極4に流入した電流は、発熱抵抗体2を流れ、そこから発熱抵抗体2の外側に配置された第2の電極3に向かって、外側に流れる。発熱抵抗体2の内部では、電流は、円板状の発熱抵抗体2の中心に位置する第1の電極4から半径方向の外側に向かって流れる。
このとき、電流が発熱抵抗体2を流れることで、発熱抵抗体2が加熱され、発熱抵抗体2の表面の温度が上昇する。そのため、液室30に貯留されたインクのうち、発熱抵抗体2の周辺のインクが加熱されて温度が上昇し、そこで膜沸騰が生じる。液室30の内部でインクに膜沸騰が生じることにより、液室内で気泡が生成され、このときの圧力上昇によって、吐出口8からインク滴が吐出される。
本実施形態では、発熱素子31が円板状の形状を有しているので、第1の電極4を介して発熱抵抗体2に流入した電流は、周方向に沿って均等に、発熱抵抗体2の半径方向外側に配置された第2の電極3に向かって流れる。このとき、第2の電極3及び第1の電極4の間に接続された発熱抵抗体2では、発熱素子31に電力が印加された際に、第1の電極4側の位置で第2の電極3側の位置よりも電流密度が高くなる。発熱抵抗体2内における電流密度は、第1の電極4の位置で最も高く、外側に向かうにつれて徐々に低くなる。そのため、発熱素子31が駆動されると、第1の電極4側の位置で、第2の電極3側の位置よりも、発熱抵抗体2の温度が高くなる。
本実施形態の記録ヘッド150においては、インク内で膜沸騰を生じさせるには、発熱抵抗体の温度が300℃まで上昇する必要がある。
発熱素子31に電力を印加させて発熱素子31を駆動させた際には、発熱抵抗体2の中心で最も電流密度が高いので、発熱抵抗体2の中心で最も温度が高い。また、電力を印加したときの電流密度は、発熱素子31の中心から外側に向かうにつれて徐々に小さくなるので、発熱素子31の中心から半径方向の外側に向かうにつれて温度が徐々に低くなる。従って、発熱素子31に電力を印加させたときの発熱素子31の温度分布は、発熱素子31の中心で最も高く、そこから半径方向外側に向かうにつれて徐々に低くなるような分布となる。
発熱抵抗体2の温度が一定の値(本実施形態では300℃)以上に上昇した部分でインク内において気泡が生じるので、発熱素子31が本実施形態のように構成されている場合には、気泡は、第1の電極4を中心とした半球状に近い形状となる。また、発熱素子31に印加する電圧を変化させた場合には、発熱抵抗体2の温度が300℃以上になる領域は、中心の位置を変えずに半径方向に沿った大きさを変化させる。そのため、発熱素子31に印加する電圧を変化させることにより、気泡の中心の位置を保ちながら、気泡の大きさを効率良く変化させることが可能になる。
発熱素子31がこのように構成されていることにより、発熱素子31に電圧を印加させたときに生じる気泡は、電圧の大きさに関わらず、第1の電極4から発熱抵抗体2に電流が入り込む発熱抵抗体2の中心の位置で最も高い形状となる。また、気泡は、電圧の大きさに関わらず、発熱抵抗体2の中心から外側に向かうにつれて徐々に低くなる形状となる。従って、発熱素子31に印加する電圧を変化させることにより、気泡の中心の位置が発熱素子31の中心の位置に保たれたまま、気泡の大きさを変化させることができる。
図7に、発熱素子31に電圧を印加させてインク内で発泡した際に、生成される気泡の形状について示した記録ヘッドの断面図を示す。図7では、発熱素子31に印加する電圧をV1、V2、V3(V1<V2<V3)とした場合についての、それぞれの場合の気泡について示されている。発熱素子31に対し、電圧V1、V2、V3を印加したときの気泡をそれぞれ気泡13a、13b、13cとする。図7の気泡13a、13b、13cに示されるように、発熱素子31に印加される電圧に応じて気泡13の大きさが変化する。気泡13a、13b、13cのいずれの気泡13においても、気泡13の形状は、発熱素子31の面からの気泡の高さが、発熱素子31の面方向の中心の位置で最も高く、そこから面方向の外側に向かうにつれて徐々に低くなる。印加される電圧が大きくなると、この気泡13の中心の位置が一定に保たれたまま、印加される電圧に応じて発生する気泡13の容積が大きくなることがわかる。
このように、発熱素子31の駆動の際に発熱素子31に印加する電圧を変化させても、発熱抵抗体2の面方向の中心で最も高くそこから徐々に低くなる気泡の形状が保たれるので、気泡の形状に偏りが生じず、気泡の形状のバランスが保たれる。発熱素子31に印加する電圧の大きさを変化させても、生成される気泡のバランスが保たれる。従って、発熱抵抗体2の中心の位置が吐出口の中心の位置に近い位置に配置されていれば、吐出されるインク滴の位置精度が良好に保たれる。そのため、発熱素子31を駆動させる際に、発熱素子31に印加する電圧の大きさを変化させて生成される気泡の大きさを変化させても、吐出されるインク滴の位置精度を高く保つことができる。そのため、記録によって得られる画像の品質が高く保たれたまま、発熱素子に印加する電圧の大きさを変化させて、吐出口からのインクの吐出量を変化させることができる。つまり、画像の品質を保ったまま、複数の吐出量のインク滴を吐出させることが可能となる。
このとき、発泡による気泡の大きさを変化させる際に、液体の吐出を安定させるために、破線Bで示すように、吐出口8の重心は、発熱抵抗体2の重心の鉛直上に存在することがより好ましい。吐出口8の重心が発熱抵抗体2の重心の鉛直上に存在する場合には、インク滴を吐出する際に、気泡が吐出口8の重心の位置で発熱素子31の形成された発熱素子形成面50から吐出方向に向けて最も突出する。従って、吐出口8から吐出されるインク滴は、生成された気泡によって吐出口8の延びる方向に比較的真っ直ぐに吐出される。そのため、吐出されるインク滴の着弾精度を向上させることができる。
このように、第1実施形態の発熱素子31の構成によれば、第1の電極4が、発熱抵抗体2の内側の部分に接続されている。また、発熱抵抗体2を囲む位置に第2の電極3が配置され、そこで第2の電極3が発熱抵抗体2と接続されている。従って、発熱素子31を駆動させるための電流は第1の電極4を通って発熱抵抗体2に流入するので、第1の電極4側の位置で電流の密度が最も高くなる。電流の密度が高い位置ほど、発熱抵抗体2に電流を流したときの温度が高くなる。従って、発熱素子31を駆動させたときの発熱素子31の温度分布では、面方向に沿って、第1の電極4側の位置で最も温度が高くなり、外側に向かうにつれて温度が徐々に低くなる。気泡は第1の電極4の位置で最も大きく膨張し、第1の電極4の位置で気泡が発熱素子形成面50から最も大きく離れ、そこで最も気泡の高さが高くなる。発熱素子31に印加される電圧の大きさが変化したとしても、気泡が、第1の電極4側の位置で最も高くなり、そこから徐々に低くなる形状については変化しない。従って、発熱素子31に印加される電圧の大きさが変化しても、気泡の高さが最も高くなる位置については変化しない。このように、インク滴の吐出量を変化させるために、発熱素子31に印加する電圧の大きさを変化させても、面方向に沿った気泡の高さが最も高くなる位置が変化せずに気泡の形状が安定している。
また、気泡が面方向に沿って第1の電極4の位置で最も高さが高くなるので、発熱抵抗体2のより中心に近い位置で気泡の高さが最も高くなる。吐出口8が発熱素子31に対向する位置に形成されている場合には、吐出口8に対する気泡の最も突出する位置が変化しない。吐出口8に対する気泡の突出する位置が変化しないので、インク滴の吐出の際に、偏りのない状態で気泡が生成される。偏りがなく安定した状態で気泡が生成されるので、インク滴の着弾精度を高く維持することができる。特に、本実施形態では、気泡の最も突出した部分の位置が、吐出口の中心側の位置に維持されるので、発熱素子31の中心の位置が吐出口の中心に対応した位置に配置されている場合には、インク滴を精度良く吐出することができる。発熱素子31の中心の位置を吐出口の中心に近づけることで、インク滴の吐出を精度良く行うことができる。
このように、インク滴の吐出の際に生成させる気泡の大きさを変化させても、発泡された気泡の中心が吐出口8に対してずれることが抑えられる。従って、液滴の飛翔方向のずれの発生が抑制され、インク滴の着弾位置の精度が向上するので、安定した記録を行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、発熱素子31における発熱抵抗体2の形状が円板状のものについて説明したが、本発明はこれに限定されない。第1の電極4は、発熱抵抗体2の内側で発熱抵抗体2に接続されると共に、第2の電極3によって囲まれた部分の内側に配置されていれば、他の形状を有していてもよい。
ここで、発熱抵抗体2の形状は、中央付近から外周に向かって、電流密度が低くなるような勾配がつくように形成されることが必要とされる。また、発熱抵抗体2は、平面的に対称性を有することが好ましい。第1の電極4は、対称性を有する発熱抵抗体2の重心の、インクの吐出される吐出方向の延長線上に存在することが好ましい。
なお、本実施形態では、図6に示されるように、第2の電極3が、連続して発熱抵抗体2の外周の全体を囲む位置に配置され、そこで発熱抵抗体2に接続されるように発熱素子31が構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。図8に示されるように、一部で第2の電極3の連続性が途絶えている発熱素子が用いられてもよい。
図8には、発熱抵抗体2の外周の一部に第2の電極3の形成されていない部分が存在する発熱素子の平面図が示されている。このように、発熱抵抗体2の外周の全てを覆うように、発熱抵抗体2の全体を囲む位置に第2の電極3が配置されていなくてもよい。第2の電極3が、発熱抵抗体2の外周の全体ではなく、発熱抵抗体2を部分的に囲む位置に配置される構成であってもよい。このように、第1の電極4から発熱抵抗体2に流入した電流が、第2の電極3を通って外部へ供給されるのであれば、第2の電極3は発熱抵抗体2の外周の全体に亘って配置されなくてもよい。
また、図9(a)に示されるように、第2の電極3の配置されている部分と、第2の電極3の配置されていない部分とが、周方向に交互に形成された発熱素子が記録ヘッドに用いられてもよい。図9(a)に、発熱抵抗体2の外周において、第2の電極3の配置されている部分と、第2の電極3の配置されていない部分とが、交互に形成される構成の発熱素子の平面図が示されている。このように、第2の電極3が、発熱抵抗体2を囲む位置において、間隔を置いて複数配置される構成であってもよい。また、図9(b)に、図9(a)に示される発熱素子の断面図が示されている。この場合、第2の電極3の配置された部分でのみ、第1の電極4と第2の電極3との間を電流が流れる。
図9(a)、(b)に示される形態では、複数の第2の電極3が発熱抵抗体2の周囲に配置されているので、第1の電極4及び発熱抵抗体2を介して、複数の第2の電極3のそれぞれに電流が供給される。複数の第2の電極3のそれぞれには、そこから記録素子基板106における裏面に向かう配線15aが接続されている。複数の第2の電極3のそれぞれに接続された配線は、発熱抵抗体2の下方の絶縁膜5の内部で一旦束ねられて合流し、そこで配線15bに接続される。このように、複数の第2の電極3のそれぞれから延びた配線は、一旦合流して、そこから記録ヘッドの外部に向けて電流が送り出される。
なお、発熱素子31における発熱抵抗体2の形状については、円板状のものに限定されない。発熱素子31における発熱抵抗体2は、その他の形状であってもよい。図10に、他の形状の発熱素子の例についての平面図を示す。例えば、対称性を有する形状の発熱抵抗体2を備えた発熱素子は、図10(a)、(b)に示されるような長方形や楕円形などの重心を通る直線(破線X)に対して線対称でもよい。また、図10(c)に示されるような正方形や、図10(d)に示される正多角形、図6に示される円形などの点対称の形状を有することが好ましい。
発熱抵抗体2の鉛直上に存在する吐出口8に対して、気泡13の大きさによらず気泡13の中心が変動しないために、印加電圧を変化させても液滴の飛翔方向が安定する。つまり、一対の発熱抵抗体2と吐出口8によって、複数の液滴の大きさを吐出することが可能であり、かつ、その液滴は安定して媒体に着弾させることが可能となる。
以下、本実施形態の記録ヘッドの実施例について説明する。なお、本発明は、実施例に限定されず、他の形態であってもよい。
図5に示される記録ヘッドにおいて、本実施形態では、基板1は、単結晶シリコンにより形成されている。基板1の上には、厚み6μmの絶縁膜5が形成されている。絶縁膜5の上には、AlCuよりなる第2の電極3と、シート抵抗350Ω/sq.(ohms per square)の発熱抵抗体2とが配置されている。
発熱抵抗体2は、上方から見た形状が円形とされ、直径φ25μmで形成されている。発熱抵抗体2の外周11は、第2の電極3によって連続的に囲まれて配置されている。第1の電極4は、W(タングステン)によって形成されている。
AlCuによって形成された下部配線9と、発熱抵抗体2とが、絶縁膜5の内部で接続されるように、下部配線9及び発熱抵抗体2が絶縁膜5内に配置されている。さらに、第2の電極3及び発熱抵抗体2の上層に、それらを電気的にインクなどの液体から絶縁するために、SiNによって形成されたパッシベーション膜6が配置されている。記録素子基板106における基板1、絶縁膜5及びパッシベーション膜6の上面には、エポキシ樹脂によって形成された流路形成部材7が貼り付けられる。
流路形成部材7における発熱抵抗体2に対応した位置には、気泡の生成により、液体を吐出するための吐出口8が形成されている。本実施形態では、吐出口8の直径は、φ20μmとした。吐出口8及び発熱素子は、吐出口8の重心が発熱抵抗体2の重心の鉛直上に位置するように、それぞれ配置されている(破線B)。記録素子基板106には、裏面から表面にかけてインクを液室に流入させるためにインク供給口105が記録素子基板106を貫通して形成されている。このように構成された記録素子基板106と流路形成部材7とが貼り付けられることで、記録ヘッドが形成されている。
以上のように準備された記録ヘッドに対して、複数の大きさの電圧を発熱素子に印加し、吐出される液体の体積および飛翔状態を観察した。観察の結果について、以下の表に示す。本実験によれば、印加電圧を変更することで液体の体積が増大する。また、飛翔の直進性は印加電圧の大きさに関わらず良好であることが確認できた。
Figure 2016068339
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る記録ヘッドについて説明する。なお、上記第1実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第2実施形態の発熱素子では、第1の電極4が、中心の1点ではなく、円環状に形成されている点で第1実施形態の記録ヘッドと異なる。第2実施形態における記録ヘッドの発熱素子31aの周辺の断面図を図11(a)に示す。また、第2実施形態における発熱素子31aの平面図を図11(b)に示す。図11(b)では、説明のために、発熱素子31aにおける配線については図示していない。また、図11(b)は、発熱素子31を裏面から見た図である。
絶縁膜5の内部に、第1の電極4を介して発熱抵抗体2に向けて電流を供給するための配線9aが配置されている。本実施形態では、発熱抵抗体2に向けて電流を供給するための配線9aは、絶縁膜5における比較的下方の位置に配置されている。絶縁膜5内部における下方の位置で水平方向に延びる配線9aの上方には、第1の電極4に電流を供給するための配線9bが配置されている。絶縁膜5における下方の位置を水平方向に延びる配線9aと、第1の電極4に電流を供給するための配線9bとの間には、鉛直方向上方に向けて配線同士を接続する接続用の配線9cが配置されている。配線9a、9b、9cは、発熱抵抗体2に電流を供給するための配線である。
第1の電極4に電流を供給するための配線9bと発熱抵抗体2との間には、第1の電極4が配置されている。第1の電極4は、第1の電極4に電流を供給するための配線9bから鉛直方向上方に延びて、発熱抵抗体2に接続されている。本実施形態では、第1の電極4は、インクの吐出される方向から見た場合、円環状となるように配置されている。また、発熱抵抗体2の外周には、第2の電極3が配置されて、発熱抵抗体2と第2の電極3とが接続されている。本実施形態においても、第2の電極3が、発熱抵抗体2の外周の全体を囲むように、発熱抵抗体2の外縁に接続されている。第2の電極3は、発熱抵抗体2の外縁から記録素子基板106における裏面に向かって下方に延びるように配置されている。第2の電極3は、絶縁膜5の内部で水平方向に延びる配線15cと接続されている。配線15cは、発熱抵抗体2から電流を送り出すための配線である。発熱素子31aを出た電流は、記録ヘッドの外部に供給されるように、記録ヘッドが構成されている。
発熱抵抗体2の上方には、発熱抵抗体2及び配線類を電気的にインクなどの液体と絶縁するためパッシベーション膜6が配置されている。また、必要であれば、パッシベーション膜6の上方に耐キャビテーション膜がさらに配置されてもよい。
図11(a)、(b)に示されるように、本実施形態では、第1の電極4が、発熱素子31aの中心の位置を囲むように円環状に形成されている。第1の電極4が、円環状に形成されているので、発熱素子の中心の位置では、第1の電極4は形成されていない。また、発熱素子31aの中心の位置では、発熱抵抗体2も配置されていない。
本実施形態の記録ヘッドに用いられている発熱素子31aに電圧が印加されて駆動されることによってインク滴が吐出口から吐出される際の発熱素子31aの状態について説明する。
第2実施形態の発熱素子の用いられた記録ヘッドにインクが充填された状態の記録ヘッドにおける吐出口の周辺の断面図について図12(a)〜(c)に示す。図12(a)には、発熱素子が駆動され、気泡が生成されてから比較的すぐの状態について示されている。また、図12(b)には、図12(a)の状態から気泡が拡大した状態について示されている。また、図12(c)には、気泡が消泡する直前の状態について示されている。
まず、絶縁膜5内部で水平方向に延びる配線9cと、配線同士を接続する接続用の配線9eと、第1の電極4に電流を供給するための配線9dとを通って、第1の電極4に電流を流す。配線9a、配線9b及び配線9cは、発熱抵抗体2に電流を供給するための配線である。第1の電極4から発熱抵抗体2に入った電流は、発熱抵抗体2の内部で発熱素子31aを発熱させてから第2の電極3から配線15cに流れ込む。
本実施形態では、発熱抵抗体2の重心側の位置に発熱抵抗体2が存在しないため、図12(a)に示されるように、発泡の際に発熱素子31aの中心部分が発熱に関与せずに、気泡13は略ドーナッツ状に発生する。その後、気泡は成長していき、ドーナッツ状の気泡が膨張することによって中心の空洞が潰れて一つの半球状になる。その結果、図12(b)に示されるように、一つの気泡13となる。
発熱抵抗体2に電流を流した際に、発熱抵抗体2の重心に近い側から外側に向かって電流密度が低下するように発熱素子31aが形成されているため、図12(a)に示すように気泡13は発熱抵抗体2の内周側から発生する。気泡13が一つの半球状になった後には、電極へ印加する電圧を変化させても、気泡13は発熱抵抗体2の内周側より発生するため、発熱抵抗体2の鉛直上に存在する吐出口8に対して、気泡の中心の位置が変動しない。そのため、印加電圧を変化させても、気泡13の成長の際の、気泡13の対称性が維持される。このように、ドーナッツ状の気泡が一つの半球状の気泡になるのに十分な時間が経過した後には、気泡の中心の位置が変動しないので、気泡の形状が安定する。吐出口8に対し、気泡13の中心の位置があまり変動しないので、液滴を吐出口から吐出させる際に、液滴の飛翔方向が安定する。
本実施形態のさらなる効果について図12(a)〜(c)を参照して説明する。発熱抵抗体2上で発生した気泡13は、最大限膨張した後に、急激に収縮を始めていき、図12(c)に示されるように、発熱抵抗体2の重心位置の近傍で消泡する。消泡の際には機械的な大きな力(キャビテーション)が基板表面にかかることが知られている。本実施形態のように、発熱素子31aにおける重心近傍の位置で発熱抵抗体2が除去されているので、消泡の生じる位置に発熱抵抗体2が存在していない。そのため、気泡が消泡することによって生じるキャビテーションによる発熱抵抗体2の機械的損傷を抑制することが可能となる。結果として、発熱素子31aが本実施形態のような構成をとることで、キャビテーションによる発熱抵抗体の耐久性に影響を与えることを抑制でき、発熱素子の長寿命化が可能となる。
本実施形態では、発熱素子がこのように構成されているので、第1の電極4側の位置で第2の電極3側の位置よりも電流密度が高くなる。そのため、第1の電極4側の位置で発熱抵抗体2の到達温度が高くなり、第1の電極4に近接した位置で最も温度が高くなる。
このとき、発熱素子31aに印加する電圧の大きさを変化させても、発熱抵抗体2における最も温度の高くなる位置は変化しない。従って、発熱素子31aに印加する電圧の大きさを変化させても、発熱素子31aの駆動によって生成される気泡における最も突出した部分の位置が変わらず、気泡の形状に偏りが生じることを抑えることができる。気泡の形状に偏りが生じることが抑えられるので、インク滴の着弾位置の精度を高く維持することができる。
なお、本実施形態では、発熱素子31aにおける発熱抵抗体2は、重心位置の部分がくり抜かれた円環状の形状に形成されているが、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、発熱抵抗体2の中央付近から外周に向かって、電流密度が低くなるような勾配が形成されるように、発熱素子31aが形成されている。発熱抵抗体2の重心近傍の部分がパターニングされ、その内周12に第1の電極4が連続的に配置されている。発熱抵抗体2の形状は、第1実施形態の発熱素子と同様に、対称性を有することが好ましい。また、発熱抵抗体2の重心近傍のパターニング形状は、発熱抵抗体2の外形と相似であることが好ましい。これは、第1実施形態で説明したように、第2の電極3と第1の電極4との距離が、周方向の全体に亘ってできる限り同じであるほうが好ましいことに由来する。以上のことを考慮すると、図13(a)、(b)に示されるように、発熱素子における発熱抵抗体2の形状は、長方形や楕円形などの重心を通る直線(破線Xで示す)に対して線対称な形状を有していてもよい。より好ましくは、図13(c)に示される正方形や図13(d)に示される正多角形、図11(b)に示される円形などの点対称の形状がよい。発熱抵抗体2の重心近傍のパターニング形状はそれぞれの外形に対して相似であることが好ましく、発熱抵抗体2の内周12を囲むように第1の電極4が連続して配置されることが好ましい。
また、本実施形態においても、第2の電極3は、一部が途切れていてもよいし、複数に分割されていてもよい。図14(a)に、第2の電極3の一部が形成されてなく、不連続に形成された形態の発熱素子の平面図が示されている。また、本実施形態では、第1の電極4は発熱抵抗体2の内側の縁部の全体に配置されているが、本発明はこれに限定されない。図14(a)に示される発熱素子では、第1の電極4においても発熱抵抗体2の内側で一部が形成されてなく、第1の電極4が不連続に形成されている。このように、第1の電極4は、発熱抵抗体2の内側の縁部に部分的に配置されていてもよい。
また、第2の電極3が、発熱抵抗体2を囲む位置において、間隔を置いて複数形成されるように構成されてもよい。図14(b)に、第2の電極3が、発熱抵抗体2を囲む位置において、間隔を置いて複数配置される構成についての発熱素子の平面図が示されている。このように、本実施形態においても、発熱抵抗体2の外側において、第2の電極3の形成されている部分と形成されていない部分とが交互に並べられてもよい。また、図14(b)に示される発熱素子では、第1の電極4においても、第1の電極4が、発熱抵抗体2内側の縁部において、間隔を置いて複数配置されている。このように、発熱素子は、発熱抵抗体2の内側の縁部で、第1の電極4の形成されている部分と形成されていない部分とが交互に並べられて形成される構成であってもよい。以上のように、第1の電極4、第2の電極3のいずれにおいても、電極配置の連続性が一部途絶えていたり、電極が非連続的に配置されたりしてもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る記録ヘッドについて説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第3実施形態では、発熱抵抗体及び発熱抵抗体の外側に接続された第2の電極が複数設けられ、複数の第2の電極に対し一つの第1の電極が共通して使用されている点で第1実施形態及び第2実施形態の構成と異なる。複数の第2の電極は、共通の第1の電極からの距離が異なる位置にそれぞれ配置されている。複数の第2の電極のそれぞれには別の発熱抵抗体が接続されている。本実施形態では、共通の一つの第1の電極に対し、第2の電極が複数設けられているので、第1の電極に接続される第2の電極を、複数の第2の電極から選択することができる。複数の第2の電極は、第1の電極からの距離が異なる位置にそれぞれ配置されているので、第1の電極に接続される第2の電極を少なくとも一つ選択することにより、第1の電極から所望の距離だけ離れた第2の電極を選択することができる。また、第2の電極と第1の電極との間の距離に応じて、発熱素子を駆動させた際の気泡の大きさを変化させることができる。従って、第1の電極から第2の電極までの距離の複数設定されている発熱抵抗体から少なくとも一つの発熱抵抗体を選択することにより、発熱素子を駆動させた際の気泡の大きさを選択することができる。
図15(a)に、第3実施形態における発熱素子31bについての平面図を示す。また、図15(b)に第3実施形態における発熱素子についての断面図を示す。図15(a)に示されるように、第3実施形態では、環状に形成された第2の電極3a、3bが同心円状に複数設けられている。ここでは、2つの第2の電極3a、3bが設けられている。図15(a)では、説明のために、発熱素子31bにおける配線については図示していない。
絶縁膜5の内部に、水平方向に延びる下部配線9dが配置されている。下部配線9dには、第1の電極4が接続されている。第1の電極4は、下部配線9dから、記録素子基板106における表面側に向かって鉛直方向上方に延びるように配置されている。第1の電極4には、2つの発熱抵抗体2a、2bが接続されている。2つの発熱抵抗体2a、2bは、第1の電極4から、半径方向の外側に向かって延びている。本実施形態では、第1の電極4は、それぞれの発熱抵抗体2a、2bの中心の位置で、発熱抵抗体2a、2bに接続されている。本実施形態では、下部配線9dが、発熱抵抗体2a、2bに電流を供給する配線として機能する。
一方の発熱抵抗体2aは、第1の電極4における下部配線9dの接続された側とは反対側の端部に接続されている。他方の発熱抵抗体2bは、第1の電極4における鉛直方向の中間の位置に接続されている。第1の電極4の端部に接続された発熱抵抗体2aは、第1の電極4から半径方向外側の端部までの距離が比較的短い。第1の電極4の中間の位置に接続されている発熱抵抗体2bは、第1の電極4から半径方向外側の端部までの距離が比較的長い。
それぞれの発熱抵抗体2a、2bの半径方向の外側の端部には、第2の電極3がそれぞれ配置されている。第1の電極4から半径方向の外側の端部までの距離の短い方の発熱抵抗体2aには、第2の電極3aが配置されている。第1の電極4から半径方向の外側の端部までの距離の長い方の発熱抵抗体2bには、第2の電極3bが配置されている。また、それぞれ発熱抵抗体2a、2bに接続されたそれぞれの第2の電極3a、3bには、配線15d、15eが接続されている。発熱抵抗体2aを通過して第2の電極3aに到達した電流は、発熱抵抗体2aから第2の電極3aを介して配線15dによって電流が送り出される。また、発熱抵抗体2bを通過して第2の電極3bに到達した電流は、発熱抵抗体2bから第2の電極3bを介して配線15dによって電流が送り出される。本実施形態では、配線15d、15eが、発熱抵抗体2a、2bから電流を送り出す配線として機能する。
このように、第2の電極3a、3bに対応して、それぞれ発熱抵抗体2a、2bが設けられている。それぞれの第2の電極3a、3bは、発熱抵抗体2a、2bを囲む位置に配置され、発熱抵抗体2に接続されるように配置されている。このように、本実施形態では、2組の発熱抵抗体2a、2b及び第2の電極3a、3bが、同一の第1の電極4の外側に、吐出口から液体の吐出される吐出方向に沿った異なる位置に形成されている。なお、同一の第1の電極の外側に形成される発熱抵抗体及び第2の電極は、2組に限定されない。複数組形成されているのであれば、他の組数の発熱抵抗体及び第2の電極が、同一の第1の電極の外側に形成されてもよい。
このように構成された発熱素子31bに対し、電圧が印加されることにより、発熱素子31bが駆動されて気泡が生成されてインク滴が吐出される。本実施形態では、発熱抵抗体2a、2b及び第2の電極3a、3bが、同一の第1の電極4の外側に複数形成されている。
本実施形態では、下部配線9dから、第1の電極4を介して、第1の電極4から半径方向外側の端部までの距離が比較的短い発熱抵抗体2a及び第1の電極4から半径方向外側の端部までの距離が比較的長い発熱抵抗体2bの、少なくとも一つに電圧を印加する。すなわち、複数組の発熱抵抗体2a、2b及び第2の電極3a、3bのうち、少なくとも一組の発熱抵抗体及び第2の電極に対し電流が流されて、発熱抵抗体が発熱される。また、第1の電極4から半径方向外側の端部までの距離が比較的短い発熱抵抗体2a及び第1の電極4から半径方向外側の端部までの距離が比較的長い発熱抵抗体2bの両方に、電圧を印加してもよい。発熱抵抗体2a、2bの両方に電圧を印加した場合には、気泡は、発熱抵抗体2a、2bそれぞれで生じる気泡同士が合わさった大きさになる。従って、発熱抵抗体2a、2bの両方に電圧を印加することにより、発熱抵抗体2a、2bのいずれかを単一で用いるよりも大きな気泡を生成することができる。このように、2つの発熱抵抗体2の少なくとも一つに選択的に電圧を印加することにより、発熱素子を駆動させた際に所望の大きさの気泡を生成することができる。従って、吐出されるインク滴の吐出量を調節することができる。このように、複数の発熱抵抗体2a、2b及び第2の電極3a、3bのうち、少なくとも一組の発熱抵抗体2及び第2の電極3に対し、電流が流されて、複数の発熱抵抗体2a、2bのいずれか、あるいは両方の発熱抵抗体2a、2bが発熱される。
また、それぞれの発熱抵抗体2a、2bに印加される電圧については、発熱抵抗体2a、2bごとに電圧の大きさを調節することができる。従って、電圧の印加される発熱抵抗体2を選択することによって大まかに気泡の大きさを調節すると共に、発熱抵抗体2a、2bごとに印加される電圧の大きさを調節することによっても気泡の大きさを調節することができる。従って、生成される気泡の大きさをより細かく調節することができ、より細かなインク滴の吐出量の調節を行うことができる。インク滴の吐出量をより細かく調節することができるので、吐出されたインクが記録媒体に着弾することによって得られる画像の濃度をより細かく調節することができる。また、インク滴の吐出によって得られる画像の濃度をより細かく調節することができるので、より確実に、インク滴の吐出によって所望の階調の画像を得ることができる。
なお、インク滴の吐出によって得られる画像において、さらに細かく画像の階調を設けたい場合には、第2の電極の数をさらに増やすことで対応することができる。また、第2実施形態に示したように、重心近傍の発熱抵抗体2を除去し、内周に沿って第1の電極4を設けてもよい。
また、本実施形態においても、第2の電極3a、3b及び第1の電極4のそれぞれは、一部が途切れていてもよいし、複数に分割されていてもよい。また、第2の電極3a、3b及び第1の電極4のそれぞれが、形成されている部分と形成されていない部分とが交互に形成されていてもよい。このように、それぞれの電極において、電極配置の連続性が一部途絶えていたり、電極が非連続的に配置されたりしてもよい。
なお、本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わずに用いられる。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録装置」とは、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント機能を有する装置、ならびにインクジェット技術を用いて物品の製造を行なう製造装置を含む。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものを表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
また、上記実施形態では、吐出口が、発熱素子に対向する位置に形成され、発熱素子の面方向に直交する方向にインクが吐出されるサイドシューター型の記録ヘッドが適用される場合について説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されず、発熱素子の面方向に水平な方向にインクが吐出されるように吐出口が形成された、いわゆるエッジシューター型の記録ヘッドに適用されてもよい。エッジシューター型の記録ヘッドに本発明の発熱素子が適用されたとしても、発熱素子に印加される電圧の大きさに応じて気泡の大きさを変化させることができる。これによってインクの吐出量を変化させることができる。
また、上記実施形態では、記録ヘッドの主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送と、を伴って画像を記録するいわゆるシリアルスキャンタイプの記録装置に本発明の発熱素子が適用される形態について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、記録媒体の幅方向の全域に亘って延在する記録ヘッドを用いるフルラインタイプの記録装置にも本発明の発熱素子が適用可能である。
2 発熱抵抗体
3 第2の電極
4 第1の電極
8 吐出口
9、9a、9b、9c、9d、15、15a、15b、15c、15d、15e 配線
30 液室
31 発熱素子
105 インク供給口
150 記録ヘッド

Claims (13)

  1. 液体を貯留することが可能な液室と、
    前記液室に面する位置に配置された発熱抵抗体を有し、前記液室に液体が貯留された状態で前記発熱抵抗体を電流が流れることにより発熱して液体内で気泡を生成することが可能な発熱素子と、
    前記発熱素子に対向する位置に形成され、前記発熱素子が発熱したときに前記液室内の液体を吐出する吐出口と
    を備え、
    前記発熱素子は、
    前記発熱抵抗体の内側の部分に接続される第1の電極と、
    前記発熱抵抗体を囲む位置に配置され、前記発熱抵抗体に接続される第2の電極と
    を備えていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記第2の電極は、前記発熱抵抗体の全体を囲む位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記第2の電極は、前記発熱抵抗体を部分的に囲む位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記第2の電極は、前記発熱抵抗体を囲む位置において、間隔を置いて複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 前記発熱抵抗体は、前記発熱抵抗体の重心の位置を通る直線に対し線対称の形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  6. 前記発熱抵抗体は、前記発熱抵抗体の重心の位置に対し点対称の形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  7. 前記発熱抵抗体は、円形であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  8. 前記第1の電極は、前記発熱抵抗体の内側に、環状に配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  9. 前記第1の電極は、前記発熱抵抗体の重心の位置を囲む位置に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
  10. 前記第1の電極は、前記発熱抵抗体の内側の縁部の全体に配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の液体吐出ヘッド。
  11. 前記第1の電極は、前記発熱抵抗体の内側の縁部に部分的に配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の液体吐出ヘッド。
  12. 前記発熱抵抗体及び前記第2の電極が、同一の第1の電極の外側に、前記吐出口から液体の吐出される吐出方向に沿った異なる位置に複数組形成され、
    複数組の前記発熱抵抗体及び前記第2の電極のうち、少なくとも一組の前記発熱抵抗体及び前記第2の電極に対し電流が流されて、前記発熱抵抗体が発熱されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを搭載することが可能であることを特徴とする液体吐出装置。
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