JP2016068307A - 液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置、並びに液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置、並びに液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】振動板におけるクラックやこれに伴う液体の漏れを抑制することが可能な液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置、並びに液体吐出ヘッドの製造方法、並びに液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】圧力室15等の流路空部が形成された基板本体10aと、流路空部の開口に対応する部分が変位可能な振動板10bと、がセラミックスの焼結体により一体的に形成され、振動板10bにおける撓み変形可能な領域上に、この領域を撓み変形させる圧電素子12が形成され、振動板10bは、少なくとも圧電素子12側の表面に、酸素欠損相30を有し、当該酸素欠損相30は平坦化処理が施されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、流路空部が形成された流路基板と、流路空部の一部を区画する振動板とがジルコニア等のセラミックスの一体焼結により形成された液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置、並びに液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
液体吐出装置は液体吐出ヘッドを備え、この吐出ヘッドから各種の液体を吐出(噴射)する装置である。この液体吐出装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを吐出し、ディスプレイ製造装置用の色材吐出ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極形成装置用の電極材吐出ヘッドでは液状の電極材料を吐出し、チップ製造装置用の生体有機物吐出ヘッドでは生体有機物の溶液を吐出する。
上記の液体吐出ヘッドは、ノズルに連通する圧力室等の流路が形成された流路基板、当該流路基板に積層され、圧力室に対応する部分が変位可能な振動板、当該振動板を変位させて圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧電素子等を備えている。この圧電素子としては、例えば、振動板側から順に、下電極と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体と、上電極とが、成膜技術によりそれぞれ積層形成されて構成される。そして、圧電体層において上下の電極層によって挟まれた部分が、両電極層への電圧の印加によって変形する能動部となる。この液体吐出ヘッドとしては、上記の流路基板および振動板をセラミックスにより一体的に形成されたものがある(例えば、特許文献1)。セラミックスとしては、靭性等の強度に優れたジルコニア(二酸化ジルコニウム:ZrO)が好適に用いられている。具体的には、セラミックスのグリーンシートに対する型転写により流路を形成し、あるいはセラミックス粉末を分散媒に分散させたスラリーからキャスト成型により流路を形成した流路基板に、同じくセラミックスから作製された振動板を積層して一体焼結される。このような構成を採用した場合、ノズルの高密度化に応じて流路を高密度に容易かつコストを抑えつつ形成することができる。
特許第5084942号公報
近年、液体吐出ヘッドの小型化およびノズル形成ピッチの高密度化が進んでいる。このような状況に対応するためには、上記の振動板をより薄くする必要がある。具体的には、数μm程度の厚さにする必要がある。このような薄い振動板を上記のセラミックスで作製した場合、このセラミックスの表面が粗いためクラックが生じやすく、このクラックや結晶粒の隙間等がインクの漏出経路となってインクの漏洩が生じる虞があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動板におけるクラックやこれに伴うインク等の液体の漏れを抑制することが可能な液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置、並びに液体吐出ヘッドの製造方法を提供することにある。
本発明の液体吐出ヘッドは、上記目的を達成するために提案されたものであり、流路空部が形成された流路基板と、前記流路空部の開口に対応する部分が変位可能な振動板と、がセラミックスの焼結体により一体的に形成され、
前記振動板における撓み変形可能な領域上に、この領域を撓み変形させる圧電素子が形成され、
前記振動板は、少なくとも前記圧電素子側の表面に、酸素欠損相を有することを特徴とする。
上記構成において、前記振動板の前記圧電素子側の面に対し平坦化処理が施された構成を採用することが望ましい。
本発明によれば、振動板の少なくとも圧電素子側の表面に、酸素欠損相が設けられ、さらに平坦化されることにより、当該振動板の靱性が高められる。このため、振動板の内部におけるクラックの発生が抑制され、また、万が一クラックが発生したとしてもこのクラックや結晶粒の隙間等が液体の漏出経路となって液体が圧電素子側に漏出することが酸素欠損相により阻止される。
また、この上に形成される下電極や圧電体の結晶配向性が向上する。これにより、結晶粒界部の応力集中が抑制され、振動板や圧電体におけるクラックの発生がより確実に低減される。その結果、液体の漏出がより確実に抑制される。
さらに、結晶配向性が向上することで圧電体の耐電圧性や圧電体数等の特性も向上する。
上記構成において、前記振動板は、有機金属化合物の焼結によって形成された第2の振動板を前記圧電素子との間に有する構成を採用することが望ましい。
上記構成によれば、第2の振動板が振動板を補強するので、クラックの発生が一層抑制され、また、万が一振動板に液体の漏出経路が生じたとしても第2の振動板がこの経路を遮断するので、液体が圧電素子側に漏出することが一層確実に抑制される。
また、本発明の液体吐出装置は、上記構成の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、振動板や圧電体層にクラック等が発生する不具合や液体が漏出する不具合を抑制することができるので、液体吐出ヘッド、及び、液体吐出装置、並びに液体吐出ヘッドの製造方法の信頼性が向上する。
そして、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、流路空部が形成された流路基板と、前記流路空部の開口に対応する部分が変位可能な振動板と、がセラミックスの焼結体により一体的に形成され、前記振動板における撓み変形可能な領域上に、この領域を撓み変形させる圧電素子が形成された液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記振動板となる振動板基体をセラミックスにより作製する工程と、
前記流路基板の本体となる基板基体をセラミックスにより作製する工程と、
前記振動板基体および前記基板基体を積層し焼結して前記流路基板を作製する工程と、
前記流路基板における前記振動板の少なくとも前記圧電素子側の表面に、酸素欠損相を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
また、前記酸素欠損相を形成する工程の後に、前記振動板の前記圧電素子側の面を平坦化する工程を含むことが望ましい。
さらに、前記振動板の表面に第2の振動板を形成する工程を含むことが望ましい。
プリンターの構成を説明する斜視図である。 記録ヘッドの構成を説明する図である。 記録ヘッドの要部断面図である。 圧電素子近傍の拡大断面図である。 流路基板の作製工程を説明する工程図である。 圧電素子の作製工程を説明する工程図である。 圧電体の結晶配向を説明する模式図である。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明に係る液体吐出装置として、液体吐出ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載したインクジェット式プリンター(以下、プリンター)を例に挙げる。
図1はプリンター1の構成を示す斜視図である。このプリンター1は、記録ヘッド2が取り付けられると共に、液体供給源の一種であるインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4、このキャリッジ4を記録用紙6(記録媒体および着弾対象の一種)の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構7と、主走査方向に直交する副走査方向に記録用紙6を搬送する紙送り機構8等を備えている。キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によって主走査方向に移動するように構成されている。このプリンター1は、記録用紙6を順次搬送しつつ、キャリッジ4を往復移動させながら当該記録用紙6上に文字や画像等を記録する。なお、インクカートリッジ3がキャリッジ4ではなくプリンター1の本体側に配置され、このインクカートリッジ3内のインクがインク供給チューブを通じて記録ヘッド2側に供給される構成を採用することもできる。
図2は、本実施形態の記録ヘッド2の構成を示す図であり、(a)は記録ヘッド2の平面図、(b)は(a)におけるA−A′線断面図である。また、図3は、図2(a)におけるB−B′線断面図である。なお、図3ではノズル2つ分の構成を例示しているが、残りの他のノズルに対応する構成も同様である。また、図3では、保護基板26の図示が省略されている。さらに図4は、図3における圧電素子12の近傍の拡大図である。
本実施形態における記録ヘッド2は、流路基板10、ノズルプレート11、圧電素子12、及び、保護基板26等を積層して構成されている。
本実施形態における流路基板10は、セラミックス、より具体的にはジルコニア(二酸化ジルコニウム:ZrO)から成る部材である。この流路基板10は、圧力室15等の流路となる空部(本発明における流路空部に相当)が形成された基板本体10aと、この基板本体10aに積層された振動板10bとからなり、後述するように焼成により一体化されている。この流路基板10には、圧力室15が、後述するノズルの形成間隔に対応する間隔で幅方向(ノズル列方向)に複数並設されている。圧力室15は、圧力室並設方向に直交する方向に長尺な空部である。また、この圧力室15の短尺方向における断面は、逆台形状を呈している。すなわち、この圧力室15の幅(内法)は、ノズルプレート11側から振動板10b側に向けて拡幅している。この圧力室15は、後述するように基板本体10aの一方の面、すなわち、振動板10bが積層される側の面から金型による塑性加工により基板本体10aの板厚方向の途中まで窪ませてなる空部である。そして、圧力室15の長手方向(ノズル列方向に直交する方向)の一端側における底部には、当該底部を貫通する状態でノズル連通口14が形成されている。
流路基板10の圧力室15の長手方向における他側(ノズル連通口14側とは反対側)に外れた領域には、各圧力室15に共通なリザーバー16がノズル列方向に沿って形成されている。このリザーバー16と各圧力室15とは、圧力室15毎に設けられたインク供給路17を介して連通されている。このリザーバー16は、インクの種類毎(色毎)に設けられ、複数の圧力室15に共通のインクが貯留される。インク供給路17は、圧力室15よりも狭い幅で形成されており、リザーバー16から圧力室15に流入するインクに対して流路抵抗を付与する。振動板10bは、基板本体10aに形成された圧力室15となる空部の上部開口(すなわち、ノズルプレート11側とは反対側の面の開口)を塞ぎ、当該圧力室15の上部開口に対応する領域は作動面として変位可能に構成されている。この振動板10bの詳細については後述する。
流路基板10の下面(すなわち、振動板10b側とは反対側の面)には、各圧力室15に対応して複数のノズル18が列状に開設されたノズルプレート11が接合される。ノズルプレート11は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、又はステンレス鋼などからなる板材であり、インクが吐出されるノズル18が複数列設されている。より具体的には、例えば300〔dpi〕(dot per inch)に対応するピッチ(ノズル開口の中心間距離)で、キャリッジ4の走査方向に交差する方向に沿って複数形成されている。これらの列設されたノズル18によりノズル列が構成される。各ノズル18は、圧力室15の長手方向における一側においてノズル連通口14を介して当該圧力室15とそれぞれ連通する。
一方、流路基板10の上面、すなわち、振動板10b上には、当該振動板10b側から順に下電極19と、圧電体20と、上電極21とが形成され、これらが積層状態で圧電素子12(アクチュエーターの一種)が構成されている。上電極21及び下電極19としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の各種金属や、これらの合金等が用いられる。また、圧電体20としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その他、チタン酸バリウムなどの非鉛材料も用いることが可能である。そして、上下の電極19,21への駆動電圧の印加により圧電体20の圧電歪みが生じる部分が圧電体能動部である。また、このような各圧電素子12の上電極21には、例えば、金(Au)等からなるリード電極22がそれぞれ接続されている。このリード電極22には、プリンター本体側からの図示しない配線部材の端子が電気的に接続される。
流路基板10上の圧電素子12側の面には、圧電素子12に対向する領域にその変位を阻害しない程度の大きさの空間となる収容空部25を有する保護基板26が接合されている。さらに、保護基板26には、流路基板10のリザーバー16に対応する領域に連通路27が設けられている。この連通路27は、圧力室15の並設方向に沿って長尺な矩形の開口形状を有する貫通穴として保護基板26に形成されており、上述したように流路基板10のリザーバー16と連通される。また、保護基板26の収容空部25と連通路27との間の領域には、保護基板26を厚さ方向に貫通する貫通口28が設けられ、この貫通口28内にリード電極22の端部が露出されている。
上記構成の記録ヘッド2では、インクカートリッジ3から連通路27等を通じてインクがリザーバー16に取り込まれ、リザーバー16から圧力室15を介してノズル18に至る流路がインクで満たされる。そして、プリンター本体側からの駆動信号の供給により、圧力室15に対応するそれぞれの下電極19と上電極21との間に両電極の電位差に応じた電界が付与され、圧電素子12および振動板10bの作動面が撓み変形することにより、圧力室15内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動を制御することで、ノズル18からインクを吐出させたり、或いは、インクが吐出されない程度にノズル18におけるメニスカスを微振動させたりすることができる。
次に、上記流路基板10について説明する。上述したように、本実施形態における流路基板10は、ジルコニウム(より詳しくはイットリア安定化ジルコニウム)により基板本体10aと振動板10bとが一体焼結されてなる。そして、振動板10bにおける少なくとも圧電素子12側の表面に酸素欠損相30が設けられており、さらに、この振動板10bは、圧電素子12との間に第2の振動板31が設けられている点に特徴を有している。酸素欠損相30は、振動板10bの表面に対して還元処理が施されることによりジルコニウムの酸素が奪われてなるZrOを主体とする部分である。また、第2の振動板31は、有機金属を主体とする層であり、振動板10bを補強するためのものである。
図5は、流路基板10の作製工程を説明する工程図である。また、図6は、流路基板10上に圧電素子12を作製する工程を説明する工程図である。まず、図5(a)に示すように、酸化ジルコニウム(ZrO)に対し、添加剤として酸化イットリウム(Y)をモル比で3〜8〔%〕、および酸化シリコン(SiO)をモル比で1〜3〔%〕で添加した粉体をバインダー等に分散したペーストをシート状にした振動板10bの基体(以下、振動板基体10b′)が作製される(振動板基体作製工程)。上記の粉体の粒径は、50〔nm〕〜2〔μm〕程度である。また、図5(b)に示すように、これと同じ粉体により形成された板材に対し、金型を用いた塑性加工により圧力室15、ノズル連通口14、インク供給路17、およびリザーバー16等の流路となる空部の形状が転写されて、基板本体10aとなる基板基体10a′が作製される(基板基体作製工程)。
次に、図5(c)に示すように、振動板基体10b′と基板基体10a′が積層され、脱脂された後、1300〜1400〔℃〕で焼成される。これにより、振動板基体10b′と基板基体10a′が一体化され(図5(d)参照)、主として正方晶からなる焼結体(イットリア安定化ジルコニウム)から構成される流路基板10が形成される(焼結(焼成)工程)。このように、酸化イットリウム等を添加することで、低温下や経時による結晶の相転移が抑制された焼結体が得られる。焼結後、さらに、水素等の還元雰囲気中で熱処理されることで、少なくとも振動板表面にZrO主体の酸素欠損相30が形成される(酸素欠損相形成工程:図4参照)。焼結されたジルコニウムは比較的硬くて脆い結晶構造を備えるが、意図的に不安定な酸素欠損相30を振動板表面に設けることにより、この部分にある程度の塑性(特に、展性、可鍛性)が付与される。これにより、後述する平坦化工程において振動板の表面が平坦化され安定化されることで靭化する、すなわち、靭性が高められる。なお、酸素欠損相30は、減圧中でのプラズマ処理あるいはイオン照射等により形成することもできる。また、傾斜X線回折、XPS(X線光電子分光)、ラマン分光、FT−IR分析等により、焼結体の酸素結合状態や酸素欠損相30の深さの管理が行われる。
本実施形態においては、図5(e)に示すように、振動板10bの上にさらに第2の振動板31が形成される(第2の振動板形成工程)。より具体的には、スピンコートによりZrアルコキシド、酢酸Zr等の有機金属を溶媒に分散した液体が振動板10bの上に塗布され、脱脂後に焼成されることで第2の振動板31が形成される。なお、第2の振動板31の形成後に、この第2の振動板31に酸素欠損相30を形成しても良い。次に、振動板10bの表面が平坦化される(平坦化工程)。平坦化は、例えば、第2の振動板31の表面側から基板本体10a側に向けて一定の圧力を表面全体に均一に付与することで行われる。なお、一体の圧力を付与しつつラッピング処理することにより平坦化してもよい。上述したように、振動板10bには酸素欠損相30が設けられており、平坦化工程において圧力が付与されることで酸素欠損相30における結晶粒間の空隙がつぶされて結晶粒が凝集し、当該部分の靭性が高められる。つまり、鍛造のような形で酸素欠損相30の強度が高められるともいえる。
以上の工程を経て、流路基板10が作製される。次に、図6(a)に示すように、振動板10b上(詳しくは、第2の振動板31の表面上)にスパッタ法により白金(Pt)よりなる金属層19′が形成される。なお、スパッタ法を採用したのは金属層19′の結晶を所定の結晶方位に配向させ易い為である。但し、結晶配向が可能であれば他の手法でも良い。ここで、振動板10bの表面(第2の振動板31および酸素欠損相30)が平坦化されているので、金属層19′の配向度をより向上させる事ができる。次に、図6(b)に示すように、金属層19′がフォトリソグラフィ法によりパターニングされて、下電極19が形成される。次に、金属アルコキシド、金属酢酸塩等を溶媒に分散したPZT液体が、下電極19が形成された振動板10b上にスピンコートにより塗布され、100〜300〔℃〕で脱脂された後、600〜700〔℃〕で焼成され、図6(c)に示すように、菱面体晶側で(100)配向の圧電体前駆体層20′が形成される。この圧電体前駆体層20′の膜厚は1〜3〔μm〕である。この膜厚に調整される為、PZT液体の塗布と脱脂とが複数回繰り返される。また、焼成は一括して行うこともできるが、好ましくは層毎に分けて行われる。なお、圧電体前駆体層20′の形成はスパッタ法を用いることもできる。続いて、図6(d)に示すように、金属層19′と同様にして、Pt薄膜よりなる金属層21′が形成される。その後、フォトリソグラフィ法によりパターニング等が行われて、図3に示すように、流路基板10上に圧電素子12が形成される。
ここで、図7は、圧電体の結晶配向を説明する模式図であり、(a)は本発明に係る構成、(b)は従来の構成をそれぞれ示している。なお、第2の振動板31の図示は省略している。
従来の構成では、図7(b)に示すように、酸素欠損相30は設けられておらず、また平坦化も施されていなかったため、振動板33の表面には、焼結体の結晶粒により凹凸が生じていた。また、この上に形成される下電極34も振動板33の表面の形状に倣って平坦にならず凹凸が生じる。その結果、下電極34の上に形成される圧電体35の結晶の成長方位がばらついてしまう。これにより、結晶粒界で応力が発生し、クラックが生じる虞があり、また、圧電素子の特性の低下(例えば、耐電圧性の低下、圧電定数の低下等)を招いていた。特に、振動板33の結晶粒の境界粒界部等で鋭利な部分(図7(b)において破線の円で囲った部分)が生じ、ここに応力が集中して切欠き効果により振動板33や圧電体35にクラックが生じる虞があり、このクラックがインクの漏出経路(インクパス)となってインクの漏出が生じる可能性があった。
これに対し、図7(a)に示すように、本発明に係る記録ヘッド2における振動板10bは、酸素欠損相30の平坦化により靱性が高められる。このため、振動板10bの内部におけるクラックの発生が抑制され、また、万が一クラックが発生したとしてもこのクラックや結晶粒の隙間等がインクパスとなってインクが圧電素子側に漏出することが酸素欠損相30により阻止される。また、酸素欠損相30が平坦化されることにより、下電極19の結晶配向性と結晶性が向上し、その後に形成される圧電体20(圧電体前駆体層20′)の結晶配向性が向上する。すなわち、圧電体20の結晶は(100)優先配向で柱状の結晶となる。結晶配向度は好ましくは70〔%〕以上でより好ましくは90〔%〕以上である。70〔%〕を超えると、圧電素子12として駆動した際の変位量が高くなり、90〔%〕を超えると変位量の向上と共に歩留まりや信頼性が顕著に向上する。また配向度が高いと上記の粒界部の応力集中が抑制され、これにより、振動板33や圧電体35におけるクラックの発生がより確実に低減される。その結果、インクの漏出がより確実に抑制される。さらに、結晶配向性が向上することで圧電体20の耐電圧性や圧電体数等の特性も向上する。
さらに、本実施形態における振動板10bには、第2の振動板31が設けられ、この第2の振動板31が振動板10bを補強するので、クラックの発生が一層抑制され、また、万が一振動板10bにインクパスが生じたとしてもインクパスが遮断され、インクが圧電素子12側に漏出することが一層確実に防止される。
そして、振動板10bや圧電体層20にクラック等が発生する不具合やインクが漏出する不具合が抑制されるので、記録ヘッド2及びプリンター1の信頼性が向上する。
なお、上記実施形態においては、振動板10bが圧電素子12との間に第2の振動板31を有する構成を例示したが、これには限られず、少なくとも振動板10bの表面(圧電素子12側の面)に酸素欠損相30が設けられ、これが平坦化されていれば、本願発明の課題を解決することができる。その上で、第2の振動板31を設ければ、より効果的である。
また、流路基板10の主たる部分を構成するセラミックスとしては、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)に限らず、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム:Al)またはこれらの複合材を採用することもできる。
さらに、圧電素子12の構成や流路基板10に形成された流路(圧力室15等)の構成は、上記実施形態で例示したものには限られず、種々の構成のものを採用することができる。要するに、流路となる空部が形成された流路基板と、流路空部の開口に対応する部分が変位可能な振動板とがセラミックスの焼結体により一体的に形成され、振動板における撓み変形可能な領域上に、この領域を撓み変形させる圧電素子が形成されたものであれば、本発明を適用することが可能である。
そして、上記実施形態では、インクジェットプリンターに搭載されるインクジェット式記録ヘッドを例示したが、インク以外の液体を吐出するものにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等にも本発明を適用することができる。
1…プリンター,2…記録ヘッド,10…流路基板,10a…基板本体,10b…振動板,12…圧電素子,15…圧力室,16…リザーバー,17…インク供給路,18…ノズル,19…下電極,20…圧電体,21…上電極,30…酸素欠損相,31…第2の振動板

Claims (7)

  1. 流路空部が形成された流路基板と、前記流路空部の開口に対応する部分が変位可能な振動板と、がセラミックスの焼結体により一体的に形成され、
    前記振動板における撓み変形可能な領域上に、この領域を撓み変形させる圧電素子が形成され、
    前記振動板は、少なくとも前記圧電素子側の表面に、酸素欠損相を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記振動板の前記圧電素子側の面に対し平坦化処理が施されたことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記振動板は、有機金属化合物の焼結によって形成された第2の振動板を前記圧電素子との間に有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
  5. 流路空部が形成された流路基板と、前記流路空部の開口に対応する部分が変位可能な振動板と、がセラミックスの焼結体により一体的に形成され、前記振動板における撓み変形可能な領域上に、この領域を撓み変形させる圧電素子が形成された液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記振動板となる振動板基体をセラミックスにより作製する工程と、
    前記流路基板の本体となる基板基体をセラミックスにより作製する工程と、
    前記振動板基体および前記基板基体を積層し焼結して前記流路基板を作製する工程と、
    前記流路基板における前記振動板の少なくとも前記圧電素子側の表面に、酸素欠損相を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記酸素欠損相を形成する工程の後に、前記振動板の前記圧電素子側の面を平坦化する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記振動板の表面に第2の振動板を形成する工程を含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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