1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも、意匠層と、意匠層の下に位置する隠蔽層とが積層された加飾シートであって、意匠層に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であり、隠蔽層に含まれる樹脂中のアクリル系樹脂の割合が70質量%以上であり、加飾シートの隠蔽層側に黒色の樹脂成形品を積層した加飾樹脂成形品において、意匠層側の表面の少なくとも一部に、L*a*b*表色系の色度a*(D65)が1以上となる部分を有していることを特徴とする。本発明の加飾シートは、このような構成を有することにより、高彩度の意匠を少なくとも一部に有する意匠層を備えているにも拘わらず、経時的な色変化が小さく、意匠層の密着性が高く、耐候性に優れている。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
加飾シートの積層構造
本発明の加飾シートは、少なくとも、意匠層1と、当該意匠層1の下に位置する隠蔽層2とが積層された積層構造を有している。本発明の加飾シートは、加飾シートの表面を保護することなどを目的として、必要に応じて、表面保護層3を設けてもよい。また、加飾シートと成形樹脂層7との密着性を高めることなどを目的として、加飾シートの隠蔽層2側の表面に接着層4を設けてもよい。また、加飾シートの光輝性を高めることなどを目的として、意匠層1と隠蔽層2の間などに光輝性インキ層5を設けてもよい。また、加飾シートの保形性を高めることなどを目的として、必要に応じて、基材層6を設けてもよい。また、表面保護層3と、これに隣接する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層の下にプライマー層(図示しない)を設けてもよい。
後述の通り、本発明の加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造する過程において、加飾シートの意匠層1側の表面に形成された基材層6(加飾樹脂成形品から剥離される転写用の基材シートであって、転写用基材層6aということがある)を有しない加飾シートを第1の態様の加飾シートとする。例えば図3に示されるように、第1の態様の加飾シートにおいて、隠蔽層2側に基材層6を有している場合には、図5に示されるように、基材層6は加飾樹脂成形品に取り込まれる。一方、転写用基材層6aを有しており、転写用基材層6aが加飾樹脂成形品に含まれない加飾シートを、第2の態様の加飾シートとする。例えば図6に示されるように、第2の態様の加飾シートにおいて、意匠層1側に転写用基材層6aを有している場合には、図7及び図8に示されるように、転写用基材層6aは加飾樹脂成形品から剥離されて、加飾樹脂成形品には取り込まれない。より詳細には、第2の態様の加飾シートでは、成形樹脂層7を転写用基材層6aとは反対側に積層して、例えば図7のような支持体付きの加飾樹脂成形品を得た後、意匠層1及び隠蔽層2を含む転写層11から転写用基材層6aを含む支持体10を剥離するため、図8のように転写用基材層6aが加飾樹脂成形品に含まれない。第2の態様の加飾シートにおいては、加飾樹脂成形品からの転写用基材層6aの剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、転写用基材層6aと表面保護層3などとの間に離型層8を有していてもよい。
本発明の第1の態様の加飾シートの積層構造として、接着層/隠蔽層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;接着層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;接着層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/プライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/隠蔽層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された積層構造;基材層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/プライマー層/表面保護層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。
図1に、本発明における第1の態様の加飾シートの積層構造の一態様として、接着層/隠蔽層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図2に、本発明における第1の態様の加飾シートの積層構造の一態様として、接着層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図3に、本発明における第1の態様の加飾シートの積層構造の一態様として、基材層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/表面保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
本発明において、第2の態様の加飾シートでは、例えば図6に示されるように、基材層6(転写用基材層6a)及び必要に応じて設けられる離型層8を有する支持体10と、意匠層1及び隠蔽層2を含む転写層11とを有する。第2の態様において、基材層6及び必要に応じて設けられる離型層8は支持体10を構成し、当該支持体10は、転写層11の支持部材としての役割を果たす。すなわち、第2の態様の加飾シートを成形樹脂と一体化して図7に示されるような支持体付き加飾樹脂成形品を得た後、当該支持体付き加飾樹脂成形品から支持体10を引き剥がすことにより、図8に示されるような加飾樹脂成形品となる。
本発明の第2の態様の加飾シートの積層構造としては、接着層/隠蔽層/意匠層/表面保護層/離型層/転写用基材層がこの順に積層された積層構造;接着層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/表面保護層/離型層/転写用基材層がこの順に積層された積層構造;接着層/隠蔽層/光輝性インキ層/意匠層/プライマー層/表面保護層/離型層/転写用基材層がこの順に積層された積層構造;などが挙げられる。図6に、本発明における第2の態様の加飾シートの積層構造の一態様として、接着層/隠蔽層/意匠層/表面保護層/離型層/転写用基材層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
加飾シートを形成する各層の組成
[意匠層1]
意匠層1は、加飾シートに意匠性を付与する目的で設けられる層である。本発明の加飾シートにおいては、高彩度の意匠を有しており、後述の通り、加飾シートの隠蔽層2側に黒色の成形樹脂層7を積層した加飾樹脂成形品において、意匠層1側の表面の少なくとも一部に、L*a*b*表色系の色度a*(D65)が1以上となる部分を有している。このような意匠は、通常、意匠層1によって最も支配的に表現される。なお、本発明の第2の態様の加飾シートにおいては、支持体10が剥離された加飾樹脂成形品において、同様に、意匠層1側の表面の少なくとも一部に、当該色度a*(D65)が1以上となる部分を有している。また、a*(D65)とは、光源としてD65光源を用いた場合の色度a*を意味する。
L*a*b*表色系においては、色度a*(D65)の値が大きい程、赤色が強くなる傾向を示し、色度a*(D65)の値が小さい程、緑色が強くなる傾向を示す。また、色度b*(D65)の値が大きい程、黄色が強くなる傾向を示し、色度b*(D65)の値が小さい程、青色が強くなる傾向を示す。ここで、b*(D65)とは光源としてD65光源を用いた場合の色度b*を意味する。また、彩度C*は、以下の式によって算出される。なお、同色系、同系統の意匠間で比較する場合には、彩度C*の値が大きいほど彩度が高いといえる。一方、異色系、異系統の意匠間で比較する場合には、彩度C*の値によって意匠性を評価することは困難である。
C*=√((a*)2+(b*)2)
本発明の加飾シートは、色度a*(D65)が1以上であるため、赤色の強い意匠を表現することができる。一般に、赤色系の意匠は、耐候性が低い。特に、隠蔽性の低い赤色のインキで高彩度な意匠を表現しようとすると、インキ中の着色剤の濃度を高くする必要があり、耐候性が低くなりやすい。しかしながら、本発明では、隠蔽層2の樹脂中のアクリル系樹脂の割合が70質量%以上であることにより、優れた耐候性を確保できている。さらに、意匠層1の樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であることにより高彩度な意匠を表現することができる。
本発明の加飾シートは、前述の加飾樹脂成形品において、意匠層側の表面の少なくとも一部について、L*a*b*表色系の色度a*(D65)及び色度b*(D65)を測定した場合に、色度a*(D65)が1以上であり、かつ、色度b*(D65)が0以上である部分を有していてもよい。色度b*(D65)が0以上であることにより、従来の加飾シートでは耐候性がより低下しやすくなるため、本発明の加飾シートの耐候性の高さをより強く認識することができる。当該色度a*(D65)としては、1以上であれば本発明の効果を十分に認識することができるが、当該色度a*(D65)が例えば1.2〜45の範囲にあると、より一層、本発明の加飾シートの耐候性の高さを強く認識することができる。また、当該色度b*(D65)としては、0以上であれば本発明の効果を十分に認識することができるが、当該色度b*(D65)が0.15〜40の範囲にある場合に、より一層、本発明の加飾シートの耐候性の高さを強く認識することが可能となる。
本発明の加飾シートにおいては、色度a*(D65)及び色度b*(D65)の測定は、隠蔽層側に成形樹脂層を積層して加飾樹脂成形品とした状態で、色差計(MINOLTA SPECTROPHOTOMETER CM−3700d)により、光源としてD65光源を用いて測定した値である。また、成形樹脂層として、黒色の樹脂(SABIC社製のCYCOLOYTM Resin XCY620 color:Black)を用いた場合の測定値である。加飾樹脂成形品の表面上における測定範囲は適宜設定することができ、例えば直径2〜50mm程度の円形とすればよい。色度a*(D65)及び色度b*(D65)の測定にあたっては、加飾樹脂成形品において、加飾シートが実質的に延伸されていない部分について測定を行う。なお、加飾シートが同一である場合には、成形樹脂層が黒色である場合に、加飾樹脂成形品の色度a*(D65)及び色度b*(D65)は、最も小さくなる。
本発明の加飾シートにおいては、より広い測定範囲(色差計の視野)において、色度a*(D65)が1以上(さらには、色度b*(D65)が0以上)となると、より広い範囲で高彩度の意匠となり、本発明の効果を認識しやすい。色差計による色度の測定範囲は、適宜設定することができ、例えば、直径8mm程度、より広くは直径30mm程度、さらに広くは50mm程度の円形の測定範囲とすることができる。なお、色差計によって測定される色度は、測定範囲内(色差計の視野内)の平均値として測定される。
意匠層1は、例えばインキ組成物を用いて形成される。意匠層1の形成に用いられるインキ組成物としては、樹脂(バインダー樹脂)に、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
本発明においては、意匠層1に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であることを特徴とする。意匠層1に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であることにより、本発明の加飾シートは高彩度の意匠を表現することが可能となっている。さらに、意匠層1に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であり、かつ、後述の隠蔽層2に含まれる樹脂中のアクリル系樹脂の割合が70質量%以上であることによって、本発明の加飾シートは、高彩度の意匠を少なくとも一部に有する意匠層を備えているにも拘わらず、経時的な色変化が小さく、意匠層の密着性が高く、耐候性に優れている。
意匠層1の印刷適性をより向上させる観点からは、意匠層1に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合としては、好ましくは40〜90質量%程度、より好ましくは40〜80質量%程度が挙げられる。
塩素系樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−(メタ)アクリル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化プロピレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられるが、特に好ましくはポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂が挙げられる。
当該塩素系樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されないが、好ましくは50000〜200000程度、より好ましくは50000〜100000程度が挙げられる。なお、本明細書における塩素系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
意匠層1に含まれる塩素系樹脂以外の他の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ブチラール樹脂、ポリスチレン、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられ、好ましくはアクリル系樹脂が挙げられる。他の樹脂を含む場合、他の樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
意匠層1に含まれる樹脂は、塩素系樹脂及びアクリル系樹脂からなることが好ましい。意匠層1において、塩素系樹脂とアクリル系樹脂の質量比(塩素系樹脂:アクリル系樹脂)が、9:1〜4:6の範囲にあることが好ましく、8:2〜4:6の範囲にあることがより好ましい。
アクリル系樹脂の具体例としては、好ましくはアクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂などが挙げられる。アクリル樹脂としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成単位とするアクリル樹脂が好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリルまたはメタクリル」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸セカンダリーブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられ、これらのうち(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体としては、上記例示されたものから選ばれる2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が例示され、これらの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合体を形成する他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なものであれば特に限定されないが、本発明では、(メタ)アクリル酸、スチレン、(無水)マレイン酸、フマル酸、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルアルコール、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ノルボルネン類などの脂環式オレフィンモノマー、ビニルカプロラクタム、シトラコン酸無水物、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド類、ビニルエーテル類などが好ましく挙げられ、特にスチレン及び(無水)マレイン酸が共重合成分として好適である。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン又は(無水)マレイン酸の二元共重合体、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン及び(無水)マレイン酸の三元共重合体が好適である。なお、(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
また、アクリルポリオール樹脂としては、特に制限されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるものが挙げられる。
当該アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されないが、好ましくは30000〜200000程度、より好ましくは70000〜150000程度が挙げられる。なお、本明細書におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
インキ組成物に含まれる着色剤としては、上記の色度a*(D65)が1以上となる部分、さらに好ましくは色度b*(D65)が0以上となる部分も有すれば特に制限ないが、例えば、カドミウム赤、弁柄、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料等が挙げられる。
意匠層1によって形成される意匠についても、特に制限されないが、例えば、赤単色、黄単色、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等が挙げられ、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様であってもよい。意匠層1は、通常の赤色、黄色、青色、及び黒色のプロセスカラーの重ね合わせによる多色印刷によって形成してもよく、個々の色の版を用意して行う特色による印刷等によって形成してもよい。特に高彩度な意匠を表現する観点からは、プロセスカラーの重ね合わせによる多色印刷とすることが好ましい。この場合、一般には、特色による印刷の場合に比べて耐候性が劣る傾向にあるが、本発明では、隠蔽層2の樹脂中のアクリル系樹脂の割合を70質量%以上とすることにより、プロセスカラーを用いて意匠層1を形成した場合でも、実用上問題のない耐候性を発揮することができる。
意匠層1の厚みとしては、特に制限されないが、例えば1〜30μm程度、好ましくは1〜20μm程度が挙げられる。
意匠層1は、1層により形成されていてもよいし、2層以上の複数層により形成されていてもよい。意匠層1が複数層により形成されている場合には、少なくとも1層の意匠層が、前述の意匠層1の要件を充足していればよい。
意匠層1は、例えば、前述のインキ組成物を用いて所望の意匠となるように印刷することにより形成される。意匠層1を形成するための印刷方法については、特に制限されないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写による印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
[隠蔽層2]
隠蔽層2は、色の変化やバラツキを抑制する目的、さらに、本発明においては、上記の意匠層1と共に形成することにより、高彩度の意匠を少なくとも一部に有する意匠層1を備えているにも拘わらず、経時的な色変化が小さく、意匠層1の密着性が高く、耐候性に優れた加飾シートとするために設けられる層である。
隠蔽層2は、意匠層1の下に位置するように設けられる。すなわち、本発明の加飾シートを加飾樹脂成形品に用いた場合に、加飾樹脂成形品の表面側に意匠層1が位置し、隠蔽層2が成形樹脂層7側に位置するように設けられる。意匠層1と隠蔽層2とは、直接接するように積層されていてもよいし、直接接しないように積層されていてもよい。
隠蔽層2は、加飾シートの色調や絵柄に悪影響を及ぼすのを抑制するため、一般には不透明色の層として形成される。
隠蔽層2は、樹脂(バインダー樹脂)に、顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したインキ組成物を用いて形成される。本発明においては、隠蔽層2に含まれる樹脂中のアクリル系樹脂の割合が70質量%以上であることを特徴とする。前述の通り、隠蔽層2に含まれる樹脂中のアクリル系樹脂の割合が70質量%以上であり、かつ、意匠層1に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であることによって、本発明の加飾シートは、高彩度の意匠を少なくとも一部に有する意匠層を備えているにも拘わらず、経時的な色変化が小さく、意匠層の密着性が高く、耐候性に優れている。
隠蔽層2に含まれる樹脂中のアクリル系樹脂の割合としては、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上が挙げられる。なお、隠蔽層2に含まれる樹脂が、実質的にアクリル系樹脂のみからなってもよい。
アクリル系樹脂の具体例としては、前述の[意匠層1]の欄で例示したものと同じものが例示できる。
隠蔽層2に含まれる樹脂は、塩素系樹脂及びアクリル系樹脂からなることが好ましい。隠蔽層2に含まれる樹脂が塩素系樹脂及びアクリル樹脂からなる場合、塩素系樹脂とアクリル系樹脂との質量比(塩素系樹脂:アクリル系樹脂)が、3:7〜1:9の範囲にあることが好ましく、2:8〜1:9の範囲にあることがより好ましい。
塩素系樹脂の具体例としては、前述の[意匠層1]の欄で例示したものと同様である。
隠蔽層2を形成するインキ組成物に含まれる着色剤としては、本発明の加飾シートが、上記の色度a*(D65)が1以上となる部分、さらに好ましくは色度b*(D65)が0以上となる部分も有すれば特に制限されず、前述の[意匠層1]の欄で例示したものと同じものが例示できる。
隠蔽層2は、通常、厚みが1〜20μm程度に設定され、所謂全面ベタ印刷層として形成されることが望ましい。隠蔽層2は、前述のインキ組成物を用いて、前述の[意匠層1]の欄で例示した方法と同様の方法で印刷することにより形成される。
[表面保護層3]
表面保護層3は、加飾シートの保形性を高めること、加飾樹脂成形品の耐傷付き性、耐候性などを高めることなどを目的として、加飾樹脂成形品の最表面に位置するようにして、加飾シートに必要に応じて設けられる層である。表面保護層3を形成する素材は、通常は樹脂が用いられ、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれであってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合には、硬化前の熱硬化性樹脂を積層して、加熱により硬化することにより、表面保護層3を形成することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、これらの中でも、高彩度の意匠を発揮する観点からは、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂の具体例としては、前述の[意匠層1]の欄で例示したものが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂フィルムを積層したり、溶融した熱可塑性樹脂を用いた押出しラミネート法などにより表面保護層3を形成することができる。以下、表面保護層3の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂について詳述する。
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層3の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層3の形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた三次元成形性を得る観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また、三次元成形性と耐傷付き性を両立する観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートを組み合わせて使用することがより好ましい。
(他の添加成分)
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層3に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
(表面保護層3の厚み)
表面保護層3の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、表面保護層3を熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂で形成する場合、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、表面保護層3を電離放射線硬化性樹脂を用いて形成する場合には電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層3の硬化後の厚みが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。また、表面保護層3を熱可塑性樹脂で形成する場合、特に熱可塑性樹脂フィルムで形成する場合であれば、例えば、20〜300μm、好ましくは30〜200μm程度が挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、加飾シートの三次元成形性が一層向上する。
(電離放射線硬化性樹脂を用いる場合の表面保護層3の形成)
表面保護層3の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層3を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、表面保護層3の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと表面保護層3の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、表面保護層3の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、表面保護層3の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED−UV)等が挙げられる。
かくして形成された表面保護層3には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
[接着層4]
接着層4は、例えば、加飾シートと成形樹脂層7との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。接着層4を形成する樹脂としては、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層4は必ずしも必要な層ではないが、隠蔽層2の下側(加飾樹脂成形品の製造に用いる際に成形樹脂層7に面する側)に基材層6を設けない態様の場合や、本発明の加飾シートを、後述する真空圧着法など、予め用意された樹脂成形体上への貼着による加飾方法に適用することを想定した場合は、加飾シートの樹脂成形体と接する側の面に設けられていることが好ましい。真空圧着法に用いる場合、上記した各種の樹脂のうち、加圧又は加熱により接着性を発現する樹脂として慣用のものを使用して接着層4を形成することが好ましい。
接着層4の厚みは、特に制限されず、接着層4を設ける位置及び隣接する層に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1〜30μm程度、好ましくは0.5〜20μm程度、さらに好ましくは1〜8μm程度が挙げられる。
[光輝性インキ層5]
光輝性インキ層5は、加飾シートに光輝性を付与する目的で、必要に応じて、意匠層1と隠蔽層2の間などに設けられる層である。
光輝性インキ層5は、通常、パール顔料や金属顔料などの顔料、及び樹脂(バインダー樹脂)などを含む層として形成される。光輝性インキ層5は、例えばインキ組成物を用いて形成される。このようなインキ組成物としては、例えば、バインダー樹脂に、パール顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。本発明において、パール顔料とは、パール調の光沢を与える顔料を意味する。パール顔料としては、加飾シートに光輝性の意匠を付与できる顔料であれば、特に制限されず、例えば加飾シートなどに配合される公知のパール顔料を用いることができる。
パール顔料としては、例えば、表面部分に金属酸化物を含む粒子が挙げられる。このようなパール顔料としては、例えば、雲母等の鱗片状粒子の表面が金属酸化物で被覆された顔料が挙げられる。パール顔料に含まれる金属酸化物としては、加飾シートに光輝性の意匠を付与できるものであれば、特に制限されないが、例えば、チタン、鉄、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムなどの金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物としては、1種類単独で含んでいてもよいし、2種類以上を含んでいてよい。パール顔料の具体例としては、好ましくは二酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、二酸化チタンと酸化鉄で被覆した雲母などが挙げられる。パール顔料は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
パール顔料の平均粒子径としては、特に制限されないが、加飾シートに優れた光輝性を付与する観点からは、通常1〜500μm程度、好ましくは5〜100μm程度が挙げられる。なお、本発明において、パール顔料の平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
光輝性インキ層5中のパール顔料の含有量としては、特に制限されないが、光輝性インキ層5中のバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部程度、より好ましくは50〜80質量部程度が挙げられる。
また、金属顔料としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム粉、真鍮粉、ステンレス鋼粉、錫粉、亜鉛粉、ブロンズ粉、ニッケル粉、銅粉、金粉、銀粉等や、これらの混合粉、これらの金属の合金粉などからなる顔料が挙げられる。金属顔料は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
金属顔料の平均粒子径は、特に制限されないが、加飾シートに優れた金属光沢を付与する観点からは、通常1〜200μm程度、好ましくは5〜100μm程度である。なお、本発明において、金属顔料の平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
光輝性インキ層5が金属顔料を含む場合、光輝性インキ層5中の金属顔料の含有量としては、特に制限されないが、光輝性インキ層5中の樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部程度、より好ましくは20〜80質量部程度が挙げられる。
光輝性インキ層5に含まれる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、塩素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられ、好ましくは塩素系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
印刷などにより光輝性インキ層5を形成する場合には、インキ組成物の転移性を向上させる観点からは、インキ組成物の樹脂として塩素系樹脂が含まれることが好ましい。バインダー樹脂として塩素系樹脂が含まれていると、印刷などによって光輝性インキ層5と隣接する層にインキ組成物を転移させる際に、転移不良が生じにくく、精度よくインキ組成物を転移させることができる。
インキ組成物の転移性をより高める観点からは、樹脂は、塩素系樹脂とアクリル系樹脂との混合樹脂であることが好ましい。同様の観点から、当該樹脂中における塩素系樹脂とアクリル系樹脂との質量比は、特に制限されないが、好ましくは7:3〜2:8程度の範囲、より好ましくは5:5〜2:8程度の範囲、さらに好ましくは5:5〜3:7程度の範囲である。
塩素系樹脂及びアクリル系樹脂の具体例としては、それぞれ、前述の[意匠層1]の欄で例示したものと同じものが例示できる。
加飾シートの意匠を良好に表現する観点、及び意匠層1と光輝性インキ層5が隣接する場合の密着性の観点から、光輝性インキ層5に含まれる樹脂は、意匠層1に含まれる樹脂と同一の種類及び組成とすることが好ましい。
光輝性インキ層5の厚さとしては、特に制限されないが、例えば1〜30μm程度、好ましくは1〜20μm程度が挙げられる。
光輝性インキ層5は、インキ組成物を用いて、光輝性インキ層5と隣接する層の上に印刷することにより形成することができる。光輝性インキ層5は、前述のインキ組成物を用いて、前述の[意匠層1]の欄で例示した方法と同様の方法で印刷することにより形成される。
[基材層6]
基材層6は、本発明の加飾シートの保形性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層6は、好ましくは樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。上述の通り、本発明の第1の態様の加飾シートは、加飾樹脂成形品から剥離される転写用基材層6aを有していない。第1の態様においては、基材層6を隠蔽層2側に設けることにより、基材層6は、加飾樹脂成形品に含まれる。一方、本発明の第2の態様の加飾シートにおいては、意匠層1及び隠蔽層2を含む転写層11から基材層6(転写用基材層6a)を含む支持体10を剥離するため基材層6(転写用基材層6a)は加飾樹脂成形品に含まれない。このように、第2の態様において、基材層6は、転写層11を成形樹脂層7に転写させるための転写用基材層6aとして機能する。
基材層6に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や、第1の態様では成形樹脂層7との相性、第2の態様では表面保護層3からの剥離性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、本発明の第1の態様においてはABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましく、本発明の第2の態様においてはPET樹脂が転写用基材層6a自身の平滑性が高いため好ましい。基材層6を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層6は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
基材層6は、隣接する層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層6の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層6の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層6を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、基材層6には、着色剤などを配合した着色、色彩を整えるための塗装、デザイン性を付与するための模様の形成などがなされていてもよい。
基材層6の厚みは、特に制限されず、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、本発明の第1の態様であれば通常50〜800μm程度、好ましくは100〜600μm程度、さらに好ましくは200〜500μm程度が挙げられる。基材層6の厚みが上記範囲内であると、加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性、意匠性などを備えさせることができる。また、本発明の第2の態様であれば通常10〜250μm程度、好ましくは20〜100μm程度が挙げられる。基材層6の厚みが上記範囲内であると、加飾シートの印刷適性とコストの両立を図ることができる。
[プライマー層]
プライマー層(図示しない)は、表面保護層3とその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて含まれる層である。プライマー層は、樹脂により形成することができる。
プライマー層を形成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋材としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル:ウレタン比(質量比)として、9:1〜1:9、好ましくは8:2〜2:8が挙げられる。
プライマー層の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。プライマー層がこのような厚みを充足することにより、加飾シートの耐候性をより高めると共に、表面保護層3の割れ、破断、白化等を有効に抑制することができる。
プライマー層は、プライマー層を形成する樹脂を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
[離型層8]
離型層8は、上述の第2の態様の加飾シートにおいて、必要に応じて転写用基材層6aの上に設けられ、転写用基材層6aと共に支持体10を構成する。離型層8は、転写用基材層6aの転写層11からの剥離性を高める役割を有する層である。
離型層8は、転写用基材層6aの全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であっても良いし、一部に設けられるものであっても良い。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層8は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層8を構成することが特に好ましい。
離型層8の厚みは、通常、0.01〜5μm程度、好ましくは0.05〜3μm程度である。
本発明の加飾シートは、以上のような各層を積層することにより製造することができる。
3.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。なお、本発明の第2の態様における加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形した後、支持体10を剥離して得られるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、意匠層と、前記意匠層の下に位置する隠蔽層と、成形樹脂層とが表面側から順に積層された加飾樹脂成形品であって、意匠層に含まれる樹脂中の塩素系樹脂の割合が40質量%以上であり、隠蔽層に含まれる樹脂中のアクリル系樹脂の割合が70質量%以上であり、意匠層側の表面の少なくとも一部に、L*a*b*表色系の色度a*(D65)が1以上となる部分を有していることを特徴とする。なお、本発明の第2の態様においては、支持体10が剥離された加飾樹脂成形品において、意匠層側の表面の少なくとも一部に、L*a*b*表色系の色度a*(D65)が1以上となる部分を有している。本発明の加飾樹脂成形品において、色度a*(D65)及び色度b*(D65)については、前述の本発明の加飾シートにおける記載と同様である。
本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、加飾シートに上述の表面保護層3、プライマー層、基材層6、接着層4、光輝性インキ層5などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。図5に示されるような第1の態様の加飾シートを用いて形成される場合には、加飾樹脂成形品に基材層6が設けられていてもよい。また、図7に示されるような上述の第2の態様においても、加飾樹脂成形品に転写用基材層6aを含む支持体10が設けられていてもよい(このような状態の加飾樹脂成形品を支持体付き加飾樹脂成形品という)。なお、図4は、図1に示される加飾シートに成形樹脂が積層された加飾樹脂成形品の略図的断面図であり、図5は、図3に示される加飾シートに成形樹脂が積層された加飾樹脂成形品の略図的断面図である。図7は、図6に示される加飾シートに成形樹脂が積層された支持体付き加飾樹脂成形品の略図的断面図である。図8は、図7に示される支持体付き加飾樹脂成形品から支持体が剥離された加飾樹脂成形品の略図的断面図である。
本発明の加飾樹脂成形品は、例えば、本発明の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材層としてABS樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常120〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートが対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度とすることができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材層6側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材層としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、第2の態様においては、上記のような方法により加飾シートと成形樹脂とを一体化して得られた支持体付き加飾樹脂成形品から支持体10を剥離除去することにより、加飾樹脂成形品が得られる。支持体10を剥離除去する工程は任意の時期に行うことができ、例えば得られた支持体付き加飾樹脂成形品を成形装置から取り出すと同時に支持体10を剥離除去することができる。また、支持体付き加飾樹脂成形品において、支持体中の基材層は、加飾樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、支持体付き加飾樹脂成形品の製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時に支持体を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって加飾樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
本発明の加飾樹脂成形品は、高彩度の意匠を少なくとも一部に有する意匠層を備えており、経時的な色変化が小さく、意匠層の密着性が高く、耐候性に優れているため、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
(加飾シートの作製)
<実施例1〜2、比較例1〜3及び参考例1>
表面保護層として、厚さ125μmのアクリルフィルムを用い、表面保護層の上に、グラビア印刷により、意匠層(厚み1.5〜3.0μm)、光輝性インキ層(厚み1.5μm、樹脂:アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/パール顔料=5/5/10)、隠蔽層(厚み1.5μm)、接着層(厚み1.5μm、樹脂:アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体=4/6)を順に形成し、加飾シートを得た。該加飾シートを金型内で赤外線ヒーターにより接着層側から100℃に加熱し、金型内の形状に沿うように予備成形して型締した。その後、成形樹脂(SABIC社製のCYCOLOYTM Resin XCY620 color:Black)をキャビティ内に射出し、該加飾シートと成形樹脂とを一体化させ、加飾成形品を得た。実施例1及び比較例1においては、意匠層によって木目柄を形成した。また、実施例2及び比較例2〜3においては、意匠層によって赤単色を形成した。参考例1では、意匠層によって黒単色を形成した。
意匠層及び隠蔽層を形成するインキに使用した樹脂と顔料の比率は、それぞれ以下の通りである。
(意匠層)
樹脂A:アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/顔料=5/5/6
樹脂B:アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/顔料=8/2/6
(隠蔽層)
樹脂A:アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/顔料=5/5/20
樹脂B:アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/顔料=8/2/20
次に実施例1〜2、比較例1〜3及び参考例1で得られた加飾樹脂成形品について、それぞれ、以下の方法でL*a*b*表色系の色度a*(D65)及び色度b*(D65)、彩度C*、色変化、密着性を測定・評価した。それぞれの結果を表1及び表2に示す。
(色度a*(D65)及び色度b*(D65)の測定)
上記で得られた加飾樹脂成形品の表面について、色差計(MINOLTA SPECTROPHOTOMETER CM−3700d)を用いて、D65光源下での色度a*(D65)及び色度b*(D65)を測定した。なお、測定範囲は、色差計の視野の範囲である円の直径8mmとした。木目柄を有する実施例1及び比較例1の加飾樹脂成形品の表面においては、当該測定範囲に複数の色が含まれており、これらの色の平均値として色度が測定される。
(彩度C*の算出)
上記で得られた色度a*(D65)及び色度b*(D65)の測定結果に基づき、以下の式によって、それぞれの彩度C*を算出した。
C*=√((a*)2+(b*)2)
(色変化の評価)
まず、上記で得られた加飾樹脂成形品について、促進耐候性試験機として、岩▲崎▼電気株式会社製のアイスーパーUVテスターSUV W−23を用いて、以下の条件で耐候性試験を行った。
紫外線照度:60mW/cm2
試験時間:150時間または200時間
照射時温度:63℃
サイクル:照射20時間、結露4時間を1サイクルとする。
次に、色差計(MINOLTA SPECTROPHOTOMETER CM−3700d)を用いて、耐候性試験前後における色変化をΔE*ab(JISZ8729−1994に規定された国際照明委員会(CIE)のL*a*b*表色系に準拠している)で評価した。色差ΔEabは下記式で表される。
ΔE*ab=√(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2
評価基準は以下の通りである。
○:ΔE*abが2.0未満であり、色変化が小さい
△:ΔE*abが2.0以上、4.0未満であり、色変化は大きくない
×:ΔE*abが4.0以上であり、色変化が大きい
(密着性の評価)
上記の耐候性試験後の加飾樹脂成形品の表面を、カッターで長さ5cm、間隔1mmで縦11本、横11本の切れ込みを入れ、縦10マス×横10マスの合計100マスの碁盤目状の切れ込みを形成した。この切れ込みの上から、ニチバン社製のセロテープ(登録商標、No.405−1P)を圧着した後、急激に剥離することにより、密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:100マス中、剥がれたのは10マス未満
△:100マス中、剥がれたのは10マス以上30マス未満
×:100マス中、剥がれたのは30マス以上
表1に示されるように、木目柄を形成している意匠層の樹脂として塩素系樹脂の割合が40質量%以上である樹脂Aを用い、かつ、隠蔽層の樹脂としてアクリル系樹脂の割合が70質量%以上である樹脂Bを用いた実施例1では、色度a*(D65)が1以上の高彩度を有する場合にも、良好な耐候性を有することが分かる。また、実施例1の加飾樹脂成形品は、彩度C*が高く、意匠性に優れていた(意匠性評価〇)。一方、同じく木目柄の意匠層を有しており、意匠層及び隠蔽層の樹脂として、共に塩素系樹脂の割合が40質量%未満である樹脂Bを用いた比較例1では、耐候性に優れるものの、実施例1に比べ彩度C*が低く、意匠性に劣っていた(意匠性評価×)。
表2に示されるように、赤単色を形成している意匠層の樹脂として塩素系樹脂の割合が40質量%以上である樹脂Aを用い、かつ、隠蔽層の樹脂としてアクリル系樹脂の割合が70質量%以上である樹脂Bを用いた実施例2では、a*(D65)が1以上の高彩度を有する場合にも、良好な耐候性を有することが分かる。また、実施例2の加飾樹脂成形品は、彩度C*が高く、意匠性に優れていた(意匠性評価〇)。一方、同じく赤単色の意匠層を有しており、意匠層及び隠蔽層の樹脂として、共に塩素系樹脂の割合が40質量%未満である樹脂Bを用いた比較例2では、実施例2に比べ彩度C*が低く、意匠性の高い加飾樹脂成形品が得られなかった(意匠性評価×)。また、意匠層及び隠蔽層の樹脂として、共にアクリル系樹脂の割合が70質量%以上である樹脂Aを用いた比較例3では、比較例2に比べ彩度C*の高い意匠が表現できる(意匠性評価〇)ものの、耐候性が劣っていた。また、a*(D65)が1未満の黒単色を形成している意匠層を備える参考例1の加飾樹脂成形品においては、意匠層及び隠蔽層の樹脂として、共に塩素系樹脂の割合が40質量%以上である樹脂Aを用いた場合にも、耐候性に優れており、耐候性の低下の問題は生じなかった。なお、参考例1の黒単色の加飾樹脂成形品については、意匠性の相対評価を行っていない。