JP2016065950A - 電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】単層型の感光層を備える電子写真感光体であって、目的とする画像濃度が得られ易く、且つ、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難い電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性基体と、結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、特定構造の電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層と、を備え、結着樹脂(A)の粘度平均分子量Mvが7000以上100000以下であり、前記単層型の感光層2の全固形分に対する結着樹脂(A)の含有比率Pが35質量%以上であって、且つ、当該粘度平均分子量Mv及び当該含有比率Pが下記関係式(1)を満たす電子写真感光体10。P≦−0.0005×Mv+85・・・関係式(1)
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関するものである。
従来の電子写真方式の画像形成装置においては、帯電、露光、現像、転写のプロセスを通じて電子写真感光体の表面上に形成したトナー像を被記録媒体に転写させる。
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、それぞれ、特定の構造を有するジフェノキノン系化合物、特定の構造を有するナフタレンジカルボン酸イミド化合物、及び特定の構造を有するナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物を感光層に含む電子写真感光体含が開示されている。
特許文献4には、導電性基体上に少なくとも感光層を設けてなる電子写真感光体において、該感光層が特定の構造を有するフルオレン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
特許文献5には、支持基体と支持基体上の単層とを含む光導電性撮像部材であって、前記単層が、光発生成分、電荷輸送成分、電子輸送成分、及びバインダーの混合物を含み、前記電子輸送成分が、特定の構造を有する(4−カルボニル−9−フルオレニリデン)マロノニトリルの2−エチルヘキサノール誘導体を含むことを特徴とする光導電性撮像部材が開示されている。
特許文献6には、導電性基体上に、直接或いは下引き層を介して、少なくとも樹脂バインダーと電荷発生物質と正孔輸送物質と電子輸送物質とを含有する単層型感光層を有する電子写真用感光体において、該感光層中に、ビフェニル誘導体を含有することを特徴とする電子写真用感光体が開示されている。
特許文献7には、導電性基体上に感光層を形成し、前記感光層が電荷発生剤としてフタロシアニン系化合物、電子輸送剤としてターフェニル化合物を含有することを特徴とする正帯電単層型電子写真感光体が開示されている。
特開平4−285670号公報 特開平5−25136号公報 特開平5−25174号公報 特開平9−43876号公報 特開2005−215677号公報 特開2000−314969号公報 特開2001−242656号公報
本発明の課題は、結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、一般式(d)で表される電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層を備える電子写真感光体であって、かかる単層型の感光層において、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが70000未満である場合、結着樹脂の含有比率Pが35質量%未満である場合、電子輸送材料として比較例で使用した化合物:I−4を用いた場合と比べ、目的とする画像濃度が得られ易く、且つ、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難い電子写真感光体を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、
結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、下記一般式(d)で表される電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層と、
を備え、前記結着樹脂(A)の粘度平均分子量Mvが70000以上100000以下であり、前記単層型の感光層の全固形分に対する前記結着樹脂(A)の含有比率Pが35質量%以上であって、且つ、当該粘度平均分子量Mv及び当該含有比率Pが下記関係式(1)を満たす電子写真感光体である。
(一般式(d)中、Rd1、Rd2、Rd3、Rd4、Rd5、Rd6、及びRd7は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又はアリール基を示す。Rd8は、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。)
P≦−0.0005×Mv+85 ・・・関係式(1)
(関係式(1)中、Pは単層型の感光層の全固形分に対する結着樹脂(A)の含有比率を示す。Mvは結着樹脂(A)の粘度平均分子量を示す。)
請求項2に係る発明は、
前記ターフェニル化合物(E)が下記一般式(e1)で表される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体である。
(一般式(e1)中、Re1、Re2、及びRe3は、各々独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、又はメチル基を示す。)
請求項3に係る発明は、
前記正孔輸送材料(C)が、下記一般式(c1)で表される化合物である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
(一般式(c1)中、Rc1、Rc2、Rc3、Rc4、Rc5、及びRc6は、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは、各々独立に0又は1を示す。)
請求項4に係る発明は、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジである。
請求項5に係る発明は、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を800V以上1200V以下に帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置である。
請求項1に係る発明によれば、結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、一般式(d)で表される電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層において、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが70000未満である場合、結着樹脂の含有比率Pが35質量%未満である場合、ターフェニル化合物(E)を含有していない場合、電子輸送材料として比較例で使用した化合物:I−4を用いた場合と比べ、目的とする画像濃度が得られ易く、且つ、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難い電子写真感光体が提供される。
請求項2に係る発明によれば、一般式(e1)で表される化合物以外のターフェニル化合物を用いた場合に比べ、目的とする画像濃度が得られ易く、且つ、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難い電子写真感光体が提供される。
請求項3に係る発明によれば、正孔輸送材料として一般式(c3)で表される化合物の例示化合物(HT−1)、又は、一般式(c2)で表される化合物の例示化合物(HT−2)を用いた場合に比べ、目的とする画像濃度が得られ易い電子写真感光体が提供される。
請求項4、又は5に係る発明によれば、単層型の感光層において、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが70000未満である場合、結着樹脂の含有比率Pが35質量%未満である場合、電子輸送材料として比較例で使用した化合物:I−4を用いた場合と比べ、目的とする画像濃度が得られ易く、且つ、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難い電子写真感光体を備えた、又はプロセスカートリッジ、及び画像形成装置が提供される。
本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す概略部分断面図である。 本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。 本実施形態に係る他の画像形成装置を示す概略構成図である。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、後述する一般式(d)で表される電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層と、を備える電子写真感光体である。
そして、単層型の感光層において、結着樹脂(A)の粘度平均分子量Mvが7000以上100000以下であり、単層型の感光層の全固形分に対する結着樹脂(A)の含有比率Pが35質量%以上であって、且つ、粘度平均分子量Mv及び含有比率Pが後述する関係式(1)を満たすことを特徴とする。
つまり、本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体上に上記の(A)〜(E)成分を含む単層型の感光層と、を有する正帯電有機感光体(以下、「単層型感光体」、又は「感光体」と称することがある)である。
なお、単層型の感光層とは、電荷発生能と共に、正孔輸送性及び電子輸送性を持つ感光層である。
ここで、従来、電子写真感光体としては、製造コスト、画質安定性の観点から、単層型感光体が望ましいことが知られている。
一方で、単層型感光体は、その単層型の感光層内に、電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有する構成であるため、感光層が機能分離されていない単層型感光体は、機能分離型の感光層を有する有機感光体(積層型感光体)に比べると、電荷の輸送制御が難しいことも知られている。
電子写真感光体において、目的とする画像濃度を得易くする方法として、かかる電子写真感光体の表面に高い電位をかけて帯電して画像形成を行い、画像の階調性を高めて出力の再現性を良くする方法が挙げられる。
しかしながら、単層型感光体に高い電位をかけて帯電して画像形成を行うと、積層型感光体を用いた場合に比べ、画像形成を繰り返した後に、画像に意図しない黒点(以降、単に「黒点」と称することがある)が発生し易い。
この意図しない黒点の発生は、以下のようにして起こると推測される。即ち、単層型の感光層に含まれる複数の機能性材料(電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料)は、これらのうち少なくともいずれかが偏在すると、感光体の表面を帯電したときに、機能性材料が偏在した領域に電荷が集中することが考えられる。そして、高い電位をかけて感光体の表面を繰り返し帯電すると、感光層の電荷が集中する領域が破壊され、破壊領域が広がることで、形成された画像内に意図しない黒点として表れると推測される。なお、ここでは「黒点」と称しているが、例えば、黒色以外のトナーにて画像を形成する場合に生じる「点状の画像欠陥」もこの黒点に含まれる。黒色以外の点状の画像欠陥は「色点」と呼ばれることもある。
特に、感光層中の結着樹脂が低分子量(例えば、30000以上65000以下)であると、感光層の破壊領域の広がりが抑えられず、黒点の発生し易いものと考えられる。
これに対し、本実施形態では、結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、特定構造の電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層である。
そして、かかる単層型の感光層において、結着樹脂(A)の粘度平均分子量Mvが7000以上100000以下であり、単層型の感光層の全固形分に対する結着樹脂(A)の含有比率Pが35質量%以上であって、且つ、粘度平均分子量Mv及び含有比率Pが下記関係式(1)を満たすことを特徴とする。
P≦−0.0005×Mv+85 ・・・関係式(1)
(関係式(1)中、Pは単層型の感光層の全固形分に対する結着樹脂(A)の含有比率を示す。Mvは結着樹脂(A)の粘度平均分子量を示す。)
上記のような単層型の感光層は、結着樹脂(A)及び機能性材料(電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、及び特定構造の電子輸送材料(D))に加え、ターフェニル化合物(E)を含むものであって、特に、分子量の大きな結着樹脂(A)が、その分子量に応じた特定の含有量の範囲で含まれているものである。
このような組成の単層型の感光層は、黒点の発生を抑制しうる。この理由は以下のように推測される。
本実施形態における単層型の感光層では、分子量の大きな結着樹脂(A)が、その高分子量ゆえに分子鎖が絡み合うことで、感光層の機械的強度を向上させて、黒点の発生の要因である、感光層の電荷が集中する領域の破壊及び破壊領域の広がり(特に破壊領域の広がり)を抑制しているものと推測される。そのため、感光体の表面電位を高めて、目的とする画像濃度を得易くしたときであっても、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難くなる。
このことから、本実施形態に係る感光体は、目的とする画像濃度が得られ易く、且つ、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難い感光体となると推測される。
また、単層型の感光層中に含まれるターフェニル化合物(E)は、感光層としての性能を低下させ難い又は影響を与え難い成分であることから、結着樹脂(A)の含有量の増減に合わせ添加量を調整することができる。そのため、単層型の感光層中では、機能性材料(特に、電荷発生材料(B)、及び正孔輸送材料(C))の量を大きく変化させず、結着樹脂(A)及びターフェニル化合物(E)の各々の含有量を変化させて、目的とする性能を有する感光層としうる。
更に、本実施形態のような、結着樹脂(A)の粘度平均分子量Mv及び含有比率Pが上記の範囲を満たし、加えて、関係式(1)を満たし、更に、ターフェニル化合物(E)を含む組成は、単層型の感光層の製造適性に優れるといった効果をも有する。
ここで「製造適性に優れる」とは、単層型の感光層の形成する際に用いる感光層形成用塗布液において、含有する各溶解成分の析出が抑えられ、保存安定性に優れること、及び、浸漬塗布法により感光層を形成する際に、塗布上部で発生する液だれ(「上端だれ」とも称する)が生じ難く、得られた感光層の膜厚の均一性に優れること、が挙げられる。
上端だれに関しては、結着樹脂の粘度平均分子量が100000を超える場合は、例え関係式(1)を満たしていても結着樹脂が重力により下方に垂れることで発生してしまうと考えられている。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る電子写真感光体を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体10の一部の断面を概略的に示している。
図1に示した電子写真感光体10は、例えば、導電性基体3を備え、導電性基体3上に、下引層1及び単層型の感光層2がこの順で設けられて構成されている。
なお、下引層1は、必要に応じて設けられる層である。すなわち、単層型の感光層2は、導電性基体3上に直接設けられていてもよく、下引層1を介して設けられてもよい。
また、必要に応じてその他の層を設けてもよい。具体的には、例えば、必要に応じて、単層型の感光層2上に保護層を設けてもよい。
以下、電子写真感光体10を構成する各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
〔導電性基体〕
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これを更にアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
〔下引層〕
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
〔中間層〕
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層を更に設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
〔単層型の感光層〕
単層型の感光層は、結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、一般式(d)で表される電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)に加え、必要に応じて、その他添加剤を含んで構成される。
[結着樹脂(A)]
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
これらの中でも、特に、感光層の成膜性の観点から、例えば、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、黒点の発生を抑制する観点から、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂がよく、特に、下記構造式(a1)で表される共重合体であることが好ましい。なお、下記構造式(a1)中、m及びnは共重合モル比を示し、m+n=100である。
mの値は、黒点抑制の点から、5以上25以下(より好ましくは、5以上15以下)の範囲が好ましい。
本実施形態においては、結着樹脂の粘度平均分子量Mvは70000以上100000以下(好ましくは75000以上90000以下)であるものが用いられる。
また、結着樹脂の含有量としては、感光層の全固形分(全固形分質量)に対して、35質量%以上であり、生産性及び膜強度の点から、また、前記関係式(1)を満たす点から、35質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以上45質量%以下である。
ここで、結着樹脂の粘度平均分子量の測定は、以下の方法で行われる。
即ち、樹脂1gをメチレンクロライド100cmに溶解し、25℃の測定環境下でウベローデ粘度計にて、その比粘度ηspを測定し、ηsp/c=〔η〕+0.45〔η〕cの関係式(ただしcは濃度(g/cm)より極限粘度〔η〕(cm/g)を求め、H.Schnellによって与えられている式、〔η〕=1.23×10−4Mv0.83の関係式より粘度平均分子量Mvをもとめる一点測定法が用いられる。
[電荷発生材料(B)]
電荷発生材料としては、例えば、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等の電子写真感光体に用いられる公知の電荷発生材料が適用される。
中でも、感光体の高感度化、電荷発生材料の分散の点から、電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種が適用されることが好ましい。
電荷発生材料としては、これら顔料を単独で用いてもよいが、必要に応じて併用してもよい。そして、電荷発生材料としては、感光体の高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から望ましい。電子写真感光体の材料として用いた場合に、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とが得られ易くなる。
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが望ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが望ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより望ましく、一方、BET比表面積が45m/g以上であることが望ましく、50m/g以上であることがより望ましく、55m/g以上120m/g以下であることが特に望ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ここで、平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積値が45m/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成される傾向があり、分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それにより画質欠陥を生じ易くなることがある。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが望ましく、1.0μm以下であることがより望ましく、より望ましくは0.3μm以下である。かかる最大粒径が上記範囲を超えると、黒点が発生し易い傾向にある。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、感光体が蛍光灯などに暴露されたことに起因する濃度ムラを抑制する観点から、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m2/g以上であることが望ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜に回折ピークを有するV型であることが望ましい。
一方、クロロガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、電子写真感光体材料として優れた感度が得られる、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを有するものであることが望ましい。
クロロガリウムフタロシアニン顔料の好適な分光吸収スペクトルの最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及び比表面積値は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と同様である。
電荷発生材料の含有量としては、例えば、結着樹脂に対して、0.05質量%以上30質量%以下がよく、望ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より望ましくは2質量%以上10質量%以下である。
[正孔輸送材料(C)]
正孔輸送材料としては、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の電子写真感光体に用いられる公知の正孔輸送材料が適用される。
中でも、正孔輸送材料としては、感光体の高感度化の点から、下記一般式(c1)で表される化合物、下記一般式(c2)で表される化合物、及び、下記一般式(c3)で表される化合物が、好ましいものとして挙げられる。
本実施形態における正孔輸送材料としては、感光体の高感度化、電荷の移動度、及び感光層内における分散性の点から、下記一般式(c1)で表される化合物が適用されることが好ましい。
一般式(c1)中、Rc1、Rc2、Rc3、Rc4、Rc5、及びRc6は、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは。各々独立に、0又は1を示す。
一般式(c1)中、Rc1〜Rc6が示す低級アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
これらの中でも、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基が望ましい。
一般式(c1)中、Rc1〜Rc6が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
一般式(c1)中、Rc1〜Rc6が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
一般式(c1)中、Rc1〜Rc6が示すフェニル基としては、例えば、未置換のフェニル基;p−トリル基、2,4−ジメチルフェニル基等の低級アルキル基置換のフェニル基;p−メトキシフェニル基等の低級アルコキシ基置換のフェニル基;p−クロロフェニル基等のハロゲン原子置換のフェニル基等が挙げられる。
なお、フェニル基に置換し得る置換基としては、例えば、Rc1〜Rc6が示す低級アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
一般式(c1)で表される正孔輸送材料として、高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、m及びnが1を示す正孔輸送材料がよく、特に、Rc1〜Rc6が各々独立に、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基を示し、m及びnが1を示す正孔輸送材料が望ましい。
以下、一般式(c1)で表される正孔輸送材料の例示化合物(c1−1)〜(c1−64)を示すが、実施形態はこれらに限定されるわけではない。
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・4−Me:フェニル基の4−位に置換するメチル基
・3−Me:フェニル基の3−位に置換するメチル基
・4−Cl:フェニル基の4−位に置換する塩素原子
・4−MeO:フェニル基の4−位に置換するメトキシ基
・4−F:フェニル基の4−位に置換するフッ素原子
・4−Pr:フェニル基の4−位に置換するプロピル基
・4−PhO:フェニル基の4−位に置換するフェノキシ基
また、正孔輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記一般式(c2)で表される化合物(トリアリールアミン誘導体)、下記一般式(c3)で表される化合物(ベンジジン誘導体)、及び、下記一般式(c4)で表される化合物も好ましい。
一般式(c2)中、Rc7は、水素原子又はメチル基を示す。n1は1又は2を示す。Arc1及びArc2は、各々独立に、置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(Rc8)=C(Rc9)(Rc10)、又は−C−CH=CH−CH=C(Rc11)(Rc12)を示し、Rc8〜Rc12は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。
一般式(c2)中、Arc1及びArc2が示すアリール基としては、フェニル基が好ましい。
また、Arc1及びArc2が示すアリール基、Rc8〜Rc12が示すアルキル基又はアリール基が置換基を有する場合、かかる置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基等が挙げられる。
一般式(c3)中、Rc13及びRc13’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。Rc14、Rc14’、Rc15、及びRc15’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、アリール基、−C(Rc16)=C(Rc17)(Rc18)、又は−CH=CH−CH=C(Rc19)(Rc20)を示し、Rc16〜Rc20は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。m2、m3、n2、及びn3は、各々独立に、0以上2以下の整数を示す。
上記のアルキル基、アルコキシ基、アリール基は、置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基等が挙げられる。
一般式(c4)中、Rc16及びRc16’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。Rc17、Rc17’、Rc18、及びRc18’は、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(Rc19)=C(Rc20)(Rc21)、又は−CH=CH−CH=C(Rc22)(Rc23)を示し、Rc19乃至Rc23は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m14、m15、n14、及びn15は、各々独立に、0以上2以下の整数を示す。
一般式(c2)で表される化合物(トリアリールアミン誘導体)、一般式(c3)で表される化合物(ベンジジン誘導体)、及び、一般式(c4)で表される化合物の具体例としては、例えば、以下に化合物(HT−1〜HT−10)が挙げられる。
前述した正孔輸送材料のうち、感光体の高感度化の点からは、一般式(c1)で表される化合物が好ましい。
また、上述した正孔輸送材料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
正孔輸送材料の含有量としては、例えば、感光層の全固形分に対して、10質量%以上50質量%以下がよく、望ましくは20質量%以上40質量%以下である。
なお、ここに記載の正孔輸送材料の含有量は、全ての正孔輸送材料を総計した含有量である。
[電子輸送材料(D)]
電子輸送材料としては、下記一般式(d)で表される電子輸送材料が適用される。
一般式(d)中、Rd1、Rd2、Rd3、Rd4、Rd5、Rd6、及びRd7は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又はアリール基を示す。Rd8は、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。
一般式(d)中、Rd1〜Rd7が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
一般式(d)中、Rd1〜Rd7が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下(望ましくは1以上3以下)のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
一般式(d)中、Rd1〜Rd7が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(望ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
一般式(d)中、Rd1〜Rd7が示すアラルキル基としては、−R−Arで示される基が挙げられる。但し、Rは、アルキレン基を示す、Arは、アリール基を示す。具体的には、例えば、ベンジル基が挙げられる。
一般式(d)中、Rd1〜Rd7が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基が望ましい。
一般式(d)中、Rd8が示すアルキル基としては、例えば、炭素数1以上10以下(好ましくは炭素数5以上10以下)の直鎖状のアルキル基、炭素数3以上10以下の分岐状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1以上10以下の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
炭素数3以上10以下の分岐状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基等が挙げられる。
一般式(d)中、Rd8が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
一般式(d)中、Rd8が示すアラルキル基としては、−R’−Arで示される基が挙げられる。但し、R’は、アルキレン基を示す、Arは、アリール基を示す。
R’が示すアルキレン基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上8以下のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert−ペンチレン基等が挙げられる。
Arが示すアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
一般式(d)中、Rd8が示すアラルキル基として具体的には、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
一般式(d)で表される化合物として、高感度化、及び黒点の発生を抑制する観点から、Rd8が炭素数5以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基である化合物が好ましく、特に、Rd1〜Rd7が各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基であり、且つ、R18が炭素数5以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基である化合物が好ましい。
以下、一般式(d)で表される電子輸送材料の例示化合物(d−1)〜(d−15)を示すが、これらに限定されるわけではない。
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・Ph:フェニル基
一般式(d)で表される電子輸送材料の含有量は、感光層の全固形分に対して7質量%以上22質量%以下であり、望ましくは10質量%以上16質量%以下である。
なお、この電子輸送材料の含有量は、一般式(d)で表される電子輸送材料と他の電子輸送材料を併用した場合、その電子輸送材料全体の含有量である。
[その他電子輸送材料]
上記一般式(d)で表される電子輸送材料以外にも、機能を損ねない範囲で、他の電子輸送材料を併用してもよい。但し、他の電子輸送材料は、電子輸送材料全体に対して10質量%以下で併用することがよい。
他の電子輸送材料としては、例えば、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送材料が挙げられる。
これらの他の電子輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
[正孔輸送材料と電子輸送材料との比率]
正孔輸送材料と電子輸送材料との比率は、質量比(正孔輸送材料/電子輸送材料)で、50/50以上90/10以下が望ましく、より望ましくは60/40以上80/20以下である。
なお、本比率は、他の電子輸送材料を併用した場合、その合計での比率である。
[ターフェニル化合物(E)]
本実施形態における単層型の感光層には、ターフェニル化合物(E)が添加される。
ターフェニル化合物(E)は結着樹脂(A)の含有量に応じて含有量を変化させる化合物であって、これを用いることで、感光層を形成する際の成膜性を確保し、また、黒点の発生を抑制しうる。
ターフェニル化合物(E)としては、下記一般式(e1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(e1)中、Re1、Re2、及びRe3は、各々独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、又はメチル基を示す。
中でも、ターフェニル化合物(E)としては、前記一般式(e1)で表される化合物の中でも、下記一般式(e2)で表される化合物、及び、下記一般式(e3)で表される化合物の少なくとも一方であることが好ましい。
一般式(e2)及び(e3)中、Re1、Re2、及びRe3は、各々独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、又はメチル基を示す。
一般式(e2)で表される化合物としてはo−ターフェニが、また、一般式(e3)で表される化合物としてはm−ターフェニルが好ましい。
ターフェニル化合物の含有量は、感光層の全固形分に対して0.5質量%以上40質量%以下がよく、望ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より望ましくは1質量%以上20質量%以下である。
[その他添加剤]
単層型の感光層には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤を含んでいてもよい。また、単層型の感光層が表面層となる場合、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル等を含んでいてもよい。
−単層型の感光層の形成−
単層型の感光層は、上記成分を溶剤に加えた感光層形成用塗布液を用いて形成される。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
感光層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
感光層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
単層型の感光層の膜厚は、望ましくは5μm以上60μm以下、より望ましくは10μm以上50μm以下の範囲に設定される。
〔保護層〕
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられるその他の層である。
保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光体表面の機械的強度を高める目的で設けられる。
保護層としては、周知の保護層が適用されるが、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。
硬化膜(架橋膜)で構成された保護層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH、−SH、−COOH、−SiRQ1 3−Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。中でも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
<画像形成装置及びプロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る電子写真感光体を備え、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。
本実施形態に係る画像形成装置では、前述した本実施形態に係る電子写真感光体が適用されることから、この電子写真感光体と電子写真感光体の表面を800V以上1200V以下に帯電する帯電手段とを組み合わせることで、感光体の表面電位を高めて、目的とする画像濃度を得ると共に、黒点の発生をも抑制しうる。
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体の加熱部材を備える装置;等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
以下、図2を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置を詳細に説明する。
ここで、図2は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、図2に示すように、例えば、矢印Aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電させる帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、露光装置30により形成された静電潜像に現像剤に含まれるトナーを付着させて電子写真感光体10の表面にトナー像を形成する現像装置40(現像手段の一例)と、記録紙P(被転写媒体の一例)をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて記録紙Pに電子写真感光体10上のトナー像を転写させる転写装置50と、電子写真感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70(トナー除去手段の一例)とを備える。そして、トナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、トナー像を定着させる定着装置60が設けられている。
以下、本実施形態に係る画像形成装置101における主な構成部材の詳細について説明する。
[帯電装置]
帯電装置20は、電子写真感光体10の表面の電位が前記範囲となるように帯電するものであれば特に限定されない。
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触帯電の場合、その押圧により黒点の発生が促進されることがあるため、非接触型帯電器が望ましい。
[露光装置]
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
[現像装置]
現像装置40は、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置された現像ロール41が備えられた構成が挙げられる。現像装置40としては、2成分現像剤により現像する装置であれば、特に制限はなく、周知の構成が採用される。
ここで、現像装置40に使用される現像剤は、トナーからなる一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤であってもよい。
[転写装置]
転写装置50としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
[クリーニング装置]
クリーニング装置70は、例えば、筐体71と、クリーニングブレード72と、クリーニングブレード72の電子写真感光体10回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシ73と、を含んで構成されている。また、クリーニングブラシ73には、例えば、固形状の潤滑剤74が接触して配置されている。
以下、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置20により正に帯電する。
帯電装置20によって表面が正に帯電した電子写真感光体10は、露光装置30により露光され、表面に潜像が形成される。
電子写真感光体10における潜像の形成された部分が現像装置40に近づくと、現像装置40(現像ロール41)により、潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
トナー像が形成された電子写真感光体10が矢印aに方向に更に回転すると、転写装置50によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
その後、クリーニング装置70により電子写真感光体10の表面をクリーニングされる。そして、再び、帯電装置20によって、帯電がなされて、次のサイクル(画像プロセス)が行われる。
画像が形成された記録紙Pは、定着装置60でトナー像が定着される。
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、以下、図3に示す、画像形成装置101のような構成を有していてもよい。ここで、図3は、本実施形態に係る他の画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、図3に示すように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、及びクリーニング装置70を一体に収容させたプロセスカートリッジ101Aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ101Aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置101に脱着させるものである。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10、及び転写装置50を備えてえればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、及びクリーニング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体10の周囲であって、転写装置50よりも電子写真感光体10の回転方向下流側でクリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置20よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、電子写真感光体10の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、記録紙Pに転写する中間転写方式の画像形成装置を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下に示す「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
〔実施例1〕
<感光体(1)の作製>
電荷発生材料としてCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(表中では「HOGaPC」と表記):2部と、結着樹脂として前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90、粘度平均分子量:8万、表中では「ビスフェノールZポリカーボネート」と表記):40部と、ターフェニル化合物として前記一般式(e3)で表される化合物(Re1〜Re3=水素原子、m−ターフェニル、表中では「A−1」と表記):11部と、テトラヒドロフラン250部と、からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルにて5時間分散し、分散液を得た。
得られた分散液に、正孔輸送材料として前記一般式(c1)で表される化合物(例示化合物(c1−1)、表中では「T−1」と表記):34部と、電子輸送材料として一般式(d)で表される化合物(例示化合物(d−2)、表中では「I−1」と表記):13部と、を添加し、更に一晩(12時間)撹拌して、感光層形成用塗布液を得た。
この感光層形成用塗布液を浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mmのアルミニウム基材上に塗布し、145℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ23μmの単層型の感光層を形成した。
以上の工程を経て、電子写真感光体(感光体1)を作製した。
<感光体2〜32の作製>
表1に従って、電荷発生材料、結着樹脂、ターフェニル化合物、正孔輸送材料、及び電子輸送材料の種及び量を適宜変更した以外は、感光体1と同様にして、電子写真感光体(感光体2〜32)を作製した。
ここで、表1中に記載の、電荷発生材料、結着樹脂、ターフェニル化合物、正孔輸送材料、及び電子輸送材料の総量は100部となる。
以下、前記表1中の略称の詳細について示す。
−電荷発生材料−
・HOGaPC:Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料
・ClGaPc:Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料
−結着樹脂−
・ビスフェノールZポリカーボネート、分子量8万:前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90)、粘度平均分子量Mv:8万
・ビスフェノールZポリカーボネート、分子量7万:前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90)、粘度平均分子量Mv:7万
・ビスフェノールZポリカーボネート、分子量9万:前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90)、粘度平均分子量Mv:9万
・ビスフェノールZポリカーボネート、分子量10万:前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90)、粘度平均分子量Mv:10万
・ビスフェノールZポリカーボネート、分子量6万5千:前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90)、粘度平均分子量Mv:6.5万
・ビスフェノールZポリカーボネート、分子量10万5千:前記構造式(a1)で表されるポリカーボネート樹脂(m:n=10:90)、粘度平均分子量Mv:10.5万
−ターフェニル化合物−
・A−1:m−ターフェニル(一般式(e3)で表される化合物、Re1〜Re3=水素原子)
・A−2:o−ターフェニル(一般式(e2)で表される化合物、Re1〜Re3=水素原子)
−正孔輸送材料−
・T−1:一般式(c1)で表される化合物の例示化合物(c1−1)
・T−2:一般式(c3)で表される化合物の例示化合物(HT−1)
・T−3:一般式(c2)で表される化合物の例示化合物(HT−2)
−電子輸送材料−
・I−1:一般式(d)で表される化合物の例示化合物(d−2)
・I−2:一般式(d)で表される化合物の例示化合物(d−14)
・I−3:一般式(d)で表される化合物の例示化合物(d−15)
・I−4:下記構造の化合物
<評価>
前述のようにして得られた電子写真感光体について、以下の評価を行った。その結果を表2にまとめて示す。
〔画像の評価〕
(初期画像評価)
得られた電子写真感光体(感光体1〜感光体32)をBrother社製の画像形成装置(JUSTIO HL2270DW)に搭載し、帯電電位(帯電装置によって帯電された電子写真感光体の表面における電位)及び現像電位(現像ロールに印加される電位で、露光された後の電子写真感光体の表面電位と現像電位の電位差によって現像されるトナー量がコントロールされる電位)が、表2に示す値になるように電位設定を行った画像形成装置について、以下の初期画像評価を行った。
結果を表2に示す。
具体的には、上記画像形成装置を用い、室温22℃湿度55%の環境下で20%ハーフトーン及びベタ黒の画像を形成し、分光測色計(X−Rite938)を用いて画像濃度(Dout)を測定し、以下の基準で評価した。
−20%ハーフトーン画像(表中では「Cin20」と表記)の評価基準−
A:0.15<Dout≦0.25
B:0.1<Dout≦0.15 又は 0.25<Dout≦0.3
C:Dout≦0.1 又は 0.3<Dout
−ベタ黒画像(表中では「ベタ画像」と表記)の評価基準−
A:1.4≦Dout
B:1.35≦Dout<1.4
C:1.3≦Dout<1.35
D:Dout<1.3
(維持性評価)
表2に従って、得られた電子写真感光体(感光体1〜感光体32)をBrother社製の画像形成装置(HL2270DW)に搭載し、帯電電位及び現像電位が表2に示す値になるように電位設定を行った画像形成装置について、以下の維持性評価を行った。
結果を表2に示す。
−画質維持性評価−
具体的には、上記画像形成装置を用い、室温28℃湿度85%の環境下で、画像密度4%の画像を2000枚形成し、その後12時間放置した後、50%ハーフトーン画像を形成し、画像の黒点発生個数を数え、以下の基準で評価を行った。なお、黒点の個数については、電子写真感光体1周分の画像における黒点の個数を数え、以下の基準で評価した。
−画質維持性(黒点)の評価基準−
A:φ0.3mm未満の黒点が5個以下、且つ、φ0.3mm以上の黒点未発生
B:φ0.3mm未満の黒点が5個以下、且つ、φ0.3mm以上0.5mm以下の黒点が1個以下
C:φ0.3mm未満の黒点が8個以下、且つ、φ0.3mm以上0.5mm以下の黒点が3個以下
D:φ0.3mm未満の黒点が0個以上、φ0.3mm以上0.5mm未満の黒点が4個以上、又はφ0.5mm以上の黒点が発生
〔製造適性の評価〕
表1に従って、電荷発生材料、結着樹脂、ターフェニル化合物、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を含有する感光層形成用塗布液を用い、以下のように製造適正を評価した。
結果を表2に合わせて示す。
(塗布液ライフの評価)
作製した感光層形成用塗布液を、22℃55%RHの環境下、密閉で静置保管し、24時間後及び168時間後に、塗布液中に溶解していた材料が析出していないか確認した。
A:24時間後、168時間後ともに塗布液中に析出なし
B:24時間後は塗布液中に析出なし、168時間後は塗布液中に析出あり
C:24時間後に塗布液中に析出あり
(上端だれの評価)
また、作製した塗布液を用いて、感光体1と同様の浸漬塗布法を用いて感光層を形成した後、この感光層の膜厚測定を実施した。
感光層の膜厚は、周方向に4点(周方向基点を任意に設定し、0°、90°、180°、270°の4点)、軸方向に上端10mm位置から10mmピッチで24点、合計96点測定し、上端10mm位置の4点の平均膜厚を上端膜厚、上端20mm〜240mm位置の合計92点の平均値を感光層の平均膜厚とした。測定には、膜厚測定器(フィッシャースコープ社製パーマスコープ)を用いた。なお、ここで「上端」とは浸漬塗布時に上方にあった端部のことである。
次に、平均膜厚と上端膜厚との差を求め、上端だれの発生について下記の基準で評価した。つまり、平均膜厚と上端膜厚との差が小さいほど上端だれが無い(少ない)こととなる。
A:平均膜厚と上端膜厚との差≦1μm
B:1μm<平均膜厚と上端膜厚の差<1.5μm
C:1.5μm<平均膜厚と上端膜厚の差
表2に明らかなように、感光体1〜19を用いた各実施例によれば、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが70000未満である比較例1〜4(感光体20〜23)、結着樹脂の含有比率Pが35質量%未満である比較例4、10(感光体23、29)、ターフェニル化合物を用いず、その代わりに電子輸送材料の含有量を増やした比較例12(感光体31)、電子輸送材料としてI−4で表される化合物を用いた比較例13(感光体32)と比べ、目的とする画像濃度が得られ易いこと、また、繰り返し使用しても画像に意図しない黒点が発生し難いこと、の両立がなされていることが分かる。
また、実施例である感光体1〜19を作製する際に用いた感光層形成用塗布液について言えば、塗布液ライフの評価及び上端だれの評価のいずれにおいても「A」又は「B」の評価結果が得られ、感光体を作製する上で、製造適性に優れることが分かった。
一方、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが70000以上100000以下であっても、前記関係式(1)を満たしていない比較例5〜7(感光体24〜26)では、上端だれの評価が「C」であり、実施例に比べ製造適性に劣ることが分かった。
また、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが105000であると、含有比率Pが40質量%であり、関係式(1)を満たしていても比較例8(感光体27)は、上端だれの評価が「C」であり、実施例に比べ製造適性に劣ることが分かった。
更に、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが80000であり、含有比率Pが40質量%であり、関係式(1)を満たしていても、ターフェニル化合物を含有していない比較例11(感光体30)は、上端だれの評価が「C」であり、実施例に比べ製造適性に劣ることが分かった。
加えて、結着樹脂の粘度平均分子量Mvが105000であり、その含有比率Pが35質量%未満である比較例9(感光体28)は、塗布液ライフの評価が「C」で、更に上端だれの評価が「C」であり、実施例に比べ製造適性に劣ることが分かった。
1 下引層、2 感光層、3 導電性基体、10 電子写真感光体、11 筐体、20 帯電装置、30 露光装置、40 現像装置、41 現像ロール、50 転写装置、60 定着装置、70 クリーニング装置、71 筐体、72 クリーニングブレード、72A 支持部材、73 クリーニングブラシ、74 潤滑剤、80 光除電装置、101 画像形成装置、101A プロセスカートリッジ

Claims (5)

  1. 導電性基体と、
    結着樹脂(A)、電荷発生材料(B)、正孔輸送材料(C)、下記一般式(d)で表される電子輸送材料(D)、及び、ターフェニル化合物(E)を含む単層型の感光層と、
    を備え、前記結着樹脂(A)の粘度平均分子量Mvが7000以上100000以下であり、前記単層型の感光層の全固形分に対する前記結着樹脂(A)の含有比率Pが35質量%以上であって、且つ、当該粘度平均分子量Mv及び当該含有比率Pが下記関係式(1)を満たす電子写真感光体。

    (一般式(d)中、Rd1、Rd2、Rd3、Rd4、Rd5、Rd6、及びRd7は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、又はアリール基を示す。Rd8は、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。)
    P≦−0.0005×Mv+85 ・・・関係式(1)
    (関係式(1)中、Pは単層型の感光層の全固形分に対する結着樹脂(A)の含有比率を示す。Mvは結着樹脂(A)の粘度平均分子量を示す。)
  2. 前記ターフェニル化合物(E)が下記一般式(e1)で表される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。

    (一般式(e1)中、Re1、Re2、及びRe3は、各々独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、又はメチル基を示す。)
  3. 前記正孔輸送材料(C)が、下記一般式(c1)で表される化合物である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。

    (一般式(c1)中、Rc1、Rc2、Rc3、Rc4、Rc5、及びRc6は、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは、各々独立に0又は1を示す。)
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
    画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
  5. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
    前記電子写真感光体の表面を800V以上1200V以下に帯電する帯電手段と、
    帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
    トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
    を備える画像形成装置。
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