JP2016065845A - 枕木加工用データ作成システム - Google Patents

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Abstract

【課題】計測車両がレールの上を移動しながら、枕木を交換する際に必要となるデータを作成できる枕木加工用データ作成システムを提供する。
【解決手段】レーザスキャナは、スキャナ部211を回転させながらパルス状のレーザビームを対象物に放射し、反射光を受信して対象物までの距離を計測する。スキャナ部211は、レーザビームの回転断面Sが鉛直方向を向くように配置されている。またレーザスキャナは、計測車両2の進行方向と直交する方向の異なる2つの地点に設置されたスキャナ部211を用いて、レール13の同一地点における2つのレーザスキャンデータを取得する。データ作成装置は、2つのレーザスキャンデータのうち、一方のデータについてレール13が死角となってフランジ12のデータが取得できない箇所については、他方のデータを用いて枕木加工用のデータを作成する。
【選択図】図5

Description

本発明は、鉄道のレールを支える枕木を交換する際に必要となるデータを作成する枕木加工用データ作成システムに関する。
枕木は、レールと当該レールが敷設される道床等の設置面との間に設置され、レールから作用する加重を道床側に分散し、支持している。
枕木には、木製のものや、コンクリートや発泡樹脂を用いて作製されたものがある。これらの枕木は、列車の通過に伴って道床やレールと摩擦を起こし、材質によって程度は異なるものの、少しずつではあるが、磨耗や劣化によって損傷や変形が発生するため、定期的に交換する必要がある。
隣接して設置された枕木の高さや個々の枕木の左右の高さは、レールの設置場所や曲がり方に合わせて変えられている。従って枕木を交換する際には、枕木とフランジの位置および高さを測定し、測定値に基づいて厚みを算出すると共に、厚みが調整された枕木を作製する必要がある。
従来、上述の測定は、作業員がノギスや巻尺等の複数の測定器を使用して行っていた。このため測定に多大の時間がかかり、また列車の運行中は測定を行うことができない等、多くの制約があるために、調整用データの作成方法について改善が求められていた。
一方、鉄道の車両にレーザスキャナ、GNSS受信機および慣性計測装置を搭載し、レール上を移動しながらレール周辺の三次元位置データを取得する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2005−69700号公報
特許文献1に記載の三次元データ取得装置を用いれば、枕木とフランジの位置および高さを示すデータを、作業員に負担をかけることなく短時間で取得できるが、枕木の特性からデータを取得できない箇所が生じ、そのままでは枕木の加工に必要なデータを作成することができない。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて成されたもので、計測車両がレールの上を移動しながら、枕木を交換する際に必要となる枕木加工用データを作成できるデータ作成システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明にかかる枕木加工用データ作成システムは、鉄道橋上の軌道を構成する一対のフランジと一対のレールとの間に挿入される枕木の加工用データを作成する枕木加工用データ作成システムであって、
車両本体にレーザスキャナ、GNSS受信機、および慣性計測装置が搭載され、レール上を移動しながら、前記レーザスキャナを用いて軌道までの距離と方向を計測してレーザスキャンデータを取得し、かつ前記GNSS受信機および慣性計測装置を用いて前記車両本体の位置および姿勢に関するデータを取得する計測車両と、
前記レーザスキャナ、GNSS受信機および慣性計測装置で取得されたデータに基づいて枕木加工用データを作成するデータ加工装置と、を備え、
前記レーザスキャナは、スキャナ部を回転させながらパルス状のレーザビームを対象物に放射し、反射光を受信して対象物までの距離を計測するもので、前記スキャナ部は、レーザビームの回転断面が鉛直方向を向くように配置され、
前記データ加工装置は、
前記レーザスキャナで取得したレーザスキャンデータを、前記GNSS受信機および慣性計測装置で取得したデータに基づいて、地理座標系で表示された第1の三次元点群データに変換するデータ変換部と、
前記第1の三次元点群データに基づいて、少なくともそれぞれの枕木の厚みを算出して枕木加工用データを作成する枕木加工用データ作成部と、で構成され、
かつ前記レーザスキャナは、前記計測車両の進行方向と直交する方向の異なる2つの地点に設置されたスキャナ部を用いて、前記レールの同一地点における2つのレーザスキャンデータを取得し、
前記枕木加工用データ作成部は、前記2つのレーザスキャンデータのうち、一方のデータについてレールが死角となってフランジのデータが取得できない箇所については、他方のデータを用いて枕木加工用データを作成することを特徴とする。
ここで、前記レーザスキャナのスキャナ部はスライダに取り付けられ、当該スライダは、前記車両本体に固定されたガイド板上を、当該計測車両の進行方向と直交する方向に移動可能であることが好ましい。
もしくは、前記計測車両には、2台のレーザスキャナが搭載されており、それぞれのスキャナ部は、当該計測車両の進行方向と直交する方向に距離を隔てて設置されることが好ましい。
また前記枕木加工用データ作成部は、前記第1の三次元点群データから、レールと一定の距離を隔てた箇所の枕木およびフランジのデータを取り出し、当該データに基づいて前記枕木に識別用の番号を付与することが好ましい。
前記枕木加工用データには、更に、前記レールと前記フランジとの水平方向の間隔を表すデータおよび前記フランジの幅を表すデータが含まれることが好ましい。
また前記枕木加工用データ作成部は、前記第1の三次元点群データから、特定の枕木とその周辺の領域を含む第2の三次元点群データを切り出し、当該第2の三次元点群データから前記枕木加工用データを作成することが好ましい。
本発明にかかる枕木加工用データ作成システムによれば、レール上を移動する計測車両によって取得したレーザスキャンデータに基づいて、枕木を交換する際に必要となる枕木加工用データを自動でかつ簡単に作成できる。
鉄道橋上の軌道の構造物を示す平面図および正面図である。 図1の一部拡大平面図である。 本発明の実施の形態1にかかる枕木加工用データ作成システムの基本的な構成を示すブロック図である。 実施の形態1に用いる計測車両の斜視図である。 レール上を移動する計測車両を上方から見た図である。 レール上を移動する計測車両を後方から見た図である。 枕木加工用データの作成手順を示すフローチャートである。 枕木加工用データの一例を示す図である。 実施の形態2に用いる計測車両の斜視図である。
以下、本発明の実施の形態にかかる枕木加工用データ作成システムについて、図面を参照しながら説明する。
<鉄道橋上の軌道の構造>
本発明にかかる枕木加工用データ作成システムは、鉄道橋上の軌道に設置された枕木を取り換える際に必要なデータを作成するものである。従って、枕木加工用データ作成システムの構成について説明する前に、枕木を含む鉄道橋上の軌道の構造について説明する必要がある。
図1(a)は鉄道橋上の軌道の構造物を示す平面図、図1(b)は、図1(a)の構造物をX−X線で切断した正面図である。また図2は、図1(a)の一部を拡大して示した図である。
枕木11は、軌道を構成する一対のフランジ12Lと12Rを跨ぐように設置され、枕木11の上には一対のレール13L、13Rが設置されている。図1(b)に示すようにレール13L、13Rは、それぞれ締結具15によって枕木11に固定されている。以降、フランジ12L、12Rを総称してフランジ12ともいう。同様に、レール13L、13Rを総称してレール13ともいう。レール13Lと13Rの間の枕木11上には歩道用の板材14が設置されている。
なお、図1(a)および図2については、見易さを考慮して、それぞれの枕木11に取り付けられたレールの締結具15を省略している。また、鉄道橋の軌道の下には、図示した構造物以外に橋脚の梁等があるが、これらは本発明との関係が乏しいため、図では省略している。
枕木11の厚みは、レール13の勾配や曲率に応じて変わっている。例えば、レール13がカーブした場所では、外側のレールが内側のレールよりも高くなるように、枕木11の左右の厚みを変えている。従って枕木11を取り替える際には、設置される場所に応じて枕木の左右の厚みを調節する必要があり、そのために枕木11の左右の下部には段差部111が形成されている。枕木11を製造する際に段差部111の厚みを変えることによって枕木の上面の高さを調節している。
枕木を取り替える際に、新たな枕木の左右の厚みを調節する必要があるが、そのためには、現在設置されている枕木の左右の厚みを計測する必要がある。本発明では、ノギス等を用いて枕木の厚みを直接計測することはせず、後述する計測車両を用いてフランジおよび枕木の高さを計測し、これらの計測データから枕木の左右の厚みを算出している。
また、図2に示すように、フランジ12の上面には、リベットの頭部121が露出しており、若干であるが盛り上がっている。枕木11の底面がリベット頭部121に接触すると座りが不安定になるため、枕木を取り替える際には、リベット頭部121が直接枕木11の底面に接触しないように凹みを設ける必要がある。
凹みの形成方法として、枕木11の底面のリベット頭部121に対応する箇所を座繰りするか、もしくは浅い溝を形成する方法がある。座繰りする方法は作業に手間がかかるため、本実施の形態では、枕木11の底面のうちリベット頭部121の周辺に浅い溝112を形成している。
図1(b)に基づいて、枕木11の左右の厚みおよび溝112を形成する位置の算出方法について説明する。符号HILおよびH2Lは、それぞれ左側のフランジ12Lの上面の高さおよび枕木11の上面の高さを示している。同様に、符号HIRおよびH2Rは、それぞれ右側のフランジ12Rの上面の高さおよび枕木11の上面の高さを示している。
また符号A1は右側のフランジ12Rの右端の水平位置、A2は右側のフランジ12Rの左端の水平位置、A3は右側のレール13Rの頭部の左端の水平位置、A4は左側のフランジ12Lの右端の水平位置、A5は左側のフランジ12Lの左端の水平位置を示している。
ここで、レール13Rの頭部について説明すると、図2に示すように、レール13Rは、幅の異なる頭部131と底部132で構成されているが、頭部131は底部132より幅が狭い。符号A3は頭部131の左端の水平位置を示している。
本実施の形態では、後述する計測車両での計測値に基づいて高さH1L、H2L、HIR、H2Rのデータを作成し、それらの高さデータから下記の式(1)(2)に基づいて枕木の左右の厚みデータT1、T2を算出している。
T1=H2L−H1L ――(1)
T2=H2R−H1R ――(2)
なお、上述の算出方法以外に、左右のレール12L、12Rの頭部の高さを計測し、その値からレールの高さと左右のフランジ12L、12Rの上面の高さを引くことによって枕木の左右の厚みT1、T2を求めるようにしてもよい。
一方、枕木の段差部111の底面にリベット頭部121を収容する溝112を形成する場合には、計測車両2での計測値に基づいて水平位置のデータA1〜A5を取得し、それらの位置データから下記の式(3)〜式(6)に基づいて、溝の位置と幅を決定する際に必要となるデータW1〜W4を算出する。
W1=|A1−A3| ――(3)
W2=|A1−A2| ――(4)
W3=|A1−A5| ――(5)
W4=|A4−A5| ――(6)
ここで、W1は、右側のフランジ12Rの右端と右側のレール13Rの頭部の左端との間隔、W2は、右側のフランジ12Rの幅、W3は右側のフランジ12Rの右端と左側のフランジ12Lの左端との間隔、W4は、左側のフランジ12Lの幅を示すデータである。
図2に示すように、枕木11の段差部111の底面に、リベット頭部121を取り囲むように溝112を形成するが、リベット頭部121の位置は、もともとバラツキがあるため、どの位置に溝112を形成するか、その都度決定する必要がある。
溝を形成する位置を決定する際に必要となるデータについて説明する。例えば枕木11の右側の段差部111については、フランジ12Rの左右の端部の位置データA1、A2とレール13Rの左端の位置データA3が必要となる。
現在設置されている枕木の長さと取り替えられる枕木の長さが同じとは限らない。その一方、レール13Rと枕木11との位置関係は常に変わらないため、ここでは、枕木の右端の位置データの代わりに、枕木の長さに影響されないレール13Rの頭部の位置データA3を採用している。
上述したように、間隔および幅に関するデータW1〜W4の値がわかっていれば、枕木の段差部111に溝112を正確に形成することができる。枕木の製造工程において、段差部111の厚みがT1、T2の枕木を作製し、更に、上記式に従って算出した間隔と幅のデータW1〜W4に基づいて段差部111の底面に溝を形成して、取り替え用の枕木を完成する。
なお、枕木11には木材、コンクリートまたは合成木材が用いられるが、鉄道橋上の軌道で用いる枕木の材料としては、耐振動性に優れた合成木材が好ましい。ここで、合成木材とは、ガラス長繊維を名が手方向に引き揃えて埋設した熱硬化性の樹脂発泡体であり、例えば、積水化学工業株式会社製、商品名「エスロンネオランバーFFU」等が使用可能である。
(実施の形態1)
次に、図3および図4を参照して、本発明の実施の形態1にかかる枕木加工用データ作成システムについて説明する。
<枕木加工用データ作成システムの構成>
図3は、本実施の形態にかかる枕木加工用データ作成システムの基本的な構成を示すブロック図である。枕木加工用データ作成システム1は、線路上を移動しながら必要なデータを収集する計測車両2と、計測車両2で収集されたデータに基づいて、枕木加工用データを作成するデータ加工装置2とで構成されている。
枕木加工用データ作成システム1について説明する前に、枕木加工用データを作成する際の基本的なステップを説明する。本発明では、以下の3段階のステップにより枕木加工用データを作成している。
最初に、計測車両2に搭載されたレーザスキャナ21を用いて、走行しながら線路周辺の構造物までの距離と角度を計測してレーザスキャンデータG1を取得する(第1のステップ)。
次に、レーザスキャンデータG1を、計測車両2に搭載されたGNSS受信機22および慣性計測装置23を用いて取得したデータに基づいて、地理座標系で表示された三次元点群データG2に変換する(第2のステップ)。
最後に、三次元点群データG2から、隣接するレールとフランジを含む個々の枕木のデータを切り出し、当該データに基づいて個々の枕木の厚みを算出し、枕木を識別するデータと合わせて枕木加工用データを作成する(第3のステップ)。
<計測車両の構成と機能>
次に、上記第1のステップを実現する計測車両2の構成と機能について説明する。
図3に示すように、計測車両2は、レーザスキャナ21、GNSS受信機22、慣性計測装置23、レーザスキャンデータ記憶部24および計測データ記憶部25で構成されている。図示しないが、レーザスキャンデータ記憶部24および計測データ記憶部23は、磁気ディスク装置または不揮発性メモリを内蔵したデータロガーで構成されている。
図4に計測車両2の外観を示すが、計測車両2はレール13上を走行するもので、車両本体26の前後、左右の側面には車輪261が取り付けられている。また車両本体26の左右上面には板状の一対の支柱26が取り付けられ、その頂部には、計測車両2の進行方向と直交する方向に張り出したガイド板27が取り付けられている。
ガイド板27の上面には一対の溝271が長手方向に形成され、その溝に平板状のスライダ28の下面に設けられた突起が挿入されている。スライダ28は、ガイド板27の溝271に沿って移動する。図示しないが、スライダ28には、ガイド板27の任意の位置で固定させるための冶具が取り付けられている。
スライダ28の上面には支持板29が取り付けられ、支持板29の上部に慣性計測装置23およびGNSS受信機22のアンテナ221が取り付けられている。また支持板29の後方の下部にはレーザスキャナ21のスキャナ部211が取り付けられている。
なお、レーザスキャナ21の本体およびGNSS受信機22の本体、更にレーザスキャンデータ記憶部24および計測データ記憶部25は、車両本体26の上部に設置された直方体状のシャーシ20に収容されている。またスキャナ部211、GNSS受信機のアンテナ221および慣性計測装置23とシャーシ20の間はケーブルで接続されているが、図では煩雑さを避けるために省略している。
計測車両2は、通常、モータ付きの車両(図示せず)に牽引されてレール13上を移動するが、作業者が牽引することによって移動させることもできる。支柱26に取り付けられた棒263は、移動の際に作業者が把持するものであり、位置を上下方向に移動できるように構成されている。
次に、レーザスキャナ21、GNSS受信機22および慣性計測装置23について説明する。レーザスキャナ21は、支持板29の先端に取り付けられた、360度連続回転式のスキャン部211から所定の時間間隔でパルス状のレーザビームLBを発射し、レーザビームLBがレーザ発射部分と対象物の間を往復する時間で計測点までの距離を計測する。また、スキャナ部211の取り付け角度と回転方向によって方向角を得ることができる。結果として、レーザが照射された各計測点の極座標で表された位置データを得ることができる。
スキャナ部211によってレーザビームLBを回転させながら計測車両2がレール上を走行すると、レーザビームLBが螺旋状の軌跡を辿りながら走行方向に移動し、構造物までの距離と方向を示すデータが連続して得られる。このようにして得られた計測点までの距離と方向を示すデータの集まりであるレーザスキャンデータG1は、計測時刻と共に、レーザスキャンデータ記憶部24に記憶される。
GNSS受信機22は、複数の人工衛星のそれぞれから発信された測位信号の搬送波を観測し、この搬送波の観測情報に基づいて、GNSS受信機22のアンテナ221の位置を、三次元座標で表された位置情報として取得する。
慣性計測装置(通常、“Inertial Measurement Unit”と呼ばれる)23は、運動を司る3軸の角度(または角速度)と加速度を計測する装置である。慣性計測装置23は、基本的に、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって三次元の角速度と加速度を求める。
GNSS受信機22で取得された位置情報のデータと慣性計測装置23で計測された角度(または角速度)と加速度のデータは、計測時刻と共に計測データ記憶部25に記憶される。
<レーザビームの走査方向とスキャナ部の設置位置>
次に、図5および図6を参照して、レーザスキャナ21によるレーザビームLBの走査方向とスキャナ部211の設置位置について説明する。図5は、レール13上を移動する計測車両2を上方から見た図、図6は同計測車両2を移動方向(図中、矢印で示す)の後方から見た図である。なお、図では、説明に使用しないアンテナ221および慣性計測装置23を省略している。
本発明では、計測対象である枕木の構造的な特性を考慮してスキャナ部211の設置位置を定めている。具体的には、図5に太い破線で示したように、レーザビームLBの回転断面Sが鉛直方向を向くようにスキャナ部211を設置している。
一般に、レーザスキャナを用いて構造物の三次元位置データを取得する場合、スキャナ部は位置データの特異性を持たないように鉛直方向および水平方向に角度をつけて取り付けている(例えば、特開2013−113702号公報参照)。
一方、枕木加工用データの作成においては、各枕木11の上面の高さデータと枕木11が載置されたフランジ12の上面の高さデータが必要となる。枕木11は長手方向がフランジ12と直交するように設置され、かつ複数の枕木11がほぼ等間隔になるように設置されている。
このような構造物に対して、レーザビームLBの回転断面Sを鉛直方向および水平方向に対して傾けている場合、枕木11が死角となって、その下に位置するフランジ12の上面の高さデータを計測できなくなる。
これに対し、図5に示すようにレーザビームLBの回転断面Sが鉛直方向を向いている場合、フランジ12の上面の高さデータを取得するときに、枕木1によってフランジ12上に影が生じず、枕木11の真下に位置するフランジ12の高さデータを計測することができる。
更に本発明では、図6に実線および2点鎖線で示したように、スキャナ部211を計測車両2の進行方向と直交する方向に移動させて、異なる2つの地点に設置し、それぞれの位置において取得した2つのレーザスキャンデータを用いて2つの三次元点群データを作成している。
スキャナ部211を計測車両の進行方向と直交する方向の任意の位置に設置してレーザビームLBを回転走査した場合、レール13が影となってその下に位置するフランジ12の高さデータを計測できなくなる。例えば、図6に示すように、スキャナ部を一方のフランジ12Rの上方の位置Aに配置した場合、他方のフランジ12Lの上面の大半の部分がレール13Lの影(図中、灰色で示す)となり、枕木加工用のデータを作成する際に必要となるフランジ12Lの上面のデータの大半が欠落して、枕木11の左側の厚みデータを算出できなくなる。
本発明では、上述の問題点を解決するために、スキャナ部211を計測車両2の進行方向と直交する方向に移動して、図6に2点鎖線で示す位置Bに設置し、その地点でレーザビームLBを回転走査してレール13の同一位置において2つのレーザスキャンデータを取得している。
そして、一方のレーザスキャンデータのうちレール13が妨げとなってフランジ12の上面のデータを計測できない箇所については、他方のレーザスキャンデータを用いて枕木加工用データを作成している。
上述したように、本発明では、枕木11の構造的な特性を考慮して、スキャナ部211の設置位置と方向を定めることにより、枕木加工用のデータを確実に取得できるようにしている。
なお、スキャナ部211の設置位置を変えて2つのレーザスキャンデータを取得する場合、図6に実線で示した位置にスキャナ部211を配置した状態で、図5に矢印で示す方向に計測車両2を移動させ、その後、図6に2点鎖線で示す位置にスキャナ部211を配置した状態で、反対方向に移動させれば、効率的にデータを取得できる。
<データ作成装置の構成と機能>
次に、上述の第2のステップと第3のステップを実現するデータ作成装置3の構成と機能について説明する。図3に示すように、データ作成装置3は、位置・姿勢算出部31、データ変換部33および枕木加工用データ作成部35を備えている。またデータ作成装置3は作成されたデータを記憶する位置・姿勢データ記憶部32、三次元点群データ記憶部34および枕木加工用データ記憶部36を備えている。
図示しないが、データ作成装置3のブロックのうち位置・姿勢算出部31、データ修正部33および枕木加工用データ作成部35の各機能は、CPU、ROM、RAM、ディスプレイ、キーボード、マウス、磁気ディスク装置を備えたコンピュータを用いて実現される。コンピュータの構成および機能については広く知られているため、ここでは説明を省略する。
次に、データ作成装置3における処理について説明する。最初に、レーザスキャナ21で計測されたレーザスキャンデータG1を、直交する3軸で表される地理座標系の三次元点群データG2に変換する手順(第2のステップ)を説明する。
計測車両2のレーザスキャンデータ記憶部24および計測データ記憶部25に格納された計測データは、通信ボード(図示せず)を介して、もしくはメモリーカード等を用いて計測車両2の磁気ディスク装置(図示せず)から読み出され、データ作成装置3のデータ修正部33および位置・姿勢算出部31にそれぞれ転送される。
位置・姿勢算出部31は、各計測時刻における計測車両2の位置および姿勢角を特定の座標系(本実施の形態では地理座標系)で算出する。具体的には、位置・姿勢算出部31は、計測データ記憶部25から、GNSS受信機22で取得した計測車両2の緯度、経度および高さのデータ、ならびに慣性計測装置23で計測した角度(または角速度)および角加速度のデータを読み出し、これらのデータに基づいて、各時刻における計測車両2の位置および姿勢角(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を算出する。
地理座標系は世界測地系でも任意座標のいずれでもよく、例えば、最初に観測した、任意の位置の構造物のレーザ照射点を(x,y,z)=(0,0,0)としてもよい。算出された計測車両2の位置および姿勢のデータは、位置・姿勢データ記憶部32に記憶される。
データ変換部33は、読み出したデータに基づいて各時刻における構造物のレーザスキャンデータG1を、地理座標系の三次元点群データG2に変換する。極座標で表されたレーザスキャンデータG1を、計測車両2の位置および姿勢のデータに基づいて、地理座標系で表された三次元点群データG2に変換する演算式は、例えば特開2009−204615号公報に記載されているように広く知られているため、ここでは説明を省略する。データ変換部33で作成された地理座標系の三次元点群データG2は、三次元点群データ記憶部34に記憶される。
次に、図7のフローチャートを参照して、地理座標系に変換された三次元点群データG2に基づいて枕木加工用データG3を作成する手順(第3のステップ)を説明する。
第3のステップでは、三次元点群データG2から図1に2点鎖線で囲った領域Rのデータを枕木毎に切り出し、切り出した三次元点群データに基づいて枕木加工用データを作成する。なお、以後の処理は、データ作成装置を構成する磁気ディスク装置に格納されたデータ作成用プログラムを読み出してCPUで実行することにより実現される。
最初に、枕木加工用データ作成部35は、三次元点群データ記憶部34に格納された三次元点群データG2を読み出し、個々の枕木の位置を特定すると共に、特定した各枕木に識別用の番号を付与する(ステップS1)。
具体的には、三次元点群データG2から、レール13Lから一定距離離れた箇所の枕木11とフランジ12のデータを取り出す。取り出したデータは、枕木の上面を頂点とし、フランジの上面を底とする櫛歯状のデータとなる。この櫛歯状のデータの凸部は枕木に対応しているため、図1に示すように、それぞれの凸部に識別用の番号を付与する。
番号を付与する方法として、図1に示すように、予めレール13の任意の箇所に反射シール16を張っておき、反射シール16からのレーザスキャンデータを検出した位置の枕木11を先頭として番号を付与すれば、枕木との番号の照合を簡単に行うことができる。
次に、枕木加工用データ作成部35は、1番目の番号を付与した枕木について、図1に示すように、枕木の周辺を含む三次元点群データを切り出す(ステップS2)。引き続き枕木加工用データ作成部35は、切り出した三次元点群データから前述の式(1)〜式(6)を用いて枕木の左右の厚みデータT1、T2、ならびに間隔および幅を示すデータW1〜W4を算出する(ステップS3)。
なお、厚みデータT1、T2を算出する際のデータとしてフランジの上面の高さデータH1LおよびH1Rを用いるが、前述したように、フランジ12の上面のリベット頭部121が露出した箇所は、周囲よりも若干高くなっている。従って、フランジ12の高さデータH1LおよびH1Rについては、測定値のうち最低の値を用いることが好ましい。
同様に、厚みデータT1、T2を算出する際のデータとして枕木の上面の高さデータH2LおよびH2Rを用いるが、枕木の上面が、若干ではあるが、丸みを帯びている場合がある。従って、枕木11の上面の高さデータH2LおよびH2Rについては、測定値のうち最高の値を用いることが好ましい。
枕木加工用データ作成部35は、番号が付与された順に枕木のデータを切り出してステップS2およびS3の処理を繰り返し(ステップS4においてNo)、算出された枕木の左右の厚みデータT1、T2、ならびに溝の位置および幅を決定するのに必要なデータW1〜W4を、枕木の番号毎に列記した表を作成する(ステップS5)。作成された表のデータは、枕木加工用データ記憶部36に格納される。
レーザスキャナ21により取得したレーザスキャンデータの計測誤差は1〜2mmであるのに対して、GNSS受信機22および慣性計測装置23により取得した位置および姿勢のデータの誤差は10cm程度である。従って、三次元点群データの誤差は10cm程度になるが、上述したように枕木を含む周辺領域のデータを切り出せば、領域内のデータの誤差は1〜2mmであるため、高い精度で枕木加工用データを作成できる。
図8に、このようにして作成した枕木加工用データの表を示す。表には、取り替え用枕木の加工に必要な全てのデータが含まれており、作業者はこの表に基づいて、指定された厚みの段差部111を有する枕木を作製し、更に段差部111の底面の所定の位置に所定の幅の溝112を形成した後、現場に搬送して枕木の取り替えを行う。
取り替え用の枕木を作製する際に、図8に示す表のデータをそのまま用いる必要はない。例えば、新たな枕木について、既存の枕木と異なるピッチで設置する場合、表のデータに基づいて補完データを作成し、その値を新たに設置する枕木の加工用データとしてもよい。
(実施の形態2)
図9に、本実施の形態で使用する計測車両2aを示す。図中、図3に示した計測車両2と同一機能を有する部材には同一の符号を付して説明を省略する。
実施の形態1では、レーザスキャナ21のスキャナ部211を、スライダ28を用いて計測車両2の進行方向と直交する方向に移動させることにより、レーザビームLBの照射位置を変え、2箇所においてレースキャンデータを取得していた。
しかし、この方法を採用した場合、スキャナ部211の取り付け位置を変えた状態で、計測車両2を移動させる必要があるため、計測に時間がかかり、また計測の都度、スキャナ部211の位置を調整する必要があるため、作業に手間がかかる。
本実施の形態では、上述の問題を解決するため、レーザスキャナ21を2台用意し、図8に示すように、それぞれのスキャナ部211a、211bを計測車両2の進行方向に対して直交する方向に距離を隔てて配置している。
具体的には、一対の支持板262の上部に、図3のガイド板27の代わりに長尺状の支持板27cを取り付け、その両端に支持板29a、29bを介してスキャナ部211a、211bを取り付けている。なお、2台のレーザスキャナ21の本体部はシャーシ20内に収容されている。
図9に示す構成を採用した場合、レーザスキャナを2台用意しなければならないため費用がかさむが、1回の走行で必要なレーザスキャンデータを取得できるため、作業時間を大幅に短縮できる。
1 枕木加工用データ作成システム
2 計測車両
3 データ作成装置
11 枕木
12L、12R フランジ
13L、13R レール
14 板材
15 締結具
20 シャーシ
21 レーザスキャナ
22 GNSS受信機
23 慣性計測装置
24 レーザスキャンデータ記憶部
25 計測データ記憶部
26 車両本体
27 ガイド板
28 スライダ
29、27c 支持板
31 位置・姿勢算出部
32 位置・姿勢データ記憶部
33 データ変換部
34 三次元点群データ記憶部
35 枕木加工用データ作成部
36 枕木加工用データ記憶部
111 段差部
112 溝
121 リベット頭部
131 レール頭部
132 レール底部
211 スキャン部
221 アンテナ
LB レーザビーム
S 回転断面

Claims (6)

  1. 鉄道橋上の軌道を構成する一対のフランジと一対のレールとの間に挿入される枕木の加工用データを作成する枕木加工用データ作成システムであって、
    車両本体にレーザスキャナ、GNSS受信機、および慣性計測装置が搭載され、レール上を移動しながら、前記レーザスキャナを用いて軌道までの距離と方向を計測してレーザスキャンデータを取得し、かつ前記GNSS受信機および慣性計測装置を用いて前記車両本体の位置および姿勢に関するデータを取得する計測車両と、
    前記レーザスキャナ、GNSS受信機および慣性計測装置で取得されたデータに基づいて枕木加工用データを作成するデータ加工装置と、を備え、
    前記レーザスキャナは、スキャナ部を回転させながらパルス状のレーザビームを対象物に放射し、反射光を受信して対象物までの距離を計測するもので、前記スキャナ部は、レーザビームの回転断面が鉛直方向を向くように配置され、
    前記データ加工装置は、
    前記レーザスキャナで取得したレーザスキャンデータを、前記GNSS受信機および慣性計測装置で取得したデータに基づいて、地理座標系で表示された第1の三次元点群データに変換するデータ変換部と、
    前記第1の三次元点群データに基づいて、少なくともそれぞれの枕木の厚みを算出して枕木加工用データを作成する枕木加工用データ作成部と、で構成され、
    かつ前記レーザスキャナは、前記計測車両の進行方向と直交する方向の異なる2つの地点に設置されたスキャナ部を用いて、前記レールの同一地点における2つのレーザスキャンデータを取得し、
    前記枕木加工用データ作成部は、前記2つのレーザスキャンデータのうち、一方のデータについてレールが死角となってフランジのデータが取得できない箇所については、他方のデータを用いて枕木加工用データを作成することを特徴とする枕木加工用データ作成システム。
  2. 前記レーザスキャナのスキャナ部はスライダに取り付けられ、当該スライダは、前記車両本体に固定されたガイド板上を、当該計測車両の進行方向と直交する方向に移動可能である、請求項1に記載の枕木加工用データ作成システム。
  3. 前記計測車両には、2台のレーザスキャナが搭載されており、それぞれのスキャナ部は、当該計測車両の進行方向と直交する方向に距離を隔てて設置されている、請求項1に記載の枕木加工用データ作成システム。
  4. 前記枕木加工用データ作成部は、前記第1の三次元点群データから、レールと一定の距離を隔てた箇所の枕木およびフランジのデータを取り出し、当該データに基づいて前記枕木に識別用の番号を付与する、請求項1ないし3のいずれかに記載の枕木加工用データ作成システム。
  5. 前記枕木加工用データには、更に、前記レールと前記フランジとの水平方向の間隔を表すデータおよび前記フランジの幅を表すデータが含まれる、請求項1ないし4のいずれかに記載の枕木加工用データ作成システム。
  6. 前記枕木加工用データ作成部は、前記第1の三次元点群データから、特定の枕木とその周辺の領域を含む第2の三次元点群データを切り出し、当該第2の三次元点群データから前記枕木加工用データを作成する、請求項1ないし5のいずれかに記載の枕木加工用データ作成システム。
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