本発明の潤滑油用添加剤組成物は、下記の一般式(1)で表される化合物(A)及び一般式(2)で表される化合物(B)を含有するものである。
(式中、R1及びR2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは5〜12の数を表す。)
(式中、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜12のアルキル基を表し、nは5〜12の数を表す。)
一般式(1)のR1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、高温時の酸化防止性能が良好或いは製造が容易であることから、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。炭素数が4を超えると、高温時の酸化防止性能が低下する場合がある。
一般式(1)のmは5〜12の数を表す。一般式(1)は、HOOC−(CH2)m−COOHで表されるジカルボン酸化合物、又はHOOC−(CH2)m−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化されたジエステル化合物を原料として製造されるが、mの値は当該原料に由来する。
HOOC−(CH2)m−COOHで表される原料としては、例えば、ヘプタン二酸(m=5)、オクタン二酸(m=6)、ノナン二酸(m=7)、デカン二酸(m=8)、ウンデカン二酸(m=9)、ドデカン二酸(m=10)、トリデカン二酸(m=11)、テトラデカン二酸(m=12)等が挙げられる。これらの中でも、原料が容易に入手できることからmは6〜11が好ましく、8〜10がより好ましい。mの値が5未満の場合、基油への溶解度が低くなり潤滑油組成物としての低温時の保存安定性が低下する場合があり、mの値が12を超えると、高温時の酸化防止性能が低下する場合がある。
HOOC−(CH2)m−COOHで表される化合物を原料として一般式(1)で表される化合物(A)を製造する場合、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとHOOC−(CH2)m−COOHで表される化合物をエステル化反応させることで得ることが出来る。これらの反応モル比は、HOOC−(CH2)m−COOHで表される化合物:1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン=1:2である。また、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンの1位に付くアルキル基は、一般式(1)で表される化合物(A)のR1及びR2に該当することから、炭素数1〜4のアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。更に、本エステル化反応は、公知のエステル化反応と同様の方法で行えばよく、公知のエステル化反応で使用可能な触媒や溶媒を使用してもよく、しなくてもよい。
HOOC−(CH2)m−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された原料としては、例えば、ヘプタン二酸ジメチル等のヘプタン二酸ジアルキル(m=5)、オクタン二酸ジメチル等のオクタン二酸ジアルキル(m=6)、ノナン二酸ジメチル等のノナン二酸ジアルキル(m=7)、デカン二酸ジメチル等のデカン二酸ジアルキル(m=8)、ウンデカン二酸ジメチル等のウンデカン二酸ジアルキル(m=9)、ドデカン二酸ジメチル等のドデカン二酸ジアルキル(m=10)、トリデカン二酸ジメチル等のトリデカン二酸ジアルキル(m=11)、テトラデカン二酸ジメチル等のテトラデカン二酸(ジアルキルm=12)等が挙げられる。これらの中でも、原料が容易に入手できることからmは6〜11が好ましく、8〜10がより好ましい。mの値が5未満の場合、基油への溶解度が低くなり潤滑油組成物としての低温時の保存安定性が低下する場合があり、mの値が12を超えると、高温時の酸化防止性能が低下する場合がある。
HOOC−(CH2)m−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物を原料として一般式(1)で表される化合物(A)を製造する場合、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとHOOC−(CH2)m−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物のエステル交換反応を行うことで得ることが出来る。これらの反応モル比は、HOOC−(CH2)m−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物:1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン=1:2である。また、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンの1位に付くアルキル基は、一般式(1)で表される化合物(A)のR1及びR2に該当することから、炭素数1〜4のアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。更に、本エステル交換反応は、公知のエステル交換反応と同様の方法で行えばよく、公知のエステル交換反応で使用可能な触媒や溶媒を使用してもよく、しなくてもよい。
一般式(2)のR3は炭素数1〜4のアルキル基を表す。こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。これらの中でも、高温時の酸化防止性能が良好或いは製造が容易であることから、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。炭素数が4を超えると、高温時の酸化防止性能が低下する場合がある。
一般式(2)のR4は炭素数1〜12のアルキル基を表す。こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等(これらの基は、直鎖でも分岐でも良い、また1級でも2級でも3級でも良い)が挙げられる。これらの中でも基油に添加した後の潤滑油組成物の低温時の保存安定性が良好なことから、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が最も好ましい。
一般式(2)のnは5〜12の数を表す。一般式(2)で表される化合物(B)は、HOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物、又はHOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化されたジエステル化合物を原料として製造されるが、nの値は当該原料に由来する。
HOOC−(CH2)n−COOHで表される原料としては、例えば、ヘプタン二酸(n=5)、オクタン二酸(n=6)、ノナン二酸(n=7)、デカン二酸(n=8)、ウンデカン二酸(n=9)、ドデカン二酸(n=10)、トリデカン二酸(n=11)、テトラデカン二酸(n=12)等が挙げられる。これらの中でも、原料が容易に入手できることからnは6〜11が好ましく、8〜10がより好ましい。nの値が5未満の場合、基油への溶解度が低くなり潤滑油組成物としての低温時の保存安定性が低下する場合があり、nの値が12を超えると、高温時の酸化防止性能が低下する場合がある。
HOOC−(CH2)n−COOHで表される化合物を原料として一般式(2)で表される化合物(B)を製造する場合、HOOC−(CH2)n−COOHで表される化合物と1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン及びR4OHで表される化合物をエステル化反応させることで得ることが出来る。これらの反応モル比は、HOOC−(CH2)n−COOHで表される化合物:1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン:R4OHで表される化合物=1:1:1であり、反応温度や原料の仕込み方法等、反応条件を適宜調整しながら一般式(2)で表される化合物(B)を製造する。また、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンの1位に付くアルキル基は、一般式(2)で表される化合物(B)のR3に該当することから、炭素数1〜4のアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。更に、R4OHで表される化合物のR4は、一般式(2)で表されるR4と同等であることから、炭素数1〜12のアルキル基を表し、これらの中でも基油に添加した後の潤滑油組成物の低温時の保存安定性が良好なことから、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が最も好ましい。本エステル化反応は、公知のエステル化反応と同様の方法で行えばよく、公知のエステル化反応で使用可能な触媒や溶媒を使用してもよく、しなくてもよい。
HOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された原料としては、例えば、ヘプタン二酸ジメチル等のヘプタン二酸ジアルキル(n=5)、オクタン二酸ジメチル等のオクタン二酸ジアルキル(n=6)、ノナン二酸ジメチル等のノナン二酸ジアルキル(n=7)、デカン二酸ジメチル等のデカン二酸ジアルキル(n=8)、ウンデカン二酸ジメチル等のウンデカン二酸ジアルキル(n=9)、ドデカン二酸ジメチル等のドデカン二酸ジアルキル(n=10)、トリデカン二酸ジメチル等のトリデカン二酸ジアルキル(n=11)、テトラデカン二酸ジメチル等のテトラデカン二酸(ジアルキルn=12)等が挙げられる。これらの中でも、原料が容易に入手できることからnは6〜11が好ましく、8〜10がより好ましい。nの値が5未満の場合、基油への溶解度が低くなり潤滑油組成物としての低温時の保存安定性が低下する場合があり、nの値が12を超えると、高温時の酸化防止性能が低下する場合がある。また、HOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物の片末端のアルキル基は、一般式(2)で表される化合物(B)のR4に該当することから、炭素数1〜12のアルキル基を表し、これらの中でも基油に添加した後の潤滑油組成物の低温時の保存安定性が良好なことから、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましく、メチル基が最も好ましい。
HOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物を原料として一般式(2)で表される化合物(B)を製造する場合、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとHOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物のエステル交換反応を行うことで得ることが出来る。これらの反応モル比は、HOOC−(CH2)n−COOHで表されるジカルボン酸化合物の両末端の水酸基がエステル化された化合物:1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン=1:1である。また、1−アルキル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンの1位に付くアルキル基は、一般式(2)で表される化合物(B)のR3に該当することから、炭素数1〜4のアルキル基であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。更に、本エステル化反応は、公知のエステル交換反応と同様の方法で行えばよく、公知のエステル交換反応で使用可能な触媒や溶媒を使用してもよく、しなくてもよい。
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上記の方法に加えて、別の公知の方法で製造することができる。また、一般式(1)で表される化合物(A)及び一般式(2)で表される化合物(B)を同じ反応系中で同時に製造してもよく、一般式(1)で表される化合物(A)及び一般式(2)で表される化合物(B)をそれぞれ製造し、後に混合して製造しても良い。なお、一般式(1)で表される化合物(A)及び一般式(2)で表される化合物(B)は、共に公知物質で、市販品として購入することも可能であり、市販品を混合し本発明の組成物を製造しても良い。
一般式(1)で表される化合物(A)及び一般式(2)で表される化合物(B)は任意の割合であれば良いが、高温時の酸化防止性能や低温時の保存安定性がより良好であることから、(A)/(B)=6/4〜9/1(質量比)であることが好ましく、(A)/(B)=7/3〜9/1(質量比)であることがより好ましい。化合物(A)の割合が多すぎると、本発明の潤滑油用添加剤組成物を基油に配合した潤滑油組成物の低温時の保存安定性が悪くなる場合や、高温での酸化防止性が不良になる場合があり、(B)の割合が多すぎると高温時の酸化防止性能を長期間維持できなくなる場合がある。
本発明の潤滑油用添加剤組成物は、上記の化合物(A)及び化合物(B)に加え、更にフェノール系酸化防止剤(C)を含有させることができ、フェノール系酸化防止剤(C)を含有させることで、本発明の高温時の酸化防止性能及びその性能を長時間持続するという効果を相乗的に向上させることが出来る。また、一般的に、フェノール系酸化防止剤は、低温での酸化防止性能に優れている。そのため、本発明の潤滑油用添加剤組成物に、フェノール系酸化防止剤を配合することにより、高温時の酸化防止性能を向上させる相乗効果に加え、低温時の酸化防止性能にも優れた潤滑油用添加剤組成物を得ることが出来、結果として添加剤全体としての酸化防止性能を向上させることができる。
フェノール系酸化防止剤(C)としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(以下、tert−ブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4 −エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2− メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6− ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3, 5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5− ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6− t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t− ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3− (3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4− ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t− ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘプチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ノニル−3−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、[3,5−ビス(1,1−ジメチル-エチル)−4−ヒドロキシ]ベンゼンプロピオン酸C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4,8−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイルビス(2−メチルプロパン−2,1−ジイル)ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルアルキルエステル、及びビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の高温時の酸化防止性能及びその性能を長時間持続するという効果を相乗的に向上させる効果が大きいことから、下記の一般式(3)で表されるフェノール系酸化防止剤が好ましい。
(Aは酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1つ以上の原子を含んでも良い炭化水素基を表わし、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表わし、pは1〜5の数を表わし、R6及びR7はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わすが、R6及びR7が同時に水素原子になることはない。)
一般式(3)のR5は炭素数1〜5のアルキレン基を表わす。こうしたアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、分岐ブチレン基、2級ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、分岐ペンチレン基、2級ペンチレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基の中でも、原料として安価であることからR5はエチレン基であることが好ましい。
pは1〜5の数を表し、製造が容易であることから、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
一般式(3)のR6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。こうしたアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等(これらの基は、直鎖でも分岐でも良い、また1級でも2級でも3級でも良い)が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、酸化防止性能が良好なことからtert−ブチル基が好ましい。また、R6及びR7は同時に水素原子になることはなく、R6及びR7が両方ともアルキル基であることが好ましい。
一般式(3)のAは酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1つ以上の原子を含んでも良い炭化水素基であればいずれの化合物から誘導したものでも良いが、一般式(3)の化合物を容易に合成できることから、Aは、A(OH)Pで表わされる1〜5価のアルコールから誘導されるものが好ましい。
A(OH)Pで表わされるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、分岐ブタノール、1級ブタノール、2級ブタノール、3級ブタノール、n-ペンタノール、分岐ペンタノール、1級ペンタノール、2級ペンタノール、3級ペンタノール、n-ヘキサノール、1級ヘキサノール、2級ヘキサノール、3級ヘキサノール、n-ヘプタノール、分岐ヘプタノール、1級ヘプタノール、2級ヘプタノール、3級ヘプタノール、n-オクタノール、分岐オクタノール、1級オクタノール、2級オクタノール、3級オクタノール、n-ノナノール、分岐ノナノール、1級ノナノール、2級ノナノール、3級ノナノール、n-デカノール、分岐デカノール、1級デカノール、2級デカノール、3級デカノール、n-ウンデカノール、分岐ウンデカノール、1級ウンデカノール、2級ウンデカノール、3級ウンデカノール、n-ドデカノール、分岐ドデカノール、1級ドデカノール、2級ドデカノール、3級ドデカノール、n-トリデカノール、分岐トリデカノール、2級トリデカノール、1級トリデカノール、2級トリデカノール、3級トリデカノール、n-テトラデカノール、分岐テトラデカノール、1級テトラデカノール、2級テトラデカノール、3級テトラデカノール、
n-ヘキサデカノール、分岐ヘキサデカノール、1級ヘキサデカノール、2級ヘキサデカノール、3級ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、分岐ヘプタデカノール、1級ヘプタデカノール、2級ヘプタデカノール、3級ヘプタデカノール、n-オクタデカノール、分岐オクタデカノール、1級オクタデカノール、2級オクタデカノール、3級オクタデカノール、n-ノナデカノール、分岐ノナデカノール、1級ノナデカノール、2級ノナデカノール、3級ノナデカノール、n-エイコサノール、分岐エイコサノール、1級エイコサノール、2級エイコサノール、3級エイコサノール、n-ドコサノール、分岐ドコサノール、1級ドコサノール、2級ドコサノール、3級ドコサノール、n-テトラコサノール、分岐テトラコサノール、1級テトラコサノール、2級テトラコサノール、3級テトラコサノール、n-ヘキサコサノール、分岐ヘキサコサノール、1級ヘキサコサノール、2級ヘキサコサノール、3級ヘキサコサノール、n-オクタコサノール、分岐オクタコサノール、1級オクタコサノール、2級オクタコサノール、3級オクタコサノール、n-トリアコンタノール、分岐トリアコンタノール、1級トリアコンタノール、2級トリアコンタノール、3級トリアコンタノール、n-ドトリアコンタノール、分岐ドトリアコンタノール、1級ドトリアコンタノール、2級ドトリアコンタノール、3級ドトリアコンタノール、n-テトラトリアコンタノール、分岐テトラトリアコンタノール、1級テトラトリアコンタノール、2級テトラトリアコンタノール、3級テトラトリアコンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール等の1価アルコール;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ソルバイド、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等の2価アルコール;
グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4−ヘキサントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、ペンタメチルグリセリン(2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグレセリン等の5価アルコールが挙げられる。
これらの中でも、潤滑油への溶解性や取り扱いが良好なことや、酸化防止効果が良好なことから、1〜3価のアルコールが好ましく、1価のアルコールがより好ましく、1価の脂肪族飽和アルコールが更に好ましい。また、同様の理由から炭素数としては、3〜20が好ましく、5〜18がより好ましく、6〜13が更に好ましい。
フェノール系酸化防止剤(C)は、任意の割合で配合すれば良いが、酸化防止性能を効率よく向上させるために、化合物(A)と化合物(B)の合計量10質量部に対して5〜20質量部配合することが好ましく、8〜15質量部がより好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、基油100質量部に対して本発明の潤滑油用添加剤組成物を0.1〜10質量部含有させたものであり、本発明の効果が得られやすいことから、0.5〜5質量部含有させたものが好ましく、0.8〜3.0質量部含有させたものがより好ましい。0.1質量部未満では良好な高温時の酸化防止性能が得られない場合があり、10質量部を超えると添加量に見合った効果が得られない場合がある。
本発明の潤滑油組成物に使用可能な基油としては、特に制限はなく従来潤滑油の基油として使用されている一般的な基油、すなわち鉱物油、化学合成油、動植物油及びこれらの混合油等が挙げられる。ここで、鉱物油としては、例えば、パラフィン基原油、中間基原油又はナフテン基原油を常圧蒸留するか、或いは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油又はこれらを常法に従って精製することによって得られる精製油、具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油及び白土処理油等が挙げられる。
化学合成油としては、エステル系合成油、合成炭化水素油、ポリグリコール系合成油、フェニルエーテル系合成油、シリコーン系合成油、フッ素系合成油等が挙げられる。
エステル系合成油としては、例えば、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキシル酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ダイマー酸及び水添ダイマー酸等の群から選択される脂肪族モノカルボン酸とメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール、ドトリアコンタノール及びこれらの分岐鎖アルコール(ゲルベアルコール)等の群から選択される炭素数1〜32の脂肪族アルコールとの反応物である脂肪酸モノエステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナン二酸及びドデカン二酸等の群から選択される脂肪族二塩基酸、若しくはその無水物と炭素数1〜32の脂肪族アルコール(上記脂肪酸モノエステルの説明で例示した炭素数1〜32の脂肪族アルコールと同等)との反応物である脂肪族二塩基酸ジエステル(ジエステル);エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、 ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジ−トリメチロールプロパン、トリ−トリメチロールプロパン、ジ−ペンタエリスリトール及びトリ−ペンタエリスリトール等の群から選択される脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸(上記脂肪酸モノエステルの説明で例示した脂肪族モノカルボン酸と同等)との反応物であるポリオールエステル;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等の群から選択される1〜6価の芳香族カルボン酸と炭素数1〜32の脂肪族アルコール(上記脂肪酸モノエステルの説明で例示した炭素数1〜32の脂肪族アルコールと同等)との反応物である芳香族エステル;炭酸エステル;ケイ酸エステル;リン酸エステル;コンプレックスエステル等が挙げられる。
合成炭化水素油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリイソブチレン(ポリブテン)等が挙げられる。ポリグリコール系合成油としては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)にエチレンオキサイド(EO)を付加重合させたブロック型のポリアルキレングリコール、エチレングリコール又はブチルアルコールに、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)のいずれか若しくは両方をランダムに付加重合させたランダム型のポリアルキレングリコール等が挙げられる。フェニルエーテル系合成油としては、例えば、m−ビス−(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、m−フェノキシフェノキシ−m−ビフェニル、モノアルキル−m−フェノキシフェノキシ−o−ビフェニル、ジアルキル−m−フェノキシフェノキシ−o−ビフェニル、モノアルキル−m−フェノキシフェノキシベンゼン等のポリフェニルエーテル、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルジフェニルチオエーテル、ジアルキルジフェニルチオエーテル等のアルキル置換フェニルエーテル等が挙げられる。シリコーン系合成油としては、一般的にシリコーンと呼ばれるものであれば問題なく、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。フッ素系合成油としては、例えば、パーフルオロポリエーテル(PFPE油)、クロロトリフルオロエチレンの低重合体(CTFE油)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE油)等が挙げられる。他にも、GTL(Gas to Liquids)、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、多環縮合ナフテン等が挙げられる。動植物油としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油及びヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油及び鯨油等の動物性油脂が挙げられる。
上記に挙げたこれらの各種基油は、一種を用いてもよく、二種以上を適宜組み合せて用いても良い。これらの基油の中でも、本発明の効果が得られやすいことから、化学合成油であることが好ましく、エステル系合成油、合成炭化水素油及びフェニルエーテル系合成油であることがより好ましく、エステル系合成油であることが更に好ましく、脂肪族二塩基酸ジエステル(ジエステル)、ポリオールエステル及び芳香族エステルであることが最も好ましい。また、本発明の潤滑油組成物の基油として、鉱物油を使用する場合は、本発明の効果が得られやすいことから、鉱物油と化学合成油の混合油であることが好ましく、鉱物油とエステル系合成油の混合油であることがより好ましく、鉱物油と脂肪族二塩基酸ジエステル(ジエステル)、ポリオールエステル及び芳香族エステルの群から選択されるエステル系合成油との混合油であることが更に好ましい。更に、鉱物油とエステル系合成油の混合油である場合には、より本発明の効果が得られやすいことから、エステル系合成油が少なくとも5質量%使用された混合油であることが好ましく、エステル系合成油が少なくとも50質量%使用された混合油であることがより好ましく、エステル系合成油が95質量%以上使用された混合油であることが更に好ましい。
本発明の潤滑油組成物はグリースとして使用することもできる。グリースとしては、本発明の潤滑油組成物に増ちょう剤を添加すればよく、また、基グリースに本発明の潤滑油用添加剤組成物を添加しても良い。使用できる基グリースとしては、上記に挙げた基油に増ちょう剤を添加すれば良い。
増ちょう剤としては、アルミニウム、バリウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム等の石鹸増ちょう剤、複合リチウム、複合カルシウム、複合アルミニウム等のコンプレックス石鹸増ちょう剤、ウレア、ジウレア、トリウレア、テトラウレア、アリールウレア、テレフタラメート等の有機非石鹸増ちょう剤、ベントナイト、シリカエアロゲル等の無機非石鹸増ちょう剤等が用いられるが、これらの増ちょう剤は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせても良い。増ちょう剤の量は特に限定されるものではないが、基油と増ちょう剤からなる基グリースに対して、通常3〜40質量%、好ましくは5〜20質量%になるように増ちょう剤を添加すれば良い。
本発明の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、公知の潤滑油用添加剤を使用目的に応じて更に適宜使用することが可能であり、例えば、摩擦低減剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、金属不活性化剤及び消泡剤が挙げられ、他にも防錆剤、乳化剤、抗乳化剤、及びかび防止剤等が配合される場合もある。
摩擦低減剤としては、例えば、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート等の有機モリブデン化合物が挙げられる。これら摩擦低減剤は、1種又は2種以上を使用してもよく、配合量は、通常、基油に対してモリブデン含量で30〜2000質量ppm、好ましくは50〜1000質量ppmである。ただし、リン原子はエンジンの触媒に悪影響を与えるので、リン原子を含有している硫化オキシモリブデンジチオフォスフェートより、硫化オキシモリブデンジチオカルバメートの使用が好ましく、炭素数8〜13のアルキル基を持つ硫化オキシモリブデンジチオカルバメートの使用がより好ましい。
摩耗防止剤、若しくは極圧剤としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリスルフィド、硫化オレフィン、ジベンジルスルフィド、エチル−3−[[ビス(1−メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネート、トリス−[(2、又は4)−イソアルキルフェノール]チオフォスフェート、3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸、トリフェニルフォスフォロチオネート、β−ジチオホスフォリル化プロピオン酸、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメイト)、O,O−ジイソプロピル−ジチオフォスフォリルエチルプロピオネート、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブタンチオ)1,3,4−チアジアゾール、及び2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール等の硫黄系添加剤;モノオクチルフォスフェート、ジオクチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、モノフェニルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、モノイソプロピルフェニルフォスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フォスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)フォスフェート、モノ(tert−ブチルフェニル)フォスフェート、ジ(tert−ブチルフェニル)フォスフェート、トリ(tert−ブチルフェニル)フォスフェート、トリフェニルチオフォスフェート、モノ(tert−ブチルフェニル)ジフェニルフォスフェート、ジ(tert−ブチルフェニル)モノフェニルフォスフェート、(ジ−tert−ブチルフェニル)ジフェニルフォスフェート、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)モノフェニルフォスフェート、トリス(ジ−tert−ブチルフェニル)フォスフェート、モノオクチルフォスファイト、ジオクチルフォスファイト、トリオクチルフォスファイト、モノブチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、モノフェニルフォスファイト、ジフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、モノイソプロピルフェニルフォスファイト、ジイソプロピルフェニルフォスファイト、トリイソプロピルフェニルフォスファイト、モノ−tert−ブチルフェニルフォスファイト、ジ−tert−ブチルフェニルフォスファイト、及びトリ−tert−ブチルフェニルフォスファイト、縮合リン酸エステル等のリン系化合物;ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオリン酸金属塩、ジチオカルバミン酸金属塩、ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、リン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、及び亜リン酸エステル金属塩等の有機金属化合物;その他、ホウ素化合物、モノ及びジヘキシルフォスフェートのアルキルアミン塩、リン酸エステルアミン塩、及びトリフェニルチオリン酸エステルとtert−ブチルフェニル誘導体の混合物等が挙げられる。これら摩耗防止剤、若しくは極圧剤の配合量は、通常、基油に対して0.01〜2質量%、好ましくは0.05〜1質量%である。尚、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)は磨耗防止剤としての機能や酸化防止剤としての機能も併せ持つ。
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルフォネート、フェネート、サリシレート、フォスフェート及びこれらの過塩基性塩が挙げられる。これらの中でも過塩基性塩が好ましく、過塩基性塩の中でもTBN(トータルベーシックナンバー)が30〜500mgKOH/gのものがより好ましい。更に、リン及び硫黄原子のないサリシレート系の清浄剤が好ましい。これらの清浄剤の配合量は、通常、基油に対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。
無灰分散剤としては、滑油に用いられる任意の無灰分散剤であれば特に制限なく用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖、若しくは分枝状のアルキル基、又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物、又はその誘導体等が挙げられる。具体的には、コハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド、ベンジルアミン、ポリアミン、ポリコハク酸イミド及びマンニッヒ塩基等が挙げられる。その誘導体としては、これら含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物、チオリン酸、チオリン酸塩等のリン化合物、有機酸、及びヒドロキシポリオキシアルキレンカーボネート等を作用させたもの等が挙げられる。アルキル基、又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の基油に対する溶解性が低下する場合があり、一方、アルキル基、又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する場合がある。これらの無灰分散剤の配合量は、通常、基油に対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。
摩擦調整剤としては、例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、及びラウリルアルコール等の高級アルコール類;オレイン酸、ステアリン酸、及びラウリン酸等の脂肪酸類;オレイン酸グリセリルエステル、ステアリン酸グリセリルエステル、ラウリン酸グリセリルエステル、アルキルグリセリルエステル、アルケニルグリセリルエステル、アルキニルグリセリルエステル、エチレングリコールオレイン酸エステル、エチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールラウリン酸エステル、プロピレングリコールオレイン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、及びプロピレングリコールラウリン酸エステル等のエステル類;オレイルアミド、ステアリルアミド、ラウリルアミド、アルキルアミド、アルケニルアミド、及びアルキニルアミド等のアミド類;オレイルアミン、ステアリルアミン、ラウリルアミン、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、ココビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、牛脂ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(2−ヒドロキシヘキサデシル)ジエタノールアミン、及びジメチル牛脂三級アミン等のアミン類;オレイルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、アルケニルグリセリルエーテル、及びアルキニルグリセリルエーテル等のエーテル類が挙げられる。これら摩擦調整剤の配合量は、通常、基油に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%である。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1〜18)アルキルメタクリレート、(C1〜18)アルキルアクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ジメチルアミノエチルメタクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、エチレン/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体、オレフィンコポリマー(OCP)、及びスターポリマー等が挙げられる。或いは、分散性能を付与した分散型、若しくは多機能型粘度指数向上剤を用いても良い。重量平均分子量は、通常、10,000〜1,500,000、好ましくは20,000〜500,000程度である。これらの粘度指数向上剤の配合量は、通常、基油に対して0.1〜20質量%。好ましくは0.3〜15質量%である。
流動点降下剤としては、例えば、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアセテート等が挙げられ、重量平均分子量は、通常、1000〜100,000、好ましくは5000〜50,000程度である。これらの流動点降下剤の配合量は、通常、基油に対して0.005〜3質量%、好ましくは0.01〜2質量%である。
防錆剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類アミン塩、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100〜300程度)、ソルビタンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、及びラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。これらの防錆剤の配合量は、通常、基油に対して0.01〜3質量%、好ましくは0.02〜2質量%である。
腐食防止剤、金属不活性化剤としては、例えば、トリアゾール、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、又はこれら化合物の誘導体である、2−ヒドロキシ−N−(1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)ベンズアミド、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−[(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]アミン、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−[(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]アミン、及び2,2’−[[(4、又は5、又は1)−(2−エチルヘキシル)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチル]イミノ]ビスエタノール等が挙げられ、他にもビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、テトラアルキルチウラムジサルファイド、N’1,N’12−ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジハイドラジド、3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)−N’−(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロパノイル)プロパンハイドラジド、テトラプロぺニルコハク酸と1,2−プロパンジオールのエステル化物、ジソディウムセバケート、(4−ノニルフェノキシ)酢酸、モノ及びジヘキシルフォスフェートのアルキルアミン塩、トリルトリアゾールのナトリウム塩、及び(Z)−N−メチルN−(1−オキソ9−オクタデセニル)グリシン等が挙げられる。これら腐食防止剤の配合量は、通常、基油に対して0.01〜3質量%、好ましくは0.02〜2質量%である。
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、及びソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの消泡剤の配合量は、通常、基油に対して0.001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%である。
本発明の潤滑油組成物は、長期間高温での酸化防止性能を維持することができるので、潤滑の用途であればいずれにも使用することができる。具体的な用途としては、例えば、エンジン油、ギヤー油、タービン油、作動油、難燃性作動液、冷凍機油、コンプレッサー油、真空ポンプ油、軸受油、絶縁油、しゅう動面油、ロックドリル油、金属加工油、塑性加工油、熱処理油及び各種グリース等の潤滑油に使用することができる。これらの中でも、長期間高温での酸化防止性能を維持することが要求され、且つ、潤滑油の交換頻度を少なくしたいという要望が大きいエンジン油及びグリースに使用することが好ましい。ここで、エンジン油用添加剤は、低温での基油への溶解性が悪いと、フィルター等の目詰まりやスラッジ等の原因になる場合があり、また、グリース用添加剤は、低温での基油への溶解性が悪いと、機械作動時に固体による異音を発生する場合がある。よって低温での溶解性にも優れた本発明の潤滑油組成物はエンジン油用添加剤及びグリース用添加剤として使用しても当該問題を生じないため好ましい。
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。
以下のサンプル及び基油を用いて実験を行った。
A−1:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
一般式(1)において、R1及びR2がメチル基、m=8
A−2:ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
一般式(1)において、R1及びR2が水素原子、m=8
B−1:モノ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・モノ(メチル)セバケート
一般式(2)において、R3及びR4がメチル基、n=8
B−2:モノ(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・モノ(メチル)セバケート
一般式(2)において、R3が水素原子、R4がメチル基、n=8
C−1:ジオクチルフェニルアミン
C−2:3−(4−ヒドロキシ−3、5−ジターシャリブチルフェニル)プロピオン酸オクチル
基油1 :アジピン酸のジイソトリデシルエステル
基油2 :ペンタエリスリトールのデカン酸及び2−エチルヘキシル酸のテトラエステル
基油3 :トリメリット酸のトリ(2-エチルヘキシル)エステル
基油4 :ピロメリット酸のテトラ(2−エチルヘキシル)エステル
基油5 :基油1(95%)+基油11(5%)
基油6 :基油1(50%)+基油11(50%)
基油7 :基油1(5%)+基油11(95%)
基油8 :基油2(95%)+基油11(5%)
基油9 :基油2(50%)+基油11(50%)
基油10:基油2(5%)+基油11(95%)
基油11:動粘度4.4mm2/S(100℃)、22.7mm2/S(40℃)、粘度指数=102の鉱物油
基油12:動粘度21.0mm2/S(40℃)のポリαオレフィン
上記のサンプルを表1の配合表の割合(質量比)に従って配合して、本発明品及び比較品を配合した。
<酸化防止試験>
本発明品1〜4及び比較品1〜8のサンプルを1質量%になるように基油1〜基油10のいずれかに添加した試料を、100mlビーカーにそれぞれ50g精秤し、試料の入ったビーカーを180℃の恒温槽静置し、1週間ごとに試料の重量を測定して基油の蒸発率(試料全体に対する蒸発した基油の割合)を算定した。蒸発率が小さいほどサンプルの酸化防止性能が良好となる。
<保存安定性試験>
基油12に本発明品1〜4及び比較品1〜8を1質量%になるように添加した試料を、100mlビーカーにそれぞれ50g精秤し、試料の入ったビーカーを−10℃の恒温槽に3日間静置し、3日後に試料の状態を目視で確認した。添加剤の溶解性、すなわち低温での保存安定性が悪いと、試料が白濁するか、或いは沈殿物を確認することができる。以下の判断基準で評価した。
○:透明
×:白濁或いは沈殿物が確認できる
本発明品は180℃という高温にもかかわらず、長期間酸化防止性能を維持し、潤滑油の蒸発を防ぐことが確認できた。更に、低温での保存安定性も良好であった。高温時の酸化防止性が低いフェノール系化合物(比較品6)は、基油のみと比較してほとんど効果がないことが確認できるが、本発明品4を見るとフェノール系化合物の添加による相乗効果が確認できる。尚、低温での保存安定性試験において、基油12を選択した理由としては、潤滑油用の基油の中でも最も添加剤の溶解性が悪いことが予測されたからである。そのような基油中においても、本発明の潤滑油添加剤組成物は良好な溶解性を示している。