以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における車両用空調装置100の概略構成を示す模式図である。図1に示す車両用空調装置100は、例えば、走行用内燃機関であるエンジン30を備える車両に搭載されて、車両の室内すなわち車室内を空調する。エンジン30は、車両に搭載された発熱機器としても機能する。
図1に示すように、車両用空調装置100は、空調ダクト10、冷凍サイクル装置1、冷却水回路31、ヒータコア34、エアミックスドア装置17、吹出モードドア21〜23、図2に示した制御部としてのエアコン電子制御装置50(以下、エアコンECU50という場合がある)、内外気切替ドア13(図2参照)、および、ブロワ14(図2参照)等を備えている。
空調ダクト10は、内部に車室内へ吹き出す空調空気を導く空気通路10aを形成する。空調ダクト10は、車室内の前方付近に設けられている。空調ダクト10の最も上流側には、内外気切替箱を構成する部分であり、車室内の空気(以下、内気ともいう)を取り入れる内気吸込口、及び車室外の空気(以下、外気ともいう)を取り入れる外気吸込口が形成された不図示の内外気切替箱が設けられている。
その内外気切替箱の内気吸込口および外気吸込口は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動される内外気切替ドア13(図2参照)によって開閉され、車両用空調装置100の吸込口モードが、内外気切替ドア13の作動によって内気循環モードまたは外気導入モードに切り替えられる。そして、内外気切替箱からの空気である外気又は内気は、ブロワ14(図2参照)によって矢印FLinのように空気通路10aへ流入させられる。
空調ダクト10の最も下流側には、吹出口切替箱を構成する部分であり、デフロスタ開口部、フェイス開口部およびフット開口部が形成されている。デフロスタ開口部には、デフロスタダクトが接続されて、デフロスタダクトの最下流端には、車両のフロント窓ガラスの内面に向かって主に温風を吹き出すデフロスタ吹出口18が開口している。フェイス開口部には、フェイスダクトが接続されて、フェイスダクトの最下流端には、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出すフェイス吹出口19が開口している。さらに、フット開口部には、フットダクトが接続されて、フットダクトの最下流端には、乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出すフット吹出口20が開口している。
各吹出口18、19、20の内側には、それぞれの開口部を開閉するデフロスタドア21、フェイスドア22、フットドア23が回動自在に取り付けられている。これらのドア21、22、23は、サーボモータ等のアクチュエータによりそれぞれ駆動されて、吹出口モードをフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、またはデフロスタモードの何れかに切り替えることが可能となっている。デフロスタドア21、フェイスドア22、およびフットドア23は、吹出モード切替装置である。
ブロワ14(図2参照)は、空調ダクト10内に空気流を発生させる電動送風機であり、羽根車を回転駆動する電動モータの回転速度は、その電動モータへの印加電圧に応じて決定される。そして、その電動モータへの印加電圧はエアコンECU50(図2参照)からの制御信号に基づいて制御され、その印加電圧の制御によってブロワ14の送風量は制御される。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、圧縮機2、凝縮器3、補助熱交換器としての過冷却用熱交換器4、減圧装置5、および蒸発器6を順に、冷媒配管9で環状に接続して構成されている。これにより、圧縮機2から吐出された冷媒が凝縮器3と過冷却用熱交換器4と減圧装置5と蒸発器6とを順に経て圧縮機2へ戻る冷媒回路が構成されている。なお、補助熱交換器とは、他の熱交換器よりも少ない熱交換量を補うものに限定されるものではない。例えば、過冷却用熱交換器4の熱交換量が凝縮器3の熱交換量より大きくても構わない。
圧縮機2は冷媒吸入口2aと冷媒吐出口2bとを有し、冷媒吸入口2aから吸入した冷媒を圧縮し、その圧縮した冷媒を冷媒吐出口2bから吐出する。凝縮器3は、圧縮機2が吐出した冷媒を外気との熱交換により凝縮させる。過冷却用熱交換器4は、凝縮器3で凝縮された冷媒を更に冷却する。具体的には、過冷却用熱交換器4は、凝縮器3から流出した冷媒を、蒸発器6の空気流れ下流側に配置されたヒータコア34より流出する冷却水との熱交換により更に冷却する。減圧装置5は、過冷却用熱交換器4で冷却された冷媒を減圧膨張させる。蒸発器6は、減圧装置5が減圧した冷媒を蒸発気化させる。
圧縮機2は、例えば車両のエンジンルーム内に設けられている。圧縮機2は、エンジン30に連結されており、エンジン30の駆動力により駆動される。また、圧縮機2は電磁クラッチ2cを有しており、その電磁クラッチ2cによってエンジン30からの駆動力伝達が断続される。電磁クラッチ2cの断続はエアコンECU50によって制御される。
凝縮器3は、例えば、車両のエンジンルーム前方等の車両が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に設けられ、内部を流れる冷媒と室外ファンにより送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器である。
冷凍サイクル装置1には、凝縮器3と過冷却用熱交換器4との間に、例えば気液分離器を設けることができる。この気液分離器は、凝縮器3から流出した冷媒を気液分離して液相冷媒のみを下流に流すとともに、余剰冷媒を内部に貯留する。凝縮器3が凝縮部と過冷却部とを有する所謂サブクールコンデンサである場合には、気液分離器を凝縮器3の凝縮部と過冷却部との間に設けることができる。
冷却水回路31は、エンジン30、ヒータコア34、過冷却熱交換器4とを繋ぐ熱媒体回路である。冷却水回路31には、ウォータポンプ32および第1流路切替装置としての流路切替弁33が設けられている。
ウォータポンプ32は、エンジン30を冷却するための冷却水を冷却水回路31内に循環させるものである。
流路切替弁33は、エアコンECU50からの指示に応じて、過冷却熱交換器4より流出した冷却水がエンジン30を経由することなくウォータポンプ32を介してヒータコア34へ流入する流路(閉回路)と、過冷却熱交換器4より流出した冷却水がエンジン30およびウォータポンプ32を経由してヒータコア34へ流入する流路(開回路)の切り替えを行う。
ヒータコア34は、エンジン30から受熱してエンジン30を冷却する熱媒体である冷却水が内部を流れる。ヒータコア34は、車両に搭載されたエンジン30を冷却する冷却水との熱交換により、蒸発器6で冷却された空気を加熱する加熱装置である。
蒸発器6は、空調ダクト10内の空気通路10aにおいて、ブロワ14(図2参照)よりも空気流れ下流側に配置されている。詳細には、蒸発器6は、ブロワ14直後の通路全体を横断するように配置されている。そのため、蒸発器6は、ブロワ14から吹き出された空気全部が通過するようになっている。そして、蒸発器6は、空気通路10aを流れる空気を、減圧装置5で減圧された冷媒との熱交換により冷却する。すなわち、蒸発器6は、内部を流れる冷媒と空気通路10aを流れる空気との間で熱交換が行われて当該空気を冷却する空気冷却作用及び自身を通過する空気を除湿する空気除湿作用を行う室内熱交換器である。
蒸発器6の空気流れ下流側において、空気通路10aは分岐点10cで2つに分岐している。分岐点10cよりも空気流れ下流側では、空気通路10aは加熱用通路15と冷風バイパス通路16となっている。加熱用通路15には、ヒータコア34が配置されている。ヒータコア34は、加熱用通路の全体を横断するように配置されている。
過冷却熱交換器4は、凝縮器3より流出して減圧装置5に流入する冷媒を、ヒータコア34より流出する冷却水との熱交換により冷却する熱交換器である。過冷却熱交換器4は、例えば、車両のエンジンルーム等、空調ダクト10あるいは車両空調用ユニット(HVAC)の外部に設置される。
ヒータコア34は空調ダクト10内の蒸発器6の空気流れ下流側に配置されるため、冷房動作時、ヒータコア34より流出する冷却水は外気温よりも低い温度(例えば、5℃)まで冷却される。過冷却熱交換器4は、凝縮器3より流出して減圧装置5に流入する冷媒を、ヒータコア34で冷却された冷却水との熱交換により更に冷却する。
冷風バイパス通路16は、ヒータコア34をバイパスして空気を流通する通路である。加熱用通路15と冷風バイパス通路16の分岐点10cの近傍には、エアミックスドア17が配置されている。
エアミックスドア17は、加熱用通路15を通過する空気と冷風バイパス通路16を通過する空気との風量割合を調節する風量割合調節装置である。エアミックスドア17は、例えばアクチュエータ等によりそのドア本体の位置を変化させて、空調ダクト10内の蒸発器6よりも下流の配風を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する。
加熱用通路15および冷風バイパス通路16の空気流れ下流側には、加熱用通路15からの温風と冷風バイパス通路16からの冷風とを混合可能な冷温風混合空間が形成されている。前述したデフロスタ開口部、フェイス開口部およびフット開口部は、この冷温風混合空間に臨むように形成されており、冷温風混合空間からの風が各開口部に流入可能となっている。
次に、本実施形態の制御系の構成を図3に基づいて説明する。エアコンECU50には、車室内前面に設けられた操作パネル51上の温度設定スイッチ等の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。
また、空調起動スイッチ52が操作パネル51と共に車室内前面に設けられている。この空調起動スイッチ52は、エアコン運転の起動(オン)と停止(オフ)とを切り替えるために乗員に操作されるエアコンスイッチである。空調起動スイッチ52は、エアコン運転を起動させるエアコンオン位置と、エアコン運転を停止させるエアコンオフ位置との2つの操作位置の何れかに切り替えられる。そして、空調起動スイッチ52の操作位置を示す信号もエアコンECU50に入力される。エアコン運転とは例えば冷房運転または除湿運転であり、少なくとも蒸発器6で空調空気を冷却する空調運転である。
ここで、上記の各センサとしては、例えば図2に示したように、内気温センサ40、外気温センサ41、日射センサ42、エバ温度センサ43、水温センサ44、および過冷却温度センサ45等がある。内気温センサ40は、車室内の空気温度TR(以下、内気温TRと言う場合がある)を検出する。外気温センサ41は、車室外の空気温度TAM(以下、外気温TAMと言う場合がある)を検出する。日射センサ42は、車室内に照射される日射量TSを検出する。エバ温度センサ43は、蒸発器6の外表面温度もしくは蒸発器6で冷却された空気温度TEを蒸発器6の温度として検出する。水温センサ44は、ヒータコア34に流入する冷却水の温度TWすなわち冷却水温TWを検出する。過冷却温度センサ45は、過冷却用熱交換器4の外表面温度もしくは過冷却用熱交換器4で加熱された空気温度TSCを検出する。
エアコンECU50の内部には、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピータが設けられ、各センサ40〜45からのセンサ信号は、エアコンECU50内の図示しない入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
車両用空調装置100を制御する制御部としてのエアコンECU50は、操作パネル51の各スイッチからの入力信号および各センサ40〜45からの入力信号等に基づいて、後述する手順に従って、対象装置の作動制御を行うようになっている。対象装置としては、内外気切替ドア13、ブロワ14、エアミックスドア装置17、吹出モードドア21〜23、圧縮機2、減圧装置5等がある。なお、減圧装置5が、例えば冷媒温度感温式の膨張弁装置である場合には、エアコンECU50は減圧装置5の作動制御は行わない。
次に、上記構成に基づき、本実施形態の車両用空調装置100の作動について説明する。エアコンECU50は、車両のイグニッションスイッチがオンにされると動作状態になり、ウォータポンプ32に動作の開始を指示するとともに、図3のフローチャートに示す制御処理を周期的に繰り返し実行する。図3は、エアコンECU50の制御処理を示す第1のフローチャートである。なお、各図面のフローチャートにおける各制御ステップは、本車両用空調装置100が有する各種の機能実現手段を構成している。
図3に示すように、エアコンECU50は、まず、ステップS01にて各種設定を初期化する。次に、ステップS02にて、空調起動スイッチ52の操作位置がエアコンオン位置になっているか否かを判断する。ステップS02において、空調起動スイッチ52の操作位置がエアコンオン位置になっていると判断した場合には、ステップS03へ進む。その一方で、空調起動スイッチ52の操作位置がエアコンオン位置ではないと判断した場合には、ステップS04へ進む。
ステップS03では、エアコン運転を実行する。そして、エアコン運転で実行する制御処理の1つとして、後述の図4のフローチャートに示す制御処理を実行する。図4のフローチャートが終了すると、図3のフローチャートの実行ステップはステップS02に戻る。
図3のステップS04では、エアコンECU50は、例えば圧縮機2をオフにしてエアコン運転を停止する。ステップS04が終わると、図3のフローチャートは終了し、再びステップS01から開始する。
図4は、エアコンECU50の制御処理を示す第2のフローチャートであって、図3のステップS03で実行されるサブルーチンを示したフローチャートである。図4のフローチャートでは、エアコンECU50は、まず、ステップS101にて操作パネル51の各スイッチからスイッチ信号を読み込むとともに、各センサ40〜45等からのセンサ信号を読み込む。そして、次に、ステップS102にて、車室内へ吹き出す空気の温度目標値である目標吹出温度TAOを、予めROMに記憶された演算式に基づいて算出する。目標吹出温度TAOは、例えば、内気温TR、外気温TAM、日射量TS、および車室内設定温度Tsetに基づいて算出される。
ステップS102において、目標吹出温度TAOを算出すると、ステップ103にて、車室内への吹き出し温度をTAOとするために温風割合の増加が必要であるか否かを判断する。例えば、エアコンECU50は、目標吹出温度TAOとエバ温度センサ43によって検出される空気温度TEとを比較し、目標吹出温度TAOがその空気温度TEよりも高い場合(TAO>TE)には、温風風量を増加する必要があると判断する。
ここで、温風割合の増加が必要であると判断した場合には、ステップS104へ進み、加熱用通路15の開度が上昇するようにドア17を開方向に制御する。
また、温風割合の増加が必要でないと判断した場合には、ステップS105へ進み、加熱用通路15の開度が低下するようにドア17を閉方向に制御する。
ステップS105またはステップS104の制御が実施されると、ステップS106にて、冷却水の加熱が必要か否かを判定する。
本実施形態では、目標吹出温度TAOが、外気温センサ41で検出される外気温TAM以上の場合、冷却水の加熱が必要であると判定し、目標吹出温度TAOが外気温TAM未満の場合、冷却水の加熱が必要でないと判定する。
ここで、目標吹出温度TAOが外気温TAM未満となっている場合、ステップS107へ進み、過冷却熱交換器4より流出した冷却水が、エンジン30を経由することなくヒータコア34を経由して過冷却熱交換器4へ流入する閉回路となるように流路切替弁33を制御する。これにより、過冷却熱交換器4より流出した冷却水はエンジン30を経由することなくウォータポンプ32を通ってヒータコア34に流入するようになる。
なお、過冷却熱交換器4より流出した冷却水がエンジン30を経由する構成では、エンジン30の熱で冷却水の温度が高温となりヒータコア34より流出する冷却水の温度が凝縮器3より出力される冷媒の温度よりも高くなってしまう場合がある。この場合、かえって冷凍サイクル装置1の冷房能力および運転効率が低下してしまう。
ここでは、過冷却熱交換器4より流出した冷却水がエンジン30を経由することなくウォータポンプ32を通ってヒータコア34に流入するようになるため、かえって冷凍サイクル装置1の冷房能力および運転効率が低下してしまうといったことを防止することができる。
また、目標吹出温度TAOが基準温度以上となっている場合には、ステップS108へ進み、過冷却熱交換器4より流出した冷却水が、エンジ30およびヒータコア34を経由して過冷却熱交換器4へ流入する開回路となるように流路切替弁33を制御する。これにより、過冷却熱交換器4より流出した冷却水は、更にエンジン30で暖められてヒータコア34に流入されるようになり、速やかに吹出温度を目標吹出温度TAOにまで上昇させられる。
上記した構成によれば、空調ダクト10の外部に配置され、凝縮器3より流出して減圧装置5に流入する冷媒とヒータコア34で冷却された冷却液との熱交換により、凝縮器3より流出した冷媒を冷却する過冷却熱交換器4を備えたので、凝縮器3より流出して減圧装置5に流入する冷媒を、過冷却熱交換器4で更に冷却することができる。これにより、蒸発器6への流入冷媒と蒸発器6からの流出冷媒との間のエンタルピ差を大きく確保することができる。
また、流路切替弁33を制御して、過冷却熱交換器4より流出した冷却液が、エンジン30を経由することなくヒータコア34を経由して過冷却熱交換器4へ流入する流路と、エンジン30およびヒータコア34を経由して過冷却熱交換器4へ流入する流路と、を切り替えることができる。
また、上記したように、目標吹出温度に基づいて冷却水を加熱する必要があるか否かを判定し、冷却水を加熱する必要がないと判定された場合、過冷却熱交換器4より流出した冷却液が、エンジン30を経由することなくヒータコア34を経由して過冷却熱交換器4へ流入する流路となるように流路切替弁33を制御することで、例えば、エンジン30の熱で冷却水の温度が高温となりヒータコア34より流出する冷却水の温度が凝縮器3より出力される冷媒の温度よりも高くなってしまい、過冷却熱交換器4によって、かえって冷凍サイクル装置1の冷房能力および運転効率が低下してしまうといったことを防止することができる。
また、冷却水を加熱する必要があると判定された場合、過冷却熱交換器4より流出した冷却液が、エンジン30およびヒータコア34を経由して過冷却熱交換器4へ流入する流路となるように流路切替弁33を制御することで、過冷却熱交換器4より流出した冷却水は更にエンジン30で暖められてヒータコア34に流入されるようになり、速やかに車室内の温度を上昇させられる。
ここで、冷凍サイクル装置1を循環する冷媒の状態変化、蒸発器6への流入冷媒と蒸発器6からの流出冷媒との間のエンタルピ差および空調ダクト10内を流れる空調空気の温度変化などについて、図5〜9を用いて説明する。図5は、冷凍サイクル装置1を循環する冷媒の状態の一例を示す圧力−エンタルピ線図である。
図5に冷凍サイクル装置1中の冷媒状態を示すように、圧縮機2による圧縮に伴いPA点からPB点へ圧力およびエンタルピが上昇させられた気相冷媒は、凝縮器3で放熱されて凝縮する。そして、凝縮器3から流出した冷媒がPC点に示す状態であるとすると、過冷却用熱交換器4に通風され過冷却用熱交換器4が熱交換可能となっている場合には、過冷却用熱交換器4から流出した冷媒はPD点に示す状態となる。すなわち、減圧装置5で減圧される前に、過冷却用熱交換器4で冷媒のエンタルピは大きく低下する。
これにより、蒸発器6への流入冷媒と蒸発器6からの流出冷媒との間のエンタルピ差、すなわち図5のPE点とPA点との間のエンタルピ差が大きく確保され、冷凍サイクル装置1の冷房能力および運転効率COPを大きく向上することができる。すなわち、過冷却用熱交換器4によって省動力効果を得ることができる。
例えば、図5に一部を破線L1で示したサイクルは、過冷却用熱交換器4を備えていない従来例のものであるが、その従来例に対して、本実施形態では過冷却用熱交換器4での熱交換により破線L1が実線L2へと移り、上記エンタルピ差の拡大が図られて省動力効果を生じている。
凝縮器3の冷媒凝縮温度は、例えば外気温度に対して10〜20℃高く、外気温度が35℃のときには45〜55℃程度となる。凝縮器3が所謂サブクールコンデンサである場合には、凝縮器3の出口冷媒は凝縮温度に対して約10℃ほど低下し、PC点の冷媒温度は35〜45℃となる。モリエル線図上において凝縮温度を50℃、凝縮器3の過冷却部によるサブクールを10℃、蒸発器6側の温度を0℃として、過冷却用熱交換器4によって冷媒温度を10℃にまで低下させた場合には、本実施形態の冷凍サイクル装置1の効率COPは5.99となる。
これに対し、過冷却用熱交換器4を有さない上記従来例の冷凍サイクル装置では、減圧装置5へ流入する冷媒の温度が外気温度よりも低くはならないので、その冷凍サイクル装置の効率COPは4.43となる。このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1によれば、大幅な効率向上が達成される。要するに、本実施形態では、減圧装置5へ流入する冷媒の温度を過冷却用熱交換器4での冷媒の冷却により外気温度よりも低くすることができるので、その分、蒸発器6において冷媒へ与えられるエンタルピが大きくなる。その結果として冷凍サイクル装置1の大幅な効率向上が達成される。なお、上記効率COPに関する結果は、冷媒をR1234yf、圧縮効率、体積効率を1とした場合の理論効率である。
図6に、比較例として空調ダクト810内に過冷却熱交換器4を備えた構成を示す。図6の比較例では、空調ダクト810内に設けられた加熱用通路815に過冷却熱交換器84とヒータコア834が配置されている。また、ヒータコア834は、過冷却熱交換器84の空気流れ下流側に配置されている。
図6に示すような構成では、エンジンの放熱量が高く、エンジンを冷却する冷却水の温度が高くなると、加熱用通路15の開度が低下するようにエアミックスドア817が制御される。このため、過冷却熱交換器4に流れる空気の風量が少なくなる。その結果、過冷却用熱交換器4で熱交換される空気の流量も低下し、過冷却用熱交換器4による省動力効果が小さくなる。
これに対し、図1に示した本実施形態に係る車両用空調装置100は、空調ダクトの外部に配置された過冷却熱交換器4により、凝縮器3より流出して減圧装置5に流入する冷媒が更に冷却される構成となっているので、加熱用通路15に流れる空気の風量と関係なく、過冷却用熱交換器4による最大限の省動力効果を得ることが可能である。
図7は、過冷却用熱交換器4における冷媒から空気への放熱量と冷凍サイクル装置1の省動力効果との関係を示した図である。図に示すように、過冷却用熱交換器4により得られる省動力効果は、過冷却用熱交換器4での放熱量に比例する。すなわち、過冷却用熱交換器4での放熱量が大きくなるほど、過冷却用熱交換器4により得られる省動力効果も大きくなる。
ところで、自動車のキャビンの温度を調整する温度調節装置として、特許第4889906号公報に記載されたものがある。この温度調節装置は、ヒートポンプを備えている。このヒートポンプは、液体冷却剤が循環する第1の二次回路に設けられた第1の冷媒/冷却剤熱交換器を含む低温源と、別の液体冷却剤が循環する第2の二次回路に設けられた第2の冷媒/冷却剤熱交換器を含む高温源と、低温源で気化した冷媒を圧縮して高温源へ送るコンプレッサと、高温源で冷却された冷媒を減圧することにより、冷媒を液体の状態で低温源へ送る膨張弁と、を備えている。そして、このヒートポンプは、第2の冷媒/冷却剤熱交換器を含む高温源自体の熱を利用して第2の二次回路を流れる冷却水を加熱して暖房を行うようになっている。
しかしながら、このヒートポンプは、凝縮器に相当する高温源自体の熱を利用して第2の二次回路を流れる冷却水を加熱するものであり、高温源より流出した冷媒を蒸発器6の吹出温度程度まで冷却するような構成となっていないので、本実施形態における車両用空調装置100のような省動力効果を得ることはできない。
これに対し、本実施形態における車両用空調装置100では、凝縮器3より流出して減圧装置5に流入する冷媒が、過冷却熱交換器4で更に蒸発器6の吹出温度程度まで冷却されるので、大きな省動力効果を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。後述の第3実施形態以降でも同様である。
図8は、本発明の第2実施形態における車両用空調装置100の概略構成を示す模式図である。上記第1実施形態では、冷却水回路31内に流路切替弁33を設け、この流路切替弁33を制御して流路の切替を行うようにしたが、本実施形態では、流路切替弁33に代えて冷却水回路31内に、第2流路切替装置としての流路切替弁33a、33bを設け、各流路切替弁33a、33bを制御して流路の切替を行う。
各流路切替弁33a、33bは、ヒータコア34より流出した冷却水が、過冷却熱交換器4を通過する第1流路65aを流れるようにするか、過冷却熱交換器4を迂回する第2流路65bを流れるようにするかの切替を行う。各流路切替弁33a、33bは、エアコンECU50により制御される。
第1流路65aは、流路切替弁33aが第2流路65bを閉じると共に流路切替弁33bが第2流路65bを閉じることで成立し、第2流路65bは、流路切替弁33aが第1流路65aを閉じると共に流路切替弁33bが第1流路65aを閉じることで成立する。すなわち、各流路切替弁33a、33bを開閉制御することで、第1、第2流路65a、65bを択一的に容易に成立させることが可能である。
本発明の第2実施形態に係るエアコンECU50のフローチャートを図9に示す。本実施形態では、エアコンECU50が実行するフローチャートは、第1実施形態のフローチャートである図4に対して、S106より後のステップが異なる。すなわち、図9に示すフローチャートは、図4に示したフローチャートのステップS107、S108に代えて、S207、S208を実施するようになっている。
本実施形態において、エアコンECU50は、ステップS106にて、冷却水の加熱が必要であるか否かを判定する。具体的には、目標吹出温度TAOが、外気温センサ41で検出される外気温TAM以上の場合、冷却水の加熱が必要であると判定し、目標吹出温度TAOが外気温TAM未満の場合、冷却水の加熱が必要でないと判定する。
ここで、目標吹出温度TAOが外気温TAM未満となっている場合、ステップS207へ進み、ヒータコア34より流出した冷却水を過冷却熱交換器4に経由させるように各流路切替弁33a、33bを制御する。これにより、ヒータコア34より流出した冷却水は、過冷却熱交換器4、エンジン30およびウォータポンプ32を経由してヒータコア34へ流入する第1流路65aを流れるようになる。
したがって、過冷却熱交換器4により、凝縮器3より流出した冷媒の温度を外気温よりも低下させることができ、冷凍サイクル装置1の冷房能力および運転効率を向上するとができる。
また、目標吹出温度TAOが外気温TAM以上となっている場合には、ステップS208へ進み、ヒータコア34より流出した冷却水を過冷却熱交換器4に経由させないように各流路切替弁33a、33bを制御する。これにより、ヒータコア34より流出した冷却水は、過冷却熱交換器4を経由することなくエンジン30、ウォータポンプ32を経由してヒータコア34へ流入する第2流路65bを流れるようになる。したがって、高温の冷却水が過冷却熱交換器4へ流入しないようにすることができる。
上記したように、流路切替弁33a、33bを制御して、ヒータコア34より流出した冷却液が、過冷却熱交換器4およびエンジン30を経由してヒータコア34へ流入する第1流路65aと、過冷却熱交換器4を経由することなくエンジン30を経由してヒータコア34へ流入する第2流路65bと、を切り替えることができる。
また、上記したように、目標吹出温度に基づいて冷却水を加熱する必要があるか否かを判定し、冷却水を加熱する必要がないと判定された場合、ヒータコア34より流出した冷却液が、過冷却熱交換器4およびエンジン30を経由してヒータコアへ流入する第1流路65aとなるように流路切替弁33a、33bを制御することで、例えば、エンジン30の熱で冷却水の温度が高温となりヒータコア34より流出する冷却水の温度が凝縮器3より出力される冷媒の温度よりも高くなってしまい、過冷却熱交換器4によって、かえって冷凍サイクル装置1の冷房能力および運転効率が低下してしまうといったことを防止することができる。
また、冷却水を加熱する必要があると判定された場合、ヒータコア34より流出した冷却液が、過冷却熱交換器4を経由することなくエンジン30を経由してヒータコア34へ流入する第2流路65bとなるように流路切替弁33a、33bを制御することで、過冷却熱交換器4より流出した冷却水は更にエンジン30で暖められてヒータコア34に流入されるようになり、速やかに車室内の温度を上昇させられる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態における車両用空調装置100の概略構成を示す模式図である。
本発明の第3実施形態係る車両用空調装置100は、上記第1実施形態に係る車両用空調装置100と比較して、更に、冷却水回路31内に、冷却水の流量を調整する流量調整手段に相当する流量調整バルブ35を備えた点と、ヒータコア34から流出して過冷却熱交換器4へ流入する冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ(図示せず)を備えた点が異なる。
流量調整バルブ35は、冷却水回路31内を流れる冷却水の流量を調整するものである。流量調整バルブ35は、エアコンECU50により制御される。
本発明の第3実施形態に係るエアコンECU50のフローチャートを図11に示す。本実施形態では、エアコンECU50が実行するフローチャートは、第1実施形態のフローチャートである図4に対して、S306以降のステップが異なる。すなわち、図11に示すフローチャートは、図4に示したフローチャートのステップS106の後に、S306〜S308を追加したものとなっている。
本実施形態において、エアコンECU50は、S108で切替制御弁33が開回路となるように流路切替弁33を制御すると、ステップS306にて、ヒータコア34より流出して過冷却熱交換器4に流入する冷却水の温度が過冷却熱交換器4に流入する冷媒の温度よりも高いか否かを判定する。なお、ヒータコア34より流出して過冷却熱交換器4に流入する冷却水の温度は、上記した冷却水温度センサを用いて検出することができる。また、過冷却熱交換器4に流入する冷媒の温度は、外気温センサにより検出された外気温TAMを用いることができる。
ここで、ヒータコア34より流出して過冷却熱交換器4に流入する冷却水の温度が過冷却熱交換器4に流入する冷媒の温度以下となっている場合、S308へ進み、流量調整バルブ35の絞り開度を全開にするよう流量調整バルブ35を制御する。これにより、十分な流量の冷却水を冷却水回路31内に循環させることができる。
また、ヒータコア34より流出して過冷却熱交換器4に流入する冷却水の温度が過冷却熱交換器4に流入する冷媒の温度より高い場合には、S307へ進み、流量調整バルブ35の絞り開度を減少させるよう流量調整バルブ35を制御する。
これにより、ヒータコア34内を移動する冷却水の速度が低下する。そして、ヒータコア34内を移動する冷却水は、蒸発器6で比較的長い時間をかけて冷却される。したがって、ヒータコア34より流出する冷却水の温度をより低下させることができ、過冷却熱交換器4による冷媒の冷却効果を大きくすることができる。
上記したように、流量調整バルブ35を制御することで、ヒータコア34より流出する冷却液の流量を調整することができる。
また、上記したように、ヒータコア34より流出して過冷却熱交換器4に流入する冷却液の温度が過冷却熱交換器4に流入する冷媒の温度よりも高いか否かを判定し、ヒータコア34より流出して過冷却熱交換器4に流入する冷却液の温度が過冷却熱交換器4に流入する冷媒の温度よりも高いと判定された場合、ヒータコア34より流出する冷却液の流量を低下させるように流量調整バルブ35を制御することで、ヒータコア34内を移動する冷却水の速度を低下させ、ヒータコア34より流出する冷却水の温度をより低下させることができ、過冷却熱交換器4による冷媒の冷却効果を大きくすることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図12は、本実施形態における車両用空調装置100の概略構成を示す模式図であって、図1に相当する図である。図12に示すように、冷凍サイクル装置1が有する冷媒回路の構成が第1実施形態と異なっている。
具体的には、冷凍サイクル装置1は、第1開閉弁56と第2開閉弁58とから成る回路切替装置54と、回路切替装置54によって択一的に成立させられる2つの冷媒回路60、62とを有している。その2つの冷媒回路60、62は第1冷媒回路60と第2冷媒回路62とであり、その第1冷媒回路60は、圧縮機2から吐出された冷媒が凝縮器3と過冷却用熱交換器4と減圧装置5と蒸発器6とを順に経て圧縮機2へ戻る冷媒回路である。すなわち、第1実施形態の冷凍サイクル装置1で構成されている冷媒回路と同じである。図12では、第1冷媒回路60における冷媒流れは実線矢印FL1で示され、第2冷媒回路62における冷媒流れは破線矢印FL2で示されている。
また、第2冷媒回路62は、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が凝縮器3を経ずに過冷却用熱交換器4へ導入される冷媒回路である。詳細には、第2冷媒回路62は、冷媒配管9から分岐した第1バイパス冷媒通路63および第2バイパス冷媒通路64を含んで構成されている。その第1バイパス冷媒通路63は、圧縮機2から吐出された冷媒を凝縮器3をバイパスして過冷却用熱交換器4へ流す冷媒通路である。第2バイパス冷媒通路64は、過冷却用熱交換器4から流出した冷媒を減圧装置5および蒸発器6をバイパスして圧縮機2へ流す冷媒通路である。
そして、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、第1実施形態と比較して更に、暖房用減圧装置66と気液分離器68とを有している。暖房用減圧装置66は、エアコンECU50によって制御される電動の膨張弁であり、第2バイパス冷媒通路64に設けられ、且つ過冷却用熱交換器4から流出した冷媒を減圧する。気液分離器68は、第2バイパス冷媒通路64に設けられ、且つ暖房用減圧装置66から流出した冷媒を気相と液相とに分離すると共に液相の冷媒を内部に貯留し気相の冷媒を圧縮機2へ流す。
また、回路切替装置54に含まれる第1開閉弁56および第2開閉弁58は何れも、エアコンECU50によって開閉制御される電磁開閉弁である。第1開閉弁56は、第1バイパス冷媒通路63に設けられ、その第1バイパス冷媒通路63を開閉する。また、第2開閉弁58は、第2バイパス冷媒通路64に設けられ、その第2バイパス冷媒通路64を開閉する。
そして、第1冷媒回路60は、第1開閉弁56が第1バイパス冷媒通路63を閉じると共に第2開閉弁58が第2バイパス冷媒通路64を閉じることで成立する。その一方で、第2冷媒回路62は、第1開閉弁56が第1バイパス冷媒通路63を開くと共に第2開閉弁58が第2バイパス冷媒通路64を開くことで成立する。このように、回路切替装置54は、第1冷媒回路60と第2冷媒回路62とを択一的に成立させる。
なお、第2冷媒回路62の成立時には、第1バイパス冷媒通路63を流れる冷媒の流通抵抗は凝縮器3の流通抵抗と比較して格段に小さいので、凝縮器3を積極的に閉塞しなくても、圧縮機2から吐出された冷媒は、凝縮器3へは流れずに専ら第1バイパス冷媒通路63へ流れる。これと同様に、過冷却用熱交換器4から流出した冷媒は、第2バイパス冷媒通路64よりも流通抵抗が大きい蒸発器6へは流れずに、専ら第2バイパス冷媒通路64へ流れる。
そして、第2冷媒回路62では、圧縮機2から吐出された冷媒は、第1開閉弁56と過冷却用熱交換器4と第2開閉弁58と暖房用減圧装置66と気液分離器68とを順に経て圧縮機2へ戻る。
図2に示す空調起動スイッチ52は本実施形態でも設けられているが、第1実施形態とは異なり、3つの操作位置の何れかに切り替えられる。具体的に、本実施形態の空調起動スイッチ52は、エアコン運転を起動させるエアコンオン位置と、暖房運転を起動させる暖房オン位置と、エアコン運転および暖房運転の何れも停止させる空調オフ位置との3つの操作位置の何れかに切り替えられる。暖房運転とは、蒸発器6で空調空気を冷却することなく空調空気を加熱して車室内へ吹き出す空調運転である。従って、暖房運転中には、冷凍サイクル装置1の冷媒は蒸発器6へ流れない。
次に、上記構成に基づき、本実施形態の車両用空調装置100の作動について説明する。エアコンECU50は、車両のイグニッションスイッチがオンにされると動作状態になり、ウォータポンプ32に動作の開始を指示するとともに、図13のフローチャートに示す制御処理を周期的に繰り返し実行する。図13は、本実施形態のエアコンECU50の制御処理を示す第1のフローチャートである。なお、図13において、図3と同じ内容のステップについては同一の符号を付しその説明を省略する。
図13のフローチャートに示すように、エアコンECU50は、ステップS02にて、空調起動スイッチ52の操作位置がエアコンオン位置になっていると判断した場合には、ステップS13へ進む。その一方で、空調起動スイッチ52の操作位置がエアコンオン位置ではないと判断した場合には、ステップS14へ進む。
ステップS13では、第1開閉弁56を閉弁させると共に、第2開閉弁58も閉弁させる。これにより、エアコン運転用の冷媒回路である第1冷媒回路60を成立させる。第1開閉弁56および第2開閉弁58が既に閉弁されていれば、その閉弁した状態を継続させる。ステップS13の次はステップS03へ進み、ステップS03では、第1実施形態と同様に、エアコン運転が実行され、図4のフローチャートが実行される。
ステップS14では、空調起動スイッチ52の操作位置が暖房オン位置になっているか否かを判断する。ステップS14において、空調起動スイッチ52の操作位置が暖房オン位置になっていると判断した場合には、ステップS15へ進む。その一方で、空調起動スイッチ52の操作位置が暖房オン位置ではないと判断した場合には、ステップS16へ進む。
ステップS15では、暖房運転を実行する。そのために、エアコンECU50は、空調ダクト10内で空気がヒータコア34へ流れるようにエアミックスドア装置17を作動させる。具体的には、加熱用通路15を全開にする。加熱用通路15が既に全開であればその状態を継続させる。これにより、空調空気は、ヒータコア34を通ってから車室内へ吹き出されることになる。
そして、ステップS15において、エアコンECU50は、暖房運転で実行する制御処理の1つとして、後述の図14のフローチャートに示す制御処理を実行する。図14のフローチャートが終了すると、図13のフローチャートの実行ステップはステップS02に戻る。
図13のステップS16では、エアコンECU50は、エアコン運転および暖房運転を停止する。ステップS16が終わると、図13のフローチャートは終了し、再びステップS01から開始する。
図14は、本実施形態のエアコンECU50の制御処理を示す第2のフローチャートであって、図13のステップS15で実行されるサブルーチンを示したフローチャートである。また、図14において、図4と同じ内容のステップについては同一の符号を付しその説明を省略する。
図14のフローチャートでは、エアコンECU50は、第1実施形態と同様にステップS101とS102とを順次実行し、ステップS102において目標吹出温度TAOを算出したら、ステップS203へ進む。
ステップS203では、車室内への吹出空気温度を目標吹出温度TAOとするために、空調空気に対する加熱量を更に増加させる必要があるか否かを判断する。例えば、エアコンECU50は、目標吹出温度TAOと水温センサ44(図2参照)によって検出される冷却水温TWとを比較し、目標吹出温度TAOがその冷却水温TWよりも高い場合(TAO>TW)には、空調空気に対する加熱量を更に増加させる必要があると判断する。
ステップS203において、空調空気に対する加熱量を更に増加させる必要があると判断した場合、すなわち目標吹出温度TAOが冷却水温TWよりも高い場合には、ステップS204へ進む。その一方で、空調空気に対する加熱量を更に増加させる必要がないと判断した場合、すなわち目標吹出温度TAOが冷却水温TW以下である場合には、ステップS205へ進む。
ステップS204では、第1開閉弁56を開弁させると共に、第2開閉弁58も開弁させる。これにより、暖房運転用の冷媒回路である第2冷媒回路62を成立させる。第1開閉弁56および第2開閉弁58が既に開弁されていれば、その開弁した状態を継続させる。
そして、圧縮機2をオンにする。すなわち、圧縮機2を駆動する。また、ヒータコア34より流出した冷却水が、過冷却熱交換器4およびエンジ30を経由して、再度、ヒータコア34へ流入する開回路となるように流路切替弁33を制御する。このとき、圧縮機2で圧縮された高温高圧の冷媒は過冷却用熱交換器4へ導入され、ヒータコア34より流出した冷却水は過冷却用熱交換器4で加熱された後、更に、エンジン30で加熱される。そして、加熱用通路102を流れる空気は、ヒータコア34に流入される冷却水を介して速やかに加熱され、車室内へと吹き出される。
このように、エアコンECU50は、空調ダクト10内で空気がヒータコア34へ流れるようにエアミックスドア装置17を作動させる(図13のステップS15参照)と共に回路切替装置54によって第2冷媒回路62を成立させることにより、車室内の暖房を行う。
ステップS205では、ヒータコア34で空調ダクト10内の空気を加熱する。従って、ステップS205では、圧縮機2をオフにする。すなわち、圧縮機2を停止する。また、ヒータコア34より流出した冷却水が、過冷却熱交換器4およびエンジ30を経由して、再度、ヒータコア34へ流入する開回路となるように流路切替弁33を制御する。これにより、過冷却用熱交換器4は機能しなくなる。すなわち、加熱用通路102を流れる空気は、専らエンジン30で暖められた冷却水の熱を利用して加熱されて車室内へと吹き出される。
また、ステップS204、S205では、エアコンECU50は、エバ温度センサ43、水温センサ44、および過冷却温度センサ45からの入力情報に基づいて、車室内への吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近付くように、第1ドア171を作動させて冷風バイパス通路101の開度調節を行う。
なお、ステップS204またはS205を実行したら、エアコンECU50が実行する制御処理は図13のフローチャートへ戻り、再び図13のステップS02から開始する。また、図13および図14の制御処理において暖房運転の実行中には、エアコンECU50は、第1実施形態でのエアコン運転と同様に、ブロワ14の風量、内外気の吸込口モードおよび吹出口モードも決定する。そして、エアコンECU50は、上述した制御処理の実行中に算出または決定した各制御状態が得られるように、内外気切替ドア13、ブロワ14、エアミックスドア装置17、吹出モードドア21〜23、圧縮機2等に制御信号を出力する。
本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。更に、本実施形態によれば、冷凍サイクル装置1は、圧縮機2から吐出された冷媒が凝縮器3、過冷却熱交換器4、減圧装置5、および蒸発器6を順に経て圧縮機2へ戻る第1冷媒回路60と、圧縮機2から吐出された冷媒が凝縮器3を経ずに過冷却熱交換器4へ導入される第2冷媒回路62と、第1冷媒回路1と第2冷媒回路62とを択一的に成立させる回路切替装置54とを有している。そして、エアコンECU50は、エアコン運転時には第1冷媒回路61を成立させて冷房を行い、暖房運転時には第2冷媒回路62を成立させて暖房を行うように回路切替装置を54制御することにより、車室内の暖房を行う。すなわち、蒸発器6で空調空気を冷却しない暖房運転においてエンジン30で暖められた冷却水の熱だけでなく、圧縮機2より吐出して凝縮器3を経ずに過冷却熱交換器4へ入る冷媒の熱を利用して空調空気を加熱することができる。
ここで、暖房運転において目標吹出温度TAOとその目標吹出温度TAOを達成するために必要とされるエンジン30の冷却水温TW(以下、必要エンジン冷却水温TWnという)との関係は図15の実線L5のようになる。すなわち、図15に示すように、必要エンジン冷却水温TWnは目標吹出温度TAOが高くなるほど高くなる。そして、必要エンジン冷却水温TWnが車両走行に必要な冷却水温TWを超えるまで目標吹出温度TAOが高くなった場合には、例えば過冷却用熱交換器4で空調空気を加熱できないとすれば、図15に示すように、車両を走行させる上ではエンジン30に余分な仕事を行わせ、冷却水温TWを高める必要が生じる。
これに対し、本実施形態では上記のように、エンジン30で暖められた冷却水の熱だけでなく、圧縮機2より吐出して凝縮器3を経ずに過冷却熱交換器4へ入る冷媒の熱を利用して空調空気を加熱することができるので、冷凍サイクル装置1に空調空気を加熱するための熱量をアシストさせ、エンジン30に余分な仕事を行わせないようにすることが可能である。その結果として、暖房運転に起因した車両の燃費悪化を抑制することができる。すなわち、第1実施形態で説明したリヒート運転時の省動力効果だけでなく、主として冬場の空調運転である暖房運転時には過冷却用熱交換器4を補助熱源として機能させることで省燃費効果が得られ、おおよそ一年間を通じて過冷却用熱交換器4よる効果を得ることができる。
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた実施形態であるが、本実施形態を前述の第2〜3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第4実施形態と異なる点を主として説明する。
図16および図17は、本実施形態において冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成を示した図である。図16では第1冷媒回路60を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第1冷媒回路60から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。その一方で、図17では第2冷媒回路62を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第2冷媒回路62から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。
図16および図17に示すように、本実施形態は、冷凍サイクル装置1が冷媒加熱器70を有しているという点で、前述の第4実施形態と異なっている。その冷媒加熱器70は、第2バイパス冷媒通路64において暖房用減圧装置66と気液分離器68との間に介装されている。そして、冷媒加熱器70は、暖房用減圧装置66から流出した冷媒を、エンジン廃熱またはエンジン30の排気熱を有する熱媒体と熱交換させ、それによってその冷媒を加熱する。
なお、本実施形態の減圧装置5は、第4実施形態と同様に蒸発器6の冷媒入口で冷媒を減圧膨張させる。また、本実施形態の減圧装置5は、第4実施形態のものと同じであってもよいが、エアコンECU50によって制御されない冷媒温度感温式の膨張弁装置になっている。このことは後述の第6〜9実施形態でも同様である。
本実施形態では、前述の第4実施形態と共通の構成から奏される効果を第4実施形態と同様に得ることができる。更に、本実施形態によれば、冷凍サイクル装置1は、第2バイパス冷媒通路64において暖房用減圧装置66と気液分離器68との間に介装された冷媒加熱器70を有しているので、第4実施形態よりも効率良く冷凍サイクル装置1で暖房運転を行うことが可能である。
なお、本実施形態は第4実施形態に基づいた実施形態であるが、本実施形態を前述の第2〜3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第5実施形態と異なる点を主として説明する。
図18および図19は、本実施形態において冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成を示した図である。図18では第1冷媒回路60を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第1冷媒回路60から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。その一方で、図19では第2冷媒回路62を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第2冷媒回路62から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。
図18および図19に示すように、本実施形態では冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成が前述の第5実施形態と異なっている。具体的には、冷凍サイクル装置1の冷媒配管9は、圧縮機2の冷媒吐出口2bと凝縮器3との間に設けられた第1分岐点9aと、過冷却用熱交換器4と減圧装置5の冷媒流入口5aとの間に設けられた第2分岐点9bと、第1分岐点9aと凝縮器3との間に設けられた第3分岐点9cとを有している。
また、第2冷媒回路62は、第1分岐点9aおよび第2分岐点9bを相互に連結する第1バイパス冷媒通路71と、第3分岐点9cおよび圧縮機2の冷媒吸入口2aを相互に連結する第2バイパス冷媒通路72とを含んで構成されている。本実施形態の第1バイパス冷媒通路71は第5実施形態の第1バイパス冷媒通路63に替わるものであり、本実施形態の第2バイパス冷媒通路72は第5実施形態の第2バイパス冷媒通路64に替わるものである。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、第5実施形態と同様に、暖房用減圧装置66と気液分離器68とを有している。但し、その暖房用減圧装置66は、冷媒配管9上で凝縮器3と過冷却用熱交換器4との間に設けられている。また、気液分離器68は第2バイパス冷媒通路72に設けられ、第3分岐点9cから流出した冷媒を気相と液相とに分離し気相の冷媒を圧縮機2の冷媒吸入口2aへ流す。
また、回路切替装置54は第1開閉弁56(以下、本実施形態では単に開閉弁56と呼ぶ)を有しており、第5実施形態の第2開閉弁58に替えて切替弁73を有している。本実施形態の開閉弁56は、第1バイパス冷媒通路71に設けられており、その第1バイパス冷媒通路71を開閉する。切替弁73はエアコンECU50によって切替制御される電磁式三方弁であり、第3分岐点9cに設けられている。そして、切替弁73は、凝縮器3を第2バイパス冷媒通路72と第1分岐点9aとに択一的に連通させる。
このような冷凍サイクル装置1の構成から、第1冷媒回路60は、開閉弁56が第1バイパス冷媒通路71を閉じると共に切替弁73が凝縮器3を第1分岐点9aに連通させることで成立する。そして、その第1冷媒回路60では、圧縮機2から吐出された冷媒は、切替弁73と凝縮器3と暖房用減圧装置66と過冷却用熱交換器4と減圧装置5と蒸発器6とを順に経て圧縮機2へ戻る。このとき、暖房用減圧装置66は全開にされ、冷媒を減圧せずに過冷却用熱交換器4へ流す。また、凝縮器3は、第1冷媒回路60の成立時には冷媒を凝縮する。
その一方で、第2冷媒回路62は、開閉弁56が第1バイパス冷媒通路71を開くと共に切替弁73が凝縮器3を第2バイパス冷媒通路72に連通させることで成立する。そして、その第2冷媒回路62では、圧縮機2から吐出された冷媒は、開閉弁56と過冷却用熱交換器4と暖房用減圧装置66と凝縮器3と切替弁73と気液分離器68とを順に経て圧縮機2へ戻る。このとき、暖房用減圧装置66の絞り開度がエアコンECU50によって制御され、暖房用減圧装置66は過冷却用熱交換器4から凝縮器3へ流れる冷媒を減圧する。また、凝縮器3は、第2冷媒回路62の成立時には蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させる。
本実施形態では、前述の第5実施形態と共通の構成から奏される効果を第5実施形態と同様に得ることができる。
なお、本実施形態は第6実施形態に基づいた実施形態であるが、本実施形態を前述の第2〜3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第6実施形態と異なる点を主として説明する。
図20および図21は、本実施形態において冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成を示した図である。図20では第1冷媒回路60を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第1冷媒回路60から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。その一方で、図21では第2冷媒回路62を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第2冷媒回路62から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。
図20および図21に示すように、本実施形態では冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成が前述の第6実施形態と異なっている。具体的には、冷凍サイクル装置1の冷媒配管9は、圧縮機2の冷媒吐出口2bと凝縮器3との間に設けられた第1分岐点9aと、蒸発器6の冷媒流出口6aと圧縮機2の冷媒吸入口2aとの間に設けられた第2分岐点9dと、第1分岐点9aと凝縮器3との間に設けられた第3分岐点9cとを有している。
また、第2冷媒回路62は、第1分岐点9aおよび第2分岐点9dを相互に連結する第1バイパス冷媒通路77と、第3分岐点9cおよび圧縮機2の冷媒吸入口2aを相互に連結する第2バイパス冷媒通路72と、減圧装置5および蒸発器6に対して並列に配管され減圧装置5および蒸発器6をバイパスさせて冷媒を流す第3バイパス冷媒通路78とを含んで構成されている。本実施形態の第1バイパス冷媒通路77は第6実施形態の第1バイパス冷媒通路71に替わるものである。
また、回路切替装置54は、第6実施形態の開閉弁56および切替弁73に替えて、第1切替弁791と第2切替弁792と開閉弁793とを有している。第1切替弁791はエアコンECU50によって切替制御される電磁式三方弁であり、圧縮機2の冷媒吸入口2aに設けられている。そして、第1切替弁791は、圧縮機2の冷媒吸入口2aを第2バイパス冷媒通路72と第2分岐点9dとに択一的に連通させる。
第2切替弁792はエアコンECU50によって切替制御される電磁式三方弁であり、第1分岐点9aに設けられている。そして、第2切替弁792は、圧縮機2の冷媒吐出口2bを第1バイパス冷媒通路77と第3分岐点9cとに択一的に連通させる。
開閉弁793はエアコンECU50によって開閉制御される電磁開閉弁ある。開閉弁793は、第3バイパス冷媒通路78に設けられ、その第3バイパス冷媒通路78を開閉する。
このような冷凍サイクル装置1の構成から、第1冷媒回路60は、第1切替弁791が圧縮機2の冷媒吸入口2aを第2分岐点9dに連通させ、第2切替弁792が圧縮機2の冷媒吐出口2bを第3分岐点9cに連通させ、且つ開閉弁793が第3バイパス冷媒通路78を閉じることで成立する。そして、その第1冷媒回路60では、圧縮機2から吐出された冷媒は、第2切替弁792と凝縮器3と暖房用減圧装置66と過冷却用熱交換器4と減圧装置5と蒸発器6と第1切替弁791とを順に経て圧縮機2へ戻る。
その一方で、第2冷媒回路62は、第1切替弁791が圧縮機2の冷媒吸入口2aを第2バイパス冷媒通路72に連通させ、第2切替弁792が圧縮機2の冷媒吐出口2bを第1バイパス冷媒通路77に連通させ、且つ開閉弁793が第3バイパス冷媒通路78を開くことで成立する。そして、その第2冷媒回路62では、圧縮機2から吐出された冷媒は、第2切替弁792と開閉弁793と過冷却用熱交換器4と暖房用減圧装置66と凝縮器3と気液分離器68と第1切替弁791とを順に経て圧縮機2へ戻る。なお、第1冷媒回路60の成立時および第2冷媒回路62の成立時における暖房用減圧装置66および凝縮器3の作動についてはそれぞれ第6実施形態と同様である。
本実施形態では、前述の第6実施形態と共通の構成から奏される効果を第6実施形態と同様に得ることができる。
なお、本実施形態は第6実施形態に基づいた実施形態であるが、本実施形態を前述の第2〜3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第7実施形態と異なる点を主として説明する。
図22および図23は、本実施形態において冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成を示した図である。図22では第1冷媒回路60を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第1冷媒回路60から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。その一方で、図23では第2冷媒回路62を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第2冷媒回路62から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。
図22および図23に示すように、本実施形態は、冷凍サイクル装置1の冷媒回路および冷却水回路の構成が前述の第7実施形態と異なっている。
本実施形態における冷却水回路31には、第2熱交換器4aおよび流路切替弁33aが設けられている。この第2熱交換器4aは、例えば、エンジンルーム等、車両空調ユニットの外部に設けられる。
流路切替弁33aは、エアコンECU50によって制御されるもので、ヒータコア34に設けられた接続口34aを、接続口34bと第2熱交換器4aとの間で択一的に切り替える。なお、本実施形態におけるヒータコア34は、4つの接続口34a〜34dを有しており、接続口34aより流入した冷却水は接続口34cより流出し、接続口34dより流入した冷却水は接続口34bより流出するようになっている。
流路切替弁33aによってヒータコア34に設けられた2つの接続口34a、34bとの間が連通すると、ヒータコア34の接続口34bより流出された冷却液は流路切替弁33aを経由してヒータコア34の接続口34aへ流入する。また、ヒータコア34の接続口34cより流出した冷却液は過冷却熱交換器4、ウォータポンプ32を経由してヒータコア34の接続口34dへ流入する。
また、流路切替弁33aによってヒータコア34に設けられた接続口34aと第2熱交換器4aとの間が連通すると、第2熱交換器4aから流出した冷却液は、ヒータコア34の接続口34aへ流入する。また、ヒータコア34の接続口34cより流出した冷却液は過冷却熱交換器4、ウォータポンプ32を経由してヒータコア34の接続口34dへ流入する。更に、ヒータコア34の接続口34bより流出した冷却液はエンジン(図示せず)へと流入し、第2熱交換器4aへと流入する。
本実施形態において、エアコンECU50は、冷房運転時には、ヒータコア34に設けられた2つの接続口34a、34bとの間を連通させるように流路切替弁33aを制御し、暖房運転時には、第2熱交換器4aとヒータコア34の接続口34aとの間を連通させるように流路切替弁33aを制御する。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、減圧装置66aを有している。減圧装置66aは、第2熱交換器4aより流出した冷媒を減圧膨張させる。
また、本実施形態における第2冷媒回路62には、開閉弁56a、気液分離器68および切替弁794が設けられている。開閉弁56aは、第2冷媒通路62に設けられており、その第2冷媒通路62を開閉する。気液分離器68は凝縮器3から流出した冷媒を気相と液相とに分離し気相の冷媒を圧縮機2の冷媒吸入口2aへ流す。切替弁794は、エアコンECU50によって切替制御される電磁式三方弁であり、圧縮機2の冷媒流入口21aを第1冷媒回路60と第2冷媒回路62とに択一的に連通させる。
このような冷凍サイクル装置1の構成から、第1冷媒回路60は、切替弁794が圧縮機2の冷媒流入口21aを蒸発器6の冷媒流出口6aと連通されることで成立する。そして、第1冷媒回路60では、圧縮機2から吐出された冷媒は、第2熱交換器4aと減圧装置66aと凝縮器3と過冷却熱交換器4と減圧装置5と蒸発器6と切替弁794とを順に経て圧縮機2へ戻る。
その一方で、第2冷媒回路62は、切替弁794が圧縮機2の冷媒流入口21aを気液分離器68と連通されることで成立し、第2冷媒回路62は、切替弁794が圧縮機2の冷媒流入口21aを気液分離器68と連通されることで成立する。そして、第2冷媒回路62では、圧縮機2から吐出された冷媒は、第2熱交換器4aと減圧装置66aと凝縮器3と開閉弁56aと気液分離器68と切替弁794とを順に経て圧縮機2へ戻る。
本実施形態において、冷房運転時、ヒータコア34に設けられた2つの接続口34a、34bとの間を連通させるように流路切替弁33aが制御される。したがって、過冷却熱交換器4に流れる冷却水の温度上昇を抑制することができる。
また、暖房運転時には、第2熱交換器4aとヒータコア34の接続口34aとの間を連通させるように流路切替弁33aが制御される。すなわち、ヒータコア34に流入する冷却水は、エンジンの熱だけでなく、第2熱交換器4aで暖められる。したがって、車室内温度を速やかに上昇させることが可能である。
本実施形態では、前述の第6実施形態と共通の構成から奏される効果を第6実施形態と同様に得ることができる。
なお、本実施形態は第6実施形態に基づいた実施形態であるが、本実施形態を前述の第2〜3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第6実施形態と異なる点を主として説明する。
図24および図25は、本実施形態において冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成を示した図である。図24では第1冷媒回路60を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第1冷媒回路60から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。その一方で、図25では第2冷媒回路62を構成する冷媒の流通経路が実線で表されると共に、第2冷媒回路62から外れた冷媒の流通経路が破線で表されている。
図24および図25に示すように、本実施形態では冷凍サイクル装置1の冷媒回路構成が前述の第6実施形態と異なっている。具体的には、冷凍サイクル装置1の冷媒配管9に設けられた第1分岐点9aおよび第3分岐点9cは第6実施形態と同様に配置されているが、第2分岐点9bは第6実施形態とは異なり、凝縮器3と過冷却用熱交換器4との間に配置されている。
また、第2冷媒回路62は、第1分岐点9aおよび第2分岐点9bを相互に連結する第1バイパス冷媒通路74と、第3分岐点9cおよび圧縮機2の冷媒吸入口2aを相互に連結する第2バイパス冷媒通路72とを含んで構成されている。本実施形態の第1バイパス冷媒通路74は第6実施形態の第1バイパス冷媒通路71に替わるものである。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、第6実施形態と同様に、暖房用減圧装置66と気液分離器68とを有している。但し、その暖房用減圧装置66は、第1バイパス冷媒通路74に設けられている。気液分離器68の配置は第6実施形態と同様である。
更に、冷凍サイクル装置1は暖房用熱交換器75を有している。その暖房用熱交換器75は、第1バイパス冷媒通路74において第1分岐点9aと暖房用減圧装置66との間に配置されている。すなわち、第1バイパス冷媒通路74において暖房用減圧装置66よりも冷媒流れ上流側に配置されている。従って、暖房用減圧装置66は、エアコンECU50の制御により、暖房用熱交換器75から流出した冷媒を減圧する。
また、暖房用熱交換器75は、水−冷媒熱交換器であり、ヒータコア34へ流入する熱媒体としての冷却水と第1バイパス冷媒通路74を流れる冷媒とを熱交換させ、それにより、ヒータコア34へ流入する冷却水を加熱する。
また、回路切替装置54は、第6実施形態と同様の切替弁73(以下、本実施形態では第1切替弁73と呼ぶ)を有しており、第6実施形態の開閉弁56に替えて第2切替弁76を有している。その第2切替弁76はエアコンECU50によって切替制御される電磁式三方弁であり、圧縮機2の冷媒吸入口2aに設けられている。そして、第2切替弁76は、圧縮機2の冷媒吸入口2aを第2バイパス冷媒通路72と蒸発器6とに択一的に連通させる。
このような冷凍サイクル装置1の構成から、第1冷媒回路60は、第1切替弁73が凝縮器3を第1分岐点9aに連通させると共に第2切替弁76が圧縮機2の冷媒吸入口2aを蒸発器6に連通させることで成立する。そして、その第1冷媒回路60では、圧縮機2から吐出された冷媒は、第1切替弁73と凝縮器3と過冷却用熱交換器4と減圧装置5と蒸発器6と第2切替弁76とを順に経て圧縮機2へ戻る。第1冷媒回路60の成立時には、凝縮器3は冷媒を凝縮する。
その一方で、第2冷媒回路62は、第1切替弁73が凝縮器3を第2バイパス冷媒通路72に連通させると共に第2切替弁76が圧縮機2の冷媒吸入口2aを第2バイパス冷媒通路72に連通させることで成立する。そして、その第2冷媒回路62では、圧縮機2から吐出された冷媒は、暖房用熱交換器75と暖房用減圧装置66と凝縮器3と第1切替弁73と気液分離器68と第2切替弁76とを順に経て圧縮機2へ戻る。このとき、暖房用減圧装置66の絞り開度がエアコンECU50によって制御され、暖房用減圧装置66は暖房用熱交換器75から凝縮器3へ流れる冷媒を減圧する。また、凝縮器3は、第2冷媒回路62の成立時には蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させる。
また、本実施形態のエアコンECU50は暖房運転を行う際には第2冷媒回路62を成立させることがあり、その第2冷媒回路62の成立時には、図25に示すように、過冷却用熱交換器4へ冷媒は循環しないが、エアコンECU50は、図13および図14のフローチャートに示す制御処理を、第6実施形態と同様に実行する。従って、エアコンECU50は、空調ダクト10内で空気がヒータコア34へ流れるようにエアミックスドア装置17を作動させると共に回路切替装置54によって第2冷媒回路62を成立させることにより、車室内の暖房を行う。
詳細には、冷凍サイクル装置1は、ヒータコア34へ流入する冷却水をエンジン30で加熱することで、空調ダクト10内を流れる空気をヒータコア34の冷却水を介して間接的に加熱する。
本実施形態では、前述の第6実施形態と共通の構成から奏される効果を第6実施形態と同様に得ることができる。
なお、本実施形態は第6実施形態に基づいた実施形態であるが、本実施形態を前述の第2〜3実施形態のうちの何れかと組み合わせることも可能である。
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、車両に搭載されたエンジン30を発熱機器としたが、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載された走行用の電動モータを発熱機器とすることもできる。また、電動モータに給電する蓄電装置、電動モータを駆動制御する駆動回路部等を発熱機器とすることもできる。
(2)上記第1〜第3実施形態では、S106にて、目標吹出温度TAOが外気温TAM以上の場合に、冷却水の加熱が必要であると判定するようにしたが、例えば、目標吹出温度TAOが凝縮器3より出力される冷媒の温度以上の場合に、冷却水の加熱が必要であると判定することもできる。また、目標吹出温度TAOが過冷却用熱交換器4で加熱された空気温度TSC以上の場合に、冷却水の加熱が必要であると判定することもできる。
(3)上述の各実施形態において、図3、図4、図9、及び図11のフローチャートに示す各ステップの処理はコンピュータプログラムによって実現されるものであるが、ハードロジックで構成されるものであっても差し支えない。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。