以下、本発明を実施するための形態の一例(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、以下の説明において、上下左右前後の方向は図1中に示す上下左右前後の方向を基準とする。
本実施形態における所謂縦型の電気洗濯機は、次のような構成によって衣類の洗濯を行うものである。
洗濯水を溜める外槽内に、回転自在に支持された水槽を外槽と同軸に備え、水槽の底面には上面に凹凸を設けた回転翼が回転可能に設けられている。この回転翼と水槽とは、モータなどの駆動手段によって選択的に回転駆動される構成である。さらに、洗剤投入口に給水し、洗剤投入口に投入された洗剤を溶かしつつ外槽の底部まで導入する給水手段と、前記外槽内に給水する給水手段と、前記外槽内の洗濯水を洗濯機外に排水する排水手段と、前記駆動手段と、前記給水手段と、前記排水手段と、を駆動制御する制御手段と、を備えている。
そして、前記制御手段は次のように制御する。洗濯工程においては、外槽内に給水することで外槽底面に供給された洗剤を溶かして高濃度の洗剤液を生成する。高濃度の洗剤液を前記洗濯水循環手段によって水槽の上部から洗濯物に降り掛けるように循環させ、回転翼を正逆回転することで回転翼と洗濯物との間に生じる摩擦力ないし凹凸により生じる上下方向の分力、および洗濯水が撹拌されることによって洗濯物を洗浄する。すすぎ工程では、洗濯水を排水したのち水道水を給水し、回転翼を正逆回転することで回転翼と洗濯物との間に生じる摩擦力ないし凹凸により生じる上下方向の分力、および洗濯水が撹拌されることによって洗濯物に付着した洗剤成分を押出す濯ぎを行う。
図1は、本発明の実施形態に係る電気洗濯機の外観を示す斜視図であって蓋体を閉じた状態を示し、図2は蓋体を開いて洗濯物を出し入れ可能な状態を示している。図3は開蓋ボタン33を押すことで、開蓋手段32の作用によって蓋体5の前縁が所定量上昇して、蓋体5の前縁とトップカバー4の上面との間に隙間gapが生じた状態を示している。図4は電気洗濯機の外観を示す上面図であり、図5は内部構造を示す縦断面図であって図4におけるA−A断面を示す。
洗濯機本体1の外郭を形成する四角筒状の筐体2の上部には、上面に開口である洗濯物投入口3を備え、洗濯機本体1の上部をなすトップカバー4が載置されている。トップカバーは例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂や、PP(ポリプロピレン)樹脂などで成型されている。トップカバー4の洗濯物投入口3の前辺寄り中央にはスリット93が設けられ、蓋体5を閉じた際には蓋体5に設けられた押上突起101が挿入される位置に設けられている。
トップカバー4の上面には、洗濯物投入口3を覆うように、蓋体支軸6に沿って開閉自在の蓋体5が設けられている。蓋体5は略四角形をなした略薄板状であり、前辺と後辺と右辺と左辺とを備えている。蓋体支軸6は蓋体5の後辺に沿って設けられている。蓋体5の前辺中央の一部は蓋体5から直交して蓋体5の下面に向けて凸した押上突起101となっており、後述する開蓋手段32からの開き力を受けて蓋体5の前辺を開くことができる。なお、蓋体5の前辺側面に凹部を形成して手指が掛けられるようにしても良い。
トップカバー4の前辺中央には、蓋体5を開くための開蓋手段32が設けられており、開蓋ボタン33を押下することで蓋体5の前辺を所定量持ち上げて、操作者が手指で蓋体5を開く際の開き動作を補助する。この開蓋手段32の詳細な構成については後述する。
トップカバー4の蓋体5よりも後方は、背面カバー4aにより覆われている。
トップカバー4の洗濯物投入口3の左側前方には、ロック受け凹部8が開口している。ロック受け凹部8に隣接してロック手段9が設けられている。ロック手段9は、左右方向に移動自在に支持されたロッド9aを図示しないソレノイドあるいはモータといった駆動源によってロック受け凹部8の内部に突き出し、あるいは引き込む動作を制御手段の指示に応じて行う。蓋体5には、ロッド9aが挿入可能なロック受け穴10を側方に設けたロック受け突起11が設けられる。ロック受け突起11は、蓋体5を閉じた際にロック受け凹部8の内部に挿入され、ロック手段9が作用すればロッド9aがロック受け穴10に嵌合して、蓋体5は開かないようロックされる構成である。
洗濯物投入口3の奥側には開閉式の洗剤ケース13が設けられており、洗剤投入室、柔軟剤投入室、などに区分けされている。使用者は洗剤ケース13を手前側に引き出してから、内に粉末洗剤、液体洗剤、あるいは柔軟剤を所定量投入する。洗剤ケース13は、洗剤・柔軟剤投入口14と接続されており、外槽15内に洗剤や柔軟剤を供給する。
トップカバー4のうち蓋体5の後辺よりも後方の上面には、図示しない水道とホースを介して接続される給水口16が設けられている。給水口16には給水電磁弁17が接続され、制御系の指示によって給水を行う。一例として、給水電磁弁17として3方向に給水する三連弁について説明すると、一つ目は洗濯給水電磁弁であり、給水入口29に接続されて水槽18内に給水する。二つ目は洗剤給水電磁弁で、洗剤ケース13の洗剤投入室に接続される。三つ目は柔軟剤給水電磁弁で、洗剤ケース13の柔軟剤投入室に接続されている。
トップカバー4の前辺に沿って操作パネル20が設けられており、電源スイッチや、洗濯や脱水などの工程選択あるいは洗濯時間の設定などの操作を行う操作ボタン、さらに例えば液晶や発光素子などの表示手段が設けられている。
洗濯水を溜める外槽15は、筐体2上面の四隅から吊下げられた、ばねと減衰手段とを備えた吊り棒21によって筐体2の中心に位置するよう防振支持されており、外槽15の内部には洗濯と脱水を行う水槽18を回転自在に設け、さらに水槽18の底面には回転翼22が回転自在に設けられている。水槽18の外周壁面および底面には、通水を行うための貫通穴18a、18bが設けられ、水槽18の上端の開口部の外周には、流体を内在した防振手段である流体バランサ23が設けられている。回転翼22の上面には凹凸が設けられ、洗濯水を撹拌するとともに回転翼22の上面に投入されている洗濯物に上下方向ないし回転方向の分力を与えて、洗濯を行う。水槽18と回転翼22とは、駆動機構である例えばインバータ式の駆動モータ24から、減速機構を介して電磁操作クラッチ25によって選択的に回転駆動される。すなわち、駆動モータ24と電磁操作クラッチ25とを制御することにより、水槽18を係止または自由に回転可能に開放した状態で回転翼22の正逆回転を繰り返す洗濯駆動モードと、水槽18と回転翼22とを一体として同一方向に連続的に回転する脱水駆動モードとを切り替えることができる。
外槽15の底面には、エアトラップ26が設けられ、内部の圧力がチューブを介して水位センサ27に伝えられることで、外槽15内の洗濯水の水位を検知する。外槽15の外側側面には振動センサ28が設けられ、洗濯時や脱水時の外槽15の振動を検出する。ゴム製の蛇腹管31a、31bは、振動変位する外槽15と、固定された筐体2やトップカバー4などに設けられた給水電磁弁17や排水弁47などとの接続に用いている。
次に、図6により、さらに適宜図4と図5を参照しつつ、蓋体5および蓋体支軸6の構造について説明する。図6は図3におけるB−B断面図であり、蓋体支軸6の構造を示している。蓋体5は略左右対称の形状であり、ばねやダンパなどの構成部品は左右対称に一対設けられているので、右側の構成部品にa、左側の構成部品にbを付記して表す。
蓋体5は略四辺形をなした蓋ガラス48の下面および前辺、左辺、右辺の端面を覆うように、樹脂製の蓋下面カバー49が設けられている。蓋ガラス48の後辺に沿って蓋後面カバー50が設けられ、蓋ガラス48の後辺を上面まで被るように設けられている。このように本実施形態の蓋体5はガラス板を用いて形成されており、蓋体5全体が一体として開く一枚板方式の洗濯機を構成している。
蓋下面カバー49の下面には、例えば鉄板を折り曲げた板金部品である、剛性の大なる補強金具52が設けられており、蓋下面カバー49に例えば両面接着テープによって固定される。補強金具52の一部は蓋ガラス48から直角に離反する方向に、かつ蓋体支軸6の回転軸と直交するように折り曲げられ、蓋体支軸6の回転中心となる位置に、左右一対の支軸54a、54bおよびダンパ本体61a、61bを回転固定する貫通穴が設けられている。左右一対の支軸54a、54bは、それぞれコイル状の蓋体バネ55a、55bを貫通した状態で補強金具52に取付けられて、蓋体支軸6の回転軸となる。
トップカバー4の上面には例えば鉄板を折り曲げた板金部品である、剛性の大なるヒンジ金具56a、56bが、ねじにより締結されて固定される。ヒンジ金具56a、56bの一部はトップカバー4から直角に離反して蓋体5に近接する方向に、かつ蓋体支軸6の回転軸と直交するように折り曲げられ、蓋体支軸6の回転中心となる位置に、左右一対の支軸54a、54bおよびダンパ本体61a、61bを回転固定する貫通穴が設けられている。
コイル部を備えたねじりバネである一対の蓋体バネ55a、55bのそれぞれ互いに内側に近接した側のばねの一端である第一の延伸部58a、58bは、それぞれ蓋体5の前辺の方向に延伸されて、蓋体5の下面側から補強金具52に対して、蓋体5に開き方向のトルクを付与する向きに当接される。一方、一対の蓋体バネ55a、55bの互いに外側に向いた側の他端は、蓋体バネ55a、55bのコイル部の中心軸から離れる方向に延伸された第二の延伸部59a、59bを備える。蓋体バネ55a、55bの第二の延伸部59a、59bはヒンジ金具56a、56bを介してトップカバー4に固定されており、蓋体バネ55a、55bの第一の延伸部58a、58bは補強金具52を介して蓋体5に沿って設けられているので、蓋体5は蓋体バネ55a、55bによって、支軸54a、54bのまわりに蓋体5を開く方向の回転トルクを受ける構成である。
支軸54a、54bと同軸に、蓋体5の左右中心に近接して、支軸54a、54bよりも内側に一対の回転ダンパ60a、60bが設けられている。回転ダンパ60a、60bは、ダンパ本体61a、61bと、所定の角度の範囲で回動自在なダンパ軸62a、62bとの間に、例えば粘度の高いシリコングリースなどを封入して粘性抵抗トルクを生じる構成である。ダンパ本体61a、61bは蓋体5と一体として回転するよう補強金具52に取り付けられている。ダンパ軸62a、62bは、一例として円筒表面のうち相対する二面を平面状にそぎ落とした略小判状の断面形状としており、トップカバー4に取り付けられたヒンジ金具56a、56bに設けられた略小判状の穴に対して回転しないように嵌合する。
一対の回転ダンパ60a、60bの一方は蓋体5の開動作の際に粘性抵抗を生じる第一のダンパ60aであり、他方は蓋体5の閉じ動作の際に粘性抵抗を生じる第二のダンパ60bとすれば、蓋体5の開動作と閉じ動作のいずれの動作の際にも回転ダンパ60a、または回転ダンパ60bによる粘性抵抗が生じる。特に蓋体5が蓋ガラス48を備えた一枚構成であって、樹脂製の蓋体5と比較して質量が大である場合でも、開閉動作の全範囲に回転ダンパ60a、60bによる減衰を付与して蓋体5の開閉動作を低速にでき、蓋体5が急激に閉じたり、あるいは全開の近傍で急激に開いたりすることがないので、スムーズで安定した蓋体5の開閉動作を実現できるので好適である。またさらに、一方の回転ダンパ60aと他方の回転ダンパ60bの粘性抵抗は同一でなくてもよい。例えば、回転ダンパ60bの粘性抵抗を回転ダンパ60aよりも大きくして、特に蓋体5が急に閉じるときの衝撃を抑制するようにしても良い。
一対の回転ダンパ60a、60b、および一対の蓋体バネ55a、55bは、蓋体5の内側に設けられ、蓋体5と一体として開閉する蓋ヒンジカバー51とフタ下面カバー49との間に形成された円筒状の隙間に同心に設けられている。蓋体5を開いた際には、蓋ヒンジカバー51は洗濯機本体1の前方を向いて、使用者に対して回転ダンパ60a、60b、および一対の蓋体バネ55a、55bを覆う。
ヒンジ金具56a、56bをトップカバー4に取付けてネジ止めした後、蓋体支軸6を覆うカバーであるヒンジカバー70a、70bを取付ける。ヒンジカバー70a、70bは、例えば樹脂材料の弾性変形を利用した固定爪である、所謂スナップフィットによって固定してもよい。本体側に固定されたヒンジカバー70と蓋体5と一体に回動する蓋ヒンジカバー51とは、蓋体支軸6に沿って交互に配置され、蓋体支軸6のまわりにダンパ60a、60bと蓋体バネ55a、55bとを覆った略円筒形状を形成する。蓋体5が開動作すると、蓋ヒンジカバー51は蓋体5と一体に回動するので、ヒンジカバー70と蓋ヒンジカバー51との境界部分が摺動する構成であり、ともに円筒形状なので段差などがないために汚れがつきにくく、かつヒンジ金具56a、56bへの洗剤や水の付着を防止できる。
ここで、第二の延伸部59a、59bはトップカバー4に固定されたヒンジカバー70a、70bの範囲においてヒンジ金具56を貫通して固定されているので、蓋体5の開閉動作の全角度範囲において蓋体5を回動しても蓋体バネ55a、55bの第二の延伸部59a、59bが蓋体5とともに回動する蓋ヒンジカバー51の外周に突出することがない。したがって、蓋体5には蓋体バネ55a、55b端部との干渉を防止するための溝などが不要なので、洗剤や水の溝からの浸入を防止して、ばねの錆びを防止できる、という効果がある。
次に、図7を用いて、蓋体5の自重と、蓋体バネ55a、55bによるねじりトルクとの関係について説明する。図7は、蓋体5の開き角度と、蓋体5の重心と、蓋体5先端における開閉力の関係を示す側面図である。
図7において、質量mで前後長さLの蓋体5は、重心Gにおいて、重力加速度をgとすれば、力mgを生じる。蓋体5が閉じた際には、蓋体5の角度はθ1であり、前辺が水平よりも下がっているので、θ1は負の値、例えば−10゜となる。
ここで、開閉の回転中心である支軸54a、54bから重心Gまでの距離をR1、蓋体バネ55a、55bにより生じる開方向のトルクをT1、蓋体5の先端に生じる閉じ方向の力をF1とすれば、モーメントの釣り合いより、
F1×L=mg×R1−T1 (式1)
すなわち、蓋体5を開くために要する先端力F1は、
F1=(mg×R1−T1)/L (式2)
となる。
または、その時に蓋体バネ55a、55bの生じるトルクT1は、
T1=mg×R1−F1×L (式3)
と表される。
ここで、F1の適正な値としては、脱水工程の振動に対しても蓋体5がトップカバー4上に安定して載置されるためには、例えば5Nから7N程度の力が必要となる。蓋体5の質量と重心位置に応じて、蓋体5の開角度がθ1のときにF1が所定の値となるような蓋体バネ55a、55bのトルクT1を求めることができる。
蓋体5の角度がθ2、例えば60゜となった際には、自重によるモーメント(mg×R2)とねじりバネによるモーメント(T2)とが釣り合った状態であるとする。すなわち、蓋体5の開き角度がθ2よりも小なる場合は蓋体5の自重による閉じモーメントが蓋体バネ55a、55bによるモーメントに勝って蓋体5は閉じる。一方で、蓋体5の開き角度がθ2より大なる場合は蓋体バネ55a、55bによるモーメントが蓋体5の自重による閉じモーメントに勝って蓋体5は開く。すなわち、
T2=mg×R2 (式4)
となるように、蓋体5の開き角度がθ2の時の蓋体バネ55a、55bによるモーメントT2を設定すればよい。
蓋体5が全開で角度θ3となった際には、蓋体5は鉛直よりも後方に例えば10゜程度倒れた状態となる。この場合、重心Gは支軸54a、54bよりも後方であり、蓋体5は開き方向に先端力F3が生じて全開状態を維持する。このとき、自重によるモーメント(mg×R3)とねじりバネによるモーメント(T3)とはともに開き方向に生じ、
F3×L=mg×R3+T3 (式5)
として表される。すなわち
F3=(mg×R3+T3)/L (式6)
となる。
ここで、蓋体5の開き角度がθ2の時に蓋体5の自重と蓋体バネ55a、55bによるトルクとが釣り合うようにバネ定数を選択するのであるが、θ2としては例えば60゜程度とし、それ以上に蓋体5を開いた場合には、そのままバネのトルクが自重に勝って自動的に開くことが望ましい。そのような特性はバネ定数を比較的小さくすることによって得られるもので、その結果、蓋体5が全開で角度θ3となった際にも蓋体バネ55a、55bによるトルクT3は蓋体5を開く方向に働く。
もし、望ましい特性よりもばね定数を大として、一例として蓋体5の開き角度がθ2の時に蓋体5の自重と蓋体バネ55a、55bによるトルクT2とが釣り合い、かつ全開で角度θ3となった際に蓋体バネ55a、55bによるトルクが0であるように設定すると、蓋体5を開き角度がθ2からわずかに開いた際に、蓋体バネ55a、55bによるトルクは急激に減少するために蓋体5の自重によるモーメントに打ち勝つことができず、蓋体5はばね力で開き方向に移動できずに再び角度θ2に戻ってしまうためである。
すなわち、蓋体5の開角度がθ1の時には(式3)により求められるトルクT1を生じ、蓋体5の開角度がθ2の時には(式4)により求められるトルクT2を生じる特性の蓋体バネ55a、55bとすれば、所謂トグルばねを用いなくとも、蓋体の開閉回動動作中の所定の角度θ2で、開き方向または閉じ方向への付勢力を切り替えることができる。その結果、部品点数が少なく簡単な構造であっても、重いガラス製の蓋体5も軽い力で開閉でき、蓋体5の閉じ状態でのバタツキも抑制できる。
次に、図8から図12を用いて、本実施形態における開蓋手段32の構成と動作について説明する。図8は本実施形態における開蓋手段32の構成を示す縦断面図であり、図9(a)は開蓋手段32を図8のD方向からみた斜視図であり、図9(b)は図8のE方向からみた斜視図である。図8および図9は、押上部材34が最も下降した位置にある状態を図示している。図10は、開蓋手段32を図8E方向からみた分解斜視図である。図11(a)から(f)は、本実施形態における開蓋手段32を用いて蓋体5を開く動作を示す部分断面図である。
図8から図10に示す開蓋手段32において、トップカバー4の前辺近傍中央に設けられた開蓋ボタン33は第一のレバー(アーム)35に止めねじ53によって取り付けられており、第一のレバー35は開蓋手段32のベース36に設けられた第一の支点37のまわりに回動自在に軸支されており、開蓋ボタン33は、概ね上下方向に移動可能に軸支されている。第一のレバー35の左右側面には突起である第一のストッパ38が設けられ、ベース36の一部に設けられた第一のストッパ穴39に上下方向に余裕をもちつつ嵌合しており、第一のレバー35の回動範囲、すなわち開蓋ボタン33の上下方向の移動範囲を制限している。
第一のレバー35とベース36との間には圧縮バネである第一のスプリング40がボス64によって位置決めされて設けられており、第一のレバー35と開蓋ボタン33とをともに上方に向けて付勢する。第一のレバー35の開蓋ボタン33近傍は、下方に向けて延伸した押し部(第一の突起)41となっている。
ベース36の後方近傍は略上下方向に延伸したガイドレール42となっており、押上部材34の左右側面は凸したガイド部43となって、押上部材34をガイドレール42に沿って移動可能に支持されている。ガイド部43の一部はさらに左右側面方向に凸したストッパ44となっており、ガイドレール42の一部に設けられた段差である上ストッパ44に当接することで、上方向への動作限界位置としている。
押上部材34の上面はトップカバー4に沿って後方に向けて傾斜した押上面45となっており、押上面45の前方辺は前方に向けて延伸したツメ受け部90となっている。押上部材34の内側に設けられた円筒状のスプリング溝91の内部には略上下方向に第二のスプリング92が設けられて、第二のスプリング92の上端は押上部材34をガイドレール42に沿って上方に付勢する構成である。押上部材34の押上面45と後面側とは、トップカバー4の洗濯物投入口3に向けて設けられたスリット93に沿って設けられている。
第二のレバー(アーム)94に設けられた第二の支点95はベース36の下端近傍に設けられた第二の支点穴96のまわりに回動自在に軸支されており、第二のレバー94の一部は開蓋ボタン33に近接する方向に延伸されており、その先端は押し部41と対向した受け面(第二の突起)97としている。第二のレバー94の下端は後方に向けて延伸した凸部(第三の突起)98となっており、凸部98の中央部は上方に向けて円筒状に延伸した、第二のスプリング92の内径よりもやや小なる円筒状のスプリングガイドピン99をなしている。凸部98には第二のスプリング92の下端が載置されており、第二のスプリング92による付勢力は、第二のレバー94に図8における図示時計回り方向への回転トルクを与え、ツメ100をツメ受け部90に対して押し付ける力を生じる。
第二のレバー94の一部は上方に向けて略ガイドレール42に沿って延伸され、その上端は押上部材34に向けて凸したツメ(第四の突起)100となっており、図8の状態では押上部材34に設けられたツメ受け部90と噛み合って、押上部材34が第二のスプリング92を押し縮めた状態で維持する。すなわち、押上部材34は第二のスプリング92の付勢力によって上昇しようとするのを第二のレバー94のツメ100によって係止されており、ツメ100がツメ受け部90から外れれば、押上部材34はガイドレール42に沿って上昇する構成である。
ここで、開蓋ボタン33が下方に押し下げられると、開蓋ボタン33に固定された第一のレバー35が第一の支点37のまわりに図示反時計まわりに回動し、押し部41が下方に移動して第二のレバー94の一部である受け面97を押し下げて第二のレバー94を第二の支点95のまわりに図示反時計まわりに回動する。ツメ100は図示左方に移動してツメ受け部90との係合が外れ、押上部材34は第二のスプリング92の付勢力によって上昇し、ストッパ44が上ストッパ44に当接するまで上昇したところで停止する。この押上部材34の上昇する量は、例えば20mm程度である。開蓋手段32は、ベース36に設けられた取付突起63を介して、トップカバー4に設けられた図示しないボスに例えばタッピンネジで固定される。
図8から図10により説明したように、開蓋ボタン33の押下動作によってツメ100とツメ受け部90との係止が外れて、第二のスプリング92の付勢力によって押上部材34がガイドレール42に沿って上昇する一連の動作は、開蓋手段32をトップカバー4に取付ける以前に、開蓋手段32の部分組立状態で動作確認することができる。したがって、部分組立状態で動作確認した後にトップカバー4に取り付けることで、開蓋手段32の動作が確実で信頼性が高まる。
次に図11により、本実施形態における開蓋手段32による蓋体5を開く動作について説明する。図11(a)は蓋体5が閉じた状態を示している。図8に示したと同様に、押上部材34はツメ100によって係止されて最も下降した位置にあり、蓋体5に設けられた押上突起101はトップカバー4に設けられたスリット93を介して押上部材34の上面である押上面45に当接している。第二のスプリング92は最も縮められており、押上部材34を押し上げる付勢力を生じている。
この蓋体5が閉じた状態においては、蓋体5に設けられた押上突起101は押上部材34の押上面45に自重で単に載置されている状態であって、ツメなどで係止されていないので、開蓋ボタン33を操作しないまま操作者が蓋体5の例えば前辺や側辺に指をかけて蓋体5を上方に開いた場合には、押上部材34は下降した位置のまま、蓋体5を開くことができる。すなわち、ツメ100とツメ受け部90との係止部に無理な力が加わってツメ100が破損したり無理に係止部が外れることがない、という効果がある。
図11(b)は、開蓋ボタン33が下方に押された状態を示している。第一のレバー35が回動して押し部41が下方に移動して第二のレバー94が反時計方向に回動することで押上部材34のツメ受け部90に対するツメ100の係止が外れる。
図11(c)は第二のスプリング92の付勢力によって押上部材34が上昇する動作状態を示しており、押上部材34の押上面45が押上突起101を押し上げることで蓋体5の前辺が上昇し、その上昇量は15mm以上30mm以下(例えば20mm程度)とすれば、蓋体5の前辺とトップカバー4の上面との間の隙間に指先を挿入することができる。
ここで、蓋体5の先端に生じる閉じ方向の力の適正な値を、例えば5Nから7N程度の力であるとし、第二のスプリング92の付勢力による押上部材34の上向きの開き方向力を例えば10Nから15N程度とすれば、開蓋ボタン33を押してツメ100による係止が解除された際には、押上部材34と押上突起101とを介して蓋体5の前辺が例えば20mm程度上昇するので、指をその隙間に挿入して蓋体5の前辺を上昇させて、容易に蓋体5を開くことができる。またその際に、押上部材34から蓋体5を開く力は押上部材34の上向きの開き方向力と蓋体5の先端に生じる閉じ方向の力との差である、たかだか10N以下程度の力なので、蓋体5が勢いよく開くこともなく、適度な速さで開くので好都合である。
図11(d)は、蓋体5の前辺に手指を挿入して矢印方向に開く動作を示しており、図2に示した全開状態まで開くことができる。
図11(e)は、蓋体5を閉じる際に、全閉状態の直前で押上突起101が下降しつつ押上部材34を押し下げる経過を示しており、押上部材34のツメ受け部90が第二のレバー94のツメ100を押し開いて第二のレバー94を反時計方向に回動し、押上部材34を押し下げる。この際に、第一のレバー35は第一のスプリング40の付勢力によって開蓋ボタン33とともに上方に付勢されてトップカバー4の下面に押し付けられた状態にある。そのため、第二のレバー94が反時計方向に回動しても、第一のレバー35はそのままトップカバー4の下面に押し付けられた状態を維持するので、蓋体5を閉じる際にも開蓋ボタン33が一時的に下降することがない。
図11(f)は、図11(a)と同様に蓋体5を閉じた状態を示しており、押上部材34は目一杯下方まで下降してツメ100とツメ受け部90とが係合し、押上部材34はその後、最下降位置で保持される。第二のレバー94は第二のスプリング92の付勢力によって時計回りに回動してツメ100とツメ受け部90とが嵌合する。この際に、第二のスプリング92は最も押し縮められた状態にあり、最大の力を生じている。その状態でツメ100はツメ受け部90に嵌合するので、ツメ100はツメ受け部90に勢いよく衝突することになり、その際に生じる音や感触によって使用者はツメ100がツメ受け部90に嵌合したことを明確に認識できる。したがって、蓋体5が閉じられたことが明確に使用者に伝えられる、使いやすい開蓋手段32を提供できる、という効果がある。
ここで、押上部材34を上方に押し上げる力と、第二のレバー94に時計まわりのトルクを付与してツメ100をツメ受け部90に対して付勢する係止力とは、ともに第二のスプリング92の付勢力によって得られるので、1本のスプリングで2つの力を得ることができ、部品点数の削減とともにコスト低減も同時に図ることができて好適である。
図12は、トップカバー4の前辺部を洗濯物投入口3の側から見た部分斜視図である。開蓋ボタン33に近接した洗濯物投入口3の前辺中央にはスリット93が設けられ、その内側を押上部材34が上下方向に移動する。ここで、蓋体5が開いた状態、すなわち押上部材34が最も上昇した位置においては、押上部材34はスリット93の隙間に沿った形状であるとすれば、スリット93の隙間は内側から押上部材34によって塞がれた状態となる。そのため、蓋体5を開いた状態においてスリット93から異物がトップカバー4の内部に侵入することがない。一例として、洗濯物投入口3の後面にある洗剤ケース13に粉末洗剤を投入しようとした際に、粉末洗剤の一部がこぼれると、その大部分は洗濯物投入口3から水槽18内に入って洗濯物に掛る。粉末洗剤の一部はスリット93に入り込むものの、その粉末洗剤は押上部材34上面の押上面45に蓄積するだけであってトップカバー4の内部には侵入することがない。したがって、洗濯機の内部に入り込んだ洗剤によって不具合が生じることがなく、信頼性の高い洗濯機が得られる。
図13は洗濯乾燥機の制御装置80のブロック図である。81はマイクロコンピュータで、図示しない各スイッチに接続される操作ボタン入力回路82や水位センサ27、振動センサ28と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程等での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ81からの出力は、駆動回路83に接続され、給水電磁弁17、排水弁47、駆動モータ24、電磁操作クラッチ25、ロック手段9などに接続され、これらの開閉や回転、通電を制御する。また、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための例えば7セグメント発光ダイオードのような表示器84やブザー85、発光ダイオード87に接続される。前記マイクロコンピュータ81は、電源スイッチ86が押されて電源が投入されると起動し、図14に示すような洗濯および脱水の基本的な制御処理プログラムを実行する。
ステップS101
電気洗濯機の状態確認及び初期設定を行う。
ステップS102
操作パネル20の図示しないスタートスイッチからの指示入力を監視して処理を分岐する。
ステップS103
洗剤量を検出する。洗濯水を給水する以前に、水槽18を停止した状態で回転翼22のみを一方向に回転させるよう電磁操作クラッチ25と駆動モータ24とを制御し、回転翼22に生じる回転負荷量に基づいて布量を検出する。検出した布量に基づいて必要な洗剤量を求める。
ステップS104
求めた洗剤量を操作パネル20の表示器84に表示する。
ステップS105
使用者が、必要な量の洗剤を洗剤ケース13に投入したら、洗剤給水電磁弁17を開き、洗剤ケース13の洗剤投入室に給水する。洗剤投入室に投入された粉末洗剤は、洗剤給水の水とともに洗剤・柔軟剤投入口14から外槽15の底部に落下する。
ステップS106
洗剤溶かし水位まで給水したら、洗剤給水を停止する。このときの給水量は例えば10L程度である。
ステップS107
水槽18と回転翼22とを一体として一方向に低速度で回転させることによって、水槽18の底面で外槽15の底部に投入された洗剤と洗剤溶かし水とを撹拌して高濃度の洗い水を生成する、洗剤溶かしを行う。
ステップS108
前洗いを実行する。この前洗いにおいては、水槽18を停止した状態で回転翼22を正逆回転させる撹拌を間欠的に行う。回転翼22の停止時間中に、水位センサ27の検出信号を参照しながら、洗剤給水電磁弁17および洗濯給水電磁弁17を開いて水位が設定水位を超えないように水を補給する。この運転を複数回繰り返して、洗濯物を洗い水になじませて回転翼22上に分散させるように行う。
ステップS109
本洗いを実行する。この本洗いにおいては、水槽18を停止した状態で回転翼22を正逆回転させ、洗濯物は水槽内で円周方向および半径方向に入れ替わり、満遍なく洗浄される。
ステップS110
第一回の溜めすすぎを実行する。この溜めすすぎでは、まず排水弁47を開いて外槽15の底部に溜まっている洗い水を排水した後に水槽18と回転翼22を一体として一方向に回転させて洗濯物に含まれている洗い水を遠心脱水する。その後、排水弁47を閉じて水槽18と回転翼22を一体的に一方向に低速回転させながら、洗濯給水電磁弁を開放して水道水を給水入口29から回転翼上の洗濯物に振り掛けるように給水する。次に、水槽18と回転翼22の回転を停止した状態で、外槽15の底部の水位が設定した水位を超えないようにすすぎ水を給水する。次に、本洗いと同様に、水槽18を停止した状態で回転翼22を正逆回転させる、すすぎ水撹拌すすぎを実行する。次に、回転翼22の運転を停止した状態で、外槽15の底部に溜まるすすぎ水の水位を検出しながら、水位が設定水位を超えないように水を補給する。次に、水槽を停止させた状態で回転翼22を正逆回転させることで、水槽18内の洗濯物は円周方向と半径方向に入れ替わるので、すすぎ水が洗濯物に満遍なくかかり、洗剤分が希釈される。
ステップS111
第二回の溜めすすぎを実行する。この第二回の溜めすすぎは、柔軟剤給水電磁弁17を開いて洗剤ケース13内の柔軟剤投入室に給水することによって、柔軟剤を外槽15の底部に導入する制御を付加する以外の動作は、第一回の溜めすすぎと同様に行う。
ステップS112
最終脱水処理を実行する。最終脱水は、排水弁47を開放としたままの状態で水槽18と回転翼22とを一体として一方向に高速回転させ、水槽18内の洗濯物を遠心脱水する。
上記説明したように、本実施形態によれば、開蓋ボタン33を押下することでツメ100とツメ受け部90との係合が外れ、蓋体5の前辺が第二のスプリング92の付勢力によって例えば20mm程度、手指を挿入できるまで上昇するので、蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
またさらに、蓋体5が閉じた際には第二のスプリング92の付勢力によってツメ100はツメ受け部90に勢いよく衝突するので、その音と感触とによって蓋体5が閉じられたことが明確に使用者に伝えられる、使いやすい開蓋手段32を提供できる、という効果がある。特に、ガラス板を用いた蓋体5であって意匠性と清掃性を考慮して表面に取っ手を形成していない場合であっても、蓋体5の開閉操作が容易である。
またさらに、開蓋ボタン33を操作しないまま操作者が蓋体5の例えば前辺や側辺に指をかけて蓋体5を上方に開いた場合には、押上部材34は下降した位置のまま、蓋体5を開くことができる。すなわち、ツメ100とツメ受け部90との係止部に無理な力が加わってツメ100が破損したり無理に係止部が外れることがない、という効果がある。
またさらに、押上部材34が上下方向に移動するためにトップカバー4に設けられたスリット93は、蓋体5が開いた状態においてはスリット93の隙間は内側から押上部材34によって塞がれた状態となるので、蓋体5を開いた状態においてスリット93から例えば洗剤のような異物がトップカバー4の内部に侵入することがなく、信頼性の高い洗濯機が得られる。
またさらに、開蓋ボタン33の押下動作によってツメ100とツメ受け部90との係止が外れて、第二のスプリング92の付勢力によって押上部材34がガイドレール42に沿って上昇する一連の動作は、開蓋手段32をトップカバー4に取付ける以前に、開蓋手段32の部分組立状態で動作確認することができる。したがって、開蓋手段32の部分組立状態で動作確認した後にトップカバー4に取り付けることで、動作が確実で信頼性が高い開蓋手段32を実現できる、という効果がある。
またさらに、押上部材34を上方に押し上げる力と、第二のレバー94に時計まわりのトルクを付与してツメ100をツメ受け部90に対して付勢する係止力とは、ともに第二のスプリング92の付勢力によって得られるので、1本のスプリングで2つの力を得ることができ、部品点数の削減とともにコスト低減も同時に図ることができる、という効果がある。
次に図15により、第2の実施形態における開蓋手段32の構成と、蓋体5を開く動作について説明する。図15(a)から図15(d)は第2の実施形態の蓋開手段32bの構成と動作を示す部分断面図である。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、ツメ100と噛合うツメ受け部102が、押上部材34ではなく蓋体5に設けられた押上突起101に設けられた凹部であって、ツメ100によって押し上げ部材34の上昇すなわち蓋体5の開き動作を阻止していることである。すなわち、開蓋ボタン33を押さずに蓋体5を手で持ち上げようとした場合には、ツメ100とツメ受け部102とが勘合してロックが掛かった状態なので、蓋体5を持ち上げることはできない。
図15(a)は蓋体5が閉じた状態を示している。押上突起101に設けられた凹部であるツメ受け部102には第二のレバー94に設けられたツメ100が掛かっており、蓋体5は閉じ位置でロックされた状態にある。
図15(b)は、開蓋ボタン33が下方に押された状態を示している。第一のレバー35が回動して押し部41が第二のレバー94を反時計方向に回動することで押上突起101のツメ受け部102に対するツメ100の係止が外れる。
図15(c)は第二のスプリング92の付勢力によって押上部材34が上昇する動作状態を示しており、押上部材34の押上面45が押上突起101を押し上げることで蓋体5の前辺が上昇し、その上昇量は例えば20mm程度とすれば、蓋体5の前辺とトップカバー4の上面との間の隙間に指先を挿入することができる。
図15(d)は開蓋ボタン33から操作者が手指を離して、開蓋ボタン33および第一のレバー35が第一のスプリング40の付勢力によって上方に移動した状態を示している。この状態から蓋体5を開くこともできるし、蓋体5の前辺を押し下げれば、押上突起101を介して押上部材34が下降し、ツメ受け部102とツメ100とが嵌合して図15(a)の状態に戻る。
本実施形態によれば、開蓋ボタン33を押下することでツメ100とツメ受け部102との係合が外れ、蓋体5の前辺が第二のスプリング92の付勢力によって例えば20mm程度、手指を挿入できるまで上昇するので、蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
次に図16により、第3の実施形態における開蓋手段32cの構成と、蓋体5を開く動作について説明する。図16(a)から図16(d)は第3の実施形態の蓋開手段32cの構成と動作を示す部分断面図である。
図16(a)は蓋体5が閉じた状態を示している。第3の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第二のレバー94に替えて、押上突起101と第一のレバー35に設けられた押し部41との間に設けられた第三の支点103のまわりに回動自在に軸支された第三のレバー(アーム)104を備え、第三のレバー104の前側の一端104aは押し部41と当接し、第三のレバー104の他端である先端部104bは押上突起101の前方下端に設けられた段差である切欠部105の近傍に当接している。第三のレバー104の重心位置は、第三の支点103と先端部104bとの間に位置する。
図16(b)は、開蓋ボタン33が下方に押された状態を示している。開蓋ボタン33が下降することで第一のレバー35に設けられた押し部41が押し下げられて第三のレバー104を第三の支点103のまわりに反時計まわり方向に回動させ、第三のレバー104の先端部104bは上昇して押上突起101を押し上げて、蓋体5の前辺を例えば20mm程度押し上げ、押上突起101の前方下端に設けられた段差である切欠部105と当接する。
図16(c)は、開蓋ボタン33から操作者が手指を離した状態を示しており、第三のレバー104の先端部104bと押上突起101の切欠部105と当接しているので、第三のレバー104は先端部104bと第三の支点103との間でつっかえ棒となって、そのまま蓋体5は例えば20mm程度上昇した位置で保持される。この状態で、蓋体5の前辺部に手指を挿入することができる。
図16(d)は、蓋体5の前辺に手指を挿入して矢印方向に開く動作を示しており、蓋体5を図2に示した全開状態まで開くことができる。押上突起101は蓋体5とともに上昇するので、蓋体5を開き始めると第三のレバー104の先端部104bと押上突起101の切欠部105との嵌合が外れ、第三のレバー104は自重によって図示時計回りに回動して一端104aが第一のレバー35の押し部41に当接する位置、すなわち図16(a)と同じ位置に戻る。
したがって、蓋体5を閉じた際には、押上突起101は第三のレバー104の先端部104bとは嵌合しないので、蓋体5は図16(a)に示した位置に戻って閉じることができる。
本実施形態によれば、開蓋ボタン33を押下することで蓋体5の前辺を上昇させることができ、蓋体5の前辺を上昇させた位置で保持することができるので、蓋体5の前辺部に手指を挿入して蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
次に図17により、第4の実施形態における開蓋手段32dの構成と、蓋体5を開く動作について説明する。図17(a)と図17(b)は第4の実施形態の蓋開手段32dの構成と動作を示す部分断面図である。
図17(a)は蓋体5が閉じた状態を示している。第4の実施形態において、開蓋ボタン106は蓋体5の前辺よりも前方に配置された第四の支点107のまわりに回動自在に軸支されており、開蓋ボタン106の後辺は蓋体5の前辺よりも後方まで延伸されており、第四の支点107にはねじりバネ108が設けられて開蓋ボタン106に図示反時計まわりのトルク、すなわち開蓋ボタン106の後辺を蓋体5の下面に向けて押圧する方向のトルクを生じている。
図17(b)は蓋体5を開く際の動作を示している。操作者が開蓋ボタン106を押し下げると開蓋ボタン106の上面と蓋体5の前辺下面との間には手指を挿入できる隙間が生じるので、そのまま蓋体5の前辺を手指で持ち上げて、蓋体5を開くことができる。
図17(c)は第4の実施形態の洗濯機本体1を示す外観斜視図であり、開蓋ボタン106は蓋体5の前辺の前方から前辺の後方まで、蓋体5の前辺を跨いで配置されている。
本実施形態によれば、開蓋ボタン33を押下することで蓋体5の前辺下部に手指を挿入することができるので、蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
次に図18により、第5の実施形態における開蓋手段32eの構成と、蓋体5を開く動作について説明する。図18(a)は第5の実施形態を示す洗濯機本体1の平面図である。図18(b)と図18(c)は第5の実施形態の蓋開手段32eの構成と動作を示す部分断面図である。
第5の実施形態が第1の実施形態と異なるところは、押上突起101にロック受け穴10を設け、ロック手段9を押上突起101の近傍に設け、ロック手段9の動作によって、ロッド9aを押上突起101に設けたロック受け穴10に挿入ないし離脱するように配置したことである。
すなわち、ロック手段9が動作せずロッド9aが引き込んだ状態ではロッド9aは押上突起101に作用しないので、押上突起101は第1の実施形態と同様に蓋体5とともに自在に開く構成である。一方、洗濯工程ないし脱水工程において、ロッド9aを押上突起101に向けて突き出してロック受け穴10に挿入した際には、押上突起101は蓋体5と一体なのでともに開かないので、蓋体5をロックすることができる。
図18(b)と図18(c)において、ロック手段9が動作せずロッド9aが引き込んだ状態では、図18(b)は図11(a)と同じく蓋体5が閉鎖された状態を示しており、図18(c)は図11(c)と同じく開蓋ボタン33を押下してツメ100とツメ受け部90との嵌合が外れ、第二のスプリング92の付勢力によって押上部材34を介して蓋体5の前辺が上昇し、さらに操作者が手指を用いて蓋体5を開く状態を示している。
ロック手段9が動作してロッド9aを押上突起101に向けて突き出してロック受け穴10に挿入した際には、図18(b)において蓋体5はロックされており、この状態で開蓋ボタン33を操作して、第一のレバー35を介して第二のレバー94が反時計方向に回動してツメ100がツメ受け部90から離反したとしても、蓋体5はロックされているので閉じたままとなる。
本実施形態によれば、開蓋ボタン33を押下することで蓋体5の前辺を上昇させることができ、蓋体5の前辺を上昇させた位置で保持することができるので、蓋体5の前辺部に手指を挿入して、蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
またさらに、押上突起101にロック受け穴10を設け、ロック手段9を押上突起101の近傍に設け、ロック手段9の動作によって、ロッド9aを押上突起101に設けたロック受け穴10に挿入ないし離脱するように配置したので、蓋体5の下面に設けられる突起は押上突起101のみなので、余計な突起が少ないので清掃がしやすく、使い勝手の良い洗濯機を提供できる、という効果がある。
またさらに、トップカバー4にはロック受け凹部8は不要なので、洗剤などの異物がロック受け凹部8から洗濯機の内部に落下することがなく、汚れが付きにくいとともに信頼性の高い洗濯機を提供できる、という効果がある。
次に図19から図21により、第6の実施形態における開蓋手段32fの構成と、蓋体5を開く動作について説明する。図19(a)は第6の実施形態を示す洗濯機本体1の平面図である。図19(b)と図19(c)は第6の実施形態の蓋開手段32fの構成と動作を示す部分断面図である。図20(a)から図20(c)は、第6の実施形態における蓋開手段32fの一例の構成と動作を示す斜視図である。図21はモータとロッドと押上部材の動作を示すタイミングチャートである。
第6の実施形態が第5の実施形態と異なるところは、押上突起101を介して蓋体5を上昇させる押上部材34の押上手段はスプリングの付勢力ではなく、モータの駆動力を用いて、開蓋ボタン33はアームを駆動するのではなくスイッチをONさせる点である。
図19(a)から図19(c)において、スイッチ109は例えばタクトスイッチであって、開蓋ボタン33の押下によってOFFからONとなるよう配置されている。押上部材34の下部には第五の支点110のまわりに回転自在に軸支され、モータ112によって駆動され図示しない減速手段を介して駆動される第五のレバー(アーム)111を備え、第五のレバー111の先端部は押上部材34を上方に向けて移動させる構成である。モータ112はまた、ロッド9aを押上突起101に設けられたロック受け穴10に挿入ないし離脱するように動作する。
図20(a)から図20(c)において、モータ112の回転力は図示しない減速手段を介して減速され、図20(a)に示すように押上突起101が下降し、かつロッド9aが引き込んだ状態では、図20(b)に示すようにロッド9aを矢印方向に突き出してロック受け穴10内に挿入する動作、および反矢印方向にロッド9aを移動して引き込んで図20(a)に示す元の位置に復帰する動作を行うことができる。
またさらに、図20(a)に示したロッド9aが引き込んだ状態では、押上部材34を上昇させる動作、および下降する動作を行うことができる。すなわち、図20(c)に示すようにモータ112の回転力によって第五の支点110のまわりに第五のレバー111を回動し、押上部材34をガイドレール113に沿って上昇させることで、図示しない押上突起101を押し上げて押上面45を介して蓋体5の前辺を例えば20mm程度上昇させることができる。以上説明したように、図20(a)に示す位置はロッド9aの動作と押上部材34の両方の動作の動作前位置となるので、これを原点位置にあるものと称する。
次に、図21のタイミングチャートを用いて第6の実施形態における開蓋手段32fの動作について説明する。t=0における(a)原点位置は、図20(a)に対応した状態に対応しており、モータ112は回転しておらず、ロッド9aは引き込んだ状態であり、さらに押上部材34は下降した位置にある。
ここで、モータ112を時計回り方向(CW方向)に回転させた時にロッド9aが突出し動作をするように減速手段が配置されているものとすれば、t=t1以降のモータ112の回転とともにロッド9aは図20(b)に示すように矢印方向に突き出してロック受け穴10に挿入され、t=t2において(b)洗濯脱水状態、すなわち図20(b)に対応した状態となって、洗濯機の動作中に蓋体5を閉じ位置でロックする。
t=t3において洗濯脱水が終了して水槽18が停止したら、モータ112を反時計方向(CCW方向)に回転させることでt=t4までにロッド9aは引き込んで図20(a)の状態に戻り、ふたたび(a)原点位置となる。
ここで、t=t5において操作者が開蓋ボタン33を押下してスイッチ109がOFFからONになると、モータ112を反時計方向(CCW方向)に回転させるよう通電することでt=t6まで第五のアーム111を先端が上昇する方向に回動させて押上部材34を上昇させ、図20(c)の状態として押上突起101を介して蓋体5の前辺を上昇させる。しかるのちに、蓋体5の前辺下部に手指を挿入して蓋体5を容易に開くことができる。
蓋体5を閉じた後、t=t7において再度開蓋ボタン33を押下してスイッチ109をOFFからONにして、モータ112を時計方向(CW方向)に回転させるよう通電することでt=t8まで第五のアーム111を先端が下降する方向に回動させて押上部材34を下降させることで図20(a)の状態に戻り、ふたたび(a)原点位置となる。
本実施形態によれば、ロッド9aの突出し動作による洗濯脱水工程中の蓋体5のロック動作と、蓋体5前辺の上昇動作とをただ一つの電動の開蓋手段32fによって実現することができるので、簡単な構成で実現できる、という効果がある。さらに蓋体5前辺の上昇動作は電動なので、操作者は開蓋ボタン33の操作では単にスイッチ109を押すだけでよく、わずかな操作力で蓋体5を開くことができるので、使い勝手の良好な洗濯機を提供できる、という効果がある。
なお、本実施形態においては、乾燥機能をもたない電気洗濯機として説明したが、乾燥機能を備えた洗濯乾燥機であってもよい。
上述の実施形態によれば、トグルばねを用いなくとも、蓋体の開閉回動動作中の所定の角度で、開き方向または閉じ方向への付勢力を切り替えることができるので、部品点数が少なく、構造が簡単でかつ使い易い蓋体5を備えた洗濯機が得られる、という効果がある。
本発明によればさらに、蓋体5を回動しても蓋体バネ55a、55bの第一の延伸部58a、58bと第二の延伸部59a、59bとはともに蓋ヒンジカバー51ないしヒンジカバー70a、70bの外周に突出することがないので、蓋体5には蓋体バネ55a、55bとの干渉を防止するための溝などが不要であり、洗剤や水が溝から浸入してばねが錆びることがない、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、一対の回転ダンパ60a、60bの一方は、蓋体5の開動作の際に粘性抵抗トルクが作用する構成であり、他方は蓋体5の閉じ動作の際に粘性抵抗トルクが作用する構成とすることで、蓋体5の開閉動作を低速化することができ、蓋体5が急激に閉じたり、あるいは全開の近傍で急激に開いたりすることがなく、安定した蓋体5の開閉動作を行える、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、押上部材34の押上面45が押上突起101を押し上げることで蓋体5の前辺が上昇し、その上昇量は例えば20mm程度とすれば、蓋体5の前辺とトップカバー4の上面との間の隙間に指先を挿入することができるので、トップカバー4の上面に予め隙間を設けておかなくても蓋体5が開きやすい洗濯機を提供できる、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、トップカバー4に設けられ、蓋体5に設けられた押上突起101の侵入するスリット93の隙間は内側から押上部材34によって塞がれた状態となる。そのため、蓋体5を開いた状態においてスリット93から異物がトップカバー4の内部に侵入することがない、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、蓋体5を閉じた際には第二のスプリング92による付勢力によってツメ100はツメ受け部90に勢いよく衝突することになり、その際に生じる音や感触によって使用者はツメ100がツメ受け部90に嵌合したことを明確に認識できる。したがって、蓋体5が閉じられたことが明確に使用者に伝えられる、使いやすい開蓋手段32を提供できる、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、押上部材34を上方に押し上げる力と、第二のレバー94に時計まわりのトルクを付与してツメ100をツメ受け部90に対して付勢する係止力とは、ともに第二のスプリング92の付勢力によって得られるので、1本のスプリングで2つの力を得ることができ、部品点数の削減とともにコスト低減も同時に図ることができる、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、開蓋ボタン33を操作しないまま操作者が蓋体5の例えば前辺や側辺に指をかけて蓋体5を上方に開いた場合には、押上部材34は下降した位置のまま、蓋体5を開くことができる。すなわち、ツメ100とツメ受け部90との係止部に無理な力が加わってツメ100が破損したり無理に係止部が外れることがなく、信頼性の高い開蓋手段を備えた洗濯機を提供できる、という効果がある。
上述の実施形態によればさらに、開蓋ボタン33の押下動作によってツメ100とツメ受け部90との係止が外れて、第二のスプリング92の付勢力によって押上部材34がガイドレール42に沿って上昇する一連の動作は、開蓋手段32をトップカバー4に取付ける以前に、開蓋手段32の部分組立状態で動作確認することができる。開蓋手段32の部分組立状態で動作確認した後にトップカバー4に取り付けることで、動作が確実で信頼性の高い洗濯機を得ることができる、という効果がある。
第3の実施形態によればさらに、開蓋ボタン33を押下することで蓋体5の前辺を上昇させることができ、蓋体5の前辺を上昇させた位置で保持することができるので、蓋体5の前辺部に手指を挿入して蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
第4の実施形態によればさらに、開蓋ボタン33を押下することで蓋体5の前辺下部に手指を挿入することができるので、蓋体5を開くことが容易な使いやすい洗濯機を得ることができる、という効果がある。
第5の実施形態によればさらに、押上突起101にロック受け穴10を設け、ロック手段9を押上突起101の近傍に設け、ロック手段9の動作によって、ロッド9aを押上突起101に設けたロック受け穴10に挿入ないし離脱するように配置したので、蓋体5の下面に設けられる突起は押上突起101のみなので、余計な突起が少ないので清掃がしやすく、使い勝手の良い洗濯機を提供できる、という効果がある。
第6の実施形態によればさらに、ロッド9aの突出し動作による洗濯脱水工程中の蓋体5のロック動作と、蓋体5前辺の上昇動作とをただ一つの電動の開蓋手段32fによって実現することができるので、簡単な構成で実現できる、という効果がある。さらに蓋体5前辺の上昇動作は電動なので、操作者は開蓋ボタン33の操作では単にスイッチ109を押すだけでよく、わずかな操作力で蓋体5を開くことができるので、使い勝手の良好な洗濯機を提供できる、という効果がある。