以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。図1の紙面に直交する方向を縦型洗濯機1の左右方向Xといい、図1における左右方向を縦型洗濯機1の前後方向Yといい、図1における上下方向を縦型洗濯機1の上下方向Zという。左右方向Xおよび前後方向Yは、水平方向Hに含まれる。左右方向Xのうち、図1の紙面における奥側を左側X1といい、図1の紙面における手前側を右側X2という。前後方向Yのうち、図1における左側を前側Y1といい、図1における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。縦型洗濯機1は、筐体2と、筐体2内に配置された外槽3と、外槽3内に配置された洗濯槽4と、洗濯槽4内に配置されたパルセータ5と、筐体2内における外槽3よりも下側Z2に配置されたモータ6およびクラッチ7とを含む。
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Bが形成される。上面2Aには、開口2Bを開閉する扉10が設けられる。扉10は、縦型洗濯機1における外蓋として機能する。上面2Aにおける開口2Bの周囲には、液晶操作パネルなどで構成された表示操作部11が設けられる。縦型洗濯機1の使用者は、表示操作部11を操作することによって、縦型洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件を選択したり、縦型洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。表示操作部11には、使用者向けの情報が表示される。
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された筒状、詳しくは略円筒状の外槽本体3Aと、外槽本体3Aの上端に上側Z1から接続された外槽カバー3Bとを有する。外槽本体3Aは、略円筒状の円周壁3Cと、円周壁3Cの下端に接続されて円周壁3Cの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁3Dとを有する。円周壁3Cの上端が外槽本体3Aの上端である。円周壁3Cの中空部分は、外槽本体3Aの内部空間である。外槽カバー3Bは、円周壁3Cの上端に沿って円周壁3Cの円中心側へ張り出したリング状に形成される。外槽カバー3Bの内側には、円周壁3Cの中空部分に上側Z1から連通した出入口3Eが形成される。出入口3Eは、筐体2の開口2Bに対して下側Z2から対向して連通した状態にある。外槽カバー3Bには、出入口3Eを開閉する蓋12が設けられる。蓋12は、縦型洗濯機1における内蓋として機能する。蓋12は、左右方向Xに延びる回動軸線Kまわりに回動可能に、外槽カバー3Bによって支持される。外槽カバー3Bの下面には、出入口3Eを縁取りつつ斜め下側へ傾斜したガイド面3Fが設けられる。底壁3Dは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Dの円中心位置には、底壁3Dを貫通した貫通穴3Gが形成される。
外槽カバー3Bにおいて出入口3Eよりも後側Y2の部分には、水道水の蛇口につながった給水路13が上側Z1から接続される。給水路13の途中には、例えば電磁弁によって構成された給水弁14が設けられる。外槽3の底壁3Dには、排水路15が下側Z2から接続される。排水路15の途中には、排水弁16が設けられる。排水弁16が閉じた状態で給水弁14が開くと、給水路13から外槽3内に給水されることによって、外槽3内に水が溜められる。給水弁14が閉じると、給水が停止する。排水弁16が開くと、外槽3内の水が排水路15から機外に排出される。
洗濯槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽4は、外槽3内に同軸状で配置される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、その中心軸として上下方向Zに延びる軸線Jまわりに回転可能である。洗濯槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁4Bと、円周壁4Aの上端縁に沿って軸線J側へ張り出したリング状の環状壁4Cとを有する。以下では、軸線Jを中心とする径方向を径方向Rといい、径方向Rのうち、軸線Jに向う側を径方向内側R1といい、軸線Jから離れる側を径方向外側R2という。
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aは、外槽3の円周壁3Cによって取り囲まれた状態にある。底壁4Bは、洗濯槽4の下端に設けられる。環状壁4Cは、外槽3の外槽カバー3Bに対して下側Z2から対向した状態にある。環状壁4Cの内側には、開口4Dが形成される。開口4Dは、洗濯槽4の上端に位置し、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる。開口4Dは、外槽3の出入口3Eに対して下側Z2から対向して連通した状態にある。使用者は、開放された開口2B、出入口3Eおよび開口4Dを介して、洗濯槽4に対して上側Z1から洗濯物Qを出し入れする。
洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通穴4Eが複数形成され、外槽3内の水は、貫通穴4Eを介して外槽3と洗濯槽4との間で行き来して、洗濯槽4内にも溜められる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは、一致する。なお、貫通穴4Eは、円周壁4Aには設けられずに、底壁4Bだけに設けられてもよい。
洗濯槽4の底壁4Bは、円板状に形成され、外槽3の底壁3Dに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる。底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通した貫通穴4Fが形成される。底壁4Bには、貫通穴4Fを取り囲みつつ軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸17が設けられる。支持軸17は、外槽3の底壁3Dの貫通穴3Gに挿通されて、支持軸17の下端部は、底壁3Dよりも下側Z2に位置する。
パルセータ5は、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4内において底壁4B上に配置される。パルセータ5において洗濯槽4の開口4Dを臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。パルセータ5には、その円中心から軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸18が設けられる。回転軸18は、支持軸17の中空部分に挿通されて、回転軸18の下端部は、外槽3の底壁3Dよりも下側Z2に位置する。
モータ6は、インバータモータなどの電動モータである。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ6は、軸線Jを中心として回転する出力軸19を有し、発生した駆動力を出力軸19から出力する。
クラッチ7は、支持軸17および回転軸18のそれぞれの下端部と、モータ6から上側Z1に突出した出力軸19の上端部との間に介在される。クラッチ7は、モータ6が出力軸19から出力する駆動力を、支持軸17および回転軸18の一方または両方に対して選択的に伝達する。モータ6からの駆動力が支持軸17に伝達されると、洗濯槽4が、モータ6の駆動力を受けて軸線Jまわりに回転する。モータ6からの駆動力が回転軸18に伝達されると、パルセータ5が、モータ6の駆動力を受けて軸線Jまわりに回転する。クラッチ7として、公知の伝達機構が用いられる。
縦型洗濯機1は、CPUおよびメモリによって構成されて筐体2内に内蔵されたマイクロコンピュータ21を含む。モータ6、クラッチ7、表示操作部11、給水弁14および排水弁16のそれぞれは、マイクロコンピュータ21に対して電気的に接続される。マイクロコンピュータ21は、モータ6をONにして駆動させたり、OFFにして停止させたりする。マイクロコンピュータ21は、クラッチ7を制御することによって、モータ6の駆動力の伝達先を洗濯槽4およびパルセータ5の一方または両方へと切り替える。使用者が表示操作部11を操作して運転条件などについて選択すると、マイクロコンピュータ21は、その選択を受け付ける。マイクロコンピュータ21は、表示操作部11の表示内容を制御する。マイクロコンピュータ21は、給水弁14および排水弁16の開閉を制御する。
マイクロコンピュータ21は、モータ6、クラッチ7、給水弁14および排水弁16の動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、すすぎ工程の後に洗濯槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程とを有する。縦型洗濯機1は、脱水工程の後に洗濯物Qを乾燥させる乾燥工程も実行する洗濯乾燥機であってもよい。使用者が洗濯物Qおよび洗剤を洗濯槽4内に投入して表示操作部11の操作によって洗濯運転の開始を指示すると、マイクロコンピュータ21は、洗い工程を開始する。
洗い工程の開始に伴い、マイクロコンピュータ21は、まず、排水弁16が閉じた状態で給水弁14を連続的に開いて洗濯槽4内に給水し、洗濯槽4内に所定水位Wまで水を溜める。その後、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力がパルセータ5に伝達されるように必要に応じてクラッチ7を切り替えてから、モータ6を駆動させることによってパルセータ5を所定時間回転させる。これにより、洗濯槽4内の洗濯物Qが、回転するパルセータ5によって攪拌洗いされる。また、水に溶けた洗剤によって洗濯物Qの汚れが分解される。
攪拌洗いの後、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力が洗濯槽4に伝達されるようにクラッチ7を切り替えてからモータ6をONにする。これにより、水が溜まった洗濯槽4が、例えば200rpmで高速回転する。すると、外槽3内に渦が発生し、外槽3内の水面Sは、軸線J側の中央部が低くなって外周部が高くなるようにU字状に湾曲する(図1の細い2点鎖線を参照)。これにより、外槽3内の水が、外槽3の円周壁3Cと洗濯槽4の円周壁4Aとの間で上昇する。上昇した水は、外槽3の外槽カバー3Bの下面に並んで設けられたリブ22の間を通ってスパイラル状に旋回しながら落下し、洗濯槽4の開口4Dから洗濯槽4内に浴びせられる(図1の太い2点鎖線矢印を参照)。その際、外槽3の外槽カバー3Bのガイド面3Fが、リブ22の間を通る水を開口4Dへ向けて下向きにガイドする。洗濯槽4の回転による上側Z1からの散水により、開口4D側の洗濯物Qも確実に洗濯できる。このような洗濯槽4の回転は、所定時間継続した後に停止され、これにより、洗い工程が終了する。
次に、マイクロコンピュータ21は、洗い工程後の脱水工程、つまり中間脱水工程として、排水弁16を開いた状態で、洗濯槽4を高速回転させる。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽4内の洗濯物が脱水される。脱水により洗濯物から染み出た水は、排水路15から機外に排出される。中間脱水工程の最後に、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を閉じる。
次に、マイクロコンピュータ21は、すすぎ工程を実行する。すすぎ工程の一例として、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を開いた状態で、給水弁14を間欠的に開くことによって、洗濯槽4内にシャワー給水する。この状態で、マイクロコンピュータ21は、洗濯物Qの隅々にシャワーが行き渡るように洗濯槽4を例えば30rpmで低速回転させる。これにより、洗濯槽4内の洗濯物Qが満遍なくすすがれる。すすぎ工程の別の例として、マイクロコンピュータ21は、洗い工程と同様に、給水してからパルセータ5を回転させることによって洗濯物Qを攪拌すすぎし、その後に洗濯槽4を回転させることによって洗濯物Qに上側Z1から散水する。
すすぎ工程が2回以上実行されてもよく、その場合には、マイクロコンピュータ21は、すすぎ工程と次のすすぎ工程との間に中間脱水工程を実行し、最後のすすぎ工程の後に、中間脱水工程と同様の最終脱水工程を実行する。洗濯槽4の回転条件は、中間脱水工程と最終脱水工程とで異なってもよく、特に、最終脱水工程における洗濯槽4の最高回転数は、中間脱水工程における洗濯槽4の最高回転数よりも高い。最終脱水工程の終了により、洗濯運転が終了する。
次に、外槽カバー3Bおよび蓋12について詳しく説明する。図2は、外槽カバー3Bの出入口3Eを閉じた閉状態にある蓋12および外槽カバー3Bの平面図である。外槽カバー3Bは、略左右対称に構成される。外槽カバー3Bの外周縁は、略円形状に形成される。外槽カバー3Bにおける後寄りの領域には、給水路13などが接続される単数または複数の接続口3Hが形成される。出入口3Eは、外槽カバー3Bにおいて接続口3Hよりも前側Y1に形成される。
図3は、外槽カバー3Bの出入口3Eを開いた開状態にある蓋12および外槽カバー3Bの斜視図である。外槽カバー3Bにおいて出入口3Eを区画する内周面部3Iは、前側Y1へ膨出する円弧状の前内周面部3Jと、左右方向Xに沿って略直線状に延びて前内周面部3Jの左右の後端をつなぐ後内周面部3Kとを有する半円形状に形成される。前内周面部3Jは、外槽カバー3Bの上面部3BAにおける前内周面部3Jとの境界から下側Z2へ延びる上縦壁3JAと、上縦壁3JAの下端から径方向内側R1へ張り出した横壁3JBと、横壁3JBにおける径方向内側R1の端から下側Z2へ延びる下縦壁3JCとを一体的に有する。上縦壁3JA、横壁3JBおよび下縦壁3JCは、平面視において前側Y1へ膨出する円弧状に形成される。上縦壁3JAの前端部には、上縦壁3JAの周方向に沿って延びて前側Y1へ窪んだロック溝3Lが設けられる(後述する図13も参照)。
後内周面部3Kは、外槽カバー3Bの上面部3BAにおける後内周面部3Kとの境界から下側Z2へ延びる上縦壁3KAと、上縦壁3KAの下端から径方向内側R1、この場合には前側Y1へ張り出した横壁3KBと、横壁3KBの前端から下側Z2へ延びる下縦壁3KCとを一体的に有する。上縦壁3KAは、左右方向Xに直線状に延び、上縦壁3JAの左右の後端間に架設される。上縦壁3KAと上縦壁3JAとは、平面視で湾曲しながら連続する。横壁3KBは、左右方向Xに直線状に延び、横壁3JBの左右の後端間に架設される。横壁3KBと横壁3JBとは、平面視で湾曲しながら連続する。下縦壁3KCは、左右方向Xに直線状に延び、下縦壁3JCの左右の後端間に架設される。下縦壁3KCと下縦壁3JCとは、平面視で湾曲しながら連続する。
図4は、蓋12が外槽カバー3Bから分離した状態における要部斜視図である。外槽カバー3Bの上面部3BAにおいて後内周面部3Kの中央部に後側Y2から隣接する位置には、左右方向Xに直線状に延びて下側Z2へ窪んだ凹部3Mが設けられる。凹部3Mは、後内周面部3Kの上縦壁3KAから後側Y2へ窪む。これにより、上縦壁3KAは、凹部3Mよりも左側X1の左部分3KLと、凹部3Mよりも右側X2の右部分3KRとに分離される。外槽カバー3Bは、左部分3KLの右端から後側Y2へ延びる左縦壁3MLと、右部分3KRの左端から後側Y2へ延びる右縦壁3MRと、左縦壁3MLおよび右縦壁3MRの後端間に架設された奥縦壁3MAと、左縦壁3MLおよび右縦壁3MRの下端間に架設されて奥縦壁3MAの下端につながった底壁3MBとを有する。左縦壁3ML、右縦壁3MR、奥縦壁3MAおよび底壁3MBは、凹部3Mの内面部を構成する。凹部3Mは、左右方向Xに対向する左縦壁3MLおよび右縦壁3MRの間に区画され、奥縦壁3MAによって後側Y2から区画され、底壁3MBによって下側Z2から区画され、前側Y1および上側Z1へ開放される。
外槽カバー3Bには、左右一対の差込穴3Nが形成される。左側X1の差込穴3Nは、凹部3Mの左端に隣接する左縦壁3MLに形成されて左側X1へ延びる左差込穴3NLであり、右側X2の差込穴3Nは、凹部3Mの右端に隣接する右縦壁3MRに形成されて右側X2へ延びる右差込穴3NRである。左差込穴3NLは、真円形状であるのに対し、右差込穴3NRは、真円とは異なる形状であり、例えば平行な直線状の二辺とこれらをつなぐ円弧状の別の二辺とを有する略矩形状の長穴である。底壁3MBは、左右方向Xから見て凹湾曲した上面を有する。底壁3MBの上面には、上側Z1へ僅かに突出した凸部23が設けられる。一例として、一対の凸部23が、左右方向Xに並んで設けられ、各凸部23は、左右方向Xに長手である。前後上下に沿って切断したときの凸部23の断面は、上側Z1へ向けて細くなる略三角形状に形成される。凸部23は、外槽カバー3Bと同じ樹脂などの材料によって外槽カバー3Bに一体形成されてもよいし、外槽カバー3Bとは異なる弾性材料によって形成されて外槽カバー3Bに固定されてもよい。
図5は、閉状態の蓋12の平面図である。蓋12は、略左右対称に構成される。閉状態を基準として、蓋12は、出入口3Eと相似した半円形状を有する板状の本体部12Aと、本体部12Aの後端に設けられて左右方向Xに延びる筒状の回動中心部12Bと、蓋12を閉状態でロックしたり、そのロックを解除したりするロック機構24とを含む。本体部12Aにおいて上面部と下面部とをつなぐ外周面部12Cは、平面視において前側Y1へ膨出した略D字の円弧状に形成される。
図6は、閉状態の蓋12の底面図である。閉状態の蓋12を基準として、本体部12Aの下面部には、外周面部12Cを縁取ったD字状のパッキン25が設けられる。回動中心部12Bは、外周面部12Cにおいて左右方向Xに沿って直線状に延びる後端縁から後側Y2へ突出して設けられる。左右方向Xにおいて、回動中心部12Bは、外周面部12Cの後端縁よりも短い。そのため、回動中心部12Bの左端は、当該後端縁の左端よりも右側X2に位置し、回動中心部12Bの右端は、当該後端縁の右端よりも左側X1に位置する。
閉状態の蓋12を基準として、回動中心部12Bの後側外周面には、係合部26が設けられる。一例として、一対の係合部26が、左右方向Xに並んで設けられ、各係合部26は、左右方向Xに長手で後側Y2へ僅かに突出した凸部である。前後上下に沿って切断したときの係合部26の断面は、後側Y2へ向けて細くなる略三角形状に形成される。係合部26は、回動中心部12Bと同じ樹脂などの材料によって回動中心部12Bに一体形成されてもよいし、回動中心部12Bとは異なる弾性材料によって形成されて回動中心部12Bに固定されてもよい。
蓋12は、回動中心部12Bに設けられた左右一対の回動軸27を有する。蓋12の回動軸線Kは、各回動軸27の中心を通る。右側X2の回動軸27は、回動中心部12Bの右端部に設けられたダンパ軸27Rである。ダンパ軸27Rの右端部27RAは、回動中心部12Bの右端面から右側X2へ突出した状態にある。ダンパ軸27Rに関連して、蓋12は、回動中心部12Bの右端部に内蔵されたダンパ28を有する。ダンパ28として、ロータリダンパなどの公知のダンパを採用できる。ダンパ28は、ダンパ軸27Rを回動軸線Kまわりに回動可能に支持するとともに、ダンパ軸27Rの回動に抵抗を与える。これにより、ダンパ軸27Rは、ダンパ28および回動中心部12Bに対して、ゆっくりと相対回動する。左右方向Xにおけるダンパ軸27Rの位置は、固定される。
左側X1の回動軸27は、回動中心部12Bの左端部によって回動軸線Kに沿ってスライド可能に支持された可動軸27Lである。可動軸27Lの左端部27LAは、回動中心部12Bの左端面から左側X1へ突出した状態にある。回動中心部12Bの左端部の外周面、図6では下側Z2の外周面には、左右方向Xに長手の窪み12Dが形成される。窪み12Dの底には、左右方向Xに延びて回動中心部12Bの内部空間に連通するスリット12Eが形成される。
図7は、図6のA-A矢視断面図である。可動軸27Lの左端部27LAは、円柱状に形成される。可動軸27Lは、左端部27LAよりも大径の円柱状であって左端部27LAに右側X2から連結された本体部27LBと、本体部27LBよりも小径の円柱状であって本体部27LBに右側X2から連結された右端部27LCとを含む。回動中心部12Bの左端壁12Lには、左端部27LAが挿通される円形状の貫通穴12LAが形成される。左端壁12Lの左面は、回動中心部12Bの左端面である。本体部27LBおよび右端部27LCは、回動中心部12B内に配置される。右端部27LCの右側部分は、回動中心部12B内で回動中心部12Bに固定された環状のブッシュ29内に挿通される。
本体部27LBの外周面には爪状に突出した操作部27LDが設けられる。操作部27LDは、回動中心部12Bの左端部の窪み12D内のスリット12Eに挿通され、スリット12Eから回動中心部12Bの外周面に露出される。操作部27LDは、左右方向Xの遊びを持ってスリット12Eに挿通される。そのため、操作部27LDがスリット12E内でスライドできる範囲において、可動軸27Lも左右方向Xにスライド可能である。コイルばねなどの付勢部材30が、右端部27LCに非接触で巻き付けられて本体部27LBとブッシュ29との間で圧縮されることにより、可動軸27Lを常に左側X1へ付勢する。
図8は、可動軸27Lの周辺における蓋12の斜視図である。操作部27LDがスリット12Eの左端に位置するとき、可動軸27Lは、左側X1へ最も進出した進出位置にある。このとき、可動軸27Lの左端部27LAの大部分が、回動中心部12Bの左端壁12Lから左側X1へはみ出た状態にある。左端壁12Lが本体部27LBにストッパとして左側X1から接触し、回動中心部12Bにおいてスリット12Eの左端を縁取る部分がストッパとして操作部27LDに左側X1から接触する(図7も参照)。これにより、可動軸27Lが進出位置よりも左側X1へ移動することが規制される。
図9は、可動軸27Lの周辺における蓋12の斜視図である。操作部27LDがスリット12Eの右端に位置するとき、可動軸27Lは、右側X2へ最も退避した退避位置にある。このとき、可動軸27Lの左端部27LAが、回動中心部12B内に引っ込んだ状態にあり、左端部27LAの左端面は、回動中心部12Bの左端面と略面一になる。使用者は、操作部27LDを摘まんでスライドさせることにより、可動軸27Lを進出位置と退避位置との間でスライドさせることができる。操作部27LDの表面には、使用者の指が滑らないようにするための溝状の滑り止め部27LEが設けられる。
縦型洗濯機1の搬送時には、蓋12は、外槽カバー3Bから取り外されて専用の箱などに収容されて単独で搬送される。そのため、搬送時に外槽カバー3Bに生じた衝撃が蓋12に伝わることを防止できる。そして、縦型洗濯機1の設置時には、蓋12は、使用者によって外槽カバー3Bに取り付けられる。具体的には、図4を参照して、使用者は、まず、蓋12の回動中心部12Bが外槽カバー3Bの凹部3Mの上側Z1に位置するように蓋12を浮かせる。そして、使用者は、回動中心部12Bの右部分を凹部3Mの右部分に嵌め込み、その際に、右側X2のダンパ軸27Rを外槽カバー3Bの右差込穴3NRに左側X1から差し込む。次に、使用者は、操作部27LDをスライドさせて可動軸27Lを退避位置にしてから、回動中心部12Bの左部分を凹部3Mの左部分に嵌め込む。すると、回動中心部12Bの全体が凹部3Mに受け入れられ、可動軸27Lが外槽カバー3Bの左差込穴3NLに右側X2から対向する。この状態で使用者が操作部27LDから指を離すと、可動軸27Lが、付勢部材30(図7参照)の付勢力によって進出位置までスライドし、左差込穴3NLに右側X2から差し込まれる。これにより、外槽カバー3Bへの蓋12の取り付けが完了し、蓋12は、外槽カバー3Bによって回動軸線K(図1参照)まわりに回動可能に支持される(図3参照)。
使用者は、蓋12の取り付け時とは逆の手順によって、操作部27LDをスライドさせて可動軸27Lを退避位置に配置してから蓋12を持ち上げると、蓋12を外槽カバー3Bから取り外すことができる。これにより、蓋12および外槽カバー3Bを分離した状態で搬送できる。また、蓋12および外槽カバー3Bが分離した状態では、これらを容易に手入れすることができる。特に、外槽カバー3Bの凹部3Mの全体と、蓋12の回動中心部12Bの全体とが露出されるので、凹部3M内の汚れを取り除いたり、回動中心部12Bに付着した汚れを取り除いたりすることができる。
蓋12が外槽カバー3Bに取り付けられた状態において、左差込穴3NLおよび右差込穴3NRは、回動軸線Kに沿って延びる。左差込穴3NLは、可動軸27Lの断面形状と整合する真円形状である。そのため、可動軸27Lは、外槽カバー3Bにおける左差込穴3NLの周縁部に対して回動軸線Kまわりに相対回動可能である。一方、右差込穴3NRは、前述したように真円とは異なる形状であり、ダンパ軸27Rの断面形状は、右差込穴3NRと整合する。そのため、ダンパ軸27Rは、外槽カバー3Bにおける左差込穴3NLの周縁部に固定され、回動中心部12B内のダンパ28に対して回動軸線Kまわりに相対回動可能である。ダンパ28は、ダンパ軸27Rの相対回動に抵抗を与えることによって、外槽カバー3Bの出入口3Eを開閉するための蓋12の回動に抵抗を与える。これにより、蓋12を緩やかに開閉することができる。なお、蓋12が勢いよく閉じないことだけを優先すればよい場合には、ダンパ28は、少なくとも出入口3Eを閉じるための蓋12の回動に抵抗を与えればよい。
図10は、外槽カバー3Bおよび閉状態の蓋12の斜視図である。閉状態の蓋12では、本体部12Aが水平な姿勢で外槽カバー3Bの出入口3Eを塞ぐ。この状態では、外槽カバー3Bにおいて出入口3Eを区画する内周面部3Iが、平面視において蓋12の本体部12Aの外周面部12Cを取り囲む(図2も参照)。
図11は、図2のB-B矢視断面図である。詳しくは、内周面部3Iでは、前内周面部3Jの上縦壁3JAおよび後内周面部3Kの上縦壁3KA(図3も参照)が、外周面部12Cを取り囲む。閉状態の蓋12の本体部12Aの上面部では、ほぼ全域が水平面であり、本体部12Aの上面部の外縁が、外周面部12Cの上端12CAである。外槽カバー3Bの上面部3BAにおいて出入口3Eを取り囲んだ周辺部3BBは、出入口3Eに近付くにつれて緩やかに上昇する湾曲面である。周辺部3BBにおいて出入口3Eを縁取る部分は、外槽カバー3Bの内周面部3Iの上端3IAである。蓋12が閉状態にあるとき、外周面部12Cの上端12CAと、内周面部3Iの上端3IAとは、同じ高さ位置に配置される。これにより、上端12CAと上端3IAとが滑らかにつながるので、これらの上端間には、汚れが溜まりやすい大きさの段差が発生しない。そのため、外槽カバー3Bの上面部3BAの内周面部3Iの付近における汚れを低減でき、外槽カバー3Bの見栄えの向上を図れる。また、蓋12が閉状態にあるとき、本体部12Aの下面部の外縁部は、前内周面部3Jの横壁3JBおよび後内周面部3Kの横壁3KB(図3も参照)に上側Z1から対向する。横壁3JBおよび横壁3KBのそれぞれと本体部12Aの下面部との隙間は、本体部12Aの下面部に設けられたパッキン25によって塞がれる。これにより、蓋12が閉状態にあるときにおける出入口3Eがシールされ、当該隙間からの水漏れが防止される。
図12は、蓋12の回動中心部12Bの周辺の模式的な縦断面右側面図である。蓋12が閉状態にあるとき、回動中心部12Bに設けられた係合部26は、図12では点線で示すように、外槽カバー3Bの凹部3M内の凸部23に対して後上側、詳しくは回動軸線Kを中心とした反時計回りD1に約90度ずれた位置にある。一対の係合部26は、一対の23と左右方向Xにおいて1つずつ同じ位置にある(図4参照)。使用者が、閉状態の蓋12を、回動軸線Kを中心とした時計回りD2に回動させると、係合部26が、左右方向Xで同じ位置にある凸部23に接近して当該凸部23を乗り越える。蓋12が開状態になるまで回動すると、各係合部26は、図12では実線で示すように、対応する凸部23に時計回りD2の方向から係合する。このとき、係合部26が凸部23に接触せずに、係合部26と凸部23との間に隙間があってもよい。いずれにせよ、係合部26と凸部23との係合により、蓋12の開状態が維持されて蓋12が自立するので、蓋12が勝手に閉まることを防止できる。
蓋12では、少なくとも回動中心部12Bが、第1部品12BAと第2部品12BBとを合わせて左右一対のネジB(図4参照)で固定することにより構成される。なお、回動中心部12Bには、ネジBを覆う目隠し用のキャップ35(図4参照)が取り付けられる。係合部26は、第1部品12BAと第2部品12BBとの境界の周辺に配置される。当該境界は、常に凹部3M内に配置される。そのため、蓋12の開状態において、互いに係合した係合部26および凹部3Mは、回動中心部12Bの下側Z2に隠れることによって使用者の視界に入りにくい(図3も参照)。よって、外槽カバー3Bの見栄えの向上を図れる。回動中心部12BにおいてネジBの周辺の領域は、第1部品12BAと第2部品12BBとが分離しにくい高剛性領域である。各係合部26は、左右方向XにおいてネジBと同じ位置に配置されるので、当該高剛性領域に配置される(図4参照)。そのため、係合部26の破損を防止して係合部26の耐久性の向上を図れる。
図13は、図2のC-C矢視断面を含む要部斜視図である。最後に、ロック機構24について説明する。閉状態の蓋12を基準として、ロック機構24は、本体部12Aの外周面部12Cの前端部に設けられたロック突起31と、ロック突起31を前側Y1へ付勢する付勢部材32と、本体部12Aの上面部の前端に設けられて使用者の操作に応じてロック突起31を後側Y2へ移動させるレバー33とを含む。本体部12Aの前端部には、中空部分12Fが設けられる。外周面部12Cの前端部には、中空部分12Fに前側Y1から連通する開口12Gが形成される。本体部12Aには、外周面部12Cの前端部から後上側へ傾斜して延びる前支持部12Hと、前支持部12Hよりも後側Y2に配置されて本体部12Aから上側Z1へ突出する後支持部12Iとが設けられる。前支持部12Hと後支持部12Iとの間の空間は、中空部分12Fの上領域を構成する。後支持部12Iの下端には、中空部分12Fにおいて前側Y1へ突出するボス12IAが設けられる。
ロック突起31は、前後方向Yに延びる先端部31Aと、先端部31Aの後端から上側Z1へ突出したストッパ31Bと、先端部31Aの後端から後側Y2へ延びる根元部31Cとを一体的に有する。ストッパ31Bおよび根元部31Cは、本体部12Aの中空部分12Fの下領域に収容される。先端部31Aは、本体部12Aの外周面部12Cの開口12Gに後側Y2から挿通される。先端部31Aの下面の前端部には、面取り部31AAが形成される。根元部31Cには、後上側へ傾斜してストッパ31Bに後側Y2から対向する傾斜面31CAと、後支持部12Iのボス12IAに前側Y1から対向するボス31CBとが設けられる。図13に示すロック突起31は、進出位置にある。進出位置のロック突起31では、先端部31Aの略前半分が、蓋12の外周面部12Cの開口12Gから前側Y1へはみ出す。また、ストッパ31Bが、前支持部12Hの下端に後側Y2から接触することによって、進出位置よりも前側Y1へのロック突起31の移動を規制する。ロック突起31は、進出位置よりも後側Y2の退避位置(図示せず)まで後退可能である。つまり、ロック突起31は、進出位置と退避位置との間で移動可能である。退避位置のロック突起31では、先端部31Aの略前半分が開口12G内に収まるので、進出位置にあるときと比べて、蓋12の外周面部12Cからほとんどはみ出さなくなる。
付勢部材32は、例えばコイルばねであって、本体部12Aの中空部分12Fに収容される。付勢部材32は、ロック突起31の根元部31Cのボス31CBと、後支持部12Iのボス12IAとの間で圧縮されることによって、ロック突起31を前側Y1の進出位置へ向けて付勢する。
レバー33は、前支持部12Hの後側Y2において上下方向Zに沿って配置される押圧部33Aと、押圧部33Aの上端から後上側へ傾斜して延びる操作部33Bとを有する。押圧部33Aの下端は、ロック突起31の根元部31Cの傾斜面31CAに前側Y1および上側Z1から接触した状態にある。レバー33は、前支持部12Hによって外れ不能に支持される。この状態において、操作部33Bが上昇すると押圧部33Aが下降し、操作部33Bが下降すると押圧部33Aが上昇する。図13に示すレバー33は、待機位置にある。待機位置のレバー33では、操作部33Bが前支持部12Hと略平行な姿勢で後支持部12Iの上端に上側Z1から接触することにより、レバー33が待機位置に保持される。レバー33が待機位置にある状態において、使用者が操作部33Bを掴んで引き上げると、押圧部33Aが下降しながら根元部31Cの傾斜面31CAを後側Y2へ押圧するので、ロック突起31が進出位置から退避位置まで後退する。使用者が操作部33Bから指を離すと、付勢部材32の付勢力によってロック突起31が退避位置から進出位置まで前進し、その際に傾斜面31CAが押圧部33Aを押し上げるので、レバー33が待機位置まで戻る。
図13に示すように蓋12が閉状態にあってロック突起31が進出位置にあってレバー33が待機位置にある場合には、ロック突起31の先端部31Aが、外槽カバー3Bの内周面部3Iのロック溝3Lに後側Y2から嵌る。これにより、蓋12が閉状態でロックされる。この状態で使用者がレバー33の操作部33Bを引き上げると、ロック突起31が後退してロック溝3Lから外れるので、蓋12のロックが解除される。そのため、使用者は、操作部33Bをさらに引き上げることによって、蓋12を開状態まで回動させることができる。一方、使用者が開状態の蓋12を手前に押すと、蓋12が自重によって前側Y1へ回動する。この際、ロック突起31は、外槽カバー3Bの上面部3BAにおいて出入口3Eを取り囲んだ周辺部3BBを下側Z2へ乗り越えるために、進出位置から一瞬後退する。ロック突起31が周辺部3BBを乗り越えるときに、ロック突起31の先端部31Aの面取り部31AAが周辺部3BBに接触するので、ロック突起31は、周辺部3BBに引っ掛かることなく、周辺部3BBを円滑に乗り越えることができる。そして、蓋12が閉状態まで回動すると、ロック突起31の先にロック溝3Lが位置するので、ロック突起31は、付勢部材32の付勢力によって進出位置に戻ってロック溝3Lに嵌る。
本実施形態とは異なり、ロック溝3Lが外槽カバー3Bの上面部3BAに設けられる比較例を検討する。この比較例では、汚れがロック溝3Lに溜まることによって上面部3BAが汚れやすくなる。一方、本実施形態では、ロック溝3Lは、上面部3BAでなく、外槽カバー3Bにおいて出入口3Eを区画する内周面部3Iに設けられる。そのため、汚れが溜まりやすい凹凸が、上面部3BAからなくなる。これにより、上面部3BAにおける汚れを低減できる。さらに、内周面部3Iは使用者の視界に入りにくいので、汚れがロック溝3Lに付着しても、その汚れが目立ちにくい。以上の結果、外槽カバー3Bの見栄えの向上を図れる。また、凹凸が少ない上面部3BAであれば、お手入れが容易になるし、出し入れ時の洗濯物Qが引っ掛かることを低減できる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、蓋12における左右の回動軸27の両方が、ダンパ軸27Rと同様に構成されたり、可動軸27Lと同様に構成されたりしてもよい。
縦型洗濯機1における洗濯槽4の軸線Jは、前述した実施形態では上下方向Zに沿って垂直に延びるように配置されるが(図1参照)、縦型洗濯機1には、軸線Jが上下方向Zに対して若干傾斜して配置された構成も含まれる。