JP2016058213A - 蛍光光源装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い発光効率が得られる蛍光光源装置を提供すること。
【解決手段】蛍光光源装置は、励起用レーザ光により蛍光を出射する波長変換部材を備えた蛍光光源装置において、前記波長変換部材における励起用レーザ光受光面に、錐状または錐台状の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されており、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.2以上であり、前記波長変換部材は、多結晶からなる蛍光体によるものであって、前記励起用レーザ光および当該蛍光体から放射される蛍光を散乱する、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有し、当該波長変換部材における光透過割合T〔%〕と当該波長変換部材における光反射割合R〔%〕との比(T/R)が1〜20であるものであることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光光源装置に関する。更に詳しくは、励起光によって蛍光を出射する波長変換部材を備えた蛍光光源装置に関する。
従来、蛍光光源装置としては、レーザ光を励起光として蛍光体に照射し、当該蛍光体から蛍光を放射する構成のものが知られている。
このような蛍光光源装置の或る種のものは、図6に示すように、蛍光体によって構成された蛍光部材41よりなる波長変換部材と、当該波長変換部材に励起光Lを照射する励起用レーザ光源46と、当該波長変換部材からの蛍光L1を集光するレンズ48とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。この波長変換部材は、接合部43を介して光反射性基板49上に配設されており、当該波長変換部材の表面が、励起光受光面とされていると共に蛍光出射面とされている。この蛍光光源装置40においては、波長変換部材の内部、すなわち蛍光部材41の内部には、気孔が含有されている。
また、蛍光光源装置においては、波長変換部材における励起光入射効率を改善するために、波長変換部材の励起光受光面とされる表面に、周期構造を形成する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。具体的に、特許文献2には、平板状の蛍光部材と、この蛍光部材の表面および周面を覆うように設けられた、略平板状の透光性部材とよりなる波長変換部材を備えた蛍光光源装置が開示されている。この蛍光光源装置において、透光性部材は、励起光および蛍光部材の内部において生じる蛍光に透光性を有しており、波長変換部材の励起光受光面とされる表面には、凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されている。また、透光性部材の内部には、気孔や散乱微小粒子が含有されている。
しかしながら、このような蛍光光源装置においては、気孔や散乱微小粒子によって励起光および蛍光が散乱されることから、それ起因して十分な蛍光強度を得ることができない、という問題がある。
具体的に説明すると、励起光受光面から波長変換部材の内部に入射した励起光の一部が気孔や散乱微小粒子によって散乱され、蛍光に変換されることなく当該励起光受光面から外部に出射される。そのため、蛍光部材の内部に入射した励起光を有効に利用することができないことから、蛍光出射面から出射される蛍光の光量が小さくなる。
特開2012−64484号公報 特開2013−030720号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、高い発光効率が得られる蛍光光源装置を提供することにある。
本発明の蛍光光源装置は、励起用レーザ光により蛍光を出射する波長変換部材を備えた蛍光光源装置において、
前記波長変換部材における励起光受光面に、錐状または錐台状の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されており、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.2以上であり、
前記波長変換部材は、多結晶からなる蛍光体によるものであって、前記励起用レーザ光および当該蛍光体から放射される蛍光を散乱する、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有し、当該波長変換部材における光透過割合T〔%〕と当該波長変換部材における光反射割合R〔%〕との比(T/R)が1〜20であるものであることを特徴とする。
本発明の蛍光光源装置においては、波長変換部材が、励起光受光面に特定の周期構造が形成されており、また特定の屈折率を有する微小散乱体が含有されていて、光透過割合T〔%〕と光反射割合R〔%〕との比(T/R)が特定の範囲にあるものである。
そのため、励起光受光面において励起光(励起用レーザ光)が反射することが抑制または防止されることから、波長変換部材には高い励起光入射効率が得られる。
また、波長変換部材の内部に入射した励起光が蛍光に交換されることなく励起光受光面から外部に出射されることが抑制されると共に、波長変換部材の内部において、励起光の進行方向が微小散乱体によって変更されることから、励起光を蛍光に変換するための光路長が長くなる。その結果、波長変換部材の内部に入射した励起光を有効に利用することができる。
更に、波長変換部材の内部において、蛍光の進行方向が微小散乱体によって変更されることから、蛍光が蛍光出射面に到達しやすくなり、波長変換部材の内部に閉じ込められることが抑制される。その結果、波長変換部材の内部において生じる蛍光を有効に利用して高い効率で外部に出射することができる。
従って、本発明の蛍光光源装置によれば、波長変換部材において、高い励起光入射効率が得られ、また内部に入射した励起光を有効利用して蛍光を生じさせ、しかもその蛍光を高い効率で外部に出射させることができるため、高い光利用効率が得られる。その結果、高い発光効率を得ることができる。
本発明の蛍光光源装置の一例における構成の概略を示す説明図である。 実験例1において得られた、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフである。 実験例2において得られた、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフである。 実験例3において得られた、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフである。 実験例1〜実験例3の結果に基づいて得られた、微小散乱体の屈折率と光利用効率との関係を示すグラフである。 従来の蛍光光源装置の構成を示す説明図である。
以下、本発明の蛍光光源装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の蛍光光源装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
この蛍光光源装置10は、図1に示すように、レーザダイオード11よりなる励起用レーザ光源と、このレーザダイオード11に対向して配置された蛍光発光部材20とを備えている。この蛍光発光部材20は、レーザダイオード11から出射されるレーザ光である励起光Lによって励起されて蛍光L1を放射する蛍光体を含有する波長変換部材21を有するものである。
レーザダイオード11と蛍光発光部材20との間における当該レーザダイオード11に接近した位置には、入射されたレーザダイオード11からの励起光Lを平行光線として出射するコリメートレンズ15が配置されている。また、コリメートレンズ15と蛍光発光部材20との間には、レーザダイオード11からの励起光Lを透過すると共に波長変換部材21からの蛍光L1を反射するダイクロイックミラー16が、コリメートレンズ15の光軸に対して例えば45°の角度で傾斜した姿勢で配置されている。更に、ダイクロイックミラー16と蛍光発光部材20との間には、波長変換部材21から出射された蛍光L1を集光するコンデンサーレンズ17が配置されている。
蛍光発光部材20は、図1に示されているように、平板状の基板31の表面(図1における上面)上に、略平板状の波長変換部材21が設けられたものである。
この波長変換部材21は、平板状の蛍光部材22と、この蛍光部材22の表面(図1における上面)上に形成された、略平板状の周期構造体層26を有しており、蛍光部材22を構成する蛍光体から放射される蛍光L1を出射するものである。
波長変換部材21においては、周期構造体層26の表面(図1における上面)が、励起光受光面とされていると共に、蛍光出射面とされている。この周期構造体層26の表面には、複数の凸部28が周期的に配列されてなる周期構造27が形成されている。
また、波長変換部材21の裏面、すなわち蛍光部材22の裏面(図1における下面)には、光反射膜(図示省略)が設けられており、また波長変換部材21の側面には光拡散膜(図示省略)が設けられている。更に、光反射膜と基板31との間には、接合部材(図示省略)が介在されており、当該接合部材によって波長変換部材21が基板31上に接合されている。接合部材としては、排熱性の観点から、半田(具体的には、例えば金錫(AuSn)合金(Snの含有割合20質量%)、鉛(In)および金ゲルマニウム(AuGe)合金などよりなるもの)、銀焼結材などが用いられる。また、基板31の裏面には、例えば銅などの金属よりなる放熱部材(図示省略)が配置されている。
この図の例において、光反射膜としては、増反射銀膜が用いられている。また、光拡散膜としては、例えばシリカ(SiO2 )およびチタニア(TiO2 )などの無機化合物よりなり、粒径が0.2nm以上であって0.1μm以下の微粒子よりなるものが用いられている。この光拡散膜は、具体的には、無機化合物の微粒子の水溶性混濁液を波長変換部材21の周囲に塗布して乾燥することによって得られた無機拡散材よりなり、波長550nmの光の反射率が95.7%以上のものである。
波長変換部材21は、レーザダイオード11からの励起光Lおよび蛍光部材22を構成する蛍光体からの蛍光L1を散乱する微小散乱体25を含有するものである。
また、波長変換部材21においては、当該波長変換部材21における光透過割合T〔%〕と当該波長変換部材21における光反射割合R〔%〕との比(T/R)が1〜20とされ、好ましくは1〜10である。
ここに、光透過割合T〔%〕は、励起光受光面に非励起光(具体的には、波長変換部材21を構成する蛍光体を励起することのない光であって、例えば波長600nmの光)が照射されたときに、その光のうちの波長変換部材21を透過する光の割合を示す値である。一方、光反射割合R〔%〕は、励起光受光面に非励起光が照射されたときに、その光のうちの波長変換部材21によってはね返される光(具体的には、励起光受光面において反射される光および励起光受光面から出射される光)の割合を示す値である。すなわち、光透過割合T〔%〕は、励起光受光面に照射された光のうちの当該励起光受光面を介して波長変換部材21の内部に入射され、当該励起光受光面に対向する面に向かって進行する光の割合を示す値である。一方、光反射割合R〔%〕は、励起光受光面に照射された光のうちの波長変換部材21によってはね返される光(具体的には、励起光受光面において反射される光、および励起光受光面に入射したものの、微小散乱体25によって励起光受光面に向かって散乱されて当該励起光受光面から出射される光)の割合を示す値である。
比(T/R)が上記の範囲にあることにより、後述の実験例から明らかなように、波長変換部材21に高い光利用効率が得られる。
具体的に説明すると、波長600nmの光(波長変換部材で励起されない光)の(T/R)が上記の範囲内であることによれば、周期構造体層26(周期構造27)によって励起光受光面での励起光Lの反射が抑制される。それと共に、波長変換部材21内に微小散乱体25がある構造のため、当該波長変換部材21の内部に入射した励起光Lは吸収され、励起光受光面に向かう方向に散乱された励起光が励起光受光面から出射されることが抑制される。そのため、波長変換部材21の内部に入射した励起光Lが蛍光L1に交換されることなく励起光受光面から外部に出射されることが抑制されると共に、波長変換部材21の内部において、励起光Lの進行方向が微小散乱体25によって変更されることによって、励起光Lを蛍光L1に変換するための光路長が長くなり、波長変換部材21で励起光Lを十分吸収することが可能となる。更に、励起光受光面近傍で励起光Lは蛍光L1に変換されるため、蛍光L1は取出されやすく、また、波長変換部材21内で発生した蛍光L1は微小散乱体25で光の向きが変わるため、蛍光出射面より蛍光L1が取り出されやすくなるために、蛍光の高い光取り出し効率が得られる。その結果、波長変換部材21に高い光利用効率が得られる。
ここに、波長変換部材21に得られる光利用効率とは、励起光受光面に入射され、当該励起光受光面から出射されることのない励起光Lの割合(以下、「励起光受光面における励起光Lの透過率」ともいう。)と蛍光出射面における光の取り出し効率との積、すなわち、励起光受光面における励起光Lの反射率と蛍光出射面における光の取り出し効率とに基づいて、下記数式(1)によって算出される値である。この励起光Lの透過率と光の取り出し効率との積は、蛍光部材22の蛍光効率に比例するものであるため、当該積を、波長変換部材21が励起光Lを蛍光L1に変換する割合とみなすことができる。この光利用効率が高い波長変換部材ほど高い蛍光変換能を有するものである。具体的に、波長変換部材21の光利用効率は、蛍光出射面における光の取り出し効率と光透過割合T〔%〕とを乗ずることによって得ることができる。なお、本明細書において、光透過割合T〔%〕は、「励起光受光面における励起光Lの透過率」とみなすことのできる値であり、また光反射割合R〔%〕は、「励起光Lの反射率」とみなすことのできる値である。
数式(1):
波長変換部材の光利用効率〔%〕=(100−励起光受光面における励起光の反射率〔%〕)×蛍光出射面における光の取り出し効率〔%〕
光透過割合T〔%〕および光反射割合R〔%〕は、下記のように測定される。
光透過割合T〔%〕は、先ず、半球状の積分球を、当該積分球の開口が波長変換部材21の励起光受光面に対向する面(以下、「裏面」ともいう。)に対向するよう配置し、当該励起光受光面に対して非励起光(例えば波長600nmの光)を照射する。そして、非励起光の光強度I0 を測定すると共に、積分球において測定される、波長変換部材21の裏面からの光の光強度Ir を測定し、得られた光強度I0 と光強度Ir に基づいて算出することができる。すなわち、光透過割合T〔%〕は、光強度Ir に対する光強度I0 の割合によって示される。
一方、光反射割合R〔%〕は、先ず、半球状の積分球を、当該積分球の開口が波長変換部材21の励起光受光面に対向するよう配置し、当該励起光受光面に対して非励起光(例えば波長600nmの光)を照射する。そして、非励起光の光強度I0 を測定すると共に、積分球において測定される、波長変換部材21の励起光受光面からの光の光強度If を測定し、得られた光強度I0と光強度If に基づいて算出することができる。すなわち、光反射割合R〔%〕は、光強度If に対する光強度I0 の割合によって示される。
波長変換部材21において、光透過割合T〔%〕および光反射割合R〔%〕は、例えば周期構造27の形状(アスペクト比(h/d))、微小散乱体25の寸法(直径)および含有割合などによって制御することができる。
波長変換部材21には、図1に示されているように、複数の微小散乱体25が含有されており、それらの複数の微小散乱体25は、蛍光部材22に含有されている。
そして、この蛍光部材22に含有されている複数の微小散乱体25は、屈折率が1.0以上のものである。
具体的には、複数の微小散乱体25は、各々、気孔、蛍光部材22と異なる屈折率を有する微小粒子(以下、「散乱微小粒子」ともいう。)または粒界析出相によって構成されたものである。
微小散乱体25を構成する散乱微小粒子としては、例えばアルミナ、イットリア、窒化ケイ素、窒化アルミニウムおよびフッ化ストロンチウムなどの無機化合物よりなるものが挙げられる。
蛍光部材22は、多結晶の蛍光体によるものであり、具体的には、多結晶の蛍光体よりなり、気孔、散乱微小粒子または粒界析出相よりなる微小散乱体25が含有されたものである。すなわち、蛍光部材22は、気孔、散乱微小粒子または粒界析出相を含有する多結晶の蛍光体によって構成されたものである。
蛍光部材22が多結晶の蛍光体によって構成されたものであることにより、蛍光部材22は高い熱伝導性を有するものとなる。そのため、蛍光部材22においては励起光Lの照射によって発生した熱が効率よく排熱されることから、蛍光部材22が高温となることが抑制される。特に、微小散乱体25として散乱微小粒子が用いられており、その散乱微小粒子が、蛍光部材22を構成する蛍光体の熱伝導率よりも熱伝導率が高いものである場合には、蛍光部材22の温度上昇がより一層抑制される。また、蛍光部材22が多結晶の蛍光体によって構成されたものであることによれば、微小散乱体25を含有する波長変換部材21を容易に得ることができる。
蛍光部材22を構成する多結晶の蛍光体の具体例としては、YAG:Ce、YAG:Pr、YAG:Sm、(Y,Gd)AG:Ce、LuAG:Ce、CASN:Eu、サイアロン:Euなどが挙げられる。このような蛍光体において、賦活材のドープ量は、微小散乱体25の構成などに応じて適宜に定められるが、具体的には0.5mol%程度である。
ここに、蛍光部材22を構成する蛍光体から生じる蛍光L1は、例えばピーク波長が520〜650nmの光である。
また、蛍光部材22の厚みは、励起光有効利用性および排熱性の観点から、0.05〜2.0mmであることが好ましい。
微小散乱体25として気孔を有する蛍光部材22は、例えば下記の(1)〜(3)の手法によって得ることができる。
これらの下記の(1)〜(3)の手法のうちでは、微小散乱体25の寸法(直径)および含有割合の制御容易性の観点から(1)の手法が好ましい。
(1)先ず、原材料(具体的には母材、賦活材および焼成助剤)を、ボールミルなどを用いて粉砕処理することにより、サブミクロン以下の原材料微粉末を得る。そして、得られた原材料微粉末と、気孔形成用の樹脂製ビーズと、有機溶剤とにより、原材料微粉末および樹脂製ビーズが有機溶剤中において均一に分散されてなるスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーからスリップキャスト法によって成形体を作製し、その成形体を焼成処理する。そして、焼成体が形成される過程において樹脂製ビーズが焼失し、よって焼成体よりなり、微小散乱体25として気孔を含有する蛍光部材22が得られる。
この手法によれば、用いる樹脂ビーズの形状、粒径および個数を調整することにより、得られる蛍光部材22における気孔の形状、大きさおよび気孔の含有割合(気孔率)を調整することができる。よって、微小散乱体25の寸法(直径)、波長変換部材21における微小散乱体25の含有割合を調整することができるため、比(T/R)を容易に制御することができる。
(2)先ず、原材料(具体的には母材、賦活材および焼成助剤)を、ボールミルなどを用いて粉砕処理することにより、例えば直径が0.2μmの原材料微粉末を得、得られた原材料微粉末と有機溶剤とによって原材料微粉末が有機溶剤中において均一に分散されてなるスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーからスリップキャスト法によって成形体を作製し、その成形体を焼成処理した後、真空焼成処理を行うことにより、焼成体よりなり、微小散乱体25として気孔を含有する蛍光部材22が得られる。ここに、真空焼成処理条件は、真空度が1×10-7Pa、焼成温度が1300〜1750℃、保持時間(処理時間)が3時間である。
この手法によれば、真空焼成処理条件(具体的には真空焼成処理の焼成温度)を上記の範囲内で調整することにより、得られる蛍光部材22の気孔率を0.6%未満の範囲における任意の割合となるように調整することができる。よって、微小散乱体25の含有割合を調整することができる。
(3)先ず、原材料(具体的には母材、賦活材および焼成助剤)を、ボールミルなどを用いて粉砕処理することにより、例えば直径が0.2μmの原材料微粉末を得、得られた原材料微粉末と有機溶剤とによって原材料微粉末が有機溶剤中において均一に分散されてなるスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーからスリップキャスト法によって成形体を作製し、その成形体を焼成処理した後、真空焼成処理を行う。ここに、真空焼成処理条件は、真空度が1×10-7Pa、焼成温度が1750℃、保持時間(焼成時間)が3時間であり、この真空焼成処理条件によれば、気孔率が99.2〜99.4%の焼成体が得られる。
その後、得られた焼成体に対して熱間等方圧加圧加工処理(HIP)を施すことにより、焼成体よりなり、微小散乱体25として気孔を含有する蛍光部材22が得られる。ここに、熱間等方圧加圧加工処理条件は、加熱温度が1350〜1800℃、保持時間(処理時間)が5時間である。
この手法によれば、熱間等方圧加圧加工処理の条件(具体的には熱間等方圧加圧加工処理の加熱温度)を上記の範囲内で調整することにより、得られる蛍光部材22の気孔率を0.1〜0.8%の範囲における任意の割合となるように調整することができる。よって、微小散乱体25の含有割合を調整することができる。
また、微小散乱体25として粒界析出相を有する蛍光部材22は、原材料(具体的には、母材の構成材料、母材、賦活材および焼成助剤)の配合比率を調製することによって得ることができる。
具体的には、例えば(Y,Gd)AG:Ceにおいては、母材の製造過程において、YAGにGdがドープされる。Gdは、YAGにおけるYと置換されるが、Gdのドープ量が固溶限界を超えている場合には、粒界面に、ガドリウムアルミネートペロブスカイト構造の析出相(粒界面相)が生成する。すなわち、(Y,Gd)AG:Ceよりなる多結晶の蛍光体によって構成された蛍光部材22を、粒界析出相を有するものとすることができる。また、(Y,Gd)AG:Ceだけでなく、YAGにSm、Ceなどをドープする場合にも粒界析出相を析出させることができる。
また、微小散乱体25として散乱微小粒子を有する蛍光部材22は、例えば下記の手法によって得ることができる。
先ず、原材料(具体的には母材、賦活材および焼成助剤)を、ボールミルなどを用いて粉砕処理することにより、サブミクロン以下の原材料微粉末を得る。そして、得られた原材料微粉末と、散乱微小粒子と、有機溶剤とにより、原材料微粉末および散乱微小粒子が有機溶剤中において均一に分散されてなるスラリーを調製する。
次いで、得られたスラリーからスリップキャスト法によって成形体を作製し、その成形体を焼成処理ことにより、焼成体よりなり、微小散乱体25として散乱微小粒子を含有する蛍光部材22が得られる。
この手法によれば、用いる散乱微小粒子の形状、粒径および個数を調整することにより、得られる蛍光部材22における微小散乱体25の形状、大きさおよび気孔の含有割合(気孔率)を調整することができる。よって、微小散乱体25の直径、波長変換部材21における微小散乱体25の含有割合を調整することができるため、比(T/R)を容易に制御することができる。
周期構造体層26は、波長変換部材21の励起光受光面とされる表面(図1における上面)に、周期構造27が形成されたものである。
この周期構造27を構成する凸部28は、図1に示されているように、表面から裏面に向かう方向に沿って小径となる略錐状の形状とされる。
具体的に、凸部28の形状は、図1に示されているような錐台状(図1においては円錐台状)、または錐状である。
ここに、凸部28の形状が錐台状である場合には、上底部の寸法(最大寸法)は、励起光Lの波長未満とされる。
この図の例において、周期構造27は、蛍光部材22の表面を覆う平板状の薄膜部上に、円錐台状の凸部28が密集した状態で二次元周期的に配列されてなるものである。
凸部28の形状が錐状または錐台状とされることにより、励起光Lが空気(屈折率が1)中から励起光受光面、すなわち周期構造体層26の表面に照射されたときに、励起光Lが凸部28のテーパ面に対して傾斜した方向から入射されこととなる。そのため、屈折率が急激に変化する界面が実質的になくなることから、励起光受光面において励起光Lが反射することを防止または抑制することができる。
また、凸部28において、テーパ面(側面)の傾斜角度(側面と底面とのなす角)は、11°以上であることが好ましい。
テーパ面の傾斜角度が過小である場合には、空気と励起光受光面を構成する部材の材料(具体的には周期構造体層26を構成する材料)との屈折率差に従った反射光が生じてしまうおそれがある。
周期構造27は、周期dに対する凸部28の高さhの比であるアスペクト比(h/d)が0.2以上とされ、好ましくは0.2〜1.5であり、特に好ましくは0.5〜1.0である。
ここに、本発明において、周期構造の周期とは、周期構造において互いに隣接する凸部間の中心間距離(nm)を意味する。
周期構造27におけるアスペクト比が0.2以上とされることにより、周期構造体層26の表面、すなわち波長変換部材21の表面において励起光Lが反射することを抑制することができる。そのため、周期構造体層26の表面に励起光Lが照射されたときに、励起光Lを蛍光部材22内に十分に取り込むことができる。
また、周期構造27におけるアスペクト比が0.2以上とされることによれば、蛍光部材22を構成する蛍光体から放射される蛍光L1を高い効率によって波長変換部材21の蛍光出射面である周期構造体層26の表面から外部に取り出すことができる。
また、周期構造27において、周期dは、蛍光部材22を構成する蛍光体から放射される蛍光L1の回折が発生する範囲(ブラッグの条件)の大きさであることが好ましい。
具体的には、周期構造27の周期dは、蛍光体から放射される蛍光L1のピーク波長を、周期構造27を構成する材料(具体的には、周期構造体層26を構成する材料)の屈折率で割った値(以下、「光学長さ」という。)または光学長さの数倍程度の値である。
周期構造27の周期dが蛍光部材22内で生じる蛍光L1の回折が発生する範囲の大きさとされることにより、波長変換部材21の蛍光出射面である周期構造体層26の表面から蛍光L1を高い効率で外部に出射することができる。
周期構造体層26を構成する材料は、励起光Lおよび蛍光L1に対する透光性を有するものであり、また蛍光部材22における蛍光体を励起するエネルギーが約5W/mm2 以上の励起密度を有することから、無機材料であることが好ましい。
また、周期構造体層26を構成する材料としては、屈折率が蛍光部材22の屈折率より大きいものを用いることが好ましい。
周期構造体層26を構成する材料として蛍光部材22より高屈折率のものを用いることによれば、蛍光部材22内で生じた蛍光L1が、蛍光部材22と周期構造体層26と界面において全反射することがない。しかも、蛍光部材22と周期構造体層26との界面に入射した蛍光L1は、当該界面を透過することによって界面での出射角が小さくなるように屈折が生じる。そのため、蛍光L1の進行方向が蛍光部材22と周期構造体層26との界面において変更されることから、蛍光L1が波長変換部材21の内部に閉じ込められることが抑制される。その結果、蛍光L1を蛍光出射面から外部に高い効率で出射することができる。また、周期dが小さい周期構造27を形成することが可能となる。従って、周期構造27を構成する凸部28としてアスペクト比が大きくても高さが小さいものを設計することができるので、周期構造27の形成が容易となる。例えば、ナノプリント法を利用する場合には、モールドの作製やインプリント作業を容易に行うことができる。
周期構造体層26を構成する材料としては、シリカ(屈折率1.45〜1.7)、チタニア(屈折率1.9〜2.2)、ジルコニア(屈折率1.7〜1.8)、窒化珪素(屈折率1.7〜2.0)などを用いることができる。
また、周期構造体層26の厚みは、例えば0.1〜1.0μmである。
周期構造体層26は、ゾルゲル法とナノインプリント法とを用いて形成することができる。具体的には、珪素、チタン、ジルコニウム等のアルコキシドを含むゾル状の材料を、例えばスピンコート法によって蛍光部材22の表面に塗布して、モールド型を押付しつけた状態で加熱処理を行い、離型した後、熱処理を行う。この熱処理によって、反応(加水分解および縮重合)が進み、無機材料からなる周期構造体層26が形成される。
また、周期構造体層26は、ナノインプリント法とドライエッチング処理とを用いても形成することができる。具体的には、平板状の無機材料層の表面に、例えばスピンコート法によってレジストを塗布し、次いで、レジストの塗布膜を例えばナノインプリント法によりパターニングする。その後、ドライエッチング処理を施すことにより、表面に周期構造27が形成された、無機材料からなる周期構造体層26が形成される。
基板31としては、樹脂に金属微粉末を混入させた放熱接着剤を介したアルミ基板、その他、銅、モリブデンと銅の合金(Mo−Cu)などの材料よりなる金属基板が用いられる。また、基板31の厚みは、例えば0.5〜5.0mmである。また、基板31を構成するアルミ基板および金属基板は、放熱フィンの機能を兼ね備えたものであってもよい。
この蛍光光源装置10において、レーザダイオード11から出射された励起光Lは、コリメートレンズ15によって平行光線とされる。その後、この励起光Lは、ダイクロイックミラー16およびコンデンサーレンズ17を透過して蛍光発光部材20における波長変換部材21の励起光受光面すなわち周期構造体層26の表面に対して略垂直に照射され、当該周期構造体層26を介して蛍光部材22に入射される。そして、蛍光部材22においては、当該蛍光部材22を構成する蛍光体が励起される。これにより、蛍光部材22において、蛍光体から蛍光L1が放射される。この蛍光L1は、蛍光出射面すなわち周期構造体層26の表面から出射され、コンデンサーレンズ17によって集光された後、ダイクロイックミラー16によって垂直方向に反射され、蛍光光源装置10の外部に出射される。
而して、蛍光光源装置10においては、波長変換部材21が、励起光受光面に周期構造27が形成されており、また特定の屈折率を有する微小散乱体25を含有し、比(T/R)が特定の範囲にあるものである。
そのため、波長変換部材21の励起光受光面において励起光Lが反射することが抑制されることから、波長変換部材21には高い励起光入射効率が得られる。
また、蛍光部材22の内部に入射した励起光が蛍光に交換されることなく励起光受光面から外部に出射されることが抑制されると共に、蛍光部材22の内部において、励起光Lの進行方向が微小散乱体25によって変更されることから、励起光Lを蛍光L1に変換するための光路長が長くなる。その結果、波長変換部材21の内部に入射した励起光Lを有効に利用することができる。
更に、蛍光部材22の内部において、蛍光L1の進行方向が微小散乱体25によって変更されることから、蛍光が蛍光出射面に到達しやすくなり、蛍光L1が波長変換部材21の内部に閉じ込められることが抑制される。その結果、波長変換部材21の内部において生じた蛍光L1を有効に利用して高い効率で外部に出射することができる。
従って、蛍光光源装置10によれば、波長変換部材21において、高い励起光入射効率が得られ、また内部に入射した励起光を有効利用して蛍光L1を生じさせ、しかもその蛍光L1を高い効率で外部に出射させることができるため、高い光利用効率が得られる。その結果、高い発光効率を得ることができる。
しかも、蛍光光源装置10においては、蛍光部材22の内部における励起光Lを蛍光L1に変換するための光路長が微小散乱体25の作用によって長くなることから、励起光有効利用性が低下するという弊害を伴うことなく、蛍光部材22の厚みを小さくし、よって波長変換部材21の厚みを小さくすることができる。そして、波長変換部材21の厚みを小さくすることによれば、当該波長変換部材21の熱抵抗が低減されることから、波長変換部材21の温度上昇が抑制される。その結果、蛍光体において温度消光が生じることに起因する蛍光光量の低減を抑制することができることから、より一層高い発光効率が得られる。具体的には、波長変換部材21における蛍光部材22の厚みを0.13mmから0.1mmとして2%小さくすることにより、波長変換部材21の温度を30℃低減させ、光取り出し効率を13%向上させることができる。
また、蛍光光源装置10は、波長変換部材21が、蛍光部材22と周期構造体層26とからなるものであることから、蛍光部材22を周期構造が形成されたものとする必要がない。そのため、波長変換部材21の励起光受光面における周期構造27の形成が容易となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、波長変換部材は、製造容易性の観点からは、蛍光部材と周期構造体層とからなるものであることが好ましいが、蛍光部材よりなり、当該蛍光部材の表面に特定の周期構造が形成されたものであってもよい。
具体的に、波長変換部材は、例えば図1の蛍光光源装置10を構成する波長変換部材21において、周期構造体層が設けられておらず、蛍光部材における励起光受光面とされる表面に周期構造が形成されていること以外は、当該図1の蛍光光源装置10を構成する波長変換部材21と同様の構成を有するものであってもよい。
また、波長変換部材は、励起光受光面に特定の周期構造が形成されていると共に、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有しており、比(T/R)が特定の範囲にあるものであればよく、波長変換部材における蛍光出射面が、励起光受光面を構成する面およびその面に対向する面によって形成されたものであってもよい。
また、蛍光光源装置全体の構造は、図1に示すものに限定されず、種々の構成を採用することができる。例えば、図1に係る蛍光光源装置では、1つの励起用レーザ光源(例えば、レーザダイオード)の光を用いているが、励起用レーザ光源が複数あり、波長変換部材の前に集光レンズを配置して、集光光を波長変換部材に照射する形態であってもよい。また、励起用レーザ光はレーザダイオードのレーザ光に限るものではなく、波長変換部材を励起できるレーザ光を放射するものであれば種々のものを用いることができる。ここに、励起用レーザ光源としては、波長変換部材21(蛍光部材22)を構成する蛍光体の種類などに応じて適宜の波長の光を放射するものが用いられるが、例えば波長445〜465nmの光を放射するものが用いられる。
以下、本発明の作用効果を確認するために行った実験例について説明する。
〔実験例1〕
先ず、直径が250nm、500nm、1000nm、2000nmおよび4000nmの5種類の樹脂製ビーズを用意した。そして、これらの5種類の樹脂製ビーズの各々を用い、図1の構成を有し、直径が250nm、500nm、1000nm、2000nmまたは4000nmの気孔よりなる微小散乱体(25)を含有し、比(T/R)が異なる複数の波長変換部材(21)を作製した。これらの複数の波長変換部材(21)において、各々、周期構造体層(26)は、蛍光部材(22)の表面にスパッタ膜を形成し、そのスパッタ膜の表面に凹凸構造を形成することによって得られたものである。その作製した複数の波長変換部材(21)は、下記の仕様を有するものである。
また、微小散乱体(25)を含有しないこと以外は、前記の複数の波長変換部材(21)と同様の構成を有する波長変換部材を作製した。この波長変換部材(21)における蛍光部材(22)の気孔率は0.5%以下である。
作製した微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)の各々において、比(T/R)は、半球状の積分球を用い、波長600nmの光(非励起光)を照射することによって、光透過割合T〔%〕および光反射割合R〔%〕を測定し、得られた値に基づいて算出した。
[蛍光部材(22)]
材質:YAG:Ceよりなる多結晶の蛍光体(Ceのドープ量:0.5mol%,屈折率=1.83,励起波長=445nm,蛍光波長=550nm),寸法:5mm(縦)×5mm(横)×0.13mm(厚み)
[周期構造体層(26)]
材質:ZrO2 (屈折率=2.1),寸法:5mm(縦)×5mm(横)×550nm(最大厚み),周期構造(27)の形状:円錐台状の凸部(28)の高さ(h)=280nm,凸部(28)の下底部の幅=370mm,周期(d)=460nm,アスペクト比(h/d)=0.6,薄膜部(凸部(28)以外の厚み)の厚み:270nm
作製した複数の波長変換部材(21)の各々を用いて、下記の仕様を有する蛍光発光部材(20)を作製した。
そして、作製した複数の蛍光発光部材(20)の各々に対して、波長変換部材(21)の表面(蛍光部材(22)の表面)に、励起用レーザ光を照射し、当該表面における光取り出し効率を測定した。そして、上記数式(1)に基づいて、得られた光取り出し効率と光透過割合T〔%〕とを乗ずることによって光利用効率を算出した。微小散乱体(25)を含有しない波長変換部材(21)の光利用効率は75%であった。また、微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)の各々に係る結果を図2に示す。この図2は、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフであり、直径250nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を三角プロットで示す。また、直径500nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を乗算記号プロットで示し、直径1000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果をアスタリスクプロットで示し、直径2000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を丸プロットで示し、直径4000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果をプラス記号プロットで示す。また、同図において、グラフ上の縦軸に平行な破線の直線は、比(T/R)が1の基準線であり、グラフ上の横軸に平行な破線の直線は、光利用効率が75%の基準線である。なお、この基準線に係る光利用効率の値75%は、微小散乱体(25)を含有しない波長変換部材(21)の光利用効率に基づくものである。
[基板(31)]
材質:Mo−Cu基板,外形寸法:17mm(縦)×17mm(横)×0.5mm
[光反射膜]
材質:銀,厚み:110nm
[光拡散膜]
材質:無機拡散材(アルカリ性水溶液とシリカおよび酸化チタンの微小粒子との混濁液を乾燥したもの),光拡散特性:波長550nmの光の反射率が95.7%以上
[接合部材]
材質:半田(金錫(AuSn)合金(Snの含有割合20質量%))
〔実験例2〕
実験例1において、5種類の樹脂製ビーズに代えて、フッ化ストロンチウム(SrF2 ,屈折率1.38)よりなり、直径が2000nm、3000nm、5000nmおよび8000nmの4種類の散乱微小粒子を用いたこと以外は、当該実験例1と同様の手法により、図1の構成を有し、直径が2000nm、3000nm、5000nmおよび8000nmの散乱微小粒子よりなる微小散乱体(25)を含有し、比(T/R)が異なる複数の波長変換部材(21)を作製した。ここに、比(T/R)は、実験例1と同様の手法によって算出した。
そして、作製した複数の波長変換部材(21)の各々を用いて、下記の仕様を有する蛍光発光部材(20)を作製し、それらの複数の蛍光発光部材(20)の各々に対して、波長変換部材(21)の表面(蛍光部材(22)の表面)に、励起用レーザ光を照射し、当該表面における光取り出し効率を測定した。そして、上記数式(1)に基づいて、得られた光取り出し効率と光透過割合T〔%〕とを乗ずることによって光利用効率を算出した。結果を図3に示す。この図3は、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフであり、直径2000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を菱形プロットで示す。また、直径3000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を四角プロットで示し、直径5000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を三角プロットで示し、直径8000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を乗算記号プロットで示す。また、同図において、グラフ上の縦軸に平行な破線の直線は、比(T/R)が1の基準線であり、グラフ上の横軸に平行な破線の直線は、光利用効率が75%の基準線である。なお、この基準線に係る光利用効率の値75%は、図2と同様に、微小散乱体(25)を含有しない波長変換部材(21)の光利用効率に基づくものである。
〔実験例3〕
実験例1において、5種類の樹脂製ビーズに代えて、アルミナ(屈折率1.76)よりなり、直径が500nm、1000nm、2000nmおよび5000nmの4種類の散乱微小粒子を用いたこと以外は、当該実験例1と同様の手法により、図1の構成を有し、直径が500nm、1000nm、2000nmおよび5000nmの散乱微小粒子よりなる微小散乱体(25)を含有し、比(T/R)が異なる複数の波長変換部材(21)を作製した。ここに、比(T/R)は、実験例1と同様の手法によって算出した。
そして、作製した複数の波長変換部材(21)の各々を用いて、下記の仕様を有する蛍光発光部材(20)を作製し、それらの複数の蛍光発光部材(20)の各々に対して、波長変換部材(21)の表面(蛍光部材(22)の表面)に、励起用レーザ光を照射し、当該表面における光取り出し効率を測定した。そして、上記数式(1)に基づいて、得られた光取り出し効率と光透過割合T〔%〕とを乗ずることによって光利用効率を算出した。結果を図4に示す。この図4は、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフであり、直径500nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を菱形プロットで示す。また、直径1000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を四角プロットで示し、直径2000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を三角プロットで示し、直径5000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を乗算記号プロットで示す。また、同図において、グラフ上の縦軸に平行な破線の直線は、比(T/R)が1の基準線であり、グラフ上の横軸に平行な破線の直線は、光利用効率が75%の基準線である。なお、この基準線に係る光利用効率の値75%は、図2および図3と同様に、微小散乱体(25)を含有しない波長変換部材(21)の光利用効率に基づくものである。
これらの実験例1〜実験例3の結果から、波長変換部材として、励起光受光面に特定の周期構造が形成されていると共に、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有し、比(T/R)が1〜20の範囲内であるものを用いることにより、微小散乱体を含有しない波長変換部材を用いた場合よりも高い光利用効率(具体的には75%以上)が得られることが確認された。すなわち、本発明の蛍光光源装置によれば、高い発光効率が得られることが確認された。また、特に、波長変換部材において、比(T/R)が1〜10の範囲内である場合には、78%以上のより高い光利用効率が得られることが確認された。
また、波長変換部材においては、微小散乱体が気孔および散乱微小粒子のいずれかによって構成されたものであってもよいことが確認された。このことから、波長変換部材における屈折率が1.0以上の微小散乱体は、気孔、散乱微小粒子および粒界析出相のいずれか、あるいはいずれの組み合わせによって構成できるものであることが明らかとなった。
また、実験例1〜実験例3の結果に基づいて、微小散乱体の屈折率と最大光利用効率との関係を確認した。ここに、最大利用効率とは、実験例1〜実験例3の各々において得られた光利用効率の最大値を示す。結果を図5に示す。
この結果から、微小散乱体の屈折率に比例して光利用効率が高くなることが確認された。
10 蛍光光源装置
11 レーザダイオード
15 コリメートレンズ
16 ダイクロイックミラー
17 コンデンサーレンズ
20 蛍光発光部材
21 波長変換部材
22 蛍光部材
25 微小散乱体
26 周期構造体層
27 周期構造
28 凸部
31 基板
40 蛍光光源装置
41 蛍光部材
43 接合部
46 励起用レーザ光源
48 レンズ
49 光反射性基板
L 励起光
L1 蛍光
本発明の蛍光光源装置は、励起用レーザ光により蛍光を出射する波長変換部材を備えた蛍光光源装置において、
前記波長変換部材における励起光受光面に、錐状または錐台状の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されており、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.2以上であり、
前記波長変換部材は、多結晶からなる蛍光体によるものであって、前記励起用レーザ光および当該蛍光体から放射される蛍光を散乱する、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有し、当該波長変換部材における波長600nmの光の光透過割合T〔%〕と当該波長変換部材における波長600nmの光の光反射割合R〔%〕との比(T/R)が1〜20であるものであることを特徴とする。
光透過割合T〔%〕および光反射割合R〔%〕は、下記のように測定される。
光透過割合T〔%〕は、先ず、半球状の積分球を、当該積分球の開口が波長変換部材21の励起光受光面に対向する面(以下、「裏面」ともいう。)に対向するよう配置し、当該励起光受光面に対して非励起光(例えば波長600nmの光)を照射する。そして、非励起光の光強度I0 を測定すると共に、積分球において測定される、波長変換部材21の裏面からの光の光強度Ir を測定し、得られた光強度I0 と光強度Ir に基づいて算出することができる。すなわち、光透過割合T〔%〕は、光強度 0 に対する光強度 r の割合によって示される。
一方、光反射割合R〔%〕は、先ず、半球状の積分球を、当該積分球の開口が波長変換部材21の励起光受光面に対向するよう配置し、当該励起光受光面に対して非励起光(例えば波長600nmの光)を照射する。そして、非励起光の光強度I0 を測定すると共に、積分球において測定される、波長変換部材21の励起光受光面からの光の光強度If を測定し、得られた光強度I0と光強度If に基づいて算出することができる。すなわち、光反射割合R〔%〕は、光強度 0 に対する光強度 f の割合によって示される。
周期構造体層26は、波長変換部材21の励起光受光面とされる表面(図1における上面)に、周期構造27が形成されたものである。
この周期構造27を構成する凸部28は、図1に示されているように、面から面に向かう方向に沿って小径となる略錐状の形状とされる。
具体的に、凸部28の形状は、図1に示されているような錐台状(図1においては円錐台状)、または錐状である。
ここに、凸部28の形状が錐台状である場合には、上底部の寸法(最大寸法)は、励起光Lの波長未満とされる。
この図の例において、周期構造27は、蛍光部材22の表面を覆う平板状の薄膜部上に、円錐台状の凸部28が密集した状態で二次元周期的に配列されてなるものである。
また、周期構造体層26を構成する材料としては、屈折率が蛍光部材22の屈折率より大きいものを用いることが好ましい。
周期構造体層26を構成する材料として蛍光部材22より高屈折率のものを用いることによれば、蛍光部材22内で生じた蛍光L1が、蛍光部材22と周期構造体層26と界面において全反射することがない。しかも、蛍光部材22と周期構造体層26との界面に入射した蛍光L1は、当該界面を透過することによって界面での出射角が小さくなるように屈折が生じる。そのため、蛍光L1の進行方向が蛍光部材22と周期構造体層26との界面において変更されることから、蛍光L1が波長変換部材21の内部に閉じ込められることが抑制される。その結果、蛍光L1を蛍光出射面から外部に高い効率で出射することができる。また、周期dが小さい周期構造27を形成することが可能となる。従って、周期構造27を構成する凸部28としてアスペクト比が大きくても高さが小さいものを設計することができるので、周期構造27の形成が容易となる。例えば、ナノプリント法を利用する場合には、モールドの作製やインプリント作業を容易に行うことができる。
しかも、蛍光光源装置10においては、蛍光部材22の内部における励起光Lを蛍光L1に変換するための光路長が微小散乱体25の作用によって長くなることから、励起光有効利用性が低下するという弊害を伴うことなく、蛍光部材22の厚みを小さくし、よって波長変換部材21の厚みを小さくすることができる。そして、波長変換部材21の厚みを小さくすることによれば、当該波長変換部材21の熱抵抗が低減されることから、波長変換部材21の温度上昇が抑制される。その結果、蛍光体において温度消光が生じることに起因する蛍光光量の低減を抑制することができることから、より一層高い発光効率が得られる。具体的には、波長変換部材21における蛍光部材22の厚みを0.13mmから0.1mm小さくすることにより、波長変換部材21の温度を30℃低減させ、光取り出し効率を13%向上させることができる。
〔実験例2〕
実験例1において、5種類の樹脂製ビーズに代えて、フッ化ストロンチウム(SrF2 ,屈折率1.38)よりなり、直径が2000nm、3000nm、5000nmおよび8000nmの4種類の散乱微小粒子を用いたこと以外は、当該実験例1と同様の手法により、図1の構成を有し、直径が2000nm、3000nm、5000nmおよび8000nmの散乱微小粒子よりなる微小散乱体(25)を含有し、比(T/R)が異なる複数の波長変換部材(21)を作製した。ここに、比(T/R)は、実験例1と同様の手法によって算出した。
そして、作製した複数の波長変換部材(21)の各々を用いて、上記の仕様を有する蛍光発光部材(20)を作製し、それらの複数の蛍光発光部材(20)の各々に対して、波長変換部材(21)の表面(蛍光部材(22)の表面)に、励起用レーザ光を照射し、当該表面における光取り出し効率を測定した。そして、上記数式(1)に基づいて、得られた光取り出し効率と光透過割合T〔%〕とを乗ずることによって光利用効率を算出した。結果を図3に示す。この図3は、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフであり、直径2000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を菱形プロットで示す。また、直径3000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を四角プロットで示し、直径5000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を三角プロットで示し、直径8000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を乗算記号プロットで示す。また、同図において、グラフ上の縦軸に平行な破線の直線は、比(T/R)が1の基準線であり、グラフ上の横軸に平行な破線の直線は、光利用効率が75%の基準線である。なお、この基準線に係る光利用効率の値75%は、図2と同様に、微小散乱体(25)を含有しない波長変換部材(21)の光利用効率に基づくものである。
〔実験例3〕
実験例1において、5種類の樹脂製ビーズに代えて、アルミナ(屈折率1.76)よりなり、直径が500nm、1000nm、2000nmおよび5000nmの4種類の散乱微小粒子を用いたこと以外は、当該実験例1と同様の手法により、図1の構成を有し、直径が500nm、1000nm、2000nmおよび5000nmの散乱微小粒子よりなる微小散乱体(25)を含有し、比(T/R)が異なる複数の波長変換部材(21)を作製した。ここに、比(T/R)は、実験例1と同様の手法によって算出した。
そして、作製した複数の波長変換部材(21)の各々を用いて、上記の仕様を有する蛍光発光部材(20)を作製し、それらの複数の蛍光発光部材(20)の各々に対して、波長変換部材(21)の表面(蛍光部材(22)の表面)に、励起用レーザ光を照射し、当該表面における光取り出し効率を測定した。そして、上記数式(1)に基づいて、得られた光取り出し効率と光透過割合T〔%〕とを乗ずることによって光利用効率を算出した。結果を図4に示す。この図4は、比(T/R)と光利用効率との関係を示すグラフであり、直径500nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を菱形プロットで示す。また、直径1000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を四角プロットで示し、直径2000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を三角プロットで示し、直径5000nmの微小散乱体(25)を含有する波長変換部材(21)に係る蛍光発光部材(20)の測定結果を乗算記号プロットで示す。また、同図において、グラフ上の縦軸に平行な破線の直線は、比(T/R)が1の基準線であり、グラフ上の横軸に平行な破線の直線は、光利用効率が75%の基準線である。なお、この基準線に係る光利用効率の値75%は、図2および図3と同様に、微小散乱体(25)を含有しない波長変換部材(21)の光利用効率に基づくものである。
本発明の蛍光光源装置は、励起用レーザ光により蛍光を出射する波長変換部材を備えた蛍光光源装置において、
前記波長変換部材における励起光受光面に、錐状または錐台状の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されており、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.2以上であり、
前記波長変換部材は、多結晶からなる蛍光体によるものであって、前記励起用レーザ光および当該蛍光体から放射される蛍光を散乱する、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有し、当該波長変換部材における励起用レーザ光受光面に照射された波長600nmの光の光透過割合T〔%〕と当該波長変換部材における励起用レーザ光受光面に照射された波長600nmの光の光反射割合R〔%〕との比(T/R)が1〜20であるものであることを特徴とする。

Claims (1)

  1. 励起用レーザ光により蛍光を出射する波長変換部材を備えた蛍光光源装置において、
    前記波長変換部材における励起用レーザ光受光面に、錐状または錐台状の凸部が周期的に配列されてなる周期構造が形成されており、当該周期構造における周期に対する凸部の高さの比であるアスペクト比が0.2以上であり、
    前記波長変換部材は、多結晶からなる蛍光体によるものであって、前記励起用レーザ光および当該蛍光体から放射される蛍光を散乱する、屈折率が1.0以上の微小散乱体を含有し、当該波長変換部材における光透過割合T〔%〕と当該波長変換部材における光反射割合R〔%〕との比(T/R)が1〜20であるものであることを特徴とする蛍光光源装置。
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