JP2016051524A - 荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法 - Google Patents

荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる荷電粒子照射装置を提供すること。【解決手段】 荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段と、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極と、前記荷電粒子ビームが照射される基板を保持する台座と、を備える荷電粒子照射装置であって、前記対向偏向電極に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームが前記基板の荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板に照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを特徴とする荷電粒子照射装置。【選択図】 図2

Description

本発明は、荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法に関する。
従来から、集積回路などの製造における基板へのイオン注入、陽子線や炭素イオンなどの粒子線の所定部位への照射、試料へのクラスタイオンの堆積などに荷電粒子照射装置が用いられている。
このような荷電粒子照射装置として、特開平08−315765号公報(特許文献1)には、所定のチルト角度を有する半導体ウエハのイオン注入面にイオン発生源からのイオン・ビームをXY軸方向に走査することにより注入する静電スキャン式イオン注入方法であって、前記イオン・ビームのX軸方向の走査速度を、前記半導体ウエハのイオン注入面におけるY軸方向のイオン・ビーム入射角度の小さい側からイオン・ビーム入射角度の大きい側に行くにしたがい漸減した、ことを特徴とする静電スキャン式イオン注入方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている静電スキャン式イオン注入方法は、X及びY方向の走査を同期する必要があるため、電圧制御が複雑かつ装置などが高価であるという問題を有していた。
特開平08−315765号公報
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能な荷電粒子照射装置、及びそれを用いた荷電粒子照射方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、基板に向けて照射する荷電粒子ビームを偏向するための対向偏向電極に印加する電圧の周波数比を無理数とし、かつ、荷電粒子ビームが基板の荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにすることにより、荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化がより簡便な制御でかつ均一性を高水準に達成されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の荷電粒子照射装置は、荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段と、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極と、前記荷電粒子ビームが照射される基板を保持する台座と、を備える荷電粒子照射装置であって、
前記対向偏向電極に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームが前記基板の荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板に照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを特徴とするものである。
本発明の荷電粒子照射装置においては、前記対向偏向電極が、X軸方向に対向配置した一組の偏向電極と、Y軸方向に対向配置した一組の偏向電極とを有しており、その対向方向が互いに平行な対称形の対向偏向電極であることが好ましい。
また、本発明の荷電粒子照射装置においては、前記対向偏向電極に印加する電圧波形が三角波形又は正弦波であることが好ましい。
更に、本発明の荷電粒子照射装置においては、前記荷電粒子がクラスタイオンであり、前記荷電粒子ビームをリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射し、前記基板にクラスタイオンを堆積せしめるようにすることが好ましい。
本発明の荷電粒子照射方法は、荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段と、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極と、前記荷電粒子ビームが照射される基板を保持する台座と、を備える荷電粒子照射装置を用い、
前記対向偏向電極に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームが前記基板の荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板に照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを特徴とする方法である。
本発明の荷電粒子照射方法においては、前記対向偏向電極が、X軸方向に対向配置した一組の偏向電極と、Y軸方向に対向配置した一組の偏向電極とを有しており、その対向方向が互いに平行な対称形の対向偏向電極であることが好ましい。
また、本発明の荷電粒子照射方法においては、前記対向偏向電極に印加する電圧波形が三角波形又は正弦波であることが好ましい。
更に、本発明の荷電粒子照射方法においては、前記荷電粒子がクラスタイオンであり、前記荷電粒子ビームをリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射し、前記基板にクラスタイオンを堆積せしめるようにすることが好ましい。
なお、本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法においては、荷電粒子ビーム生成手段から出射された荷電粒子ビームを基板に照射する際に、印加する電圧の周波数比を無理数としかつ荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するように対向偏向電極により荷電粒子ビームを制御している。このような対向偏向電極を用いることにより直交したX方向及びY方向の走査を独立に行うことができ、ラスター走査などの従来技術に比べてより簡便な制御で、リサージュ走査により荷電粒子照射領域内をまんべんなく均一に走査することができるようになり、また、周波数比が無理数であることから照射ビームの軌跡は照射領域内を緻密に走査することができるようになり、更に、これらの相乗効果により前記目的が達成されるようになるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能な荷電粒子照射装置、及び荷電粒子照射方法を提供することが可能となる。
本発明の荷電粒子照射装置を模式的に示すブロック図である。 本発明の荷電粒子照射装置の好適な一実施形態を模式的に示す概略縦断面図である。 実施例1のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極の概略構成を示す概略斜視図である。 実施例1のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極への電圧印加の概略構成を示す概略図である。 実施例1のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極に印加される電圧波形を示す波形図である。 実施例1のクラスタイオン照射装置において基板に照射されるクラスタイオンビームの走査経路を示す模式図である。 実施例1で作製したTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物の堆積密度を示すグラフである。 実施例1で作製したTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物(Ptクラスタ)の分布のXPS分析結果を示すグラフである。 実施例2のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極に印加される電圧波形を示す波形図である。 実施例2のクラスタイオン照射装置において基板に照射されるクラスタイオンビームの走査経路を示す模式図である。 実施例2で作製したTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物の堆積密度を示すグラフである。 比較例1で作製したTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物(Ptクラスタ)の分布のXPS分析結果を示すグラフである。 比較例2のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極に印加される電圧波形を示す波形図である。 比較例2のクラスタイオン照射装置において基板に照射されるクラスタイオンビームの走査経路を示す模式図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法]
先ず、本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法について説明する。なお、図1は本発明の荷電粒子照射装置を模式的に示すブロック図である。すなわち、本発明の荷電粒子照射装置は、荷電粒子からなる荷電粒子ビームBを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段1と、前記荷電粒子ビームBの周囲に配置され前記荷電粒子ビームBを偏向する対向偏向電極2と、前記荷電粒子ビームBが照射される基板Mを保持する台座3と、を備える荷電粒子照射装置であって、
前記対向偏向電極2に印加する電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームBが前記基板Mの荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板Mに照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを装置である。
また、本発明の荷電粒子照射方法は、荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段1と、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極2と、前記荷電粒子ビームが照射される基板Mを保持する台座3と、を備える荷電粒子照射装置を用い、
前記対向偏向電極2に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームBが前記基板Mの荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板Mに照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを特徴とする方法である。
(荷電粒子ビーム生成手段)
このような本発明の荷電粒子照射装置おいては、荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段1を有していることが必要である。
ここで、荷電粒子とは、電荷を帯びた粒子であり、例えば、正又は負の電気をもつ電子や陽子など、イオン(電荷をもった物質であり、クラスタイオンなどを含む)である。具体的には、陽子線、ヘリウムイオン(α線)、重粒子線、電子、陽電子、クラスタイオン、などが挙げられる。このような荷電粒子の生成手段としては、特に制限されないが、例えば、荷電粒子を生成する手段として、イオン注入装置、ECR(電子サイクロトン共鳴)イオン源やペレトロン加速器、電子ビーム描画装置、電子ビーム露光装置などの電子線描画装置、DC(Direct Current)スパッタ装置、AC(alternating current)スパッタ装置、RF(Radio Frequency)スパッタ、マグネトロンスパッタ装置などのスパッタ装置、などを用いることができる。
(対向偏向電極)
次に、本発明の荷電粒子照射装置は、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極2を有していることが必要である。更に、前記対向偏向電極2に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームが前記基板Mの荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにしていることが必要である。このような構成の対向偏向電極2とすることにより、印加する電圧の周波数比を無理数としリサージュパターン(波形)を有する電界(電場)を形成することができ、このような電界(電場)を通過する荷電粒子ビームBを偏向して前記基板Mの荷電粒子照射領域内をリサージュ走査せしめ、前記荷電粒子ビーム生成手段1より照射される荷電粒子ビームBを偏向させて、荷電粒子ビームBのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる。
ここで、リサージュ走査とは、リサージュ図形又はリサージュ曲線に沿って走査することであり、リサジュー図形(Lissajous figure)又はリサジュー曲線(Lissajous curve)とは、互いに直交する二つの単振動を順序対として得られる点の軌跡が描く平面図形のことである。また、単振動は正弦波、余弦波又は三角波によって発生させることができ、本発明では対向偏向電極に印加する電圧の周波数比を無理数としたことによりこのような軌跡は閉曲線にはならず、軌道は有限の四角形又は平行四辺形領域を稠密に埋めるように走査することができる。なお、このようなリサージュ図形としては、例えば、A.Bazaei et al.、Review of Scientific Instruments 83、063701(2012)に記載されており、このようなリサージュ走査に関する公知の技術を適宜採用することができる。また、無理数(irrational number、無比数)とは、有理数(rational number、分母・分子が整数の分数で表すことのできる数のことで、「整数」、「有限の(終わりがある)小数」、「無限に続くが数が循環している小数」の三つがある)ではない実数、つまり分子・分母ともに整数である分数(比:ratio)として表すことのできない実数を指す。すなわち、無理数は有理数ではないもので「無限に続き、数が循環していない小数」である。なお、無理数を十進小数で表記すると、繰り返しのない無限小数になる。
また、本発明の荷電粒子照射装置における対向偏向電極としては、互いに直交したX軸方向電極及びY軸方向電極により構成されるものであることが好ましい。また、このような対向偏向電極としては、X軸方向及びY軸方向の電界の干渉を無くしより高精度での走査を実現する観点から、X軸方向電極とY軸方向電極を2段構成とすることが好ましい。なお、対向偏向電極の設置スペースを小さくしたい場合には、1段構成としてもよい。また、このような対向偏向電極に信号発生器を接続する場合には、X軸方向電極及びY軸方向電極に、互いに独立した信号を印加することが好ましい。
更に、本発明の荷電粒子照射装置においては、前記対向偏向電極2が、X軸方向に対向配置した一組の偏向電極と、Y軸方向に対向配置した一組の偏向電極とを有しており、その対向方向が互いに平行な対称形の対向偏向電極であることが好ましい。このような対向偏向電極とすることにより、より簡便な装置及び制御で荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化を高水準な均一性で達成することが可能となる。
また、本発明の荷電粒子照射装置においては、前記対向偏向電極2に印加する電圧波形が三角波形又は正弦波であることが好ましく、三角波形であることがより好ましい。このような対向偏向電極とすることにより、荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつより高水準な均一性で達成することが可能となる。特に、印加する電圧波形を三角波形とすることにより、荷電粒子ビームの照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ更により高水準な均一性で達成することが可能となる。
なお、本発明の荷電粒子照射装置における対向偏向電極2は、後述する電圧印加手段に電気的に接続されており、後述する制御装置が接続されている。
(台座)
次に、本発明の荷電粒子照射装置は、前記荷電粒子ビームBが照射される基板Mを保持する台座3を有していることが必要である。
このような台座3としては、前記荷電粒子ビームBが照射される基板Mを保持することができるものであれば特に制限されるものではなく、イオン注入装置、ECRイオン源やペレトロン加速器、電子線描画装置、スパッタ装置などにおいて生成された荷電粒子ビームが照射される基板を保持する台座として通使用される種々の台座を用いることができる。
また、基板Mとしては、特に制限されるものではなく、集積回路などの製造における基板へのイオン注入、材料表面改質などにおける基板への荷電粒子照射、触媒金属や光学デバイス或いは単電子デバイスなどの製造における試料(基板)へのクラスタの堆積などの使用目的に応じて適宜選択される。例えば、集積回路(半導体)などの基板としてはシリコンウエハ、ガラス、Al系合金、セラミック、カーボン、化合物半導体など、太陽電池用の基板としてはシリコンの単結晶ウエハ、ガラス、プラスチックなど、触媒金属などの基板としてはTiO、Al、CeO、MgO、ZrO、Nb、Vなど、及びそれらの複合酸化物などが挙げられる。
(荷電粒子照射装置)
本発明の荷電粒子照射装置は、前記荷電粒子ビーム生成手段1と、前記対向偏向電極2と、前記台座3と、を備える荷電粒子照射装置であって、前記対向偏向電極2に印加する電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームBが前記基板Mの荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板Mに照射される荷電粒子の密度が均一になるようにした装置である。
(荷電粒子照射方法)
本発明の荷電粒子照射方法は、前記荷電粒子ビーム生成手段1と、前記対向偏向電極2と、前記台座3と、を備える荷電粒子照射装置を用い、前記対向偏向電極2に印加する電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームBが前記基板Mの荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板Mに照射される荷電粒子の密度が均一になるようにした方法である。
このような本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法においては、前記荷電粒子がクラスタイオンであり、前記荷電粒子ビーム(クラスタイオンビーム)をリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板Mに照射して前記基板Mにクラスタイオンを堆積せしめるようにした荷電粒子照射装置(クラスタイオン照射装置)及び荷電粒子照射方法(クラスタイオン照射方法)であることが好ましい。このようなクラスタイオン照射装置及び荷電粒子照射方法とすることにより、荷電粒子ビーム(クラスタイオンビーム)のビーム照射領域におけるクラスタイオン照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となり、基板Mに堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる。
[荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法の好適な実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の荷電粒子照射装置及び本発明の荷電粒子照射方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示す実施形態は、本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法の好適な一実施形態として、クラスタイオン照射装置及びクラスタイオン照射方法に適用したものである。図2は、本発明の荷電粒子照射装置の好適な一実施形態としてのクラスタイオン照射装置を模式的に示す概略縦断面図である。図2に示すクラスタイオン照射装置は、基本的に、荷電粒子ビーム生成手段1の好適な一形態としてのクラスタイオンビーム生成手段11と、対向偏向電極2の好適な一形態としての対向偏向電極21と、基板(試料)M1を載置する台座(図示省略)を内蔵する堆積処理容器31とを備えるものである。なお、本実施形態においては、クラスタイオンビーム生成手段11と対向偏向電極21との間に、イオンガイド41、質量フィルタ42、イオンガイド43、クラスタ偏向器51、及び、静電レンズ61を備えている。また、矢印Bは基本的に荷電粒子(クラスタイオン)ビームの流れる方向を概念的に示すものである。
クラスタイオンビーム生成手段11は、エネルギー照射装置(図示省略)と、それを収容するクラスタイオン生成処理容器(図示省略)とを備える装置である。このように、本実施形態のクラスタイオンビーム生成手段11においては、エネルギー照射装置は容器内に配置されている。このようなエネルギー照射装置としては、エネルギーを照射してターゲット材料からクラスタを製造することが可能な装置を適宜利用でき、公知のスパッタ装置(例えば、イオンスパッタ装置、マグネトロンスパッタ装置、イオンビームスパッタ装置など)や、イオン蒸着などに用いることが可能なレーザー照射装置などを適宜利用することができる。
また、クラスタイオン生成処理容器としては、特に制限されず、その容器内においてクラスタイオンを生成することが可能な容器を適宜選択して用いることができる。また、このようなクラスタイオン生成処理容器は壁面の温度を調整できるような構成としてもよく、例えば、壁面を冷却できるようにクラスタイオン生成処理容器に液体窒素シュラウドを設けてもよい。このような液体窒素シュラウドの構成は特に制限されず、目的に応じて設計を適宜変更できる。なお、クラスタイオンビーム生成手段11においては、クラスタイオンを生成する際に、エネルギー照射装置によりエネルギーを照射してクラスタイオンを発生させるためのターゲット材料(図示省略)も配置される。
更に、このようなターゲット材料としては、特に制限されず、例えば、金属(例えば、Pt、Pd、Rh、Au、Irなどの貴金属やNi、Cu、Feなどの遷移金属)、複合金属(金属の混合物、合金など:例えば、PtRu合金、PtFe合金など)、Siなどの半導体及びそれらの酸化物などからなる材料が挙げられる。なお、このようなクラスタイオン生成用のターゲット材料は、エネルギー照射装置などによりエネルギーを照射してクラスタの生成が可能となるように、容器内に適宜配置すればよい。そして、容器内に配置されたターゲット材料に所定のエネルギーが照射されると、ターゲットから原子及び/又は原子イオンが気相中に放出される。クラスタイオン生成処理容器は、クラスタイオンの内部エネルギーを効率よく奪い、クラスタイオン生成を促進するという観点から、ターゲット材料から放出した原子及び/又は原子イオンを凝集させる空間の雰囲気がヘリウムやアルゴンなどの希ガス雰囲気であることが好ましい。本実施形態のクラスタイオン生成処理容器には、例えばヘリウムやアルゴンなどの希ガスが導入されており、気相(希ガス)中で放出された原子や、原子イオンが凝縮し、クラスタイオンとなる。また、このようなターゲット材料の形状なども特に制限されず、用いるエネルギー照射装置の種類などに応じて、その形状などを適宜変更することができる。なお、生成するクラスタイオンは酸素と反応させて酸化物のクラスタイオンとしてもよい。
クラスタイオンビーム生成手段11においては、クラスタイオン生成処理容器内にガスを流入するためにガス流入管(図示省略)が接続されており、かかるガス流入管はガスボンベ(図示省略)に接続されている。このように、本実施形態においては、前記ガスボンベを用いてクラスタイオン生成処理容器内に気体(例えば、ヘリウムやアルゴンなどの希ガス)を導入することが可能であり、これによりクラスタイオン生成処理容器内のガス雰囲気を適宜変更することが可能となっている。また、このようなクラスタイオン生成処理容器はスパッタの際の容器内の圧力を調整するという観点から脱気装置(例えば真空ポンプ)などに適宜接続してもよい。
イオンガイド41は、クラスタイオンビーム生成手段11と質量フィルタ42の間に備えられ、クラスタイオンを効率よく輸送して質量フィルタ42に導入するためのガイドである。このようなイオンガイド41としては、特に制限されず、公知のイオンガイドを適宜利用することができ、多極構造のイオンガイド(多数のイオンガイドのロッド電極がクラスタイオンが通過する経路に平行に配置され且つその経路の中心軸からの距離が同一となるようになど間隔に配置されたもの:例えば四極子イオンガイド、六極子イオンガイド、八極子イオンガイドなど)を好適に利用できる。
質量フィルタ42は、クラスタイオンビーム生成手段11により生成されたクラスタイオンの中からクラスタイオンサイズを基準として基板(試料)に堆積させるためのクラスタイオン(堆積用のクラスタイオン)を選別するための質量フィルタである。
このような質量フィルタ42としては、クラスタイオンサイズを基準としてクラスタイオンを選別することが可能なものであればよく、特に制限されず、例えば、多重極子質量分析器や磁場偏向型質量分析器、飛行時間型の分析器などの公知の装置を適宜用いることができる。このような多重極子質量分析器、磁場偏向型質量分析器及び飛行時間型の分析器としては公知の構成のものを適宜用いることができ、本明細書においては、その構成についての説明は省略する。また、このような質量フィルタ42としては、クラスタイオン強度の観点からは、多重極子質量分析器(例えば四重極子質量分析器)を用いることが好ましく、より高度な分解能を得るという観点からは、磁場偏向型質量分析器を用いることが好ましい。
また、このような質量フィルタ42としては、クラスタイオンが1〜16000a.m.u(より好ましくは、10〜4000a.m.u:原子質量単位)となるサイズのものを選別することが可能な構成のものを用いることが好ましい。このような質量が前記上限を超えるとイオン透過率が低下し、収量が低下する傾向にある。
このように、質量フィルタ42を用いてクラスタイオンを選別することで、例えば、粒径が数オングストロームで均一なクラスタイオンを利用することが可能となり基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度をより均一にすることができる。より具体的には、ターゲット材料が白金の場合に、白金原子の10量体からなるクラスタイオンのみを選択して基板(試料)M1に堆積せしめ白金クラスタイオンの堆積密度の均一化をより高水準な均一性で達成することも可能となる。なお、このような質量フィルタ42としては市販のものを用いることができる。
イオンガイド43は、質量フィルタ42とクラスタイオン偏向器51との間に備えられ、サイズ選別後のクラスタイオンをクラスタイオン偏向器51や堆積処理容器31などに効率よく輸送して導入するためのガイドである。このようなイオンガイド43としては、特に制限されず、公知のイオンガイドを適宜利用することができ、多極構造のイオンガイド(多数のイオンガイドのロッド電極がクラスタイオンが通過する経路に平行に配置され且つその経路の中心軸からの距離が同一となるようになど間隔に配置されたもの:例えば四極子イオンガイド、六極子イオンガイド、八極子イオンガイドなど)を好適に利用できる。
クラスタイオン偏向器51は、イオンガイド43と静電レンズ61との間に備えられ、より効率よく質量フィルタ42で選別したクラスタイオンを堆積処理容器31に供給しつつ質量フィルタ42において選別できなかった中性子などを排除するという観点から、クラスタイオンの進行方向のみを偏向することが可能となるようなクラスタイオン偏向器51を接続している。このようなクラスタイオン偏向器51としては、電場によりクラスタイオンの進行方向を偏向させることが可能な公知のイオンディフレクタ(例えば、クラスタイオンの進行方向を90°偏向させることが可能なイオンディフレクタなど)などを適宜用いることができ、これにより質量選別されずに質量フィルタ42を通過した中性粒子を効率よく除去して、クラスタイオンのみを堆積処理容器31に供給することが可能となる。なお、このようなイオンディフレクタとしては市販のものを用いてもよい。
静電レンズ61は、クラスタイオン偏向器51と対向偏向電極21との間に備えられ、三枚の電極から構成され、端の2枚はアース電位に保ち、中央の電極だけが高電圧電源(図示省略)に接続されてこの電極の電圧を調節してレンズ作用の大きさを変えるレンズであり、電子は加速も減速もされずレンズ作用のみを与えるものである。このような静電レンズ61としては、アインツェルレンズ(Einzel Lens)などが挙げられ、アインツェルレンズを用いることが好ましい。
対向偏向電極21は、前記クラスタイオンビームの周囲に、前記クラスタイオンビームが通過する空隙を挟んで対向して配置され、前記クラスタイオンビームを偏向する対向偏向電極であり、印加する電圧の周波数比を無理数としリサージュパターン(波形)を有する電界(電場)を形成する。このような対向偏向電極21としては、印加する電圧の周波数比を無理数としリサージュパターン(波形)を有する電界(電場)を形成することが可能な対向偏向電極であれば、特に制限されず、これによりこのような電界(電場)を通過するクラスタイオンビームB1を偏向して前記基板のクラスタイオン照射領域内をリサージュ走査せしめ、ビーム照射領域におけるビーム照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる。例えば、平行平板型、4極子、8極子又はそれ以上の多極子などの静電偏向器、などが挙げられる。このような対向偏向電極21には電源(図示省略)及び制御装置(図示省略)が接続され、電極対に与える電圧(電圧値)が供給される。
このような対向偏向電極21としては、クラスタイオンビームB1を基板(試料)面上のX−Y方向に偏向させるため、前記対向偏向電極がX軸方向に対向配置した一組の偏向電極とY軸方向に対向配置した一組の偏向電極とを有しており、その対向方向が互いに平行な対称形の対向偏向電極であることが好ましい。このような対向偏向電極21とすることにより、X成分とY成分の偏向電極対が軸方向に1段づつ並ぶ構成となる。このような対向偏向電極とすることにより、より簡便な装置及び制御でクラスタイオンビームB1のビーム照射領域におけるクラスタイオン照射密度の均一化を高水準な均一性で達成することが可能となり、より簡便な装置及び制御で基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化を高水準な均一性で達成することが可能となる。なお、このような偏向電極対は複数段あってもよい。
また、このような対向偏向電極21としては、印加する電圧波形が三角波形又は正弦波であることが好ましく、三角波形であることがより好ましい。このような対向偏向電極とすることにより、クラスタイオンビームB1のビーム照射領域におけるクラスタイオン照射密度の均一化をより簡便な制御でかつより高水準な均一性で達成することが可能となり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化をより簡便な制御でかつより高水準な均一性で達成することが可能となる。特に、印加する電圧波形を三角波形とすることにより、クラスタイオンビーム照射領域における走査速度が一定となり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化をより簡便な制御でかつ更により高水準な均一性で達成することが可能となる。
更に、このような対向偏向電極21としては、基板に対して平行になるように第1の電界(電場)を発生する─対の第1対向偏向電極と、前記電界に直交でかつ前記基板に対して平行になるように第2の電界(電場)を発生する─対の第2対向偏向電極とを備えており、基板に照射されるクラスタイオンビームB1が前記基板のクラスタイオン照射領域内において前記二組の対をなす対向偏向電極から発生する電界(電場)によりリサージュ波形を形成してリサージュ走査するようにしたものであることが好ましい。このようなクラスタイオン照射装置とすることにより、クラスタイオンビームB1のビーム照射領域におけるクラスタイオン照射密度の均一化をより簡便な制御でかつより高水準な均一性で達成することが可能となり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化をより簡便な制御でかつより高水準な均一性で達成することが可能となる。
なお、このような対向偏向電極21においては、対向偏向電極21によりリサージュパターン(波形)を有する電界(電場)を形成し、このような電界(電場)を通過したクラスタイオンビームB1が基板のクラスタイオン照射領域内をリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射される。このようなリサージュ図形としては特に制限されないが、次式で表されるものであることが好ましい。すなわち、このようなリサージュ図形としては、下記式(1):
及び下記式(2):
(式(1)及び式(2)中、ωはX方向電極に印加する三角波の角速度、ωはY方向電極に印加する三角波の角速度、tは時間、δはX方向電極及びY方向電極に印加する三角波の位相差、を示す。)で表されるものである。
堆積処理容器31は、基板(試料)M1を載置する台座(図示省略)を内蔵する容器であり、真空中で、質量フィルタ42により選別された堆積用のクラスタイオンを導入するための領域(空間)を有している容器であればよい。このような堆積処理容器31の材質やサイズなども特に制限されず、設計に応じて適宜変更できる。また、本実施形態においては、堆積処理容器31には、内部を真空状態とすることができるように図示を省略した脱気装置が接続されている。このような脱気装置としては、特に制限されず、公知の脱気装置(例えば真空ポンプ)を適宜利用することができる。
基板M1は、堆積処理容器31内の台座(図示省略)に載置されており、クラスタイオンビームB1の進行方向上に配置され、対向偏向電極21において偏向されたクラスタイオンは、そのまま堆積処理容器31に導入され、堆積処理容器31内に設置されている基板に衝突して基板上に堆積(デポジット)される。なお、基板M1上のビーム照射領域におけるビーム照射密度及び基板M1上での堆積粒子の分布は、堆積処理容器31などを調整することにより変更することが可能である。対向偏向電極21、クラスタイオン偏向器51、静電レンズ61などの調整は制御装置(図示省略)によって行われる。
更に、本実施形態のクラスタイオン照射装置においては、クラスタイオンビーム生成手段11において生成されたクラスタイオンを質量フィルタ42に、より効率よく供給するという観点から、クラスタイオンビーム生成手段11とイオンガイド41との間に更にイオンファンネルを備えていることが好ましい。このようなイオンファンネルとしては、その構造は特に制限されず、公知のイオンファンネルを適宜用いることができ、例えば、大きさの異なる穴の開いた電極を複数備えてなり且つクラスタイオンの進行方向(矢印Aに示す方向)に向かって前記穴の大きさが徐々に小さくなるように前記複数の電極がそれぞれ配置された構造のものを適宜用いることができる。
また、本実施形態のクラスタイオン照射装置においては、対向偏向電極21により偏向された堆積用のクラスタイオンの供給するタイミングを調整するために、対向偏向電極21と堆積処理容器31とを接続する配管(図示省略)中に、更にクラスタイオンの供給タイミングを調整する装置(タイミング調整装置)を備えていることが好ましい。このようなタイミング調整装置としては、特に制限されないが、パルスバルブを適宜利用することができる。
以上、図2に示すクラスタイオン照射装置について説明したが、以下、このような図2に示すクラスタイオン照射装置を利用してクラスタイオンを照射して基板にクラスタイオンを堆積するクラスタイオン照射方法を説明する。
このような図2に示すクラスタイオン照射装置を利用してクラスタイオンを照射する方法は、本発明の荷電粒子照射方法の好適な一実施形態である。なお、前記クラスタイオン照射装置において説明した内容と重複する内容については省略する。
図2に示す実施形態においては、先ず、クラスタイオンビーム生成手段11のエネルギー照射装置を用いてターゲット材料にエネルギーを照射して、ターゲット材料から原子及び/又は原子イオンを放出させ、前記原子及び/又は原子イオンを凝集させてクラスタイオンを生成し、該クラスタイオンビームB1の照射方向に配置され台座に載置された基板に向けて前記クラスタイオンビームB1を出射する。
このようなターゲット材料へのエネルギーを照射する方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、エネルギー照射装置としてスパッタ装置を用いる場合には、その装置に応じて、イオンスパッタリング法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などを適宜利用してもよく、エネルギー照射装置としてレーザー照射装置を用いる場合には、いわゆるレーザー蒸発法で利用するレーザーの照射方法などを適宜利用してもよい。また、このようにターゲット材料にエネルギーを照射する方法としては、より効率よくクラスタイオンを製造できることから、スパッタ法又はレーザーを照射する方法を採用することが好ましい。
また、このようなターゲット材料へのエネルギーの照射条件としては、特に制限されず、ターゲット材料から原子及び/又は原子イオンを放出させることが可能な条件とすればよく、ターゲット材料の種類やエネルギー照射装置の種類などに応じて好適な条件を適宜採用すればよい。例えば、エネルギー照射装置としてマグネトロンスパッタ型スパッタ装置を用い、ターゲット材料として円盤状の白金(Pt)を用いた場合には、より効率よくクラスタイオンを生成するという観点から、ターゲット表面上の磁場を0〜2000ガウス(より好ましくは下限を200ガウス以上)とし、放電気体として希ガス(不活性ガス)を用い、放電電力を15〜100W(より好ましくは20〜45W)、放電電流を10〜400mA(より好ましくは100〜300mA)とすることが好ましい。このようにして所定のエネルギーを照射することによって、ターゲットから原子及び/又は原子イオンが気相中に放出され、その気相中に放出された原子や原子イオンを凝縮させることで、クラスタイオンを形成できる。すなわち、このようにして所定のエネルギーを照射することによって、ターゲットから原子及び/又は原子イオンが気相中に放出されると、クラスタイオン生成処理容器の出口に向かう気流により原子及び/又は原子イオンが浮遊するが、この際に他の原子や原子イオンに接触して、これらが凝集してクラスタイオンが成長し、クラスタが形成される。
更に、このようにクラスタイオンを生成する際の容器内のスパッタ装置近傍の温度(原子や原子イオンを発生させ、それを凝集、成長させる領域の温度)は、特に制限されないが、10〜150K(ケルビン)とすることが好ましい。このような温度が前記上限を超えると、クラスタイオンの生成効率が著しく低下する傾向にある。
また、このようにクラスタイオンを生成する際のクラスタイオン生成処理容器の内部の圧力の条件としては、特に制限されないが、1kPa〜20kPaとすることが好ましい。このような圧力が前記下限未満ではクラスタイオン生成が進まなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると生成したクラスタイオンが次の系(次室)へ到達できなくなる傾向にある。
次に、図2に示す実施形態においては、上記によりクラスタイオンが生成され出射されると、クラスタイオンはイオンガイド41に流入し、これを通過して、質量フィルタ42に導入される。このようなイオンガイド41を利用することにより、より効率よく質量フィルタ42にクラスタイオンを導入できる。このようにして質量フィルタ42に流入したクラスタイオンは、このような質量フィルタ42において、質量フィルタ42に導入された全てのクラスタイオンの中から、クラスタイオンのサイズに基づいて堆積用のクラスタイオンが選別される。このようにして、質量フィルタ42により所定サイズの堆積用のクラスタイオンのみが選別されて質量フィルタ42から放出され、後段に配置されたイオンガイド43に、その選別された堆積用のクラスタイオンのみが導入される。このように、堆積用クラスタイオン選別工程においては、質量フィルタ42を用いることにより、クラスタイオンの中からクラスタイオンサイズを基準として堆積用のクラスタイオンを選別することを可能とする。
このような選別するクラスタイオンのサイズ(堆積用のクラスタイオンのサイズ)としては、クラスタイオンの堆積物の用途などに応じて異なるものであり、一概には言えないが、基板M1にクラスタイオンが堆積した堆積物を触媒に用い、クラスタイオンの材料にPt(白金)を利用する場合には、クラスタイオンのイオン質量数が194〜12000a.m.u(より好ましくは、585〜3900a.m.u)であることが好ましい。このようなクラスタイオンのサイズが前記下限未満では反応性が乏しくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとクラスタイオン選別の効果が見られなくなる傾向にある。なお、質量数195a.m.uとなる白金クラスタイオンが総原子数1の白金クラスター(原子)であり、質量数1951a.m.uとなる白金クラスターが総原子数10の白金クラスター(10量体)である。
また、単にスパッタのみを施してクラスタイオンのサイズに基いて堆積用のクラスタイオンを選別しない場合について検討すると、スパッタにより得られるクラスタイオンは、通常2〜3nm程度の粒子になり、且つ、その粒子のサイズは非常に不均一なものとなる。例えば、1粒子当たりの原子数が数個のものから数百個や数千個のものまで混在し、粒子サイズはばらついている。このようなクラスタイオンを用いた場合、クラスタイオンビームB1のビーム照射領域におけるクラスタイオンビーム照射密度を均一にすることが難しくなる傾向にあり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度を均一にすることが難しくなる傾向にある。一方、本発明の実施形態のように、質量フィルタ42を用いて、クラスタイオンのサイズを基準として堆積用のクラスタイオンを選択する場合には、所望のサイズのクラスタイオンを選択して均一なサイズのクラスタイオンを堆積用のクラスタイオンとして利用することができ、これにより粒径が十分に均一で、しかも小さなもののみを利用することなども可能となり、このようなクラスタイオンを用いた場合、クラスタイオンビームB1のビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる傾向にあり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる傾向にある。例えば、クラスタイオンの粒子の粒径が数オングストロームで均一であり、且つ、1粒子当たりの原子数が特定の数となるクラスタ(例えば原子数が数個〜数10個のクラスタ)のみを堆積用のクラスタイオンとして利用することも可能である。そのため、このようにクラスタイオンサイズを基準としてクラスタイオンを選別して用いる方法は、例えば、比表面積などの観点から微細な粒子の堆積密度の均一化を高水準な均一性で達成にすることが好適な触媒の分野に利用する堆積物の製造などに有効に利用できる。より具体的には、メタンの脱水素反応(Pt +CH→Pt (CH)+H)は、2量体(総原子数が2)のクラスタイオン上で最も効率よく進行し、担体粒子に2量体が均一な密度で堆積された触媒を用いた場合の反応速度は、通常のスパッタにより堆積用のクラスタイオンを選別しない場合と比較して数十倍の速度となる。従って、白金2量体が堆積されるようにクラスタイオンのサイズを選択することで、メタンの脱水素反応触媒(例えば燃料電池の炭化水素改質剤)に好適に利用することが可能な堆積密度の均一化を高水準な均一性で達成した堆積物を得ることも可能となる。
次いで、上述のようにして選別されたクラスタイオンはクラスタイオン偏向器51に導入され、クラスタイオン偏向器51においてクラスタイオンの進行方向を偏向せしめ、それ以外の中性子などの非選別物質を偏向せず通過させて排除する。すなわち、質量フィルタ42により選別された堆積用のクラスタイオンは、質量フィルタ42から放出された後に、クラスタイオン偏向器51により進行方向が90°偏向され、静電レンズ61及び対向偏向電極21を通過して堆積処理容器31に導入される。一方、質量フィルタ42を通過した中性子は、質量フィルタ42により偏向されず、そのまま排除される。
次に、上述のようにして堆積用クラスタイオンとして選別され進行方向を偏向されたクラスタイオンは対向偏向電極21に導入され、対向偏向電極21においてクラスタイオンビームB1を偏向せしめ、その際に対向偏向電極21に印加する電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記クラスタイオンビームB1を前記基板M1のクラスタイオン照射領域内をリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら照射するようにしている。このようにすることにより、リサージュパターン(波形)を有する電界(電場)が形成され、このような電界(電場)をクラスタイオンビームB1が通過して偏向され、偏向されたクラスタイオンビームB1が前記基板のクラスタイオン照射領域内をリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射される。これにより、クラスタイオンビームB1のクラスタイオン照射領域におけるクラスタイオン照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる。
次いで、上記において形成されたリサージュパターン(波形)を有する電界(電場)をクラスタイオンビームB1が通過して偏向され、このような偏向されたクラスタイオンビームB1が前記堆積処理容器31内の台座(図示省略)に載置されている前記基板のクラスタイオン照射領域内をリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射される。
なお、このような堆積用のクラスタイオンを導入する堆積処理容器31の内部の温度としては、特に制限されず、例えば、−196〜30℃であることが好ましい。このような温度が前記下限未満では冷却コストが大幅に増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると液体の蒸気圧が高くなり、排気系への負担が大きくなる傾向にある。なお、経済性の観点などから、前記堆積処理容器31の内部の温度は室温としてもよい。
また、堆積処理容器31中に堆積用のクラスタイオンを導入する際においては、導入速度としては、特に制限されず、目的とする用途におけるクラスタイオンの堆積量(照射量)などに応じて適宜変更すればよい。なお、堆積用のクラスタイオンを堆積処理容器31中に導入(入射)する際(導入時)のクラスタイオンの入射方向などは、特に制限されず、基板のクラスタイオン照射領域内をリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板照射することができればよい。
このようにして、堆積処理容器31中の真空空間にクラスタイオンを導入しつつ、堆積処理容器31内の台座(図示省略)に載置されている前記基板に、堆積用のクラスタイオンをリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら接触させることが可能となり、これにより基板M1の表面上にクラスタイオンが堆積(デポジット)される。なお、クラスタイオンが基板M1又は基板に堆積したクラスタ(イオン)に接触(衝突)した瞬間には、その衝突点付近は高温、高圧となり、クラスタイオンと基板M1を構成する原子又は基板に堆積したクラスタ(イオン)とが強く結合する。そのため、クラスタイオンを基板M1又は基板に堆積したクラスタ(イオン)に接触させることで、クラスタイオンは基板M1又は基板に堆積したクラスタ(イオン)に良好に固定される。
なお、堆積されるクラスタイオンの平均粒子径としては、得られる堆積物の用途などによっても、その好適な範囲が異なるものであり、一概には言えないが、0.2〜50nmであることが好ましく、0.2〜3nmであることがより好ましい。なお、このような堆積物上のクラスタの平均粒子径は、走査透過電子顕微鏡(Cs−STEM)により基板上に堆積されている任意の10個以上のクラスタについて粒子径を測定し、求められた粒子径を平均化することにより算出することができる。走査透過電子顕微鏡(STEM)としては、例えば日本電子製の商品名「JEM−2100F」を用いることができる。
以上、図2を参照して本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の荷電粒子照射装置は、上記実施形態においては、クラスタイオンビーム生成手段11がエネルギー照射装置とクラスタイオン生成処理容器とを備えるものであるが、クラスタイオンビーム生成手段11の構成は特に制限されず、クラスタイオンを生成することが可能なものであれば適宜用いることができ、更に、荷電粒子を生成することが可能なものであれば適宜用いることができる。また、上記実施形態においては、クラスタイオンビーム生成手段11と対向偏向電極21との間に、イオンガイド41、質量フィルタ42、イオンガイド43、クラスタ偏向器51、及び、静電レンズ61をそれぞれ設置しているが、クラスタイオンビーム生成手段11と対向偏向電極21とを備えていればよく、更に、本発明の荷電粒子照射装置においては荷電粒子ビーム生成手段1と対向偏向電極2を備えていればよく、他の構成は特に制限されるものではない。また、上記実施形態においては、クラスタ偏向器51をイオンガイド43と静電レンズ61の間に設置したが、クラスタイオンビーム生成手段11と質量フィルタ42の間、質量フィルタ42とイオンガイド41の間、イオンガイド41とイオンガイド43の間に配置してもよい。
以上、本発明の荷電粒子照射方法の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、図2に示すクラスタイオン堆積装置と同様の構成の装置を用いて、TiO基板に対してPtクラスタイオンを堆積させた。
ここで、クラスタイオンビーム生成手段11としては、エネルギー照射装置(図示省略)としてマグネトロンスパッタ装置(Angstrom社製の商品名「ONYX−1」)を利用し、クラスタイオン生成処理容器(図示省略)としてステンレス製の直径50cm、長さ80cmの筒状の容器を用いた。また、クラスタイオンビーム生成手段11においては、生成されたクラスタイオンが排出される出口が形成されている面から気体の導入用のガス流入管(図示省略)が接続された面に向かって70cmの範囲で、その容器の側面を液体窒素シュラウドにより77Kに冷却した。また、クラスタイオン生成処理容器には、脱気装置(図示省略)を接続して内部の圧力を調整するとともに、アルゴンガスとヘリウムガスをガス流入管から流入させた。また、スパッタのターゲット材料としては直径2インチ、厚さ1/8インチの円盤状の白金ターゲット(白金の含有量:99.99質量%)を用いた。また、質量フィルタ42としては、四重極子質量分析器(Extrel社製の商品名「MEXM−4000」)を利用した。また、イオンガイド41及び43としては、四極子イオンガイド(Extrel社製)を利用した。更に、クラスタ偏向器51としてはExtrel社製の偏向器を利用し、これにより質量フィルタ42から放出されたクラスタイオンを90°偏向させた。また、静電レンズ61としては、アインツェルレンズ(Einzel Lens、Extrel社製)を利用した。
また、対向偏向電極21としては、図3に示すように、一対のX軸方向電極(211及び212、SUS製)と一対のY軸方向電極(213及び214、SUS製)が2段で構成される対向偏向電極を用いた。なお、図3中、215及び216はマコール(登録商標)製の絶縁物である。また、このような対向偏向電極21への電圧印加の概略構成を図4に示す。図4に示すように、対向偏向電極のX軸方向電極21Xには高速高電圧出力アンプ(タートル工業社製、商品名「T−HVA02」)72が接続され、更に信号発生器71(エヌエフ回路設計ブロック社製、商品名「WF1946A」)が接続されている。また、対向偏向電極のY軸方向電極21Yには高速高電圧出力アンプ(タートル工業社製、商品名「T−HVA02」)73が接続され、更に信号発生器71(エヌエフ回路設計ブロック社製、商品名「WF1946A」)が接続されている。対向偏向電極21への電圧印加は、信号発生器71を用いて三角波を発生させ、高速高電圧出力アンプ71及び72によりそれぞれ増幅され、その後、対向偏向電極のX軸方向電極21X及びY軸方向電極21Yに入力されることにより所定の電圧が印加される。
また、堆積処理容器31としてはステンレス製の直径35cm、長さ80cmの筒状の容器を用い、容器内を真空状態とできるように脱気装置と接続した。また、基板としては、TiO(110)単結晶(SPL社製、10×10×厚さ0.5mm)を使用した。
以下に、クラスタイオンを堆積させる際に採用した、クラスタイオンビーム生成手段11、質量フィルタ42、堆積処理容器31の各種運転条件などを示す。
[クラスタイオンビーム生成手段11]
エネルギー照射装置:マグネトロンスパッタ型スパッタ装置
ターゲット:直径2インチ、厚さ1/8インチの円盤状の白金ターゲット(白金の濃度:99.99重量%以上)
ターゲット面の磁場:1300ガウス
放電気体:アルゴン(毎分80ccの流量で導入)、ヘリウム(毎分200ccの流量で導入)
放電電力:25W
放電電流:200mA
容器のクラスタイオンの放出される出口における圧力:0.1Pa
容器の前記出口の形成されている近傍の側面の温度:77K(液体窒素温度)。
[質量フィルタ42]
質量フィルタ:四重極子質量分析器(質量数1a.m.uの差を認識できる装置)
クラスタイオンの並進エネルギー:2eV
分解能:m/dm=100(質量数)。
[堆積処理容器31(デポジション)]
基板:TiO(Arイオンスパッタとアニールを数回繰り返し、清浄表面を得た)
容器内の圧力:10−6Pa
衝突エネルギー:5−500eV
クラスタイオンのイオン電流の強度:200pA
容器内の温度:室温
基板温度:室温
堆積処理時間:120分。
なお、対向偏向電極21には、表1に示す条件(振幅及び周波数)の三角波の電圧波形及び図5に示す電圧波形の電極電位が印加されており、図6に示すリサージュ図形に沿ってクラスタイオンビームが基板M1のクラスタイオン照射領域内をリサージュ走査しながら基板を照射している。
図5に実施例1のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極に印加される電圧波形を示す波形図、図6に実施例1のクラスタイオン照射装置において基板に照射されるクラスタイオンビームの走査経路を示す模式図を示す。なお、図6に示すリサージュ図形は、下記式(1):
及び下記式(2):
(式(1)及び式(2)中、ωはX方向電極に印加する三角波の角速度、ωはY方向電極に印加する三角波の角速度、tは時間、δはX方向電極及びY方向電極に印加する三角波の位相差、を示す。)で表されるものである。
このようにして実施例1において得られた基板上の堆積物を、XPS(光電子分光分析装置)により観測したところ、TiO基板のクラスタイオン照射領域の全体に亘ってかつ端部に亘って高いレベルで高水準に均一にPtのクラスタが堆積されていることが確認された。また、堆積されたクラスタの平均粒子径は1nmであることが確認された。なお、図7にTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物の堆積密度を示すグラフ、図8にTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物(Ptクラスタ)の分布のXPS分析結果を示すグラフを示す。このような結果から、対向偏向電極に印加する電圧波形を三角波形とすることにより、基板に照射されるクラスタイオンビームのクラスタイオン密度を高いレベルで高水準に均一にすることができ、堆積密度が高いレベルで高水準に均一なクラスタが基板に堆積されていることが確認された。なお、実施例1において得られた堆積物は、TiO基板の表面上に微細で密度が高いレベルで高水準に均一なPtクラスタが堆積されたものであることから、例えば、触媒などに有効に利用できることが分かる。
(実施例2)
対向偏向電極21に印加する電圧波形を正弦波とした以外は、実施例1と同様のクラスタイオン堆積装置を用い、基板にPtクラスタを堆積せしめた。なお、図9に実施例2のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極に印加される電圧波形を示す波形図、図10に実施例2のクラスタイオン照射装置において基板に照射されるクラスタイオンビームの走査経路を示す模式図を示す。
実施例2において得られた基板上の堆積物を、実施例1と同様にしてXPSにより観測したところ、TiO基板のクラスタイオン照射領域の大部分において均一にPtのクラスタが堆積されており、高水準に均一にPtのクラスタが堆積されていることが確認された。なお、図11にTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物の堆積密度を示すグラフを示す。このような結果から、対向偏向電極に印加する電圧波形を正弦波とした場合でも、基板に照射されるクラスタイオンビームのクラスタイオン密度を高水準に均一にすることができ、従来技術に比べて堆積密度が高水準に均一なクラスタが基板に堆積されていることが確認された。
(比較例1)
対向偏向電極21を用いなかった以外は、実施例1と同様のクラスタイオン堆積装置を用い、基板にPtクラスタを堆積せしめた。
比較例1において得られた基板上の堆積物を、実施例1と同様にしてXPSにより観測したところ、TiO基板に堆積されたPtクラスタは堆積密度が不均一であることが確認された。また、堆積されたクラスタイオンの平均粒子径は1nmであることが確認された。なお、図12にTiO基板のクラスタイオン照射領域における堆積物(Ptクラスタ)の分布のXPS分析結果を示すグラフを示す。
(比較例2)
対向偏向電極21に図13に示す電圧波形の電極電位を印加し、図14に示す図形に沿ってクラスタイオンビームが基板M1のクラスタイオン照射領域内を走査しながら基板を照射するようにした以外は、実施例1と同様のクラスタイオン堆積装置を用い、基板にPtクラスタを堆積せしめた。図13に比較例2のクラスタイオン照射装置の対向偏向電極に印加される電圧波形を示す波形図、図14に比較例2のクラスタイオン照射装置において基板に照射されるクラスタイオンビームの走査経路を示す模式図を示す。
比較例2において得られた基板上の堆積物を、実施例1と同様にしてXPSにより観測したところ、TiO基板に堆積されたPtクラスタは堆積密度の均一性が前記実施例1に比べて劣ることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、荷電粒子ビームのビーム照射領域における荷電粒子の照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となる荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法を提供することが可能となる。
また、本発明の荷電粒子照射装置及び荷電粒子照射方法をクラスタイオン照射装置及びクラスタイオン照射方法に適用したものは、荷電粒子ビーム(クラスタイオンビーム)のビーム照射領域におけるクラスタイオンビーム照射密度の均一化をより簡便な制御でかつ高水準な均一性で達成することが可能となり、基板に堆積するクラスタイオンの堆積密度を高水準に均一にすることが可能となる。このようなクラスタイオン照射装置及びクラスタイオン照射方法は、基板の表面上に微細で密度が高水準に均一なクラスタを堆積することが可能となることから、例えば、微細なクラスタを触媒成分として利用するような触媒の製造方法などとして特に有用である。
1…荷電粒子ビーム生成手段、2…対向偏向電極、3…台座、11…クラスタイオンビーム生成手段、21…対向偏向電極、31…堆積処理容器、41…イオンガイド、42…質量フィルタ、43…イオンガイド、51…クラスタイオン偏向器、B…荷電粒子ビームの流れる方向を概念的に示す矢印、M…基板(試料)。

Claims (8)

  1. 荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段と、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極と、前記荷電粒子ビームが照射される基板を保持する台座と、を備える荷電粒子照射装置であって、
    前記対向偏向電極に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームが前記基板の荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板に照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを特徴とする荷電粒子照射装置。
  2. 前記対向偏向電極が、X軸方向に対向配置した一組の偏向電極と、Y軸方向に対向配置した一組の偏向電極とを有しており、その対向方向が互いに平行な対称形の対向偏向電極であることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子照射装置。
  3. 前記対向偏向電極に印加する電圧波形が三角波形又は正弦波であることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子照射装置。
  4. 前記荷電粒子がクラスタイオンであり、前記荷電粒子ビームをリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射し、前記基板にクラスタイオンを堆積せしめるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の荷電粒子照射装置。
  5. 荷電粒子からなる荷電粒子ビームを出射することが可能な荷電粒子ビーム生成手段と、前記荷電粒子ビームの周囲に配置されX軸方向電極及びY軸方向電極を有しており前記荷電粒子ビームを偏向する対向偏向電極と、前記荷電粒子ビームが照射される基板を保持する台座と、を備える荷電粒子照射装置を用い、
    前記対向偏向電極に印加するX軸方向電圧とY軸方向電圧の周波数比を無理数とし、かつ、前記荷電粒子ビームが前記基板の荷電粒子照射領域内をリサージュ走査するようにし、前記基板に照射される荷電粒子の密度が均一になるようにしたことを特徴とする荷電粒子照射方法。
  6. 前記対向偏向電極が、X軸方向に対向配置した一組の偏向電極と、Y軸方向に対向配置した一組の偏向電極とを有しており、その対向方向が互いに平行な対称形の対向偏向電極であることを特徴とする請求項5に記載の荷電粒子照射方法。
  7. 前記対向偏向電極に印加する電圧波形が三角波形又は正弦波であることを特徴とする請求項5又は6に記載の荷電粒子照射方法。
  8. 前記荷電粒子がクラスタイオンであり、前記荷電粒子ビームをリサージュ図形に沿ってリサージュ走査しながら前記基板に照射し、前記基板にクラスタイオンを堆積せしめるようにしたことを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の荷電粒子照射方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109887817A (zh) * 2019-04-03 2019-06-14 郭盘林 一种静电多通路的束流偏转装置

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