JP2016050793A - ガス分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン始動直後等の急激に温度変化する条件下でも酸素分子の数密度を正確に計測できるガス分析装置を提供する。【解決手段】光源部10と、受光部20と、レーザ制御部50と、センサ31、32と、制御部60とを備えるガス分析装置1であって、制御部60は、受光部20で受光した測定光の強度変化I(ν)における特定ガスの吸収ピークと、ガスセル70内の実測温度とに基づき測定対象ガス中の特定ガス量情報を算出する演算部61bと、特定ガスの吸収ピークの拡がり量を算出する拡がり量算出部61cと、吸収ピークの拡がり量に基づいてガスセル70内の計算温度を算出し、実測温度と計算温度とを比較して温度センサ32の応答遅れ発生区間を判定する判定部61dを有し、演算部61bは、応答遅れ発生区間では計算温度から特定ガス量情報を算出し、応答遅れ発生区間以外では実測温度から特定ガス量情報を算出する構成とする。【選択図】図4

Description

本発明は、レーザ吸収分光法を利用して気体中の特定ガス量情報(密度・分圧・濃度)を計測するガス分析装置に関し、特に、半導体製造装置における真空領域中や煙道中や燃焼プロセス中や内燃機関(エンジン)の測定対象ガス(吸排気)中や燃料電池における流路中や地球温暖化ガス等の特定ガス量情報を計測するガス分析装置に関する。
従来、エンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれる炭化水素(Hydro Carbon)濃度(以下、「成分濃度」という)を測定するために、FID(Flame Ionization Detector)法やNDIR(Non‐Dispersive Infrared Red)法と呼ばれる測定方法を用いた排ガス分析装置が知られている。
また、気体中の酸素濃度を計測する方法の一つとして、酸素分子が特定波長領域(例えば761nm)の光のみを吸収することを利用した吸収分光法が知られている。この吸収分光法は、測定対象ガスに対し非接触での測定が可能であるため、測定対象ガスの場を乱さずに測定対象ガス中の酸素濃度を計測することができ、かつ、極めて短い応答時間で計測することができる。
このような吸収分光法の中でも、特に光源に波長可変半導体レーザ(レーザ素子)を利用した「波長可変半導体レーザ吸収分光法」は、シンプルな装置構成で実現することができる。例えば、「波長可変半導体レーザ吸収分光法」を利用したガス分析装置では、測定対象ガスが所定方向に流れている配管(測定対象ガスセル)に対して、配管に形成された入射用光学窓と出射用光学窓とを介して、配管を横切って光路(光路長l)が形成されるようにそれぞれ対向して設けられる波長可変半導体レーザと光検出センサ(受光部)とを追加することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
このようなガス分析装置によれば、波長可変半導体レーザから発振された所定波長のレーザ光(測定光)は、配管内を通過する過程で測定対象ガス中に存在する酸素分子の遮光作用によってレーザ光の進行が阻害され、測定対象ガス中における酸素分子の濃度に対応して光検出センサに入射する光量が減少することを利用して、波長可変半導体レーザから発振されたレーザ光の光量に対する光検出センサに入射するレーザ光の光量を計測することによって酸素分子の濃度が算出される。図5は、ガス分析装置で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフである。縦軸は受光強度Iであり、横軸は周波数νである。なお、I(ν)は周波数νにおいて酸素分子の吸収を受けなかった場合の受光強度Iであり、非吸収波長の受光強度Iに基づいて近似式を作成することで導出されることになる。
ここで、図5に示す吸収スペクトルを用いた演算処理の一例について説明する。Lambert-Beerの法則より下記式(1)が成り立つ。
なお、I(ν)は周波数νにおいて酸素分子の吸収を受けなかった場合の光強度、I(ν)は周波数νにおける透過光強度、c(mol/cm)は酸素分子の数密度、l(cm)は測定対象ガスを通過する光路の長さ、S(T)(cm−1/(mol/cm−2))は所定の吸収線強度における温度Tの関数、K(ν)は吸収プロファイル関数である。
また、図6は、縦軸をln(I(ν)/I(ν))とし、横軸を周波数νとしたグラフである。
このとき、測定対象ガスの全圧pが大気圧である場合には、吸収プロファイル関数K(ν)は下記式(2)のローレンツプロファイルで表される。
なお、νは吸収ピークの中心周波数、νは吸収ピークのローレンツ幅(半値全幅)である。
さらに、吸収ピークのローレンツ幅νは下記式(3)のように近似的に表される。
なお、νL0はp及びTのときのローレンツ幅である。つまり、吸収ピークの形状は、測定対象ガスの圧力p、pと温度T、Tとに依存する。
そして、式(1)に式(3)を代入すると、下記式(4)のようになる。
よって、中心周波数νの透過光強度I(ν)は、下記式(5)で表されることになる。
一方、測定対象ガスの全圧pが極めて低い圧力領域(1Torrよりも高真空領域)である場合には、酸素分子による光吸収においては、吸収ピークの幅は式(2)で示されるローレンツプロファイルの拡がりに比べて数分の1から数十分の1程度に狭くなる。この極めて低い圧力領域において、吸収ピークの幅は主にドップラ効果により決まる。つまり、吸収プロファイル関数K(ν)は、下記式(6)のガウス関数で表される。
また、ドップラ幅(半値全幅)νEDは下記式(7)のように表される。
なお、kはボルツマン定数、Mは酸素ガスの分子量である。つまり、ドップラ幅νEDは、ローレンツ幅νとは異なり、温度Tのみに依存し、測定対象ガスの圧力p、pには依存しない。
そして、式(1)に式(6)を代入すると、下記式(8)のようになる。
よって、中心周波数νの透過光強度I(ν)は、下記式(9)で表されることになる。
なお、測定対象ガスの全圧pが大気圧から1Torrまでの中間圧力領域では、吸収プロファイル関数K(ν)は、式(2)と式(6)との畳み込み関数(コンボリューション関数)で表される。
したがって、全圧pがわかった状態で温度Tと光強度変化I(ν)、I(ν)とを得ることができれば、式(5)や式(9)を用いて酸素分子の数密度cが算出できることになる。
次に、図7は、波長可変半導体レーザ吸収分光法を利用したガス分析装置の一例を示す概略構成図であり、図8は、図7のガス分析装置を機能ごとに示したブロック図である。なお、地面に水平な一方向をX方向、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
ガス分析装置301は、光源部10と、受光部20と、圧力pを測定する圧力センサ31と、実測温度Tを測定するガス温度センサ32と、光源部10を制御するレーザ制御部50と、マイコンやPCで構成される制御部360とを備える。
このようなガス分析装置301は、エンジンの給排気の各ラインに連結されたサンプル流路(ガスセル)70内を流れる測定対象ガス中の酸素分子(特定ガス)の数密度(特定ガス量情報)cを計測するために用いられる。サンプル流路70はZ方向に伸びており、サンプル流路70の側壁には、入射用光学窓71と、入射用光学窓71にX方向に距離lを空けて対向配置される出射用光学窓72とが形成されている。そして、測定対象ガスはサンプル流路70内を矢印方向(Z方向)に流れている。
光源部10は、半導体レーザ(例えば光通信用分布帰還系形(DFB:distributed feedback)半導体レーザダイオード等)と、半導体レーザの温度を所定時間間隔で検出していくNTCサーミスタと、半導体レーザの温度の調整を行うためのペルチェモジュールとを備える。そして、半導体レーザは、入射用光学窓71からサンプル流路70内にX方向へレーザ光を入射させるように配置されており、レーザ光が測定対象ガスに対して照射されるようになっている。
また、このような光源部10は、酸素分子の数密度cの連続モニタリングに使用されるときには、半導体レーザの温度がペルチェモジュールで設定温度(一定)となるようにPI制御され、半導体レーザへ印加する駆動電流値を所定周期で変化させており、具体的には鋸歯形状となる駆動電流値が印加されることにより、所定波長範囲のレーザ光を所定周期で半導体レーザから発振している。図9は、駆動電流値とレーザ光の発振波長との関係を示す概念図であり、図9(a)は、半導体レーザへ印加する駆動電流値の波形図であり、図9(b)は、その駆動電流値が印加された半導体レーザから発振されたレーザ光の発振波長の波形図である。図9(a)に示すような駆動電流値の波形や設定温度は、連続モニタリングの開始に際してユーザによって入力されるか予め記憶されており、レーザ制御部50から制御信号として光源部10に出力されるようになっている。
受光部20は、光強度を電気信号に変換できるものであればよく、例えばフォトダイオードが用いられる。そして、フォトダイオードは、出射用光学窓72からサンプル流路70外にX方向へ出射されたレーザ光を受光するように配置されており、測定対象ガスを通過したレーザ光の強度I(ν)を受光する。これにより、各周期nにおいて吸収ピークの中心波長部分のレーザ光の強度I(ν)と、中心波長部分の両側となる非吸収波長部分のレーザ光の強度I(ν)とを含むスペクトル波形をフォトダイオードにより取得することで、制御部360がI(ν)とI(ν)とを算出するようになっている。
圧力センサ31は、サンプル流路70内に設置されており、測定対象ガスの全圧である圧力pを所定時間間隔で測定する。このような圧力センサ31として、例えば、ダイアフラム式の圧力センサ等が用いられる。
また、ガス温度センサ32も、サンプル流路70内に設置されており、測定対象ガスの温度である実測温度Tを所定時間間隔で測定する。このようなガス温度センサ32として、例えば、熱電対や白金測温抵抗体やサーミスタ等が用いられる。
レーザ制御部50は、半導体レーザへ印加する駆動電流値を制御するレーザ電流制御部51と、半導体レーザの温度を設定温度に制御するレーザ温度調節部52とにより構成される。
制御部360は、CPU361とメモリ362と表示部63と入力装置64とを備える。また、CPU361が処理する機能をブロック化して説明すると、レーザ光の強度I(ν)等を取得する取得部361aと、測定対象ガス中の酸素分子の数密度cを算出する演算部361bとを有する。
そして、取得部361aは、レーザ光の強度I(ν)、圧力p、実測温度TをそれぞれA/D変換部1、2、3によってデジタル値に所定時間間隔で変換するとともに、各周期nにおいてこのデジタル値からI(ν)とI(ν)とを算出する制御を行う。また、演算部361aは、各周期nにおいて式(5)や式(9)を用いて数密度cを得ていく。
特開2010−237075号公報
ところで、上述したようなガス分析装置301は、応答性の速さに特徴を有しているが、エンジン始動直後等の温度Tが急激に変化する条件下等での高速応答を求められる用途(msecオーダ以下)においては、ガス温度センサ32の応答速度の遅延が問題になることがあった。一般的に高速応答が求められる場合のガス温度センサ32としては、熱容量が比較的小さくできる極細(例えば直径12μm)の熱電対式が用いられる。ここで、図10は、測定対象ガスの温度Tを所定時間(6sec)において70℃から35℃に切り替えた際の外径0.5mmの熱電対で検出された実測温度Tを示すグラフである。このように現在入手できる線径の熱電対でも応答性の遅れの影響が出ている。
また、線径が細い熱電対は機械的に脆く、実際の計測で使用できる場面が限定されるという問題点もあった。
本出願人は、エンジン始動直後等の温度Tが急激に変化する条件下でも、酸素分子の数密度cを正確に計測する方法について検討した。ガス分析装置では、酸素分子の数密度cを算出する際に、レーザ光の強度変化I(ν)における酸素の吸収ピークを検出している。この吸収ピークの半値全幅ν、νEDは、測定対象ガスの全圧pの圧力領域によって、上述したように式(3)や式(7)やそのコンボリューション関数で表され、測定対象ガスの圧力p、pや温度T、Tの関数となっている。例えば、図11は、圧力pが一定の場合における酸素の吸収ピークの半値全幅の温度依存性を示すグラフである。つまり、半値全幅ν、νEDがわかれば、測定対象ガスの温度Tに換算することができる。
そして、この吸収ピークの半値全幅ν、νEDは、光吸収によって変化する値であることから、応答性が優れており、温度Tの過渡変化に対して正確に追従する。図12は、測定対象ガスの温度Tを所定時間(6sec)に70℃から35℃に切り替えた際に算出された半値全幅を示すグラフであり、図13は、その半値全幅から算出された計算温度Tを示すグラフである。半値全幅ν、νEDの温度変化による応答性はmsecオーダで完了しており、熱電対よりも明らかに迅速に変化している。
一方、熱電対で検出された実測温度Tは、ある程度の時定数を持ちながらも、絶対精度という点において半値全幅ν、νEDから得られる計算温度Tと比べて優れている。つまり、温度変化に対して半値全幅ν、νEDの変化が大きくないため、半値全幅ν、νEDからは精度の高い計測ができない。
そこで、本出願人は、吸収スペクトル中の吸収ピークの半値全幅(拡がり量)ν、νEDを記録しながら、温度Tの過渡領域において熱電対の応答性が問題になる場面では、その吸収ピークの半値全幅ν、νEDから温度Tを算出して用いることを見出した。
すなわち、本発明のガス分析装置は、ガスセル内の測定対象ガスに測定光を照射するレーザ素子を有する光源部と、前記測定対象ガス中を通過した測定光の強度を受光する受光部と、前記レーザ素子へ印加する駆動電流値を所定周期で変化させることにより、所定波長範囲の測定光をレーザ素子から所定周期で発振させるレーザ電流制御部と、前記ガスセル内の実測温度を所定時間間隔で検出する温度センサと、前記受光部で受光された第n周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I(ν)における特定ガスの吸収ピークと、前記ガスセル内の実測温度とに基づいて、前記測定対象ガス中の特定ガス量情報を算出する演算部とを備えるガス分析装置であって、前記特定ガスの吸収ピークの拡がり量を算出する拡がり量算出部と、前記特定ガスの吸収ピークの拡がり量に基づいて、前記ガスセル内の計算温度を算出し、前記実測温度と前記計算温度とを比較することにより、前記温度センサの応答遅れ発生区間を判定する判定部とを備え、前記演算部は、前記応答遅れ発生区間では前記計算温度を用いて前記特定ガス量情報を算出し、一方、前記応答遅れ発生区間以外では前記実測温度を用いて前記特定ガス量情報を算出するようにしている。
ここで、「所定周期」とは、測定者等によって決められる任意の時間であり、所定波長範囲の測定光をレーザ素子から発振させるために、例えば数十Hz〜数十kHzとなり、1kHz等が挙げられる。また、「所定時間間隔」とは、測定者等によって決められる任意の時間(所定データ取得間隔)であって所定周期以下となる。
また、「特定ガス」とは、測定者等によって決められる任意の成分であって、例えば酸素や水蒸気や二酸化炭素や一酸化炭素等である。
さらに、「吸収ピークの拡がり量」とは、吸収ピークの拡がり量を示すものであれば特に限定されず、例えば、半値全幅(ローレンツ幅やドップラ幅)や半値半幅等が挙げられる。
以上のように、本発明のガス分析装置によれば、「熱電対の正確性」と「温度に依存する光吸収の高速応答性」との両者の利点を活かし、エンジン始動直後等の温度が急激に変化する条件下でも、特定ガス量情報を正確に計測することができる。
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、上記の発明では、前記判定部は、前記実測温度と前記計算温度との温度差が閾値以上であるときには、前記応答遅れ発生区間であると判定し、一方、閾値未満であるときには、前記応答遅れ発生区間でないと判定するようにしてもよい。
さらに、上記の発明では、前記ガスセル内の圧力を所定時間間隔で検出する圧力センサを備えるようにしてもよい。
本発明のガス分析装置によれば、計測場の全圧が変化するような計測であっても、圧力項を入力することで、半値幅は温度のみの関数で表されることになる。なお、全圧情報については、ダイアフラム式のような高速な応答が可能な圧力計が一般的に用いられるため、問題にならない。
本発明のガス分析装置の一例を示す概略構成図。 図1のガス分析装置を機能ごとに示すブロック図。 本発明のガス分析装置で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフ。 数密度cの計測方法を説明するフローチャート。 ガス分析装置で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフ。 縦軸をln(I(ν)/I(ν))とし、横軸を周波数νとしたグラフ。 波長可変半導体レーザ吸収分光法によるガス分析装置を示す概略構成図。 図7のガス分析装置を機能ごとに示すブロック図。 駆動電流値とレーザ光の発振波長との関係を示す概念図。 所定時間での測定対象ガス温度の切替時に熱電対で検出された実測温度を示すグラフ。 圧力一定時の酸素吸収ピークの半値全幅の温度依存性を示すグラフ。 所定時間での測定対象ガスの温度の切替時に算出された半値全幅を示すグラフ。 図12の半値全幅から算出された計算温度を示すグラフ。 温度補正前後の酸素濃度演算値の一例を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
図1は、本発明のガス分析装置の一例を示す概略構成図であり、図2は、図1のガス分析装置を機能ごとに示したブロック図である。また、図3は、本発明のガス分析装置で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフである。なお、上述した従来のガス分析装置301と同様のものについては、同じ符号を付している。
ガス分析装置1は、光源部10と、受光部20と、圧力pを測定する圧力センサ31と、実測温度Tを測定するガス温度センサ32と、光源部10を制御するレーザ制御部50と、マイコンやPCで構成される制御部60とを備える。
なお、ガス分析装置1は、エンジンへの給排気の各ラインに連結されたサンプル流路(ガスセル)70内を流れる測定対象ガス中の酸素分子(特定ガス)の数密度(特定ガス量情報)cを計測するために用いられるものとする。
制御部60は、CPU61とメモリ62と表示部63と入力装置64とを備える。また、CPU61が処理する機能をブロック化して説明すると、レーザ光の強度I(ν)等を取得する取得部61aと、測定対象ガス中の酸素分子の数密度cを算出する演算部61bと、酸素ガスの吸収ピークの半値全幅(拡がり量)νを算出してメモリ62に記憶させる拡がり量算出部61cと、ガス温度センサ32の応答遅れ発生区間nを判定する判定部61dとを有する。さらに、メモリ62には、数密度cを記憶するための数密度記憶領域62aと、半値全幅νを記憶するとともに閾値Aを記憶するための拡がり量記憶領域62bとを有する。
取得部61aは、レーザ光の強度I(ν)、圧力p、実測温度TをそれぞれA/D変換部1、2、3によってデジタル値に所定時間間隔で変換するとともに、各周期nにおいてこのデジタル値からI(ν)とI(ν)とを算出する制御を行う。なお、所定時間間隔で得られた圧力p、実測温度Tから各周期nにおける圧力p、実測温度Tsnも算出する。
拡がり量算出部61cは、第n周期のレーザ光の強度I(ν)における酸素ガスの吸収ピークを検出し、この酸素ガスの吸収ピークの半値全幅νを算出して拡がり量記憶領域62bに記憶させる制御を行う。
例えば、まず、第n周期のI(ν)の曲線の傾斜量を順次調べ、その傾斜量が所定値以下になったときに吸収ピークの開始点νminであると判断し、傾斜量が零から正に転じたときに吸収ピークのピークトップ(最大値)νであると判断し、傾斜量が所定値以下になったときに吸収ピークの終点νmaxであると判定する。そして、第n周期の吸収ピークの半値全幅νを算出して拡がり量記憶領域62bに記憶させる。次に、第(n+1)周期のI(ν)の曲線の傾斜量を順次調べて、その傾斜量が所定値以下になったときに吸収ピークの開始点νminであると判断し、傾斜量が零から正に転じたときに吸収ピークのピークトップ(最大値)νであると判断し、傾斜量が所定値以下になったときに吸収ピークの終点νmaxであると判定する。そして、第(n+1)周期の吸収ピークの半値全幅ν(n+1)を算出して拡がり量記憶領域62bに記憶させる。このようにして、第n周期の半値全幅νを拡がり量記憶領域62bに順次記憶させていく。
判定部61dは、第n周期の半値全幅νに基づいて計算温度Tmnを算出し、計算温度Tmnと実測温度Tsnとを比較することにより、ガス温度センサ32の応答遅れ発生区間nを判定する制御を行う。
例えば、計算温度Tmnと実測温度Tsnとの温度差ΔTが閾値A以上である場合には、第n周期は応答遅れ発生区間であると判定し、一方、温度差ΔTが閾値A未満である場合には、第n周期は応答遅れ発生区間でないと判定する(図10参照)。
演算部61bは、判定部61dで判定された結果と圧力pに基づき、計算温度Tmn又は実測温度Tsnを式(5)又は式(9)に当てはめて数密度cを得て、数密度記憶領域62aに記憶させる制御を行う。
例えば、応答遅れ発生区間である周期nには、計算温度Tmnを式(5)に当てはめて数密度cを得て、応答遅れ発生区間でない周期(n+5)には、実測温度Ts(n+5)を式(5)に当てはめて数密度c(n+5)を得る。ここで、図14は、温度補正前後の酸素濃度演算値の一例を示すグラフである。なお、実線は本発明のガス分析装置1で計測された(温度補正後の)酸素濃度演算値であり、点線は従来のガス分析装置301で計測された(温度補正前の)酸素濃度演算値である。
ここで、ガス分析装置1の使用方法について説明する。図4は、数密度cを計測する計測方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、周期回数パラメータn=1とする。
次に、ステップS102の処理において、レーザ温度調節部52は、半導体レーザの温度を設定温度となるようにPI制御する制御信号を光源部10に出力するとともに、レーザ電流制御部51は、半導体レーザへ印加する駆動電流値を連続的に変化させる制御信号を光源部10に出力する。
次に、ステップS103の処理において、取得部61aは、レーザ光の強度I(ν)、圧力p、実測温度TをそれぞれA/D変換部1、2、3によってデジタル値に変換するとともに、第n周期においてこのデジタル値からI(ν)とI(ν)とを算出する。
次に、ステップS104の処理において、拡がり量算出部61cは、第n周期のレーザ光の強度I(ν)における酸素ガスの吸収ピークを検出し酸素ガスの吸収ピークの半値全幅νを算出する。
次に、ステップS105の処理において、判定部61dは、第n周期の半値全幅νに基づいて計算温度Tmnを算出する。
次に、ステップS106の処理において、判定部61dは、計算温度Tmnと実測温度Tsnとの温度差ΔTが閾値A未満であるか否かを判定する。温度差ΔTが閾値A未満であると判定したときには、ステップS107の処理において、演算部61bは、実測温度Tsnを式(5)又は式(9)に当てはめて数密度cを得る。
一方、温度差ΔTが閾値A以上であると判定したときには、ステップS108の処理において、演算部61bは、計算温度Tmnを式(5)又は式(9)に当てはめて数密度cを得る。
ステップS107の処理又はステップS108の処理のいずれかの処理が終了すると、ステップS109の処理において、計測を終了するか否かを判定する。計測を終了しないと判定したときには、ステップS110の処理において、n=n+1とした後、ステップS102の処理に戻る。
一方、計測を終了すると判定したときには、本フローチャートを終了する。
以上のように、本発明のガス分析装置1によれば、「熱電対の正確性」と「温度に依存する光吸収の高速応答性」との両者の利点を活かし、エンジン始動直後等の温度Tが急激に変化する条件下でも、数密度cを正確に測定することができる。
本発明は、レーザ吸収分光法を利用して気体中の特定ガス量情報を計測するガス分析装置等に利用することができる。
1 ガス分析装置
10 光源部
20 受光部
32 温度センサ
51 レーザ電流制御部
52 レーザ温度調節部
61b 演算部
61c 拡がり量算出部
61d 判定部
70 ガスセル

Claims (3)

  1. ガスセル内の測定対象ガスに測定光を照射するレーザ素子を有する光源部と、
    前記測定対象ガス中を通過した測定光の強度を受光する受光部と、
    前記レーザ素子へ印加する駆動電流値を所定周期で変化させることにより、所定波長範囲の測定光をレーザ素子から所定周期で発振させるレーザ電流制御部と、
    前記ガスセル内の実測温度を所定時間間隔で検出する温度センサと、
    前記受光部で受光された第n周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I(ν)における特定ガスの吸収ピークと、前記ガスセル内の実測温度とに基づいて、前記測定対象ガス中の特定ガス量情報を算出する演算部とを備えるガス分析装置であって、
    前記特定ガスの吸収ピークの拡がり量を算出する拡がり量算出部と、
    前記特定ガスの吸収ピークの拡がり量に基づいて、前記ガスセル内の計算温度を算出し、前記実測温度と前記計算温度とを比較することにより、前記温度センサの応答遅れ発生区間を判定する判定部とを備え、
    前記演算部は、前記応答遅れ発生区間では前記計算温度を用いて前記特定ガス量情報を算出し、一方、前記応答遅れ発生区間以外では前記実測温度を用いて前記特定ガス量情報を算出することを特徴とするガス分析装置。
  2. 前記判定部は、前記実測温度と前記計算温度との温度差が閾値以上であるときには、前記応答遅れ発生区間であると判定し、一方、閾値未満であるときには、前記応答遅れ発生区間でないと判定することを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
  3. 前記ガスセル内の圧力を所定時間間隔で検出する圧力センサを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス分析装置。
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