JP2016050241A - ビニルアルコール系共重合体および成形物 - Google Patents

ビニルアルコール系共重合体および成形物 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶液の粘度安定性に優れ、かつ耐水性が高く、高湿度下での寸法安定性に優れ、力学強度が高い成形物を得ることができるビニルアルコール系共重合体を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される単量体単位を含み、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.1〜3.5であるビニルアルコール系共重合体。
Figure 2016050241

(式(I)中、Rは、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基であり、上記Xは−(CH−であり、mは1〜5の整数である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造の単量体単位を含み、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.1〜3.5であるビニルアルコール系共重合体および成形物に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することもある)は、数少ない結晶性の水溶性高分子である。その優れた水溶性、皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性など)を利用して、ビニルアルコール系重合体は、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルムなどの成形物に広く用いられている。ビニルアルコール系重合体は使用に際して水溶液の状態を経るが、その際の取り扱い性に難点を有することがある。例えば、水溶液とした後、特に水温が低い冬期において時間とともに水溶液の粘度が上昇して流動性が低下し、極端な場合はゲル化により流動性を失うことがある。
ビニルアルコール系重合体は、水溶液からのキャスト製膜やインフレーション成形により皮膜(フィルム)形状に成形され、繊維包装用フィルム等に使用されている。しかしながら、本来的にPVAは水溶性であるため、成形後のフィルムの耐水性に劣る問題点があった。また、高湿度下では寸法安定性や力学強度が悪化する問題があった。
特許文献1には、水溶液の泡立ちを抑えたヒドロキシアルキル基を側鎖に有するビニルアルコール系重合体が開示されている。しかしながら、低温における水溶液の粘度安定性についてはまだまだ満足のいくものではなく、更なる向上が求められている。特許文献2には、水溶液の粘度安定性を向上させた側鎖に1,2−グリコール結合を有するビニルアルコール系重合体が開示されている。しかしながら、該重合体の成形物は高湿度下では皮膜物性が低下する問題があった。特許文献3には同じく側鎖に1,2−グリコール結合を有するビニルアルコール系重合体が開示されている。しかしながら、該重合体の成形物は高湿度下では皮膜物性が低下が大きく、かつ耐水性に劣る問題点があり実用的には依然として不十分であった。
特開平8−319318号公報 特開2002−284818号公報 特開2004−285143号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、水溶液の粘度安定性に優れるとともに、成形物の耐水性、高湿度下での寸法安定性、力学強度が求められる用途に適応できるビニルアルコール系共重合体を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、下記式(I)で表される単量体単位を含み、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.1〜3.5であることを特徴とするビニルアルコール系共重合体によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
Figure 2016050241
(式(I)中、Rは、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基であり、上記Xは−(CH−であり、mは1〜5の整数である。)
前記ビニルアルコール系共重合体において、前記式(I)で表される単量体単位を主鎖にランダムに含有してもよい。
前記ビニルアルコール系共重合体において、前記式(I)で表される単量体単位を0.1〜30モル%含有してもよい。
前記ビニルアルコール系共重合体において、前記式(I)で表される単量体単位のXが炭素数1〜3のアルキレン基であってもよい。
前記ビニルアルコール系共重合体において、けん化度が70〜99.9モル%であってもよい。
前記ビニルアルコール系共重合体において、粘度平均重合度が100〜5,000であってもよい。
前記ビニルアルコール系共重合体を含んだ成形物であってもよい。
以上説明したように、本発明のビニルアルコール系共重合体は、水溶液の粘度安定性に優れ、かつ耐水性が高く、高湿度下での寸法安定性に優れ、力学強度が高い成形物を得ることができる。従って、耐水性等が要求される用途への幅広い適用が期待できる。
(ビニルアルコール系共重合体)
本発明のビニルアルコール系共重合体は、下記一般式(I)で表される単量体単位を有する。
Figure 2016050241
(式(I)中、Rは、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基であり、上記Xは−(CH−であり、mは1〜5の整数である。)
前記式(I)において、Rにおける炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられる。Xとしては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基が挙げられ、これらのうち、炭素数1〜3の基がより好ましく、メチレン基、エチレン基又はn−プロピレン基がさらに好ましい。
本発明のビニルアルコール系共重合体は、上記一般式(I)で表される単量体単位を含有し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.1〜3.5である。上記特定構造を有することで、PVAに対する変性効果、すなわち、水溶液の粘度安定性などの取り扱い性を向上させることができる。また、本発明のビニルアルコール系共重合体を皮膜等の成形物に加工した際、高湿度下での寸法安定性に優れ、力学強度が高い成形物を得ることができる。
本発明のビニルアルコール系共重合体は、ビニルエステル系単量体と下記式(II)で表される単位を与える不飽和単量体との共重合体をけん化することにより得られるものが好ましい。
Figure 2016050241
前記式(II)において、Rは、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基である。Rは炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基を示す。Rの構造としては特に限定されず、一部に分岐、環状構造を有していてもよい。また、一部が他の官能基で置換されていてもよい。Xは−(CH−であり、mは1〜5の整数である。Xとしては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基が挙げられ、これらのうち、炭素数1〜3の基がより好ましく、メチレン基、エチレン基又はn−プロピレン基がさらに好ましい。
本発明に用いるビニルアルコール系共重合体における、一般式(I)で表される単量体単位の含有率は特に限定されないが、重合体中の全単量体単位を100モル%として、好ましくは0.1〜30モル%であり、より好ましくは0.3〜20モル%である。含有率が0.1モル%未満であると、得られるビニルアルコール系共重合体の水溶液の粘度安定性が不十分となることがある。一方、含有率が30モル%を超えると、ビニルアルコール系共重合体を皮膜等の成形物に加工した際、成形物の高湿度下での寸法安定性に劣ることがある。また、成形物の耐水性が不十分となることがある。
本発明のビニルアルコール系共重合体のJIS K6726(1994)に準拠して測定した粘度平均重合度(以下、単に重合度と言うことがある)は特に限定されないが、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,500であり、さらに好ましくは300〜4,000である。粘度平均重合度が100未満になると、皮膜にした際に当該皮膜の皮膜強度が低下することがある。粘度平均重合度が5,000を超えるビニルアルコール系共重合体は、工業的な製造が難しい。
後述するように、重合度の異なるPVA又はポリビニルエステルをブレンドする等の方法でPVAのMw/Mnを調整する場合、各々のPVA又はポリビニルエステルの重合度も上記範囲であることが好ましい。
本発明のビニルアルコール系共重合体のけん化度(すなわち、ビニルアルコール系共重合体における水酸基とエステル結合との合計に対する水酸基のモル分率)は特に限定されないが、高湿度下での皮膜の寸法安定性および強度の観点から、好ましくは70〜99.9モル%であり、より好ましくは80〜99.5モル%である。けん化度が70モル%未満になると、皮膜にした際に当該皮膜が十分な皮膜強度を得られないことがある。一方、けん化度が99.9モル%より高いビニルアルコール系重合体は、一般に製造が難しい。
本発明のビニルアルコール系共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、高湿度下での皮膜の寸法安定性および強度の観点から、Mw/Mnが2.1〜3.5であり、好ましくは2.15〜3.2であり、より好ましくは2.2〜3.0である。Mw/Mnが3.5超のビニルアルコール系共重合体は、高湿度下での十分な皮膜の寸法安定性および強度を得られないことがある。一方、Mn/Mnが2.1未満のビニルアルコール系共重合体は、一般に製造が難しい。
上記PVAのMw/Mnを調整する方法には、重合度の異なるPVAをブレンドする方法;重合度の異なるポリビニルエステルをブレンドしたものをけん化する方法;ポリビニルエステルを製造する際にビニルエステル単量体の重合反応を多段式で行い、その各段階で重合度を調節して、得られたポリビニルエステルをけん化する方法;ポリビニルエステルを製造する際にビニルエステル単量体の重合反応の重合率を調整して、得られたポリビニルエステルをけん化する方法等が挙げられる。
なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めることができ、より具体的な方法としては、以下を採用することができる。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸メチル(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
上記の方法において、移動相として使用されるヘキサフルオロイソプロパノールには、GPCカラム充填剤への試料の吸着を抑制するために、トリフルオロ酢酸ナトリウムなどの塩を添加するのが好ましい。塩の濃度としては、通常、1mmol/L〜100mmol/Lであり、好ましくは5mmol/L〜50mmol/Lである。
本発明のビニルアルコール系重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、ビニルエステル系単量体と、それと共重合可能でありかつ前記式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換する(けん化する)方法が挙げられる。また、ビニルエステル系単量体と、それと共重合可能でありかつ前記式(I)で表される単量体単位に変換可能な不飽和単量体とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換する方法が挙げられる。
一般式(I)又は(II)で表される単量体単位の材料として用いる不飽和単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる;
プロペニルアセテート、2−メチル−2−プロペニルアセテート、ブテニルアセテート、2−メチル−2−ブテニルアセテート、3−-ブテン−1− オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどである。中でも、2−メチル−2−プロペニルアセテートが製造容易性の点で好ましく用いられる。前記式(I)又は(II)で表される単量体単位の材料として用いる不飽和単量体は、前記した不飽和単量体の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明のビニルアルコール系共重合体の製造に用いられるビニルエステル系単量体は特に限定されないが、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カルリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルが挙げられる。経済的観点からは酢酸ビニルが好ましい。
前記一般式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合する重合方式は、回分重合、半回分重合、一槽式連続重合、二槽式連続重合、半連続重合のいずれでもよく、重合方法には塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を適用できる。無溶媒またはアルコールなどの溶媒中で重合を進行させる塊状重合法または溶液重合法が、通常採用される。高重合度のビニルエステル系共重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択肢の一つとなる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコールである。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールである。重合系における溶媒の使用量は、目的とするビニルアルコール重合体の粘度平均重合度に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、例えば溶媒がメタノールの場合、溶媒と重合系に含まれる全単量体との重量比{=(溶媒)/(全単量体)}にして0.01〜10の範囲、好ましくは0.05〜3の範囲から選択される。重合槽出口の重合率は、特に限定されないが、10〜70%以下であってもよく、15〜65%以下が好ましい。
前記一般式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体(変性剤)とビニルエステル系単量体とを共重合する際の攪拌翼は公知のものが使用できる。重合反応液を攪拌する攪拌翼としては特に限定されるものではなく、ダブルヘリカルリボン翼、アンカー翼、ゲート翼、マックスブレンド翼などが用いられる。
前記一般式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合する際の攪拌翼の周速度は0.3m/s以上、2.0m/s以下が好ましい。0.3m/s未満の場合、重合槽内の攪拌が不十分となり、分子量分布(Mw/Mn)が広くなり、変性が均一に行われない場合がある。
前記一般式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択される。アゾ系開始剤は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)である。過酸化物系開始剤は、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート系化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートである。過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを上記開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。レドックス系開始剤は、例えば上記の過酸化物系開始剤或いは酸化剤(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等)と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。重合開始剤の使用量は、重合触媒により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて選択される。例えば重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルあるいは過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。重合温度は特に限定されないが、室温〜180℃程度が適当であり、好ましくは30℃以上かつ150℃以下である。重合時に使用する溶媒の沸点以下で重合する際は減圧沸騰重合、常圧非沸騰重合のいずれの条件でも選択できる。
前記一般式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合は、本発明の効果が得られる限り、連鎖移動剤の不存在下で行ってもよく、存在下で行ってもよい。連鎖移動剤は、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;ホスフィン酸ナトリウム一水和物などのホスフィン酸塩類などである。なかでもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤を使用する場合、重合系への連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とするビニルアルコール系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
前記一般式(I)又は(II)で表される単位を与える不飽和単量体とビニルエステル系重合体との共重合により得られたビニルエステル系共重合体をけん化して、本発明のビニルアルコール系共重合体を得ることができる。該ビニルエステル系共重合体をけん化することによって、共重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。また、式(II)で示される不飽和単量体に由来する単位のエステル結合も加水分解され、式(I)で表される構造に変換される。したがって、本発明のビニルアルコール系共重合体は、けん化後にさらに加水分解等の反応を行わなくても製造することができる。
前記ビニルエステル系共重合体のけん化は、例えばビニルアルコールまたは含水アルコールに当該共重合体が溶解した状態で行う。けん化に使用するアルコールは、例えばメタノール、エタノールなどの低級アルコールであり、好ましくはメタノールである。けん化に使用するアルコールは、その重量の40重量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの溶媒を含んでもよい。けん化に使用する触媒は、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒である。けん化を行う温度は限定されないが、20〜60℃の範囲が好適である。けん化の進行に従ってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕した後、洗浄、乾燥して、ビニルアルコール系共重合体を得ることができる。けん化方法は、前述した方法に限らず公知の方法を適用できる。
本発明のビニルアルコール系共重合体は、本発明の効果が得られる限り、前記一般式(I)あるいは(II)で表される単量体単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位をさらに有することができる。当該単量体単位は、例えばビニルエステルと共重合可能でありかつ式(I)で示される単量体単位に変換可能な不飽和単量体、及びビニルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位である。エチレン性不飽和単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩またはエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルである。
本発明のビニルアルコール系共重合体の前記一般式(I)あるいは(II)で表される単量体の主鎖中の配列については、例えば共重合の際の、重合開始剤、重合方式、モノマーの添加方法、重合時間、攪拌翼、攪拌翼の周速等を調整することにより制御することができるが、その中でも周速により調整する方法が望ましい。本発明のビニルアルコール系共重合体は、水溶液が粘度安定性に優れ、高湿度下での皮膜の寸法安定性および耐水性に優れる点から、前記一般式(I)又は(II)で表される単量体単位を主鎖にランダムに含有することが好ましい。
本発明のビニルアルコール系共重合体の主鎖中の前記一般式(I)あるいは(II)で表される単量体の配列状態は、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)で分析できる。前記単量体がランダムに存在する場合、残存酢酸基を除去したサンプルのNMRスペクトルにおける46.1−47.5ppmの積分値(a)と43.3−44.1ppmの積分値(b)の比(b/a)が0.005以上となる。このように単量体ユニットがランダムに存在している場合は高湿度下での皮膜の耐水性に優れるが。一方、前記単量体が非ランダムでありブロック性の高い状態で存在している場合には皮膜の耐水性が低下する場合がある。
本発明のビニルアルコール系共重合体には、さらに、必要に応じて添加剤を適宜配合できる。添加剤としては、例えば、充填剤、架橋剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、加工安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、光安定剤、他の熱可塑性樹脂、消泡剤、剥離剤、離型剤、防腐剤、香料、消臭剤、増量剤、防錆剤、耐候性安定剤、着色剤、香料、補強剤、防かび剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤等が挙げられる。
本発明のビニルアルコール系共重合体は、その特性を利用して単独でまたは他の成分を添加した組成物として、成形、紡糸、エマルジョン化等の公知方法に従い、ビニルアルコール系重合体が用いられる各種用途に使用可能である。例えば各種用途の界面活性剤;各種のコーティング剤;紙用内添剤及び顔料バインダー;塗料;経糸糊剤;繊維加工剤;ポリエステルなどの疎水性繊維の糊剤;各種フィルム、シート、ボトル、繊維、増粘剤、凝集剤、土壌改質剤、イオン交換樹脂、イオン交換膜などに使用できる。
本発明のビニルアルコール系共重合体を成形する方法は限定されない。成形方法は、例えば当該重合体の溶媒である水またはジメチルスルホキシドなどに溶解した溶液の状態から成形する方法(例えばキャスト成形法);加熱により当該重合体を可塑化して成形する方法(例えば押出成形法、射出成形法、インフレ成形法、プレス成形法、ブロー成形法)である。これらの成形方法により、フィルム、シート、チューブ、ボトルなどの任意の形状を有する成形体が得られる。
本発明のビニルアルコール系共重合体は、高湿度下における皮膜の寸法安定性および強度が高いため、特に紙用内添剤や各種水溶性バインダーとしての用途に好適である。また、この用途での使用には、ビニルアルコール系共重合体の水に対する溶解性がプロセスの簡略化に影響するため、本発明のビニルアルコール系共重合体が有する高い水溶性が有利に働き有用である。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
ビニルアルコール系共重合体の前記一般式(I)又は(II)の変性量については、H−NMR(270MHz)により定量した。H−NMR測定時のビニルアルコール系重合体の溶媒は重水素化DMSOを用いた。ビニルアルコール系共重合体の主鎖中の前記一般式(I)又は(II)で表される単量体の配列状態については13C−NMRにより評価した。13C−NMR測定時のビニルアルコール系共重合体の溶媒は重水素化DMSOを用いた。ビニルアルコール系共重合体の重合度、けん化度、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を以下に示す方法で測定した。
[重合度]
各PVAの粘度平均重合度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法により求めた。
[けん化度]
各PVAのけん化度は、JIS K 6726(1994)に記載の方法により求めた。
[数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)]
ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めた。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器(東ソー社製)
標準物質:Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
なお、移動相として使用されるヘキサフルオロイソプロパノールには、GPCカラム充填剤への試料の吸着を抑制するために、トリフルオロ酢酸ナトリウム(20mmol/L)を添加した。
[実施例1]
(PVA−1の合成)
還流冷却器、原料供給ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた、槽内容量10リットルのガラス製重合容器(第1連続重合装置)と、還流冷却器、原料供給ライン、反応液取出ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた装置を用いた。連続重合槽には酢酸ビニル(543g/H)、メタノール(51g/H)、2−メチル−2−プロペニルアセテートの濃度20%メタノール溶液(36.9g/H)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)(AMV)の1%メタノール溶液(0.5g/H)を定量ポンプを用いて連続的に供給した。重合槽内の液面が一定になるように重合槽から重合液を連続的に取り出した。重合槽出口の重合率が30.0%になるよう調整した。重合槽の滞留時間は2時間であった。攪拌翼周速は1.2m/sであった。重合槽出口の温度は63℃であった。重合槽より重合液を回収し、回収した液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、酢酸ビニル系重合体のメタノール溶液(濃度33.5%)を得た。次に、このメタノール溶液149gにメタノール95.8gを加え、さらに、水酸化ナトリウムをメタノールに溶解させた水酸化ナトリウム溶液(濃度13.3%)4.72g添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の変性ポリ酢酸ビニル(PVAc)濃度20%、変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。
前記水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約7分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で53分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル200質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール500gを加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、一般式(I)で示される単量体単位を含むビニルアルコール系共重合体(PVA−1)を得た。得られたビニルアルコール系共重合体(PVA−1)について、重合度は1700であり、けん化度は98.5モル%であり、変性量(すなわち、ビニルアルコール系共重合体における式(I)で表される単量体単位の含有率)は1.0モル%であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は2.4であった。また、前記ビニルアルコール系共重合体(PVA−1)には、残存酢酸基を除去したサンプルのNMRスペクトルにおける46.1−47.5ppmの積分値(a)と43.3−44.1ppmの積分値(b)の比(b/a)が0.03であった。すなわち、前記ビニルアルコール系共重合体(PVA−1)には、一般式(I)で表される単量体単位は主鎖にランダムに含有されていた。
[10%水溶液の粘度安定性]
PVA−1の10%水溶液を調製し、温度5℃における1時間後及び12時間後の粘度をB型回転粘度計を用いて測定した。その際の、1時間後から12時間後までの増粘倍率を求め、以下の通り評価した。
A:増粘倍率が1.5倍未満である。
B:増粘倍率が1.5〜3倍である。
C:増粘倍率が3倍超である。
[皮膜の耐水性]
PVA−1の10%水溶液を作成し、60℃の熱ロールへ流延し、厚さ30μmのフィルムを調製した。フィルムサンプルを40mm×40mmの正方形に切り、これをスライドマウントにはさみ、20℃で撹拌している水中に浸漬して、フィルムが完全に溶解するまでの時間(秒数)を測定し、以下の通り評価した。
A:40秒以内
B:40〜70秒以内
C:70秒を超える
[高湿度下での皮膜の寸法安定性]
PVA−1の10%水溶液を作成し、60℃の熱ロールへ流延し、厚さ30μmのフィルムを調製した。得られたフィルムを20℃、60%RHの条件で3日間調湿した後、40mm×40mmの正方形に切りだした。次いで、40℃、90%RHの条件で3日間調湿した。その後、以下の方法で寸法変化率を求めた。
寸法変化率(%)=試験後の中央部の寸法(mm)/40(mm)×100
A:10%以内
B:10%超20%以内
C:20%を超える
[高湿度下での皮膜の強度]
PVA−1の濃度4%の水溶液を調製し、それをPETフィルム上に流延した後20℃1週間乾燥させ、厚み約40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を10mm×80mmの短冊状にカットし、20℃、湿度80%にて一週間調湿した後、(株)島津製作所製AG−ISを用いて、チャック間距離50mm、引張り速度500mm/分の条件で強伸度測定を行い、応力−ひずみ曲線から靭性を求めた。なお、測定は各サンプル5回測定し、その平均値を求め、以下の評価基準で評価した。
A:280kgf/mm以上
B:240kgf/mm以上280kgf/mm未満
C:240kgf/mm未満
[実施例2および4]
(PVA−2、4の合成)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時における変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により変性PVAを製造した。物性を表2に示す。
得られたPVAを用いて実施例1と同様の方法により水溶液粘度の安定性、皮膜の耐水性、高湿度下での寸法安定性および皮膜強度を評価した。物性を表2に示す。
[実施例3]
(PVA−3の合成)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル2160g、メタノール240g、コモノマーとして2−メチル−2−プロペニルアセテートを30g仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15gを添加し重合を開始した。60℃で4時間重合した後、冷却して重合を停止した。攪拌翼周速は0.9m/sであった。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、変性PVAcのメタノール溶液(濃度33.5%)を得た。次に、このメタノール溶液149gにメタノール95.8gを加え、さらに、水酸化ナトリウムをメタノールに溶解させた水酸化ナトリウム溶液(濃度13.3%)を4.72g添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の変性PVAc濃度20%、変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。
前記水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約7分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で53分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル200質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール500gを加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、一般式(I)で示される単量体単位を含むビニルアルコール系共重合体(PVA−3)を得た。得られたビニルアルコール系共重合体(PVA−3)について、重合度は2400、けん化度は98.5モル%、変性量(すなわち、ビニルアルコール系共重合体における式(I)で示される単量体単位の含有率)は1.0モル%であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は2.6であった。また、前記ビニルアルコール系共重合体(PVA−3)には、残存酢酸基を除去したサンプルのNMRスペクトルにおける46.1−47.5ppmの積分値(a)と43.3−44.1ppmの積分値(b)の比(b/a)が0.03であった。すなわち、前記ビニルアルコール系共重合体(PVA−3)には、一般式(I)で表される単量体単位は主鎖にランダムに含有されていた。
得られたPVAを用いて実施例1と同様の方法により水溶液粘度の安定性、皮膜の耐水性、高湿度下での寸法安定性および皮膜強度を評価した。物性を表2に示す。
[比較例1および4]
(PVA−5および8の合成)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時における変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により変性PVAを製造した。物性を表2に示す。
得られたPVAを用いて実施例1と同様の方法により水溶液粘度の安定性、皮膜の耐水性、高湿度下での寸法安定性および皮膜強度を評価した。物性を表2に示す。
[比較例2]
(PVA−6の合成)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時における変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例3と同様の方法により変性PVAを製造した。物性を表2に示す。
得られたPVAを用いて実施例1と同様の方法により水溶液粘度の安定性、皮膜の耐水性、高湿度下での寸法安定性および皮膜強度を評価した。物性を表2に示す。
[比較例3]
(PVA−7の合成)
還流冷却器、原料供給ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた、槽内容量10リットルのガラス製重合容器(第1連続重合装置)と、還流冷却器、原料供給ライン、反応液取出ライン、温度計、窒素導入口、攪拌翼を備えた装置を用いた。連続重合槽には酢酸ビニル(543g/H)、メタノール(51g/H)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)(AMV)の1%メタノール溶液(0.5g/H)を定量ポンプを用いて連続的に供給した。重合槽内の液面が一定になるように重合槽から重合液を連続的に取り出した。重合槽出口の重合率が30.0%になるよう調整した。重合槽の滞留時間は2時間であった。攪拌翼周速は1.2m/sであった。重合槽出口の温度は63℃であった。重合槽より重合液を回収し、回収した液にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。次に、このメタノール溶液334gにメタノール153gを加え、さらに、水酸化ナトリウムをメタノールに溶解させた水酸化ナトリウム溶液(濃度10.0%)を14.0g添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のPVAc濃度20%、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。
前記水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約1分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で59分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ無変性のポリビニルアルコール(PVA−7)を得た。得られたビニルアルコール系共重合体(PVA−7)について、重合度は1700であり、けん化度は98.5モル%であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は2.5であった。
得られたPVAを用いて実施例1と同様の方法により水溶液粘度の安定性、皮膜の耐水性、高湿度下での寸法安定性および皮膜強度を評価した。物性を表2に示す。
Figure 2016050241
Figure 2016050241
実施例1〜4から明らかなように、本発明のビニルアルコール系共重合体は水溶液の粘度安定性が高く水溶液状態における取り扱い性が改善されており、工業的に使用する際には有用である。また、本発明のビニルアルコール系共重合体の成形物である皮膜は、耐水性に優れることが判る。さらに、当該皮膜は高湿度下でも高い寸法安定性と機械強度を保持しており、優れた皮膜物性も兼ね備えていることがわかる。一方、分子量分布が広く、単量体単位がランダムに存在していない(非ランダム)場合(比較例1及び2)は、水溶液の粘度安定性に劣り水溶液状態での取り扱い性が悪く、皮膜の耐水性や高湿度下での皮膜物性も十分ではなかった。さらに、前記一般式(I)のXが炭素数8のアルキレン基である単量体にて変性した場合は、膜の高湿度下での寸法安定性が十分ではなかった(比較例4)。また、無変性の場合は、水溶液の粘度安定性に劣り水溶液状態での取り扱い性が悪かった(比較例3)。
本発明によれば、水溶液の粘度安定性に優れ、皮膜の耐水性や高湿度下での皮膜物性が良好という性質も併せ持つビニルアルコール系重合体を提供することができる。本発明のビニルアルコール系共重合体は、例えば、紙用コーティング剤、紙用内添剤及び顔料バインダーなどの紙用改質剤、木材、紙、アルミ箔及び無機物などの接着剤、不織布バインダー、塗料、経糸糊剤、繊維加工剤、ポリエステルなどの疎水性繊維の糊剤、バリアフィルム及びバリアコーティング、その他各種フィルム、シート、ボトル、繊維、増粘剤、凝集剤、土壌改質剤、イオン交換樹脂、イオン交換膜などに使用できる。

Claims (7)

  1. 下記式(I)で表される単量体単位を含み、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.1〜3.5であることを特徴とするビニルアルコール系共重合体。
    Figure 2016050241
    (式(I)中、Rは、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基であり、上記Xは−(CH−であり、mは1〜5の整数である。)
  2. 前記式(I)で表される単量体単位を主鎖にランダムに含有することを特徴とする請求項1に記載のビニルアルコール系共重合体。
  3. 前記式(I)で表される単量体単位を0.1〜30モル%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のビニルアルコール系共重合体。
  4. 前記式(I)で表される単量体単位のXが炭素数1〜3のアルキレン基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のビニルアルコール系共重合体。
  5. けん化度が70〜99.9モル%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニルアルコール系共重合体。
  6. 粘度平均重合度が100〜5,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のビニルアルコール系共重合体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニルアルコール系共重合体を含む成形物。
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