本発明は、電力を使用して水の加熱を行う電気式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下するように指令を受けたとき、加熱能力を低下させることにより使用している電力を低下させ、電力を増加するように指令を受けたとき、加熱能力を増加させることにより使用している電力を増加させる沸上運転機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下するように指令を受けたとき、指令として受けた電力の低下率と同様の低下率で圧縮機回転数を低下させることにより使用している電力を低下させ、電力を増加するように指令を受けたとき、指令として受けた電力の増加率と同様の増加率で圧縮機回転数を増加させることにより使用している電力を増加させる沸上運転機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下するように指令を受けたとき、圧縮機回転数の低下率と同様の低下率で水循環量を低下させることにより使用している電力を低下させ、電力を増加するように指令を受けたとき、圧縮機回転数の増加率と同様の増加率で水循環量を増加させることにより使用している電力を増加させる沸上運転機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下するように指令を受けたとき、圧縮機回転数の低下率に合わせて減圧弁の開度を調整することにより使用している電力を低下させ、電力を増加するように指令を受けたとき、圧縮機回転数の増加率に合わせて減圧弁の開度を調整することにより使用している電力を増加させる沸上運転機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下、あるいは増加するように指令を受けて、圧縮機回転数、水循環流量、減圧弁開度の調整を実施した後、沸上温度、圧縮機回転数が安定しているかの判定を行い、安定したと判断された後に、電力の使用量を監視しているシステムへ判定結果を通知する機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下するように指令を受けたとき、指令として受けた電力の低下率と同様の低下率で圧縮機回転数を低下させることにより使用している電力を低下させる機能を設け、かつ、使用している圧縮機の回転数下限値を設け、電力を低下させる指令を受けたとき、電力を低下させる低下率と同様の低下率としたときの圧縮機回転数を算出し、算出した圧縮機回転数が回転数下限値よりも低い場合には、圧縮機回転数下限値で運転することにより使用している電力を低下させ、かつ、下限値に到達したことを電力の使用量を監視するシステムへ通知する機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、電力を低下させる低下率としたときの圧縮機回転数を算出し、算出した圧縮機回転数が回転数下限値よりも低い場合には、圧縮機回転数下限値を現在圧縮機回転数で除した値を下限調整量と設定し、下限調整量を使用して減圧弁の開度と水循環量の調整を行う機能を設けたことを特徴とする。
また、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて圧縮機に戻す蒸発器と、水−冷媒熱交換器へ流入する水循環量を調整する水循環量調整手段と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、沸上運転中に電力の使用量を監視するシステムから沸上運転で使用している電力を低下、あるいは増加するように指令を受けて加熱能力の調整を実施した後に、指令が解除された後には、通常の沸上運転に戻すことを特徴とする。
また、本発明は、電力を使用して水の加熱を行う電気式給湯機において、電力の使用量を監視するシステムは、家庭で使用している電力を監視しているシステムか、地域で使用している電力を監視しているシステムであることを特徴とする。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本発明のヒートポンプ式給湯機は、電力の使用量を監視するシステムから、沸上運転中の電力使用量を低減させる指令を受けたとき、運転中の沸上加熱能力を低減することにより、電力を低減させる機能を有している。
ヒートポンプ式給湯機の場合、加熱能力の増減(水の加熱量の調整)は、圧縮機若しくは循環ポンプの回転数又は減圧弁の開度の変更により行う。
以下では、本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の全体構成について説明した後に、前記した機能について更に具体的に説明する。
図1は、ヒートポンプ式給湯機の例を示す概略構成図である。
本図に示すように、ヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプユニット1と、貯湯タンクユニット2と、を備えている。ちなみに、ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とは、ヒートポンプ式給湯機が現場に配置される際に、接続配管3a,3bによって連結される構造となっている。
ヒートポンプユニット1の冷凍サイクルは、圧縮機4と、水−冷媒熱交換器5と、減圧弁6と、蒸発器7と、送風ファン8と、ヒートポンプユニット制御部18と、で主に構成されている。そして、圧縮機4、水−冷媒熱交換器5、減圧弁6、及び蒸発器7は、この順番で冷媒が循環するように配管で環状に連結されている。なお、本実施形態での冷媒としては、二酸化炭素が使用されている。そして、ヒートポンプユニット1では、圧縮機4より吐出される冷媒(二酸化炭素)の吐出圧力が臨界圧力以上となる超臨界蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルを使用している。冷媒としては、このほか、プロパンなどの自然系冷媒やR32などのフロン系冷媒を使用してもよい。
圧縮機4は、環状の回路から戻ってきた冷媒を圧縮すると共に、圧縮した高温高圧のガス冷媒(以下、「ホットガス」ということがある。)を再び環状の回路に送り出している。更に具体的には、蒸発器7から戻ってきた冷媒を圧縮して水−冷媒熱交換器5に向かって送り出している。
圧縮機4は、容量制御が可能で、高温貯湯(例えば、90℃)を行う場合は、通常よりも速い回転数(例えば3000〜4000回転/分)で運転する。また、通常の貯湯温度(例えば、65℃)で運転する場合は、比較的遅い回転数(例えば2000〜3000回転/分)で運転する。また、圧縮機4は、PWM制御、電圧制御(例えばPAM制御)及びこれらの組み合わせ制御により、低速(例えば1000回転/分)から高速(例えば6000回転/分)まで回転速度の制御が行えるようになっている。
圧縮機4には、運転中の圧縮機温度を検出するための圧縮機温度センサ13が設けられている。
圧縮機4と、次に説明する水−冷媒熱交換器5とを接続する配管には、圧縮機4寄りに、圧縮機4の高圧側冷媒圧力(圧縮機吐出冷媒圧力)を検出する圧力センサ14(圧縮機吐出冷媒圧力センサ)が設けられている。この配管は、水−冷媒熱交換器5の入口と接続されている。
水−冷媒熱交換器5は、放熱器として機能するものであり、圧縮機4から吐出されたホットガスを流通させる冷媒伝熱管5aと、水を流通させる水伝熱管5bとを備えている。これらの冷媒伝熱管5a及び水伝熱管5bは、冷媒と水とが相互に熱交換するよう密着して設けられている。また、水−冷媒熱交換器5は、冷媒と水とが相互に熱交換できる構造であれば、密着していない構造(例えば、水伝熱管5bの中に冷媒伝熱管5aを通す構造)でもよい。
減圧弁6は、水−冷媒熱交換器5と蒸発器7との間に配置される配管の途中に設けられており、電動膨張弁が使用されている。この減圧弁6は、水−冷媒熱交換器5からの高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低温低圧の冷媒として蒸発器7に送り出している。そして、減圧弁6は、絞り開度(開閉度合い)が調節可能となっており、ヒートポンプユニット制御部18がこの絞り開度を変えてヒートポンプユニット1での高圧側圧力を調節することができる。この機能を使用して、ヒートポンプユニット制御部18は、後記するように、減圧弁6の絞り開度を変えることで、圧縮機4の吐出冷媒圧力を調節することとなる。
ここで、減圧弁6の制御は、圧縮機4の吐出冷媒圧力を調整することについて記載したが、減圧弁6の制御は、圧縮機温度センサ13より得られる圧縮機温度が所望の温度となるように制御を行なっても良い。
ちなみに、減圧弁6は、蒸発器7に着霜した場合に、絞り開度を全開にしてデフロストを行うようにも働く。
蒸発器7は、送風ファン8の回転によって外気を取り入れた空気(送風)と、蒸発器7内を流通する低温低圧の冷媒との熱交換を行って、外気から熱を汲み上げるものである。そして、冷媒は、この蒸発器7から圧縮機4に戻されることとなる。
符号17は、外気温度を検出する温度センサを指す。本実施形態での外気温度センサ17は、蒸発器7に流入する空気の温度を検出するように、送風ファン8が形成する空気流の上流側に配置されている。なお、ヒートポンプユニット制御部18は、後記するように、この外気温度センサ17の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値と、循環ポンプ10の回転数を調整するための圧縮機基準回転数を算出する。
符号20aは、水送出配管を指す。送出配管20aは、前記冷媒で加熱される水を水−冷媒熱交換器5に送り出すものである。送出配管20aの一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの入口に接続されている。この送出配管20aは、前記した接続配管3a及び後記の配管11bを介して後記する貯湯タンク9の底部側と接続されることとなる。
この送出配管20aには、循環ポンプ10が、水−冷媒熱交換器5の上流側に配置されている。なお、本実施形態での循環ポンプ10は、貯湯タンク9の水を水伝熱管5bの入口側に送り込むように駆動する。この循環ポンプ10は、後記する水循環路で水を循環させるように機能し、水循環装置としての役割を果たす。ちなみに、循環ポンプ10は、ヒートポンプユニット制御部18によって、循環路内での水の流量(質量流量)、流速及び圧力が自由に選択できるように構成されている。
また、送出配管20aの水−冷媒熱交換器5寄りには、熱交換器入口水温度センサ15が設けられている。この熱交換器入口水温度センサ15は、水−冷媒熱交換器5の入口で水の温度を検出するものである。なお、ヒートポンプユニット制御部18は、後記するように、この熱交換器入口水温度センサ15の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値と、循環ポンプ10の回転数を調整するための圧縮機基準回転数とを算出する。
符号20bは、水戻し配管を指す。戻し配管20bの一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの出口に接続されている。この戻し配管20bは、冷媒で加熱された水(湯)を水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク9に戻すものである。戻し配管20bの水−冷媒熱交換器5寄りには、水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出する熱交換器出口水温度センサ16が設けられている。この戻し配管20bは、前記した接続配管3b及び後記の配管12bを介して貯湯タンク9の塔頂部側と接続されている。なお、ヒートポンプユニット制御部18は、後記するように、この熱交換器出口水温度センサ16の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の回転数を調整する。 次に、このようなヒートポンプユニット1と共にヒートポンプ式給湯機を構成する貯湯タンクユニット2について説明する。
タンクユニット2は、水(湯)を貯蔵する貯湯タンク9を備えている。
この貯湯タンク9の塔頂部には、前記したように、水−冷媒熱交換器5における水伝熱管5bの出口から送り出される水(湯)が、配管12bを介して流れ込むようになっている。そして、この貯湯タンク9の底部からは、前記したように、配管11bを介して、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの入口に水が流れ込むようになっている。
つまり、水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク9に湯を送り出すと共に、貯湯タンク9の水を水−冷媒熱交換器5に送り出すように、配管11b,3a,20a,20b,3b,12bが、水−冷媒熱交換器5と貯湯タンク9とを接続することで、水(湯)の水循環路を形成している。
また、貯湯タンク9の底部には、給水配管11aを介して水道等の給水源(図示省略)が接続され、貯湯タンク9の塔頂部には、貯湯タンク9内の湯を導出して所定の給湯栓(図示省略)に給湯する給湯配管12aが接続されている。なお、図示しないが、給水配管11aから分岐すると共に、所定の湯水混合弁を介して給湯配管12aに合流するように分岐配管を設けた構成とすることもできる。このような分岐配管によれば、湯水混合弁の開口度合いに応じて、給水配管11aから給湯配管12aに流れ込む水の量を調節することで、前記した給湯栓から出る湯の温度を調節することができる。
ヒートポンプユニット制御部18は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース、電子回路等を含む構成であり、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプユニット1を総合的に制御するようになっている。
また、ヒートポンプユニット制御部18は、圧縮機4の回転数を熱交換器出口水温度センサ16で検出される水−冷媒熱交換器5の出口水温度に基づいて制御する。具体的には、ヒートポンプユニット制御部18は、熱交換器出口水温度センサ16で検出される温度が、予め設定された出口水温度の目標値(目標温水温度)となるように、圧縮機4の回転数を制御する。つまり、目標値に対して熱交換器出口水温度センサ16の検出温度(計測値)が低い場合には圧縮機4の回転数を速め、これとは逆に検出温度(計測値)が高い場合には圧縮機4の回転数を遅くする。
また、ヒートポンプユニット制御部18は、循環ポンプ10が水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込む水の量を、予め求めた圧縮機4の目標回転数に基づいて制御する。具体的には、圧縮機4の目標回転数に対して実回転数が遅い場合には、水伝熱管5bに送り込まれる水の量が増えるように循環ポンプ10を制御し、これとは逆に圧縮機4の実回転数が速い場合には、水伝熱管5bに送り込まれる水の量が減るように循環ポンプ10を制御する。
ここで、圧縮機4の回転数制御は、熱交換器出口水温度センサ16の検出する温度が目標値となるように制御を行い、かつ、循環ポンプ10は予め求めた圧縮機4の目標回転数に基いて制御を行う方法について記載したが、圧縮機4の回転数制御は、外気温度17と貯湯温度の目標値を参照要素として制御し、かつ、熱交換器出口水温度センサ16の検出する温度が目標値となるように水循環ポンプ10の制御を行ってもよい。
そして、ヒートポンプユニット制御部18は、圧力センサ14により検出される圧縮機4の吐出冷媒圧力が、外気温度と水−冷媒熱交換器5の水入口に設けた水入口温度センサ15により検出した水入口温度と、目標温水温度より算出される目標吐出冷媒圧力値と一致するように減圧弁6の開度を制御する。つまり、目標値に対して圧力センサ14の検出圧力(計測値)が低い場合には減圧弁6の開度を小さくし、これとは逆に検出圧力(計測値)が高い場合には減圧弁6の開度を大きくする。
貯湯タンクユニット制御部19は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機を総合的に制御するようになっており、ヒートポンプ式給湯機のユーザとのインターフェースとなるリモコン(図示省略)からの情報や、貯湯タンク9に設けた120a〜120eにより構成される温度センサ120から得られる貯湯タンク9内の残湯量の情報などから、沸き上げる目標温水温度及び沸上開始時間を算出し、ヒートポンプユニット制御部18に対して沸上運転開始、停止指令の発報や、目標温水温度の伝達を行う。
次に、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の動作について説明する。
このヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク9内に所定の温度で所定の湯量を確保するのに先立って、貯湯タンク9を満たすように水が供給される。この際、貯湯タンク9には、残存する湯に加えられるように、図示しない給水源から給水配管11aを介して水が加えられる。もちろん貯湯タンク9が空の場合には、その全てが水で満たされる。
以下では、貯湯タンク9に残存する湯と新たに加えられた水とを一緒にして単に「水」ということがある。
そして、ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク9が水で満たされてから、貯湯運転工程を実施する。
ヒートポンプ式給湯機は、起動した圧縮機4が吐出するホットガス(高温高圧の冷媒)を水−冷媒熱交換器5(放熱器)の冷媒伝熱管5aに送り込む。冷媒伝熱管5aに送り込まれたホットガスは、水伝熱管5b内の水に熱を放出する。そして、水伝熱管5b内の水はホットガスで加熱される。
次いで、水−冷媒熱交換器5(放熱器)の冷媒伝熱管5aから送り出された冷媒は、減圧弁6(膨張弁)で減圧された後に、蒸発器7に流れ込む。そして、流れ込んだ低温低圧の冷媒は、送風ファン8から送り込まれた風によって蒸発する際に外気から熱を汲み上げる。その後、冷媒は圧縮機4に戻って再び圧縮される。
その一方で、貯湯タンク9に満たされた水は、循環ポンプ10が起動することで、送出配管20aを介して水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5b内に送り込まれる。そして、送り込まれた水は、前記したように、冷媒に加熱されて湯となって、戻し配管20bに流れ込む。
戻し配管20bに流れ込んだ湯は、貯湯タンク9に戻って貯蔵される。このように貯湯タンク9と水−冷媒熱交換器5との間で水が循環する間に、ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク9内に所定の温度で所定の湯量を確保する。
貯湯タンク9に貯蔵された湯は、給水栓から給湯として使用され、貯湯タンク9内では使用された湯量分だけ給水配管11aから水が供給される。
このように動作するヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク9の沸上運転は、電力使用量が少ない深夜に行われるように、貯湯タンクユニット制御部19が運転の管理を実施している。貯湯タンクユニット制御部19は、温度センサ120から得られた温度データから、貯湯タンク内の残湯量を推定し、推定した残湯量と給湯の使用量から推定した必要沸上熱量を算出して沸上に必要な運転時間を計算する。計算した運転時間により、電力使用量が増加し始める明け方に沸上を完了するために必要な運転開始時間を算出し、算出した開始時間より沸上運転を始める。このように明け方で沸上運転が完了するようにすることで、貯湯タンク9からの放熱によるエネルギーロスを最小限とすることができる。ここで、必要沸上熱量から算出した沸上運転時間で貯湯タンク9内の水を沸き上げるために、ヒートポンプユニット1は所定の加熱能力を出力する必要がある。
このように深夜時間で沸上運転を行い、貯湯した湯を給湯に使用するヒートポンプ式給湯機では、使用される給湯量が推定した量と相違が無い場合には貯湯タンク9内の湯が湯切れすることは無いが、推定した以上の給湯量で使用された場合、湯切れが発生し、給湯ができなくなる問題がある。この問題を解消するために、貯湯タンクユニット制御部19は、温度センサ120から得られる温度データより貯湯タンク9内の湯量を常に推定し、湯量が低下して湯切れが発生する恐れがある場合、ヒートポンプユニット1により貯湯タンク9内の水を沸き上げる運転を行う。ヒートポンプユニット1による沸上運転は電力を大量に使用するため、家庭や地域などでの電力使用量が多い昼間の時間帯に湯切れを回避するための沸上運転を実施すると、契約電力以上の電力消費の発生や、供給電力不足による停電が発生するリスクがある。このリスクを回避するために、本発明の第一実施形態では、家庭や地域で使用される電力を監視する使用電力監視システム21を設け、使用電力監視システム21と連携して沸上運転で使用する電力を調整する機能を設けている。
この機能について図2に示すフローチャートを用いて詳述する。以下では、図1の符号も併記して説明する。
ヒートポンプユニット1は、貯湯タンクユニット制御部19から沸上運転開始指令及び目標温水温度をヒートポンプユニット制御部18が受信したとき、ヒートポンプユニットによる沸上運転を開始する。ヒートポンプユニットの運転を開始するとき、圧縮機4、減圧弁6、循環ポンプ10及び送風ファン8の初期値で起動する。
起動後、温度センサ17から得られる外気温度、熱交換器入口水温度センサ15から得られる水入口温度、及び貯湯タンクユニット制御部19より受信した目標温水温度から、循環ポンプの回転数を制御するための参照値となる圧縮機基準回転数の算出を行う。
家庭や地域で使用している電力を監視している使用電力監視システム21において、電力が超過する恐れが無いと判断されている間は、使用電力監視システム21は電力調整指令を発報しないため、ヒートポンプユニット1は電力調整指令無しと判断して沸上運転を継続する(図中、S1)。電力調整指令が無い場合は、ヒートポンプユニット1は通常の沸上運転動作として、受信した目標温水温度をセットする。また、外気温度、水入口温度及び目標温水温度から算出した目標吐出冷媒圧力値をセットする。
その後、圧力センサから得られる吐出冷媒圧力値が目標圧力値となるように減圧弁6の開度を修正する(図中、S2)。
水−冷媒熱交換器出口水温度センサから得られる出口水温度が目標温水温度となるように圧縮機4の回転数の修正を行う(図中、S3)。
また、圧縮機回転数が圧縮機基準回転数となるように循環ポンプ10の回転数を修正する(図中、S4)。
吐出冷媒圧力値及び出口水温度が目標値と、圧縮機4の回転数が基準回転数と一致するまで、S2、S3、S4の動作を繰返す。吐出冷媒圧力値、出口水温度が目標値と一致し、かつ圧縮機4の回転数が基準回転数と一致したとき、すなわち、膨張弁6の開度、圧縮機4の回転数及び循環ポンプ10の回転数の修正が行われなくなったとき、ヒートポンプユニット1は沸上運転が安定したと判断し、貯湯タンクユニット制御部19へ沸上運転安定信号を送信する(図中、S5)。
ヒートポンプユニット1より送信された沸上運転安定信号は、貯湯タンクユニット制御部19を介して、使用電力監視システム21へと送信される。この間、運転指令が解除となった場合は、沸上運転を停止する。
ヒートポンプユニット1による沸上運転が開始されると使用している電力量が増加するため、電力を使用する他の機器の使用状況によっては、家庭や地域で使用している電力が制限値を超過する恐れが発生する。この時、使用電力監視システム21は電力の超過を抑えるために、ヒートポンプユニット1で使用している電力を調整するための電力調整指令を送信する。この電力調整指令は一定値(例えば電力使用量を80%とする)でも良いし、超過量を予測してその都度可変した値でも良い。使用電力監視システム21から送信された電力調整指令は、貯湯タンクユニット制御部19を介してヒートポンプユニット制御部18で受信される。
ヒートポンプユニット1は電力調整指令を受信した場合、電力調整量(例えば80%)を取得した後、圧縮機4の回転数、減圧弁6の開度及び循環ポンプ10の回転数を修正する。修正は、現在の圧縮機回転数、膨張弁開度及び循環ポンプ回転数を取得した電力調整量分だけ変更することにより行う。電力調整指令の受信と同時に、それぞれの機器の運転状態を変更するため、ヒートポンプユニット1で使用している電力が調整できる。また循環ポンプ10の回転数の修正に使用している圧縮機基準回転数も電力調整量の比率で変更を行う。それぞれの機器の状態を変更した後は、吐出冷媒圧力値、出口水温度が目標値と、圧縮機4の回転数が基準回転数と一致するまで、S2、S3、S4の動作を繰返し、沸上運転が安定した後、沸上運転安定信号を送信する。使用電力監視システム21は沸上運転安定信号を受信した後、使用している電力の状況を確認し、更なる電力調整を行うのか、現在の運転を維持するのか、電力調整を終了し、通常の運転に戻すのかを判断し、判断した結果の電力調整指令を送信する。また、圧縮機4には、信頼性の問題から、使用できる回転数の下限値が設定されている。そこで、電力調整量から算出した修正圧縮機回転数が下限値を下回るような場合には、現在の圧縮機回転数と回転数下限値とから下限調整量を算出し、下限調整量を使用して機器の修正を行う(図中、S6)。
以上のような本発明の第一実施形態に係るヒートポンプ式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来のヒートポンプ式給湯機では、ユーザの家庭で使用する電力使用量が電力会社と契約している電力量を超過しそうなときや、地域で使用する電力使用量がその地域の上限値を超過しそうなときは、ヒートポンプ式給湯機の沸上運転を停止するしかないため、湯切れが発生することがあった。
本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機では、電力使用量が上限値を超過しそうなときは、ヒートポンプユニット1の圧縮機4、減圧弁6及び循環ポンプ10のうち少なくとも1つの状態を変更することにより、使用している電力を調整することが可能である。これにより、電力使用量が上限値を超過することなく、また、ユーザによる貯湯タンク9の湯の使用により発生する湯切れを防止することができる。
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の電気ヒータを使用した電気式給湯機は、電力の使用量を監視するシステムから、沸上運転中の電力使用量を低減させる指令を受けたとき、運転中の沸上加熱能力を低減することにより、電力を低減させる機能を有しており、加熱能力の低下は、電気ヒータの出力を低下することで行う機能を設けたことを特徴とする。
以下では、本発明の実施形態に係る電気式給湯機の全体構成について説明した後に、前記した機能について更に具体的に説明する。
図3は、電気温水器の例を示す概略構成図である。
本図に示すように、電気式給湯機は、筐体22の中に貯湯タンク23を収めた構造となっている。
この貯湯タンク23の底部には、給水配管24を介して水道等の給水源(図示省略)が接続され、貯湯タンク23の塔頂部には、貯湯タンク23内の湯を導出して所定の給湯栓(図示省略)に給湯する給湯配管25が接続されている。なお、図示しないが、給水配管24から分岐すると共に、所定の湯水混合弁を介して給湯配管25に合流するように分岐配管を設ける構成とすることもできる。このような分岐配管によれば、湯水混合弁の開口度合いに応じて、給水配管24から給湯配管25に流れ込む水の量を調節することで、前記した給湯栓から出る湯の温度を調節することができる。
貯湯タンク23の内部には、給水配管24から導入した水を加熱するための電気ヒータ26が設けられている。なお、本図においては、電気ヒータ26は、貯湯タンク23の内部に設置されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、電気ヒータ26が貯湯タンク23の外部に設置されていてもよい。
給湯ユニット制御部27は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース、電子回路等を含む構成であり、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係る電気式給湯機を総合的に制御するようになっている。給湯ユニット制御部27は電気式給湯機のユーザとのインターフェースとなるリモコン(図示省略)からの情報や、貯湯タンク23に設けた28a〜28eにより構成される温度センサ28から得られる貯湯タンク23内の残湯量の情報などから、沸き上げる目標温水温度と沸上開始時間を算出し、電気ヒータ26への通電による貯湯タンク23内の水の沸上運転を行う。
次に、本実施形態に係る電気式給湯機の動作について説明する。
電気式給湯機において貯湯タンク23の沸上運転は、電力使用量が少ない深夜に行われるように、給湯ユニット制御部27が運転の管理を実施している。給湯ユニット制御部27は、温度センサ28から得られた温度データから、貯湯タンク23内の残湯量を推定し、推定した残湯量と給湯の使用量から推定した必要沸上熱量を算出して沸上に必要な運転時間を計算する。計算した運転時間により、電力使用量が増加し始める明け方に沸上を完了するために必要な運転開始時間を算出し、算出した開始時間より沸上運転を始める。このように明け方で沸上運転が完了するようにすることで、貯湯タンク23からの放熱によるエネルギーロスを最小限とすることができる。ここで、必要沸上熱量から算出した沸上運転時間で貯湯タンク23内の水を沸き上げるために、電気ヒータ26は所定の加熱能力を出力する必要がある。
このように深夜時間で沸上運転を行い、貯湯した湯を給湯に使用する電気式給湯機では、使用される給湯量が推定した量と相違が無い場合には貯湯タンク23内の湯が湯切れすることは無いが、推定した以上の給湯量で使用された場合、湯切れが発生し、給湯ができなくなる問題がある。この問題を解消するために、給湯ユニット制御部27は、温度センサ28から得られる温度データより貯湯タンク23内の湯量を常に推定し、湯量が低下して湯切れが発生する恐れがある場合、電気ヒータ26により貯湯タンク23内の水を沸き上げる運転を行う。
電気ヒータ26による沸上運転は電力を大量に使用する。このため、家庭や地域などでの電力使用量が多い昼間の時間帯に湯切れを回避するための沸上運転を実施すると、契約電力以上の電力消費の発生や、供給電力不足による停電が発生するリスクがある。このリスクを回避するために、本発明の第二実施形態では、家庭や地域で使用される電力を監視する使用電力監視システム21を設け、使用電力監視システム21と連携して沸上運転で使用する電力を調整する機能を設けている。
この機能について図4に示すフローチャートを用いて詳述する。
給湯ユニット制御部27は、沸上運転開始と判断した後に、電気ヒータ26への通電を開始する。家庭や地域で使用している電力を監視している使用電力監視システム21は、電力が超過する恐れが無いと判断されている間は、電力調整指令を発報しないため、給湯ユニット制御部27は電力調整指令無しと判断して沸上運転を継続する(図中、S7)。
運転中、給湯ユニット制御部27は、ヒータ通電が安定していることを使用電力監視システム21へ知らせるために、通電安定信号を送信する(図中、S8)。この間、温度センサ28から得られるタンク内水温度より、タンク内の沸上が完了となった場合は、沸上運転を停止する。
電気ヒータ26による沸上運転が開始されると、使用している電力量が増加するため、電力を使用する他の機器の使用状況によっては、家庭や地域で使用している電力が超過する恐れが発生する。このとき、使用電力監視システム21は、電力の超過を抑えるために、電気ヒータ26で使用している電力を調整するための電力調整指令を送信する。この電力調整指令は、一定値(例えば電力使用量を80%とする)でも良いし、超過量を予測してその都度可変した値でも良い。
使用電力監視システム21から送信された電力調整指令は、給湯ユニット制御部27で受信される。給湯ユニット制御部27は、電力調整指令を受信した場合、電力調整量(例えば80%)を取得した後、電気ヒータ26への通電量を修正する。修正は、現在の電気ヒータ通電量を取得した電力調整量分だけ変更することにより行う。電力調整指令の受信と同時に、電気ヒータ26への通電量を変更するため、使用している電力が調整できる。
また、給湯ユニット制御部27は、電気ヒータ26への通電が安定した後、通電安定信号を使用電力監視システム21へ送信する。使用電力監視システム21は、通電安定信号を受信した後、使用している電力の状況を確認し、更なる電力調整を行うのか、現在の運転を維持するのか、電力調整を終了し、通常の運転に戻すのかを判断し、判断した結果の電力調整指令を送信する。
以上のような本発明の第二実施形態に係る電気式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来の電気式給湯機では、沸上運転実施中の電力使用量が、ユーザが電力会社と契約している電力量を超過しそうなときや、地域で使用する電力使用量が上限値を超過しそうなときは、電気ヒータへの通電を停止し、沸上運転を停止するしかない。このため、湯切れが発生することがあった。
本実施形態に係る電気式給湯機では、電力使用量が上限値を超過しそうなときは、電気ヒータ26への通電量を修正することにより、使用している電力を調整することが可能であるため、電力使用量が上限値を超過することなく、また、ユーザの給湯使用量によって発生する湯切れを防止することができる。
図5は、使用電力監視システムを一軒の家屋において使用する電気機器(電化製品)に適用した場合の例を示す概念図である。
本図に示すように、使用電力監視システム521は、家庭内にある冷蔵庫53、テレビ54、ルームエアコン55、ヒートポンプ式給湯機(51、52)その他の電力を使用する電気機器を監視するシステムである。各電気機器が使用している電力量の測定は、各電気機器で実施しても良いし、使用電力監視システム521で実施しても良い。
上述の実施形態においては、給湯機の電力使用量を制限することを例として説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、給湯機以外の電気機器の電力使用量を同様の手法(電力調整の手順)で制限するようにしてもよい。この場合、使用電力監視システム521から指令を発し、冷蔵庫53、ルームエアコン55等の電力使用量を制限する。
給湯機の電力使用量を制限すると、場合によっては湯切れの問題が生じる。これに対して、給湯機の電力使用量を制限することなく、冷蔵庫53、ルームエアコン55等の電力使用量を制限したとしても、ユーザに要求される忍耐は許容できる程度であると考えられる。言い換えると、電力使用量を制限することにより、冷蔵庫53の冷蔵品の周囲の冷気の温度が一時的に1〜2℃高くなったとしても、冷蔵品の温度が著しく上昇することはなく、ユーザは許容できると考えられる。また、ルームエアコン55の冷房能力又は暖房能力が一時的に制限され、室温が一時的に1〜2℃上昇したとしても、ユーザは許容できると考えられる。
電力の総供給量の上限を抑制する観点から、各家屋において使用する電気機器のうちいずれの電力使用量を制限するかは自由度がある。使用電力監視システム521によりユーザの快適度を計算して、電力使用量を制限する電気機器を自動的に選択するようにしてもよい。
図6は、使用電力監視システムを地域内の複数の家屋に適用した場合の例を示す概念図である。
本図に示すように、上記実施例で使用している使用電力監視システム621は、地域にある複数のビル61、家屋62その他の電力を使用する場所を監視するシステムである。ビル61、家屋62等で使用している電力量の測定は、それぞれの建屋内で実施しても良いし、使用電力監視システム621で実施しても良い。また、それぞれの建屋内で電力量の測定を実施する場合は、図5に示す使用電力監視システム521をそれぞれの建屋に設け、それぞれの使用電力監視システム521が地域を監視する使用電力監視システム621(図6)と通信するようにしても良い。