以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のヒートポンプ式給湯機は、低外気温度条件や沸上げ目標温度によって、圧縮機の圧縮比や吐出冷媒温度が高くなる場合において、圧縮機を停止させること無く、圧縮機内の圧縮室のなじみを進行させることができる沸上げ運転機能を設けたことを特徴とする。
以下では、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の全体構成について説明した後に、前記した機能について更に具体的に説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とを備えている。ちなみに、ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とは、ヒートポンプ式給湯機が現場に配置される際に、接続配管3a,3bによって連結される構造となっている。
前記ヒートポンプユニット1の冷凍サイクルは、圧縮機4と、水−冷媒熱交換器5と、減圧装置6と、蒸発器7と、送風ファン8と、ヒートポンプユニット制御部18と、で主に構成されている。そして、圧縮機4、水−冷媒熱交換器5、減圧装置6、及び蒸発器7は、この順番で冷媒が循環するように配管で環状に連結されている。なお、本実施形態での冷媒としては、二酸化炭素が使用されている。そして、ヒートポンプユニット1では、圧縮機4より吐出される冷媒(二酸化炭素)の吐出圧力が臨界圧力以上となる超臨界蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルを使用している。
圧縮機4は、環状の回路から戻ってきた冷媒を圧縮すると共に、圧縮した高温高圧のガス冷媒(以下、ホットガスということがある)を再び環状の回路に送り出している。更に具体的には、蒸発器7から戻ってきた冷媒を圧縮して水−冷媒熱交換器5に向かって送り出している。
圧縮機4は、容量制御が可能で、高温貯湯(例えば、90℃)を行う場合は、通常よりも速い回転速度(例えば3000〜4000回転/分)で運転する。また、通常の貯湯温度(例えば、65℃)で運転する場合は、比較的遅い回転速度(例えば2000〜3000回転/分)で運転する。また、圧縮機4は、PWM制御、電圧制御(例えばPAM制御)及びこれらの組み合わせ制御により、低速(例えば1000回転/分)から高速(例えば6000回転/分)まで回転速度の制御が行えるようになっている。
圧縮機4には、運転中の圧縮機温度を検出するための圧縮機温度センサ13が設けられている。
圧縮機4と次に説明する水−冷媒熱交換器5とを接続する配管には、圧縮機4寄りに、圧縮機4の高圧側冷媒圧力(圧縮機吐出冷媒圧力)を検出する圧力センサ14が設けられている。この配管は、水−冷媒熱交換器5の入口と接続されている。
水−冷媒熱交換器5は、放熱器として機能するものであり、圧縮機4から吐出されたホットガスを流通させる冷媒伝熱管5aと、水を流通させる水伝熱管5bとを備えている。これらの冷媒伝熱管5a及び水伝熱管5bは、冷媒と水とが相互に熱交換するよう密着して設けられている。また水−冷媒熱交換器5は、冷媒と水とが相互に熱交換できる構造であれば、密着していない構造(例えば、水伝熱管5bの中に冷媒伝熱管5aを通す構造)でもよい。
減圧装置6は、水−冷媒熱交換器5と蒸発器7との間に配置される配管の途中に設けられており、電動膨張弁が使用されている。この減圧装置6は、水−冷媒熱交換器5からの高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低温低圧の冷媒として蒸発器7に送り出している。そして、減圧装置6は、絞り開度(開閉度合い)が調節可能となっており、ヒートポンプユニット制御部18がこの絞り開度を変えてヒートポンプユニット1での高圧側圧力を調節することができる。この機能を使用して、ヒートポンプユニット制御部18は、後記するように、減圧装置6の絞り開度を変えることで、圧縮機4の吐出冷媒圧力を調節することとなる。
ここで減圧装置6の制御は圧縮機4の吐出冷媒圧力を調整することについて記載したが、減圧装置6の制御は前記圧縮機温度センサ13より得られる圧縮機温度が所望の温度となるように制御を行っても良い。
ちなみに、減圧装置6は、蒸発器7に着霜した場合に、絞り開度を全開にしてデフロストを行うようにも働く。
蒸発器7は、送風ファン8の回転によって外気を取り入れた空気(送風)と、蒸発器7内を流通する低温低圧の冷媒との熱交換を行って、外気から熱を汲み上げるものである。そして、冷媒は、この蒸発器7から圧縮機4に戻されることとなる。
符号17は、外気温度を検出する温度センサであり、本実施形態での外気温度センサ17は、蒸発器7に流入する空気の温度を検出するように、送風ファン8が形成する空気流の上流側に配置されている。なお、ヒートポンプユニット制御部18は、後記するように、この外気温度センサ17の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値を算出することとなる。また後記するように、沸上げ運転開始時に外気温度センサ17の検出する温度を参照要素として、圧縮機4の負荷変動を小さくする機能の実施を判断する。
符号20aは、水送出配管であり、送出配管20aは、前記冷媒で加熱される水を水−冷媒熱交換器5に送り出すものである。送出配管20aの一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの入口に接続されている。この送出配管20aは、前記した接続配管3a及び後記の配管11bを介して後記する貯湯タンク9の底部側と接続されることとなる。
この送出配管20aには、循環ポンプ10が、水−冷媒熱交換器5の上流側に配置されている。なお、本実施形態での循環ポンプ10は、貯湯タンク9の水を水伝熱管5bの入口側に送り込むように駆動する。この循環ポンプ10は、後記する水循環路で水を循環させるように機能し、水循環装置としての役割を果たす。ちなみに、循環ポンプ10は、ヒートポンプユニット制御部18によって、循環路内での水の流量(質量流量)、流速及び圧力が自由に選択できるように構成されている。
また、送出配管20aの水−冷媒熱交換器5寄りには、熱交換器入口水温度センサ15が設けられている。この熱交換器入口水温度センサ15は、水−冷媒熱交換器5の入口で水の温度を検出するものである。なお、ヒートポンプ制御部18は、後記するように、この熱交換器入口水温度センサ15の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値を算出することとなる。
符号20bは、水戻し配管であり、戻し配管20bの一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの出口に接続されている。この戻し配管20bは、冷媒で加熱された水(湯)を水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク9に戻すものである。戻し配管20bの水−冷媒熱交換器5寄りには、水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出する熱交換器出口水温度センサ16が設けられている。この戻し配管20bは、前記した接続配管3b及び後記の配管12bを介して貯湯タンク9の塔頂部側と接続されることとなる。
次に、このようなヒートポンプユニット1と共にヒートポンプ式給湯機を構成する貯湯タンクユニット2について説明する。
タンクユニット2は、水(湯)を貯蔵する貯湯タンク9を備えている。
この貯湯タンク9の塔頂部には、前記したように、水−冷媒熱交換器5における水伝熱管5bの出口から送り出される水(湯)が、配管12bを介して流れ込むようになっている。そして、この貯湯タンク9の底部からは、前記したように、配管11bを介して、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの入口に水が流れ込むようになっている。
つまり、水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク9に湯を送り出すと共に、貯湯タンク9の水を水−冷媒熱交換器5に送り出すように、配管11b,3a,20a,20b,3b,12bが、水−冷媒熱交換器5と貯湯タンク9とを接続することで、水(湯)の水循環路を形成している。
また、貯湯タンク9の底部には給水配管11aを介して水道等の給水源(図示省略)が接続され、貯湯タンク9の塔頂部には、貯湯タンク9内の湯を導出して所定の給湯栓(図示省略)に給湯する給湯配管12aが接続されている。なお、図示しないが、給水配管11aから分岐すると共に、所定の湯水混合弁を介して給湯配管12aに合流するように分岐配管を設ける構成とすることもできる。このような分岐配管によれば、湯水混合弁の開口度合いに応じて、給水配管11aから給湯配管12aに流れ込む水の量を調節することで、前記した給湯栓から出る湯の温度を調節することができる。
ヒートポンプユニット制御部18は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェイス、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプユニット1を総合的に制御するようになっている。
また、ヒートポンプユニット制御部18は、圧縮機4の回転速度を熱交換器出口水温度センサ16で検出される水−冷媒熱交換器5の出口水温度に基づいて制御する。具体的には、ヒートポンプユニット制御部18は、熱交換器出口水温度センサ16で検出される温度が、予め設定された出口水温度の目標値(目標温水温度)となるように、圧縮機4の回転速度を制御する。つまり、目標値に対して熱交換器出口水温度センサ16の検出温度(計測値)が低い場合には圧縮機4の回転速度を速め、これとは逆に検出温度(計測値)が高い場合には圧縮機4の回転速度を遅くする。
また、ヒートポンプユニット制御部18は、循環ポンプ10が水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込む水の量を、予め求めた圧縮機4の目標回転速度に基づいて制御する。具体的には、圧縮機4の目標回転速度に対して実回転速度が遅い場合には、水伝熱管5bに送り込まれる水の量が増えるように循環ポンプ10を制御し、これとは逆に圧縮機4の実回転速度が速い場合には、水伝熱管5bに送り込まれる水の量が減るように循環ポンプ10を制御する。
そして、ヒートポンプユニット制御部18は、後に詳しく説明するように、圧力センサ14により検出される圧縮機4の吐出冷媒圧力が、外気温度と水−冷媒熱交換器5の水入口温度より算出される目標吐出冷媒圧力値と一致するように減圧装置6の開度を制御する。つまり、目標値に対して圧力センサ14の検出圧力(計測値)が低い場合には減圧装置6の開度を小さくし、これとは逆に検出圧力(計測値)が高い場合には減圧装置6の開度を大きくする。
貯湯タンクユニット制御部19は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェイス、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機を総合的に制御するようになっており、ヒートポンプ式給湯機のユーザーとのインターフェイスとなるリモコン(図示省略)からの情報や、貯湯タンク9に設けた温度センサ(図示省略)から得られる貯湯タンク9内の残湯量の情報などから、沸上げる目標温水温度と沸上げ開始時間を算出し、ヒートポンプユニット制御部18に対して沸上げ運転開始指令の発報や、目標温水温度の伝達を行う。
次に、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の動作について説明する。
このヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク9内に所定の温度で所定の湯量を確保するのに先立って、貯湯タンク9を満たすように水が供給される。この際、貯湯タンク9には、残存する湯に加えられるように、図示しない給水源から給水配管11aを介して水が加えられる。もちろん貯湯タンク9が空の場合には、その全てが水で満たされる。
以下では、貯湯タンク9に残存する湯と新たに加えられた水とを一緒にして単に「水」ということがある。
そして、ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク9が水で満たされてから、貯湯運転工程を実施する。
ヒートポンプ式給湯機は、起動した圧縮機4が吐出するホットガス(高温高圧の冷媒)を水−冷媒熱交換器5(放熱器)の冷媒伝熱管5aに送り込む。冷媒伝熱管5aに送り込まれたホットガスは、水伝熱管5b内の水に熱を放出する。そして、水伝熱管5b内の水はホットガスで加熱される。
次いで、水−冷媒熱交換器5(放熱器)の冷媒伝熱管5aから送り出された冷媒は、減圧装置6(膨張弁)で減圧された後に、蒸発器7に流れ込む。そして、流れ込んだ低温低圧の冷媒は、送風ファン8から送り込まれた風によって蒸発する際に外気から熱を汲み上げる。その後、冷媒は圧縮機4に戻って再び圧縮される。
その一方で、貯湯タンク9に満たされた水は、循環ポンプ10が起動することで、送出配管20aを介して水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5b内に送り込まれる。そして、送り込まれた水は、前記したように、冷媒に加熱されて湯となって、戻し配管20bに流れ込む。
戻し配管20bに流れ込んだ湯は、貯湯タンク9に戻って貯蔵される。このように貯湯タンク9と水−冷媒熱交換器5との間で水が循環する間に、ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク9内に所定の温度で所定の湯量を確保する。
また、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機は、圧縮機4の駆動履歴の中で最大の圧縮比に関する情報を記憶する記憶部が設けられ、記憶されている情報に基づく最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出すると、所定の条件を満たすまで、通常よりも(即ち、最大の圧縮比に比べて圧縮比が小さい状態よりも)圧縮機4の負荷変動が小さくなるように制御されるものである。これにより、仮に圧縮機4のなじみが未だ完了していない段階で圧縮比が高くなる状況が発生した場合にも、運転中の入力が不測に増大することを良好に防止することができる。従って、低外気温度条件や沸上げ目標温度によって、圧縮機4の圧縮比や吐出冷媒温度が高くなる場合においても、圧縮機を停止させること無く、なじみを進行させることができる。
記憶部は、ヒートポンプユニット制御部18に備えられている。また、記憶部は、最大の圧縮比に関する情報として圧縮機4の駆動履歴の中で最低の外気温度を記憶するように構成され、記憶されている最低の外気温度よりも低い外気温度を検出することにより、圧縮比が大きくなる状態を検出する。なお、前記所定の条件は、前記最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出した際の沸上げ運転が終了することである。詳細は、以下の実施例において説明する。
次に、実施例1について図2を用いて説明する。本実施例に係るヒートポンプ式給湯機は、記憶されている前記情報に基づく最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出すると、所定の条件を満たすまで圧縮機4の負荷変動が通常よりも小さくなるように制御するものである。また、本実施例では、減圧装置6の開度変更量を通常よりも小さくすることにより、圧縮機4の負荷変動が小さくなるように制御される。以下、詳細に説明する。
図2は、本実施例に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が圧縮機4、減圧装置6、及び循環ポンプ10を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
貯湯タンクユニット制御部19において、目標温水温度(例えば、前記した90℃又は65℃)の設定がなされ、ヒートポンプユニット制御部18に対して運転開始指令が発報される。この際、目標温水温度は、給水配管11aから貯湯タンク9へ送り込まれた水の温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、貯湯タンク9内の残湯量、1日のユーザーによる湯の使用量、及びリモコンによりユーザーから要求される要求値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定することができる。
運転開始指令を受けたヒートポンプユニット制御部18では、ヒートポンプユニットの沸上げ運転を開始する。指令を受けたヒートポンプユニット制御部18は、図2に示すように、圧縮機4、減圧装置6、ファン8、循環ポンプ10を初期値で起動した後、外気温度センサ17より得られた外気温度がヒートポンプユニット制御部18に記録されている最低外気温度に対して高いかを判断し、高い場合には減圧装置開度補正値を1に設定し、低い場合には減圧装置開度補正値をn(具体的には1より大きい数値。例えば2)に設定する(ステップS1)。
減圧装置開度補正値を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度と水入口温度より目標吐出冷媒圧力を算出し、目標温水温度と共に目標値として設定する(ステップS2)。
ここで目標吐出冷媒圧力は、熱交換器入口水温度センサ15の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込まれる水の温度(水入口温度))、前記した目標温水温度、及び外気温度センサ17の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
目標吐出冷媒圧力、目標温水温度を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度、水入口温度、及び目標温水温度から循環ポンプ10の制御目標値となる圧縮機基準回転速度を算出し設定する(ステップS3)。
ここで圧縮機基準回転速度は、熱交換器入口水温度センサ15で検出される水入口温度、前記した目標温水温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、及び必要とされる加熱能力値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
次に、ヒートポンプユニット制御部18は、圧力センサ14にて圧縮機4の吐出冷媒圧力を検出すると共に、この吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいか否か(冷媒圧力=目標圧力か)を判断する(ステップS4)。そして、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいと判断した場合には(ステップS4のYes)次のステップへと進み、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力に等しくないと判断した場合には(ステップS4のNo)、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しくなるように減圧装置6の開度を修正した後に、次のステップに進む。ここで、減圧装置の開度修正の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定開度修正量を、ステップS1で設定した減圧装置開度補正値で除した値で行うことにより、ヒートポンプユニットが初めて運転する低外気温度条件時には減圧装置開度修正量が通常の規定開度修正量よりも少ない値で運転することができるため、沸上げ運転中の圧縮機負荷変動を小さくすることができる。
次に、圧縮機4の回転速度を調整する処理を行う。本実施例に係るヒートポンプ式給湯機は、圧縮機4の回転速度を調整することで、出口水温度を目標温水温度に調整している。このため、ヒートポンプユニット制御部18は、熱交換器出口水温度センサ16にて水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出すると共に、この出口水温度が前記した目標温水温度と等しいか否か(出口水温度=目標温水温度か)を判断する(ステップS5)。そして、出口水温度が目標温水温度と等しいと判断した場合には(ステップS5のYes)次のステップへと進み、出口水温度が目標温水温度と等しくないと判断した場合には(ステップS5のNo)、出口水温度が目標温水温度と等しくなるように圧縮機4の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、圧縮機4の回転速度の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正を行う。
次に、循環ポンプ10の回転速度を調整する処理を行う。循環ポンプ10の回転速度を調整するに当たっては、循環ポンプ10の制御目標値となる前記圧縮機基準回転速度を用いる。ヒートポンプユニット制御部18は、圧縮機4の回転速度を検出し、この回転速度が前記した圧縮機基準回転速度と等しいか否か(圧縮機回転速度=基準回転速度か)を判断する(ステップS6)。そして、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しいと判断した場合には(ステップS6のYes)次のステップへと進み、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しくないと判断した場合には(ステップS6のNo)、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しくなるように循環ポンプ10の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、循環ポンプ10の回転速度は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正される。
その後、ヒートポンプユニット制御部18は、運転指令が継続しているか否かを判断する(ステップS7)と共に、継続していると判断した場合(ステップS7のYes)にはステップS2に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS7のNo)、ヒートポンプユニット1は、運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
以上のような本実施例に係るヒートポンプ式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来のヒートポンプ式給湯機では、機器が過去に運転した最低外気温度をヒートポンプユニット制御部18に記録していないため、常に規定された沸上げ運転しか行うことができず、圧縮比や吐出冷媒温度が高くなる低外気温度条件において、沸上げ運転中に圧縮機内の摺動抵抗により入力が増大し、場合によっては運転を停止することがあった。特にスクロール式圧縮機では、構成部品の製造ばらつき等により旋回スクロールラップと固定スクロールラップの接触面が大きくなってしまう場合があった。これに対して本実施例に係るヒートポンプ式給湯機では、ヒートポンプユニット制御部18に運転開始時に外気温度センサ17で検出される外気温度を記憶する機能を有しているため、機器が過去に運転した最低外気温度を把握することができる。この機能により、機器が初めて運転する低外気温時には圧縮機4内の圧縮比と吐出冷媒温度が過去の運転時より高くなると判断できるため、減圧装置6の開度修正量を通常規定されている修正量より小さくすることができ、圧縮機4運転中の負荷変動を小さくすることが可能となるため、圧縮機4を停止させること無く、圧縮機4内のなじみを進行させることができる沸上げ運転を行うことができる。
次に、実施例2について図3を用いて説明する。なお、本実施例は、実施例1と基本的に共通するものであるが、本実施例では、圧縮機4の回転速度の変更量を通常よりも小さくすることにより、圧縮機4の負荷変動が小さくなるように制御される。以下、詳細に説明する。
図3は、本実施例に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が圧縮機4、減圧装置6、及び循環ポンプ10を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
貯湯タンクユニット制御部19において、目標温水温度(例えば、前記した90℃又は65℃)の設定がなされ、ヒートポンプユニット制御部18に対して運転開始指令が発報される。この際、目標温水温度は、給水配管11aから貯湯タンク9へ送り込まれた水の温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、貯湯タンク9内の残湯量、1日のユーザーによる湯の使用量、及びリモコンによりユーザーから要求される要求値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定することができる。
運転開始指令を受けたヒートポンプユニット制御部18では、ヒートポンプユニットの沸上げ運転を開始する。指令を受けたヒートポンプユニット制御部18は、図3に示すように、圧縮機4、減圧装置6、ファン8、循環ポンプ10を初期値で起動した後、外気温度センサ17より得られた外気温度がヒートポンプユニット制御部18に記録されている最低外気温度に対して高いかを判断し、高い場合には圧縮機回転速度補正値を1に設定し、低い場合には圧縮機回転速度補正値をn(具体的には1より大きい数値。例えば2)に設定する(ステップS8)。
圧縮機回転速度補正値を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度と水入口温度より目標吐出冷媒圧力を算出し、目標温水温度と共に目標値として設定する(ステップS9)。
ここで目標吐出冷媒圧力は、熱交換器入口水温度センサ15の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込まれる水の温度(水入口温度))、前記した目標温水温度、及び外気温度センサ17の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
目標吐出冷媒圧力、目標温水温度を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度、水入口温度、及び目標温水温度から循環ポンプ10の制御目標値となる圧縮機基準回転速度を算出し設定する(ステップS10)。
ここで圧縮機基準回転速度は、熱交換器入口水温度センサ15で検出される水入口温度、前記した目標温水温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、及び必要とされる加熱能力値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
次に、ヒートポンプユニット制御部18は、圧力センサ14にて圧縮機4の吐出冷媒圧力を検出すると共に、この吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいか否か(冷媒圧力=目標圧力か)を判断する(ステップS11)。そして、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいと判断した場合には(ステップS11のYes)次のステップへと進み、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力に等しくないと判断した場合には(ステップS11のNo)、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しくなるように減圧装置6の開度を修正した後に、次のステップに進む。ここで、減圧装置6の開度の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定開度修正量により修正を行う。
次に、圧縮機4の回転速度を調整する処理を行う。本実施例に係るヒートポンプ式給湯機は、圧縮機4の回転速度を調整することで、出口水温度を目標温水温度に調整している。このため、ヒートポンプユニット制御部18は、熱交換器出口水温度センサ16にて水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出すると共に、この出口水温度が前記した目標温水温度と等しいか否か(出口水温度=目標温水温度か)を判断する(ステップS12)。そして、出口水温度が目標温水温度と等しいと判断した場合には(ステップS12のYes)次のステップへと進み、出口水温度が目標温水温度と等しくないと判断した場合には(ステップS12のNo)、出口水温度が目標温水温度と等しくなるように圧縮機4の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、圧縮機4の回転速度修正の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量を、ステップS8で設定した圧縮機回転速度補正値で除した値で行うことにより、ヒートポンプユニットが初めて運転する低外気温度条件時には圧縮機回転速度修正量が通常の規定回転速度修正量よりも少ない値で運転することができるため、沸上げ運転中の圧縮機負荷変動を小さくすることができる。
次に、循環ポンプ10の回転速度を調整する処理を行う。循環ポンプ10の回転速度を調整するに当たっては、循環ポンプ10の制御目標値となる前記圧縮機基準回転速度を用いる。ヒートポンプユニット制御部18は、圧縮機4の回転速度を検出し、この回転速度が前記した圧縮機基準回転速度と等しいか否か(圧縮機回転速度=基準回転速度か)を判断する(ステップS13)。そして、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しいと判断した場合には(ステップS13のYes)次のステップへと進み、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しくないと判断した場合には(ステップS13のNo)、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しくなるように循環ポンプ10の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、循環ポンプ10の回転速度は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正される。
その後、ヒートポンプユニット制御部18は、運転指令が継続しているか否かを判断する(ステップS14)と共に、継続していると判断した場合(ステップS14のYes)にはステップS9に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS14のNo)、ヒートポンプユニット1は、運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
以上のような本実施例に係るヒートポンプ式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来のヒートポンプ式給湯機では、機器が過去に運転した最低外気温度をヒートポンプユニット制御部18に記録していないため、常に規定された沸上げ運転しか行うことができず、圧縮比や吐出冷媒温度が高くなる低外気温度条件において、沸上げ運転中に圧縮機内の摺動抵抗により入力が増大し、場合によっては運転を停止することがあった。これに対して本実施例に係るヒートポンプ式給湯機では、ヒートポンプユニット制御部18に運転開始時に外気温度センサ17で検出される外気温度を記憶する機能を有しているため、機器が過去に運転した最低外気温度を把握することができる。この機能により、機器が初めて運転する低外気温時には圧縮機4内の圧縮比と吐出冷媒温度が過去の運転時より高くなると判断できるため、圧縮機4の回転速度修正量を通常規定されている修正量より小さくすることができ、圧縮機4運転中の負荷変動を小さくすることが可能となるため、圧縮機4を停止させること無く、圧縮機4内のなじみを進行させることができる沸上げ運転を行うことができる。
次に、実施例3について図4を用いて説明する。なお、本実施例は、実施例1と基本的に共通するものであるが、本実施例は、圧縮機4の駆動中の電流値を検出する電流検出部を備え、電流値が所定の電流制限値を超える場合には、電流値を低下させるように制御する。具体的には、圧縮機4の回転速度を低下させることにより電流値を低下させる。以下、詳細に説明する。
次に、本実施例に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時における、ヒートポンプユニット制御部18による圧縮機4、減圧装置6、及び循環ポンプ10の制御方法を詳述する。次に参照する図5は、本実施例に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が圧縮機4、減圧装置6、及び循環ポンプ10を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
貯湯タンクユニット制御部19において、目標温水温度(例えば、前記した90℃又は65℃)の設定がなされ、ヒートポンプユニット制御部18に対して運転開始指令が発報される。この際、目標温水温度は、給水配管11aから貯湯タンク9へ送り込まれた水の温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、貯湯タンク9内の残湯量、1日のユーザーによる湯の使用量、及びリモコンによりユーザーから要求される要求値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定することができる。
運転開始指令を受けたヒートポンプユニット制御部18では、ヒートポンプユニットの沸上げ運転を開始する。指令を受けたヒートポンプユニット制御部18は、図5に示すように、圧縮機4、減圧装置6、ファン8、循環ポンプ10を初期値で起動した後、外気温度センサ17より得られた外気温度がヒートポンプユニット制御部18に記録されている最低外気温度に対して高いかを判断し、高い場合には減圧装置開度補正値を1に設定し、低い場合には減圧装置開度補正値をn(具体的には1より大きい数値。例えば2)に設定する(ステップS15)。
減圧装置開度補正値を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度と水入口温度より目標吐出冷媒圧力を算出し、目標温水温度と共に目標値として設定する(ステップS16)。
ここで目標吐出冷媒圧力は、熱交換器入口水温度センサ15の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込まれる水の温度(水入口温度))、前記した目標温水温度、及び外気温度センサ17の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
目標吐出冷媒圧力、目標温水温度を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度、水入口温度、及び目標温水温度から循環ポンプ10の制御目標値となる圧縮機基準回転速度を算出し設定する(ステップS17)。
ここで圧縮機基準回転速度は、熱交換器入口水温度センサ15で検出される水入口温度、前記した目標温水温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、及び必要とされる加熱能力値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
次に、ヒートポンプユニット制御部18は、圧力センサ14にて圧縮機4の吐出冷媒圧力を検出すると共に、この吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいか否か(冷媒圧力=目標圧力か)を判断する(ステップS18)。そして、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいと判断した場合には(ステップS18のYes)次のステップへと進み、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力に等しくないと判断した場合には(ステップS18のNo)、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しくなるように減圧装置6の開度を修正した後に、次のステップに進む。ここで、減圧装置の開度修正の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定開度修正量を、ステップS15で設定した減圧装置開度補正値で除した値で行うことにより、ヒートポンプユニットが初めて運転する低外気温度条件時には減圧装置開度修正量が通常の規定開度修正量よりも少ない値で運転することができるため、沸上げ運転中の圧縮機負荷変動を小さくすることができる。
次に、圧縮機4の回転速度を調整する処理を行う。本実施例に係るヒートポンプ式給湯機は、圧縮機4の回転速度を調整することで、出口水温度を目標温水温度に調整している。このため、ヒートポンプユニット制御部18は、熱交換器出口水温度センサ16にて水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出すると共に、この出口水温度が前記した目標温水温度と等しいか否か(出口水温度=目標温水温度か)を判断する(ステップS219)。そして、出口水温度が目標温水温度と等しいと判断した場合には(ステップS19のYes)次のステップへと進み、出口水温度が目標温水温度と等しくないと判断した場合には(ステップS19のNo)、出口水温度が目標温水温度と等しくなるように圧縮機4の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、圧縮機4の回転速度の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正を行う。
次に、循環ポンプ10の回転速度を調整する処理を行う。循環ポンプ10の回転速度を調整するに当たっては、循環ポンプ10の制御目標値となる前記圧縮機基準回転速度を用いる。ヒートポンプユニット制御部18は、圧縮機4の回転速度を検出し、この回転速度が前記した圧縮機基準回転速度と等しいか否か(圧縮機回転速度=基準回転速度か)を判断する(ステップS20)。そして、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しいと判断した場合には(ステップS20のYes)次のステップへと進み、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しくないと判断した場合には(ステップS20のNo)、圧縮機回転速度が基準回転速度と等しくなるように循環ポンプ10の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、循環ポンプ10の回転速度は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正される。
ヒートポンプユニット制御部18は、ヒートポンプユニット1の運転電流を検出し、この検出した運転電流値がヒートポンプユニット制御部18で記憶している運転電流上限値より低いか否か(運転電流値<運転電流上限値か)を判断する(ステップS21)。そして、運転電流値が上限値より低いと判断した場合には(ステップS21のYes)次のステップへと進み、運転電流値が上限値以上と判断した場合には(ステップS21のNo)、圧縮機回転速度をヒートポンプユニット制御部18で記憶している規定値だけ減速した後に次のステップへと進む。ここで、圧縮機回転速度の減速規定値は、一定の減速量(例えば500回転/分)でも、ステップS21で電流値を確認した時の圧縮機4の回転速度から算出される減速量でも良い。ここで圧縮機の回転速度を減速することにより圧縮機の運転負荷を低減することができる。
その後、ヒートポンプユニット制御部18は、運転指令が継続しているか否かを判断する(ステップS22)と共に、継続していると判断した場合(ステップS22のYes)にはステップS16に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS22のNo)、ヒートポンプユニット1は、運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
以上のような本実施例に係るヒートポンプ式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来のヒートポンプ式給湯機では、機器が過去に運転した最低外気温度をヒートポンプユニット制御部18に記録していないため、常に規定された沸上げ運転しか行うことができず、圧縮比や吐出冷媒温度が高くなる低外気温度条件において、沸上げ運転中に圧縮機内の摺動抵抗により入力が増大し、場合によっては運転を停止することがあった。これに対して本実施例に係るヒートポンプ式給湯機では、ヒートポンプユニット制御部18に運転開始時に外気温度センサ17で検出される外気温度を記憶する機能を有しているため、機器が過去に運転した最低外気温度を把握することができる。この機能により、機器が初めて運転する低外気温時には圧縮機4内の圧縮比と吐出冷媒温度が過去の運転時より高くなると判断できるため、減圧装置6の開度修正量を通常規定されている修正量より小さくすることができ、圧縮機4運転中の負荷変動を小さくすることが可能となる。上述のように減圧装置6の動作変更によって運転中の負荷変動を小さくできるが、それでも減圧装置6の開度変更や圧縮機4の回転速度変更、循環ポンプ10の回転速度変更に伴う負荷変動により圧縮機4内で摺動抵抗が発生し、運転時の入力が増大してしまった場合においては、ヒートポンプユニットの運転電流を検出し、運転電流が上限値以上となった時には、圧縮機の回転速度を減速することにより、圧縮機の負荷を低減することができるため、圧縮機4を停止させること無く、圧縮機4内のなじみを進行させることができる沸上げ運転を行うことができる。
なお本実施例では、検出した電流値が上限値以上となった場合に、圧縮機の回転速度を減速して圧縮機4の負荷を軽減する機能について詳述したが、電流値が上限以上となった場合に、圧縮機4の回転速度を減速するのではなく、減圧装置6の開度を規定値だけ大きくすることにより圧縮機4の負荷を軽減する方法や、またその両方を同時に行う方法でも良い。
次に、実施例4について図5を用いて説明する。本実施例に係るヒートポンプ式給湯機は、記憶されている前記情報に基づく最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出すると、所定の条件を満たすまで加熱能力が通常よりも小さくなるように制御されるものである。具体的には、水−冷媒熱交換器へ流入する液体の流入量を調整する流入量調整手段(即ち、循環ポンプ10)による流入量(即ち、循環量)を通常よりも小さくすることにより、加熱能力が小さくなるように制御する。そして、本実施例では、流入量調整手段における流入量を通常よりも小さくすることにより、圧縮機の負荷変動が小さくなるように制御するものでもある。以下、詳細に説明する。
図4は、本実施例に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が圧縮機4、減圧装置6、及び循環ポンプ10を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
貯湯タンクユニット制御部19において、目標温水温度(例えば、前記した90℃又は65℃)の設定がなされ、ヒートポンプユニット制御部18に対して運転開始指令が発報される。この際、目標温水温度は、給水配管11aから貯湯タンク9へ送り込まれた水の温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、貯湯タンク9内の残湯量、1日のユーザーによる湯の使用量、及びリモコンによりユーザーから要求される要求値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定することができる。
運転開始指令を受けたヒートポンプユニット制御部18では、ヒートポンプユニットの沸上げ運転を開始する。指令を受けたヒートポンプユニット制御部18は、図4に示すように、圧縮機4、減圧装置6、ファン8、循環ポンプ10を初期値で起動した後、外気温度センサ17より得られた外気温度がヒートポンプユニット制御部18に記録されている最低外気温度に対して高いかを判断し、高い場合には圧縮機基準回転速度補正値を1に設定し、低い場合には圧縮機基準回転速度補正値をn(具体的には1より大きい数値。例えば1.2)に設定する(ステップS23)。
圧縮機基準回転速度補正値を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度と水入口温度より目標吐出冷媒圧力を算出し、目標温水温度と共に目標値として設定する(ステップS24)。
ここで目標吐出冷媒圧力は、熱交換器入口水温度センサ15の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込まれる水の温度(水入口温度))、前記した目標温水温度、及び外気温度センサ17の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
目標吐出冷媒圧力、目標温水温度を設定した後、外気温度センサ17、水−冷媒熱交換器入口温度センサ15より得られる外気温度、水入口温度、及び目標温水温度から循環ポンプ10の制御目標値となる圧縮機基準回転速度を算出し設定する(ステップS25)。
ここで圧縮機基準回転速度は、熱交換器入口水温度センサ15で検出される水入口温度、前記した目標温水温度、外気温度センサ17の検出温度(外気温度)、及び必要とされる加熱能力値から選ばれる少なくとも一つに基づいて設定するものでも良い。
圧縮機基準回転速度を設定した後、圧縮機基準回転速度の補正を行い、補正基準回転速度を算出する(ステップS26)。補正はステップS25で設定した圧縮機基準回転速度をステップ15で設定した圧縮機基準回転速度補正値で除して行う。
次に、ヒートポンプユニット制御部18は、圧力センサ14にて圧縮機4の吐出冷媒圧力を検出すると共に、この吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいか否か(冷媒圧力=目標圧力か)を判断する(ステップS27)。そして、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいと判断した場合には(ステップS27のYes)次のステップへと進み、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力に等しくないと判断した場合には(ステップS27のNo)、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しくなるように減圧装置6の開度を修正した後に、次のステップに進む。ここで、減圧装置6の開度の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定開度修正量により修正を行う。
次に、圧縮機4の回転速度を調整する処理を行う。本実施例に係るヒートポンプ式給湯機は、圧縮機4の回転速度を調整することで、出口水温度を目標温水温度に調整している。このため、ヒートポンプユニット制御部18は、熱交換器出口水温度センサ16にて水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出すると共に、この出口水温度が前記した目標温水温度と等しいか否か(出口水温度=目標温水温度か)を判断する(ステップS28)。そして、出口水温度が目標温水温度と等しいと判断した場合には(ステップS28のYes)次のステップへと進み、出口水温度が目標温水温度と等しくないと判断した場合には(ステップS28のNo)、出口水温度が目標温水温度と等しくなるように圧縮機4の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、圧縮機4の回転速度の修正量は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正を行う。
次に、循環ポンプ10の回転速度を調整する処理を行う。循環ポンプ10の回転速度を調整するに当たっては、循環ポンプ10の制御目標値となる前記圧縮機基準回転速度を用いる。ヒートポンプユニット制御部18は、圧縮機4の回転速度を検出し、この回転速度が前記した補正基準回転速度と等しいか否か(圧縮機回転速度=補正基準回転速度か)を判断する(ステップS29)。そして、圧縮機回転速度が補正基準回転速度と等しいと判断した場合には(ステップS29のYes)次のステップへと進み、圧縮機回転速度が補正基準回転速度と等しくないと判断した場合には(ステップS29のNo)、圧縮機回転速度が補正基準回転速度と等しくなるように循環ポンプ10の回転速度を修正した後に次のステップへと進む。ここで、循環ポンプ10の回転速度は、ヒートポンプユニット制御部18で算出される規定回転速度修正量により修正される。
ステップS29で用いている補正基準回転速度はステップS26で補正された値を使用しているため、ヒートポンプユニットが初めて運転する低外気温度条件時には、圧縮機基準回転速度が通常の値より小さくなるので、通常沸上げ運転時よりも低い回転速度で圧縮機4を運転することができるため、沸上げ運転中の圧縮機負荷変動を小さくすることができる。
その後、ヒートポンプユニット制御部18は、運転指令が継続しているか否かを判断する(ステップS30)と共に、継続していると判断した場合(ステップS30のYes)にはステップS24に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS30のNo)、ヒートポンプユニット1は、運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
以上のような本実施例に係るヒートポンプ式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来のヒートポンプ式給湯機では、機器が過去に運転した最低外気温度をヒートポンプユニット制御部18に記録していないため、常に規定された沸上げ運転しか行うことができず、圧縮比や吐出冷媒温度が高くなる低外気温度条件において、沸上げ運転中に圧縮機内の摺動抵抗により入力が増大し、場合によっては運転を停止することがあった。これに対して本実施例に係るヒートポンプ式給湯機では、ヒートポンプユニット制御部18に運転開始時に外気温度センサ17で検出される外気温度を記憶する機能を有しているため、機器が過去に運転した最低外気温度を把握することができる。この機能により、機器が初めて運転する低外気温時には圧縮機4内の圧縮比と吐出冷媒温度が過去の運転時より高くなると判断できるため、圧縮機4の運転時の回転速度を通常規定されている回転速度より低くすることができるため、圧縮機4運転中の負荷変動を小さくすることが可能となり、圧縮機4を停止させること無く、圧縮機4内のなじみを進行させることができる沸上げ運転を行うことができる。
なお本実施例では、流入量調整手段における流入量を通常よりも小さくすることにより加熱能力が小さくなるように制御する機能について詳述したが、圧縮機4の回転速度を通常よりも小さくすることにより加熱能力が小さくなるように制御するものであっても良い。
なお、上記各実施例は、圧縮比が大きくなる状態を検出する手段として、運転時の外気温度を用い、運転開始時の外気温度によってなじみを促進させる沸上げ運転の実施有無を判断しているが、圧縮比が大きくなる条件として、運転時の沸上げ目標温度が高い条件とし、運転開始時の沸上げ目標温度によってなじみを促進させる沸上げ運転の実施有無を判断しても良いし、その両方を同時に用いて判断を実施しても良い。また、実際の高圧圧力と低圧圧力に基づいて圧縮比が大きくなる状態を検出するものであっても良い。
また、上記各実施例は、圧縮比が大きくなる状態を沸上げ運転開始時に検出するものであったが、これに限定されず、沸上げ中に検出するものであっても良い。
また、上記各実施例は、使用している圧縮機4の種別をスクロール式圧縮機として記載しているが、圧縮機の種別はロータリー式圧縮機や、レシプロ式圧縮機、スクリュー式圧縮機など他の種別の圧縮機としても良い。
また、上記各実施例は、使用している冷媒は二酸化炭素冷媒として記載しているが、使用する冷媒はフロン系冷媒や炭化水素系冷媒など他の種類の冷媒としても良い。
また、上記各実施例は、前記所定の条件として、前記最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出した際の沸上げ運転が終了するまで圧縮機4の負荷変動が小さくなるように制御するものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、所定の時間が経過するまでであってもよい。また、前記最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出した場合に、一回の沸上げ運転中のみ圧縮機4の負荷変動が小さくなるように制御するのではなく、最大の圧縮比よりも圧縮比が大きくなる状態を検出した沸上げ運転が複数回に達した場合に圧縮機4の負荷変動が小さくなるようにする制御を解除するものであっても良い。
また、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機は水を加熱して貯湯タンクに貯湯するタイプのものを例に説明したが、ヒートポンプ式給湯機としては例えば蓄熱材を含有する液体を加熱して給湯に用いるものも考えられる。