JP2016047001A - 電動車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】電力変換装置の劣化に応じて冷媒流量を変化させる際にその変化による違和感を運転者に与えない技術を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車2では、冷却コントローラは、温度データ積算処理(S10)により、PCU5の温度データを取得して積算する。デューティ比増加率算出処理(S20)により、過去に算出された劣化度の経時変化から、単位走行時間当たりの過去の劣化度の増加率を算出し、過去の劣化度の増加率を用い、劣化度が閾値に達するまでの予定走行時間を推定する。冷媒流量増加処理(S30)により、将来、予定走行時間に到達したときに、PCUクーラに流れる冷媒流量とPCU5の温度との関係が劣化時の温度/流量関係になるように、現在以降における走行時間の増加に応じてPCU5の温度に対応した冷媒流量を増加させる。これにより、PCU5の各温度に対する冷媒流量が、劣化度が閾値に達するまでに徐々に増加する。
【選択図】図8

Description

本明細書が開示する技術は電動車両に関する。本明細書における電動車両には、走行用にモータを備えるがエンジンは備えない電気自動車のほか、走行用モータとエンジンの双方を備えるハイブリッド車も含む。燃料電池車も電動車両に含まれる。
電動車両は、バッテリの出力電力を走行用モータの駆動に適した電力に変換するため、電力変換装置を搭載している。電力変換装置は、例えば、複数のスイッチング素子を使ったインバータや電圧コンバータである。スイッチング素子には、大電流が流れることから発熱量が大きい。そのため、電動車両は、電力変換装置に冷媒を循環させる冷却器を伴うことが多い。その一例として、下記特許文献1に開示される技術がある。この技術では、インバータ(電力変換装置)の温度に基づいてインバータに供給する冷媒の流量を制御する。一般に、冷却器を循環する冷媒の流量は、電力変換装置(インバータ)の温度に対して定められている。
特開2008−72818号公報
ところで、走行用モータに電力を供給する電力変換装置は、同じ出力でもスイッチング素子を含む電力変換装置の経時変化により発熱量が増加する場合がある。経時変化の原因の一つには、例えばスイッチング素子の内部抵抗の増加がある。内部抵抗が増加すると抵抗損失が増えるため、スイッチング素子の発熱量が増加する。また、スイッチング素子を封止したパワーモジュールが放熱用のグリスを介して冷却器に接している構成を採る場合には、グリスの拡散や散逸も経時変化の原因になり得る。グリスが拡散したり散逸したりすると、パワーモジュールと冷却器の間に空気の層が拡がるため、パワーモジュールから冷却器へ熱抵抗が増大する。電力変換装置の経時変化は、いずれにしても、電力変換装置の単位時間当たりの温度上昇率の増大をもたらす。
つまり、電力変換装置は、経時変化によって単位時間当たりの温度上昇率が増大し得る。なお、電力変換装置の単位時間当たりの温度上昇率は、その出力に応じて変化するので、より正確には、経時変化により、電力変換装置の所定出力に対する単位時間当たりの温度上昇率が増大する。以下では、説明の便宜上、電力変換装置の所定出力に対する単位時間当たりの温度上昇率が増大することを、単に電力変換装置の温度上昇率が増大する、と表現する。また、以下、本明細書では、経時的に電力変換装置の温度上昇率が増大することを「電力変換装置が劣化する」と表現する。
電力変換装置の劣化の度合い(劣化度)は、車両毎に異なる。これは、運転者の運転特性(粗い運転、おとなしい運転)により電力変換装置に加わる負荷に差があるからである。一方、新車における電力変換装置の温度上昇率は一定であり、冷却器を制御するコントローラには、電力変換装置の温度と冷媒流量の関係(初期の温度/流量関係)が予め定められており、この初期の温度/流量関係に基づいて冷却器の流量が制御される。
劣化が進行していくと、初期の温度/流量関係に基づく流量調整では、電力変換装置を充分に冷却するには流量が足りなくなる虞がある。劣化度が予め定められた閾値に到達した場合における電力変換装置と冷媒の流量との関係(以下、劣化時の温度/流量関係と称する)をコントローラに記憶しておき、劣化度が閾値に達したときに、冷却器制御に用いるデータを初期の温度/流量関係から劣化時の温度/流量関係に切り換えることが考えられる。しかしそれでは、同じ出力に対する冷媒流量がステップ状に大きく変化する。冷媒流量は冷却器のポンプ出力で決まるため、冷媒流量が大きく変化することは、ポンプ出力が大きく変化することになり、それは、車両のNV特性(騒音振動特性)の突然の大きな変化に繋がる。あるとき突然にNV特性が大きく変化すると、乗員(特に運転者)に違和感を与えてしまう。
本明細書は、乗員に違和感を与えることなく、電力変換装置の劣化の進行に応じて冷却器の流量を適正に調整する技術に関する。
本明細書が開示する電動車両は、走行時間又は走行距離の一方をトリップ値として計測するとともに、そのトリップ値に対する電力変換装置の温度変化から電力変換装置の劣化度を算出し、劣化度と電力変換装置の温度に基づいて冷却装置により循環させる冷媒の流量を制御するコントローラを備えている。このコントローラは、劣化度が予め定められた閾値に到達した場合における電力変換装置の温度と冷媒流量との関係(上記した劣化時の温度/流量関係と称する)を記憶している。また、コントローラは、過去の劣化度の変化から、単位トリップ値当たりの過去の劣化度の増加率を算出し、算出された増加率を用いて劣化度が閾値に達するまでの予定トリップ値を推定する。そして、コントローラは、将来、予定トリップ値に到達したときに電力変換装置の温度と冷媒流量との関係が劣化時の温度/流量関係になるように、現在以降におけるトリップ値の増加に応じて、現在の「電力変換装置の温度に対する冷媒流量」を徐々に増加させる。
これにより、電力変換装置の温度に対する冷媒流量が、劣化時の温度/流量関係で規定されている冷媒流量に向かって徐々に増加する。運転者が同じ様に運転していても、劣化が進むと冷媒流量が増えることになるが(即ち、ポンプ出力が増加するが)、冷媒流量は徐々に増加するので、その変化に運転者は気付かないか、あるいは、気付いたとしても運転者が感じる違和感は小さいものになる。
劣化度の具体的な態様など、本明細書が開示する技術の詳細、及び、さらなる改良は、発明の実施の形態で説明する。
実施例のハイブリッド車の駆動系の構成例を示すブロック図である。 実施例のハイブリッド車の冷却システムの構成例を示すブロック図である。 冷却コントローラによる制御処理の概念を説明する説明図である。 スイッチング素子温度に対する冷媒流量特性(デューティ比特性)の例を示す説明図である。 冷却コントローラが実行する温度データ積算処理のフローチャートである。 冷却コントローラが実行するデューティ比増加率算出処理のフローチャートである。 冷却コントローラが実行する冷媒流量増加処理のフローチャートである。 図5−図7に示す各処理を一連に実行する場合のフローチャートである。 比較例によるデューティ比を増加させた場合を説明する説明図である。
図面を参照して実施例の電動車両を説明する。以下、電動車両の一例として、ハイブリッド車を例示して説明する。まず、本実施例のハイブリッド車2の構成を図1を参照して説明する。図1に、ハイブリッド車2の駆動系の構成例を表すブロック図を示す。
ハイブリッド車2は、走行用の駆動源として、モータ8とエンジン6を備えている。モータ8の出力トルクとエンジン6の出力トルクは、動力分配機構7で適宜に分配/合成されて出力される。動力分配機構7は、例えばプラネタリギアである。動力分配機構7は、エンジン6の出力軸6a及びモータ8のモータ軸8aから夫々伝達されて入力される動力を、所定比率で分配/合成して出力軸7aに出力する。動力分配機構7の出力は、さらに変速機9を介して駆動輪10a、10bに伝達される。変速機9は、動力分配機構7の出力軸7aから入力される回転を、選択された変速段に応じたギア比で変速してプロペラシャフト9aに出力し、デファレンシャルギヤ10を介して駆動輪10a、10bを駆動する。なお、図1では、本明細書の説明に要する部品だけを表しており、説明に関係のない部品は図示を省略していることに留意されたい。
モータ8を駆動するための電力はメインバッテリ3から供給される。メインバッテリ3の出力電圧は、例えば300ボルトである。なお、図示を省略しているが、ハイブリッド車2は、メインバッテリ3の他に、カーナビゲーション装置やルームランプ等、メインバッテリ3の出力電圧よりも低い電圧で駆動するデバイス群(通称「補機」と呼ばれる)に電力を供給するための補機バッテリも備える。後述するパワーコントロールユニット5(以下「PCU5」と称する)の大電流系回路を除く信号処理回路(PWM生成回路等)も補機の一種である。また、「メインバッテリ」との呼称は、「補機バッテリ」と区別するための便宜上のものである。
メインバッテリ3は、システムメインリレー4を介してPCU5に接続される。システムメインリレー4は、メインバッテリ3と車両の駆動系を接続したり切断したりするスイッチである。システムメインリレー4は、上位システムのHVコントローラ70により切り換えられる。
PCU5は、メインバッテリ3とモータ8の間に介在する電力変換装置である。PCU5は、メインバッテリ3の電圧をモータ8の駆動に適した電圧(例えば600ボルト)まで昇圧する電圧コンバータ20、昇圧後の直流電力を交流に変換するインバータ30、及び、電圧コンバータ20とインバータ30を制御するパワーコントローラ50を含む。インバータ30の出力がモータ8への供給電力に相当する。なお、PCU5では、後述する冷却システム11により、電圧コンバータ20やインバータ30を構成する電子部品等が常時冷却されている。
ハイブリッド車2は、エンジン6の駆動力を利用してモータ8で発電することもできる。また、ハイブリッド車2は、車両の運動エネルギ(制動時の車両の減速エネルギ)を利用してモータ8で発電することもできる。このような発電は「回生」と呼ばれている。モータ8が発電する場合、インバータ30が交流を直流に変換し、さらに電圧コンバータ20がメインバッテリ3よりも僅かに高い電圧まで降圧し、メインバッテリ3へ供給する。
電圧コンバータ20は、リアクトル21とIGBT等のスイッチング素子22、23とコンデンサ24を主とする回路である。このスイッチング素子22、23には、夫々、逆方向の電流をバイパスさせるためのダイオード(還流ダイオード)が逆並列に接続されている。本実施例では、これらのスイッチング素子22、23やその周辺回路は、パワーモジュールとしてパッケージ化されている。このようなパワーモジュールは、一般に、インテリジェントパワーモジュール(IPM)と称されることもある。電圧コンバータ20の高電圧側(即ちインバータ30の入力端又は出力端)には、インバータ30に入力される電流を平滑化するため、コンデンサ25が電圧コンバータ20と並列に接続されている。
インバータ30は、モータ8のU、V、Wの各相に対応してスイッチング動作を行うスイッチング素子31、32、33、34、35、36(以下、これらの符号は「31−36」と総称する)を主とする回路である。これらのスイッチング素子31−36にも、夫々電流バイパス用のダイオードが逆並列に接続されている。本実施例では、これらのスイッチング素子31−36やその周辺回路も、スイッチング素子22、23と同様に、パワーモジュールとしてパッケージ化されている。
パワーコントローラ50は、マイクロコンピュータ、メモリや入出力インタフェース等の電子部品で構成される情報処理装置である。このパワーコントローラ50には、電圧コンバータ20、インバータ30やHVコントローラ70が接続されている。本実施例では、パワーコントローラ50には、電圧コンバータ20やインバータ30を構成するスイッチング素子22、23、31−36の制御端子が接続されており、これらはパワーコントローラ50により制御される。
即ち、電圧コンバータ20やインバータ30は、パワーコントローラ50により生成されて供給されるPWM信号によって、昇圧したり、交流に変換したりするためのスイッチング動作を行う。パワーコントローラ50に接続されるHVコントローラ70には、運転者による操作情報として、例えば、アクセル開度情報やブレーキ踏力情報が入力される。そのため、各スイッチング素子の動作は、HVコントローラ70から入力されるアクセル開度等に応じた制御情報に従って行われる。
このように制御される電圧コンバータ20やインバータ30の各スイッチング素子22、23、31−36は発熱量が大きい。そのため、電圧コンバータ20のスイッチング素子22、23を含むパワーモジュールや、インバータ30のスイッチング素子31−36を含むパワーモジュールは、図2を参照して後述するPCUクーラ17により冷却される。
次に、電圧コンバータ20及びインバータ30を含むPCU5を冷却する冷却システム11の構成を図2を参照して説明する。図2に、ハイブリッド車2の冷却システム11の構成例を表すブロック図を示す。冷却システム11は、電動ポンプ14、リザーブタンク15、ラジエータ16、PCUクーラ17及びオイルクーラ18と、それらを一巡する冷却パイプ13を備える。冷却パイプ13に冷媒の冷却液80を循環させて、電圧コンバータ20及びインバータ30を含むPCU5やオイルクーラ18を冷却する。なお、図2においても、本明細書の説明に要する部品だけを表しており、説明に関係のない部品は図示を省略していることに留意されたい。
冷却液80は、例えばLLC(Long Life Coolant)である。冷却液80は、リザーブタンク15内に貯留されており、電動ポンプ14により圧送されて冷却パイプ13内を循環する冷媒である。冷却液80は水等の他の液体でもよい。冷媒であれば、液体に限られることはなく、空気等の気体でもよい。オイルクーラ18は、ポンプ93の圧送によりオイル冷却パイプ91内を循環するオイルによりトランスミション19を冷却する冷却装置である。トランスミッション19は、先に説明したモータ8と動力分配機構7を含むギアボックスである。モータ8や動力分配機構7は、オイル冷却パイプ91を循環するオイルにより冷却される。
電動ポンプ14は、モータにより内部のインペラを回転させてその遠心力によりポンプ内の冷却液を送出する機能を有する。このモータの駆動電力は、冷却コントローラ60によるオープンループでPWM制御されている。即ち、電動ポンプ14のモータを駆動する電圧はPWMによりデューティ比が制御されており、このデューティ比は、例えば、モータの回転数が所定の目標値に合致するようにフィードバック制御されることはなく、冷却コントローラ60により一方的に変更される。なお、本明細書及び図面において、デューティ比のことを単に「Duty」と表記することもある。
実施例では、冷却パイプ13を流れる冷却液80の流量を検出する流量センサ41、冷却液80の温度を検出する温度センサ43や、PCUクーラ17により冷却されるスイッチング素子22、24、31−36の温度を検出する温度センサ45a、45bを備えている。本実施例では、温度センサ45aは、電圧コンバータ20のスイッチング素子の温度を計測する。また、温度センサ45bは、インバータ30のスイッチング素子の温度を計測する。これらのセンサ41、43から出力される各データは、冷却コントローラ60に入力されて電動ポンプ14のPWM制御に用いられる。
電動ポンプ14を制御する冷却コントローラ60は、パワーコントローラ50と同様に、マイクロコンピュータ、メモリや入出力インタフェース等の電子部品で構成される情報処理装置である。冷却コントローラ60は、時計機能を備えており、後述するように、当該ハイブリッド車2が走行している期間(走行時間)を計測する。この冷却コントローラ60には、電動ポンプ14のほかに、前述した各センサ41、43、45a、45bや、上位システムのHVコントローラ70が接続されている。これにより、冷却コントローラ60は、前述したような電動ポンプ14のPWM制御を行っている。なお、この冷却コントローラ60のメモリには、後述する各処理のプログラムやデータテーブル等が記憶されている。冷却コントローラ60に接続されるHVコントローラ70には、ハイブリッド車2の運転情報として、例えば、車速情報も入力される。これにより、冷却コントローラ60は、アクセル開度情報の入力により当該ハイブリッド車2が走行を開始した情報が得られることに加えて、走行中である情報もHVコントローラ70から取得し得る。
PCU5の主たる冷却対象はスイッチング素子22、24、31−36である。それゆえ、冷却システム11は、スイッチング素子22、24の温度を計測する温度センサ45a、スイッチング素子31−36の温度を計測する温度センサ45bを備えている。冷却システム11の冷却コントローラ60は、スイッチング素子の温度に基づいてPCUクーラ17に供給する冷媒流量を制御する。スイッチング素子22、24、31−36はいずれもPCU5の主要部品であるので、以下では、温度センサ45aと45bを、PCU5の温度を計測する温度センサ45と総称するとともに、スイッチング素子22、24、31−36を包含する表現として、「PCU5」との表現を用いる。そのような表現を用いると、冷却システム11は、温度センサ45の計測温度に基づいてPCU5を冷却する、となる。冷却コントローラ60には、PCU5の温度に応じた冷媒流量のデータ(温度/流量関係)が記憶されている。冷却コントローラ60は、そのデータを参照して温度センサ45の計測値から冷媒流量を決定し、その冷媒流量が実現されるように電動ポンプ14を制御する。なお、後述する劣化(劣化度)とは、主にスイッチング素子(あるいはスイッチング素子を封止したパワーモジュール)の熱抵抗の増加を意味するが、上記と同様に、「PCU5の劣化(劣化度)」との表現を用いる。「温度上昇率」も同様に、狭義にはスイッチング素子(あるいはパワーモジュール)の温度上昇率のことであるが、包括的には、「PCU5の温度上昇率」のことである。
冷却コントローラ60には、車両出荷時の温度/流量関係が予め記憶されている(初期の温度/流量関係)。この初期の温度/流量関係は、様々な理由により、後述する劣化度以外の理由により、車両の使用中に変更されることがある。以下では劣化度に基づく温度/流量関係の変更の処理を説明するが、説明の便宜上、変更前の温度/流量関係を、現在の温度/流量関係と称する。
また、冷媒流量は、電動ポンプ14の出力と一意の関係にある。そして、電動ポンプ14の出力は、前述したように電動ポンプ14に与えるPWM信号のデューティ比で定まる。即ち、本実施例においては、冷媒流量と、電動ポンプ14に与えるデューティ比は、等価の関係にある。
ところで、スイッチング素子22、23、31−36を含むPCU5(電力変換装置)は、[発明が解決しようとする課題]の欄で述べたように、経時的に熱抵抗が増大し、同じ出力電流に対する温度上昇率が増加する。このことを劣化と称する。走行時間の累積に対するPCU5の劣化の度合いは、車両毎に異なる。これは、運転者の運転特性(粗い運転、おとなしい運転)によって、電圧コンバータ20やインバータ30に加わる負荷に差があるからである。
劣化が進行すると、PCU5の温度上昇率が増加するため、PCU5の温度に対して、初期の温度/流量関係(現在の温度/流量関係)に基づく冷媒流量をPCUクーラ17に供給するだけでは、PCU5を充分に冷却できなくなる虞が生じる。
そこで、本実施例では、冷却コントローラ60の制御処理において、走行時間の経過に伴うPCU5の温度変化からPCU5の劣化度を算出し、予め定められた劣化ポイントCp(閾値)にPCU5の劣化度が将来到達した場合に、PCU5の劣化度(即ち、劣化ポイントPc)に適合した冷媒流量を循環させるように、PCU5の温度に対して電動ポンプ14に与えるPWM信号のデューティ比を徐々に増加させるようにした。
このような冷却コントローラ60による制御処理の概念を図3及び図4を参照して説明する。図3(A)に、走行時間の累積に伴う温度差ΔT(後述)の変化の例を示し、図3(B)に、温度差ΔTの積算値の変化の例を示す。また、図4に、PCU5の温度に対する冷媒流量特性(デューティ比特性)の例を示す。
温度差ΔTは、PCU5の温度と基準温度との差である。従って、図3(A)に示すように、縦軸のゼロ点(横軸との交点における縦軸の値)は、基準温度となる。基準温度は予め定められており、本実施例では、車両外気の温度に定められている。図3(A)において温度差ΔTの最低値が基準温度であるのは、PCU5が停止してしばらく経過すると外気温度と同温度になるからである。また、図3(A)、図3(B)の横軸は、走行時間を表している。
なお、繰り返すが、「PCU5の温度」は、狭義には、スイッチング素子22、23、31−36の温度(あるいはそれらをパッケージしたパワーモジュールの温度)である。
前述したように、PCU5(スイッチング素子22、23、31−36)は、ハイブリッド車2のモータ8に駆動電力を供給するため、走行中には発熱するが、停車中には発熱しない。そのため、数十時間以上に亘る経時変化で捉えると、所定周期で発熱と冷却を繰り返す発熱パターンになり易い。図3(A)に示す例では、例えば、24時間周期Tn(n=1、2、3、…)で、一定の発熱パターンを繰り返す。なお、同図には発熱パターンとしてほぼ同一形状のものが描かれているがこれは作図上の都合によるものであり、必ずしもこのようなほぼ同一の発熱パターンになるわけではない。
PCU5の発熱パターンは、このように所定周期で発熱と冷却を繰り返す発熱パターンになり易い。そのため、PCU5の計測温度と基準温度との差(温度差ΔT)を積算することにより、図3(B)に示すように、階段状に一定割合で増加するΔTの積算値ΣTが得られる。なお、図3(B)では現在時刻を符号Ctで表している。現在時刻Ctまでの積算値の走行時間に対する変化から、期間T4〜T6等において破線で表したように、積算値ΣTの将来の増加傾向を推定することが可能になる。
積算値ΣTは、PCU5に加わる熱負荷の総量に相当する。積算値ΣTが増加するにつれて、前述したように、PCU5の熱抵抗が増加し、同じ出力に対する温度上昇率が増加する。即ち、積算値ΣTの増加はPCU5の劣化度を表す。
つまり、本実施例では、このような積算値ΣTをPCU5の劣化度として採用する。そして、予め、劣化度に所定の閾値(劣化ポイントCp)が設定されている。この閾値(劣化ポイントCp)は、劣化度がその値に達すると、PCU5の各温度に対する冷媒流量(すなわち、現在の温度/流量関係)を所定の値まで増加させないと、PCU5の各スイッチング素子の性能が低下すると予想される値に設定される。劣化ポイントPcは、PCU5の各デバイスの設計寿命や、実験、又はコンピュータシミュレーションなどにより予め定められる。さらに、劣化度(ΔTの積算値ΣT)が劣化ポイントCpに達したときに採用すべきPCU5の温度に対する冷媒流量の関係(劣化時の温度/流量関係と称する)も、設計寿命等から予め定められる。劣化ポイントCpと、劣化時の温度/流量関係も、冷却コントローラ60に記憶されている。
ΔTの積算値ΣT(劣化度)が劣化ポイントCpに達した時に、冷却コントローラ60がPCU5の温度から冷媒流量(デューティ比)を決定する際に参照するデータを、初期の温度/流量関係から、劣化時の温度/流量関係に切り換えれば、PCU5の性能低下を抑制することができる。しかし、劣化度が劣化ポイントCpに達したときに一気に初期の温度/流量関係から劣化時の温度/流量関係に切り換えると、同じ運転状態でも電動ポンプ14の出力が一気に増加し、車両のNV特性(騒音振動特性)が顕著に変化してしまい、運転者(及び乗員)に違和感を与える虞がある。
そこで、冷却コントローラ60は、過去に算出された走行時間に対するΔTの積算値ΣT(劣化度)の変化から、単位走行時間当たりの劣化度の増加率を算出し、その増加率に基づいて、将来的に劣化度が劣化ポイントCpに達するまでの走行時間(予定走行時間)を推定する。そして、冷却コントローラ60は、将来、劣化度が劣化ポイントCpに達したときに、デューティ比算出の際に参照する温度/流量関係が劣化時の温度/流量関係となるように、現在以降における走行時間の増加に応じて、デューティ比算出の際に参照する現在の温度/流量関係を徐々に増加させる。
なお、前述したように、本実施例では、冷媒流量は電動ポンプ14に与えるPWM信号のデューティ比に等価である。そこで、「現在の温度/流量関係」及び「劣化時の温度/流量関係」を、夫々、「現在のデューティ比特性」及び「目標デューティ比特性」と称する。冷却コントローラ60は、PCU5の温度に対して定まるデューティ比特性が、劣化度が閾値(劣化ポイントCp)に達すると予定される走行時間において目標デューティ比特性となるように、現在のデューティ比特性の各デューティ比の値を徐々に増加させる。図4の一点鎖線が、デューティ比特性の増加レートを模式的に表している。
冷却コントローラ60が実行するデューティ比増加のアルゴリズムを具体的に説明する。冷却コントローラ60は、そのメモリに記憶されているPCU5の温度に対するデューティ比特性のテーブルを変更する。デューティ比特性のテーブルは、例えば、図4に示すものが例示される。図4に示すPCU温度に対する冷媒流量特性(デューティ比特性)は、横軸がPCU温度を表しており、左側の縦軸が冷媒流量を表している。先に述べたように、電動ポンプ14に与えるPWM信号のデューティ比と冷媒流量との間には一意の関係があり、図4において、符号H、I、J、K、L、Mは、夫々、決まったデューティ比を表している。また、太実線は、「現在のデューティ比特性」(現在の温度/流量関係)を示している。「現在のデューティ比特性」では、PCU温度がTaまでは、デューティ比Iで電動ポンプ14を駆動し、PCU温度がTaからTbまでは、デューティ比Jで電動ポンプ14を駆動し、PCU温度がTb以上であれば、デューティ比Lで電動ポンプ14を駆動する。太破線は、「目標デューティ比特性」(劣化時の温度/流量関係)を示している。「目標デューティ比特性」では、PCU温度がTaまでは、デューティ比Kで電動ポンプ14を駆動し、PCU温度がTaからTbまでは、デューティ比Lで電動ポンプ14を駆動し、PCU温度がTb以上であれば、デューティ比Mで電動ポンプ14を駆動する。
「現在のデューティ比特性」(図4の太実線)に基づいて電動ポンプ14を駆動しつつ走行しているときに、劣化度が劣化ポイントCpに到達したときに一気に「目標デューティ比特性」(図4の太破線)に変更すると、PCU5の温度に対する電動ポンプ14の出力特性が著しく変わってしまい、運転者に違和感を与えてしまう。そこで、冷却コントローラ60は、劣化度が劣化ポイントに到達すると予想される走行時間に至るまでに、電動ポンプ14を駆動するためのデューティ比特性を、「現在のデューティ比特性」(図4の太実線)から「目標デューティ比特性」(図4の太破線)に徐々に増加させていく。
次に、このような冷却コントローラ60による制御処理について、図5〜7を参照して説明する。これらの図には、冷却コントローラ60が実行する各情報処理のフローチャートが図示されている。図5に温度データ積算処理のフローチャートを示す。図6にデューティ比増加率算出処理のフローチャートを示す。図7に冷却液流量増加処理のフローチャートを示す。なお、これらの各処理は、以下説明するように、冷却コントローラ60により所定の起動タイミングで個々に実行される。
<温度データ積算処理>図5に示す温度データ積算処理は、ハイブリッド車2の走行中におけるPCU5の温度(温度差ΔT)を積算するものであり、ハイブリッド車2が走行を始めた直後から走行している期間において、例えば1分毎に行われる。ハイブリッド車2が走行を開始した情報や走行中である情報は、例えば、上位のHVコントローラ70から冷却コントローラ60に入力されて、当該温度データ積算処理が起動される。
まずステップS11により温度データ取得処理が行われる。この処理では、PCU5の温度データを温度センサ45から取得する。続いてステップS13により温度差ΔT算出処理が行われる。この処理では、ステップS11により取得した温度データによる温度と、予め定められた基準温度との差ΔTを求める。基準温度は、例えば、先に述べたように、ハイブリッド車2の外気温である。外気温データは、例えば、車内LANを介して上位のHVコントローラ70に入力される。そのため、冷却コントローラ60は、これをHVコントローラ70から取得する。
次のステップS15では、温度差ΔTの積算処理が行われる。この処理は、前回の図5の処理で得られたΣTを冷却コントローラ60のメモリから読み出した後、その積算値ΣTに今回の温度差ΔTを加え、新たなΣTを求める。また、ハイブリッド車2が走行している期間(走行時間)も積算される。この走行時間は、冷却コントローラ60の時計機能を用いて算出する。即ち、冷却コントローラ60は、車両のメインスイッチ(いわゆるIGスイッチ)がONを保持している時間を時計機能を使って計測する。これにより、前述の劣化度として、温度差ΔTの新たな積算値ΣTとそのときの走行時間が得られる。新たな積算値ΣTは、続くステップS17により、そのときの走行時間と対応付けられメモリに記憶される。即ち、メモリには、走行時間毎の積算値ΣTが記憶される。図3(B)は、メモリに記憶された走行時間毎の積算値ΣTをグラフ化したものである。温度データ積算処理では、ハイブリッド車2の走行中に、このような一連の情報処理を所定周期で繰り返し行う。これにより、劣化度としての温度差ΔTの積算値ΣTが走行時間毎に記録され、冷却コントローラ60のメモリに蓄積される。なお、先に述べたように、積算値ΣTが劣化度に相当する。
<デューティ比増加率算出処理>図6に示すデューティ比増加率算出処理は、電動ポンプ14の駆動電圧として制御されるPWMのデューティ比の増加率を求めるものであり、例えば、ハイブリッド車2の走行時間が24時間に達する毎に行われる。ハイブリッド車2が走行中である情報は、前述したように上位のHVコントローラ70から得られる。
まずステップS21により積算値ΣT取得処理が行われる。この処理では、冷却コントローラ60のメモリに記憶されている温度差ΔTの積算値ΣTを読み出す。この積算値ΣTは、前述したように温度データ積算処理により当該メモリに記憶されたものであるが、後述するデューティ比上昇レートを算出するために必要なデータ量に満たない場合がある。例えば、当該ハイブリッド車2の走行時間が短い場合等である。そのため、続くステップS23により所定データ量以上であるか否かを判定する。
ステップS23により所定データ量以上であると判定された場合には(S23;YES)、ステップS25により劣化度増加率算出処理が行われる。これに対して、ステップS23により所定データ量以上でないと判定された場合には(S23;NO)、デューティ比の増加率を得ることができないため、ステップS24によりフラグFに「0」を設定した後、本デューティ比増加率算出処理を終了する。フラグFは、後述する冷却液流量増加処理の実行を制御する情報で、このフラグFに「1」が設定されている場合に同処理が実行される。
ステップS25による劣化度増加率処理では、前述した劣化度の増加率、即ち温度差ΔTの積算値ΣTが単位走行時間当たりに増加するその割合を求める。例えば、積算値ΣTをその積算に要した走行時間で割ることにより求められる。続くステップS26では、劣化ポイントCp(図3(B)参照)に到達するまでの予定走行時間を算出する。即ち、ステップS25により算出した劣化度の増加率に基づいて、将来、劣化ポイントCpに到達するまでに走行するであろう時間(予定走行時間)を求める。劣化ポイントCpは、例えば、スイッチング素子31−36の設計寿命(温度ストレスによる故障の発生)や、実験又はコンピュータシミュレーション等により予め定められる。
次のステップS27では、デューティ比上昇レート算出処理が行われる。この処理は、温度差ΔTの積算値ΣTが劣化ポイントCpに将来到達した場合に冷却コントローラ60が電動ポンプ14に出力する電圧のデューティ比特性を、目標デューティ比特性まで増加させるのに必要な増加割合(デューティ比増加率)を求めるものである。別言すれば、予定走行時間に到達したときにデューティ比特性が目標デューティ比特性となるようにこれからの単位走行時間当たりに増加すべきデューティ比の割合(デューティ比増加率)を求める。図3(B)及び図4を参照して説明したように、温度差ΔTの積算値ΣTが劣化ポイントCpに到達した時点において、スイッチング素子温度に対する目標デューティ比特性(図4の太破線)のカーブの上昇が完了するように、デューティ比の増加率を算出する。
例えば、現在のデューティ比特性を目標デューティ比特性から減算した結果を、ステップS26により算出した予定走行時間から現在の走行時間を引いた値で除算することによって、単位走行時間当たりのデューティ比増加率X[%/時間]が求められる。これにより、次に説明する冷媒流量増加処理においてデューティ比を増加させることが可能になる。そのため、続くステップS29によりフラグFに「1」を設定して本デューティ比増加率算出処理を終了する。
<冷媒流量増加処理>図7に示す冷媒流量増加処理は、前述したデューティ比増加率算出処理においてデューティ比増加率が求められていること(フラグFに「1」が設定されていること)を前提に、所定周期で実行される。この所定周期は、少なくとも劣化ポイントCpに到達する予定走行時間までに、冷媒流量増加処理によるデューティ比の増加が完了するように設定される。
まずステップS31によりデューティ比特性のテーブル読出処理が行われる。この処理では、冷却コントローラ60のメモリに記憶されているPCU温度に対するデューティ比特性のテーブルを読み出す。このテーブルは、前述したようにPCU温度に対する冷却液80の流量特性を表すものであるが、このテーブルは同時にデューティ比特性も表しており、冷却コントローラ60は、このテーブルに基づいて、電動ポンプ14に出力する電圧のデューティ比制御を行う。そのため、このテーブルをメモリから読み出すことにより、次のステップS33によるデューティ比の増加を可能にする。
ステップS33ではデューティ比増加処理が行われる。この処理は、前述したデューティ比増加率算出処理により求められたデューティ比増加率と、本冷媒流量増加処理が実行される所定周期と、に基づいて算出されるデューティ比の増加分だけ、前述のテーブル全体のデューティ比を増加させる。例えば、24時間毎に冷媒流量増加処理を実行する場合には、単位走行時間当たりのデューティ比増加率X[%/時間]に24を乗算した24X[%]だけ、前述のテーブルにより表されるPCU温度に対するデューティ比特性のカーブ全体のデューティ比を増加させる。
続くステップS35では、増加させたテーブル全体のデューティ比特性が目標値に到達したか否かを判定する処理が行われる。即ち、図3(B)及び図4を参照して説明したように、テーブル全体のデューティ比特性のカーブの上昇が目標デューティ比特性まで達したか否かを判定する。目標デューティ比特性(図7では「目標値」と記されてる)に到達している場合には(S35;YES)、これ以降はテーブル全体のデューティ比を増加させる必要がない。そのため、次のステップS37によりフラグFに「0」を設定した後、本デューティ比増加処理を終了する。これに対して、目標デューティ比特性に到達していない場合には(S35;NO)、次回もテーブル全体のデューティ比を増加させる必要があるため、フラグFに「0」にすることなく本デューティ比増加処理を終了する。
以上説明した、本実施例のハイブリッド車2の冷却コントローラ60の処理をまとめると以下の通りである。冷却コントローラ60は、温度データ積算処理(図5)により、PCU5の温度データを取得する(S11)。次に、冷却コントローラ60は、基準温度との差ΔTを積算し(S15)、その積算値ΣTをメモリに記憶する(S17)。次に、冷却コントローラ60は、デューティ比増加率算出処理(図6)により、過去に算出された劣化度の変化(走行時間の経過に対する劣化度の変化)として、メモリから積算値ΣTを読み出して(S21)、単位走行時間当たりの過去の劣化度の増加率として、劣化度増加率を算出する(S25)。冷却コントローラ60は、劣化度増加率を用いて劣化度が劣化ポイントCp(閾値)に達するまでの予定走行時間を推定する(S26)。また、冷却コントローラ60は、デューティ比上昇レート(デューティ比増加率)を算出する(S27)。冷却コントローラ60は、冷媒流量増加処理(図7)により、将来、予定走行時間に到達したときに、PCU5の温度に対するPCUクーラ17に流れる冷却液80の流量の関係が、目標デューティ比特性のテーブル(例えば図4に示す太破線)になるように、現在以降における走行時間の増加に応じてPCU5の温度に対応した冷却液80の流量を増加させる(S33)。
これにより、将来至るであろうPCU5の劣化の度合いに適合して冷却液80の流量が目標デューティ比特性のテーブル(例えば図4に示す太破線)に徐々に近づく。そのため、PCU5の劣化の度合いに関係なく一律に冷却液80の流量を設定している場合に比べて、個々の劣化の度合いに合わせて冷却液80の流量が設定されるので、PCUクーラ17による冷却効率が向上する。
また、過去の劣化度の増加率を用いて劣化度が閾値に達するまでの予定走行時間を推定して、現在以降における走行時間の増加に応じてPCU5の温度に対応した冷却液80の流量を増加させる。つまり、PCU5の温度の上昇に伴って冷却液80の流量を急激に増加させるのではなく、劣化度が劣化ポイントCp(閾値)に達するその時間に到達するまでに時間をかけて徐々に冷却液80の流量を増加させる。そのため、冷却液80の流量が増加することによって、例えば、冷却液80を圧送する電動ポンプ14の振動や騒音が増えたとしても、そのことを運転者や乗員に気付かれ難い。
なお、このような温度データ積算処理(図5)、デューティ比増加率算出処理(図6)及び冷媒流量増加処理(図7)を一連に情報処理する場合には、図8に示すようなフローチャートになる。このフローチャートによる情報処理では、ステップS19において24時間経過したか否かを判定し、経過していないときには(S19;NO)、再度、ステップS10により温度データ積算処理を行う。そのため、当該ハイブリッド車2の走行時間が24時間に達するまでステップS10の温度データ積算処理が行われる。また、ステップS29による判定処理は、デューティ比増加率算出処理においてデューティ比増加率が求められていること(フラグFに「1」が設定されていること)を前提に、ステップS30の冷媒流量増加処理を行うためのものである。
また、図9に示すように、他の方法として、PCU5の劣化度合いに合わせて温度差ΔTの積算値ΣTを判定する閾値を複数段階(判定閾値Tha、Thb、Thc、Thd)設けて、それに基づいて、徐々にデューティ比を上げる方式がある。図9は、図3(B)に相当する説明図であり、比較例によるデューティ比を増加させた場合を説明するものである。しかしこのような方式では、一点鎖線で表すように、デューティ比が階段状に上昇する。そのため、運転者の運転特性の違いにより図9(A)や図9(B)に示すようにデューティ比の変更時間に差が生じるが、いずれの場合においてもデューティ比が急峻に立ち上がるように変更される。特に、図9(B)に示すように、温度差ΔTの積算値ΣTが急激に増加する場合においては、それが短期間に複数回表れるため、運転者によってはNV特性の変化による違和感を与え得る。つまり、NV特性の変化を気づかれ易い。これに対して、本実施例では、図3(B)において一点鎖線(デューティ比上昇レート)で表すように、デューティ比の変化が階段状になることなく直線状を成すように時間をかけて変更する。これにより、運転者にNV特性の変化を気づかれ難くしている。
なお、本実施例では、PCU5の劣化度として、予め定められた基準温度として、外気温とPCU5の温度との差ΔTを積算し、その積算値ΣTを劣化度にしたが、基準温度は、外気温以外であってもよい。外気温は、時々刻々変化するものであるが、基準温度は固定値であってもよい。基準温度は、例えば、一年を通じての平均気温であったり、季節毎や地域毎に予め定められた温度であってもよい。
また、PCU5の温度を計測する温度センサ45a、45bは、PCUクーラ17を流れる冷媒の温度を計測するものであってもよい。即ち、PCUクーラ17を流れる冷媒の温度をPCU5の温度(電圧コンバータ20の温度とインバータ30の温度)の近似値として用いてもよい。冷媒が水の場合には、PCUクーラ17を流れる水の温度(水温)を、PCU5の温度の近似値として用いてもよい。
また、PCU5の劣化度として、PCU5のスイッチング素子23、24、31−36が出力する電流の単位電流当たりに対するPCU5の温度上昇率を用いてもよい。
また、本実施例では、ハイブリッド車2の走行時間に基づいて上述した各情報処理を行ったが、ハイブリッド車2の走行距離に基づいて上述の各情報処理を行ってもよい。走行距離に基づく場合には、上記の説明と図における「走行時間」を単純に「走行距離」に置き換えれば説明が成立する。以下では、走行時間と走行距離の一方を「トリップ値」と称する。
「トリップ値」という表現を使って実施例の技術をまとめると次の通りである。実施例のハイブリッド車2(電動車両)は、PCU5と、冷却システム11と、冷却コントローラ60を備えている。PCU5は、スイッチング素子を使って走行用モータに供給する電力を生成する。冷却システム11は、PCU5に冷媒を循環させてPCU5を冷却する。冷却コントローラ60は、走行時間又は走行距離の一方であるトリップ値を計測するとともに、そのトリップ値に対するPCU5の温度変化からPCU5の劣化度を算出し、劣化度とPCU5の温度に基づいて冷却システム11により循環させる冷媒流量を制御する。冷却コントローラ60は、次のステップにより、PCU5の温度と冷媒流量の関係を調整する。冷却コントローラ60は、劣化度が予め定められた閾値(劣化ポイントCp)に到達した場合におけるPCU5の温度と冷媒流量との関係(劣化時の温度/流量関係)を記憶している。冷却コントローラ60は、過去の劣化度の変化から、単位トリップ値当たりの過去の劣化度の増加率を算出する。冷却コントローラ60は、算出された増加率を用いて、現時点から劣化度が閾値に達するまでの予定トリップ値を推定する。冷却コントローラ60は、将来、予定トリップ値に到達したときにPCU5の温度と冷媒流量との関係が、劣化時の温度/流量関係になるように、現在以降におけるトリップ値の増加に応じてPCU5の温度に対する冷媒流量を徐々に増加させる。
また、劣化度の典型は、PCU5の温度から予め定められた基準温度を引いた温度差のトリップ値の経過に対する積算値(実施例のΣT)である。基準温度は、車両の外気温に基づいて予め定められる。基準温度は、そのときの外気温など、時々刻々変化するパラメータとして予め定められているものであってもよい。
実施例の技術は、劣化度、即ち、PCU5(スイッチング素子)の出力に対する温度上昇率の経時的な増加を、PCU5(スイッチング素子)の温度から基準温度を引いた温度差の積算値を指標として評価する点にも特徴がある。そのような指標を採用することで、運転者の特性(粗い運転、おとなしい運転など)に応じて、PCU5(スイッチング素子)を冷却するための冷媒流量を適切に調整することができる。また、PCU5(スイッチング素子)の出力に対する温度上昇率は、図4のPCU温度と冷媒流量の関係と本質的に等価である。なぜならば、図4のグラフは、出力に対する温度上昇率を考慮した上で、PCU5の温度が適正範囲に収まるように流量が定められているからである。
実施例技術に関する留意点を述べる。モータ8が走行用モータの一例に相当する。複数のスイッチング素子を含むPCU5が電力変換装置の一例に相当する。冷却液80が冷媒の一例に相当する。冷却パイプ13、電動ポンプ14、リザーブタンク15及びPCUクーラが、冷却装置の一例に相当する。冷却コントローラ60がコントローラの一例に相当する。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:ハイブリッド車
3:メインバッテリ
5:PCU(電力変換装置)
6:エンジン
7:動力分配機構
8:モータ
10:デファレンシャルギヤ
10a、10b:駆動輪
11:冷却システム
13:冷却パイプ
14:電動ポンプ
15:リザーブタンク
17:PCUクーラ
18:オイルクーラ
19:ドライブトレイン
20:電圧コンバータ
22、23、31−36:スイッチング素子
30:インバータ
41:流量センサ
43:温度センサ
45a、45b:温度センサ
50:パワーコントローラ
60:冷却コントローラ
70:HVコントローラ
80:冷却液

Claims (1)

  1. スイッチング素子を使って走行用モータに供給する電力を生成する電力変換装置と、
    前記電力変換装置に冷媒を循環させて前記電力変換装置を冷却する冷却装置と、
    走行時間又は走行距離の一方であるトリップ値を計測するとともに、当該トリップ値に対する前記電力変換装置の温度変化から当該電力変換装置の劣化度を算出し、当該劣化度と当該電力変換装置の温度に基づいて前記冷却装置により循環させる冷媒流量を制御するコントローラと、を備えており、
    前記コントローラは、
    前記劣化度が予め定められた閾値に到達した場合における前記電力変換装置の温度と前記冷媒流量との関係(以下、劣化時の温度/流量関係と称する)を記憶しており、
    過去の劣化度の変化から、単位トリップ値当たりの前記過去の劣化度の増加率を算出し、
    算出された前記増加率を用いて、現時点から前記劣化度が前記閾値に達するまでの予定トリップ値を推定し、
    将来、前記予定トリップ値に到達したときに前記電力変換装置の温度と前記冷媒流量との関係が前記劣化時の温度/流量関係になるように、現在以降におけるトリップ値の増加に応じて前記電力変換装置の温度に対応した前記冷媒流量を徐々に増加させる、
    ことを特徴とする電動車両。
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