JP2016046375A - 発光装置の調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡素な構成で短パルス幅の発光を行う。
【解決手段】光源101、微分回路102およびスイッチ103を直列に接続する。スイッチ103をONにすると、微分回路102を構成するコンデンサ102bに突入電流が流れ、それに応じて光源に電流が流れて発光が行われる。コンデンサ102bが充電されると、抵抗102aに電流が流れ、抵抗102aで電圧降下が生じることで、光源101に加わる電圧が低下し、発光が停止する。この現象が生じるように抵抗102aとコンデンサ102bの値を調整する。
【選択図】図3

Description

本発明は、パルス発光を行う発光装置の調整方法に関する。
レーザ光を用いた距離の測定や各種の加工等を行う技術において、パルス幅が数十〜数百ピコ秒以下といった短パルスのものが求められている。例えば、パルスレーザ光を用いた距離の測定において、パルス幅が狭いパルス光を用いることで測距精度を高めることができる。パルス幅の狭いレーザ光を生成する技術として特許文献1等に記載された技術が知られている。
特公平7−109911号公報 特開昭55−107282号公報 特開2002−368329号公報
図1には、LD(レーザダイオード)における駆動電流と出力光との関係が示されている。図1に示すように、LDに駆動電流を流すと、最初にパルス状の発光が生じ、この発光の振幅が振動しつつ徐々に小さくなり、最終的に一定強度の発光が生じる現象が見られる。この現象は、半導体レーザ全般に見られる。上記の発光初期に見られる徐々に収まる発光強度の振動は緩和振動と呼ばれている。
短いパルス幅の発光をさせたい場合、図2に示すように時間間隔の短い駆動電流を流し、最初のパルス発光のみを行わせる手法が用いられる。しかしながら、数十〜数百ピコ秒オーダの時間幅を持った駆動電流を簡易な回路で生成することは難しい。
例えば、200MHz程度の周波数の正弦波や矩形波は、市販のICを用いて容易に得ることができる。しかしながら、たとえば100MHzの高周波の周期が10−8秒(10ナノ秒=10000ピコ秒)であることからも分かるように、数十〜数百ピコ秒オーダの時間幅を持ったパルス状の駆動電流を得ることは容易なことではない。
マイクロウェーブ帯の高周波技術を用いて数十〜数百ピコ秒オーダの時間幅を持ったパルス状の駆動電流を得ることができる。例えば、YIG共振器を用いた発振器により数十GHzの信号を得ることができ、この技術を利用することで、数十〜数百ピコ秒オーダの時間幅を持ったパルス状の駆動電流を得ることができる。しかしながら、マイクロウェーブ帯の高周波技術は、回路規模、コスト、調整の煩雑さ、消費電力の多さといった点で、例えば、野外で用いる測距装置等への利用には適していない。
このような背景において、本発明は、簡素な構成で短パルス幅の発光が行える技術の提供を目的とする。
請求項1に記載の発明は、発光駆動のための通電直後に緩和振動が発生する光源と、通電直後において低いインピーダンスである容量性リアクタンス特性回路部および通電後所定時間経過以後に前記容量性リアクタンス特性回路部に充電された電荷を放電するレジスタンス特性回路部が並列接続されている微分回路と、スイッチング素子とを備え、前記光源と前記微分回路とは直列に接続され、前記スイッチング素子は、前記光源および前記微分回路に対する電圧印加のON/OFFを行うスイッチである発光装置の調整方法であって、前記容量性リアクタンス特性回路部および前記レジスタンス特性回路部の特性を、前記緩和振動における一部の発振を得られる特性に調整することを特徴とする発光装置の調整方法である。
発光駆動のための通電直後に緩和振動が発生するという現象はレーザの一般的な特性として知られており、特にこの現象を容易に実現できる光源として半導体レーザ(LD)が挙げられる。通電直後において低いインピーダンスである容量性リアクタンス特性回路部は、電荷を蓄積する機能を有し、電荷を蓄積する際に突入電流が生じる特性を有する。容量性リアクタンス特性回路部としては、コンデンサ素子が挙げられる。コンデンサ素子の代わりに、配線や導体パターン間の容量を用いることもできる。
通電後所定時間経過以後に容量性リアクタンス特性回路部に充電された電荷を放電するレジスタンス特性回路部としては、各種の抵抗素子、配線を用いた抵抗体、各種の導体や半導体を用いた抵抗体を挙げることができる。レジスタンス特性回路部の電圧―電流特性は、線形でなくてもよい。例えば、レジスタンス特性回路部として、ダイオード等の非線形素子やバイアスを適切に設定したFET等の三端子素子を用いることもできる。
スイッチング素子は、回路のON/OFF、すなわち導通と非導通を選択できる素子である。スイッチング素子としては、バイポーラトランジスタやFET等の半導体スイッチを挙げることができる。また、スイッチング素子として、スイッチ機能を有したICを用いることもできる。スイッチング素子として、閾値以上の電圧が加わった際に非導通状態から導通状態に移行する2端子素子を用いることもできる。この場合、電源電圧を変化させることでON/OFFの制御が行われる。光源と微分回路との直列接続は、直接に接続されている形態の他に、間に他の回路やデバイスが介在している構成も可能である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記容量性リアクタンス特性回路部は、通電直後に前記光源に発振閾値電流以上の電流が流れる容量値および/またはインピーダンスであって、さらに光源の発光が定常状態の発振に到達しない程度の電流が流れる容量値および/またはインピーダンス内で調整されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記レジスタンス特性回路部は、前記光源の発振閾値電流とほぼ等しく光源が発光しない程度の抵抗値以上であって、かつ抵抗で発生する電圧降下と電源電圧との差が、光源順方向電圧と等しい程度となる抵抗値以下に調整されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記発光のピーク値を大きくする場合は前記容量性リアクタンス特性回路部の容量を大きくし、前記レジスタンス特性回路部の抵抗値を小さく調整し、前記発光のピーク値を小さくする場合は前記容量性リアクタンス特性回路部の容量を小さくし、前記レジスタンス特性回路部の抵抗値を大きく調整することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記容量性リアクタンス特性回路部および前記レジスタンス特性回路部の特性は、前記緩和振動の最初の振動のみの発光が行われる特性に調整されることを特徴とする。
本発明によれば、簡素な構成で短パルス幅の発光が行える技術が得られる。
レーザダイオード(LD)における駆動電流と発光強度との関係を示す図である。 レーザダイオード(LD)における駆動電流と発光強度との関係を示す図である。 実施形態の発光装置のブロック図と回路図である。 実施形態の回路図と各部の電圧の変化を示すグラグ(a)〜(c)である。 微分回路の動作を説明する概念図である。 発光波形を示す図面代用写真(a)および(b)である。 発光波形を示す図面代用写真である。 発光波形を示す図面代用写真である。 実施形態の回路図(a)および(b)である。 実施形態の回路図(a)、(b)および(c)である。 実施形態のブロック図である。 発光波形を示す図面代用写真である。 発光波形を示す図面代用写真である。 発光波形を示す図面代用写真である。 実施形態の発光装置のブロック図(A)および(B)である。 実施形態の発光装置のブロック図である。
1.第1の実施形態
(構成)
図3には、実施形態の発光装置のブロック図(A)と回路図(B)が示されている。図3には、発光装置100が示されている。発光装置100は、光源101、微分回路102、スイッチ103が直列に接続され、この直列接続された両端に電源電圧Vが加えられている。この例において、光源101は、レーザダイオード(LD)であり、微分回路102は、抵抗R(102a)とコンデンサC(102b)を並列に接続した回路であり、スイッチ103は、FETである。
回路定数としては、一例であるが、電源電圧5V、抵抗102aの抵抗値として200オーム、コンデンサ102bの容量として20pF、制御信号として周波数が数十MHz程度を上限とした矩形波を用いる例が挙げられる。
(動作)
FETがOFF(ソース・ドレイン間が非導通)の状態において、光源101と微分回路102には、電圧Vは加わらず、光源101は発光しない。制御信号をFETのゲート電極に加え、スイッチ103をONにすると、コンデンサ102bに電荷が流れ込み、突入電流が生じ、光源101に駆動電流が流れる。この駆動電流により、光源101が発光する。
そして、コンデンサ102bに電荷が溜まってゆくと、突入電流が急激に減少する。コンデンサ102bへの突入電流の減少に対応して、抵抗102bに流れる電流が増加する。コンデンサ102bへの電荷の充電が終了すると、コンデンサ102bに流れ込む電流が止まり、抵抗102aに流れる電流と光源101に流れる電流とが同じ値となる。
ここで、コンデンサ102bへの充電時間(突入電流が流れる時間)が図2のΔtとほぼ同じ値となるように、電源電圧(-V)の値、およびコンデンサ102bと抵抗102aの値が設定されている。また、コンデンサ102bに突入電流が流れなくなった段階において抵抗102aで電圧降下が生じ、この電圧降下により光源101に加わる電圧が低下するが、この電圧低下により光源101の発光が停止するように抵抗102aの値およびその他のパラメータの値が選択されている。あるいは、コンデンサ102bに突入電流が流れなくなった段階で抵抗102aに電流が流れ、抵抗102aによって光源101に流れる電流が抑制(制限)されるが、この電流の抑制によって、光源101に流れるLD電流が発光閾値を下回る値となるように、抵抗102aの値およびその他のパラメータが設定されている、と捉えることもできる。
この構成およびパラメータの設定によれば、コンデンサ102bの充電時に光源101が発光し、その直後に抵抗102aで生じる電圧降下(電流制限)によって、光源101に加わる電圧が低下(流れる電流値が低下)し、光源101の発光が停止する。この結果、図1および図2に示す緩和振動の発生が抑えられ、最初のパルス発光だけが行われる。
以下、図を用いて上記の動作をより詳細に説明する。図4には、各部に加わる電圧の変化が示されている。ここで、図4(a)には、光源101の微分回路102の光源101の側の電圧Vcsが示されている。V−Vcsが光源101に加わる電圧となる。図4(b)には、微分回路102に加わる電圧、すなわち抵抗102aとコンデンサ102bに加わる電圧Vdifが示されている。図4(c)には、スイッチ103のソース・ドレイン間に加わる電圧Vdが示されている。図5には、時間の経過に従う微分回路102の動作の状態を示す概念図である。
図5(a)には、スイッチ103がONになる前の状態(OFFの状態)が示されている。この段階では、光源101および微分回路102に電源電圧Vは加わっていない。スイッチ103がONになると、コンデンサ102bへの充電が始まり、コンデンサ102bに突入電流が流れる。最初期においては、電気的にコンデンサ102bは短絡状態であり、流れる電流は、コンデンサ102bへの突入電流が主となる(図5(b)参照)。このコンデンサ102bへの突入電流が生じることで、光源101に駆動電流が流れ、光源101が発光する。
そして、コンデンサ102bへの充電が進むにつれてコンデンサ102bが示す抵抗値が徐々に上昇し、抵抗102aに流れる電流が増加する。この状態が図5(b)および図5(c)に示されている。図5(b)の段階において、微分回路102に加わる電圧Vdifは徐々に増加する。これは、抵抗102bでの電圧降下が生じるからである。
また、コンデンサ102bに突入電流が生じている期間(図4(a)の符号104の期間)は、コンデンサ102bのスイッチ103側の電極の電位が徐々に低下する(徐々にグランド電位に近づく)ので、Vdは、図4(c)に示すように変化する。
コンデンサ102bへの突入電流の減少に対応して抵抗102aに流れる電流が増加し、そこで電圧降下が生じ、光源101に加わる電圧が減少する。すなわち、電源電圧Vに占める抵抗102aで生じる電圧降下の影響が強まり、その分、光源101に加わる電圧が減少する。この際に、光源101に加わる電圧が発光閾値を下回るように抵抗102aの抵抗値およびその他のパラメータが設定されている。すなわち、期間105における抵抗102aで生じる電圧降下により、光源101に加わる電圧が発光閾値未満となるように、抵抗102aの抵抗値およびその他のパラメータが設定されている。
したがって、期間104において光源101は発光し、期間105において発光が停止する。ここで、期間104が図2のΔtと同じ程度の期間となるように、微分回路102のCRの値を調整することで、発光開始時の1パルスのみの発光が行われる。
この状態(期間105)において、スイッチ103をOFFにすると、光源101に電流が流れなくなり、またコンデンサ102bに溜まった電荷が抵抗102aに流れ、そこで消費される。こうして、最初のスイッチ103がOFFである状態に戻る。
そして、再度スイッチ103をONにすることで、上述した動作と同じ動作が繰り返され、2発目のパルス発光が光源101で行われる。こうして、スイッチ103のON/OFFを繰り返すことで、光源101に繰り返しパルス発光を行わすことができる。
(微分回路のCRの設定について)
上述した図2のΔtの期間だけ光源101に閾値以上の電圧が印加されるようにするには、微分回路102のCRの値の選択が重要となる。以下、どのようにして微分回路102のCRの値を選択すればよいのかについて説明する。
パルス光を生成するためには、次に示す現象で決定される範囲の電流を光源(レーザダイオード:LD)101に流す必要がある。この電流の下限値は光源101が発光し始める電流値(発振閾値電流)であり、上限値は緩和振動の1番目のパルスのみを生成する電流値である。LD電流をこの範囲内に収めるに、微分回路を構成しているCとRの定数の調整が必要になる。
まず、上記の回路の初期状態として、コンデンサ102bには電荷がなく、スイッチ103がOFFである状態を考える。この状態では抵抗102aおよびコンデンサ102bともに電流が流れないので、光源(LD)101にも電流は流れない。当然、光源101は発光しない。
スイッチ103がONになると、抵抗102aおよびコンデンサ102bに急激に電圧が印加される。この急激な電圧の変化は高周波成分を持っていることから、抵抗102aより交流的にインピーダンスの低いコンデンサ102bに電流が流れる。この現象は、DC電圧の印加が開始されたコンデンサ102bに電荷の蓄積に伴う突入電流が流れると解釈することもできる。コンデンサ102bと抵抗102aは並列に接続されているため、スイッチONの直後においては、コンデンサ102bに流れる電流は光源101に流れる電流と同じであり、この電流により光源101が発光する。コンデンサ102bには時間とともに電荷が充電され、充電された電荷の量がコンデンサ102bの持つ容量に到達するとコンデンサ102bには電流が流れなくなる。このとき抵抗102bで生じる電圧降下(電流制限)の影響でスイッチ103がONであるにも関わらず光源101が発光しない状態になる。
上記の説明から判るように、コンデンサ102bに電荷が蓄積する過程で生じるコンデンサ102bへの突入電流に起因して光源101に電流が流れる。よって、コンデンサ102bの容量を適切な値とすることで、光源101に流れる電流の大きさを決定することができ、パルス発光に必要な電流の範囲を決めることができる。
上記現象の過程では、コンデンサ102bに電荷が溜まるにつれてコンデンサ102bに加わる電圧も大きくなる。コンデンサ102bと抵抗102aは並列に接続されていることからコンデンサ102bの電圧と抵抗102aの電圧は等しい。よって、コンデンサ102bに加わる電圧が大きくなることで、抵抗102aに流れる電流も大きくなる。この抵抗102aに流れる電流により抵抗102aで電圧降下が生じ、光源101に加わる電圧が低下する。
LD順方向電圧より小さい電圧ではLD電流は流れないので、抵抗102aはLD電流を制限するように働く。よって、抵抗102aの値を適切に選ぶことで、抵抗102aに流れる電流値が小さい段階でLD電流が流れて光源101が発光し、抵抗102aに流れる電流値が大きくなった段階でLD電流が流れなくなり光源101が発光しなくなる状態を得ることができる。
また、パルス発光を連続して行う場合、光源101に再度のLD電流を流すためにコンデンサ102bに充電された電荷を放電しておく必要がある。この放電は、コンデンサ102bに並列に接続された抵抗102bによって行われる。すなわち、スイッチ103がOFFのとき、コンデンサ102bと並列に接続した抵抗102aによってコンデンサ102bに充電されている電荷が放電され、図3の回路は初期状態になる。つまり、抵抗102aには、LD電流を制限し、緩和振動を抑制することで単発のパルス発光を行わす第1の機能と、次発のパルス発光のためにコンデンサ102bに充電された電荷を放電させ、初期状態に戻す第2の機能がある。
コンデンサC(102b)の値と抵抗R(102a)の値を設定する指針を下記に示す。
(1)Cの最小値 : LDに発振しきい値電流以上の電流が流せる容量値。
(小さ過ぎると、LD発振しない)
(2)Cの最大値 : 緩和振動の1番目のパルスのみを生成して2番目以降のパルスを抑
制するような電流を流せる容量値(Rとの依存性あり)。
(大き過ぎると、緩和振動が発生する)
(3)Rの最小値 : LD電流が発振しきい値電流と等しくなる抵抗値。
(小さ過ぎると、緩和振動が生じる)
(4)Rの最大値 : Rで発生する電圧降下と電源電圧との差が、LD順方向電圧と等し
くなる抵抗値(Cとの依存性あり)。
(大き過ぎると、次パルスまでの間の放電が間に合わなくなる)
また、パルス光のピーク値とCおよびRの値とは、概略以下の関係がある。
・光パルスの強度を大きく ⇒ Cを大きく,Rを小さく
・光パルスの強度を小さく ⇒ Cを小さく,Rを大きく
ただし、CとRには相関があるため一意的には決まらない。また、緩和振動の抑制効果との関係も考慮して、CとRの値を決める必要がある。
パルス光のピーク値に対してCはRよりクリティカルに効くため、Cは粗調整、Rは微調整とした方が良い。
以下、具体例を示す。図6(a)には、単パルスではなく、複数個のパルスが発生する場合、つまり緩和振動が見られる場合が示されている。図6(b)には、単パルスであるが、やや緩和振動の影響が見られる場合が示されている。図6(a)や(b)の現象は、LD電流の値が大き過ぎる場合に発生する。よって、LD電流を抑えるために、Cを小さくし、その上でRの微調整を行う。ただし、Cを小さくし過ぎると、発光のピークが小さくなり、更には発光しなくなる場合があるので注意する。
図7には、発光のピークが低く、またパルス幅が大きい場合が示されている。この場合、LD電流が小さすぎるので、Cを大きくしたあと、Rで微調整する。なお、図8には、最適な状態に調整された場合のパルス光の波形の一例が示されている。
(優位性)
上述した構成によれば、スイッチ103のON時間よりも光源101の発光時間(パルス発光の幅)を短くできる。すなわち、スイッチ103を駆動する制御信号のパルス幅が広く、スイッチ103のON時間が長くても、コンデンサ102bの充電が終了した段階で、抵抗102aで生じる電圧降下により、光源101に加わる電圧が、初期に比べ低下し、その閾値電圧を下回る状態となるので、その段階で光源101の発光を停止させることができる。すなわち、コンデンサ102bへの突入電流が生じる現象を利用して、光源101を発光させることで、スイッチ103がONとなる期間が長くても、光源101を極短時間だけ発光させることができる。
言い換えると、コンデンサ102bの充電時における突入電流と、この突入電流の減少に従う抵抗102aで生じる電圧降下を利用することで、スイッチ103を制御する制御信号の周波数は低くても、制御信号のパルス幅よりも短いパルス幅のパルス発光を光源101に生じさせることができる。このため、例えば、数十〜数百ピコ秒オーダのパルス幅のパルス発光をさせる場合であっても、スイッチ103を制御する制御信号には、数十〜数百ピコ秒オーダのパルス幅は必要とされない。
上記の動作は、コンデンサ102bでの充電が進むにつれて抵抗102aにおける電流の流れが顕在化し、それにより抵抗102aによる電流制限が生じ、この電流制限のために光源(LD)101に流れる電流が減少して緩和振動が抑制される現象として把握することもできる。本発明者らの実験およびコンピュータシミュレーションによれば、光源101で生じる発光のパルス幅を数十〜数百ピコ秒程度とできることが確認されている。なお、発光パルスのパルス幅は、数十〜数百ピコ秒のオーダに限定される訳ではない。
図3に示すように、本発明を利用したパルス発光の為の回路は、きわめて簡素であり、小型軽量、低コスト、低消費電力のものが実現可能である。また、スイッチ103の動作を制御する制御信号は、市販のIC(信号発生用の回路を書き込んだFPGA等)を用いて得ることができ、高価で複雑な発振回路は必要とされない。
また、図3の構成によれば、発生するパルス光のピーク値が電源電圧の変動を受け難いという優位性が得られる。一般に、電源電圧をLDに直接加える場合、発光強度が電源電圧の変動や偏差の影響を大きく受ける。そのため、電源の安定化に注意を払う必要がある。ところが、コンデンサへの突入電流をLD電流とした場合、発光強度に対する電源電圧の影響が直接電源を接続した場合に比べて小さくなる。この原因の詳細は明らかでないが、コンデンサへの突入電流をLD電流とすることで、LDへの電流の流れは、コンデンサの影響が支配的となり、電源の影響が相対的に低下するためであると考えられる。
(その他)
図3では、プラス電源を用いる例が示されているが、マイナス電源で動作する形態も可能である。マイナス光源を用いる場合は、光源101の側が接地され、スイッチ103の側にマイナス電源(-V)が接続される。また、図3では、スイッチ103として、FETを用いているが、バイポーラトランジスタやその他のスイッチング素子を用いることもできる。また、Cとして、通常のコンデンサ素子ではなく、コンデンサとして機能する素子を利用することができる。また、Rとして、通常の抵抗素子ではなく、抵抗として機能する素子(例えば、バイアスを加えたFET等)を利用することもできる。
図9および図10には、図3に示す回路構成の変形例が示されている。以下、図9および図10に示す回路について説明する。なお、図9および図10には、マイナス電源を用いた場合の例が示されている。
図9(a)には、微分回路のコンデンサを可変コンデンサとした場合の例が示されている。図9(a)の例では、コンデンサを可変コンデンサとすることで、微分回路の容量の調整が容易となる。図9(b)には、スイッチを介して複数のコンデンサを並列に接続し、スイッチを切り替えることで容量の調整が行える構成が示されている。複数のコンデンサのそれぞれは、互いに異なる値のものを用いてもよいが、同じ値のものを用いることもできる。図9(b)の例では、コンデンサの組み合わせを変えることで、微分回路の容量の調整が容易となる。
図10(a)には、微分回路の抵抗を可変抵抗器とした例が示されている。図10(b)には、図10(a)の可変抵抗器を制御信号により可変できるタイプのものとした例が示されている。図10(a)や(b)の構成とすることで、微分回路を構成する抵抗の抵抗値の調整が容易となる。図10(c)には、微分回路を構成する抵抗器と並列にサーミスタを接続した例が示されている。サーミスタを用いることで、光源の温度特性を補償することができる。
抵抗値を調整可能とする例として、複数の抵抗器を図9(b)に示すようにスイッチを介して並列に接続し、ONにするスイッチを選択することで、抵抗値の値を設定する構成も可能である。また、この構成を図9(b)の構成と組み合わせ、ONにするスイッチの選択により、微分回路の抵抗器部分の抵抗値とコンデンサ部分の容量の両方を調整可能とすることもできる。なお、複数の抵抗器のそれぞれは、互いに異なる値の物を用いてもよいが、同じ値のものを用いることもできる。
2.第2の実施形態
レーザダイオード(LD)の発光強度には、温度依存性がある。ここでは、温度変化による光源の発光強度の変化を抑えた構成の一例を説明する。図11には、本実施形態のブロック図が示されている。図11には、発光装置200が示されている。発光装置200は、可変電圧電源105、温度センサ106、光源101、微分回路102およびスイッチ103を備えている。ここで、光源101、微分回路102およびスイッチ103は、図3に示す第1の実施形態と同じである。
可変電圧電源105は、マイナス電源であり、温度センサ106が検出した温度に応じて出力する電圧の値を可変する。可変電圧電源105で設定された作り出されたマイナス電圧が、光源101、微分回路102およびスイッチ103が直列接続された回路に印加される。
図12〜図14は、図11に示す回路構成を採用した場合における環境温度、電源電圧、パルス光の波形およびピーク値の関係が示されている。図12〜図14に示すように、電源電圧が一定な場合、環境温度の違いにより、レーザダイオードにより構成される光源101が発するパルス光のピークの値は大きく変化する。しかしながら、図12および図14に示すように、環境温度に応じて電源電圧を変えることで、ほぼ同じ波形およびピーク値のパルス光を得ることができる。
可変電圧電源105は、マイコンを利用したコントローラを内蔵している。このマイコンのメモリ部には、特定のピーク値を得るために必要な環境温度と電源電圧の関係を調べたデータテーブルが記憶されている。動作に当たっては、温度センサ106が検出した環境温度を上記のデータテーブルに当てはめ、対応する電源電圧が出力されるよう制御が行われる。
一般にレーザダイオード(LD)は電源電圧の影響を強く受けるので、LDに直接電源電圧を加える場合は、電源電圧の変更による発光強度の変更は、再現性の点で難がある。しかしながら、コンデンサへの突入電流を用いてLDを発光させる場合、電源の影響が抑えられるので、電源電圧を変更しての発光強度の調整は、高い再現性を得ることができる。
3.第3の実施形態
図15(A)には、発光装置300が示されている。発光装置300は、スイッチ103の位置が図3の場合と異なっている。発光装置300では、スイッチ103が光源101と微分回路102との間に配置されている。発光装置300は、光源と微分回路とが直列に接続された一例である。発光装置300における光源101、微分回路102およびスイッチ103は、図3に関連して説明したものと同じである。
発光装置300の動作は、図3の発光装置100と同じである。以下、発光装置300の動作を簡単に説明する。スイッチ103がOFFの状態では、微分回路のコンデンサ(図3の符号102b)に電圧が加わらず、また光源101にも電圧が加わらないので、光源101は発光しない。スイッチ103がONになると、微分回路102のコンデンサ(図3の符号102b)に電圧が加わり、突入電流が流れる。この突入電流が流れることで、光源101に電流が流れ、光源101が発光する。
そして、微分回路102のコンデンサ(図3の符号102b)が充電されると、このコンデンサに並列に接続された抵抗(図3の符号102a)に電流が流れ、そこでの電圧降下(電流制限)が発生し、光源101の発光が停止する。こうして、緩和振動における一発目のパルスのみの発光が行われる。
図15(B)には、発光装置400が示されている。発光装置400は、スイッチ103の位置が図3および図12(A)の場合と異なっている。発光装置400では、スイッチ103が光源101と+電源との間に配置され、光源101は、グランド側に配置された微分回路102と直列に接続されている。発光装置400における光源101、微分回路102およびスイッチ103は、図3に関連して説明したものと同じである。発光装置400の動作は、図3の発光装置100および図13(A)の発光装置300と同じである。
4.第4の実施形態
図16には、測距装置500が示されている。測距装置500は、レーザ光を用いて測定対象物までの距離の測定を行う装置である。測距装置500は、発光装置100、射出部501、受光部502、信号処理部503および表示部504を備えている。
発光装置100は、図3に示す構成を有する。勿論、本明細書中で例示する他の発光装置を利用することもできる。射出部501は、発光装置100から出力されるレーザ光を測定対象物に対して射出するための光学系を備えている。受光部502は、光学系と受光素子(フォトダイオード等)を備え、射出部501から射出され、対象物で反射されてきた反射光を受光する。信号処理部503は、受光部502が受光した検出光に基づき、対象物までの距離を算出する。信号処理部503で行われる演算は、通常のレーザ測距装置におけるものと同じである。表示部504は、液晶ディスプレイ等の表示装置であり、信号処理部503で算出された対象物までの距離を表示する。
測距装置500は、発光装置100で生成されるパルス幅の短い測距光を用いるので、高い測距精度を得ることができる。また、発光装置100は構造が簡素であり、低消費電力が小さく、更に低コストで得られるので、測距装置500は、小型化、低消費電力化、低コスト化を計ることができる。
ここでは、本発明の光源の適用例として、レーザ測距装置を例示したが、微分回路を用いてパルス発光を行う本発明の光源は、パルス光を用いた各種の装置(例えば、レーザ加工装置等)に適用することができる。
100…発光装置、101…光源(レーザダイオード:LD)、102…微分回路、102a…抵抗、102b…コンデンサ、103…スイッチ、200…発光装置、300…発光装置、400…発光装置、500…測距装置。

Claims (5)

  1. 発光駆動のための通電直後に緩和振動が発生する光源と、
    通電直後において低いインピーダンスである容量性リアクタンス特性回路部および通電後所定時間経過以後に前記容量性リアクタンス特性回路部に充電された電荷を放電するレジスタンス特性回路部が並列接続されている微分回路と、
    スイッチング素子と
    を備え、
    前記光源と前記微分回路とは直列に接続され、
    前記スイッチング素子は、前記光源および前記微分回路に対する電圧印加のON/OFFを行うスイッチである発光装置の調整方法であって、
    前記容量性リアクタンス特性回路部および前記レジスタンス特性回路部の特性を、前記緩和振動における一部の発振を得られる特性に調整することを特徴とする発光装置の調整方法。
  2. 前記容量性リアクタンス特性回路部は、通電直後に前記光源に発振閾値電流以上の電流が流れる容量値および/またはインピーダンスであって、さらに光源の発光が定常状態の発振に到達しない程度の電流が流れる容量値および/またはインピーダンス内で調整されることを特徴とする請求項1に記載の発光装置の調整方法。
  3. 前記レジスタンス特性回路部は、前記光源の発振閾値電流とほぼ等しく光源が発光しない程度の抵抗値以上であって、かつ抵抗で発生する電圧降下と電源電圧との差が、光源順方向電圧と等しい程度となる抵抗値以下に調整することを特徴とする請求項2に記載の発光装置の調整方法。
  4. 前記発光のピーク値を大きくする場合は前記容量性リアクタンス特性回路部の容量を大きくし、前記レジスタンス特性回路部の抵抗値を小さく調整し、
    前記発光のピーク値を小さくする場合は前記容量性リアクタンス特性回路部の容量を小さくし、前記レジスタンス特性回路部の抵抗値を大きく調整することを特徴とする請求項3に記載の発光装置の調整方法。
  5. 前記容量性リアクタンス特性回路部および前記レジスタンス特性回路部の特性は、前記緩和振動の最初の振動のみの発光が行われる特性に調整されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置の調整方法。
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