JP2016044621A - 航空機エンジンの取り付け方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】航空機のエンジン1を取り付け対象であるパイロン30に向けてリフトアップして、所定位置に達したならば、パイロン30にエンジンを固定する航空機エンジンの取り付け方法において、パイロン30に対して、エンジン1の水平方向の位置決めを行うガイド4F,4Rを、エンジン1の前方及び後方のそれぞれに設ける。エンジン1が、エンジン1による推進力をパイロン30に伝達するシェアピン3F,3Rを備え、パイロン30が、シェアピン3F,3Rが嵌入されるピン受け36F,36Rを備える場合に、ガイド4F,4Rは、それぞれシェアピン3F,3Rに近接して設けられるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
通常、他の製造工場で製造されたエンジンは、組立工場まで搬送された後に、翼に取り付けられる。エンジンは、台車(dolly:ドーリ)に載せられた状態で搬送され、台車に載せられたままで翼に取り付けられる。エンジンをパイロンとの取り付け位置まで持ち上げる必要があり、そのために、台車を保持した状態で昇降する機能を備えた構造体が用いられる(例えば、特許文献1)。
そこで、本発明は、パイロンに対するエンジンの位置決めを容易にすることで、取り付け作業を迅速にできる航空機エンジンの取り付け方法を提供する。
第1発明は、航空機のエンジンを取り付け対象であるパイロンに向けてリフトアップして、所定位置に達したならば、パイロンにエンジンを固定する航空機エンジンの取り付け方法において、パイロンに対して、エンジンの水平方向の位置決めを行うガイドを、エンジンの前後方向に分散して設ける、ことを特徴とする。
本願の第2発明について、前述した第1発明の好ましい形態を適宜適用することができる。
また、本願の第2発明によると、板状ゲージを用いることにより、見かけ上、エンジンとパイロンの間隔を狭くできるので、エンジンとパイロンの間の平行度の確認を容易かつ正確にすることができる。したがって、第2発明によると、エンジンは、パイロンに対する鉛直方向の位置決めがなされながらパイロンに取り付けられる。
本実施形態は、図1に示すように、航空機のエンジン1を主翼に設けられるパイロン30に取り付ける作業を迅速に行えるところに特徴を有している。この特徴は、詳しくは後述する棒状のガイド4F,4Rによるエンジン1の水平方向の位置決め、及び、厚さ調整ゲージ50によるエンジン1の鉛直方向の位置決めにより実現される。
本実施形態は、新たに製造されたエンジン1を機体に取り付けるとき、あるいは、航空機の点検・整備に際して一旦取り外されたエンジン1を取り付けるときに適用できる。なお、本実施形態における前・後は、エンジン1の前・後(図1の左側が前、右側が後)に従うものとする。また、図1の上下方向が鉛直方向に一致し、図1の左右方向が水平方向に一致するものとする。
エンジン1は、前後に間隔を空けて2つのエンジンマウント2F,2Rを備えている。2つのエンジンマウント2F,2Rは、それぞれ2本のシェアピン3F,3Rを備えており、このシェアピン33F,3Rは、パイロン30が備えるパイロンマウント33F,33Rに形成されるピン受け36F,36R(図5参照)に嵌入される。したがって、エンジン1の推力は、エンジンマウント2F,2Rのシェアピン3F,3Rを介して、パイロンマウント33F,33R及びパイロン30に伝えられる。
台車10は、図1及び図2に示すように、平面形状が矩形の基台11と、基台11のおもて面に設けられる支持台12A,12B,12Cとを備えている。支持台12A,12B,12Cは、前方側からこの順に配列されており、それぞれがエンジン1を支持する。基台11のおもて面には、台車10を釣り上げるチェーンホイスト26を係止するフック16が四隅に設けられている。
なお、台車10は、物流用のパレットと同様に持ち上げられて搬送されることを前提としているが、うら面に車輪を設けて走行可能にすることもできる。また、台車10は、構造用鋼、その他の金属材料で形成される。架台20も同様である。さらに、台車10は、エンジン1を保持した状態で移動が可能であればその構造は、上記に捉われない。
架台20は、平面形状がコの字形の基礎フレーム21と、基礎フレーム21のおもて面側のほぼ四隅に立設される支柱23A,23B,23C,23Dと、基礎フレーム21のうら面側のほぼ四隅に設けられる定盤24A,24B,24C,24Dと、を備えている。
さて、以上の台車10及び架台20を用いて、エンジン1をパイロン30に取り付ける手順を説明する。
はじめに、図4(a)に示すように、エンジン1を載せている台車10を架台20の収容スペースに移動させて、架台20に保持させる。ついで、図4(b)に示すように、エンジン1及び台車10を保持する架台20をパイロン30の直下の所定位置まで移動させる(図1)。
次に、図5(a),(b)の各々の上段の図に示すように、ガイド4F,4Rをエンジンマウント2F,2Rとパイロンマウント33F,33Rに間に装着する。
ガイド4F,4Rは、軸部4Aと頭部4Bからなるボルト状の部材であり、軸部4Aの先端部分にはおねじが切られている。
ガイド4Fを装着するために、エンジンマウント2Fには、ガイド4Fのおねじが噛み合わされるめねじが切られており、パイロンマウント33Fには、ガイド4Fの軸部4Aが進退する軸孔34が表裏を貫通して形成されている。さらに、パイロン30の本体部分であって、軸孔34に対応する部位には、軸孔34に連なり、ガイド4Fの軸部4A及び頭部4Bが進退する軸孔35が表裏を貫通して形成されている。
ガイド4Fは、パイロン30の軸孔35及びパイロンマウント33Fの軸孔34を貫通して、軸部4Aの先端部分のおねじがエンジンマウント2Fのめねじに噛み合わされる。したがって、ガイド4Fはエンジンマウント2Fと一体となって鉛直方向に昇降しうるが、このとき、ガイド4Fはパイロンマウント33Fによって、水平方向への移動が拘束される。こうして、エンジンマウント2Fとパイロンマウント33Fは、お互いの間に装着されるガイド4Fによって、水平方向の位置決めがなされる。
なお、ガイド4F,4Rは、図5では、エンジンマウント2Fとパイロンマウント33Fの間、エンジンマウント2Rとパイロンマウント33Rの間のそれぞれに1本のみを示しているが、シェアピン3F,3Rの数に対応して2本、あるいはそれ以上の本数を装着することができる。
以上では水平方向におけるエンジン1の位置決めに有効なガイド4の説明をしたが、以下説明するように、本実施形態は鉛直方向におけるエンジン1の位置決めに有効な手法を提案する。
この手法は、図6(a)に示すように、エンジンマウント2Fとパイロンマウント33Fの間に、板状ゲージG1〜G5を挿入することで、エンジン1の取り付け過程において、エンジンマウント2Fとパイロンマウント33Fの間の平行度を確認するのに用いられる。なお、ここではエンジンマウント2Fとパイロンマウント33Fを例示するが、エンジンマウント2Rとパイロンマウント33Rについても同様に板状ゲージG1〜G5が用いられる。
なお、図6は、板状ゲージG1〜G5の機能を説明するのに必要なエンジンマウント2F、パイロンマウント33Rに絞って記載している。また、図6(a)の左側は正面図、左側は側面図である。
板状ゲージG1〜G5は、平面形状が矩形をなしているが、シェアピン3Fが収容されるU字状の溝Uが形成されている。溝Uは、板状ゲージG1〜G5の一方の長辺から他方の長辺に向けて所定の位置まで窪むように形成されている。
板状ゲージG1とパイロンマウント33Fの間の所望する平行度が得られたならば、板状ゲージG1を抜き取った後に、エンジン1を載せた台車10をリフトアップさせ、最上位に位置する板状ゲージG2がパイロンマウント33Fに触れる直前に達したならば(図6(b)のステップ2)、台車10のリフトアップを停止させる。そして、板状ゲージG2とパイロンマウント33Fの平行度を確認し、所望する平行度が得られていなければ平行度を調整する。
板状ゲージG2とパイロンマウント33Fの間の所望する平行度が得られたならば、板状ゲージG2を抜き取った後に、エンジン1を載せた台車10をリフトアップさせ、最上位に位置する板状ゲージG3がパイロンマウント33Fに触れる直前に達したならば(図6(b)のステップ3)、台車10のリフトアップを停止させる。そして、板状ゲージG3とパイロンマウント33Fの平行度を確認し、所望する平行度が得られていなければ平行度を調整する。
次に、図7を参照して、エンジン1を載せた台車10を昇降する機構を説明する。
この機構は、本実施形態に好適に用いることのできるものであり、チェーンホイストを用いて台車10を昇降させる。なお、ここでいうチェーンホイストは、手動式のチェーンホイストである。また、台車10は基台11のみを示している。
チェーンホイスト26L,26Rは、それぞれの上フックが架台20の支柱23A,23Bのフック25に係止されている。
台車10は、チェーンホイスト26を巻き上げると、牽引ワイヤ29の他端が係止端28に接続されているので、滑車27L,27Rを介してリフトアップすることができる。この昇降の過程で、牽引ワイヤ29と滑車27L,27Rは互いに滑るので、台車10は水平状態を保つことができる。
次に、本実施形態が奏する効果を説明する。
[ガイド4の使用による効果]
はじめに、本実施形態は、ガイド4F,4Rをエンジンマウント2F,2Rとパイロンマウント33F,33Rに間に装着して、エンジン1をパイロン30に取り付ける。したがって、エンジン1は、ガイド4F,4Rによってパイロン30に対する水平方向の位置決めがなされながらパイロン30に取り付けられるので、エンジンマウント2F,2Rのシェアピン3F,3Rがパイロンマウント33F,33Rのピン受け36F,36Rにスムーズに挿入させることができる。
特に、本実施形態によると、前方側のエンジンマウント2Fとパイロンマウント33Fの間及び後方側のエンジンマウント2Rとパイロンマウント33Fの間のそれぞれにガイドガイド4F,4Rを設けたことにより、前方側におけるシェアピン3Fとピン受け36F及び後方側におけるシェアピン3Rとピン受け36Rの両者の挿入をスムーズに行うことができる。しかも、本実施形態は、シェアピン3F,3Rに近接するようにエンジンマウント2F,2Rとパイロンマウント33F,33Rに間に設けられるので、シェアピン3F,3Rを位置決めする精度が高い。
また、ガイド4F,4Rは、水平方向の位置決めを行うことができる限り、その形態が問われることはなく、上述した円柱状の他に、角柱状、平板状など各種形態の部材をガイド4F,4Rとして用いることができる。
次に、本実施形態は、板状ゲージG1〜G5を用いることで、エンジンマウント2F,2Rとパイロンマウント33F,33Rの間の間隔を見かけ上狭くするので、作業員の目視により、両者の平行度を高い精度で確認できる。しかも、平行度の確認を逐次行いながら、エンジン1をパイロン30に取り付ける。このように、エンジン1は、パイロン30に対する鉛直方向の位置決めがなされながらパイロン30に取り付けられるので、エンジンマウント2F,2Rのシェアピン3F,3Rがパイロンマウント33F,33Rのピン受け36F,36Rにスムーズに挿入させることができる。
特に、本実施形態は、厚さの異なる板状ゲージG1〜G5を用い、エンジン1のリフトアップの過程において、エンジンマウント2F,2Rがパイロンマウント33F,33Rに近づくにつれて板厚の厚い板状ゲージG1から順に抜きとる。こうして、エンジンマウント2F,2Rとパイロンマウント33F,33Rの間が近くなるのにつれて、こまめに両者の間の平行度の確認及び調整を行って、シェアピン3F,3Rがピン受け36Fにスムーズに挿入させることができる。
次に、本実施形態は、エンジン1を載せる台車10の昇降機構として、手動によるチェーンホイスト26L,26Rを用いている。したがって、油圧による駆動装置あるいは電動による駆動装置を用いた自動的な昇降装置に比べると、シェアピン3F,3Rをより確実にピン受け36F,36Rに挿入させることができる。例えば、自動的な昇降装置を用いると、シェアピン3F,3Rとピン受け36F,36Rの間に位置ずれが生じていたとしても、位置ずれが生じたままでシェアピン3F,3Rがピン受け36F,36Rに挿入されるのを避けるのが容易でない。
ただし、本発明は、後方側についても前方側と同様に、左右の昇降を独立して調整してもかまわずし、また、前方側についても後方側と同様に、滑車27L,27Rを用いて一つのチェーンホイスト26で昇降を調整しても構わない。
例えば、台車10及び架台20の構成はあくまで一例であり、台車10はエンジン1を保持しかつエンジン1とともに昇降がなされ、また、架台20はエンジン1を載せた台車10を昇降できるのであれば、他の構成を採用することができる。
また、手動の昇降装置としてチェーンホイストを例示したが、他の手動の昇降装置、例えば油圧ジャッキを用いることもできる。
2F,2R エンジンマウント
3F,3R シェアピン
4F,4R ガイド
4A 軸部
4B 頭部
10 台車
11 基台
12A,12B,12C 支持台
16 フック
20 架台
21 基礎フレーム
23A,23B,23C,23D 支柱
24A,24B,24C,24D 定盤
25 フック
26L,26R チェーンホイスト
27L,27R 滑車
28 係止端
29 牽引ワイヤ
30 パイロン
33,33F,33R パイロンマウント
34,35 軸孔
36F,36R ピン受け
G1〜G5 板状ゲージ
U 溝
Claims (11)
- 航空機のエンジンを取り付け対象であるパイロンに向けてリフトアップして、所定位置に達したならば、前記パイロンに前記エンジンを固定する航空機エンジンの取り付け方法において、
前記パイロンに対して、前記エンジンの水平方向の位置決めを行うガイドを、前記エンジンの前方及び後方のそれぞれに設ける、
ことを特徴とする航空機エンジンの取り付け方法。 - 前記エンジンは、前記エンジンによる推進力を前記パイロンに伝達するシェアピンを備え、
前記パイロンは、前記シェアピンが嵌入されるピン受けを備え、
前記ガイドは、前記シェアピンに近接して設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 前記エンジンは、前記シェアピンを備えるエンジンマウントを備え、
前記パイロンは、前記ピン受けを備えるパイロンマウントを備え、
前記ガイドは、前記エンジンマウントとパイロンマウントの間に架け渡されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 前記リフトアップの過程において、
前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に、前記エンジンマウント又は前記パイロンマウントとの平行度を確認する板状ゲージを介在させる、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 厚さの異なる複数種の板状ゲージを用いる、
ことを特徴とする、請求項4に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 当初に、厚さの異なる複数種の前記板状ゲージを積層して、前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に介在させ、
前記エンジンのリフトアップの程度に応じて、厚さの厚い前記板状ゲージを順に抜き取る、
ことを特徴とする、請求項5に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 当初に、第1板状ゲージを前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に介在させ、前記エンジンを所定量だけリフトアップしてから第1板状ゲージを抜き取り、その代わりに、前記第1板状ゲージよりも厚い第2板状ゲージを前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に介在させ、前記エンジンを所定量だけリフトアップしてから第2板状ゲージを抜き取る、という手順を必要な回数だけ繰り返す、
ことを特徴とする、請求項5に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 航空機のエンジンを取り付け対象であるパイロンに向けてリフトアップして、所定位置に達したならば、前記パイロンに前記エンジンを固定する航空機エンジンの取り付け方法において、
前記エンジンは、前記パイロンとの固定に供されるエンジンマウントを備え、
前記パイロンは、前記エンジンマウントとの固定に供されるパイロンマウントを備え、
前記リフトアップの過程において、
前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に、前記エンジンマウント又は前記パイロンマウントとの平行度を確認する板状ゲージを介在させる、
ことを特徴とする航空機エンジンの取り付け方法。 - 厚さの異なる複数種の板状ゲージを用いる、
ことを特徴とする、請求項8に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 当初に、厚さの異なる複数種の前記板状ゲージを積層して、前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に介在させ、
前記エンジンのリフトアップの程度に応じて、厚さの厚い前記板状ゲージを順に抜き取る、
ことを特徴とする、請求項9に記載の航空機エンジンの取り付け方法。 - 当初に、第1板状ゲージを前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に介在させ、前記エンジンを所定量だけリフトアップしてから第1板状ゲージを抜き取り、その代わりに、前記第1板状ゲージよりも厚い第2板状ゲージを前記エンジンマウントと前記パイロンマウントとの間に介在させ、前記エンジンを所定量だけリフトアップしてから第2板状ゲージを抜き取る、という手順を必要な回数だけ繰り返す、
ことを特徴とする、請求項9に記載の航空機エンジンの取り付け方法。
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