JP2016042546A - 熱電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱電変換素子のさらなる高出力化を実現すること。【解決手段】本発明の熱電変換素子は、スピンゼーベック効果を発現する磁性体層と、逆スピンホール効果を発現する起電層とを有する熱電変換素子であって、前記磁性体層として軌道角運動量量子数Lを有するCe, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Ybからなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む磁性体層を使用する。【選択図】 図3

Description

本発明は、スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果に基づく熱電変換素子に関する。
持続可能な社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みが活発化する中で、熱電変換素子への期待が高まっている。これは、熱は体温、太陽光、エンジン、工業排熱などあらゆる媒体から得ることができる最も一般的なエネルギー源であるためである。そのため、低炭素社会におけるエネルギー利用の高効率化や、ユビキタス端末・センサ等への給電といった用途において、熱電変換素子は今後ますます重要となることが予想される。
最近の研究により、磁性体における「スピンゼーベック効果(Spin-Seebeck Effect)」の存在が明らかになっている。スピンゼーベック効果とは、磁性体に温度勾配を印加すると、温度勾配と平行方向に電子のスピン角運動量の流れ(スピン流)が発生する現象である[特許文献1]。特許文献1では、強磁性体であるNiFe膜におけるスピンゼーベック効果が報告されており、非特許文献1、2では、イットリウム鉄ガーネット(YIG, Y3Fe5O12)といった磁性絶縁体と金属膜との界面におけるスピンゼーベック効果が報告されている。なお、温度勾配によって発生したスピン流は、逆スピンホール効果(Inverse Spin-Hall effect)により、電流に変換される。逆スピンホール効果とは、物質のスピン軌道相互作用(spin orbit coupling)により、スピン流が電流に変換される現象であり、スピン軌道相互作用の大きな物質中(例えばPt,Auなど)において有意に発現する。
これらスピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、スピンを介して温度勾配を電流に変換する「スピン熱電変換」が近年注目されており、新しい熱電変換素子、「スピン熱電素子」の開発が、期待されている。
図11は、特許文献1に開示されている熱電変換素子の構造を表している。サファイア基板101上に熱スピン流変換部102が形成されている。熱スピン流変換部102は、Ta膜103、PdPtMn膜104およびNiFe膜105の積層構造を有している。さらにNiFe膜105上には、Pt電極106が形成されており、そのPt電極106の両端は端子107-1、107-2にそれぞれ接続されている。このように構成されたスピン熱電素子において、NiFe膜105が、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成する役割を果たし、Pt電極106が、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を生成する役割を果たす。具体的にはNiFe膜105の面内方向に温度勾配が印加されると、スピンゼーベック効果により、その温度勾配と平行な方向にスピン流が発生する。すると、NiFe膜105からPt電極106にスピン流が流れ込む、あるいはPt電極106からNiFe層105にスピン流が流れ出す。Pt電極106では逆スピンホール効果により、スピン流方向とNiFeの磁化方向とに直交する方向に起電力が生成される。その起電力はPt電極106の両端に設けられた端子107-1、107-2から取り出すことができる。
また、スピン熱電素子の作成方法の一つとして、特許文献2(再公表特許WO2012/108276)に記載のような有機金属分解法(MOD法:Metal Organic Decomposition)がある。図12に記載のように、ガドリニウムガリウムガーネット(以降、「GGG」と表記する。組成はGd3Ga5O12)基板4上に、Yサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(以降、「Bix:YIG」と表記する。組成はBixY3-xFe5O12)が含まれているMOD溶液をスピンコートで塗布し、焼結させることでBix:YIG膜12を作成することができる。さらにこの膜上にPt電極3をスパッタにより成膜することで、スピン熱電素子を作成することができる。この素子の面直方向Bに温度勾配ΔTを印加し、面内方向Cに磁場を印加することで、電極7、電極9から、起電力を取り出すことができる。
特開2009-130070号公報 再公表特許WO2012/108276
Uchida et al. "Spin Seebeck insulator", Nature Materials, 2010 vol.9 p.894 Uchida et al. "Observation of longitudinal spin-seebeck effect in magnetic insulator", Applied Physisc Letters, 2010, vol.97, p172505
しかしながら、現状スピン熱電素子の出力は小さく、数uV/K程度であるため、実用化には至っていない。そのため、スピン熱電素子の高出力化が大きな課題となっている。スピン熱電素子の高出力化のためには、大きなスピン流を金属膜に突入させることのできる磁性材料の開発が求められる。
本発明の目的は、この課題を解決し、高出力化が可能な熱電変換素子を提供することである。
本発明は、スピンゼーベック効果を発現する磁性体層と、逆スピンホール効果を発現する起電層とを有する熱電変換素子であって、前記磁性体層として軌道角運動量量子数Lを有するCe, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Ybからなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む磁性体層を使用することを特徴とする、熱電変換素子である。
本発明によれば、熱電変換素子の高出力化が可能になる。
各元素の軌道角運動量量子数L、スピン角運動量量子数S、原子量nを示した表である。 本発明の第一の実施形態のスピン熱電素子の構造を示した図である。 R1:YIG磁性体層とPt層とGGG基板を使用したスピン熱電素子の構造を示した図である。 軌道角運動量量子数Lとスピン熱電素子の出力の関係を示した図である。 本発明の第二の実施形態のスピン熱電素子の構造を示した図である。 スピン角運動量量子数Sとスピン熱電素子の出力の関係を示した図である。 本発明の第三の実施形態のスピン熱電素子の構造を示した図である。 原子量nとスピン熱電素子の出力の関係を示した図である。 実施例に記載のYb1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子の構造を示した図である。 YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子と、Yb1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子と、Bi1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子の起電力を示した図である。 特許文献1に開示されているスピン熱電素子の構造を示した図である。 特許文献2に開示されているスピン熱電素子の構造を示した図である。
[第一の実施形態]
本発明の実施の形態について図面を参照して以下、詳細に説明する。
[構造の説明]
図2は、本発明の第一の実施形態のスピン熱電素子を概略的に示した斜視図である。このスピン熱電素子は、YIGのcサイトの一部を、軌道角運動量量子数Lを有する元素RLで置換した磁性体層(以後RL:YIG磁性体層と呼ぶ)501と、スピン軌道相互作用(spin-orbit interaction)の大きな元素で構成されている起電層(導電層)502を備えている構造である。軌道角運動量量子数Lを有する元素RLとは、Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybであり、スピン軌道相互作用の大きな元素とは、例えばAu,Pt,Ir,Biなどである。
このRL:YIG磁性体層501の厚さは、熱電発電の用途や温度領域に応じて変えることが可能だが、通常は熱マグノンの拡散長程度の数十nm〜数um程度に設定することが望ましい。また、起電層502の厚さは起電層のスピン拡散長程度の数nm〜数百nmに設定することが望ましい。
このスピン熱電素子のx方向(面内方向)に磁場、z方向(厚さ方向)に温度勾配を印加することで、スピンゼーベック効果によりRL:YIG磁性体層中のz方向にスピン流が発生する。このスピン流が起電層502に突入すると逆スピンホール効果によりスピン流が電流に変換される。これにより、端子503および端子504から起電力を取り出すことができる。
[効果の説明]
本実施形態では、温度勾配からスピン流を生成する効率(スピン流生成効率)が向上する。cサイトに軌道角運動量量子数Lを有する元素を置換したYIG磁性体層を使用することにより、YIG磁性体層のスピン格子相互作用(spin-lattice-interaction)が大きくなり、より効率的に熱からスピン流を生成することが可能となる。これにより、YIG磁性体層で発生するスピン流量が大きくなるため、スピン熱電素子の出力は向上する。
図3のように、GGG基板605上に様々な元素RでYIGのcサイトを一部置換したR1:YIG磁性膜601さらにその上にPt層602を形成し、Pt層602に端子603,604を形成してスピン熱電素子を作成した。図4にそのスピン熱電素子の出力と軌道角運動量量子数Lの依存性を示した。ここで、様々な元素Rとは、図1に記載のLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Luのいずれか一つである。図7ではR1:YIG磁性膜601(RXY3-XFe5O12)の元素Rの組成比Xはすべて1である。
図4のグラフは白い領域ほど、その状態になる確率が高いことを意味しており、逆に黒い領域ほどその状態になる確率が低いことを意味している。言い換えると図4は、ある軌道角運動量量子数Lの状態の時にどの出力になる可能性が一番高いかを網羅的に示した図である。例えば、軌道角運動量量子数Lが4.09の場合、出力の0.327付近が最も白いが(図4のL=4.09と出力0.327の交点付近が白い)、これは、L=0.409の場合は、出力が0.327位になる可能性が最も高いことを示している。またL=0の場合は、出力が0.2付近で最も白い。これは、L=0の場合は、出力が0.2くらいになる可能性が最も高いことを示している。この白い領域が、Lが小さい場合は出力が低いところにあり、Lが大きい場合は出力が高いところにあるため、大きな出力を得るためにはLは大きいほうが良いことが分かる。図4では白い領域が左下から右上に伸びているため、軌道角運動量量子数Lとスピン熱電素子の出力には正の相関があることがわかる。これは、軌道角運動量量子数Lにより、spin-lattice interactionが大きくなり、より効率的に熱からスピン流を生成する(スピン流生成効率が向上する)ためである。
以上のように、本実施形態のスピン熱電素子では、YIGのcサイトの一部を、軌道角運動量量子数Lを有する元素RL(RL= Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb)で置換したRL:YIG磁性体層を使用することにより、スピン熱電素子の出力が向上する。
なお本実施形態ではcサイトの一部を元素RLで置換したが、全てを置換してもスピン熱電素子の出力を向上させることができる。製法によっては元のYがわずかに置換されずに残ることはありうるがその場合でも出力を向上できる。
[製造方法の説明]
次に、図3を参照して、本実施形態のスピン熱電素子の製造方法の例を説明する。
最初に、GGG基板605上にRL:YIG磁性体層601を形成する。RL:YIG磁性体層601は、YIGのcサイト(イットリウムYのサイト)の一部を、軌道角運動量量子数Lを有する元素RL(RL= Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb)で置換したものである。RL:YIG磁性体層601は、スパッタ法、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、フェライトメッキ法、エアロゾルデポジション法(AD法)、PLD法(Pulsed Laser Deposition)、LPE法(Liquid Phase Epitaxy)などを利用して基板上に磁性膜を形成してもよいし、焼結体、単結晶をそのまま磁性体として用いてもよい。
次に、RL:YIG磁性体層501上に、スピン起動相互作用の大きな元素(例えばAu, Pt, Ir, Biなど)で構成されている起電層502を作成する。形成方法としてはスパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法などを利用できる。
このスピン熱電素子のx方向に磁場、z方向に温度勾配を印加することで、端子503および端子504から起電力を取り出すことができる。
なお、上記スピン熱電素子の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されたものではない。
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施の形態について図面を参照して以下、詳細に説明する。
[構造の説明]
図5は、本実施形態のスピン熱電素子を概略的に示した図である。このスピン熱電素子は、YIGのcサイトの一部を、軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数Sの小さな(2以下の)元素RSで置換した磁性体層(以後RS:YIG磁性体層と呼ぶ)801と、スピン起動相互作用の大きな元素で構成されている起電層(導電層)802を備えている構造である。
軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数Sの小さな(2以下の)元素RSとは、Ce, Pr, Nd, Ho, Er, Tm, Ybであり、スピン起動相互作用の大きな元素とは、例えばAu, Pt, Ir, Biなどである。
このRS:YIG磁性体層801の厚さは、熱電発電の用途や温度領域に応じて変えることが可能だが、通常は熱マグノンの拡散長程度の数十nm〜数um程度に設定することが望ましい。また、起電層802の厚さは起電層のスピン拡散長程度の数nm〜数百nmに設定することが望ましい。
このスピン熱電素子のx方向に磁場、z方向に温度勾配を印加することで、スピンゼーベック効果によりRS:YIG磁性体層中のz方向にスピン流が発生する。このスピン流が起電層802に突入すると逆スピンホール効果によりスピン流が電流に変換される。これにより、端子803および端子804から起電力を取り出すことができる。
[効果の説明]
本実施形態では、スピン流伝達効率が向上する。YIG磁性体層のcサイトにスピン角運動量量子数Sが大きな元素が存在すると、YIGのcサイト(Yのサイト)とYIGのa,dサイト(Feのサイト)のdipole-dipole-interactionもしくはsuper-exchange-interactionにより、スピン流が散乱されてしまう。そのため、cサイトにスピン角運動量量子数Sが小さい(2以下の)元素を置換したYIG磁性体層を使用することにより、スピン流伝達効率が向上し、スピン熱電素子の出力は向上する。
図3のように、様々な元素RsでYIGのcサイトを一部置換したR1:YIG磁性膜601、GGG基板605、Pt層602からなるスピン熱電素子を作成し、図6にそのスピン熱電素子の出力とスピン角運動量量子数Sの依存性を示した。ここで、様々な元素Rとは、図1に記載のLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Luである。図8ではR1:YIG磁性膜601(RXY3-XFe5O12)の元素Rの組成比Xはすべて1である。
図6のグラフは白い領域ほど、その状態になる確率が高いことを意味しており、逆に黒い領域はその状態になる確率が低いことを意味している。グラフでは白い領域が左上から右下に伸びているため、スピン角運動量量子数Sとスピン熱電素子の出力には負の相関があることがわかる。これは、cサイトにスピン角運動量量子数Sが存在すると、YIGのcサイトとYIGのa,dサイトのdipole-dipole-interactionもしくは、super-exchange-interactionにより、スピン流が散乱されてしまい、スピン流伝達効率が低下してしまうためである。
以上のように、本実施形態のスピン熱電素子では、YIGのcサイトの一部を、軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数Sの小さな(2以下の)元素RS(RS= Ce, Pr, Nd, Ho, Er, Tm, Yb)で置換したRS:YIG磁性体層を使用することにより、スピン熱電素子の出力が向上する。
なお本実施形態ではcサイトの一部を元素Rsで置換したが、全てを置換してもスピン熱電素子の出力を向上させることができる。製法によっては元のYがわずかに置換されずに残ることはありうるがその場合でも出力を向上できる。
[製造方法の説明]
次に、図5を参照して、本実施形態のスピン熱電素子の製造方法の第一の例を説明する。
最初に、YIGのcサイト(イットリウムYのサイト)の一部を、軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数Sが小さい(2以下の)元素RS(RS=Ce, Pr, Nd, Ho, Er, Tm, Yb)で置換したRS:YIG磁性体層801を作成する。RS:YIG磁性体層801はスパッタ法、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、フェライトメッキ法、エアロゾルデポジション法(AD法)、PLD法、LPE法などを利用して基板上に磁性体膜を形成してもよいし、焼結体、単結晶を用いてもよい。
次に、Rs:YIG磁性体層801上に、スピン起動相互作用の大きな元素(例えばAu, Pt, Ir, Biなど)で構成されている起電層802を作成する。形成方法としてはスパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法などを利用できる。
このスピン熱電素子のx方向に磁場、z方向に温度勾配を印加することで、端子803および端子804から起電力を取り出すことができる。
なお、上記スピン熱電素子の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されたものではない。
[第三の実施形態]
本発明の第三の実施の形態について図面を参照して以下、詳細に説明する。
[構造の説明]
図7は、本実施形態のスピン熱電素子を概略的に示した図である。このスピン熱電素子は、YIGのcサイトの一部を、軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数が小さく(2以下)、かつ原子量nの大きな(155以上の)元素Rnで置換した磁性体層(以後R:YIG磁性体層と呼ぶ)1001と、スピン起動相互作用の大きな元素で構成されている起電層(導電層)1002を備えている構造である。軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数が小さく(2以下)、かつ原子量nの大きな(155以上の)元素Rnとは、Ho, Er, Tm, Ybであり、スピン起動相互作用の大きな元素とは、例えばAu, Pt, Ir, Biなどである。
このRn:YIG磁性体層1001の厚さは、熱電発電の用途や温度領域に応じて変えることが可能だが、通常は熱マグノンの拡散長程度の数十nm〜数um程度に設定することが望ましい。また、起電層1002の厚さはその常磁性体のスピン拡散長程度の数nm〜数百nmに設定することが望ましい。
このスピン熱電素子のx方向に磁場、z方向に温度勾配を印加することで、スピンゼーベック効果によりRn:YIG磁性体層中のz方向にスピン流が発生する。このスピン流が起電層1002に突入すると逆スピンホール効果によりスピン流が電流に変換される。これにより、端子1003および端子1004から起電力を取り出すことができる。
[効果の説明]
本実施形態では、YIG磁性体層にかかる温度勾配を上昇させることができる。cサイトに原子量nの大きい(155以上の)元素を置換したYIG磁性体層を使用することにより、YIG磁性体層中でのフォノン散乱が大きくなり、熱伝導率κが低下する。そのため、YIG磁性体層にかかる温度勾配が大きくなり、スピン熱電素子の出力は向上する。
図3のように、様々な元素RでYIGのcサイトを一部置換したR1:YIG磁性膜601、GGG基板605、Pt層602からなるスピン熱電素子を作成し、図8にそのスピン熱電素子の出力との原子量nの依存性を示した。ここで、様々な元素Rとは、図1に記載のLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Luである。図8のグラフは白い領域ほど、その状態になる確率が高いことを意味しており、逆に黒い領域ほどその状態になる確率が低いことを意味している。図10ではR1:YIG磁性膜601(RXY3-XFe5O12)の元素Rの組成比Xはすべて1である。
グラフでは白い領域が左下から右上に伸びているため、原子量nとスピン熱電素子の出力には正の相関があることがわかる。原子量nの大きな元素を置換することで、被置換元素と置換元素の原子量の差が大きくなり、フォノン散乱が増加する。それにより、熱伝導率κが小さくなり、Rn:YIG磁性体層にかかる温度勾配が大きくなるため、スピン熱電素子の出力が向上する。
以上のように、本実施形態のスピン熱電素子では、YIGのcサイトの一部を、軌道角運動量量子数Lを有し、かつスピン角運動量量子数Sが小さく(2以下)、かつ原子量nの大きな(155以上の)元素Rn(Rn= Ho, Er, Tm, Yb, Lu)で置換したRn:YIG磁性体層を使用することにより、スピン熱電素子の出力が向上する。
なお本実施形態ではcサイトの一部を元素Rnで置換したが、全てを置換してもスピン熱電素子の出力を向上させることができる。製法によっては元のYがわずかに置換されずに残ることはありうるがその場合でも出力を向上できる。
[製造方法の説明]
次に、図7を参照して、本実施形態のスピン熱電素子の製造方法の第一の例を説明する。
最初に、YIGのcサイト(イットリウムYのサイト)の一部を、軌道角運動量量子数Lを有し、スピン角運動量量子数Sが小さく(2以下)、かつ原子量nが大きい(155以上の)元素Rn(Rn = Ho, Er, Tm, Yb, Lu)で置換したRn:YIG磁性体層1001を作成する。Rn:YIG磁性体層1001は、スパッタ法、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、フェライトメッキ法、エアロゾルデポジション法(AD法)、PLD法、LPE法などを利用して基板上に磁性体膜を形成してもよいし、焼結体、単結晶を用いてもよい。
次に、磁性体層1001上に、スピン起動相互作用の大きな元素(例えばAu, Pt, Ir, Biなど)で構成されている起電層1002を作成する。形状はスパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法などを利用した膜状である。
このスピン熱電素子のx方向に磁場、z方向に温度勾配を印加することで、端子1003および端子1004から起電力を取り出すことができる。
また、上記スピン熱電素子の製造方法は、単なる一例であり、これに限定されたものではない。
(他の実施形態)
上記の実施形態では、元素を一種類だけ置換した。しかし複数種類置換をすると、磁性体中のフォノン散乱が増強され熱伝導率が下がる。そのため、磁性体にかかる温度勾配が大きくなり出力が増大する。
また上記の実施形態では磁性体層としてYIG系磁性体層を用いた。しかしこれに限らず、酸化物磁性体としては、ガーネットフェライト系(YIG系)、スピネルフェライト系、マグネトプランバイト系、コランダム系、ペロブスカイト系、ルチル系などを用いることができる。また、酸化物以外でも、磁性金属、磁性窒化物、磁性硫化物など磁性を示すものであれば用いることができる。
図9は、YIGのcサイトの一部をYbで置換したYb1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子の形状である。
まず、GGG基板1205上に有機金属化合物分解法(MOD法)により、Yb1:YIG磁性体層1201を作成する。なおYbの添え字は置換する元素数を意味し、Yb1:YIG =Yb1Y2Fe5O12である。磁性体層1201作成の手順は次の通りである。GGG基板1205上にYb1:YIGのMOD材料溶液をスピンコーターで塗布する。例えばYをYbで10%置換する場合は、Yb:Y=9:1のMOD材料溶液を使用する。その後有機溶剤を除去するために乾燥させる。次に仮焼成をし、有機物を分解、揮発させる。最後に焼成を行い酸化物化、結晶化を行う。
なおYbで全部置換した磁性体層を作成する場合も同様で、MOD材料溶液中のYbの割合を増やせばよい。
次に、このGGG基板1205上に作成したYb1:YIG膜1201上にPt層1202をスパッタリング法で形成する。
以上の手順により、YIGのcサイトの一部をYbで置換したYb1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子を作成することができる。このスピン熱電素子のx方向に磁場、z方向に温度勾配を印加することで、端子1203および端子1204から起電力を取り出すことができる。
図10は、上記の手順で作成したYb1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子(Pt/Yb1:YIG/GGG)と、Bi1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子(Pt/Bi1:YIG/GGG)と、YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子(Pt/YIG/GGG)の起電力を比較した図である。グラフの横軸はx軸方向にかけた磁場の大きさであり、z方向に温度差ΔT=8Kを印加した際に発生する起電力を縦軸に記述した。Pt/Yb1:YIG/GGGのスピン熱電素子では、約5uVの起電力が発生しており、Pt/Bi1:YIG/GGGのスピン熱電素子では、約3uVの起電力が発生しており、Pt/YIG/GGGのスピン熱電素子では約2uVの起電力が発生している。そのため、YIGのcサイトの一部をYbで置換することにより、スピン熱電素子の出力が向上することがわかる。
なおEr1:YIG磁性体層を使用したスピン熱電素子(Pt/Er1:YIG/GGG)も作成し、Yb、Biと同様の結果を得た。これらの例では置換する元素数はすべて1であるが、0.1以上であればスピン熱電素子の出力が向上した。
502、802、1002 起電層
503、504、603、604、803、804、1003、1004、1203、1204 端子
501、601 RL:YIG磁性体層
602、1202 Pt層
605、1205 GGG基板
801 RS:YIG磁性体層
1001 Rn:YIG磁性体層
1201 Yb:YIG磁性体層

Claims (9)

  1. スピンゼーベック効果を発現する磁性体層と、逆スピンホール効果を発現する起電層とを有する熱電変換素子であって、
    前記磁性体層として軌道角運動量量子数Lを有するCe, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Ybからなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む磁性体層を使用することを特徴とする熱電変換素子。
  2. 前記磁性体層として酸化物磁性材料を用いる請求項1に記載の熱電変換素子。
  3. 前記磁性体層にYIGのcサイトを、軌道角運動量量子数Lを有するCe, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb,からなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素RLで一部置換した磁性体を使用する請求項1または2に記載の熱電変換素子。
  4. 前記磁性体層のcサイトを占める元素のほぼ全てが、軌道角運動量量子数Lを有するCe, Pr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Ybからなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素である請求項1または2に記載の熱電変換素子。
  5. 前記元素群のうち、スピン角運動量量子数Sが2以下のCe, Pr, Nd, Ho, Er, Tm, Yb,からなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素でYIGのcサイトを一部置換した磁性体層を使用する請求項1または2に記載の熱電変換素子。
  6. 前記磁性体層のcサイトを占める元素のほぼ全てが、スピン角運動量量子数Sが2以下のCe, Pr, Nd, Ho, Er, Tm, Ybからなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素である請求項1または2に記載の熱電変換素子。
  7. 前記元素群のうち、原子量nが155以上のHo, Er, Tm, Ybからなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素でYIGのcサイトを一部置換した磁性体層を使用する請求項5に記載の熱電変換素子。
  8. 前記磁性体層のcサイトを占める元素のほぼ全てが、原子量nが155以上のHo, Er, Tm, Yb, Lu からなる元素群から選ばれる少なくとも1つの元素である請求項6に記載の熱電変換素子。
  9. 前記元素RL、RsまたはRnで前記YIGのcサイトを置換したRXY3-xFe5O12の組成比Xは0.1以上である請求項3、5、または7に記載の熱電変換素子。
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