本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図6に示すように刈取り・脱穀・籾の選別・藁処理を同時に行うコンバイン1は、複胴下扱ぎ軸流式の脱穀部を備える乗用4条刈りの自脱型コンバインであって、左右のクローラ式走行装置2を下部に備えた機体フレーム3の機体進行方向右側前部に運転操作部Aを設け、左側前部から運転操作部Aの前方にかけて刈取部Bを図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設けている。また、前記刈取部Bの後方には脱穀部Cを設けると共に、脱穀部Cの右側には収穀部Dを設けている。そして、前記脱穀部Cと収穀部Dの後方には排藁処理装置Eを設けている。
以下、各部の構成を説明すると、前記運転操作部Aは、エンジン4を覆うエンジンカバー5の上面に座席6を取り付け、座席6前方のフロア7から立設した操作コラム8には、後述するリフトシャットスイッチ9や計器盤10等を備えるフロントパネル11と、機体の旋回操作と刈取部Bの昇降操作を行うマルチステアリングレバー12を設けている。また、座席6の左側に設けたサイドパネル13には、走行静油圧式無段変速装置(走行HST)14を操作する主変速レバー15と、トランスミッションケース16に設けた走行副変速機構を操作する副変速レバー17を設けている。
なお、前記主変速レバー15のグリップ15aには、モーメンタリースイッチで構成する強制掻込みスイッチ18とオルタネートスイッチで構成する倒伏刈りスイッチ19を設けている。さらに、主変速レバー15後方のサイドパネル13には、タイトプーリから構成する脱穀クラッチ20と刈取クラッチ21をパワークラッチモータ22を介して入り切りするパワークラッチスイッチ23と、扱深さ自動制御、方向自動制御、及び水平自動制御を入り切りする自動スイッチ24と、選別自動スイッチ25を備える選別ダイヤル26等を設けている。
また、前記刈取部Bは、入力ケース、株元ケース、及び下伝動ケース等を結合して略エ字状をなす伝動フレーム27と、下伝動ケースの両端に取り付ける前処理フレーム28等を備え、エンジン4から脱穀クラッチ20、刈取部Bの駆動速度を変速する静油圧式無段変速装置から構成する搬送HST29、及び刈取クラッチ21を介して駆動される。また、前記前処理フレーム28の5本の分草パイプの先端には大小の分草板(デバイダ)30を取り付けている。また、左右端の分草板30にはナローガイド31を後方に向けて延出すると共に、左右の大分草板30の間には引起しケース内に爪付チェンを巻回した引起装置32を互いに向き合うように対をなして2組立設している。
さらに、前記前処理フレーム28の後部側にはレシプロ方式の刈刃33を左右動自在に横設し、この刈刃33上には対をなして互いに噛み合う2組のスターホイル34と、その上部に設ける突起付ベルト35で構成される掻込み装置36を設けている。また、掻込み装置36から脱穀部Cに向けて揚上搬送装置37を設けており、この揚上搬送装置37は、左右の掻込み搬送チェン38、爪を備える穂先搬送チェン39、穂先・株元搬送チェン40、扱深さ搬送チェン41、並びにそれらの挟持ガイド及び案内板等で構成される。
そして、この刈取部Bにおいて、圃場の立毛穀稈は、刈取部Bの前端下部に設けた分草板30とナローガイド31によって刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けされ、次いで左右の分草板30の間に入った穀稈が引起装置32の爪によって引起こされ、その後、掻込み装置36で掻込まれながら穀稈の株元が刈刃33によって刈取られ、また、掻込み装置36によって後方に掻き込まれた2条分毎の穀稈が、揚上搬送装置37の左右の掻込み搬送チェン38及び穂先搬送チェン39によって合流され、さらに、扱深さ搬送チェン41によって扱深さが調整されながら穂先・株元搬送チェン40によって脱穀部Cに搬送される。
さらに、前記脱穀部Cは、図4に示すように前後壁と左右の側壁と底板と上方を覆うシリンダーカバー42等からなる機枠の上部に扱室43が形成され、扱室43には刈取部Bから搬送されてきた穀稈を扱口に沿って挟持搬送する脱穀フイードチェン44及びシリンダカバー42に設けた挟持レール45と、周囲に多数植設された扱歯46を備える第1扱胴47と、第1扱胴47の下方に設けた半円形をなす受網48を設けている。また、扱室43内で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理室49を、第1扱胴47の後端穂先側より機体の後方に向かい並列して設け、この処理室49には、第2扱胴50と受網51を設けている。なお、脱穀部Cは、エンジン4から脱穀クラッチ20を介して直接的に駆動されるが、前記脱穀フイードチェン44のみは脱穀クラッチ20から更に、前記搬送HST29によって変速された動力によって駆動される。
また、前記第1及び第2扱胴47,50の下方には、受網48,51より漏下した穀粒等を選別処理する揺動選別体52及び選別風路等よりなる選別室53を設けている。ここで、前記揺動選別体52は、後端側に向かうにつれて高い位置となる傾斜状に設け、その前端側より順に無孔のグレンパン54、多数のフィン55よりなるチャフシーブ56、多数枚の鋸歯状のラックを並設したストローラック57、及びチャフシーブ56の下方にクリンプ網58を備えた一体状の枠体で構成し、図示しない揺動機構により揺動選別体52全体が前後方向に揺動運動を行うようになっている。
一方、前記選別風路は、揺動選別体52の前端側下方に設けた唐箕ファン59と中央部下方に設けたターボファン60よる起風作用と、選別室53の後端側に設けた横断流ファンとなした排塵ファン(吸引ファン)61の吸引作用とによって形成される一番物選別風路62と二番物選別風路63によって構成し、上記揺動選別体52の揺動運動と相まって風選と揺動の2つの方法で受網48,51より漏下した処理物を籾と藁屑とに選別するものである。なお、排塵ファン61で吸引された藁屑及び塵埃等の排塵は、上下のファンケーシング61a,61bに形成した排塵口61cより脱穀部Cの後方に排出される。
さらに、揺動選別体52のクリンプ網58の下方には、揺動選別作用と選別風の風選作用によって選別された一番物を回収する一番螺旋64と二番物を回収する二番螺旋65を備える一番受樋66と二番受樋67を設けている。そして、一番螺旋64によって横送りされた一番物(穀粒)は、揚穀筒に内装した揚穀螺旋68によって収穀部Dを構成するグレンタンク69に移送され、二番螺旋65によって横送りされた二番物(未選別穀粒、藁屑等)は、還元筒に内装した二番還元螺旋70でチャフシーブ56上へ再び還元される。なお、グレンタンク69は穀粒を一時的に貯蔵し、その後、排出オーガ71により機外へ排出し、或いは、下部に設けたシャッタとハンガを用いて籾袋に取出すことができる。
また、前記揺動選別体52の後端側上方には、脱穀処理を完了して扱室43より排出された排稈を後方に設けた排藁処理装置Eに向けて搬送する排藁搬送装置72を設けている。この排藁搬送装置72は、始端部を脱穀フィードチェン44の終端部に臨ませ、且つ搬送終端側を機体内側に向けて斜設し、排稈の株元側は排藁チェンと挟持レールによって、また、穂先側は爪付きチェンによって搬送するように構成している。さらに、前記排藁処理装置Eは、ディスク型カッター(排藁カッター)73で構成し、このディスク型カッター73は、脱穀部Cから排藁搬送装置72で搬送された排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
なお、前記揺動選別体52のチャフシーブ56は、図5に示すように多数のフィン55を備え、各フィン55は左右方向に突出する上側支持ピン55aが、揺動選別体52の側板に枢支される一方、下側支持ピン55bが可動プレート(不図示)を介して一連状に連結されており、この上側支持ピン55aを支点とする各フィン55の同期揺動に基づいて、チャフシーブ56の開度を変化させることができるようになっている。
すなわち、チャフシーブ56の開度調節機構を構成する、所定の上側支持ピン55aに一体的に設けられる作動アームと、作動アームの先端部に設けたローラと、揺動選別体52の外側面部に前後摺動自在に設けられ、ローラに接当する傾斜ガイド部74aが形成されたガイドプレート74と、ガイドプレート74を前後摺動させるフィン開度モータ75と、ガイドプレート74の摺動量を検出することによりフィン開度を検出するポテンショメータからなるフィン開度検出センサ76と、グレンパン54の上方に設けて、グレンパン54上の処理物の層厚を検出するポテンショメータからなる層厚センサ77とを設け、前記フィン開度モータ75を正逆回転駆動することにより各フィン55を同期揺動させて、チャフシーブ56の開度(フィン間隔)を調節することができるようになっている。
以上、コンバインの各部の構成を説明したが、次に本発明の刈取部の駆動に関わる電子制御装置について説明する。図7の制御ブロック図に示すように、電子制御装置はマイクロコンピュータからなる二つのエレクトロニックコントロールユニット(ECU)78、79を備え、各ユニット78、79はコントロールエリアネットワーク(CAN)で相互通信可能に結ばれている。そして、一方のユニット78の入力側には、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ21を入り・切りするパワークラッチスイッチ23、トランスミッションケース16に設けた伝動軸の回転数を検出するミッション回転センサ80、搬送HST29の出力回転数を検出する搬送回転センサ81、倒伏刈りスイッチ19、及び強制掻込みスイッチ18を接続している。
また、前記ユニット78の入力側には、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ21の動き量を検出するパワークラッチポテンショメータ82、主変速レバー15の操作位置を検出する主変速ポテンショメータ83、搬送HST29のトラニオン軸の角度を検出する搬送ポテンショメータ84、選別自動スイッチ25、選別ダイヤル26、層厚センサ77、及びフィン開度検出センサ76を接続している。
さらに、前記ユニット78の出力側には、パワークラッチモータ22を正逆回転させるパワークラッチモータリレー85、搬送HST29のトラニオン軸を作動させる搬送モータ86を正逆回転、並びに正逆回転時の速度切替を行う搬送HSTリレー87、フィン開度モータ75を正逆回転させるフィン開度モータリレー88、選別自動作業状態を表示する選別自動ランプ89、及び倒伏刈り作業状態を表示する倒伏刈ランプ90を接続している。
そして、前記他方のユニット79の入力側には、エンジン4の回転を検出するピックアップセンサ91、刈取部Bのリフト量を検出するリフトポテンショメータ92、マルチステアリングレバー12の昇降の倒し角度を検出するマルチステアリングレバーポテンショメータ93、及びリフトシャットスイッチ9を接続し、出力側には、電子ブザー94とリフトシャットスイッチ9の入り切り状態を表示するリフトシャットランプ95と刈取部Bの駆動速度の規制状態を表示(報知)する強制掻込みランプ96を接続している。
また、以上のように接続した電子制御装置は、図8に示すパワークラッチ制御、刈取部駆動制御、搬送HST制御、選別自動制御等の各サブルーチンを繰り返して実行し、その内、刈取部駆動制御は、刈取部Bの駆動速度を機体の走行速度(車速)等に基づいて変速することを司り、また、搬送HST制御は、エンジン4から脱穀クラッチ20を介して伝動された動力を、搬送モータ87によって搬送HST29(変速装置)のトラニオン軸を作動させて変速し、さらに、搬送HST29の下流側に設けた刈取クラッチ21を介して刈取部Bを駆動させるものである。なお、搬送HST29によって変速された動力は、刈取クラッチ21の上流側で脱穀フィードチェン44に分岐伝動するため、刈取部駆動制御は刈取部Bと脱穀フィードチェン44の駆動速度を制御することになる。
以下、刈取部駆動制御の詳細を図9のフローチャートに基づいて説明すると、刈取部駆動制御は、脱穀クラッチ20の入り切りを判断するステップS1から始まり、脱穀クラッチ20が入りとなっていれば刈取クラッチ21の入り切りを判断するステップS2に進む。なお、脱穀クラッチ20と刈取クラッチ21の入り切りは、パワークラッチスイッチ23の操作状態によって判断する。さらに、刈取クラッチ21が入りとなっていれば、主変速ポテンショメータ83によって機体が前進しているか否かを判断するステップS3に進む。そして、機体が前進している場合には、強制掻込みスイッチ18が押されたか(スイッチがオフからオンに立ち上がったか)を判断する(ステップS4)。
前記ステップS4にて強制掻込みスイッチ18がオフからオンに立ち上がると、速度規制フラグの状態が判断され(ステップS5)、強制掻込みスイッチ18が押される度に速度規制フラグはセット状態が反転するようにセット(ステップS6)され、或いはリセット(ステップS7)され、同時に強制掻込みランプ96を点滅、或いは消灯させる。また、ステップS4にて強制掻込みスイッチ18が押されていない場合は、速度規制フラグの状態は変更されない(ステップS8)。次に速度規制フラグの状態が判断され(ステップS9)、速度規制フラグがセットされていると、倒伏刈りスイッチ19の入り切り状態の判断に進む(ステップS10)。
ここで、倒伏刈りスイッチ19が切りとなっている場合は、刈取部Bの駆動目標速度を概ねミッション回転センサ80から得られる車速に比例する速度(K*車速)に設定する(ステップS11)と共に、強制掻込み速度を予め設定した標準の速度とする(ステップS12)。また、倒伏刈りスイッチ19が入りとなっている場合は、刈取部Bの駆動目標速度を概ねミッション回転センサ79から得られる車速を1.5倍した値に比例する速度(K*車速*1.5)に設定する(ステップS13)と共に、強制掻込み速度を予め設定した倒伏の速度とする(ステップS14)。
そして、次のステップ15として、刈取部Bの駆動目標速度が強制掻込み速度より大きいか否かを判断し、大きければ刈取部駆動制御のサブルーチンからメインフローに復帰し、大きくない場合は刈取部Bの駆動目標速度を強制掻込み速度に置換(ステップS16)して、同様に復帰する。また、前記ステップS9で速度規制フラグがリセットされている場合には、倒伏刈りスイッチ19の入り切り状態の判断に進み(ステップS17)、倒伏刈りスイッチ19の入り切りに応じて、刈取部Bの駆動目標速度を概ねミッション回転センサ80から得られる車速に比例する速度(K*車速)に設定し(ステップS18)、或いは刈取部Bの駆動目標速度を概ねミッション回転センサ79から得られる車速を1.5倍した値に比例する速度(K*車速*1.5)に設定する(ステップS19)。
さらに、リフトシャットスイッチ9の入り切り状態の判断に進み(ステップS20)、リフトシャットスイッチ9が入りとなっている場合は、リフトポテンショメータ92によって得られる刈取部Bの高さ(リフト量)が予め設定された高さ以上か未満かの判断に進み(ステップS21)、設定された高さ以上であれば刈取部Bの駆動目標速度をゼロに設定して(ステップS22)、復帰する。なお、リフトシャットスイッチ9が切りとなっている場合、及び刈取部Bの高さが設定された高さ未満であれば、そのまま復帰する。
そして、前記ステップS3で機体が前進していない場合(停止、又は後進している場合)には、速度規制フラグがリセットされ、同時に強制掻込みランプ96を消灯させ(ステップS23)、強制掻込みスイッチ18が押されたかを判断するステップS24に進む。ここで強制掻込みスイッチ18が押されている場合は、前記ステップS10に移行する。また、強制掻込みスイッチ18が押されていない場合は、刈取部Bの駆動目標速度をゼロに設定して(ステップS25)、復帰する。
また、前記ステップS2で刈取クラッチ21が切りとなっていれば、強制掻込みスイッチ18が押されたかを判断するステップS26に進む。ここで強制掻込みスイッチ18が押されている場合は、手扱フラグをセットし(ステップS27)、押されていない場合は、手扱フラグをリセットする(ステップS28)。そして、刈取部Bの駆動目標速度を予め設定された定速度の手扱ぎ速度に設定して(ステップS29)、復帰する。さらに、前記ステップS1で脱穀クラッチ20が切りとなっていれば、前記ステップS25に移行する。
従って、以上説明した刈取部駆動制御においては、主に刈取部Bの駆動目標速度を設定し、前記搬送HST制御においては、刈取部Bの駆動速度が駆動目標速度になるように搬送HST29を変速する。なお、搬送HST制御の具体的な説明は省略するが、搬送回転センサ81から刈取部Bの駆動速度を得て、刈取部Bの駆動速度が駆動目標速度より小であれば搬送モータ86を正転させて搬送HST29を増速し、逆に駆動目標速度より大であれば搬送モータ86を逆転させて搬送HST29を減速し、等しければ搬送モータ86を停止させて搬送HST29の変速作動を停止させて、刈取部Bの駆動速度が駆動目標速度になるように制御する。
なお、刈取部Bの駆動目標速度を機体の走行速度に同調するように設定する場合、前記刈取部駆動制御においては、概ねミッション回転センサ80から得られる車速に比例する速度(K*車速)に設定し(ステップS11、ステップS18)、或いは車速を1.5倍した値に比例する速度(K*車速*1.5)に設定(ステップS13、ステップS19)するものとした。しかし、実際には図10の走行速度と刈取部駆動速度との関係を示すグラフに示す通り、刈取部Bの駆動速度が大で脱穀フィードチェン44の搬送速度が速すぎると、扱胴47,50での扱ぎ残しが発生するため刈取部Bの駆動速度の上限が設定されている。また、刈取部Bの駆動速度が遅くなると搬送HST29の回転が不安定となり、搬送HSTの制御が安定しないため刈取部Bの駆動速度の下限が設定されている。従って、このような上限、及び下限を考慮しながら、刈取部Bの駆動目標速度がステップS11、S13、S18、S19において決定される。
次に、前記刈取部駆動制御及び搬送HST制御によって実行される刈取部Bの駆動速度の変更について、実際の刈取作業に照らし合わせて説明すると、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ21を共に入りにして前進走行して刈取作業を行う時、刈取り材料の穀稈が倒伏していない場合は、走行速度(車速)に比例する標準の駆動速度で刈取部B及び脱穀フィードチェン44は駆動される。また、刈取り材料の穀稈が倒伏していてオペレータが倒伏刈りスイッチ19を入りにすると、走行速度(車速)の1.5倍の速度に比例する倒伏状態の駆動速度で刈取部B及び脱穀フィードチェン44は駆動され、倒伏した穀稈を標準より速い引起し速度で適正に引起して刈取りを行うことができる。
さらに、前記リフトシャットスイッチ9を入りにした状態で、刈取部Bを上昇操作して刈取部Bの高さが設定高さ以上に上昇すると、刈取部B及び脱穀フィードチェン44の駆動は停止する。従って、刈取部Bを上昇操作して刈取り作業を行わない場合は、刈取部B及び脱穀フィードチェン44の駆動を自動的停止させることができ、刈取部B及び脱穀フィードチェン44から駆動振動や騒音を出し続けることを防止することができる。なお、前記倒伏刈り時に1.5倍に増速するとしたが、必ずしも1.5倍に増速する必要はなく、要は倒伏した穀稈を適正に引起すことができる適正な速度になるように増速すればよい。
また、走行速度を低速にして刈取作業を行う場合、例えば、圃場入口の傾斜面を降りながら刈取りを行う場合、畦際刈りで手刈り穀稈を極力減らすために分草体先端と畦とがギリギリ当たるか当たらないまで刈取りを行う場合、或いは刈取部を上昇させながら畦をかわして畦際の穀稈の刈取りを行う場合(刈上げ作業)は、穀稈の掻込みが不十分となるため掻込み速度を上げて稈こぼれを防止しながら刈取りたい場合がある。そこで、この場合には強制掻込みスイッチ18を一度押すと(刈取速度規制フラグがセットされ、強制掻込みランプ96が点滅する)、刈取部Bの駆動速度が強制掻込み速度に増速されるため、掻込み速度が上がって稈こぼれを防止することができる。
なお、この場合、強制掻込みスイッチ18を再度押すと(刈取速度規制フラグがリセットされ、強制掻込みランプ96が消灯する)、元の刈取部Bの駆動速度に戻るから、誤って強制掻込みスイッチ18を押してしまった場合や刈取部Bの駆動速度を増速させる必要がなくなった場合に、通常の刈取り作業状態に素早く戻すことができる。また、機体を停止したり後進させると刈取速度規制フラグが同様にリセットされる。そのため、再度機体を前進させても、刈取部Bの駆動速度が増速された状態から駆動されることはなく、通常の刈取部Bの駆動速度で刈取り作業を再開することができる。さらに、強制掻込みランプ96はフロントパネル11等に設け、刈取部Bの駆動速度の規制状態を点滅して報知するから、現在の状況判断を容易にして誤操作を防止することができる。なお、報知手段として電子ブザー94から断続音を出すようにしてもよい。
また、走行速度に同調する刈取部Bの駆動速度が強制掻込み速度より速い場合は、強制掻込みスイッチ18を押しても刈取部Bの駆動速度は強制掻込み速度にはならず、走行速度に同調する刈取部Bの駆動速度に維持される。そのため、高速刈り時に誤って強制掻込みスイッチ18を押した際にも、刈取部Bの駆動速度が逆に減速されることはないから、適正に刈取り作業を行うことができる。
さらに、強制掻込みスイッチ18を一度押して、刈取部Bの駆動速度を増速させた際には、リフトシャットスイッチ9を入りにしていても刈取部B及び脱穀フィードチェン44の駆動は停止しない。そのため、圃場の入口の傾斜面を降りながら刈取りを行う場合や、刈取部を上昇させながら畦をかわして畦際の穀稈の刈取りを行う場合(刈上げ作業)に、刈取部Bの高さによって刈取部Bの駆動が停止してしまうといったことがないから、刈取り作業が中断されることなく能率的に刈取り作業を行うことができる。
そして、走行を停止した場合や後進している場合は、刈取部B及び脱穀フィードチェン44の駆動は停止する。しかし、この場合に強制掻込みスイッチ18を押すと、刈取部Bの駆動目標速度は強制掻込み速度に設定され、刈取部B及び脱穀フィードチェン44は強制掻込み速度で駆動される。従って、走行を停止した場合や後進している場合に、刈取部Bの揚上搬送装置37に残った穀稈を脱穀処理してしまいたい時には、揚上搬送装置37から穀稈が残らず搬送されるまで強制掻込みスイッチ18を押し続ければよい。なお、この際に強制掻込みランプ96を連続点灯するように構成すると、強制掻込み状態であることがより明確になる。
また、脱穀クラッチ20のみ入りとして手刈り穀稈を手扱ぎする場合には、刈取部Bの駆動速度が手扱ぎ速度になり、その場合、刈取クラッチ21が切られているので刈取部Bは駆動されず、脱穀フィードチェン44のみが手扱ぎ速度で駆動される。しかし、この場合に刈取部Bの揚上搬送装置37に穀稈が残っていて、手扱ぎする前にこの穀稈も脱穀処理したい時がある。そして、その場合には強制掻込みスイッチ18を押すと、手扱フラグがセットされ、この手扱フラグがセットされた場合に限り、前記パワークラッチ制御において、刈取クラッチ21が入りとなるように制御される。
そのため、強制掻込みスイッチ18を押している間だけ刈取部Bも手扱ぎ速度で駆動することができ、刈取部Bの揚上搬送装置37に残った穀稈を速やかに脱穀処理することができる。なお、強制掻込みスイッチ18の押し操作を解除すると、手扱フラグがリセットされ、脱穀フィードチェン44のみが手扱ぎ速度で駆動される元の状態に戻る。従って、この場合、パワークラッチスイッチ23を操作して刈取クラッチ21を入りとしたうえで、強制掻込みスイッチ18を押して刈取部Bを強制駆動させ、その後、パワークラッチスイッチ23を操作して刈取クラッチ21を切りにする、といった工程を経て、前記と同様な作業を行う場合に比較して、操作を簡略化できて迅速に作業を行うことができる。
次に、前記選別自動制御について、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。即ち、選別自動制御においては、選別自動スイッチ25の入り切りを判断するステップS1から始まり、選別自動スイッチ25が入りとなっていれば、パワークラッチスイッチ23の操作状態によって脱穀クラッチ20の入り切りを判断するステップS2に進む。また、脱穀クラッチ20が入りとなっていれば、強制掻込みスイッチ18が押されているかを判断する(ステップ3)。なお、選別自動スイッチ25が切り、又は脱穀クラッチ20が切りとなっている場合には、選別自動制御は実行されずに復帰し、前記チャフシーブ56の開度調節は、別に用意した手動制御によって行われる。
また、前記ステップ3で強制掻込みスイッチ18が押されていないと、ミッション回転センサ80から得られる車速を取得し(ステップ4)、車速が低速領域であれば低速時におけるフィン55の開度制御範囲を取得する(ステップ5)。また、車速が中速領域であれば中速時におけるフィン55の開度制御範囲を取得する(ステップ6)。さらに、車速が高速領域であれば高速時におけるフィン55の開度制御範囲を取得する(ステップ7)。
なお、前記開度制御範囲は、図12のチャートに示すように刈取材料別の開度制御範囲に設けられる車速別制御範囲から取得するものであり、例えば、選別ダイヤル26によって刈取材料がイネで標準1が選択されている場合に、車速が中速であれば7から10のランクとなり、フィン55の最小開度は7、最大開度は10として取得することができる。
また、前記ステップ3で強制掻込みスイッチ18が押されている場合には、フィン55の開度制御範囲を車速が低速であるとした場合の制御範囲が適用される(ステップ5)。そして、フィン55の開度制御範囲が決定されたら、グレンパン54上の処理物の流量を層厚センサ77に基づいて検出し、この流量(層厚)と、選別に最適な流量として予め設定した設定値とを比較し(ステップ8)、流量が設定値より下回れば、フィン55の開度制御範囲内で開度ランクを1ランク単位で下げ、これによりフィン55の開度が、上記開度ランクに相当する開度になるように、フィン開度検出センサ76の値を見ながらフィン開度モータ75を駆動(閉作動)する(ステップ9)。
また、流量が設定値と等しい場合は、開度ランクを維持してフィン開度モータ75の駆動は行わない(作動停止)(ステップ10)。さらに、流量が設定値より上回れば、フィン55の開度制御範囲内で開度ランクを1ランク単位で上げ、これによりフィン55の開度が、上記開度ランクに相当する開度になるように、フィン開度検出センサ76の値を見ながらフィン開度モータ75を駆動(開作動)する(ステップ11)。
従って、前記選別自動制御は、車速と選別ダイヤル26によって指示される刈取材料条件に基づいてフィン55の開度制御範囲が決定され、また、選別処理物の流量に基づいてフィン55の開度が開度制御範囲内で選別が最適になるように制御されるため、穀粒の選別精度を向上させることができる。そして、係る選別自動制御中に強制掻込みスイッチ18が押されると、実際の車速に拘らず車速が低速であるとみなして選別自動制御が行われる。
つまり、強制掻込みスイッチ18が押されると、前記刈取部駆動制御において説明した通り、刈取部B及び脱穀フィードチェン44が駆動されて、刈取部Bの揚上搬送装置37に残った穀稈を脱穀処理する場合であり、この場合、脱穀選別する処理量は少なくなるので、小供給量、即ち車速が低速であるとしたフィン55の開度制御範囲で選別自動制御を行うことにより、選別精度を向上させることができる。
より詳しく説明すると、刈取部駆動制御において、機体の後進時に強制掻込みスイッチ18を押すと、刈取部B及び脱穀フィードチェン44が駆動される、しかし、この場合に高速で後進しても脱穀選別する処理量は多くなることはない。そして、この時に選別自動制御で車速が高速であるとして、フィン55の開度制御範囲を大供給量として決定すると、フィン55が開き気味になり選別精度が悪くなる。従って、前記のように選別自動制御することにより、このような状態を未然に防止することができる。
なお、前記刈取部駆動制御において、強制掻込み状態から通常の刈取部駆動制御に戻す条件を、強制掻込みスイッチ18の再度の押し操作、又は機体の停止、或いは後進としたが、例えば、機体の前進時に強制掻込みスイッチ18を押した時の車速より速い車速になった際に通常の刈取部駆動制御に戻すことを条件としたり、或いは条件に追加すれば、圃場入口の傾斜面を低速で降りながら刈取り作業を行い、そのまま平坦となった圃場を増速させて刈取り作業を行った場合に、通常の刈取部駆動制御に速やかに戻すことができるため、以後、刈取部の駆動速度を車速に同調させた速度で駆動することができるものであって、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
また、前記パワークラッチ制御の説明を省略したが、パワークラッチ制御は、パワークラッチスイッチ23の入り方向の押し操作によって順次、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ21の切状態、脱穀クラッチ20の入状態、そして、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ21の入状態に変更され、また、切り方向の押し操作によって上記と逆方向に変更される。より詳細にはパワークラッチスイッチ23によって上記作動指令が出されると、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ21が対応する入り・切り位置になるようにパワークラッチポテンショメータ82の値を読み出しながらパワークラッチモータ22を正逆回転させて、クラッチ制御が行われる。