JP2016039841A - 透析用部材、ダイアライザー、透析装置および透析方法 - Google Patents

透析用部材、ダイアライザー、透析装置および透析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安全性の高い透析用部材、ダイアライザー、透析装置および透析方法を提供する。【解決手段】透析用部材P10は、複数の管状の流路が設けられ、これらの壁部がセルロース系材料で構成されたものであって、一体的に形成された壁部によって、複数の流路に分画されている。流路として、第1の流体が流れる第1の流路P1と、第1の流体とは異なる第2の流体が流れる第2の流路P2とを有し、第1の流体と第2の流体とが、逆方向に流れ、第1の流路および第2の流路を、それぞれ、複数有し、流路の長手方向に沿って、第1の流路を取り囲むように、複数の第2の流路が配される。【選択図】図1

Description

本発明は、透析用部材、ダイアライザー、透析装置および透析方法に関する。
血液の浄化処理(血液透析療法、人工透析)には、単位体積当たりの表面積が大きく高効率であることから、中空糸が広く用いられている。
そして、人工透析用の中空糸の構成材料としては、再生セルロース、セルローストリアセテート等のセルロース系材料や、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル系ポリマーアロイ等の合成高分子系材料が用いられている。
特に、アレルギー等の問題を生じにくく、生体安全性に優れている点では、セルロース系材料が有利である(例えば、特許文献1参照)。
中空糸を用いる場合、多数の中空糸を束ね、筐体に組み込む。この作業は、通常、手作業で行うため、生産コストは高く、製造に要する時間も長い。
また、患者の体格や用途に合わせて容量等を変更する場合には、さらに多くのコストと時間を要する。
また、中空糸は、一般に、直径が100μm程度と非常に細いものであるため、製造時や透析中に中空糸が破損する危険性がある。
特開平2−218374号公報
本発明の目的は、安全性の高い透析用部材、ダイアライザー、透析装置および透析方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の透析用部材は、複数の管状の流路が設けられ、これらの壁部がセルロース系材料で構成された透析用部材であって、
一体的に形成された前記壁部によって、複数の前記流路に分画されていることを特徴とする。
これにより、安全性の高い透析用部材を提供することができる。
本発明の透析用部材では、前記流路として、第1の流体が流れる第1の流路と、前記第1の流体とは異なる第2の流体が流れる第2の流路とを有し、前記第1の流体と前記第2の流体とが、逆方向に流れるものであることが好ましい。
これにより、透析の効率を特に優れたものとすることができる。
本発明の透析用部材では、前記第1の流路および前記第2の流路を、それぞれ、複数有していることが好ましい。
これにより、透析用部材の単位体積当たりの壁部の面積(半透膜として機能する部位の面積)を大きいものとすることができ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。
本発明の透析用部材では、前記流路の長手方向に沿って、前記第1の流路を取り囲むように、複数の前記第2の流路が配されていることが好ましい。
これにより、透析の効率を特に優れたものとすることができる。特に、第1の流体中に含まれる不要分の除去効率を特に優れたものとすることができる。
本発明の透析用部材では、前記流路の長手方向に垂直な方向での断面形状がハニカム状をなすものであることが好ましい。
これにより、透析用部材の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとしつつ、透析用部材の単位体積当たりの壁部の面積(半透膜として機能する部位の面積)を大きいものとすることができ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。特に、流路の幅が比較的大きいものである場合でも、透析用部材の機械的強度、形状の安定性、透析の効率を優れたものとすることができる。したがって、透析用部材の製造をより容易に行いつつ、製造される透析用部材の特性を優れたものとすることができる。
本発明の透析用部材では、前記流路が、らせん状をなすものであることが好ましい。
これにより、透析用部材の大型化を防止しつつ、透析用部材の単位体積当たりの壁部の面積(半透膜として機能する部位の面積)を大きいものとすることができ、また、流体をより確実に円滑に流通させることができるため、透析の効率を特に優れたものとすることができる。
本発明の透析用部材では、透析用部材は、三次元造形法により製造されたものであることが好ましい。
これにより、例えば、複雑な形状を有する透析用部材、微小な構造を有する透析用部材を高い寸法精度で効率よく製造することができる。また、透析用部材の仕様の調整を好適に行うことができる。
本発明の透析用部材では、前記流路の幅は、300μm以上500μm以下であることが好ましい。
これにより、容易に流体の流量を大きいものとすることができ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。また、流体を流通させる際に加える圧力を比較的小さいものとした場合であっても、十分な流量を確保することができるため、透析の効率を優れたものとしつつ、圧力によって流体にダメージが及ぶことを効果的に防止することができる。
本発明の透析用部材では、前記壁部の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
これにより、透析用部材の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとしつつ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材の製造も容易なものとなる。
本発明の透析用部材では、前記壁部により分画された前記流路の数は、5000以上50000以下であることが好ましい。
これにより、透析用部材の大型化を防止しつつ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材の機械的強度、形状の安定性等も特に優れたものとなる。
本発明の透析用部材では、前記セルロース系材料は、セルロースに対して化学修飾を施したものであることが好ましい。
これにより、セルロースが有している特長を発揮させつつ、透析用部材の機械的強度を特に優れたものとすることができ、その一部が不本意に分離してしまう等の破損、欠損が生じることをより効果的に防止することができ、透析用部材の安全性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
本発明の透析用部材では、前記セルロース系材料は、反応性官能基が導入されたセルロース誘導体を反応させ、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させたものであることが好ましい。
これにより、セルロースが有している特長をより効果的に発揮させつつ、透析用部材の機械的強度、形状の安定性、化学的安定性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
本発明のダイアライザーは、本発明の透析用部材を備えたことを特徴とする。
これにより、安全性の高いダイアライザーを提供することができる。
本発明の透析装置は、本発明の透析用部材を備えたことを特徴とする。
これにより、安全性の高い透析装置を提供することができる。
本発明の透析方法は、本発明の透析用部材を用いて、透析を行うことを特徴とする。
これにより、安全性の高い透析方法を提供することができる。
本発明の透析用部材の好適な実施形態を模式的に示す側面図である。 本発明の透析用部材の製造方法の第1実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 本発明の透析用部材の製造方法の第1実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 本発明の透析用部材の製造方法の第2実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 本発明の透析用部材の製造方法の第2実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 透析用部材製造装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。 透析用部材製造装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の透析装置の好適な実施形態を示す模式図である。
以下、添付する図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細な説明をする。
《透析用部材》
まず、本発明の透析用部材について説明する。
図1は、本発明の透析用部材の好適な実施形態を模式的に示す側面図である。
図1に示すように、透析用部材P10は、複数の管状の流路として、互いに異なる流体が流れる第1の流路P1と第2の流路P2とを有している。
そして、これらの流路は、セルロース系材料で構成され、一体的に形成された壁部P3によって分画されている。
このように、セルロース系材料で構成され、一体的に形成された壁部P3によって複数の流路(第1の流路P1、第2の流路P2)が分画されていることにより、透析用部材P10の強度、安全性、信頼性を優れたものとすることができる。
また、複数の中空糸を束ねて、筐体に組み込んだ従来の構造では、製造時や透析中に中空糸が破損する危険性があるだけでなく、生産性が低いという問題があったが、透析用部材P10ではこのような問題も解決することができる。
第1の流路P1を流れる第1の流体と、第2の流路P2を流れる第2の流体とは異なるものである。
そして、セルロース系材料で構成された壁部P3は、半透膜として機能するものである。
したがって、例えば、透析用部材P10を人工透析(血液透析療法)に用いる場合には、血液中の電解質、水分量を維持しつつ、血液中の老廃物を好適に除去することができる。
透析用部材P10を人工透析(血液透析療法)に用いる場合、例えば、第1の流路P1には第1の流体としての血液を流通させ、第2の流路P2には第2の流体としての透析液を流通させることができる。
以下の説明では、透析用部材P10が、第1の流路P1には第1の流体としての血液を流通させ、第2の流路P2には第2の流体としての透析液を流通させることにより、人工透析(血液透析療法)に用いるものである場合について代表的に説明する。
また、透析用部材P10において、第1の流路P1と第2の流路P2とでは、流体が逆方向に流れるように構成されている。
これにより、透析の効率を特に優れたものとすることができ、血液(第1の流体)中の電解質を好適に維持しつつ、より効率よく老廃物を除去することができる。
また、透析用部材P10は、第1の流路P1および第2の流路P2を、それぞれ、複数有している。
これにより、透析用部材P10の単位体積当たりの壁部P3の面積(半透膜として機能する部位の面積)を大きいものとすることができ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。
また、流路の長手方向に沿って、第1の流路P1を取り囲むように、複数の第2の流路P2が配されている。
これにより、血液(第1の流体)中に含まれる溶質としての老廃物の除去効率を特に優れたものとすることができる。
流路(第1の流路P1および第2の流路P2)の断面形状は特に限定されないが、本実施形態では、流路(第1の流路P1および第2の流路P2)の長手方向に垂直な方向での断面形状がハニカム状をなすもの、すなわち、各流路が六角形状をなすものである。
これにより、透析用部材P10の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとしつつ、透析用部材P10の単位体積当たりの壁部の面積(半透膜として機能する部位の面積)を大きいものとすることができ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。特に、流路(第1の流路P1および第2の流路P2)の幅が比較的大きいもの(従来の中空糸の中空部に比して大きいもの)である場合でも、透析用部材P10の機械的強度、形状の安定性、透析の効率を優れたものとすることができる。したがって、透析用部材P10の製造をより容易に行いつつ、製造される透析用部材P10の特性を優れたものとすることができる。
流路(第1の流路P1および第2の流路P2)の幅は、300μm以上500μm以下であるのが好ましく、350μm以上450μm以下であるのがより好ましい。
これにより、容易に流体の流量を大きいものとすることができ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。また、透析に要する時間(治療時間)を短いものとすることができ、患者の負担を軽減することができる。また、流体を流通させる際に加える圧力を比較的小さいものとした場合であっても、十分な流量を確保することができるため、透析の効率を優れたものとしつつ、圧力によって流体にダメージが及ぶことを効果的に防止することができる。より具体的には、第1の流体である血液を構成する成分(例えば、血球等)がダメージを受けることを効果的に防止することができる。また、透析用部材P10の製造をより容易に行うことができる。
なお、流路の幅としては、例えば、流路の長手方向に対して垂直な断面での断面形状が、円形である場合にはその直径の値を採用することができ、非円形である場合にはその断面積と同一の面積を有する円の直径の値を採用することができる。
なお、透析用部材を構成する複数の流路で(例えば、第1の流路P1と第2の流路P2とで)、断面形状、断面積は、互いに異なるものであってもよいが、同一であるものが好ましい。これにより、これらの流路を高密度で配することができ、透析用部材P10の機械的強度等をより確実に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の製造も容易なものとなる。
壁部P3の厚さは、10μm以上100μm以下であるのが好ましく、20μm以上80μm以下であるのがより好ましい。
これにより、透析用部材P10の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとしつつ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の製造も容易なものとなる。
壁部P3により分画された流路(第1の流路P1および第2の流路P2)の数は、5000以上50000以下であるのが好ましく、8000以上30000以下であるのがより好ましい。
これにより、透析用部材P10の大型化を防止しつつ、透析の効率を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の機械的強度、形状の安定性等も特に優れたものとなる。
また、透析用部材P10を構成する各流路(第1の流路P1および第2の流路P2)は、らせん状をなすものである。
これにより、透析用部材P10の大型化を防止しつつ、透析用部材P10の単位体積当たりの壁部P3の面積(半透膜として機能する部位の面積)を大きいものとすることができ、また、流体をより確実に円滑に流通させることができるため、透析の効率を特に優れたものとすることができる。
透析用部材P10は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、三次元造形法(所定の形状を有する層状のパターンを形成する工程を繰り返し行うことにより、前記パターンを重ね合わせ、三次元造形物を製造する方法)により製造されたものであるのが好ましい。
これにより、前述したような複雑な形状を有する透析用部材P10、微小な構造を有する透析用部材P10を高い寸法精度で効率よく製造することができる。また、患者の体格や用途等に応じた、仕様の調整を好適に行うことができる。
なお、三次元造形法による透析用部材P10の製造については、後に詳述する。
前述したように、透析用部材P10は、セルロース系材料で構成されたものである。セルロースは、再生可能な資源で、地球上に莫大な蓄積量があるととともに、生体適合性、安全性に優れた材料であるとともに、半透膜としての機能を発揮し得る材料である。したがって、セルロース系材料は、透析用部材P10(壁部P3)の構成材料として好ましい。
セルロース系材料としては、例えば、セルロースを用いることもできるが、セルロースに対して化学的修飾を施したセルロース誘導体を含むものであるのが好ましい。
これにより、セルロースが有している特長(高強度、軽量、生体安全性等)を発揮させつつ、透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができ、その一部が不本意に分離してしまう等の破損、欠損が生じることをより効果的に防止することができ、透析用部材P10の安全性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
本明細書において、セルロース誘導体とは、セルロース(β−グルコースがグリコシド結合により重合した化合物)から化学反応により誘導することができる化合物であればよく、例えば、セルロースが有する水酸基の少なくとも一部を他の置換基に変化させたもの(セルロースが有する水酸基の少なくとも一部を他の化合物と縮合反応させたもの等を含む)等が挙げられる。
なお、前記置換基は、すべての繰り返し単位(グルコース構造)について、同様に導入されたものであってもよいし、繰り返し単位(グルコース構造)の一部にのみ導入されたものであってもよい。また、繰り返し単位(グルコース構造)によって、前記置換基が導入された部位が異なっていてもよい。
特に、透析用部材P10を構成するセルロース誘導体としては、例えば、反応性官能基を含む原料としてのセルロース誘導体について、前記反応性官能基を反応させることにより、前記原料としてのセルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合したものを用いることができる。
これにより、セルロースが有している特長をより効果的に発揮させつつ、透析用部材P10の機械的強度、形状の安定性、化学的安定性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
なお、前記反応性官能基としては、セルロース誘導体の分子同士を直接結合するものであってもよいし、他の原子(少なくとも1個の原子)を介して、結合するものであってもよい。
前記反応性官能基としては、例えば、炭素−炭素二重結合を含むもの、水酸基、カルボキシル基等が挙げられるが、炭素−炭素二重結合を含むものであるのが好ましい。
これにより、原料としてのセルロース誘導体の反応性を優れたものとすることができ、製造される透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、製造される透析用部材P10中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、原料としてのセルロース誘導体と反応する化合物(反応性官能基と反応し得る化合物)の選択の幅が広がるため、透析用部材P10の設計の幅が広がる。
炭素−炭素二重結合を含む官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基等が挙げられるが、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
これにより、原料としてのセルロース誘導体の反応性をさらに優れたものとすることができ、透析用部材P10の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、最終的な透析用部材P10中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることをより効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性をさらに優れたものとすることができる。また、原料としてのセルロース誘導体と反応する化合物(反応性官能基と反応し得る化合物)の選択の幅が広がるため、透析用部材P10の設計の幅がさらに広がる。
前記反応性官能基は、原料としてのセルロース誘導体のいかなる部位に導入されたものであってもよいが、セルロースを構成するβ−グルコースの6位の炭素に結合する水酸基に化学反応により導入されたものであるのが好ましい。すなわち、下記式(2)のRに前記反応性官能基が導入されているのが好ましい。
Figure 2016039841
(式(2)中、nは、1以上の整数であり、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、少なくとも、分子内に少なくとも1つの官能基が導入されている。)
これにより、前記反応性官能基の立体障害を小さいものとすること等から、原料としてのセルロース誘導体の反応性を優れたものとすることができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを防止することができる。このようなことから、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、原料としてのセルロース誘導体の合成を効率よく行うことができる。その結果、透析用部材P10の生産コストの低減にも寄与することができる。
また、前記反応性官能基は、基本となるセルロース構造に、少なくとも1つの炭素−炭素単結合を介してセルロース骨格に導入されたものであるのが好ましい。
これにより、前記反応性官能基の反応性を特に優れたものとすることができ、透析用部材P10の生産性等を特に優れたものとすることができる。
上記のような条件を満足する好ましい原料としてのセルロース誘導体の一例としては、下記式(3)で示されるようなものが挙げられる。
Figure 2016039841
(式(3)中、nは、1以上の整数であり、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子(H)またはアセチル基(CHCO)、Rは、水素原子(H)またはメチル基(CH)である。)
原料としてのセルロース誘導体が式(3)で示されるものであることにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
原料としてのセルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる反応は、紫外線の照射により進行するものであるのが好ましい。
これにより、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の製造装置の構成の複雑化を防止し、透析用部材P10の生産コストを抑制することができる。
原料としてのセルロース誘導体(特に、前記反応性官能基が炭素−炭素二重結合を含むものであるセルロース誘導体)は、分子内に2個以上のS−H結合を有するシロキサン化合物と反応するものであるのが好ましい。
これにより、前記共有結合の形成効率を特に優れたものとすることができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、加熱により、前記共有結合を形成する化学反応を好適に行うことができる。
原料としてのセルロース誘導体が反応するシロキサン化合物は、分子内に2個以上のS−H結合を有するものであるのが好ましいが、分子内に3個以上のS−H結合を有するものであるのがより好ましい。
これにより、前記共有結合を形成する化学反応によって、より複雑な網目構造を形成することができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
また、原料としてのセルロース誘導体が反応する前記シロキサン化合物は、鎖状化合物であってもよいが、環状化合物であるのが好ましい。
これにより、透析用部材P10の機械的強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
このような条件を満足するシロキサン化合物(原料としてのセルロース誘導体と反応するシロキサン化合物)としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
Figure 2016039841
また、原料としてのセルロース誘導体(特に、前記反応性官能基が炭素−炭素二重結合を含むものであるセルロース誘導体)は、架橋剤と反応するものであってもよい。
これにより、例えば、前記共有結合を形成する化学反応によって、より複雑な網目構造を形成することができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。また、例えば、紫外線等の光の照射により、前記共有結合を形成する化学反応を好適に行うことができる。
架橋剤としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基等の重合性官能基を有する化合物等が挙げられる。
中でも、架橋剤としては、分子内に複数個の重合性官能基を有する化合物が好ましく、アルキル鎖の両末端が重合性官能基で修飾された化合物がより好ましい。
このような架橋剤としては、例えば、下記式(5)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2016039841
(式(5)中、nは、1以上の整数である。)
また、透析用部材P10を構成するセルロース誘導体としては、液晶性の官能基(液晶性官能基)を含むものを用いてもよい。
このようなセルロース誘導体を含むことにより、セルロースが有している特長をより効果的に発揮させつつ、透析用部材P10の機械的強度、形状の安定性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
より詳しく説明すると、分子内に液晶性の官能基を有するセルロース誘導体を用いることにより、透析用部材P10において、液晶成分(液晶性を有する官能基)の配向(配列)による効果を、セルロース誘導体全体に反映させることができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性等を確実に優れたものとすることができる。
液晶性を有する官能基(原子団)としては、例えば、下記式(6)に示すようなものを挙げることができる。
Figure 2016039841
液晶性の官能基は、セルロース誘導体のいかなる部位に導入されたものであってもよいが、セルロースを構成するβ−グルコースの6位の炭素に結合する水酸基に化学反応により導入されたものであるのが好ましい。すなわち、下記式(2)のRに前記官能基が導入されているのが好ましい。
Figure 2016039841
(式(2)中、nは、1以上の整数であり、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、少なくとも、分子内に少なくとも1つの官能基が導入されている。)
これにより、液晶性官能基によるセルロース誘導体の配向の効果をより顕著に発揮させることができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、原料としてのセルロース誘導体の合成を効率よく行うことができる。その結果、透析用部材P10の生産コストの低減にも寄与することができる。
液晶性の官能基は、セルロース誘導体の分子内に、複数個導入されているのが好ましい。
これにより、透析用部材P10中においてセルロース誘導体をより好適に配列させることができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
特に、複数個の液晶性の官能基は、セルロース骨格構造(基本骨格)に導入された繰り返し構造を有する高分子鎖(側鎖)の繰り返し単位に導入されているものであるのが好ましい。
これにより、例えば、セルロース誘導体分子において、より確実に液晶性の官能基を規則的に存在させることができる。また、セルロース誘導体分子が有する複数の液晶性の官能基の条件を好適に揃えることができる。このようなことから、透析用部材P10においてセルロース誘導体を高密度で存在させることができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
このような条件を満足する好ましいセルロース誘導体の具体例としては、下記式(9)、式(10)、式(11)、式(12)で示されるようなものが挙げられる。
Figure 2016039841
Figure 2016039841
Figure 2016039841
Figure 2016039841
(式(9)、式(10)、式(11)、式(12)中、nは、2以上の整数であり、l、m、pは、それぞれ独立に、1以上の整数であり、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子(H)またはアセチル基(CHCO)である。)
《透析用部材の製造方法》
次に、本発明の透析用部材の製造方法について説明する。
≪第1実施形態≫
図2、図3は、本発明の透析用部材の製造方法の第1実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。
以下の説明では、透析用部材の製造に、反応性官能基を備えたセルロース誘導体を含む組成物を用い、透析用部材の製造過程において、前記反応性官能基を反応させる場合について代表的に説明する。
図2、図3に示すように、本実施形態の製造方法は、粒子を含む組成物P4’を用いて、側面支持部(枠体)45で囲われた領域に、所定の厚さを有する層P4を形成する層形成工程(1a、1d)と、インクジェット法により、層P4に対し、セルロース誘導体(セルロース系材料)を含むインクP42を付与するインク付与工程(1b、1e)と、層P4に付与されたインクP42中に含まれるセルロース誘導体が有する反応性官能基を反応させ、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる(セルロース誘導体を硬化させる)結合形成工程(1c、1f)とを有し、これらの工程を順次繰り返し行い(1g)、さらに、その後に、各層P4を構成する粒子のうち、セルロース誘導体(結合剤、硬化成分)により結合していないものを除去する未結合粒子除去工程(1h)を有している。
以下、各工程について説明する。
<層形成工程>
層形成工程では、粒子を含む組成物(三次元造形用組成物)P4’を用いて、所定の厚さを有する層P4を形成する(1a、1d)。
このように、粒子を含む組成物P4’を用いることにより、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の耐熱性や機械的強度等を特に優れたものとすることができる。
なお、組成物P4’については、後に詳述する。
本工程では、平坦化手段を用いて、層P4を表面が平坦化されたものとして形成する。
1回目の層形成工程では、ステージ41の表面に所定の厚さで層P4を形成する(1a)。このとき、ステージ41の側面と側面支持部45とが密着(当接)した状態となっており、ステージ41と側面支持部45との間から、組成物P4’が落下することが防止されている。
2回目以降の層形成工程では、先の工程で形成された層P4(第1の層)の表面に新たな層P4(第2の層)を形成する(1d)。このとき、ステージ41の層P4(ステージ41上に複数の層P4がある場合には、少なくとも最も上側に設けられた層P4)の側面と側面支持部45とが密着(当接)した状態となっており、ステージ41とステージ41上の層P4との間から、組成物P4’が落下することが防止されている。
本工程においては、組成物P4’を加熱してもよい。これにより、例えば、組成物P4’が溶融成分を含む場合において、組成物P4’をより好適にペースト状のものとすることができる。
本工程における組成物P4’の粘度は、7000mPa・s以上60000mPa・s以下であるのが好ましく、10000mPa・s以上50000mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、形成される層P4における不本意な膜厚のばらつきの発生をより効果的に防止することができる。
なお、本明細書中において、粘度とは、E型粘度計(例えば、東京計器社製 VISCONIC ELD)を用いて25℃において測定される値をいう。
本工程で形成する層P4の厚さは、特に限定されないが、例えば、30μm以上500μm以下であるのが好ましく、70μm以上150μm以下であるのがより好ましい。これにより、透析用部材P10の生産性を十分に優れたものとしつつ、製造される透析用部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
<インク付与工程>
層形成工程で層P4を形成した後、インクジェット法により、当該層P4に対し、セルロース誘導体(セルロース系材料)を含むインクP42を付与する(1b、1e)。
インクP42については後に詳述するが、本実施形態においてインクP42に含まれるセルロース誘導体は、結合形成工程(硬化工程)において、分子間で共有結合を形成するものである。このようなセルロース誘導体を含むことにより、層P4を構成する粒子を強固に結合することができるとともに、隣り合う層P4のインクP42が付与された部位同士も強固に結合することができる。
本工程では、層P4のうち透析用部材P10の実部(壁部P3)に対応する部位にのみ、選択的にインクP42を付与する。
これにより、層P4を構成する粒子同士を強固に結合させ、最終的に所望の形状の結合部(実体部)P43を形成することができる。また、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度を優れたものとすることができる。
本工程では、インクジェット法によりインクP42を付与するため、インクP42の付与パターンが微細な形状のものであっても再現性よくインクP42を付与することができる。その結果、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を特に高いものとすることができる。
なお、インクP42については、後に詳述する。
<結合形成工程(硬化工程)>
インク付与工程で層P4にインクP42を付与した後、層P4に付与されたインクP42に含まれるセルロース誘導体が有する官能基を反応させ、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させ、結合部(実体部)P43を形成する(1c、1f)。
このように、セルロース誘導体の分子同士を共有結合で形成することにより、分子間での分離等による強度の低下等を効果的に防止しつつ、セルロース系材料が本来有している特長(例えば、高強度、軽量、生体安全性等)を発揮させることができる。そして、前記共有結合の形成に伴い、セルロース誘導体と粒子とを強固に結合することもできる。このようなことから、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を優れたものとすることができる。
本工程は、インクP42に含まれるセルロース誘導体の種類により異なるが、例えば、加熱やエネルギー線(例えば、紫外線等の光線や、電子線、陽電子線、中性子線、α線、イオンビーム等)の照射等により行うことができる。
特に、インクP42中に含まれるセルロース誘導体を、加熱により硬化させる場合、透析用部材P10の製造装置の構成を簡易なものとすることができる。また、透析用部材P10の原料が光透過性の低い材料であっても、目的とする反応を好適に進行させることができる。
セルロース誘導体の硬化(セルロース誘導体の分子鎖間での共有結合の形成)を加熱により行う場合、加熱温度は、セルロース誘導体の種類等により異なるが、50℃以上180℃以下であるのが好ましく、60℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
また、インクP42中に含まれるセルロース誘導体を、光の照射により硬化させる場合、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
セルロース誘導体を光の照射により硬化させる場合、当該光としては、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、X線、マイクロ波、ラジオ波等を用いることができるが、紫外線であるのが好ましい。
これにより、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、透析用部材P10の製造装置の構成の複雑化を防止し、透析用部材P10の生産コストを抑制することができる。
また、セルロース誘導体を紫外線の照射により硬化させる場合、紫外線のピーク波長は、250nm以上400nm以下であるのが好ましい。また、硬化させるべき各部位への紫外線の照射時間は、30秒以上60秒以下であるのが好ましい。
なお、インク付与工程と結合形成工程とは、同時進行的に行ってもよい。すなわち、1つの層P4全体のパターン全体が形成される前に、インクP42が付与された部位から順次反応を進行させるものであってもよい。
<未結合粒子除去工程>
そして、前記のような工程を繰り返し行った後に、後処理工程として、各層P4を構成する粒子のうち、インクP42により結合していないもの(未結合粒子)を除去する未結合粒子除去工程(1h)を行う。これにより、透析用部材P10が取り出される。
本工程の具体的な方法としては、例えば、刷毛等で未結合粒子を払い除ける方法、未結合粒子を吸引により除去する方法、空気等の気体を吹き付ける方法、水等の液体を付与する方法(例えば、液体中に前記のようにして得られた積層体を浸漬する方法、液体を吹き付ける方法等)、超音波振動等の振動を付与する方法等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。より具体的には、空気等の気体を吹き付けた後に、水等の液体に浸漬する方法や、水等の液体に浸漬した状態で、超音波振動を付与する方法等が挙げられる。中でも、前記のようにして得られた積層体に対し、水を含む液体を付与する方法(特に、水を含む液体中に浸漬する方法)を採用するのが好ましい。
前述したように、結合部(実体部)P43においては、インクP42に含まれるセルロース誘導体が有する官能基が反応することにより、セルロース誘導体の分子鎖間に共有結合が形成され、強固に結合しているため、本工程において、結合部(実体部)P43が不本意に除去されてしまったり、変形してしまうこと等が確実に防止されている。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の透析用部材の製造方法の第2実施形態について説明する。
図4、図5は、本発明の透析用部材の製造方法の第2実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
図4、図5に示すように、本実施形態の製造方法は、セルロース誘導体(セルロース系材料)を含み実体部P46の形成に用いる実体部形成用インクP46’および実体部P46を支持する支持部P47の形成に用いる支持部形成用インクP47’を、インクジェット法により、所定のパターンで吐出するインク付与工程(2a、2c)と、吐出した実体部形成用インクP46’中に含まれるセルロース誘導体が有する官能基を反応させ、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる(セルロース誘導体を硬化させる)結合形成工程(2b、2d)と、これらの工程を順次繰り返し行い仮成形体P10’を得(2e)、さらに、その後に、支持部P47を除去する支持部除去工程(2f)を有している。
このように、本実施形態では、インク付与工程と結合形成工程とによって、層P4を形成している。すなわち、本実施形態では、層形成工程は、インク付与工程と結合形成工程とを含むものである。
このように、本実施形態では、粒子を含む組成物を、平坦化手段で平坦化しつつ層を形成することなく、インクジェット法により吐出されるインクを層形成用の組成物として用いて、層を形成する。
これにより、造形領域(ステージ41上の領域)の必要な個所に組成物を選択的に付与することができるため、透析用部材P10の製造に伴う材料の無駄を防止、抑制することができる。このため、透析用部材P10の生産コストの低減、省資源の観点から有利である。また、全体としての工程数を少なくすることができ、材料の回収等の処理も省略または簡略化することができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
以下、各工程について説明する。
<インク付与工程(インク吐出工程)>
インク付与工程では、インクジェット法により、セルロース誘導体(セルロース系材料)を含む実体部形成用インクP46’および硬化性樹脂(硬化性成分)を含む支持部形成用インクP47’を、インクジェット法により、所定のパターンで吐出する(2a、2c)。
より具体的には、透析用部材P10の実体部P46となるべき領域に実体部形成用インクP46’を付与し、透析用部材P10の実体部P46の最外層となるべき領域に隣接する領域であって、前記最外層の表面側の領域に支持部形成用インクP47’を付与する。
1回目のインク付与工程では、ステージ41上に、インク(実体部形成用インクP46’、支持部形成用インクP47’)を吐出し(2a)、2回目以降のインク付与工程では、層P4上に、インク(実体部形成用インクP46’、支持部形成用インクP47’)を吐出する(2c)。
このように、本実施形態では、透析用部材P10の実体部P46となるべき部位にインク(実体部形成用インクP46’)を付与するだけでなく、その表面側にもインク(支持部形成用インクP47’)を付与する。
これにより、支持部形成用インクP47’を付与して支持部P47を形成することにより、透析用部材P10を構成する層(第2の層)として、それよりも下の層(第1の層)の外周部からはみ出す部分を有するもの(例えば、図中での、下から1層目と2層目との関係、下から2層目と3層目との関係、下から5層目と6層目との関係、下から6層目と7層目との関係)であっても、下層(第1の層)の支持部P47が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP46’を好適に支持することができる。そのため、実体部P46の不本意な変形(特に、ダレ等)を好適に防止することができ、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
また、本工程では、インクジェット法によりインク(実体部形成用インクP46’および支持部形成用インクP47’)を付与するため、インク(実体部形成用インクP46’および支持部形成用インクP47’)の付与パターンが微細な形状のものであっても再現性よくインクを付与することができる。その結果、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を特に高いものとすることができる。
なお、実体部形成用インクP46’、支持部形成用インクP47’については、後に詳述する。
本工程で付与されるインク量は、特に限定されないが、後の結合形成工程で形成される層P4の厚さが30μm以上500μm以下となるものであるのが好ましく、70μm以上150μm以下となるものであるのがより好ましい。
これにより、透析用部材P10の生産性を十分に優れたものとしつつ、製造される透析用部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、最終的に得られる透析用部材P10の表面状態をより好適に制御することができる。
<結合形成工程(層形成工程)>
インク付与工程でインク(実体部形成用インクP46’、支持部形成用インクP47’)を付与(吐出)した後、実体部形成用インクP46’に含まれるセルロース誘導体を硬化させるとともに、支持部形成用インクP47’に含まれる硬化成分(硬化性樹脂)を硬化させる(2b、2d)。これにより、実体部P46および支持部P47を有する層P4が得られる。すなわち、実体部形成用インクP46’が付与された部位は、実体部P46となり、支持部形成用インクP47’が付与された部位は、支持部P47となる。
本工程は、実体部形成用インクP46’に含まれるセルロース誘導体の種類、支持部形成用インクP47’中に含まれる硬化成分(硬化性樹脂)の種類により異なるが、例えば、加熱やエネルギー線(例えば、紫外線等の光線や、電子線、陽電子線、中性子線、α線、イオンビーム等)の照射等により行うことができる。
特に、実体部形成用インクP46’中に含まれるセルロース誘導体を、加熱により硬化させる場合、透析用部材P10の製造装置の構成を簡易なものとすることができる。また、透析用部材P10の原料が光透過性の低い材料であっても、目的とする反応を好適に進行させることができる。
セルロース誘導体の硬化(セルロース誘導体の分子鎖間での共有結合の形成)、支持部形成用インクP47’の硬化を加熱により行う場合、加熱温度は、セルロース誘導体の種類等により異なるが、50℃以上180℃以下であるのが好ましく、60℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
また、実体部形成用インクP46’中に含まれるセルロース誘導体を、光の照射により硬化させる場合、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
セルロース誘導体を光の照射により硬化させる場合、当該光としては、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、X線、マイクロ波、ラジオ波等を用いることができるが、紫外線であるのが好ましい。
これにより、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、透析用部材P10の製造装置の構成の複雑化を防止し、透析用部材P10の生産コストを抑制することができる。
なお、上記の説明では、層P4に対応する形状、パターンで、インクを付与し、その後、インクで構成された層(層P4に対応する層)全体を硬化させるものとして説明したが、少なくとも一部の領域について、インクの吐出とインクの硬化とを同時進行的に行ってもよい。すなわち、1つの層P4全体のパターン全体が形成される前に、層P4に対応する領域の少なくとも一部について、インクが付与された部位から順次硬化反応を進行させるものであってもよい。ただし、少なくとも、実体部形成用インクP46’と支持部形成用インクP47’との接触部分(実体部P46と支持部P47とが接触すべき部分)については、同時に硬化処理を施し、実体部形成用インクP46’に対する硬化処理と、支持部形成用インクP47’に対する硬化処理とを別個に行わない。
また、本工程では、インク中に含まれる硬化成分を完全に硬化させる必要はない。例えば、本工程終了時において、支持部形成用インクP47’は、不完全に硬化した状態となり、実体部形成用インクP46’は、支持部形成用インクP47’よりも高い硬化度で硬化していてもよい。
これにより、後に詳述する支持部除去工程を容易に行うことができ、透析用部材P10の生産性のさらなる向上を図ることができる。
また、本工程終了時において、実体部形成用インクP46’を不完全な状態で硬化した状態としてもよい。このような場合であっても、例えば、後の工程(例えば、結合形成工程(硬化工程)において下側の層P4を形成した後の「インク付与工程」等)を行った後に、不完全な硬化状態である実体部形成用インクP46’(実体部P46)に対し、硬化度を高めるための本硬化処理を行うことにより、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度等を優れたものとすることができる。また、実体部形成用インクP46’(下層)を不完全な状態で硬化した状態で、上層を形成するためのインクを付与することにより、層間の密着性を特に優れたものとすることができる。
<支持部除去工程>
そして、前記のような一連の工程を繰り返し行った後に、支持部P47を除去する(2f)。これにより、透析用部材P10が得られる。
支持部P47を除去する方法としては、例えば、支持部P47を選択的に溶解する液体を用いて支持部P47を選択的に溶解除去する方法や、実体部P46に比べて支持部P47の吸収性が高い液体を用いて、支持部P47に選択的に当該液体を吸収させることにより、支持部P47を膨潤させたり、支持部P47の機械的強度を低下させたうえで、当該支持部P47を剥離したり、破壊する方法等が挙げられる。
本工程で用いる液体としては、実体部P46、支持部P47の構成材料等により異なるが、例えば、水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類等を用いることができ、これらから選択される1種または2種以上を含むものであり、支持部の溶解性を高めるために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、有機アミン等の水酸化イオンを生じる水溶性物質、剥離された支持部の分離を容易にする界面活性剤等を混合したものであってもよい。
仮成形体P10’への前記液体の付与方法は、特に限定されないが、例えば、浸漬法、スプレー法(吹付法)、塗布法、各種印刷方法等を採用することができる。
また、前記の説明では、液体を用いるものとして説明したが、同様の機能を有する物質(例えば、固体、気体、超臨界流体等)を用いてもよい。
また、前記液体を付与する際または前記液体を付与した後に、超音波振動を付与してもよい。
これにより、支持部P47の除去を促進することができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
前述したように、実体部P46においては、実体部形成用インクP46’に含まれるセルロース誘導体が有する官能基が反応することにより、セルロース誘導体の分子鎖間に共有結合が形成され、強固に結合しているため、本工程において、実体部P46が不本意に除去されてしまったり、変形してしまうこと等が確実に防止されている。
上記の説明では、三次元造形物としての透析用部材P10の表面(外表面および内表面)となるべき領域全体において、実体部形成用インクP46’に接触するように支持部形成用インクP47’を付与するものとして説明したが、支持部形成用インクP47’は、透析用部材P10の表面となるべき領域の一部についてのみ、実体部形成用インクP46’に接触するように付与されるものであってもよい。また、製造すべき透析用部材P10が支持部P47を形成しなくても製造可能な形状のものである場合、支持部形成用インクP47’を用いなくてもよい。
また、製造すべき透析用部材P10の形状等により、支持部の形成が不要である場合には、実体部形成用インクのみを用いて層P4の形成を行ってもよい。
《透析用部材製造装置》
次に、透析用部材製造装置について説明する。
≪第1実施形態≫
図6は、透析用部材製造装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。
図6に示す透析用部材製造装置100は、粒子を含む組成物(三次元造形用組成物)P4’を用いて、層P4を繰り返し成形し積層することにより、透析用部材P10を製造するものである。
図6に示すように、透析用部材製造装置100は、制御部2と、粒子を含む組成物P4’を収容する組成物供給部3と、組成物供給部3から供給された組成物P4’を用いて層P4を形成する層形成部4と、層P4にインクP42を吐出するインク吐出部(インク付与手段)5と、インクP42を硬化させるためのエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6とを有している。
制御部2は、コンピューター21と、駆動制御部22とを有している。
コンピューター21は、内部にCPUやメモリ等を備えて構成される一般的な卓上型コンピューター等である。コンピューター21は、透析用部材P10の形状をモデルデータとしてデータ化し、それを平行な幾層もの薄い断面体にスライスして得られる断面データ(スライスデータ)を駆動制御部22に対して出力する。
駆動制御部22は、層形成部4、インク吐出部5、エネルギー線照射手段6をそれぞれに駆動する制御手段として機能する。具体的には、例えば、インク吐出部5によるインクP42の吐出パターンや吐出量、組成物供給部3からの組成物P4’の供給量、ステージ41の下降量等を制御する。
組成物供給部3は、駆動制御部22からの指令により移動し、内部に収容された組成物P4’が、組成物仮置部44に供給されるように構成されている。
層形成部4は、組成物供給部3から供給された組成物P4’を一時的に保持する組成物仮置部44と、組成物仮置部44に保持された組成物P4’を平坦化しつつ層P4を形成するスキージー(平坦化手段)42と、スキージー42の動作を規制するガイドレール43と、形成された層P4を支持するステージ41と、ステージ41を取り囲む側面支持部(枠体)45とを有している。
先に形成された層P4の上に、新たな層P4を形成するのに際して、先に形成された層P4を、側面支持部45に対して相対的に下方に移動させる。これにより、新たに形成される層P4の厚さが規定される。
特に、本実施形態では、ステージ41は、先に形成された層P4の上に、新たな層P4を形成するのに際して、駆動制御部22からの指令により所定量だけ順次下降する。このように、ステージ41がZ方向(上下方向)に移動可能に構成されていることにより、新たな層P4の形成に際して、層P4の厚さを調整するために移動させるべき部材の数を減らすことができるため、透析用部材製造装置100の構成をより単純なものとすることができる。
ステージ41は、表面(組成物P4’が付与される部位)が平坦なものである。
これにより、厚さの均一性の高い層P4を容易かつ確実に形成することができる。また、製造される透析用部材P10において、不本意な変形等が生じることを効果的に防止することができる。
ステージ41は、高強度の材料で構成されたものであるのが好ましい。ステージ41の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料等が挙げられる。
また、ステージ41の表面(組成物P4’が付与される部位)には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、組成物P4’の構成材料やインクP42の構成材料がステージ41に付着してしまうことをより効果的に防止したり、ステージ41の耐久性を特に優れたものとし、透析用部材P10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。ステージ41の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
スキージー42は、Y方向に延在する長手形状を有するものであり、下部先端が尖った刃状の形状を有するブレードを備えている。
ブレードのY方向の長さは、ステージ41(造形領域)の幅(Y方向の長さ)以上のものである。
なお、透析用部材製造装置100は、スキージー42による組成物P4’の拡散が円滑に行えるように、ブレードに微小振動を与えるバイブレーション機構(図示せず)を備えていてもよい。
側面支持部45は、ステージ41上に形成された層P4の側面を支持する機能を有する。また、層P4の形成時には、層P4の面積を規定する機能も有している。
また、側面支持部45の表面(組成物P4’と接触しうる部位)には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、組成物P4’の構成材料やインクP42の構成材料が側面支持部45に付着してしまうことをより効果的に防止したり、側面支持部45の耐久性を特に優れたものとし、透析用部材P10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。また、先に形成された層P4を側面支持部45に対して相対的に下方に移動させる際に、層P4に不本意な乱れが生じることを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度、信頼性を特に優れたものとすることができる。側面支持部45の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
インク付与手段(インク吐出部)5は、層P4にインクP42を付与するものである。
このようなインク付与手段5を備えることにより、透析用部材P10の機械的強度を容易かつ確実に優れたものとすることができる。
特に、本実施形態では、インク付与手段5が、インクジェット法によりインクP42を吐出するインク吐出部である。
これにより、微細なパターンでインクP42を付与することができ、微細な構造を有する透析用部材P10であっても特に生産性良く製造することができる。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクP42を加熱して発生した泡(バブル)によりインクP42を吐出させる方式等を用いることができるが、インクP42の構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インク吐出部(インク付与手段)5は、駆動制御部22からの指令により、各層P4において形成すべきパターン、層P4の各部において付与するインクP42の量が制御されている。インク吐出部(インク付与手段)5によるインクP42の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。
エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6は、層P4に付与されたインクP42を硬化させる(インクP42中に含まれるセルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる)ためのエネルギー線を照射するものである。
特に、図示の構成では、インク吐出部(インク付与手段)5の走査方向(主走査方向)の前後に、エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6が設けられている。
これにより、往路、復路のいずれにおいても、エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6による接合形成を行うことができるため、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
≪第2実施形態≫
次に、透析用部材製造装置の第2実施形態について説明する。
図7は、透析用部材製造装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
透析用部材製造装置100は、実体部形成用インクP46’および支持部形成用インクP47’を用いて、層P4を繰り返し成形し積層することにより、透析用部材P10を製造するものである。
図7に示すように、透析用部材製造装置100は、制御部2と、ステージ41と、実体部形成用インクP46’を吐出する実体部形成用インク付与手段8と、支持部形成用インクP47’を吐出する支持部形成用インク付与手段9と、実体部形成用インクP46’および支持部形成用インクP47’を硬化させるためのエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6とを有している。
実体部形成用インク付与手段8は、インクジェット法により、実体部形成用インクP46’を吐出するものである。
このような実体部形成用インク付与手段8を備えることにより、微細なパターンで所望の部位に所望の量だけ実体部形成用インクP46’を付与することができ、微細な構造を有する透析用部材P10であっても特に生産性良く製造することができる。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、インクの構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
実体部形成用インク付与手段8は、駆動制御部22からの指令により、形成すべきパターン、付与する実体部形成用インクP46’の量等が制御されている。実体部形成用インク付与手段8による実体部形成用インクP46’の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。
これにより、必要十分な量の実体部形成用インクP46’を目的の部位に付与することができ、所望のパターンの実体部P46を確実に形成することができ、透析用部材P10の寸法精度、機械的強度をより確実に優れたものとすることができる。また、実体部形成用インクP46’が着色剤を含むものである場合、所望の色調、模様等を確実に得ることができる。
実体部形成用インク付与手段8は、ステージに対して、相対的に、X方向、Y方向に移動可能になっているとともに、Z方向にも移動可能となっている。
これにより、層P4を積層していった場合でも、実体部形成用インク付与手段8のノズル面(吐出部先端)と実体部形成用インクP46’の着弾部との距離を所定の値に保つことができる。
支持部形成用インク付与手段9は、インクジェット法により、支持部形成用インクP47’を吐出するものである。
このような支持部形成用インク付与手段9を備えることにより、微細なパターンで所望の部位に所望の量だけ支持部形成用インクP47’を付与することができ、製造すべき透析用部材P10が微細な構造を有するものであっても、所望の部位に所望の大きさ、形状の支持部P47を形成することができ、透析用部材P10の表面形状をより確実に制御することができる。また、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
支持部形成用インク付与手段9についての、液滴吐出方式(インクジェット法の方式)、制御、駆動等については、前述した実体部形成用インク付与手段8と同様である。
なお、図中には示していないが、透析用部材製造装置100は、支持部P47を除去する支持部除去手段や、支持部P47が除去された透析用部材P10を乾燥する乾燥手段を備えるものであってもよい。
支持部除去手段としては、例えば、機械的に支持部P47を破壊・除去するものや、前述したような液体を収納し、仮成形体P10’を浸漬する槽や、前述したような液体を仮成形体P10’に向けて噴霧する液体噴霧手段や、前述したような液体を仮成形体P10’に塗布する液体塗布手段等が挙げられる。
乾燥手段としては、例えば、前述したような加熱した気体や乾燥した気体を供給するものや、透析用部材P10が収納された空間を減圧する減圧手段等が挙げられる。
また、透析用部材製造装置は、前述した工程のうち少なくとも一部を行うものであればよく、前述した工程のうちの一部は、透析用部材製造装置を用いないで行うものであってもよい。
<インク(セルロース誘導体を含むインク)>
次に、本発明の透析用部材の製造(前述したような製造方法、透析用部材製造装置を用いた製造)に用いるインク(セルロース誘導体を含むインク)について詳細に説明する。
[第1実施形態]
以下、前述した第1実施形態の製造方法、透析用部材製造装置で用いるインクP42について詳細に説明する。
インクP42は、少なくともセルロース誘導体(セルロース系材料)を含むものである。
(セルロース誘導体)
インクP42を構成するセルロース誘導体としては、例えば、前述した原料としてのセルロース誘導体を好適に用いることができる。
これにより、前述したような効果が得られる。
インクP42中に含まれるセルロース誘導体の重量平均分子量は、特に限定されないが、5000以上10000000以下であるのが好ましく、10000以上7000000以下であるのがより好ましい。
これにより、インクP42の保存安定性、吐出安定性等を優れたものとしつつ、製造される透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
インクP42中におけるセルロース誘導体の含有率は、特に限定されないが、インクP42中に含まれる全固形分(透析用部材P10に含まれるべき全成分)に対して、30質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上90質量%以下であるのがより好ましく、45質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、インクP42の保存安定性、吐出安定性等を優れたものとしつつ、製造される透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
インクP42中において、セルロース誘導体は、溶解した状態のものであってもよいし、分散した状態のものであってもよいし、これらの状態が混在していてもよい。
インクP42中においてセルロース誘導体が分散している場合、インクP42中におけるセルロース誘導体の平均粒径は、特に限定されないが、5.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。
これにより、インクP42の保存安定性、吐出安定性等を優れたものとしつつ、製造される透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
なお、本明細書において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
(溶媒)
インクP42は、前述したようなセルロース誘導体に加え、溶媒を含むものであってもよい。
これにより、インクP42の流動性を優れたものとし、セルロース系材料(セルロース系組成物)の取り扱いのしやすさ(例えば、インクジェット法による吐出安定性)を特に優れたものとすることができる。
特に、インクP42は、溶媒として、セルロース誘導体を溶解するものを含むものであるのが好ましい。
これにより、インクP42中での組成の不本意なばらつきを効果的に防止することができる。また、例えば、インクジェット法によるインクP42の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。このようなことから、長期間にわたって、安定的に透析用部材P10を製造することができる。
また、セルロース誘導体が液晶性の官能基を有するものである場合、インクP42中においてセルロース誘導体が溶解していることにより、製造される透析用部材P10においてセルロース誘導体(液晶性を有する官能基)をより好適に配向させることができる。その結果、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性等を特に優れたものとすることができる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する溶媒としては、例えば、各種有機溶媒、各種無機溶媒を用いることができるが、有機溶媒であるのが好ましい。
前述したようなセルロース誘導体は、一般に、親水性が低く、有機溶媒に対する親和性に優れている。したがって、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
インクP42を構成する有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類等が挙げられるが、中でも、テトラヒドロフラン、クロロホルムよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
これにより、インクP42中におけるセルロース誘導体の溶解性を特に高いものとすることができ、インクP42中での不本意な組成のばらつきをより効果的に防止することができ、インクP42の吐出安定性、保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、これらの有機溶媒は、適度な揮発性を有するため、透析用部材P10の生産性を高めたり、最終的に得られる透析用部材P10中に溶媒が不本意に残存することを防止する観点からも有利である。
インクP42中における溶媒の含有率は、特に限定されないが、10質量%以上70質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上50質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、インクP42の吐出安定性をより優れたものとしつつ、インクP42の付与後の溶媒の除去をより速やかに行うことができるため、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)
セルロース誘導体が有する官能基が、前述したように、他の原子(少なくとも1個の原子)を介して共有結合を形成するものである場合、インクP42は、前記他の原子を含む化合物(前記他の原子の由来となる物質)を含むものであってもよい。
このような化合物は、結合形成工程において形成すべき結合の種類により異なるが、例えば、セルロース誘導体が有する前記反応性官能基が炭素−炭素二重結合を含むものである場合、当該化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)としては、分子内に2個以上のS−H結合を有するシロキサン化合物を用いることができる。
これにより、前記共有結合の形成効率を特に優れたものとすることができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、最終的な透析用部材P10中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、加熱により、結合形成工程を好適に行うことができる。
このようなシロキサン化合物は、分子内に2個以上のS−H結合を有するものであればよいが、分子内に3個以上のS−H結合を有するものであるのが好ましい。
これにより、結合形成工程において、より複雑な網目構造を形成することができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
また、前記シロキサン化合物は、鎖状化合物であってもよいが、環状化合物であるのが好ましい。
これにより、透析用部材P10の機械的強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
このようなシロキサン化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるものを好適に用いることができる。
Figure 2016039841
また、セルロース誘導体が有する前記反応性官能基が炭素−炭素二重結合を含むものである場合、インクP42は、必要に応じて重合開始剤とともに、架橋剤を含むものであってもよい。
これにより、例えば、結合形成工程において、より複雑な網目構造を形成することができ、透析用部材P10の機械的強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。また、例えば、紫外線等の光の照射により、結合形成工程を好適に行うことができる。
架橋剤としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基等の重合性官能基を有する化合物等を用いることができる。
中でも、架橋剤としては、分子内に複数個の重合性官能基を有する化合物が好ましく、アルキル鎖の両末端が重合性官能基で修飾された化合物がより好ましい。
このような架橋剤としては、例えば、下記式(5)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2016039841
(式(5)中、nは、1以上の整数である。)
インクP42中における前記化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)の含有率は、特に限定されないが、インクP42中に含まれる全固形分(透析用部材P10に含まれるべき全成分)に対して、5質量%以上55質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上50質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前記化合物とセルロース誘導体との反応を好適に進行させ、前記共有結合を好適に形成することができるとともに、製造される透析用部材P10において、セルロース系材料が有する特長をより効果的に発揮させることができる。その結果、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
(その他の結合剤)
前述したようなセルロース誘導体は、結合剤として機能するものであり、透析用部材P10の機械的強度等を優れたものとすることができるが、インクP42は、さらに、その他の結合剤を含むものであってもよい。
その他の結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂;熱硬化性樹脂;可視光領域の光により硬化する可視光硬化性樹脂(狭義の光硬化性樹脂)、紫外線硬化性樹脂、赤外線硬化性樹脂等の各種光硬化性樹脂;X線硬化性樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、得られる透析用部材P10の機械的強度や透析用部材P10の生産性等の観点から、その他の結合剤は、硬化性樹脂を含むものであるのが好ましい。また、各種硬化性樹脂の中でも、得られる透析用部材P10の機械的強度や透析用部材P10の生産性、インクP42の保存安定性等の観点から、特に、紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)が好ましい。
紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)としては、紫外線照射により、光重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
付加重合性化合物としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。付加重合性化合物として、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用できる。
エチレン性不飽和重合性化合物は、単官能の重合性化合物および多官能の重合性化合物、またはそれらの混合物の化学的形態をもつ。
単官能の重合性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類等が挙げられる。
多官能の重合性化合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類とイソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、カルボン酸との脱水縮合反応物等も使用できる。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も使用できる。
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが代表的であり、単官能のもの、多官能のもののいずれも用いることができる。
単官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート以外の重合性化合物としては、例えば、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
その他のエステルの例としては、例えば、脂肪族アルコール系エステル類や、芳香族系骨格を有するもの、アミノ基を含有するもの等も用いることができる。
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
その他の好ましいアミド系モノマーとしては、例えば、シクロへキシレン構造を有するもの等が挙げられる。
また、イソシアネートと水酸基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(1)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R1)COOCHCH(R2)OH (1)
(ただし、式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、HまたはCHを示す。)
本発明において、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を分子内に1つ以上有するカチオン開環重合性の化合物を紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)として好適に用いることができる。
カチオン重合性化合物としては、例えば、開環重合性基を含む硬化性化合物等が挙げられ、中でも、ヘテロ環状基含有硬化性化合物が特に好ましい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体等の環状イミノエーテル類、ビニルエーテル類等が挙げられ、中でも、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、ビニルエーテル類が好ましい。
好ましいエポキシ誘導体の例としては、例えば、単官能グリシジルエーテル類、多官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、多官能脂環式エポキシ類等が挙げられる。
グリシジルエーテル類の具体的な化合物を例示すると、例えば、ジグリシジルエーテル類(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、3官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)、4官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル等)、脂環式エポキシ類(例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテル等)、オキセタン類(例えば、OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)等)等が挙げられる。
重合性化合物としては、脂環式エポキシ誘導体を好ましく用いることができる。「脂環式エポキシ基」とは、シクロペンテン基、シクロヘキセン基等のシクロアルケン環の二重結合を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化した部分構造を言う。
脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基またはシクロペンテンオキシド基を1分子内に2個以上有する多官能脂環式エポキシ類が好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ジ(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
分子内に脂環式構造を有しない通常のエポキシ基を有するグリシジル化合物を、単独で使用したり、前記の脂環式エポキシ化合物と併用することもできる。
このような通常のグリシジル化合物としては、例えば、グリシジルエーテル化合物やグリシジルエステル化合物等を挙げることができるが、グリシジルエーテル化合物を併用することが好ましい。
グリシジルエーテル化合物の具体例を挙げると、例えば、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポシキ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリトリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。グリシジルエステルとしては、例えば、リノレン酸ダイマーのグリシジルエステル等を挙げることができる。
重合性化合物としては、4員環の環状エーテルであるオキセタニル基を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」ともいう。)を使用することができる。オキセタニル基含有化合物は、1分子中にオキセタニル基を1個以上有する化合物である。
インクP42中におけるその他の結合剤の含有率は、インクP42中に含まれる全固形分(透析用部材P10に含まれるべき全成分)に対して、1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したようなセルロース誘導体を含むことによる効果をより顕著に発揮させつつ、その他の結合剤を含むことによるこれらの相乗効果が発揮され、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、インクP42は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;各種蛍光材料;各種蓄光材料;各種燐光材料;赤外線吸収材料;分散剤;界面活性剤;重合開始剤;重合促進剤;架橋剤;前述したようなシロキサン化合物;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
特に、インクP42が重合開始剤を含むものであると、セルロース誘導体の種類等によっては(例えば、セルロース誘導体が有する前記反応性官能基が炭素−炭素二重結合を含むものである場合に)、セルロース誘導体の反応(セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる)を好適に進行させることができる。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等を用いることができる。
また、インクP42の粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法によるインクP42の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
[第2実施形態]
以下、前述した第2実施形態の製造方法、透析用部材製造装置で用いるセルロース誘導体(セルロース系材料)を含むインクとしての実体部形成用インクP46’について詳細に説明する。
実体部形成用インクP46’は、少なくともセルロース誘導体(セルロース系材料)を含むものである。
(セルロース誘導体)
実体部形成用インクP46’を構成するセルロース誘導体としては、例えば、前述した原料としてのセルロース誘導体を好適に用いることができる。
これにより、前述したような効果が得られる。
(溶媒)
実体部形成用インクP46’は、前述したようなセルロース誘導体に加え、溶媒を含むものであってもよい。
これにより、第1実施形態で述べたのと同様の効果が得られる。
実体部形成用インクP46’中に含まれる溶媒としては、第1実施形態において、インクP42の構成成分として説明した溶媒と同様のものを用いることができ、前述したのと同様の条件を満足するものであるのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)
セルロース誘導体が有する官能基が、前述したように、他の原子(少なくとも1個の原子)を介して共有結合を形成するものである場合、実体部形成用インクP46’は、前記他の原子を含む化合物(前記他の原子の由来となる物質)を含むものであってもよい。
このような化合物としては、第1実施形態において、インクP42の構成成分として説明した前記他の原子を含む化合物(前記他の原子の由来となる物質)と同様のものを用いることができ、前述したのと同様の条件を満足するものであるのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
(その他の硬化成分)
前述したようにセルロース誘導体は、硬化成分として機能するものであり、透析用部材P10の機械的強度等を優れたものとすることができるが、実体部形成用インクP46’は、さらに、その他の硬化成分を含むものであってもよい。
このような硬化成分(その他の硬化成分)としては、例えば、熱硬化性樹脂;可視光領域の光により硬化する可視光硬化性樹脂(狭義の光硬化性樹脂)、紫外線硬化性樹脂、赤外線硬化性樹脂等の各種光硬化性樹脂;X線硬化性樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、得られる透析用部材P10の機械的強度や透析用部材P10の生産性、実体部形成用インクP46’の保存安定性等の観点から、特に、紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)が好ましい。
紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)としては、紫外線照射により、光重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
付加重合性化合物としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。付加重合性化合物として、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用できる。
エチレン性不飽和重合性化合物は、単官能の重合性化合物および多官能の重合性化合物、またはそれらの混合物の化学的形態をもつ。
単官能の重合性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類等が挙げられる。
多官能の重合性化合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族のアミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類とイソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、カルボン酸との脱水縮合反応物等も使用できる。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も使用できる。
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが代表的であり、単官能のもの、多官能のもののいずれも用いることができる。
単官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート以外の重合性化合物としては、例えば、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
その他のエステルの例としては、例えば、脂肪族アルコール系エステル類や、芳香族系骨格を有するもの、アミノ基を含有するもの等も用いることができる。
また、不飽和カルボン酸と脂肪族アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
その他の好ましいアミド系モノマーとしては、例えば、シクロへキシレン構造を有するもの等が挙げられる。
また、イソシアネートと水酸基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(1)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R1)COOCHCH(R2)OH (1)
(ただし、式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、HまたはCHを示す。)
本発明において、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を分子内に1つ以上有するカチオン開環重合性の化合物を紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)として好適に用いることができる。
カチオン重合性化合物としては、例えば、開環重合性基を含む硬化性化合物等が挙げられ、中でも、ヘテロ環状基含有硬化性化合物が特に好ましい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体等の環状イミノエーテル類、ビニルエーテル類等が挙げられ、中でも、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、ビニルエーテル類が好ましい。
好ましいエポキシ誘導体の例としては、例えば、単官能グリシジルエーテル類、多官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、多官能脂環式エポキシ類等が挙げられる。
グリシジルエーテル類の具体的な化合物を例示すると、例えば、ジグリシジルエーテル類(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、3官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)、4官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル等)、脂環式エポキシ類(例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテル等)、オキセタン類(例えば、OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)等)等が挙げられる。
重合性化合物としては、脂環式エポキシ誘導体を好ましく用いることができる。「脂環式エポキシ基」とは、シクロペンテン基、シクロヘキセン基等のシクロアルケン環の二重結合を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化した部分構造を言う。
脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基またはシクロペンテンオキシド基を1分子内に2個以上有する多官能脂環式エポキシ類が好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ジ(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
分子内に脂環式構造を有しない通常のエポキシ基を有するグリシジル化合物を、単独で使用したり、前記の脂環式エポキシ化合物と併用することもできる。
このような通常のグリシジル化合物としては、例えば、グリシジルエーテル化合物やグリシジルエステル化合物等を挙げることができるが、グリシジルエーテル化合物を併用することが好ましい。
グリシジルエーテル化合物の具体例を挙げると、例えば、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポシキ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリトリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。グリシジルエステルとしては、例えば、リノレン酸ダイマーのグリシジルエステル等を挙げることができる。
重合性化合物としては、4員環の環状エーテルであるオキセタニル基を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」ともいう。)を使用することができる。オキセタニル基含有化合物は、1分子中にオキセタニル基を1個以上有する化合物である。
実体部形成用インクP46’は、前述した硬化成分の中でも、特に、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、実体部形成用インクP46’を硬化させて形成される実体部P46の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
また、これらの硬化成分を含むことにより、実体部形成用インクP46’の硬化物の各種溶媒(例えば、水等)に対する溶解性等を特に低いものとすることができる。その結果、支持部除去工程において、より確実に、高い選択性で支持部P47を除去することができ、実体部P46に欠陥が生じたりすること等による不本意な変形を防止することができる。その結果、より確実に、透析用部材P10の寸法精度をより高いものとすることができる。
また、実体部形成用インクP46’の硬化物の膨潤性(溶媒の吸収性)を低いものとすることができるため、例えば、支持部除去工程後の後処理としての乾燥処理を省略または簡略化することができる。また、最終的に得られる透析用部材P10の耐溶剤性も向上するため、透析用部材P10の信頼性は特に高いものとなる。
特に、実体部形成用インクP46’が(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものであると、酸素阻害を受けにくく、より低エネルギーでの硬化が可能であり、また、他モノマーを含めた共重合を促進し、透析用部材P10の機械的強度を特に高いものとすることができる。
また、実体部形成用インクP46’がポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むものであると、透析用部材P10の高強度化と高靱性化をより高いレベルで両立することができる。
また、実体部形成用インクP46’が2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートを含むものであると、柔軟性を持ち破断伸び率を向上させることができる。
また、実体部形成用インクP46’が4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを含むものであると、PMMA、PEMA粒子やシリカ粒子、金属粒子等への密着性が向上し、透析用部材P10の機械的強度を特に高いものとすることができる。
実体部形成用インクP46’中における硬化成分の含有率は、実体部形成用インクP46’中に含まれる全固形分(透析用部材P10に含まれるべき全成分)に対して、1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したようなセルロース誘導体を含むことによる効果をより顕著に発揮させつつ、その他の硬化成分を含むことによるこれらの相乗効果が発揮され、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
(重合開始剤)
また、実体部形成用インクP46’は、重合開始剤を含むものであってもよい。
これにより、例えば、セルロース誘導体の種類等によっては(例えば、セルロース誘導体が有する前記反応性官能基が炭素−炭素二重結合を含むものである場合に)、セルロース誘導体の反応(セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる)を好適に進行させることができる。また、実体部形成用インクP46’がその他の硬化成分を含むものである場合に、当該その他の硬化成分の硬化反応を好適に進行させることができる。このようなことから、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性をより確実に優れたものとすることができる。
重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤(芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等)や光カチオン重合開始剤等を用いることができ、具体的には、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、実体部形成用インクP46’を構成する重合開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、および/または、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含むものであるのが好ましい。
このような重合開始剤を含むことにより、透析用部材P10の寸法精度をより確実に優れたものとしつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、実体部形成用インクP46’を硬化させて形成される実体部P46の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
実体部形成用インクP46’中における重合開始剤の含有率の具体的な値としては、1.0質量%以上18質量%以下であるのが好ましく、3.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、透析用部材P10の寸法精度をより確実に優れたものとしつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、実体部形成用インクP46’を硬化させて形成される実体部P46の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、実体部形成用インクP46’は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
実体部形成用インクP46’中に含まれるその他の成分としては、第1実施形態において、インクP42の構成成分として説明したその他の成分と同様のものを用いることができ、前述したのと同様の条件を満足するものであるのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
また、実体部形成用インクP46’の粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、インクジェット法による実体部形成用インクP46’の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
透析用部材P10の製造においては、前述したようなセルロース誘導体を含むインクとして、複数種のインクを用いてもよい。例えば、セルロース誘導体の種類や含有率の異なる複数種のインクを用いてもよい。これにより、透析用部材P10の各部位について、それぞれに求められる剛性、弾性率等の特性を好適に調整することができる。
<組成物(三次元造形用組成物)>
次に、三次元造形物としての本発明の透析用部材の製造に用いる組成物(三次元造形用組成物)について詳細に説明する。
[第1実施形態]
以下、前述した第1実施形態の製造方法、透析用部材製造装置で説明したような、粒子を含む組成物P4’について説明する。
組成物(三次元造形用組成物)P4’は、少なくとも、複数個の粒子を含む三次元造形用粉末を含むものである。
(三次元造形用粉末(粒子))
三次元造形用粉末を構成する粒子の構成材料としては、例えば、無機材料や有機材料、これらの複合体等が挙げられる。
粒子を構成する無機材料としては、例えば、各種金属や金属化合物等が挙げられる。金属化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の各種金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の各種金属水酸化物;窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ等の各種金属窒化物;炭化珪素、炭化チタン等の各種金属炭化物;硫化亜鉛等の各種金属硫化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の各種金属の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の各種金属のケイ酸塩;リン酸カルシウム等の各種金属のリン酸塩;ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の各種金属のホウ酸塩や、これらの複合化物等が挙げられる。
粒子を構成する有機材料としては、例えば、合成樹脂、天然高分子等が挙げられ、より具体的には、ポリエチレン樹脂;ポリプロピレン;ポリエチレンオキサイド;ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリウレア;ポリエステル;シリコーン樹脂;アクリルシリコーン樹脂;ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとする重合体;メタクリル酸メチルクロスポリマー等の(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとするクロスポリマー(エチレンアクリル酸共重合樹脂等);ナイロン12、ナイロン6、共重合ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド;セルロース;カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ゼラチン;デンプン;キチン;キトサン等が挙げられる。
中でも、粒子がセルロースやセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース等)で構成されたものである場合、粒子とインクP42中に含まれるセルロース誘導体との親和性を特に優れたものとすることができ、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を優れたものとすることができる。また、層P4にセルロース誘導体を含むインクP42を付与する際に、インクP42が不本意に濡れ広がったり、層P4がインクP42を過剰にはじいてしまったりすることを効果的に防止することができる。その結果、所望のパターンの結合部(実体部)P43をより確実に形成することができ、透析用部材P10の寸法精度をより確実に特に優れたものとすることができる。
三次元造形用粉末を構成する粒子は、疎水化処理、親水化処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
三次元造形用粉末を構成する粒子の平均粒径は、特に限定されないが、1μm以上25μm以下であるのが好ましく、1μm以上15μm以下であるのがより好ましい。これにより、透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができるとともに、製造される透析用部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形用粉末の流動性、三次元造形用粉末を含む組成物(三次元造形用組成物)P4’の流動性を特に優れたものとし、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
三次元造形用粉末を構成する粒子のDmaxは、3μm以上40μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましい。これにより、透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができるとともに、製造される透析用部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形用粉末の流動性、三次元造形用粉末を含む組成物(三次元造形用組成物)P4’の流動性を特に優れたものとし、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
三次元造形用粉末を構成する粒子は、いかなる形状を有するものであってもよいが、球形状をなすものであるのが好ましい。これにより、三次元造形用粉末の流動性、三次元造形用粉末を含む組成物(三次元造形用組成物)P4’の流動性を特に優れたものとし、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、製造される透析用部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
組成物(三次元造形用組成物)P4’中における三次元造形用粉末の含有率は、10質量%以上95質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。これにより、組成物(三次元造形用組成物)P4’の流動性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られる透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
(水溶性樹脂)
組成物P4’は、複数個の粒子とともに、水溶性樹脂を含むものであってもよい。
水溶性樹脂を含むことにより、層P4のインクP42が付与されていない部位において粒子同士を結合(仮固定)し、粒子の不本意な飛散等をより効果的に防止することができる。これにより、作業者の安全や、製造される透析用部材P10の寸法精度のさらなる向上を図ることができる。
水溶性樹脂は、少なくともその一部が水に可溶なものであればよいが、例えば、25℃における水に対する溶解度(水100gに溶解可能な質量)が5[g/100g水]以上のものであるのが好ましく、10[g/100g水]以上のものであるのがより好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリカプロラクトンジオール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、変性ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合ポリマー等の合成ポリマー、コーンスターチ、マンナン、ペクチン、寒天、アルギン酸、デキストラン、にかわ、ゼラチン等の天然ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でんぷん、酸化でんぷん、変性でんぷん等の半合成ポリマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性樹脂製品の具体例としては、例えば、メチルセルロース(信越化学社製、メトローズSM−15)、ヒドロキシエチルセルローズ(フジケミカル社製、AL−15)、ヒドロキシプロピルセルローズ(日本ソーダ社製、HPC−M)、カルボキシメチルセルローズ(ニチリン化学社製、CMC−30)、澱粉リン酸エステルナトリュウム(I)(松谷化学社製、ホスター5100)、ポリビニールピロリドン(東京化学社製、PVP K−90)、メチルビニールエーテル/無水マレイン酸コポリマー(GAFガントレット社製、AN−139)、ポリアクリルアミド(和光純薬社製)、変性ポリアミド(変性ナイロン)(東レ社製、AQナイロン)、ポリエチレンオキサイド(製鉄化学社製、PEO−1、明成化学工業社製、アルコックス)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合ポリマー(明成化学工業社製、アルコックスEP)、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬社製)、カルボキシビニルポリマー/架橋型アクリル系水溶性樹脂(住友精化社製、アクペック)等が挙げられる。
中でも、水溶性樹脂がポリビニルアルコールである場合、透析用部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、ケン化度や重合度の調整により、水溶性樹脂の特性(例えば、水溶性、耐水性等)や組成物P4’の特性(例えば、粘度、粒子の固定力、濡れ性等)をより好適に制御することができる。また、ポリビニルアルコールは、各種水溶性樹脂の中でも、安価で、かつ、供給が安定したものである。このため、生産コストを抑制しつつ、安定的な透析用部材P10の製造を行うことができる。
水溶性樹脂がポリビニルアルコールを含むものである場合、当該ポリビニルアルコールのケン化度は、85以上90以下であるのが好ましい。これにより、水に対するポリビニルアルコールの溶解度の低下を抑制することができる。そのため、組成物P4’が水を含むものである場合に、隣接する層P4間の接着性の低下をより効果的に抑制することができる。
水溶性樹脂がポリビニルアルコールを含むものである場合、当該ポリビニルアルコールの重合度は、300以上1000以下であるのが好ましい。これにより、組成物P4’が水を含むものである場合に、各層P4の機械的強度や隣接する層P4間の接着性を特に優れたものとすることができる。
また、水溶性樹脂がポリビニルピロリドン(PVP)である場合、以下のような効果が得られる。すなわち、ポリビニルピロリドンは、ガラス、金属、プラスチック等の各種材料に対する接着性に優れているため、層P4のうちインクP42が付与されない部分の強度・形状の安定性を特に優れたものとし、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、ポリビニルピロリドンは、水に対して高い溶解性を示すため、未結合粒子除去工程(造形終了後)において、各層P4を構成する粒子のうち、セルロース誘導体により結合していないものを容易かつ確実に除去することができる。また、ポリビニルピロリドンは、前述したような三次元造形用粉末との親和性が適度なものであるため、粒子の表面に対する濡れ性は比較的高いものとなる。このため、前述したような仮固定の機能をより効果的に発揮することができる。また、ポリビニルピロリドンは、各種着色剤との親和性に優れているため、インク付与工程において着色剤を含むインクP42を用いた場合に、着色剤が不本意に拡散してしまうのを効果的に防止することができる。また、ペースト状の組成物P4’がポリビニルピロリドンを含むものであると、組成物P4’中に泡が巻き込まれてしまうことを効果的に防止することができ、層形成工程において、泡の巻き込みによる欠陥が発生するのを効果的により防止することができる。
水溶性樹脂がポリビニルピロリドンを含むものである場合、当該ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、10000以上1700000以下であるのが好ましく、30000以上1500000以下であるのがより好ましい。これにより、前述した機能をより効果的に発揮することができる。
また、水溶性樹脂がポリカプロラクトンジオールである場合、組成物P4’を好適にペレット状とすることができ、粒子の不本意な飛散等をより効果的に防止することができ、組成物P4’の取扱い性(取り扱いの容易性)が向上し、作業者の安全や、製造される透析用部材P10の寸法精度の向上を図ることができるとともに、比較的低い温度で溶融させることができるため、透析用部材P10の生産に要するエネルギー・コストを抑制することができるとともに、透析用部材P10の生産性を十分に優れたものとすることができる。
水溶性樹脂がポリカプロラクトンジオールを含むものである場合、当該ポリカプロラクトンジオールの重量平均分子量は、10000以上1700000以下であるのが好ましく、30000以上1500000以下であるのがより好ましい。これにより、前述した機能をより効果的に発揮することができる。
組成物P4’中において、水溶性樹脂は、少なくとも層形成工程において、液状の状態(例えば、溶解状態、溶融状態等)をなすものであるのが好ましい。これにより、容易かつ確実に、組成物P4’を用いて形成される層P4の厚さの均一性を、より高いものとすることができる。
(溶媒)
組成物P4’は、前述したような成分に加えて、揮発性の溶媒を含むものであってもよい。
これにより、好適に組成物P4’をペースト状のものとすることができ、組成物P4’の流動性を安定的に優れたものとし、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
溶媒は、水溶性樹脂を溶解するものであるのが好ましい。これにより、組成物P4’の流動性を良好なものとすることができ、組成物P4’を用いて形成される層P4の厚さの不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。また、溶媒が除去された状態の層P4を形成した際に、層P4全体にわたって、より高い均一性で、水溶性樹脂を粒子に付着させることができ、不本意な組成のむらが発生するのをより効果的に防止することができる。このため、最終的に得られる透析用部材P10の各部位での機械的強度の不本意なばらつきの発生をより効果的に防止することができ、透析用部材P10の信頼性をより高いものとすることができる。
組成物P4’を構成する溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル2−アセタート等のグリコールエーテルアセテート系溶媒;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、組成物P4’は、水を含むものであるのが好ましい。これにより、水溶性樹脂をより確実に溶解することができ、組成物P4’の流動性、組成物P4’を用いて形成される層P4の組成の均一性を特に優れたものとすることができる。また、水は層P4形成後の除去が容易であるとともに、透析用部材P10中に残存した場合においても悪影響を与えにくい。また、人体に対する安全性、環境問題の観点等からも有利である。
組成物P4’が溶媒を含むものである場合、組成物P4’中における溶媒の含有率は、5質量%以上75質量%以下であるのが好ましく、25質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような溶媒を含むことによる効果がより顕著に発揮されるとともに、透析用部材P10の製造過程において溶媒を短時間で容易に除去することができるため、透析用部材P10の生産性向上の観点から有利である。
特に、組成物P4’が溶媒として水を含むものである場合、組成物P4’中における水の含有率は、20質量%以上73質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
組成物P4’が溶媒を含むものである場合、当該溶媒は、インクP42の付与前に、層P4を構成する組成物P4’から除去されるものであるのが好ましい。これにより、層P4の形状の安定性が向上するとともに、前記溶媒がインクP42の構成材料(例えば、セルロース誘導体や溶媒等)との親和性が低いものであっても、層P4におけるインクP42の不本意なはじき等を効果的に防止することができ、容易かつ確実に、所望のパターンでインクP42を付与することができる。
なお、組成物P4’を構成する溶媒を、インクP42の付与前に、層P4を構成する組成物P4’から除去する場合、前記溶媒は、層P4から完全に除去するものであってもよいし、その一部のみを除去するものであってもよい。このような場合であっても、前述したような効果が発揮される。
(その他の成分)
また、組成物P4’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;重合促進剤;架橋剤;シロキサン化合物;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
[第2実施形態]
以下、前述した第2実施形態の製造方法、透析用部材製造装置で説明したような、インクジェット法により吐出される組成物(層形成用組成物)について説明する。
本実施形態では、組成物として、実体部形成用インクP46’および支持部形成用インクP47’を用いている。
実体部形成用インクP46’については、セルロース誘導体を含むインクとして詳述したので、以下、支持部形成用インクP47’について詳述する。
<支持部形成用インク>
支持部形成用インクP47’は、少なくとも硬化性樹脂(硬化成分)を含むものである。
(硬化性樹脂)
支持部形成用インクP47’を構成する硬化性樹脂(硬化成分)としては、例えば、実体部形成用インクP46’の構成成分(その他の硬化成分)として例示した硬化性樹脂(硬化成分)と同様のものが挙げられる。
特に、支持部形成用インクP47’を構成する硬化性樹脂(硬化成分)と、前述した実体部形成用インクP46’を構成する硬化成分(その他の硬化成分)とは、同種のエネルギー線で硬化するものであるのが好ましい。
これにより、透析用部材製造装置の構成が複雑化するのを効果的に防止することができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の表面形状をより確実に制御することができる。
支持部形成用インクP47’は、各種硬化成分の中でも、特に、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリロイルモルフォリンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、透析用部材P10の寸法精度をより確実に優れたものとしつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、支持部形成用インクP47’を硬化させて形成される支持部P47の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、透析用部材P10の製造時に、下層(第1の層)の支持部P47が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP46’をより好適に支持することができる。そのため、実体部P46の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
特に、支持部形成用インクP47’が(メタ)アクリロイルモルフォリンを含むものであると、以下のような効果が得られる。
すなわち、(メタ)アクリロイルモルフォリンは、硬化反応が進行した場合であっても完全硬化でない状態(完全硬化でない状態の(メタ)アクリロイルモルフォリンの重合体)では、水等の各種溶媒に対する溶解性が高い状態が高いものである。したがって、前述したような支持部除去工程において、実体部P46に欠陥が生じるのをより効果的に防止しつつ、支持部P47を選択的かつ確実に、また、効率よく除去することができる。その結果、より高い信頼性で、所望の形態の透析用部材P10を生産性良く得ることができる。
また、支持部形成用インクP47’がテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを含むものであると、硬化後の柔軟性をより好適に保持することができ、支持部P47を除去する液体による処理において、より容易にゲル状になることで、支持部P47の除去効率をさらに高めることができる。
また、支持部形成用インクP47’がエトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートを含むものであると、支持部P47を除去する液体による処理において、支持部P47の除去効率を高めることができる。
また、支持部形成用インクP47’がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むものであると、支持部P47を除去する液体が水を主成分とするものである場合に、当該液体への溶解性を高め、より容易に支持部P47を除去することができる。
支持部形成用インクP47’中における硬化成分の含有率は、83質量%以上98.5質量%以下であるのが好ましく、87質量%以上95.4質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、形成される支持部P47の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、透析用部材P10の製造時に層P4を積み重ねていった場合に、下側の層P4が不本意に変形することをより効果的に防止することができ、上側の層P4を好適に支持することができる。その結果、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
(重合開始剤)
また、支持部形成用インクP47’は、重合開始剤を含むものであるのが好ましい。
これにより、透析用部材P10の製造時における支持部形成用インクP47’の硬化速度を適度に速めることができ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、形成される支持部P47の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、透析用部材P10の製造時に層P4を積み重ねていった場合に、下側の層P4が不本意に変形することをより効果的に防止することができ、上側の層P4を好適に支持することができる。その結果、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
支持部形成用インクP47’を構成する重合開始剤としては、例えば、実体部形成用インクP46’の構成成分として例示した重合開始剤と同様のものが挙げられる。
中でも、支持部形成用インクP47’は、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、および/または、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含むものであるのが好ましい。
このような重合開始剤を含むことにより、支持部P47(支持部形成用インクP47’を用いて形成される支持部P47)と接触するようにして形成される実体部P46(実体部形成用インクP46’を用いて形成される実体部P46)の表面の性状をより確実に好適なものとし、透析用部材P10の寸法精度をより確実に優れたものとしつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、支持部形成用インクP47’を硬化させて形成される支持部P47の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、透析用部材P10の製造時に、下層(第1の層)の支持部P47が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP46’をより好適に支持することができる。そのため、実体部P46の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
支持部形成用インクP47’中における重合開始剤の含有率の具体的な値としては、1.5質量%以上17質量%以下であるのが好ましく、4.6質量%以上13質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、透析用部材P10の寸法精度をより確実に優れたものとしつつ、透析用部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、支持部形成用インクP47’を硬化させて形成される支持部P47の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、透析用部材P10の製造時に、下層(第1の層)の支持部P47が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP46’をより好適に支持することができる。そのため、実体部P46の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ、最終的に得られる透析用部材P10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、支持部形成用インクP47’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;分散剤;界面活性剤;増感剤;重合促進剤;溶媒;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
特に、支持部形成用インクP47’が着色剤を含むことにより、支持部P47の視認性が向上し、最終的に得られる透析用部材P10において、支持部P47の少なくとも一部が不本意に残存することをより確実に防止することができる。
支持部形成用インクP47’を構成する着色剤としては、透析用部材P10の表面の法線方向から観察した際に当該支持部形成用インクP47’により形成される支持部P47と重なり合う実体部P46の色(透析用部材P10の外観上視認されるべき色)とは異なる色となるような着色剤であるのが好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、支持部形成用インクP47’の粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、インクジェット法による支持部形成用インクP47’の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、透析用部材P10の製造には、複数種の支持部形成用インクP47’を用いてもよい。
《ダイアライザー》
次に、本発明のダイアライザーについて説明する。
本発明のダイアライザーは、前述したような本発明の透析用部材を備えたものである。
これにより、安全性の高いダイアライザーを提供することができる。
本発明のダイアライザーは、少なくとも前述したような本発明の透析用部材を備えたものであればよいが、通常、本発明の透析用部材を収容する筐体を備えており、当該筐体には、第1の流路P1に接続され、第1の流路P1に選択的に第1の流体を供給する第1の流体流入口と、第1の流路P1に接続され、第1の流路P1を流通した第1の流体を選択的に外部に流出させる第1の流体流出口と、第2の流路P2に接続され、第2の流路P2に選択的に第2の流体を供給する第2の流体流入口と、第2の流路P2に接続され、第2の流路P2を流通した第2の流体を選択的に外部に流出させる第2の流体流出口とを有している。
筐体の構成材料としては、例えば、各種プラスチック材料、各種金属材料等が挙げられる。
筐体を構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
筐体を構成する金属材料としては、例えば、Al、Tiやこれらを含む合金、ステンレス鋼等が挙げられる。
《透析装置》
次に、本発明の透析装置について説明する。
以下、透析装置の具体例として、血液透析療法に用いるものについて代表的に説明する。
図8は、本発明の透析装置の好適な実施形態を示す模式図である。
本実施形態の透析装置D100は、前述した本発明の透析用部材P10を含むダイアライザーD1、ダイアライザーD1へ透析液(第2の流体)を供給する新鮮透析液回路D2およびダイアライザーD1から戻る透析液(第2の流体)が流れる使用済透析液回路D3からなる透析液回路D4、透析患者D10から血液(第1の流体)をダイアライザーD1に導く動脈側体外循環血液回路D5およびダイアライザーD1から透析患者D10に透析後の血液(第1の流体)をもどす静脈側体外循環血液回路D6からなる体外循環回路D7、および透析機器D8を含むものである。
透析機器D8は、任意に、血中水分量測定手段、透析液の温度の監視および調整を行う温度センサーを含む温度設定機構、ダイアライザーD1に流入させる透析液の流量の制御手段、ダイアライザーD1内の血液と透析液との間に圧力差を生じさせて、血液内の水分を透析液側に移行させる除水機構(ビスカスチャンバー方式、除水ポンプを利用したもの等)、体外循環血液回路内に血液を流すための血液ポンプ、除水機構及び血液ポンプ等を制御するための制御部D9を備える。
これにより、安全性の高い透析装置を提供することができる。
《透析方法》
次に、本発明の透析方法について説明する。
本発明の透析方法は、前述した本発明の透析用部材を用いて、透析を行うことを特徴とする。
より具体的には、前述した本発明の透析用部材において、第1の流路に第1の流体を流通させるとともに、第2の流路に第2の流体を流通させることにより、透析を行う。
これにより、安全性の高い透析方法を提供することができる。
このような透析方法は、本発明の透析用部材を備える本発明のダイアライザー、本発明の透析装置を用いることにより、より好適に行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、平坦化手段として、スキージーを用いる場合について中心的に説明したが、その代わりに、ローラー等を用いてもよい。
また、本発明の透析用部材の製造に用いる製造装置は、組成物供給部から供給された組成物のうち層の形成に用いられなかったものを回収するための、図示しない回収機構を備えるものであってもよい。これにより、層形成部に余剰の組成物が蓄積されることを防止しつつ、十分な量の組成物を供給することができるため、層における欠陥の発生をより効果的に防止しつつ、より安定的に透析用部材を製造することができる。また、回収した組成物を、再度、透析用部材の製造に用いることができるため、透析用部材の製造コストの低減に寄与することができ、また、省資源の観点からも好ましい。
また、本発明の透析用部材の製造に用いる製造装置は、未結合粒子除去工程で除去された組成物を回収するための回収機構を備えていてもよい。
また、前述した実施形態では、全ての層に対して、実体部を形成するものとして説明したが、実体部が形成されない層を有していてもよい。例えば、ステージの直上に形成された層に対して、実体部を形成しないものとし、犠牲層として機能させてもよい。
また、前述した実施形態では、インク付与工程をインクジェット法により行う場合について中心的に説明したが、インク付与工程は他の方法(例えば、他の印刷方法)を用いて行うものであってもよい。
また、実体部形成用インクおよび支持部形成用インクはインクジェット法以外の方法(例えば、他の印刷方法)で付与するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、層形成工程およびインク付与工程に加え、結合形成工程も、層形成工程およびインク付与工程と合わせて繰り返し行うものとして説明したが、結合形成工程は、繰り返し行うものでなくてもよい。例えば、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させるための結合形成処理が施されていない複数の層を備えた積層体を形成した後に一括して行うものであってもよい。これにより、例えば、セルロース誘導体が有する官能基を反応させ、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させるためのエネルギーを付与する処理を少なくすることができるため、透析用部材の製造に、当該エネルギーに対する耐性の低い材料を用いる場合であっても、当該エネルギーによる不本意な変性・劣化等を効果的に防止することができる。
また、前述した実施形態では、平坦化手段がステージ上を移動するものとして説明したが、ステージが移動することにより、ステージとスキージーとの位置関係が変化し、平坦化がなされるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、透析用部材の製造装置が、硬化手段(結合形成手段)として、エネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を備えるものである場合について代表的に説明したが、透析用部材の製造装置が備える硬化手段(結合形成手段)は、加熱手段等の他の手段であってもよい。
また、前述した第1実施形態の製造方法では、粒子を含む組成物(三次元造形用組成物)を用いて形成されて層を形成する工程と、インクを付与する工程とを含む一連の工程を繰り返し行う方法において、セルロース系材料を含むインクを用いるものとして説明したが、セルロース系材料は、例えば、粒子を含む組成物(三次元造形用組成物)中に含まれるものであってもよく、インクとして、セルロース系材料を含まないものを用いてもよい。
また、前述した実施形態では、透析用部材が、反応性官能基を有するセルロース系材料(セルロース誘導体)を用いて製造されたものである場合について中心的に説明したが、本発明の透析用部材は、反応性官能基を有さないセルロース系材料(セルロース誘導体)を用いて製造されたものであってもよい。また、本発明の透析用部材は、セルロース誘導体の代わりに、化学的修飾が施されていないセルロースを用いてもよい。
また、前述した実施形態では、透析用部材が三次元造形法により製造されたものである場合について代表的に説明したが、本発明の透析用部材は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、三次元造形法以外の方法で製造されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、透析用部材が人工透析(血液透析療法)に用いられるものである場合について代表的に説明したが、本発明において、透析用部材、これを備えるダイアライザーおよび透析装置は、人工透析(血液透析療法)以外に用いられるものであってもよい。
P10…透析用部材
P10’…仮成形体
P1…第1の流路
P2…第2の流路
P3…壁部
P4’…組成物(三次元造形用組成物)
P4…層
P42…インク
P43…結合部(実体部)
P46’…実体部形成用インク(組成物)
P46…実体部
P47’…支持部形成用インク(組成物)
P47…支持部
100…透析用部材製造装置
2…制御部
21…コンピューター
22…駆動制御部
3…組成物供給部
4…層形成部
41…ステージ
42…スキージー(平坦化手段)
43…ガイドレール
44…組成物仮置部
45…側面支持部(枠体)
5…インク吐出部(インク付与手段)
6…エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)
8…実体部形成用インク付与手段
9…支持部形成用インク付与手段
D100…透析装置
D1…ダイアライザー
D2…新鮮透析液回路
D3…使用済透析液回路
D4…透析液回路
D5…動脈側体外循環血液回路
D6…静脈側体外循環血液回路
D7…体外循環回路
D8…透析機器
D9…制御部
D10…透析患者

Claims (15)

  1. 複数の管状の流路が設けられ、これらの壁部がセルロース系材料で構成された透析用部材であって、
    一体的に形成された前記壁部によって、複数の前記流路に分画されていることを特徴とする透析用部材。
  2. 前記流路として、第1の流体が流れる第1の流路と、前記第1の流体とは異なる第2の流体が流れる第2の流路とを有し、前記第1の流体と前記第2の流体とが、逆方向に流れるものである請求項1に記載の透析用部材。
  3. 前記第1の流路および前記第2の流路を、それぞれ、複数有している請求項2に記載の透析用部材。
  4. 前記流路の長手方向に沿って、前記第1の流路を取り囲むように、複数の前記第2の流路が配されている請求項2または3に記載の透析用部材。
  5. 前記流路の長手方向に垂直な方向での断面形状がハニカム状をなすものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透析用部材。
  6. 前記流路が、らせん状をなすものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の透析用部材。
  7. 透析用部材は、三次元造形法により製造されたものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の透析用部材。
  8. 前記流路の幅は、300μm以上500μm以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透析用部材。
  9. 前記壁部の厚さは、10μm以上100μm以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の透析用部材。
  10. 前記壁部により分画された前記流路の数は、5000以上50000以下である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の透析用部材。
  11. 前記セルロース系材料は、セルロースに対して化学修飾を施したものである請求項1ないし10のいずれか1項に記載の透析用部材。
  12. 前記セルロース系材料は、反応性官能基が導入されたセルロース誘導体を反応させ、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させたものである請求項1ないし11のいずれか1項に記載の透析用部材。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の透析用部材を備えたことを特徴とするダイアライザー。
  14. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の透析用部材を備えたことを特徴とする透析装置。
  15. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の透析用部材を用いて、透析を行うことを特徴とする透析方法。
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