JP2016023275A - セルロース系材料およびセルロース系部材 - Google Patents

セルロース系材料およびセルロース系部材 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材の製造に好適に用いることのできるセルロース系材料を提供すること、また、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材(セルロース系部材)を提供すること。【解決手段】本発明のセルロース系材料は、セルロース誘導体を含むセルロース系材料であって、前記セルロース誘導体は、反応性官能基を含むものであり、前記反応性官能基は、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合し得るものであることを特徴とする。前記セルロース誘導体は、炭素−炭素二重結合を有するものであることが好ましい。前記セルロース誘導体は、分子内に2個以上のS−H結合を有するシロキサン化合物と反応するものであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース系材料およびセルロース系部材に関する。
セルロースは、再生可能な資源で、地球上に莫大な蓄積量があるとともに、生体適合性、分解性に優れ、環境にやさしい材料であることから、近年注目を浴び、その有効利用が求められている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、従来においては、セルロースの用途としては、印刷用紙、段ボール紙等の紙製品がほとんどで、そのほかに、繊維(セルロース繊維)等に利用されている程度で、セルロースが有する様々な特長を十分に生かしきれていないという問題があった。
また、セルロースは、その化学構造から、機械的強度に優れた部材を構成し得ることが知られているが、実用レベルで、セルロースの特性を十分に発揮した高強度、高耐久性の部材には、適用されていない。
特開平7−268724号公報
本発明の目的は、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材の製造に好適に用いることのできるセルロース系材料を提供すること、また、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材(セルロース系部材)を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のセルロース系材料は、セルロース誘導体を含むセルロース系材料であって、前記セルロース誘導体は、反応性官能基を含むものであり、前記反応性官能基は、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合し得るものであることを特徴とする。
これにより、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材(セルロース系部材)の製造に好適に用いることのできるセルロース系材料を提供することができる。
本発明のセルロース系材料では、前記セルロース誘導体は、炭素−炭素二重結合を有するものであることが好ましい。
これにより、セルロース誘導体の反応性を優れたものとすることができ、セルロース系材料(セルロース系組成物)を用いて製造されるセルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース誘導体と反応する化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)の選択の幅が広がるため、セルロース系部材の設計の幅が広がる。
本発明のセルロース系材料では、前記セルロース誘導体は、分子内に2個以上のS−H結合を有するシロキサン化合物と反応するものであることが好ましい。
これにより、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、加熱により、共有結合を形成する化学反応を好適に行うことができる。
本発明のセルロース系材料では、前記シロキサン化合物は、環状化合物であることが好ましい。
これにより、セルロース系部材の耐久性、強度等を特に優れたものとすることができる。
本発明のセルロース系材料では、前記セルロース誘導体は、(メタ)アクリロイル基を有するものであることが好ましい。
これにより、セルロース誘導体の反応性をさらに優れたものとすることができ、セルロース系部材の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性をさらに優れたものとすることができる。また、セルロース誘導体と反応する化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)の選択の幅が広がるため、セルロース系部材の設計の幅が広がる。
本発明のセルロース系材料では、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる反応は、紫外線の照射により進行するものであることが好ましい。
これにより、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材の製造装置の構成の複雑化を防止し、セルロース系部材の生産コストを抑制することができる。
本発明のセルロース系部材は、本発明のセルロース系材料を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材(セルロース系部材)を提供することができる。
本発明のセルロース系部材は、水を保持するゲル状のものであることが好ましい。
本発明のセルロース系部材は、形状の安定性、耐久性等に優れるとともに、水を含む液体(例えば、培養液等)の保持性(保液性)に優れている。このため、水を保持するゲル状の部材に好適に適用することができる。
また、セルロースが有する水酸基の割合を調整することにより、求められる保液性や硬度等の特性に応じて調整を容易かつ確実に行うことができる。
セルロース系部材の製造方法の第1実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 セルロース系部材の製造方法の第1実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 セルロース系部材の製造方法の第2実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 セルロース系部材の製造方法の第2実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。 セルロース系部材の製造に用いる製造装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。 セルロース系部材の製造に用いる製造装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、添付する図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細な説明をする。
《セルロース系材料》
まず、本発明のセルロース系材料(セルロース誘導体を含む組成物)について詳細に説明する。
本発明のセルロース系材料(セルロース系組成物)は、セルロース誘導体を含むものである。
そして、前記セルロース誘導体は、反応性官能基を含むものであり、前記反応性官能基は、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合し得るものである。
このようなセルロース誘導体を含むことにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)を用いて製造される部材(セルロース系部材)を、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れたものとすることができる。
以下、本発明のセルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する成分について説明する。
(セルロース誘導体)
セルロースはβ−グルコースがグリコシド結合により重合した化合物であるが、本発明において、セルロース誘導体とは、セルロースから化学反応により誘導することができる化合物であればよく、例えば、セルロースが有する水酸基の少なくとも一部を他の置換基に変化させたもの(セルロースが有する水酸基の少なくとも一部を他の化合物と縮合反応させたもの等を含む)等が挙げられる。
なお、前記置換基は、すべての繰り返し単位(グルコース構造)について、同様に導入されたものであってもよいし、繰り返し単位(グルコース構造)の一部にのみ導入されたものであってもよい。また、繰り返し単位(グルコース構造)によって、前記置換基が導入された部位が異なっていてもよい。
そして、本発明のセルロース系材料中に含まれるセルロース誘導体は、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合し得る官能基を有するものであればよい。
このような官能基(反応性官能基)としては、セルロース誘導体の分子同士を直接結合するものであってもよいし、他の原子(少なくとも1個の原子)を介して、結合するものであってもよい。
前記官能基としては、例えば、炭素−炭素二重結合を含むもの、水酸基、カルボキシル基等が挙げられるが、炭素−炭素二重結合を含むものであるのが好ましい。
これにより、セルロース誘導体の反応性を優れたものとすることができ、セルロース系材料(セルロース系組成物)を用いて製造されるセルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、製造されるセルロース系部材中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース誘導体と反応する化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)の選択の幅が広がるため、セルロース系部材の設計の幅が広がる。
炭素−炭素二重結合を含む官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられるが、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
これにより、セルロース誘導体の反応性をさらに優れたものとすることができ、セルロース系部材の生産性をさらに優れたものとすることができる。また、最終的なセルロース系部材中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることをより効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性をさらに優れたものとすることができる。また、セルロース誘導体と反応する化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)の選択の幅が広がるため、セルロース系部材の設計の幅が広がる。
前記官能基は、セルロース誘導体のいかなる部位に導入されたものであってもよいが、セルロースを構成するβ−グルコースの6位の炭素に結合する水酸基に化学反応により導入されたものであるのが好ましい。すなわち、下記式(2)のRに前記官能基が導入されているのが好ましい。
Figure 2016023275
(式(2)中、nは、1以上の整数であり、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。ただし、少なくとも、分子内に少なくとも1つの官能基が導入されている。)
これにより、前記官能基の立体障害を小さいものとすること等から、セルロース誘導体の反応性を優れたものとすることができ、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、最終的なセルロース系部材中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを防止することができる。このようなことから、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系材料(セルロース系組成物)の構成成分としてのセルロース誘導体の合成を効率よく行うことができる。その結果、セルロース系部材の生産コストの低減にも寄与することができる。
また、前記官能基は、基本となるセルロース構造に、少なくとも1つの炭素−炭素単結合を介してセルロース骨格に導入されたものであるのが好ましい。
これにより、前記官能基の反応性を特に優れたものとすることでき、セルロース系部材の生産性等を特に優れたものとすることができる。
上記のような条件を満足する好ましいセルロース誘導体の一例としては、下記式(3)で示されるようなものが挙げられる。
Figure 2016023275
(式(3)中、nは、1以上の整数であり、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子(H)またはアセチル基(CHCO)、Rは、水素原子(H)またはメチル基(CH)である。)
セルロース誘導体が式(3)で示されるものであることにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
なお、セルロース系材料(セルロース系組成物)を用いて製造されるセルロース系部材をゲル状のもの(ハイドロゲル)として用いる場合、セルロース誘導体は、アセチル化されていない水酸基(OH)を分子内に少なくとも1個有するものであるのが好ましい。これにより、セルロース系部材(ゲル状部材)の保液性を特に優れたものとすることができる。
セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる反応は、紫外線の照射により進行するものであるのが好ましい。
これにより、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材の製造装置の構成の複雑化を防止し、セルロース系部材の生産コストを抑制することができる。
セルロース誘導体(特に、前記官能基が炭素−炭素二重結合を含むものであるセルロース誘導体)は、分子内に2個以上のS−H結合を有するシロキサン化合物と反応するものであるのが好ましい。
これにより、前記共有結合の形成効率を特に優れたものとすることができ、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材中に未反応のセルロース誘導体が多く含まれることを効果的に防止することができる。また、反応により形成される共有結合の化学的安定性を特に優れたものとすることができる。このようなことから、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、加熱により、前記共有結合を形成する化学反応を好適に行うことができる。
セルロース誘導体が反応するシロキサン化合物は、分子内に2個以上のS−H結合を有するものであるのが好ましいが、分子内に3個以上のS−H結合を有するものであるのがより好ましい。
これにより、前記共有結合を形成する化学反応によって、より複雑な網目構造を形成することができ、セルロース系部材の耐久性、強度等を特に優れたものとすることができる。
また、セルロース誘導体が反応する前記シロキサン化合物は、鎖状化合物であってもよいが、環状化合物であるのが好ましい。
これにより、セルロース系部材の耐久性、強度等を特に優れたものとすることができる。
このような条件を満足するシロキサン化合物(セルロース誘導体と反応するシロキサン化合物)としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
Figure 2016023275
また、セルロース誘導体(特に、前記官能基が炭素−炭素二重結合を含むものであるセルロース誘導体)は、架橋剤と反応するものであってもよい。
これにより、例えば、前記共有結合を形成する化学反応によって、より複雑な網目構造を形成することができ、セルロース系部材の耐久性、強度等を特に優れたものとすることができる。また、例えば、紫外線等の光の照射により、前記共有結合を形成する化学反応を好適に行うことができる。
架橋剤としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を有する化合物等が挙げられる。
中でも、架橋剤としては、分子内に複数個の重合性官能基を有する化合物が好ましく、アルキル鎖の両末端が重合性官能基で修飾された化合物がより好ましい。
このような架橋剤としては、例えば、下記式(5)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2016023275
(式(5)中、nは、1以上の整数である。)
セルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれるセルロース誘導体の重量平均分子量は、特に限定されないが、5000以上10000000以下であるのが好ましく、10000以上7000000以下であるのがより好ましい。
これにより、製造されるセルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系材料(セルロース系組成物)が溶媒を含む場合において、セルロース系材料(セルロース系組成物)の保存安定性、取り扱いのしやすさ(例えば、インクジェット法による吐出安定性)等を優れたものとすることができる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)中におけるセルロース誘導体の含有率は、特に限定されないが、セルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれる全固形分(セルロース系部材に含まれるべき全成分)に対して、30質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上90質量%以下であるのがより好ましく、45質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)の保存安定性、取り扱いのしやすさ(例えば、インクジェット法による吐出安定性)等を優れたものとしつつ、製造されるセルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)中におけるセルロース誘導体の形態は、特に限定されないが、例えば、セルロース系材料(セルロース系組成物)が後述するような溶媒を含むものである場合、溶解した状態のものであってもよいし、分散した状態のものであってもよいし、これらの状態が混在していてもよい。
セルロース系材料(セルロース系組成物)中においてセルロース誘導体が分散している場合、セルロース系材料(セルロース系組成物)中におけるセルロース誘導体の平均粒径は、特に限定されないが、5.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。
これにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)の保存安定性、取り扱いのしやすさ(例えば、インクジェット法による吐出安定性)等を優れたものとしつつ、製造されるセルロース系部材の耐久性、強度、信頼性を特に優れたものとすることができる。
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
(溶媒)
セルロース系材料(セルロース系組成物)は、前述したようなセルロース誘導体に加え、溶媒を含むものであってもよい。
これにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)の流動性を優れたものとし、セルロース系材料(セルロース系組成物)の取り扱いのしやすさ(例えば、インクジェット法による吐出安定性)を特に優れたものとすることができる。
特に、セルロース系材料(セルロース系組成物)は、溶媒として、セルロース誘導体を溶解するものを含むものであるのが好ましい。
これにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)中での組成の不本意なばらつきを効果的に防止することができる。また、例えば、インクジェット法によるセルロース系材料(セルロース系組成物)の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。このようなことから、長期間にわたって、安定的にセルロース系部材を製造することができる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する溶媒としては、例えば、各種有機溶媒、各種無機溶媒を用いることができるが、有機溶媒であるのが好ましい。
前述したようなセルロース誘導体は、一般に、親水性が低く、有機溶剤に対する親和性に優れている。
このため、セルロース系材料(セルロース系組成物)中での組成の不本意なばらつきをより効果的に防止抑制することができる。また、例えば、インクジェット法によるセルロース系材料(セルロース系組成物)の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。このようなことから、長期間にわたって、安定的にセルロース系部材を製造することができる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類等が挙げられるが、中でも、テトラヒドロフラン、クロロホルムよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
これにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)中におけるセルロース誘導体の溶解性を高いものとすることができ、セルロース系材料(セルロース系組成物)中での不本意な組成のばらつきをより効果的に防止することができ、セルロース系材料(セルロース系組成物)の保存安定性、吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。また、これらの有機溶媒は、適度な揮発性を有するため、セルロース系部材の生産性を高めたり、最終的に得られるセルロース系部材中に溶媒が不本意に残存することを防止する観点からも有利である。
セルロース系材料(セルロース系組成物)中における溶媒の含有率は、特に限定されないが、10質量%以上70質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上50質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、セルロース系材料(セルロース系組成物)の吐出安定性等をより優れたものとしつつ、セルロース系材料(セルロース系組成物)の付与後の溶媒の除去をより速やかに行うことができるため、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。
(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)
セルロース誘導体が有する官能基が、前述したように、他の原子(少なくとも1個の原子)を介して共有結合を形成するものである場合、セルロース系材料(セルロース系組成物)は、前記他の原子を含む化合物(前記他の原子の由来となる物質)を含むものであってもよい。
このような化合物としては、例えば、セルロース誘導体の項目で述べたシロキサン化合物や架橋剤等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)中における前記化合物(セルロース誘導体が有する官能基と反応し得る化合物)の含有率は、特に限定されないが、セルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれる全固形分(セルロース系部材に含まれるべき全成分)に対して、5質量%以上55質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上50質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前記化合物とセルロース誘導体との反応を好適に進行させ、前記共有結合を好適に形成することできるとともに、製造されるセルロース系部材において、セルロース系材料が有する特長をより効果的に発揮させることができる。その結果、セルロース系部材の耐久性、強度、信頼性等を特に優れたものとすることができる。
(その他の硬化成分)
前述したようにセルロース誘導体は、それ自身が、硬化成分として機能するものであってもよいが、セルロース系材料(セルロース系組成物)は、さらに、その他の硬化成分を含むものであってもよい。
このような硬化成分(その他の硬化成分)としては、例えば、熱硬化性樹脂;可視光領域の光により硬化する可視光硬化性樹脂(狭義の光硬化性樹脂)、紫外線硬化性樹脂、赤外線硬化性樹脂等の各種光硬化性樹脂;X線硬化性樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、得られるセルロース系部材の機械的強度やセルロース系部材の生産性、セルロース系材料(セルロース系組成物)の保存安定性等の観点から、特に、紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)が好ましい。
紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)としては、紫外線照射により、光重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
付加重合性化合物としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。付加重合性化合物として、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく使用できる。
エチレン性不飽和重合性化合物は、単官能の重合性化合物および多官能の重合性化合物、またはそれらの混合物の化学的形態をもつ。
単官能の重合性化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類等が挙げられる。
多官能の重合性化合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族の多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族のアミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類とイソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、カルボン酸との脱水縮合反応物等も使用できる。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、アルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も使用できる。
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが代表的であり、単官能のもの、多官能のもののいずれも用いることができる。
単官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート以外の重合性化合物としては、例えば、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステル等が挙げられる。
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等が挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等が挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等が挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等が挙げられる。
その他のエステルの例としては、例えば、脂肪族アルコール系エステル類や、芳香族系骨格を有するもの、アミノ基を含有するもの等も用いることができる。
また、不飽和カルボン酸と脂肪族アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、例えば、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
その他の好ましいアミド系モノマーとしては、例えば、シクロへキシレン構造を有するもの等が挙げられる。
また、イソシアネートと水酸基との付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(1)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R1)COOCHCH(R2)OH (1)
(ただし、式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、HまたはCHを示す。)
本発明において、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基を分子内に1つ以上有するカチオン開環重合性の化合物を紫外線硬化性樹脂(重合性化合物)として好適に用いることができる。
カチオン重合性化合物としては、例えば、開環重合性基を含む硬化性化合物等が挙げられ、中でも、ヘテロ環状基含有硬化性化合物が特に好ましい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体等の環状イミノエーテル類、ビニルエーテル類等が挙げられ、中でも、エポキシ誘導体、オキセタン誘導体、ビニルエーテル類が好ましい。
好ましいエポキシ誘導体の例としては、例えば、単官能グリシジルエーテル類、多官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、多官能脂環式エポキシ類等が挙げられる。
グリシジルエーテル類の具体的な化合物を例示すると、例えば、ジグリシジルエーテル類(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、3官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)、4官能以上のグリシジルエーテル類(例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル等)、脂環式エポキシ類(例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテル等)、オキセタン類(例えば、OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)等)等が挙げられる。
重合性化合物としては、脂環式エポキシ誘導体を好ましく用いることができる。「脂環式エポキシ基」とは、シクロペンテン基、シクロヘキセン基等のシクロアルケン環の二重結合を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化した部分構造を言う。
脂環式エポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド基またはシクロペンテンオキシド基を1分子内に2個以上有する多官能脂環式エポキシ類が好ましい。脂環式エポキシ化合物の具体例としては、例えば、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ジ(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が挙げられる。
分子内に脂環式構造を有しない通常のエポキシ基を有するグリシジル化合物を、単独で使用したり、前記の脂環式エポキシ化合物と併用することもできる。
このような通常のグリシジル化合物としては、例えば、グリシジルエーテル化合物やグリシジルエステル化合物等を挙げることができるが、グリシジルエーテル化合物を併用することが好ましい。
グリシジルエーテル化合物の具体例を挙げると、例えば、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポシキ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジルエーテル化合物、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリトリグリシジルエーテル等の脂肪族グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。グリシジルエステルとしては、例えば、リノレン酸ダイマーのグリシジルエステル等を挙げることができる。
重合性化合物としては、4員環の環状エーテルであるオキセタニル基を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」ともいう。)を使用することができる。オキセタニル基含有化合物は、1分子中にオキセタニル基を1個以上有する化合物である。
セルロース系材料(セルロース系組成物)は、前述した硬化成分の中でも、特に、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)を硬化させて製造されるセルロース系部材の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、セルロース系部材の強度、耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
また、これらの硬化成分を含むことにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)の硬化物の各種溶媒(例えば、水等)に対する溶解性を特に低いものとすることができる。その結果、例えば、後に詳述するような方法でセルロース系部材を製造した場合に、より確実に、セルロース系部材の寸法精度をより高いものとすることができる。
特に、セルロース系材料(セルロース系組成物)が(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものであると、酸素阻害を受けにくく、より低エネルギーでの硬化が可能であり、また、他モノマーを含めた共重合を促進し、セルロース系部材の強度を特に高いものとすることができる。
また、セルロース系材料(セルロース系組成物)がポリエーテル系脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むものであると、セルロース系部材の高強度化と高靱性化をより高いレベルで両立することができる。
また、セルロース系材料(セルロース系組成物)が2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートを含むものであると、柔軟性を持ち破断伸び率を向上させることができる。
また、セルロース系材料(セルロース系組成物)が4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを含むものであると、PMMA、PEMA粒子やシリカ粒子、金属粒子等への密着性が向上し、セルロース系部材の強度を特に高いものとすることができる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)中における硬化成分の含有率は、セルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれる全固形分(セルロース系部材に含まれるべき全成分)に対して、1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したようなセルロース誘導体を含むことによる効果をより顕著に発揮させつつ、その他の硬化成分を含むことによるこれらの相乗効果が発揮され、最終的に得られるセルロース系部材の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材の生産性を特に優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、セルロース系材料(セルロース系組成物)は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;各種蛍光材料;各種蓄光材料;各種燐光材料;赤外線吸収材料;分散剤;界面活性剤;重合開始剤;重合促進剤;架橋剤;前述したようなシロキサン化合物;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
また、セルロース系材料(セルロース系組成物)は、その他の成分として、前述したような反応性官能基が導入されていないセルロース誘導体(その他のセルロース誘導体)や、化学修飾が施されていないセルロースを含むものであってもよい。このような場合、例えば、前述したような反応性官能基が導入されたセルロース誘導体は、セルロース系材料中において、固体状をなすその他のセルロース誘導体や化学修飾が施されていないセルロースの表面付近に設けられたものであってもよい。
特に、セルロース系材料(セルロース系組成物)が着色剤を含むことにより、着色剤の色に対応する色に着色されたセルロース系部材を得ることができる。
特に、着色剤として、顔料を含むことにより、セルロース系材料(セルロース系組成物)、セルロース系部材の耐光性を良好なものとすることができる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記無機顔料の中でも、好ましい白色を呈するためには、酸化チタンが好ましい。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに詳しくは、黒色(ブラック)の顔料として使用されるカーボンブラックとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)等が挙げられる。
白色(ホワイト)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21等が挙げられる。
黄色(イエロー)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
紅紫色(マゼンタ)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
藍紫色(シアン)の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バット ブルー 4、60等が挙げられる。
また、前記以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)が顔料を含むものである場合、当該顔料の平均粒径は、300nm以下であるのが好ましく、50nm以上250nm以下であるのがより好ましい。これにより、例えば、セルロース系材料(セルロース系組成物)が溶媒(顔料を分散する分散媒)を含む場合に、セルロース系材料(セルロース系組成物)中における顔料の分散安定性やセルロース系材料(セルロース系組成物)の吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、より優れた画質の画像を形成することができる。
また、染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)が着色剤を含むものである場合、当該セルロース系材料(セルロース系組成物)中における着色剤の含有率は、1質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。これにより、特に優れた隠蔽性および色再現性が得られる。
特に、セルロース系材料(セルロース系組成物)が着色剤として酸化チタンを含むものである場合、当該セルロース系材料(セルロース系組成物)中における酸化チタンの含有率は、セルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれる全固形分(セルロース系部材に含まれるべき全成分)に対して、1質量%以上18質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上16質量%以下であるのがより好ましい。これにより、特に優れた隠蔽性が得られる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する蛍光材料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー 87、C.I.アシッドレッド 52、C.I.アシッドレッド 92、ブリリアントスルホフラビン、エオシン、ベーシックフラビン、アクリジンオレンジ、ローダミン6G、ローダミンB等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する蓄光材料としては、例えば、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類の硫化物やアルミン酸ストロンチウム等の蓄光材、あるいは硫化亜鉛等に例示される各種の硫化物や酸化物等の無機蛍光材等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する燐光材料としては、例えば、イリジウム錯体、シクロメタル化錯体等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)を構成する赤外線吸収材料としては、例えば、ITO、ATO微粒子等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)が顔料等の分散質を含む場合に、分散剤をさらに含むものであると、分散質の分散性をより良好なものとすることができる。
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤等の顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
高分子分散剤の具体例としては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂のうち1種以上を主成分とするもの等が挙げられる。
高分子分散剤の市販品としては、例えば、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、ノベオン(Noveon)社から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYK社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)が界面活性剤を含むものであると、セルロース系部材の耐擦性をより良好なものとすることができる。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤としての、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等を用いることができ、中でも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いるのが好ましい。
界面活性剤の具体例としては、例えば、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製商品名)等を挙げられる。
セルロース系材料(セルロース系組成物)が重合開始剤を含むものであると、セルロース誘導体の種類等によっては(例えば、セルロース誘導体が有する前記官能基が炭素−炭素二重結合を含むものである場合に)、セルロース誘導体の反応(セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる)を好適に進行させることができる。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等を用いることができる。
また、セルロース系材料(セルロース系組成物)の粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、インクジェット法によるセルロース系材料(セルロース系組成物)の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
なお、本明細書中において、粘度とは、E型粘度計(例えば、東京計器社製 VISCONIC ELD)を用いて25℃において測定される値をいう。
《セルロース系部材》
次に、本発明のセルロース系部材について説明する。
本発明のセルロース系部材は、前述したような本発明のセルロース系材料(セルロース系組成物)を用いて製造されたものであることを特徴とする。
これにより、セルロースが有する特徴を備えつつ、強度等に優れた部材(セルロース系部材)を提供することができる。
このような優れた特徴を有するため、本発明のセルロース系部材は、様々な用途に適用することができる。
本発明のセルロース系部材の用途は、特に限定されないが、例えば、人形、フィギュア等の鑑賞物・展示物;人工透析器、インプラント等の医療機器;印刷用紙;レンズ、位相差フィルム、偏向板等の光学部材;各種細胞、各種細菌等の培養に用いる培養足場材等のゲル状部材;自転車等の乗り物;車椅子等の介護・看護用品等や、これらの構成部品等が挙げられる。また、本発明によれば、セルロース系部材を、軽量でかつ高強度のものとすることができるため、例えば、各種筐体にも好適に適用することができる。
中でも、セルロース系部材は、水を保持するゲル状のもの(例えば、培養足場材等)であるのが好ましい。
本発明のセルロース系部材は、形状の安定性、耐久性等に優れるとともに、水を含む液体(例えば、培養液等)の保持性(保液性)に優れている。このため、水を保持するゲル状のもの(ゲル状部材)に好適に適用することができる。
また、近年、例えば、再生医療の分野において、培養細胞を所定の形状(シート状、切片状)となるように培養し、これを移植に用いることが行われているが、本発明のセルロース系部材は、形状の安定性等に優れているため、セルロース部材(培養足場材)の形状に沿って、所望の形状(例えば、複雑な曲面、微小な凹凸を有する形状、複雑な厚みの分布を有する形状)の培養細胞(培養組織)を得ることができる。このため、培養後の後処理を省略または簡略化することができるとともに、各患者に適した形状の培養細胞(培養組織)を得ることができるため、手術の成功率の向上、手術時間の短縮、患者の負担軽減等の効果が得られる。
また、本発明のセルロース系部材を、水を保持するゲル状のもの(ゲル状部材)に適用する場合、セルロースが有する水酸基の割合を調整することにより、求められる保液性や硬度等の特性に応じた調整を容易かつ確実に行うことができる。言い換えると、本発明は、オンデマンド性に優れているといえる。
また、医療分野やバイオ分野(培養足場材を含む)では、高い安全性が求められるが、本発明では、安全性の高いセルロース誘導体を用いているため、このような要求にも応えることができる。
また、本発明のセルロース系部材は、プロトタイプ、量産品、オーダーメード品のいずれに適用されるものであってもよい。
また、本発明において、セルロース系部材は、セルロース系材料に含まれるセルロース誘導体について、分子鎖同士を共有結合により結合する反応を行うことにより得られたものであればよいが、さらに、他の反応を行ってもよい。例えば、セルロース系材料に含まれるセルロース誘導体がアセチル化された水酸基を有するものである場合、アセチル基を脱離する反応(脱アセチル化)を行ってもよい。
これにより、例えば、セルロース系材料中においては、セルロース誘導体の疎水性を十分に高いものとしつつ、最終的に得られるセルロース系部材については、親水性の高いものとすることができ、セルロース系部材の生産性やセルロース系材料の保存安定性と、セルロース系部材との特性との両立を図ることができる。また、例えば、セルロース系部材がゲル状部材(例えば、培養足場材等)である場合に、当該ゲル状部材の保液性等の各種特性の調整を好適に行うことができる。
《セルロース系部材の製造方法》
次に、前述したような本発明のセルロース系部材を製造する方法について説明する。
本発明のセルロース系部材は、前述したような本発明のセルロース系材料(セルロース系組成物)を用いて製造されたものであればよく、その製造方法は、特に限定されない。
本発明のセルロース系部材の製造方法としては、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形等の各種成形方法や、バルク材に切削・研削・研磨等の機械加工を施す方法等が挙げられる。
また、本発明のセルロース系部材の製造方法としては、以下に説明するような三次元造形法(組成物を用いて層を形成する層形成工程を複数回行い、前記層を積層し三次元造形物を製造する方法)を用いることができる。
これにより、複雑な形状のセルロース系部材の製造や、形状・大きさが異なる複数種のセルロース系部材の製造にも好適に対応することができる。
以下、セルロース系部材の製造方法の具体例として、三次元造形法を適用した例について説明する。
≪第1実施形態≫
図1、図2は、セルロース系部材の製造方法の第1実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。
図1、図2に示すように、本実施形態の製造方法は、粒体を含む組成物P1’を用いて、側面支持部(枠体)45で囲われた領域に、所定の厚さを有する層P1を形成する層形成工程(1a、1d)と、インクジェット法により、層P1に対し、セルロース誘導体を含むセルロース系材料(セルロース系組成物)としてのインクP12を付与するインク付与工程(1b、1e)と、層P1に付与されたインクP12中に含まれるセルロース誘導体が有する官能基を反応させ、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる(セルロース誘導体を硬化させる)結合形成工程(1c、1f)とを有し、これらの工程を順次繰り返し行い(1g)、さらに、その後に、各層P1を構成する粒体のうち、セルロース誘導体(結合剤、硬化成分)により結合していないものを除去する未結合粒子除去工程(1h)を有している。
以下、各工程について説明する。
<層形成工程>
層形成工程では、粒体を含む組成物(三次元造形用組成物)P1’を用いて、所定の厚さを有する層P1を形成する(1a、1d)。
このように、粒体を含む組成物P1’を用いることにより、最終的に得られるセルロース系部材(三次元造形物)P10の寸法精度を優れたものとすることができる。また、セルロース系部材P10の耐熱性や機械的強度等を特に優れたものとすることができる。
なお、組成物P1’については、後に詳述する。
本工程では、平坦化手段を用いて、層P1を表面が平坦化されたものとして形成する。
1回目の層形成工程では、ステージ41の表面に所定の厚さで層P1を形成する(1a)。このとき、ステージ41の側面と側面支持部45とが密着(当接)した状態となっており、ステージ41と側面支持部45との間から、組成物P1’が落下することが防止されている。
2回目以降の層形成工程では、先の工程で形成された層P1(第1の層)の表面に新たな層P1(第2の層)を形成する(1d)。このとき、ステージ41の層P1(ステージ41上に複数の層P1がある場合には、少なくとも最も上側に設けられた層P1)の側面と側面支持部45とが密着(当接)した状態となっており、ステージ41とステージ41上の層P1との間から、組成物P1’が落下することが防止されている。
本工程においては、組成物P1’を加熱してもよい。これにより、例えば、組成物P1’が溶融成分を含む場合において、組成物P1’をより好適にペースト状のものとすることができる。
本工程における組成物P1’の粘度は、7000mPa・s以上60000mPa・s以下であるのが好ましく、10000mPa・s以上50000mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、形成される層P1における不本意な膜厚のばらつきの発生をより効果的に防止することができる。
本工程で形成する層P1の厚さは、特に限定されないが、例えば、30μm以上500μm以下であるのが好ましく、70μm以上150μm以下であるのがより好ましい。これにより、セルロース系部材P10の生産性を十分に優れたものとしつつ、製造されるセルロース系部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、セルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
<インク付与工程(セルロース系材料付与工程)>
層形成工程で層P1を形成した後、インクジェット法により、当該層P1に対し、セルロース誘導体を含むインク(セルロース系材料)P12を付与する(1b、1e)。
インクP12に含まれるセルロース誘導体は、結合形成工程(硬化工程)において、分子間で共有結合を形成するものであるため、層P1を構成する粒体を強固に結合することができるとともに、隣り合う層P1のインクP12が付与された部位同士も強固に結合することができる。
本工程では、層P1のうちセルロース系部材P10の実部(実体のある部位)に対応する部位にのみ、選択的にインクP12を付与する。
これにより、層P1を構成する粒体同士を強固に結合させ、最終的に所望の形状の結合部(実体部)P13を形成することができる。また、最終的に得られるセルロース系部材P10の機械的強度を優れたものとすることができる。
本工程では、インクジェット法によりインクP12を付与するため、インクP12の付与パターンが微細な形状のものであっても再現性よくインクP12を付与することができる。その結果、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度を特に高いものとすることができる。
<結合形成工程(硬化工程)>
インク付与工程で層P1にインクP12を付与した後、層P1に付与されたインクP12に含まれるセルロース誘導体が有する官能基を反応させ、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させ、結合部(実体部)P13を形成する(1c、1f)。
このように、セルロース誘導体の分子同士を共有結合で形成することにより、分子間での分離等による強度の低下等を効果的に防止しつつ、セルロース系材料が本来有している特長(例えば、高強度、軽量、生体安全性、環境安全性等)を発揮させることができる。そして、前記共有結合の形成に伴い、セルロース誘導体と粒体とを強固に結合することもできる。このようなことから、最終的に得られるセルロース系部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を優れたものとすることができる。
本工程は、インクP12に含まれるセルロース誘導体の種類により異なるが、例えば、加熱やエネルギー線(例えば、紫外線等の光線や、電子線、陽電子線、中性子線、α線、イオンビーム等)の照射等により行うことができる。
特に、インクP12中に含まれるセルロース誘導体を、加熱により硬化させる場合、セルロース系部材P10の製造装置の構成を簡易なものとすることができる。また、セルロース系部材P10の原料が光透過性の低い材料であっても、目的とする反応を好適に進行させることができる。
セルロース誘導体の硬化(セルロース誘導体の分子鎖間での共有結合の形成)を加熱により行う場合、加熱温度は、セルロース誘導体の種類等により異なるが、50℃以上180℃以下であるのが好ましく、60℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
また、インクP12中に含まれるセルロース誘導体を、光の照射により硬化させる場合、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
セルロース誘導体を光の照射により硬化させる場合、当該光としては、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、X線、マイクロ波、ラジオ波等を用いることができるが、紫外線であるのが好ましい。
これにより、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、セルロース系部材P10の製造装置の構成の複雑化を防止し、セルロース系部材P10の生産コストを抑制することができる。
また、セルロース誘導体を紫外線の照射により硬化させる場合、紫外線のピーク波長は、250nm以上400nm以下であるのが好ましい。また、硬化させるべき各部位への紫外線の照射時間は、30秒以上60秒以下であるのが好ましい。
なお、インク付与工程と結合形成工程とは、同時進行的に行ってもよい。すなわち、1つの層P1全体のパターン全体が形成される前に、インクP12が付与された部位から順次反応を進行させるものであってもよい。
<未結合粒子除去工程>
そして、前記のような工程を繰り返し行った後に、後処理工程として、各層P1を構成する粒体のうち、インクP12により結合していないもの(未結合粒子)を除去する未結合粒子除去工程(1h)を行う。これにより、セルロース系部材P10が取り出される。
本工程の具体的な方法としては、例えば、刷毛等で未結合粒子を払い除ける方法、未結合粒子を吸引により除去する方法、空気等の気体を吹き付ける方法、水等の液体を付与する方法(例えば、液体中に前記のようにして得られた積層体を浸漬する方法、液体を吹き付ける方法等)、超音波振動等の振動を付与する方法等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。より具体的には、空気等の気体を吹き付けた後に、水等の液体に浸漬する方法や、水等の液体に浸漬した状態で、超音波振動を付与する方法等が挙げられる。中でも、前記のようにして得られた積層体に対し、水を含む液体を付与する方法(特に、水を含む液体中に浸漬する方法)を採用するのが好ましい。
前述したように、結合部(実体部)P13においては、インクP12に含まれるセルロース誘導体が有する官能基が反応することにより、セルロース誘導体の分子鎖間に共有結合が形成され、強固に結合しているため、本工程において、結合部(実体部)P13が不本意に除去されてしまったり、変形してしまうこと等が確実に防止されている。
≪第2実施形態≫
次に、セルロース系部材の製造方法の第2実施形態について説明する。
図3、図4は、セルロース系部材の製造方法の第2実施形態について、各工程を模式的に示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
図3、図4に示すように、本実施形態の製造方法は、セルロース誘導体を含み実体部P16の形成に用いるセルロース系材料(セルロース系組成物)としての実体部形成用インクP16’および実体部P16を支持する支持部P17の形成に用いる支持部形成用インクP17’を、インクジェット法により、所定のパターンで吐出するインク付与工程(2a、2c)と、吐出した実体部形成用インクP16’中に含まれるセルロース誘導体が有する官能基を反応させ、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる(セルロース誘導体を硬化させる)結合形成工程(2b、2d)と、これらの工程を順次繰り返し行い仮成形体P10’を得(2e)、さらに、その後に、支持部P17を除去する支持部除去工程(2f)を有している。
このように、本実施形態では、インク付与工程と結合形成工程とによって、層P1を形成している。すなわち、本実施形態では、層形成工程は、インク付与工程と結合形成工程とを含むものである。
このように、本実施形態では、粒体を含む組成物を、平坦化手段で平坦化しつつ層を形成することなく、インクジェット法により吐出されるインクを層形成用の組成物として用いて、層を形成する。
これにより、造形領域(ステージ41上の領域)の必要な個所に組成物を選択的に付与することができるため、セルロース系部材P10の製造に伴う材料の無駄を防止、抑制することができる。このため、セルロース系部材P10の生産コストの低減、省資源の観点から有利である。また、全体としての工程数を少なくすることができ、材料の回収等の処理も省略または簡略化することができ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
以下、各工程について説明する。
<インク付与工程(インク吐出工程)>
インク付与工程では、インクジェット法により、セルロース誘導体を含む実体部形成用インクP16’および硬化性樹脂(硬化性成分)を含む支持部形成用インクP17’を、インクジェット法により、所定のパターンで吐出する(2a、2c)。
より具体的には、セルロース系部材(三次元造形物)P10の実体部P16となるべき領域に実体部形成用インクP16’を付与し、セルロース系部材P10の実体部P16の最外層となるべき領域に隣接する領域であって、前記最外層の表面側の領域に支持部形成用インクP17’を付与する。
1回目のインク付与工程では、ステージ41上に、インク(実体部形成用インクP16’、支持部形成用インクP17’)を吐出し(2a)、2回目以降のインク付与工程では、層P1上に、インク(実体部形成用インクP16’、支持部形成用インクP17’)を吐出する(2c)。
このように、本実施形態では、セルロース系部材P10の実体部P16となるべき部位にインク(実体部形成用インクP16’)を付与するだけでなく、その表面側にもインク(支持部形成用インクP17’)を付与する。
これにより、支持部形成用インクP17’を付与して支持部P17を形成することにより、セルロース系部材P10を構成する層(第2の層)として、それよりも下の層(第1の層)の外周部からはみ出す部分を有するもの(例えば、図中での、下から1層目と2層目との関係、下から2層目と3層目との関係、下から5層目と6層目との関係、下から6層目と7層目との関係)であっても、下層(第1の層)の支持部P17が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP16’を好適に支持することができる。そのため、実体部P16の不本意な変形(特に、ダレ等)を好適に防止することができ、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
また、本工程では、インクジェット法によりインク(実体部形成用インクP16’および支持部形成用インクP17’)を付与するため、インク(実体部形成用インクP16’および支持部形成用インクP17’)の付与パターンが微細な形状のものであっても再現性よくインクを付与することができる。その結果、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度を特に高いものとすることができるとともに、セルロース系部材P10の表面形状、外観の制御をより好適に行うことができる。
なお、支持部形成用インクP17’については、後に詳述する。
本工程で付与されるインク量は、特に限定されないが、後の結合形成工程で形成される層P1の厚さが30μm以上500μm以下となるものであるのが好ましく、70μm以上150μm以下となるものであるのがより好ましい。
これにより、セルロース系部材P10の生産性を十分に優れたものとしつつ、製造されるセルロース系部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、セルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、最終的に得られるセルロース系部材P10の表面状態、外観をより好適に制御することができる。
<結合形成工程(層形成工程)>
インク付与工程でインク(実体部形成用インクP16’、支持部形成用インクP17’)を付与(吐出)した後、実体部形成用インクP16’に含まれるセルロース誘導体を硬化させるとともに、支持部形成用インクP17’に含まれる硬化成分(硬化性樹脂)を硬化させる(2b、2d)。これにより、実体部P16および支持部P17を有する層P1が得られる。すなわち、実体部形成用インクP16’が付与された部位は、実体部P16となり、支持部形成用インクP17’が付与された部位は、支持部P17となる。
本工程は、実体部形成用インクP16’に含まれるセルロース誘導体の種類、支持部形成用インクP17’中に含まれる硬化成分(硬化性樹脂)の種類により異なるが、例えば、加熱やエネルギー線(例えば、紫外線等の光線や、電子線、陽電子線、中性子線、α線、イオンビーム等)の照射等により行うことができる。
特に、実体部形成用インクP16’中に含まれるセルロース誘導体を、加熱により硬化させる場合、セルロース系部材P10の製造装置の構成を簡易なものとすることができる。また、セルロース系部材P10の原料が光透過性の低い材料であっても、目的とする反応を好適に進行させることができる。
セルロース誘導体の硬化(セルロース誘導体の分子鎖間での共有結合の形成)、支持部形成用インクP17’の硬化を加熱により行う場合、加熱温度は、セルロース誘導体の種類等により異なるが、50℃以上180℃以下であるのが好ましく、60℃以上150℃以下であるのがより好ましい。
また、実体部形成用インクP16’中に含まれるセルロース誘導体を、光の照射により硬化させる場合、材料の不本意な変性・劣化等をより効果的に防止しつつ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
セルロース誘導体を光の照射により硬化させる場合、当該光としては、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、X線、マイクロ波、ラジオ波等を用いることができるが、紫外線であるのが好ましい。
これにより、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、セルロース系部材P10の製造装置の構成の複雑化を防止し、セルロース系部材P10の生産コストを抑制することができる。
なお、上記の説明では、層P1に対応する形状、パターンで、インクを付与し、その後、インクで構成された層(層P1に対応する層)全体を硬化させるものとして説明したが、少なくとも一部の領域について、インクの吐出とインクの硬化とを同時進行的に行ってもよい。すなわち、1つの層P1全体のパターン全体が形成される前に、層P1に対応する領域の少なくとも一部について、インクが付与された部位から順次硬化反応を進行させるものであってもよい。ただし、少なくとも、実体部形成用インクP16’と支持部形成用インクP17’との接触部分(実体部P16と支持部P17とが接触すべき部分)については、同時に硬化処理を施し、実体部形成用インクP16’に対する硬化処理と、支持部形成用インクP17’に対する硬化処理とを別個に行わない。
また、本工程では、インク中に含まれる硬化成分を完全に硬化させる必要はない。例えば、本工程終了時において、支持部形成用インクP17’は、不完全に硬化した状態となり、実体部形成用インクP16’は、支持部形成用インクP17’よりも高い硬化度で硬化していてもよい。
これにより、後に詳述する支持部除去工程を容易に行うことができ、セルロース系部材P10の生産性のさらなる向上を図ることができる。
また、本工程終了時において、実体部形成用インクP16’を不完全な状態で硬化した状態としてもよい。このような場合であっても、例えば、後の工程(例えば、結合形成工程(硬化工程)において下側の層P1を形成した後の「インク付与工程」等)を行った後に、不完全な硬化状態である実体部形成用インクP16’(実体部P16)に対し、硬化度を高めるための本硬化処理を行うことにより、最終的に得られるセルロース系部材P10の機械的強度等を優れたものとすることができる。また、実体部形成用インクP16’(下層)を不完全な状態で硬化した状態で、上層を形成するためのインクを付与することにより、層間の密着性を特に優れたものとすることができる。
<支持部除去工程>
そして、前記のような一連の工程を繰り返し行った後に、支持部P17を除去する(2f)。これにより、セルロース系部材P10が得られる。
支持部P17を除去する方法としては、例えば、支持部P17を選択的に溶解する液体を用いて支持部P17を選択的に溶解除去する方法や、実体部P16に比べて支持部P17の吸収性が高い液体を用いて、支持部P17に選択的に当該液体を吸収させることにより、支持部P17を膨潤させたり、支持部P17の機械的強度を低下させたうえで、当該支持部P17を剥離したり、破壊する方法等が挙げられる。
本工程で用いる液体としては、実体部P16、支持部P17の構成材料等により異なるが、例えば、水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類等を用いることができ、これらから選択される1種または2種以上を含むものであり、支持部の溶解性を高めるために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、有機アミン等の水酸化イオンを生じる水溶性物質、剥離された支持部の分離を容易にする界面活性剤等を混合したものであってもよい。
仮成形体P10’への前記液体の付与方法は、特に限定されないが、例えば、浸漬法、スプレー法(吹付法)、塗布法、各種印刷方法等を採用することができる。
また、前記の説明では、液体を用いるものとして説明したが、同様の機能を有する物質(例えば、固体、気体、超臨界流体等)を用いてもよい。
また、前記液体を付与する際または前記液体を付与した後に、超音波振動を付与してもよい。
これにより、支持部P17の除去を促進することができ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
前述したように、実体部P16においては、実体部形成用インクP16’に含まれるセルロース誘導体が有する官能基が反応することにより、セルロース誘導体の分子鎖間に共有結合が形成され、強固に結合しているため、本工程において、実体部P16が不本意に除去されてしまったり、変形してしまうこと等が確実に防止されている。
上記の説明では、セルロース系部材P10の最外層となるべき領域全体において、実体部形成用インクP16’に接触するように支持部形成用インクP17’を付与するものとして説明したが、支持部形成用インクP17’は、セルロース系部材P10の最外層となるべき領域の一部についてのみ、実体部形成用インクP16’に接触するように付与されるものであってもよい。また、製造すべきセルロース系部材P10が支持部P17を形成しなくても製造可能な形状のものである場合、支持部形成用インクP17’を用いなくてもよい。
また、製造すべきセルロース系部材P10の形状等により、支持部の形成が不要である場合には、実体部形成用インクのみを用いて層P1の形成を行ってもよい。
なお、セルロース系部材の製造には、前述したようなセルロース誘導体を含むセルロース系材料として、複数種のセルロース系材料を用いてもよい。
例えば、着色剤を含むインク(カラーインク)としてのセルロース系材料と、着色剤を含まないインク(クリアインク)としてのセルロース系材料とを用いてもよい。これにより、例えば、セルロース系部材P10の外観上、色調に影響を与える領域に付与するインクとして着色剤を含むインクを用い、セルロース系部材P10の外観上、色調に影響を与えない領域に付与するインクとして着色剤を含まないインクを用いることができる。
また、例えば、異なる組成の着色剤を含む複数種のセルロース系材料を用いてもよい。これにより、これらのセルロース系材料の組み合わせにより、表現できる色再現領域を広いものとすることができる。
複数種のセルロース系材料(インク)を用いる場合、少なくとも、藍紫色(シアン)のインク、紅紫色(マゼンタ)のインクおよび黄色(イエロー)のインクを用いるのが好ましい。これにより、これらのセルロース系材料(インク)の組み合わせにより、表現できる色再現領域をより広いものとすることができる。
また、例えば、セルロース誘導体の種類や含有率の異なる複数種のセルロース系材料(インク)を用いることにより、セルロース系部材P10の各部位について、それぞれに求められる剛性、弾性率等の特性を好適に調整することができる。
《セルロース系部材製造装置》
次に、セルロース系部材の製造に用いることのできる製造装置(セルロース系部材製造装置)について説明する。
≪第1実施形態≫
図5は、セルロース系部材の製造に用いる製造装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。
図5に示すセルロース系部材製造装置100は、粒体を含む組成物(三次元造形用組成物)P1’を用いて、層P1を繰り返し成形し積層することにより、セルロース系部材P10を製造するものである。
図5に示すように、セルロース系部材製造装置100は、制御部2と、粒体を含む組成物P1’を収容する組成物供給部3と、組成物供給部3から供給された組成物P1’を用いて層P1を形成する層形成部4と、層P1にセルロース系材料(セルロース系組成物)としてのインクP12を吐出するインク吐出部(インク付与手段)5と、インクP12を硬化させるためのエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6とを有している。
制御部2は、コンピューター21と、駆動制御部22とを有している。
コンピューター21は、内部にCPUやメモリ等を備えて構成される一般的な卓上型コンピューター等である。コンピューター21は、セルロース系部材P10の形状をモデルデータとしてデータ化し、それを平行な幾層もの薄い断面体にスライスして得られる断面データ(スライスデータ)を駆動制御部22に対して出力する。
駆動制御部22は、層形成部4、インク吐出部5、エネルギー線照射手段6をそれぞれに駆動する制御手段として機能する。具体的には、例えば、インク吐出部5によるインクP12の吐出パターンや吐出量、組成物供給部3からの組成物P1’の供給量、ステージ41の下降量等を制御する。
組成物供給部3は、駆動制御部22からの指令により移動し、内部に収容された組成物P1’が、組成物仮置部44に供給されるように構成されている。
層形成部4は、組成物供給部3から供給された組成物P1’を一時的に保持する組成物仮置部44と、組成物仮置部44に保持された組成物P1’を平坦化しつつ層P1を形成するスキージー(平坦化手段)42と、スキージー42の動作を規制するガイドレール43と、形成された層P1を支持するステージ41と、ステージ41を取り囲む側面支持部(枠体)45とを有している。
先に形成された層P1の上に、新たな層P1を形成するのに際して、先に形成された層P1を、側面支持部45に対して相対的に下方に移動させる。これにより、新たに形成される層P1の厚さが規定される。
特に、本実施形態では、ステージ41は、先に形成された層P1の上に、新たな層P1を形成するのに際して、駆動制御部22からの指令により所定量だけ順次下降する。このように、ステージ41がZ方向(上下方向)に移動可能に構成されていることにより、新たな層P1の形成に際して、層P1の厚さを調整するために移動させるべき部材の数を減らすことができるため、セルロース系部材製造装置100の構成をより単純なものとすることできる。
ステージ41は、表面(組成物P1’が付与される部位)が平坦なものである。
これにより、厚さの均一性の高い層P1を容易かつ確実に形成することができる。また、製造されるセルロース系部材P10において、不本意な変形等が生じることを効果的に防止することができる。
ステージ41は、高強度の材料で構成されたものであるのが好ましい。ステージ41の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料等が挙げられる。
また、ステージ41の表面(組成物P1’が付与される部位)には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、組成物P1’の構成材料やインクP12の構成材料がステージ41に付着してしまうことをより効果的に防止したり、ステージ41の耐久性を特に優れたものとし、セルロース系部材P10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。ステージ41の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
スキージー42は、Y方向に延在する長手形状を有するものであり、下部先端が尖った刃状の形状を有するブレードを備えている。
ブレードのY方向の長さは、ステージ41(造形領域)の幅(Y方向の長さ)以上のものである。
なお、セルロース系部材製造装置100は、スキージー42による組成物P1’の拡散が円滑に行えるように、ブレードに微小振動を与えるバイブレーション機構(図示せず)を備えていてもよい。
側面支持部45は、ステージ41上に形成された層P1の側面を支持する機能を有する。また、層P1の形成時には、層P1の面積を規定する機能も有している。
また、側面支持部45の表面(組成物P1’と接触しうる部位)には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、組成物P1’の構成材料やインクP12の構成材料が側面支持部45に付着してしまうことをより効果的に防止したり、側面支持部45の耐久性を特に優れたものとし、セルロース系部材P10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。また、先に形成された層P1を側面支持部45に対して相対的に下方に移動させる際に、層P1に不本意な乱れが生じることを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度、信頼性を特に優れたものとすることができる。側面支持部45の表面の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
インク付与手段(インク吐出部)5は、層P1にインクP12を付与するものである。
このようなインク付与手段5を備えることにより、セルロース系部材P10の機械的強度を容易かつ確実に優れたものとすることができる。
特に、本実施形態では、インク付与手段5が、インクジェット法によりインクP12を吐出するインク吐出部である。
これにより、微細なパターンでインクP12を付与することができ、微細な構造を有するセルロース系部材P10であっても特に生産性良く製造することができる。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクP12を加熱して発生した泡(バブル)によりインクP12を吐出させる方式等を用いることができるが、インクP12の構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インク吐出部(インク付与手段)5は、駆動制御部22からの指令により、各層P1において形成すべきパターン、層P1の各部において付与するインクP12の量が制御されている。インク吐出部(インク付与手段)5によるインクP12の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。
エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6は、層P1に付与されたインクP12を硬化させる(インクP12中に含まれるセルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる)ためのエネルギー線を照射するものである。
特に、図示の構成では、インク吐出部(インク付与手段)5の走査方向(主走査方向)の前後に、エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6が設けられている。
これにより、往路、復路のいずれにおいても、エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6による接合形成を行うことができるため、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
≪第2実施形態≫
次に、セルロース系部材の製造に用いる製造装置の第2実施形態について説明する。
図6は、セルロース系部材の製造に用いる製造装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
セルロース系部材製造装置100は、実体部形成用インクP16’および支持部形成用インクP17’を用いて、層P1を繰り返し成形し積層することにより、セルロース系部材P10を製造するものである。
図6に示すように、セルロース系部材製造装置100は、制御部2と、ステージ41と、実体部形成用インクP16’を吐出する実体部形成用インク付与手段8と、支持部形成用インクP17’を吐出する支持部形成用インク付与手段9と、実体部形成用インクP16’および支持部形成用インクP17’を硬化させるためのエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)6とを有している。
実体部形成用インク付与手段8は、インクジェット法により、実体部形成用インクP16’を吐出するものである。
このような実体部形成用インク付与手段8を備えることにより、微細なパターンで所望の部位に所望の量だけ実体部形成用インクP16’を付与することができ、微細な構造を有するセルロース系部材P10であっても特に生産性良く製造することができる。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、インクの構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
実体部形成用インク付与手段8は、駆動制御部22からの指令により、形成すべきパターン、付与する実体部形成用インクP16’の量等が制御されている。実体部形成用インク付与手段8による実体部形成用インクP16’の吐出パターン、吐出量等は、スライスデータに基づいて決定される。
これにより、必要十分な量の実体部形成用インクP16’を目的の部位に付与することができ、所望のパターンの実体部P16を確実に形成することができ、セルロース系部材P10の寸法精度、機械的強度をより確実に優れたものとすることができる。また、実体部形成用インクP16’が着色剤を含むものである場合、所望の色調、模様等を確実に得ることができる。
実体部形成用インク付与手段8は、ステージに対して、相対的に、X方向、Y方向に移動可能になっているとともに、Z方向にも移動可能となっている。
これにより、層P1を積層していった場合でも、実体部形成用インク付与手段8のノズル面(吐出部先端)と実体部形成用インクP16’の着弾部との距離を所定の値に保つことができる。
支持部形成用インク付与手段9は、インクジェット法により、支持部形成用インクP17’を吐出するものである。
このような支持部形成用インク付与手段9を備えることにより、微細なパターンで所望の部位に所望の量だけ支持部形成用インクP17’を付与することができ、製造すべきセルロース系部材P10が微細な構造を有するものであっても、所望の部位に所望の大きさ、形状の支持部P17を形成することができ、セルロース系部材P10の表面形状、外観をより確実に制御することができる。また、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
支持部形成用インク付与手段9についての、液滴吐出方式(インクジェット法の方式)、制御、駆動等については、前述した実体部形成用インク付与手段8と同様である。
なお、図中には示していないが、セルロース系部材製造装置100は、支持部P17を除去する支持部除去手段や、支持部P17が除去されたセルロース系部材P10を乾燥する乾燥手段を備えるものであってもよい。
支持部除去手段としては、例えば、機械的に支持部P17を破壊・除去するものや、前述したような液体を収納し、仮成形体P10’を浸漬する槽や、前述したような液体を仮成形体P10’に向けて噴霧する液体噴霧手段や、前述したような液体を仮成形体P10’に塗布する液体塗布手段等が挙げられる。
乾燥手段としては、例えば、前述したような加熱した気体や乾燥した気体を供給するものや、セルロース系部材P10が収納された空間を減圧する減圧手段等が挙げられる。
また、セルロース系部材製造装置は、前述した工程のうち少なくとも一部を行うものであってもよく、前述した工程のうちの一部は、セルロース系部材製造装置を用いないで行うものであってもよい。
<組成物(三次元造形用組成物)>
次に、前述したセルロース系部材(三次元造形物)の製造方法の実施形態で用いた組成物(三次元造形用組成物)について詳細に説明する。
[第1実施形態]
以下、前述した第1実施形態の製造方法、セルロース系部材製造装置で説明したような、粒体を含む組成物P1’について説明する。
組成物(三次元造形用組成物)P1’は、少なくとも、複数個の粒体を含む三次元造形用粉末を含むものである。
(三次元造形用粉末(粒体))
三次元造形用粉末を構成する粒体の構成材料としては、例えば、無機材料や有機材料、これらの複合体等が挙げられる。
粒体を構成する無機材料としては、例えば、各種金属や金属化合物等が挙げられる。金属化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の各種金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の各種金属水酸化物;窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ等の各種金属窒化物;炭化珪素、炭化チタン等の各種金属炭化物;硫化亜鉛等の各種金属硫化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の各種金属の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の各種金属のケイ酸塩;リン酸カルシウム等の各種金属のリン酸塩;ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の各種金属のホウ酸塩や、これらの複合化物等が挙げられる。
粒体を構成する有機材料としては、例えば、合成樹脂、天然高分子等が挙げられ、より具体的には、ポリエチレン樹脂;ポリプロピレン;ポリエチレンオキサイド;ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリウレア;ポリエステル;シリコーン樹脂;アクリルシリコーン樹脂;ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとする重合体;メタクリル酸メチルクロスポリマー等の(メタ)アクリル酸エステルを構成モノマーとするクロスポリマー(エチレンアクリル酸共重合樹脂等);ナイロン12、ナイロン6、共重合ナイロン等のポリアミド樹脂;ポリイミド;セルロース;カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ゼラチン;デンプン;キチン;キトサン等が挙げられる。
中でも、粒体がセルロースやセルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース等)で構成されたものである場合、粒体とインクP12中に含まれるセルロース誘導体との親和性を特に優れたものとすることができ、最終的に得られるセルロース系部材P10の機械的強度、耐久性、信頼性を優れたものとすることができる。また、層P1にセルロース誘導体を含むインクP12を付与する際に、インクP12が不本意に濡れ広がったり、層P1がインクP12を過剰にはじいてしまったりすることを効果的に防止することができる。その結果、所望のパターンの結合部(実体部)P13をより確実に形成することができ、セルロース系部材P10の寸法精度をより確実に特に優れたものとすることができる。
三次元造形用粉末を構成する粒体は、疎水化処理、親水化処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
三次元造形用粉末を構成する粒体の平均粒径は、特に限定されないが、1μm以上25μm以下であるのが好ましく、1μm以上15μm以下であるのがより好ましい。これにより、セルロース系部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるセルロース系部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、セルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形用粉末の流動性、三次元造形用粉末を含む組成物(三次元造形用組成物)P1’の流動性を特に優れたものとし、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
三次元造形用粉末を構成する粒体のDmaxは、3μm以上40μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であるのがより好ましい。これにより、セルロース系部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるセルロース系部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、セルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、三次元造形用粉末の流動性、三次元造形用粉末を含む組成物(三次元造形用組成物)P1’の流動性を特に優れたものとし、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
三次元造形用粉末を構成する粒体は、いかなる形状を有するものであってもよいが、球形状をなすものであるのが好ましい。これにより、三次元造形用粉末の流動性、三次元造形用粉末を含む組成物(三次元造形用組成物)P1’の流動性を特に優れたものとし、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるセルロース系部材P10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、セルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
組成物(三次元造形用組成物)P1’中における三次元造形用粉末の含有率は、10質量%以上95質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。これにより、組成物(三次元造形用組成物)P1’の流動性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られるセルロース系部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができる。
(水溶性樹脂)
組成物P1’は、複数個の粒体とともに、水溶性樹脂を含むものであってもよい。
水溶性樹脂を含むことにより、層P1のインクP12が付与されていない部位において粒体同士を結合(仮固定)し、粒体の不本意な飛散等をより効果的に防止することができる。これにより、作業者の安全や、製造されるセルロース系部材P10の寸法精度のさらなる向上を図ることができる。
水溶性樹脂は、少なくともその一部が水に可溶なものであればよいが、例えば、25℃における水に対する溶解度(水100gに溶解可能な質量)が5[g/100g水]以上のものであるのが好ましく、10[g/100g水]以上のものであるのがより好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリカプロラクトンジオール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、変性ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合ポリマー等の合成ポリマー、コーンスターチ、マンナン、ペクチン、寒天、アルギン酸、デキストラン、にかわ、ゼラチン等の天然ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でんぷん、酸化でんぷん、変性でんぷん等の半合成ポリマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性樹脂製品の具体例としては、例えば、メチルセルロース(信越化学社製、メトローズSM−15)、ヒドロキシエチルセルローズ(フジケミカル社製、AL−15)、ヒドロキシプロピルセルローズ(日本ソーダ社製、HPC−M)、カルボキシメチルセルローズ(ニチリン化学社製、CMC−30)、澱粉リン酸エステルナトリュウム(I)(松谷化学社製、ホスター5100)、ポリビニールピロリドン(東京化学社製、PVP K−90)、メチルビニールエーテル/無水マレイン酸コポリマー(GAFガントレット社製、AN−139)、ポリアクリルアミド(和光純薬社製)、変性ポリアミド(変性ナイロン)(東レ社製、AQナイロン)、ポリエチレンオキサイド(製鉄化学社製、PEO−1、明成化学工業社製、アルコックス)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合ポリマー(明成化学工業社製、アルコックスEP)、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬社製)、カルボキシビニルポリマー/架橋型アクリル系水溶性樹脂(住友精化社製、アクペック)等が挙げられる。
中でも、水溶性樹脂がポリビニルアルコールである場合、セルロース系部材P10の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、ケン化度や重合度の調整により、水溶性樹脂の特性(例えば、水溶性、耐水性等)や組成物P1’の特性(例えば、粘度、粒体の固定力、濡れ性等)をより好適に制御することができる。このため、多様なセルロース系部材P10の製造により好適に対応することができる。また、ポリビニルアルコールは、各種水溶性樹脂の中でも、安価で、かつ、供給が安定したものである。このため、生産コストを抑制しつつ、安定的なセルロース系部材P10の製造を行うことができる。
水溶性樹脂がポリビニルアルコールを含むものである場合、当該ポリビニルアルコールのケン化度は、85以上90以下であるのが好ましい。これにより、水に対するポリビニルアルコールの溶解度の低下を抑制することができる。そのため、組成物P1’が水を含むものである場合に、隣接する層P1間の接着性の低下をより効果的に抑制することができる。
水溶性樹脂がポリビニルアルコールを含むものである場合、当該ポリビニルアルコールの重合度は、300以上1000以下であるのが好ましい。これにより、組成物P1’が水を含むものである場合に、各層P1の機械的強度や隣接する層P1間の接着性を特に優れたものとすることができる。
また、水溶性樹脂がポリビニルピロリドン(PVP)である場合、以下のような効果が得られる。すなわち、ポリビニルピロリドンは、ガラス、金属、プラスチック等の各種材料に対する接着性に優れているため、層P1のうちインクP12が付与されない部分の強度・形状の安定性を特に優れたものとし、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、ポリビニルピロリドンは、水に対して高い溶解性を示すため、未結合粒子除去工程(造形終了後)において、各層P1を構成する粒体のうち、セルロース誘導体により結合していないものを容易かつ確実に除去することができる。また、ポリビニルピロリドンは、前述したような三次元造形用粉末との親和性が適度なものであるため、粒体の表面に対する濡れ性は比較的高いものとなる。このため、前述したような仮固定の機能をより効果的に発揮することができる。また、ポリビニルピロリドンは、各種着色剤との親和性に優れているため、インク付与工程において着色剤を含むインクP12を用いた場合に、着色剤が不本意に拡散してしまうのを効果的に防止することができる。また、ペースト状の組成物P1’がポリビニルピロリドンを含むものであると、組成物P1’中に泡が巻き込まれてしまうことを効果的に防止することができ、層形成工程において、泡の巻き込みによる欠陥が発生するのを効果的により防止することができる。
水溶性樹脂がポリビニルピロリドンを含むものである場合、当該ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、10000以上1700000以下であるのが好ましく、30000以上1500000以下であるのがより好ましい。これにより、前述した機能をより効果的に発揮することができる。
また、水溶性樹脂がポリカプロラクトンジオールである場合、組成物P1’を好適にペレット状とすることができ、粒体の不本意な飛散等をより効果的に防止することができ、組成物P1’の取扱い性(取り扱いの容易性)が向上し、作業者の安全や、製造されるセルロース系部材P10の寸法精度の向上を図ることができるとともに、比較的低い温度で溶融させることができるため、セルロース系部材P10の生産に要するエネルギー・コストを抑制することができるとともに、セルロース系部材P10の生産性を十分に優れたものとすることができる。
水溶性樹脂がポリカプロラクトンジオールを含むものである場合、当該ポリカプロトンタムジオールの重量平均分子量は、10000以上1700000以下であるのが好ましく、30000以上1500000以下であるのがより好ましい。これにより、前述した機能をより効果的に発揮することができる。
組成物P1’中において、水溶性樹脂は、少なくとも層形成工程において、液状の状態(例えば、溶解状態、溶融状態等)をなすものであるのが好ましい。これにより、容易かつ確実に、組成物P1’を用いて形成される層P1の厚さの均一性を、より高いものとすることができる。
(溶剤)
組成物P1’は、前述したような成分に加えて、揮発性の溶剤を含むものであってもよい。
これにより、好適に組成物P1’をペースト状のものとすることができ、組成物P1’の流動性を安定的に優れたものとし、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
溶剤は、水溶性樹脂を溶解するものであるのが好ましい。これにより、組成物P1’の流動性を良好なものとすることができ、組成物P1’を用いて形成される層P1の厚さの不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。また、溶剤が除去された状態の層P1を形成した際に、層P1全体にわたって、より高い均一性で、水溶性樹脂を粒体に付着させることができ、不本意な組成のむらが発生するのをより効果的に防止することができる。このため、最終的に得られるセルロース系部材P10の各部位での機械的強度の不本意なばらつきの発生をより効果的に防止することができ、セルロース系部材P10の信頼性をより高いものとすることができる。
組成物P1’を構成する溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール性溶剤;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル2−アセタート等のグリコールエーテルアセテート系溶剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、組成物P1’は、水を含むものであるのが好ましい。これにより、水溶性樹脂をより確実に溶解することができ、組成物P1’の流動性、組成物P1’を用いて形成される層P1の組成の均一性を特に優れたものとすることができる。また、水は層P1形成後の除去が容易であるとともに、セルロース系部材P10中に残存した場合においても悪影響を与えにくい。また、人体に対する安全性、環境問題の観点等からも有利である。
組成物P1’が溶剤を含むものである場合、組成物P1’中における溶剤の含有率は、5質量%以上75質量%以下であるのが好ましく、25質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような溶剤を含むことによる効果がより顕著に発揮されるとともに、セルロース系部材P10の製造過程において溶剤を短時間で容易に除去することができるため、セルロース系部材P10の生産性向上の観点から有利である。
特に、組成物P1’が溶剤として水を含むものである場合、組成物P1’中における水の含有率は、20質量%以上73質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
組成物P1’が溶媒を含むものである場合、当該溶媒は、インクP12の付与前に、層P1を構成する組成物P1’から除去されるものであるのが好ましい。これにより、層P1の形状の安定性が向上するとともに、前記溶媒がインクP12の構成材料(例えば、セルロース誘導体や溶媒等)との親和性が低いものであっても、層P1におけるインクP12の不本意なはじき等を効果的に防止することができ、容易かつ確実に、所望のパターンでインクP12を付与することができる。
なお、組成物P1’を構成する溶媒を、インクP12の付与前に、層P1を構成する組成物P1’から除去する場合、前記溶媒は、層P1から完全に除去するものであってもよいし、その一部のみを除去するものであってもよい。このような場合であっても、前述したような効果が発揮される。
(その他の成分)
また、組成物P1’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;重合促進剤;架橋剤;シロキサン化合物;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
[第2実施形態]
以下、前述した第2実施形態の製造方法、セルロース系部材製造装置で説明したような、インクジェット法により吐出される組成物(層形成用組成物)について説明する。
本実施形態では、組成物として、実体部形成用インクP16’および支持部形成用インクP17’を用いている。
実体部形成用インクP16’については、セルロース誘導体を含むセルロース系材料(セルロース系組成物)として詳述したので、以下、支持部形成用インクP17’について詳述する。
<支持部形成用インク>
支持部形成用インクP17’は、少なくとも硬化性樹脂(硬化成分)を含むものである。
(硬化性樹脂)
支持部形成用インクP17’を構成する硬化性樹脂(硬化成分)としては、例えば、実体部形成用インクP16’の構成成分(その他の硬化成分)として例示した硬化性樹脂(硬化成分)と同様のものが挙げられる。
特に、支持部形成用インクP17’を構成する硬化性樹脂(硬化成分)と、前述した実体部形成用インクP16’を構成する硬化成分(その他の硬化成分)とは、同種のエネルギー線で硬化するものであるのが好ましい。
これにより、セルロース系部材製造装置の構成が複雑化するのを効果的に防止することができ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材P10の表面形状をより確実に制御することができる。
支持部形成用インクP17’は、各種硬化成分の中でも、特に、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリロイルモルフォリンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、セルロース系部材P10の外観をより確実に優れたものとしつつ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、支持部形成用インクP17’を硬化させて形成される支持部P17の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、セルロース系部材P10の製造時に、下層(第1の層)の支持部P17が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP16’をより好適に支持することができる。そのため、実体部P16の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
特に、支持部形成用インクP17’が(メタ)アクリロイルモルフォリンを含むものであると、以下のような効果が得られる。
すなわち、(メタ)アクリロイルモルフォリンは、硬化反応が進行した場合であっても完全硬化でない状態(完全硬化でない状態の(メタ)アクリロイルモルフォリンの重合体)では、水等の各種溶媒に対する溶解性が高い状態が高いものである。したがって、前述したような支持部除去工程において、実体部P16に欠陥が生じるのをより効果的に防止しつつ、支持部P17を選択的かつ確実に、また、効率よく除去することができる。その結果、より高い信頼性で、所望の形態のセルロース系部材P10を生産性良く得ることができる。
また、支持部形成用インクP17’がテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを含むものであると、硬化後の柔軟性をより好適に保持することができ、支持部P17を除去する液体による処理において、より容易にゲル状になることで、支持部P17の除去効率をさらに高めることができる。
また、支持部形成用インクP17’がエトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートを含むものであると、支持部P17を除去する液体による処理において、支持部P17の除去効率を高めることができる。
また、支持部形成用インクP17’がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むものであると、支持部P17を除去する液体が水を主成分とするものである場合に、当該液体への溶解性を高め、より容易に支持部P17を除去することができる。
支持部形成用インクP17’中における硬化成分の含有率は、83質量%以上98.5質量%以下であるのが好ましく、87質量%以上95.4質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、形成される支持部P17の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、セルロース系部材P10の製造時に層P1を積み重ねていった場合に、下側の層P1が不本意に変形することをより効果的に防止することができ、上側の層P1を好適に支持することができる。その結果、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。また、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
(重合開始剤)
また、支持部形成用インクP17’は、重合開始剤を含むものであるのが好ましい。
これにより、セルロース系部材P10の製造時における支持部形成用インクP17’の硬化速度を適度に速めることができ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、形成される支持部P17の形状の安定性を特に優れたものとすることができ、セルロース系部材P10の製造時に層P1を積み重ねていった場合に、下側の層P1が不本意に変形することをより効果的に防止することができ、上側の層P1を好適に支持することができる。その結果、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度を特に優れたものとすることができる。
支持部形成用インクP17’を構成する重合開始剤としては、例えば、実体部形成用インクP16’の構成成分として例示した重合開始剤と同様のものが挙げられる。
中でも、支持部形成用インクP17’は、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、および/または、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含むものであるのが好ましい。
このような重合開始剤を含むことにより、支持部P17(支持部形成用インクP17’を用いて形成される支持部P17)と接触するようにして形成される実体部P16(実体部形成用インクP16’を用いて形成される実体部P16)の表面の性状をより確実に好適なものとし、セルロース系部材P10の外観をより確実に優れたものとしつつ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、支持部形成用インクP17’を硬化させて形成される支持部P17の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、セルロース系部材P10の製造時に、下層(第1の層)の支持部P17が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP16’をより好適に支持することができる。そのため、実体部P16の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
支持部形成用インクP17’中における重合開始剤の含有率の具体的な値としては、1.5質量%以上17質量%以下であるのが好ましく、4.6質量%以上13質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、セルロース系部材P10の外観をより確実に優れたものとしつつ、セルロース系部材P10の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、支持部形成用インクP17’を硬化させて形成される支持部P17の機械的強度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、セルロース系部材P10の製造時に、下層(第1の層)の支持部P17が上層(第2の層)を形成するための実体部形成用インクP16’をより好適に支持することができる。そのため、実体部P16の不本意な変形(特に、ダレ等)をより好適に防止することができ、最終的に得られるセルロース系部材P10の寸法精度をさらに優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、支持部形成用インクP17’は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、顔料、染料等の各種着色剤;分散剤;界面活性剤;増感剤;重合促進剤;溶剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤;増粘剤;フィラー;凝集防止剤;消泡剤等が挙げられる。
特に、支持部形成用インクP17’が着色剤を含むことにより、支持部P17の視認性が向上し、最終的に得られるセルロース系部材P10において、支持部P17の少なくとも一部が不本意に残存することをより確実に防止することができる。
支持部形成用インクP17’を構成する着色剤としては、例えば、実体部形成用インクP16’の構成成分として例示した着色剤と同様のものが挙げられるが、セルロース系部材P10の表面の法線方向から観察した際に当該支持部形成用インクP17’により形成される支持部P17と重なり合う実体部P16の色(セルロース系部材P10の外観上視認されるべき色)とは異なる色となるような着色剤であるのが好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
支持部形成用インクP17’が顔料を含む場合に、分散剤をさらに含むものであると、顔料の分散性をより良好なものとすることができる。支持部形成用インクP17’を構成する分散剤としては、例えば、実体部形成用インクP16’の構成成分として例示した分散剤と同様のものが挙げられる。
また、支持部形成用インクP17’の粘度は、10mPa・s以上30mPa・s以下であるのが好ましく、15mPa・s以上25mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、例えば、インクジェット法による支持部形成用インクP17’の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、セルロース系部材P10の製造には、複数種の支持部形成用インクP17’を用いてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、平坦化手段として、スキージーを用いる場合について中心的に説明したが、その代わりに、ローラー等を用いてもよい。
また、本発明のセルロース系部材の製造に用いる製造装置は、組成物供給部から供給された組成物のうち層の形成に用いられなかったものを回収するための、図示しない回収機構を備えるものであってもよい。これにより、層形成部に余剰の組成物が蓄積されることを防止しつつ、十分な量の組成物を供給することができるため、層における欠陥の発生をより効果的に防止しつつ、より安定的にセルロース系部材を製造することができる。また、回収した組成物を、再度、セルロース系部材の製造に用いることができるため、セルロース系部材の製造コストの低減に寄与することができ、また、省資源の観点からも好ましい。
また、本発明のセルロース系部材の製造に用いる製造装置は、未結合粒子除去工程で除去された組成物を回収するための回収機構を備えていてもよい。
また、前述した実施形態では、全ての層に対して、実体部を形成するものとして説明したが、実体部が形成されない層を有していてもよい。例えば、ステージの直上に形成された層に対して、実体部を形成しないものとし、犠牲層として機能させてもよい。
また、前述した実施形態では、インク付与工程をインクジェット法により行う場合について中心的に説明したが、インク付与工程は他の方法(例えば、他の印刷方法)を用いて行うものであってもよい。
また、実体部形成用インクおよび支持部形成用インクはインクジェット法以外の方法(例えば、他の印刷方法)で付与するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、層形成工程およびインク付与工程に加え、結合形成工程も、層形成工程およびインク付与工程と合わせて繰り返し行うものとして説明したが、結合形成工程は、繰り返し行うものでなくてもよい。例えば、セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させるための結合形成処理が施されていない複数の層を備えた積層体を形成した後に一括して行うものであってもよい。これにより、例えば、セルロース誘導体が有する官能基を反応させ、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させるためのエネルギーを付与する処理を少なくすることができるため、セルロース系部材の製造に、当該エネルギーに対する耐性の低い材料を用いる場合であっても、当該エネルギーによる不本意な変性・劣化等を効果的に防止することができる。
また、本発明においては、セルロース系部材の実体部の少なくとも一部の形成に、前述したようなセルロース誘導体を含むセルロース系材料を用いればよく、セルロース誘導体を含むセルロース系材料を用いないで形成された部位を有するものであってもよい。
また、本発明のセルロース系部材の製造においては、必要に応じて、前処理工程、中間処理工程、後処理工程を行ってもよい。
前処理工程としては、例えば、ステージの清掃工程等が挙げられる。
中間処理工程としては、例えば、三次元造形用組成物がペレット状をなすものである場合、層形成工程とインク付与工程との間に、加熱を中止等する工程(水溶性樹脂固化工程)を有していてもよい。これにより、水溶性樹脂が固体状態となり、層を粒体同士の結合力がより強いものとして得ることができる。また、例えば、三次元造形用組成物が水等の溶剤成分(分散媒)を含むものである場合、層形成工程とインク付与工程との間に、当該溶剤成分を除去する溶剤成分除去工程を有していてもよい。これにより、層形成工程をより円滑に行うことができ、形成される層の厚さの不本意なばらつきをより効果的に防止することができる。その結果、より寸法精度の高いセルロース系部材をより高い生産性で製造することができる。
後処理工程としては、例えば、洗浄工程、バリ取り等を行う形状調整工程、着色工程、被覆層形成工程等が挙げられる。
また、前述した実施形態では、平坦化手段がステージ上を移動するものとして説明したが、ステージが移動することにより、ステージとスキージーとの位置関係が変化し、平坦化がなされるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、セルロース系部材製造装置が、硬化手段(結合形成手段)として、エネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を備えるものである場合について代表的に説明したが、セルロース系部材製造装置が備える硬化手段(結合形成手段)は、加熱手段等の他の手段であってもよい。
また、本発明のセルロース系部材は、本発明のセルロース系材料を用いて製造されたものであればよく、前述したような方法、装置を用いて製造されたものでなくてもよい。
また、前述した実施形態では、本発明のセルロース系材料(セルロース系組成物)の形態として、インクについて中心的に説明したが、本発明のセルロース系材料(セルロース系組成物)は、インク以外の形態のものであってもよい。
また、前述した実施形態では、シロキサン化合物、架橋剤等のセルロース誘導体と反応し得る成分がセルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれる場合について中心的に説明したが、セルロース誘導体と反応し得る成分は、セルロース系材料(セルロース系組成物)中に含まれていなくてもよく、例えば、セルロース誘導体の反応時に、セルロース誘導体(セルロース系材料)と接触させるものであってもよい。
P10…セルロース系部材(三次元造形物)
P10’…仮成形体
P1’…組成物(三次元造形用組成物)
P1…層
P12…インク(セルロース系材料)
P13…結合部(実体部)
P16’…実体部形成用インク(組成物)
P16…実体部
P17’…支持部形成用インク(組成物)
P17…支持部
100…セルロース系部材製造装置
2…制御部
21…コンピューター
22…駆動制御部
3…組成物供給部
4…層形成部
41…ステージ
42…スキージー(平坦化手段)
43…ガイドレール
44…組成物仮置部
45…側面支持部(枠体)
5…インク吐出部(インク付与手段)
6…エネルギー線照射手段(硬化手段、結合形成手段)
8…実体部形成用インク付与手段
9…支持部形成用インク付与手段

Claims (8)

  1. セルロース誘導体を含むセルロース系材料であって、
    前記セルロース誘導体は、反応性官能基を含むものであり、
    前記反応性官能基は、前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合し得るものであることを特徴とするセルロース系材料。
  2. 前記セルロース誘導体は、炭素−炭素二重結合を有するものである請求項1に記載のセルロース系材料。
  3. 前記セルロース誘導体は、分子内に2個以上のS−H結合を有するシロキサン化合物と反応するものである請求項1または2に記載のセルロース系材料。
  4. 前記シロキサン化合物は、環状化合物である請求項3に記載のセルロース系材料。
  5. 前記セルロース誘導体は、(メタ)アクリロイル基を有するものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセルロース系材料。
  6. 前記セルロース誘導体の分子鎖同士を共有結合により結合させる反応は、紫外線の照射により進行するものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセルロース系材料。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセルロース系材料を用いて製造されたことを特徴とするセルロース系部材。
  8. セルロース系部材は、水を保持するゲル状のものである請求項7に記載のセルロース系部材。
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