ところで、空調ケーシングには、温風通路の他にも並行してバイパス通路を形成しており、しかも、空調ケーシングのより一層の小型化が望まれているので、温風通路の断面積を広く確保するのは困難である。特許文献1ではヒータコアをエアミックスドアの空気流れ下流側において温風通路の内部に配設するようにしているので、ヒータコアの大きさは温風通路の内部に収まるようにしなければならず、大型化が難しい。その上、一般に、ヒータコアは熱交換に直接的に寄与しないヘッダタンクを備えており、このヘッダタンクの存在によって熱交換に有効な空気通過面が削られ、ひいてはヒータコアによる加熱性能が低下してしまう。また、ヒータコアをエアミックスドアと加熱用車室内熱交換器との間に配設するようにしているので、ヒータコアや加熱用車室内熱交換器の空気流れ方向の寸法(厚み寸法)を長くすることは困難であり、このことも加熱性能の低下を招く。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、暖房運転モード時における空気の加熱性能を向上させることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、エアミックスドアよりも空気流れ方向上流側に、車両の発熱する装置から熱交換媒体が供給される空気加熱器を設けるようにした。
第1の発明は、
冷媒を圧縮するコンプレッサと、
車両の室外に配設される車室外熱交換器と、
車両の室内に配設される第1車室内熱交換器と、
車両の室内において上記第1車室内熱交換器よりも空調用空気の流れ方向下流側に配設される第2車室内熱交換器と、
第1及び第2減圧弁とを備え、
冷房運転モード時には、上記コンプレッサから吐出された冷媒を上記第2車室内熱交換器及び上記車室外熱交換器に流した後、上記第2減圧弁によって減圧して上記第1車室内熱交換器に流し、上記コンプレッサに吸入させる一方、暖房運転モード時には、上記コンプレッサから吐出された冷媒を上記第2車室内熱交換器に流した後、上記第1減圧弁によって減圧して上記車室外熱交換器に流し、上記コンプレッサに吸入させるように構成されたヒートポンプ装置を備えた車両用空調装置において、
上記第1車室内熱交換器及び上記第2車室内熱交換器を収容する空調ケーシングを備え、
上記空調ケーシングの内部には、上記第2車室内熱交換器を通過した空気が流れる温風通路と、空気が上記第2車室内熱交換器をバイパスして流れるバイパス通路と、上記第1車室内熱交換器及び上記第2車室内熱交換器の間に配設されて上記温風通路と上記バイパス通路の風量比率を調整するエアミックスドアと、上記エアミックスドアよりも空気流れ方向上流側に配設されて車両の発熱する装置から熱交換媒体が供給される空気加熱器とが設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、冷房運転モード時には、第2車室内熱交換器及び車室外熱交換器が放熱器となり、第1車室内熱交換器が吸熱器となる。第1車室内熱交換器によって空調用空気が冷却される。
一方、暖房運転モード時には、第2車室内熱交換器が放熱器となり、車室外熱交換器が吸熱器となる。空気は、車両の発熱する装置から熱交換媒体が供給される空気加熱器で加熱された後、第2車室内熱交換器によっても加熱される。このとき、空気加熱器は、エアミックスドアよりも空気流れ方向上流側、即ち、温風通路よりも上流側に配設されている。温風通路よりも上流側の通路は、バイパス通路と温風通路とを合わせた断面積として広い断面積を確保することが可能なので、空気通過面の広い空気加熱器の配設が行える。これにより、空気加熱器による空気の加熱性能が高まる。また、空気加熱器がエアミックスドアと第2車室内熱交換器との間にないので、第2車室内熱交換器の厚み寸法を長くすることも可能になり、このことによっても空気の加熱性能が高まる。
また、空気加熱器が第2車室内熱交換器の上流側に位置しているので、第2車室内熱交換器に流入する空気の温度が高くなる。よって、暖房運転モード時にコンプレッサが消費するエネルギ量を減らすことが可能になる。
第2の発明は、第1の発明において、
上記空気加熱器の空気通過部分は、上記温風通路と上記バイパス通路とに臨むように配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、空気加熱器の空気通過部分が広くなるので、加熱性能と空気加熱器の薄型化とを両立させて空気の圧力損失を低減することが可能になり、風量低下の抑制や、送風機の大型化を防止できる。
第3の発明は、第1の発明において、
上記空気加熱器は、該空気加熱器の空気通過部分が上記第1車室内熱交換器の空気通過部分に対して空気流れ方向下流側から対向するように配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、暖房運転モード時に、例えば車室外の空気を吸い込んだ場合に、車室外の空気を空気加熱器によって加熱した後、第2車室内熱交換器に流入させることが可能になる。
第4の発明は、第1の発明において、
上記空気加熱器は、該空気加熱器の空気通過部分が上記第1車室内熱交換器の空気通過部分に対して空気流れ方向上流側から対向するように配置されていることを特徴とする。
例えば、第1車室内熱交換器に温度センサを取り付ける際には、正確な温度を測定するために、第1車室内熱交換器の空気流れ方向下流側に取り付けるのが好ましい。この発明では、第1車室内熱交換器の空気流れ方向下流側に空気加熱器が無いので、温度センサを空気流れ方向下流側から第1車室内熱交換器に容易に取り付けることが可能になる。
第5の発明は、第1の発明において、
上記空気加熱器に供給される熱交換媒体を遮断する遮断弁を備え、
冷房運転モード時には、上記空気加熱器に供給される熱交換媒体が上記遮断弁によって遮断されることを特徴とする。
この構成によれば、温風がバイパス通路へ吹き出すのを抑制することが可能になる。
第6の発明は、第1の発明において、
上記空気加熱器に供給される熱交換媒体を遮断する遮断弁を備え、
上記エアミックスドアが上記温風通路の風量比率を最大比率とする作動状態以外の作動状態のときには、上記空気加熱器に供給される熱交換媒体が上記遮断弁によって遮断されることを特徴とする。
この構成によれば、最大の暖房能力が必要なときには熱交換媒体を空気加熱器に供給して熱交換媒体を空気の加熱に有効に利用することが可能になる。また、最大の暖房能力が必要なとき以外には、温風がバイパス通路へ吹き出すのを抑制することが可能になる。
第7の発明は、第1から6のいずれか1つの発明において、
車両の発熱する装置が、エンジンまたは電気部品からなることを特徴とする。
この構成によれば、排熱を暖房に有効に利用することが可能になる。
第1の発明によれば、ヒートポンプ装置の第1車室内熱交換器及び第2車室内熱交換器を収容する空調ケーシングに、温風通路とバイパス通路を形成し、第1車室内熱交換器と第2車室内熱交換器との間にエアミックスドアを配設し、エアミックスドアよりも空気流れ方向上流側に、車両の発熱する装置から熱交換媒体が供給される空気加熱器を設けたので、空気通過面の広い空気加熱器にすることができるとともに、第2車室内熱交換器の厚み寸法を長くすることができ、よって、空気の加熱性能を高めることができる。また、第2車室内熱交換器に流入する空気の温度が高くなるので、暖房運転モード時にコンプレッサが消費するエネルギ量を減らすことができる。
第2の発明によれば、空気加熱器の空気通過部分が温風通路とバイパス通路とに臨んでいるので、加熱性能向上と空気加熱器の薄型化とを両立させて空気の圧力損失を低減することができ、風量の低下を抑制できる。また、空気加熱器の薄型化によって空調ケーシングを小型化することもできる。
第3の発明によれば、空気加熱器の空気通過部分が第1車室内熱交換器の空気通過部分に対して空気流れ方向上流側から対向しているので、暖房運転モード時に車室外の空気を空気加熱器によって加熱することができ、熱のロスを少なくすることができる。
第4の発明によれば、第1車室内熱交換器の空気流れ方向下流側に例えば温度センサ等を取り付ける際に、取付作業性を良好にすることができる。
第5の発明によれば、冷房運転モード時に、空気加熱器に供給される熱交換媒体を遮断するようにしたので、バイパス通路へ温風が吹き出すのを抑制することができる。
第6の発明によれば、エアミックスドアが温風通路の風量比率を最大比率とする作動状態以外のときに、空気加熱器に供給される熱交換媒体を遮断弁によって遮断するので、熱交換媒体を空気の加熱に有効に利用することができるとともに、温風がバイパス通路へ吹き出すのを抑制することができる。
第7の発明によれば、車両のエンジンまたは電気部品の排熱を暖房に有効に利用することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構成を示す図で、図2は本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の制御装置12のブロック図である。車両用空調装置1は、空調ユニット10と、ヒートポンプ装置Hと、ヒータコア(空気加熱器)11と、制御装置12とを備えている。ヒータコア11には、車両のエンジンEからエンジン冷却水が供給されるようになっている。
すなわち、車両には、エンジンEが搭載されている。このエンジンEのシリンダブロックに形成されたウォータジャケット(図示せず)には、エンジン冷却水が流出するエンジン冷却水流出管2と、エンジン冷却水流出管2から流出したエンジン冷却水をウォータジャケットに戻すリターン配管3とが接続されている。エンジン冷却水流出管2の下流側はヒータコア11のエンジン冷却水流入部に接続されている。ヒータコア11のエンジン冷却水流出部には、第1ラジエータ配管4が接続されている。第1ラジエータ配管4は、車両のラジエータAに接続されている。第1ラジエータ配管4の中途部には、リターン配管3が接続されている。ラジエータAには、電動ファンFによって冷却風が送られるようになっている。
また、ラジエータAには、第2ラジエータ配管5が接続されている。第2ラジエータ配管5は、エンジン冷却水流出管2の中途部に対してサーモスタット装置Bを介して接続されている。サーモスタット装置Bはエンジン冷却水の温度が所定温度以上となったときに、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水を第2ラジエータ配管5に流し、所定温度よりも低いときに第2ラジエータ配管5に流さないように構成された周知のものである。所定温度とは、例えばエンジンEの暖気が完了した温度に設定することができる。サーモスタット装置Bは、エンジン冷却水をヒータコア11側へ常時流すようにしている。
エンジン冷却水流出管2のサーモスタット装置Bよりもヒータコア11側には、温水弁(遮断弁)Cが設けられている。温水弁Cは、第1ラジエータ配管4の中途部から分岐して延びるバイパス配管4aに接続されている。温水弁Cは、周知の電動式の三方弁で構成されて制御装置12によって制御され、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水をヒータコア11に流してバイパス配管4aに流さない状態(温水弁Cの開状態)と、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水をヒータコア11に流さずバイパス配管4aに流す状態(温水弁Cの閉状態)とに切り替えることができるようになっている。尚、エンジン冷却水は、図示しないがエンジンEのウォータポンプによって送られて循環するようになっている。
ヒータコア11は、図示しないが複数のチューブとフィンを積層して構成されたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。チューブの両端部には、ヘッダタンク(図示せず)がそれぞれ配設されており、これらヘッダタンクに対してエンジン冷却水流出管2及び第1ラジエータ配管4がそれぞれ接続されてエンジン冷却水がヒータコア11に供給された後、ヒータコア11から排出されるようになっている。ヒータコア11の空気通過部分は、ヘッダタンクを除き、フィンが配設されている部分である。
ヒートポンプ装置Hは、冷媒を圧縮するコンプレッサ20と、車両の室外に配設される車室外熱交換器21と、車両の室内に配設される上流側車室内熱交換器(第1車室内熱交換器)22と、車両の室内において上流側車室内熱交換器22よりも空調用空気の流れ方向下流側に配設される下流側車室内熱交換器(第2車室内熱交換器)23と、第1減圧弁24と、第2減圧弁25と、受液器26と、冷媒流通切替弁27を備えている。
コンプレッサ20は、例えば車両に搭載されたバッテリ(図示せず)から電力が供給されて作動する電動コンプレッサであり、回転数の増減によって単位時間当たりの冷媒吐出量を変更することができるように構成されている。車室外熱交換器21は、車両のエンジンルームの前端部においてラジエータAと前後方向に重なるように配設されている。上流側車室内熱交換器22及び下流側車室内熱交換器23の詳細については後述する。
ヒートポンプ装置Hは、冷媒が流通する第1〜第4冷媒配管31〜34を備えている。第1冷媒配管31は、コンプレッサ20の冷媒吐出部から下流側車室内熱交換器23の冷媒流入部まで延びている。下流側車室内熱交換器23の冷媒流入部は、冷媒流出部よりも空気流れ方向下流側に位置している。第2冷媒配管32は、下流側車室内熱交換器23の冷媒流出部から車室外熱交換器21の冷媒流入部まで延びている。第3冷媒配管33は、車室外熱交換器21の冷媒流出部から上流側車室内熱交換器22の冷媒流入部まで延びている。第3冷媒配管33の中途部には、分岐管33aが設けられている。上流側車室内熱交換器22の冷媒流入部は、冷媒流出部よりも空気流れ方向下流側に位置している。第4冷媒配管34は、上流側車室内熱交換器22の冷媒流出部からコンプレッサ20の冷媒吸入部まで延びている。受液器26は、第4冷媒配管34の中途部においてコンプレッサ20寄りの部位に配設されている。
第1減圧弁24は、第2冷媒配管32の中途部に配設されている。第2減圧弁25は第3冷媒配管33の分岐管33aよりも上流側車室内熱交換器22寄りの部位に配設されている。第1減圧弁24及び第2減圧弁25は、周知の電動式のものであり、制御装置12によって制御され、それぞれ、第2冷媒配管32及び第3冷媒配管33を全開にした状態から全閉にした状態まで任意の開度とすることができるように構成されている。
冷媒流通切替弁27は、第4冷媒配管34の中途部に配設されており、冷媒流通切替弁27には第3冷媒配管33の分岐管33aが接続されている。冷媒流通切替弁27は、制御装置12によって制御される電動式の切替弁であり、車室外熱交換器21の冷媒流出部から第3冷媒配管33を流れてきた冷媒を、上流側車室内熱交換器22に流して第4冷媒配管34には流さない状態と、上流側車室内熱交換器22に流さずに第4冷媒配管34には流す状態とに切り替えることができるように構成されている。
空調ユニット10は、上流側車室内熱交換器22、下流側車室内熱交換器23及びヒータコア11を収容する空調ケーシング13を備えている。空調ケーシング13の空気流れ方向上流側には、内外気切替部14が設けられている。内外気切替部14は、車室外の空気(外気)を導入する外気導入口14aと、車室内の空気(内気)を導入する内気導入口14bとを有している。内外気切替部14の内部には、外気導入口14aと内気導入口14bを開閉するための内外気切替ドア14cが配設されている。内外気切替ドア14cは、図2に示す制御装置12によって制御される内外気切替アクチュエータ14dが駆動するものである。内外気切替部14は、図1に示すように外気導入口14aを全閉にして内気導入口14bを全開にする内気導入モードと、図示しないが外気導入口14aを全開にして内気導入口14bを全閉にする外気導入モードとに切り替えられる。
内外気切替部14には送風機15が設けられている。送風機15はファン15aとファン15aを回転駆動するブロアモーター15bとを備えている。ファン15aの回転によって外気導入口14aまたは内気導入口14bから空調用の空気が取り入られる。
空調ケーシング13の内部には、内外気切替部14よりも空気流れ方向下流側に、上流側通路R1が内外気切替部14に連通するように形成されている。この上流側通路R1には、上流側車室内熱交換器22及びヒータコア11が配設される。上流側車室内熱交換器22は、ヒータコア11よりも空気流れ方向上流側に位置している。
上流側車室内熱交換器22はヒータコア11と同様なチューブアンドフィンタイプの熱交換器で構成されている。上流側車室内熱交換器22及びヒータコア11は、共に上流側通路R1の全体を横切るように配置されており、上流側通路R1を流通する空気の殆どが上流側車室内熱交換器22及びヒータコア11を通過するようになっている。ヒータコア11の空気通過部分が上流側車室内熱交換器22の空気通過部分に対して空気流れ方向下流側から対向するように配置されている。
空調ケーシング13の内部には、上流側通路R1よりも空気流れ方向下流側に、温風通路R2と、バイパス通路R3とが形成されている。すなわち、上流側通路R1の下流側には、温風通路R2とバイパス通路R3とが連通しており、上流側通路R1を流れた空気は温風通路R2とバイパス通路R3とに流入可能になっている。温風通路R2の断面積、及びバイパス通路R3の断面積は、それぞれ上流側通路R1の断面積よりも狭く設定されている。この実施形態では、温風通路R2及びバイパス通路R3の合計断面積が上流側通路R1の断面積と同じ程度に設定されている。
ヒータコア11の空気通過部分は、温風通路R2の上流端開口からバイパス通路R3の上流端開口に亘って臨むように配置されている。従って、ヒータコア11を通過した空気は、温風通路R2及びバイパス通路R3の両方に流れることになる。
温風通路R2には、下流側車室内熱交換器23が配設されている。下流側車室内熱交換器23は、ヒータコア11と同様なチューブアンドフィンタイプの熱交換器で構成されている。下流側車室内熱交換器23は、温風通路R2の全体を横切るように配置されており、温風通路R2を流通する空気の殆どが下流側車室内熱交換器23を通過するようになっている。つまり、温風通路R2には下流側車室内熱交換器23を通過した空気が流れる。
温風通路R2には、下流側車室内熱交換器23よりも空気流れ方向下流側に電気加熱器16が配設されている。この電気加熱器16は、電力の供給によって発熱する構造となっており、例えばPTC素子を使用した電気式ヒーター等で構成することができる。
バイパス通路R3は、下流側車室内熱交換器23をバイパスした空気が流れる通路である。温風通路R2及びバイパス通路R3の空気流れ方向上流端部には、エアミックスドア18が配設されている。従って、ヒータコア11は、エアミックスドア18よりも空気流れ方向上流側に配設されることになる。
エアミックスドア18は、上流側車室内熱交換器22と下流側車室内熱交換器23との間に配設されており、温風通路R2の上流端開口と、バイパス通路R3の上流端開口とを開閉することによって温風通路R2を流通する風量とバイパス通路R3を流通する風量との比率を調整するためのものである。エアミックスドア18が温風通路R2の上流端開口を全閉にし、バイパス通路R3の上流端開口を全開にすると、温風通路R2には空気が流れなくなり、一方、温風通路R2の上流端開口を全開にし、バイパス通路R3の上流端開口を全閉にすると、バイパス通路R3には空気が流れなくなる。エアミックスドア18は制御装置12によって制御されるエアミックスアクチュエータ18aで駆動される。エアミックスドア18による温風通路R2及びバイパス通路R3の開度は任意に調整することが可能となっている。
空調ケーシング13の内部には、温風通路R2及びバイパス通路R3の空気流れ方向下流側に連通するエアミックス空間R4が設けられている。エアミックス空間R4は、温風通路R2及びバイパス通路R3を流通した空気を集合させて混合するためのものであり、このエアミックス空間R4で調和空気が生成される。
空調ケーシング13のエアミックス空間R4よりも空気流れ方向下流側には、デフロスタ吹出口13aと、ベント吹出口13bと、ヒート吹出口13cとがエアミックス空間R4に連通するように形成されている。デフロスタ吹出口13aは、フロントガラス(図示せず)の内面に空調風を供給するためのものであり、インストルメントパネルのデフロスタノズル(図示せず)に接続されている。また、ベント吹出口13bは、乗員の上半身に空調風を供給するためのものであり、インストルメントパネルのベントノズル(図示せず)に接続されている。また、ヒート吹出口13cは乗員の足元近傍で開口している。
デフロスタ吹出口13aはデフロスタドア13dで開閉され、ベント吹出口13bはベントドア13eで開閉され、ヒート吹出口13cはヒートドア13fで開閉されるようになっている。デフロスタドア13d、ベントドア13e及びヒートドア13fは、吹出方向切替アクチュエータ13gによって作動するようになっている。吹出方向切替アクチュエータ13gは制御装置12によって制御される。空調風の吹出モードは、デフロスタドア13d、ベントドア13e及びヒートドア13fの開閉動作によって切り替えられ、例えばデフロスタモード、ベントモード、ヒートモード、バイレベルモード等の複数のモードのうちから、任意の1つに切り替えることができる。
図2に示すように、空調装置1には、外気温度センサ40、内気温度センサ41、日射量センサ42、冷却水温センサ43、エバポレータセンサ44及び操作スイッチ45が設けられている。センサ40〜44は、制御装置12に接続され、制御装置12へ信号を出力している。また、操作スイッチ45も制御装置12に接続されており、乗員による操作状態を制御装置12が検出できるようになっている。
外気温度センサ40は、例えば車室外において車両前部や側部等に配設されており、外気の温度を検出するためのセンサである。内気温度センサ41は、例えば車室内においてインストルメントパネルの近傍等に配設されており、内気の温度を検出するためのセンサである。日射量センサ42は車室に照射される日射量を検出するためのセンサである。冷却水温センサ43は、エンジン冷却水の温度を検出ためのセンサである。エバポレータセンサ44は、上流側車室内熱交換器22の空気流れ方向下流側に配設されており、上流側車室内熱交換器22の表面温度を検出するためのセンサである。操作スイッチ45は、例えばインストルメントパネル等に配設されており、例えば、空調装置1のON/OFFの切替スイッチ、送風量を増減させる風量切替スイッチ、車室の温度を設定する温度設定スイッチ、内気循環、外気導入及び内外気混入モードを切り替える内外気切替スイッチ、オートエアコン制御とするか否かを選択するオートスイッチ、吹出方向を切り替える吹出モード切替スイッチ、デフロスタスイッチ等で構成されている。
制御装置12は、上記センサ40〜44から出力される信号(出力値)と、操作スイッチ45の操作状態とに基づいて、内外気切替アクチュエータ14d、エアミックスアクチュエータ18a、吹出方向切替アクチュエータ13g、ブロアモータ15b、電気加熱器16、コンプレッサ20、第1減圧弁24、第2減圧弁25、冷媒流通切替弁27及び温水弁Cを制御する。
すなわち、操作スイッチ45のオートスイッチによってオートエアコン制御が選択された場合には、車室外の温度、車室内の温度、日射量、エンジン冷却水温度、上流側車室内熱交換器22の表面温度、設定温度等に基づいて、車室内に供給する調和空気の目標吹出温度を決定するとともに、この目標吹出温度となるようにエアミックスドア18の開度を演算し、エアミックスドア18がこの開度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御してエアミックスドア18を回動させる。また、電気加熱器16の加熱能力の制御、コンプレッサ20の回転数の変更、第1減圧弁24及び第2減圧弁25の開度の変更、冷媒流通切替弁27及び温水弁Cの開閉を行う。
制御装置12による具体的な制御手順を図7に示すフローチャートに従って説明する。図7のフローチャートにおけるスタート後のステップS1では、周知の手法に従って空調モードを判定する。空調モードとは、この実施形態では暖房運転モード、除湿暖房運転モード、除湿運転モード、冷房モードの4つが基本であるが、例えば車室外熱交換器21が着霜した場合には除霜運転モード等に移行することもある。空調モード判定は、外気温や内気温、乗員による設定温度等の条件によって乗員がどの運転モードを望んでいるか推定した結果に基づいて行われる。
ステップS1で暖房運転モードであると判定されるとステップS2に進み、除湿暖房運転モードであると判定されるとステップS3に進み、除湿運転モードであると判定されるとステップS4に進み、冷房運転モードであると判定されるとステップS5に進む。暖房モードであると判定されるとステップS2からステップS6に進み、図3に示すようにエアミックスドア18を最大暖房位置にする。つまり、エアミックスドア18によってバイパス通路R3を全閉にする。その後、ステップS7に進み、温水弁Cを開状態、即ち、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水がヒータコア11に流れる状態にする。
ステップS7に続くステップS8では、ヒートポンプ装置Hを暖房運転モードで運転開始する。暖房運転モードでは、コンプレッサ20を作動させるとともに、第1減圧弁24を、減圧作用を発揮する開度にする。さらに、冷媒流通切替弁27を、冷媒が上流側車室内熱交換器22に流れないように切り替える。これにより、コンプレッサ20から吐出された高温状態の冷媒が下流側車室内熱交換器23に流れるので下流側車室内熱交換器23が放熱器として作用する。また、車室外熱交換器21には減圧後の冷媒が流れるので、車室外熱交換器21は吸熱器として作用する。車室外熱交換器21によって吸熱した冷媒がコンプレッサ20に吸入される。また、電気加熱器16をONにしておく。
空調ケーシング13に導入された空気は、始めに上流側通路R1に流入して上流側車室内熱交換器22を通過する。上流側車室内熱交換器22には冷媒が流れていないので、上流側車室内熱交換器22を通過する空気は加熱も冷却もされない。その後、空気はヒータコア11を通過する。ヒータコア11には、エンジン冷却水が流れているので、エンジン冷却水と空気とが熱交換して空気が加熱される。
そして、空気は温風通路R2に流入して下流側車室内熱交換器23を通過する。下流側車室内熱交換器23には高温の冷媒が流れているので、下流側車室内熱交換器23を通過する空気は加熱される。下流側車室内熱交換器23を通過した空気は電気加熱器16によっても加熱される。電気加熱器16によって加熱された空気はエアミックス空間R4を通って吹出モードに対応した吹出口から車室に供給される。
ステップS1で除湿暖房運転モードであると判定されるとステップS3からステップS6に進み、図4に示すようにエアミックスドア18を最大暖房位置にする。その後、ステップS7に進み、温水弁Cを開状態、即ち、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水がヒータコア11に流れる状態にする。そして、ステップS8では、ヒートポンプ装置Hを除湿暖房運転モードで運転開始する。除湿暖房運転モードでは、コンプレッサ20を作動させるとともに、第1減圧弁24を、減圧作用を発揮する開度にする。さらに、冷媒流通切替弁27を、冷媒が上流側車室内熱交換器22に流れるように切り替える。第2減圧弁25は減圧作用を発揮しない開度とする。これにより、コンプレッサ20から吐出された高温状態の冷媒が下流側車室内熱交換器23に流れるので下流側車室内熱交換器23が放熱器として作用する。また、車室外熱交換器21及び上流側車室内熱交換器22には減圧後の冷媒が流れるので、車室外熱交換器21及び上流側車室内熱交換器22は吸熱器として作用する。車室外熱交換器21及び上流側車室内熱交換器22によって吸熱した冷媒は、コンプレッサ20に吸入される。また、電気加熱器16は暖房の要求度合いに応じてON/OFFにする。
空調ケーシング13に導入された空気は、始めに上流側通路R1に流入して上流側車室内熱交換器22を通過する。上流側車室内熱交換器22には減圧後の冷媒が流れているので、上流側車室内熱交換器22を通過する空気は冷却され、これにより除湿される。その後、空気はヒータコア11を通過して加熱される。
そして、空気は温風通路R2に流入して下流側車室内熱交換器23を通過して加熱される。下流側車室内熱交換器23を通過した空気は電気加熱器16がONになっている場合には電気加熱器16によっても加熱される。加熱後の空気はエアミックス空間R4を通って吹出モードに対応した吹出口から車室に供給される。
ステップS1で除湿運転モードであると判定されるとステップS4からステップS9に進み、図5に示すようにエアミックスドア18によって温風通路R2とバイパス通路R3の開度を調整しながら、調和空気の温度調節を行う。その後、ステップS10に進み、温水弁Cを閉状態、即ち、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水がヒータコア11に流れない状態にする。そして、ステップS8では、ヒートポンプ装置Hを除湿運転モードで運転開始する。除湿運転モードでは、コンプレッサ20を作動させるとともに、第1減圧弁24を、減圧作用を発揮しない開度にする。さらに、冷媒流通切替弁27を、冷媒が上流側車室内熱交換器22に流れるように切り替える。第2減圧弁25は、減圧作用を発揮する開度とする。これにより、コンプレッサ20から吐出された高温状態の冷媒が下流側車室内熱交換器23及び車室外熱交換器21に流れるので下流側車室内熱交換器23及び車室外熱交換器21が放熱器として作用する。また、上流側車室内熱交換器22には減圧後の冷媒が流れるので、上流側車室内熱交換器22は吸熱器として作用する。上流側車室内熱交換器22によって吸熱した冷媒は、コンプレッサ20に吸入される。また、電気加熱器16はOFFにする。
空調ケーシング13に導入された空気は、始めに上流側通路R1に流入して上流側車室内熱交換器22を通過する。上流側車室内熱交換器22には減圧後の冷媒が流れているので、上流側車室内熱交換器22を通過する空気は冷却され、これにより除湿される。その後、空気はヒータコア11を通過するが、ヒータコア11にはエンジン冷却水が流れていないので、空気は加熱されない。
そして、空気はエアミックスドア18の開度によって温風通路R2やバイパス通路R3に流入する。温風通路R2に流入した空気は下流側車室内熱交換器23を通過して加熱される。下流側車室内熱交換器23を通過した空気はエアミックス空間R4に流入する。バイパス通路R3を流れた空気もエアミックス空間R4に流入し、エアミックス空間R4で温風と混合して所望温度の調和空気となる。この調和空気は吹出モードに対応した吹出口から車室に供給される。
ステップS1で冷房運転モードであると判定されるとステップS5からステップS11に進み、図6に示すようにエアミックスドア18を最大冷房位置にする。つまり、エアミックスドア18によって温風通路R2を全閉にする。その後、ステップS10に進み、温水弁Cを閉状態、即ち、エンジン冷却水流出管2のエンジン冷却水がヒータコア11に流れない状態にする。これにより、冷房運転モード時には、ヒータコア11に供給される熱交換媒体としてのエンジン冷却水が温水弁Cによって遮断される。そして、ステップS8では、ヒートポンプ装置Hを冷房運転モードで運転開始する。冷房運転モードは除湿運転モードと同じである。
空調ケーシング13に導入された空気は、始めに上流側通路R1に流入して上流側車室内熱交換器22を通過する。上流側車室内熱交換器22には減圧後の冷媒が流れているので、上流側車室内熱交換器22を通過する空気は冷却される。その後、空気はヒータコア11を通過するが、ヒータコア11にはエンジン冷却水が流れていないので、空気は加熱されない。そして、空気はバイパス通路R3を通ってエアミックス空間R4に流入した後、吹出モードに対応した吹出口から車室に供給される。
この実施形態では、エアミックスドア18が温風通路R2の風量比率を最大比率とする作動状態(暖房運転モード及び除湿暖房運転モード)以外の作動状態(除湿運転モード及び冷房運転モード)のときには、ヒータコア11に供給されるエンジン冷却水が温水弁Cによって遮断されるように構成しているが、この構成に限定するものではなく、例えば暖房運転モード時のみ、温風通路R2の風量比率を最大比率にしてもよい。
以上説明したように、この実施形態によれば、冷房運転モード時には、車室外熱交換器21及び下流側車室内熱交換器23が放熱器となり、上流側車室内熱交換器22が吸熱器となるので、上流側車室内熱交換器22によって空調用空気が冷却される。
一方、暖房運転モード時には、下流側車室内熱交換器23が放熱器となり、車室外熱交換器21が吸熱器となる。空気は、車両の発熱する装置であるエンジンからエンジン冷却水が供給されるヒータコア11で加熱された後、下流側車室内熱交換器23によっても加熱される。このとき、ヒータコア11は、エアミックスドア18よりも空気流れ方向上流側、即ち、温風通路R2よりも上流側に配設されている。温風通路R2よりも上流側の上流側通路R1は、バイパス通路R3と温風通路R2とを合わせた断面積となっていて広い断面積が確保されているので、空気通過面の広いヒータコア11の配設が行える。これにより、ヒータコア11による空気の加熱性能を高めることができる。また、ヒータコア11がエアミックスドア18と下流側車室内熱交換器23との間にないので、下流側車室内熱交換器23の厚み寸法を長くすることも可能になり、このことによっても空気の加熱性能を高めることができる。
また、ヒータコア11が下流側車室内熱交換器23の上流側に位置しているので、下流側車室内熱交換器23に流入する空気の温度が高くなる。よって、暖房運転モード時にコンプレッサ20が消費するエネルギ量を減らすことが可能になる。
また、ヒータコア11が温風通路R2とバイパス通路R3の両方に臨むように配置されているので、ヒータコア11の空気通過部分を広くすることができ、加熱性能向上とヒータコア11の薄型化とを両立させて空気の圧力損失を低減することが可能になり、風量低下の抑制や、送風機の大型化を防止できる。
尚、上記実施形態では、ヒータコア11の空気通過部分が上流側車室内熱交換器22の空気通過部分に対して空気流れ方向下流側から対向するように配置されているが、これに限らず、例えば、ヒータコア11の空気通過部分が上流側車室内熱交換器22の空気通過部分に対して空気流れ方向上流側から対向するように配置されていてもよい。この場合、例えば、上流側車室内熱交換器22の空気流れ方向下流側にエバポレータセンサ44を取り付ける際に、上流側車室内熱交換器22の空気流れ方向下流側にヒータコア11が無いので、エバポレータセンサ44を空気流れ方向下流側から上流側車室内熱交換器22に容易に取り付けることができる。
また、上記実施形態では、エンジンの熱をヒータコア11に供給するようにしているが、これに限らず、例えば走行用モーターやバッテリ、インバータ装置等の電気部品(車両の発熱する装置)を冷却するための冷却水をヒータコア11に供給するようにしてもよい。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。