JP2016028881A - インキ撹拌押し込みロール及びこれを備えた輪転印刷機 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷不良を防止し得たインキ撹拌押し込みロールを備えた輪転印刷機を実現する。
【解決手段】軸芯と、軸芯を被覆するゴム製の被覆層と、を有し、被覆層の表面は、その周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面である、インキ撹拌押し込みロール。被覆層の厚みは、5〜9mmであり、被覆層を構成するゴムは、ブチルゴム、EPTゴムのいずれかであり、軸芯は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。また、インキ撹拌押し込みロールの回転方向は、版胴に対して抵抗が大きい方向とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、輪転印刷機に用いるロールに関し、詳しくはインキパンのインキを撹拌し、あるいはインキを版胴に押し込むインキ撹拌押し込みロールに関する。
輪転印刷機では、インキパン(インキ溜め)に注入されたインキが版胴に直接又は間接に供給され、これが被印刷物に転写されて印刷が行われる。
ここで、インキパンに注入されたインキの撹拌が不適切であると、インキ表面に膜がはってしまい、このようなインキがそのまま版胴に供給されると印刷にかすれが生じてしまう。また、版胴にインキを供給する際に泡が生じたり目詰まりを起こしたりした場合にも、ピンホールやかすれ等の印刷不良が生じる。このため、インキパンのインキを十分に撹拌する技術や、版胴にインキを十分に押し込む技術が求められている。
ここで、良好な印刷を行うための技術としては、例えば下記特許文献1がある。
特開2003-205592号公報
特許文献1は、加熱したファニッシャロールを印刷ロールに接触させて該印刷ロールを熱伝達・加熱する技術を開示している。この技術では、印刷ロールの熱膨張を制御し、且つ被印刷物であるウエブを牽引して走行させる走行速度を制御することにより、印刷ラインの略全長に渡るウエブの緊張を確保して印刷できるとされる。
しかしながら、上記特許文献1は、インキの攪拌不足や押し込み不良に起因する印刷不良について考慮しておらず、更なる改良が求められていた。
本発明は、インキを十分に撹拌でき、印刷不良を抑制し得たインキ撹拌押し込みロール及びこれを備えた輪転印刷機を実現することを目的とする。
本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールは、次のように構成されている。
軸芯と、前記軸芯を被覆するゴム製の被覆層と、を有し、前記被覆層の表面は、その周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面である、インキ撹拌押し込みロール。
この構成による効果を、図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる輪転印刷機の要部を模式的に示す断面図であり、図2は、本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールを模式的に示す斜視図であり、図3は、本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールを模式的に示す断面図であって、図3(a)は縦断面図、図3(b)は横断面図であり、図3(c)は部分拡大横断面図であり、図3(d)は突出部の高さとくぼみの大きさを説明する部分拡大横断面図である。図2に示すように、インキ撹拌押し込みロール1の表面は、その周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面であり、周方向に沿った多数の鱗片状部15が、サイズや配置がランダムに形成されている。そして、図3(b)、(c)に示すように、うろこ状の切削荒粗面は、その横断面において鱗片状部15の先端部15aが他の表面上に重なって、くぼみ15bを形成している。このため、図1に示すように、インキ撹拌押し込みロール1をインキパン3に付けた状態で回転させると、インキ4がくぼみ15bにたまり、インキパン3のインキ4の上面よりも上方に持ち上げられ、その後インキパン3に落とされる。この作用により、インキが十分に撹拌されるようになり、撹拌不足によってインキ表面に膜が張ることを防止できる。
また、図1に示すように、インキ撹拌押し込みロール1を版胴2に押し当てた状態で、インキ撹拌押し込みロール1の抵抗が大きい方向(うろこ状の重なり合いの逆目方向)に回転するように版胴2を回転させると、インキ撹拌押し込みロール1がこの回転に伴って回転する。ここで、被覆層12は弾性のあるゴムからなるので、回転による摩擦抵抗によって鱗片状部15の先端部15aが外側にしなるように変形し、その後復元する動きを繰り返すが、この鱗片状部15の先端部15aの動きによってインキ4が版胴2に十分に押し込まれ、且つ、余分なインキ4は版胴2から掻き出される。よって、版胴2の表面に泡が生じたり、目詰まりが生じたりすることを防止できる。これらの作用によって、かすれやピンホール等の印刷不良の発生を防止できる。したがって、印刷不良を顕著に抑制し得たインキ撹拌押し込みロールを実現できる。また、このインキ撹拌押し込みロールは、版胴2の回転に附随して回転させる構成とする場合には、回転のための動力を必要としない。
また、インキ撹拌押し込みロール1及び版胴2がともに金属製の場合、両者を強く押し当てると、摩擦抵抗によって回転が阻害されるおそれがある。しかしながら、本発明では、インキ撹拌押し込みロール1の表面は弾性のあるゴムからなるため、インキ撹拌押し込みロール1を版胴2に強く押し当てた状態でも版胴2、インキ撹拌押し込みロール1ともに良好な回転が可能である。
また、インクと直接接する被覆層12がゴムからなるので、インキが付いた表面を、溶剤等を用いて簡便に洗浄できる。このため、同一のロールを用いて異なる色のインキを使用するための切り替え作業を簡便に行うことができる。
ここで、周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面とは、鱗片状部15の重なり合いの方向が周方向であることを意味するが、重なり合いの方向が周方向と平行であるものに限定されるものではなく、周方向に対して傾き(30°以内、より好ましくは15°以内の傾き)をもっていてもよい。
また、インキ撹拌押し込みロールは、インキの撹拌のみに使用するものであってもよく、インキの押し込みのみに使用するものであってもよく、双方の目的で使用するものであってもよい。また、インキ撹拌押し込みロールは、単独でインキの撹拌や押し込みを行うものであってもよく、他のロール等とともにインキの撹拌や押し込みを行うものであってもよい。
また、被覆層の厚みは、好ましくは5〜9mmとし、より好ましくは6〜8mmとする。
被覆層を構成するゴムは、適度な弾性とインキに対する耐性(溶剤耐性)を備えていればどのような材料でもよいが、コストや加工性の観点から、ブチルゴムやEPT(エチレンプロピレン)ゴムであることが好ましい。
軸芯の材料としては特に限定されることはなく、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属材料や、硬質ゴム等の樹脂材料を使用することができ、その形状は中実、中空のいずれでもよい。中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いた中空材料は、軽量で且つ負荷によって変形する(曲がる)ことがないので好ましい。
また、鱗片状部は、高さ(図3(d)のL1参照)が平均0.18〜0.70mmであり、そのくぼみの長さ(図3(d)のL2参照)が平均0.08〜0.60mmであることが好ましい。また、平均高さは、0.21〜0.65mmであることがより好ましく、0.25〜0.60mmであることがさらに好ましい。また、くぼみの平均長さは、0.10〜0.55mmであることがより好ましく、0.14〜0.55mmであることがさらに好ましい。
また、図6に示すように、インキ撹拌押し込みロールの表面には、くぼみを有する鱗片状部15以外に、くぼみを有さない凸部16が形成されていてもよい。ここで、ロール表面のすべての突出部(鱗片状部15+凸部16)のうち、鱗片状部15の個数の比率は、25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。また、突出部の平均高さ(全体)は、0.15〜0.70mmであることが好ましく、0.18〜0.65mmであることがより好ましく、0.22〜0.60mmであることがさらに好ましい。また、ロールの周方向の長さに対する突出部の比率は、0.2〜1.2個/mmであることが好ましく、0.3〜1.1個/mmであることがより好ましく、0.4個〜1.0/mmであることがさらに好ましい。
本発明にかかる輪転印刷機は、次のように構成されている。
インキが注入されるインキパンと、前記インキパンのインキに接して設けられ、当該版胴表面に保持したインキを被印刷対象物に転写して印刷を行う版胴と、前記インキパンの前記インキを撹拌し、及び/又は、前記版胴に前記インキを押し込む、上記のインキ撹拌押し込みロールと、を備える輪転印刷機。
上記輪転印刷機において、インキ撹拌押し込みロールの回転方向は、版胴に対して抵抗が大きい方向(うろこ状の重なり合いの逆目方向)であることが好ましい。
以上に説明したように、本発明によると、インキの撹拌不足や押し込み不良による印刷不良を抑制することができる。
本発明にかかる輪転印刷機の要部を模式的に示す断面図である。 本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールを模式的に示す斜視図である。 本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールを模式的に示す断面図であって、図3(a)は縦断面図、図3(b)は横断面図であり、図3(c)は部分拡大横断面図であり、図3(d)は突出部の高さとくぼみの大きさを説明する部分拡大横断面図である。 本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールの切削荒粗面を示す写真であって、図4(a)はうろこ状の切削荒粗面の順目方向、図4(b)はうろこ状の切削荒粗面の逆目方向から写したものである。 本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールの切削荒粗面の断面を示す顕微鏡写真であって、図5(a)はスケールなし、図5(b)は0.1mmの格子状スケールを付けたものである。 本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールの変形例を模式的に示す横断面図である。
本実施の形態にかかるインキ撹拌押し込みロールを備えた輪転印刷機を、図面を参照して説明する。図1は本実施の形態にかかるインキ撹拌押し込みロールを示す断面図であり、図2は、本実施の形態にかかるインキ撹拌押し込みロールを模式的に示す斜視図であり、図3は、本実施の形態にかかるインキ撹拌押し込みロールを模式的に示す断面図であって、図3(a)は縦断面図、図3(b)は横断面図であり、図3(c)は部分拡大横断面図あり、図3(d)は突出部の高さとくぼみの大きさを説明する部分拡大横断面図である。
本実施の形態にかかるインキ撹拌押し込みロールを備えた輪転印刷機は、図1に示すように、インキが注入されるインキパン3と、インキを用いて被印刷対象物に印刷を行う版胴2と、インキパンのインキを撹拌しつつ、版胴2にインキを押し込むインキ撹拌押し込みロール1と、を備えている。
また、本実施の形態にかかるインキ撹拌押し込みロールは、図2、3に示すように金属製の軸芯11と、軸芯11の周囲に配されたゴム製の被覆層12と、回転軸13と、ベアリング14と、を有しており、被覆層12は、周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面となっている。ここで、回転軸13とベアリング14は、他部材への取り付けを容易とする等のためのものであり、本発明の必須の構成ではない。
ここで、被覆層12の切削荒粗面は、図2、3示すように、ランダムなサイズの多数の鱗片状部15が重なり合ったうろこ状となっている。一つの鱗片状部(連続した一つの鱗片状部の先端部分により囲まれた領域)の大きさは特に限定されないが、好ましくは、周方向で1〜5mm、軸方向で2〜20mmであり、より好ましくは、周方向で2〜4mm、軸方向で3〜15mmである(いずれも平均値)。
また、鱗片状部は、高さ(図3(d)のL1参照)が平均0.18〜0.70mmであることが好ましく、0.21〜0.65mmであることがより好ましく、0.25〜0.60mmであることがさらに好ましい。また、鱗片状部のくぼみの長さ(図3(d)のL2参照)が、平均0.08〜0.60mmであることが好ましく、0.10〜0.55mmであることがより好ましく、0.14〜0.55mmであることがさらに好ましい。
本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールの変形例を図6に示す。図6は、本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールの変形例を模式的に示す横断面図である。図6に示すように、インキ撹拌押し込みロールの表面には、くぼみを有する鱗片状部15以外に、くぼみを有さない凸部16が形成されていてもよい。
ここで、ロール表面のすべての突出部(鱗片状部15+凸部16)のうち、くぼみを有する鱗片状部15の個数の比率は、25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。また、突出部の平均高さ(全体)は、0.15〜0.70mmであることが好ましく、0.18〜0.65mmであることがより好ましく、0.22〜0.60mmであることがさらに好ましい。また、ロールの周方向の長さに対する突出部の比率は、0.2〜1.2個/mmであることが好ましく、0.3〜1.1個/mmであることがより好ましく、0.4個〜1.0/mmであることがさらに好ましい。
次に、このような切削荒粗面の加工方法について説明する。公知の方法により、金属(例えばアルミニウム)製の軸芯11に、ゴム(例えばEPTゴム)からなる被覆層12を形成したロールを準備する。切削刃を、ロールの軸方向と略平行(±10°以内)で且つロールの表面とのなす角を10〜45°、表面からの刃の食い込み深さを1〜5mmとなるようにして被覆層の一方端部にあてがい、ロールを回転させつつ切削刃をロールの他方端部に引いて被覆層を切削する。より好ましくは、ロールの軸方向とのなす角を±5°以内、切削刃とロールの表面とのなす角を20〜40°、表面からの刃の食い込み深さを1.5〜3mmとする。また、ロールの回転速度は、好ましくは5〜15rpmとし、より好ましくは6〜12rpmとする。また、切削刃の移動速度は、好ましくは2〜6mm/secとし、より好ましくは3〜5mm/secとする。また、刃の大きさは、好ましくは3〜50mm、より好ましくは5〜45mmとする。この作業を複数回行う。これらの作業により、周方向に沿った鱗片状部15がランダムに配置された、うろこ状の切削荒粗面が得られる(図2参照)。また、鱗片状部15以外に、図6に示すようなくぼみを有さない凸部16が形成されることもある。ここで、表面からの刃の食い込み深さを、被覆層の厚みの2倍以上、好ましくは2.5倍以上とすると、使用によって鱗片状部15が摩耗した場合に、再度の切削加工によって切削荒粗面を復元できるため、リーズナブルである。
そして、図3(b)、(c)に示すように、その周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面は、その横断面において鱗片状部15の先端部15aが他の表面上に重なって、くぼみ15bを形成している。このため、図1に示すように、インキ撹拌押し込みロール1をインキパン3に付けた状態で回転させると、インキ4がくぼみ15bにたまり、インキパン3のインキ4の上面よりも上方に持ち上げられてインキパン3に落とされる。これにより、インキが十分に撹拌されるようになり、撹拌不足によってインキ表面に膜が張ることを防止できる。
また、図1に示すように、インキ撹拌押し込みロール1を版胴2に押し当てた状態で、版胴2をインキ撹拌押し込みロール1の抵抗が大きい方向(うろこ状の重なり合いの逆目方向)に回転させると、インキ撹拌押し込みロール1がこの回転に伴って回転する。ここで、被覆層12はゴムからなるので、回転による摩擦抵抗によって鱗片状部15の先端部15aが外側にしなるように変形し、その後復元する動きを繰り返すが、この鱗片状部15の先端部15aの動きによってインキ4が版胴2に十分に押し込まれ、且つ、余分なインキ4は版胴2から掻き出される。よって、版胴2の表面に泡が生じたり、目詰まりが生じたりすることを防止できる。これらの作用によって、かすれやピンホール等の印刷不良の発生を防止できる。
また、被覆層12は弾性のあるゴムからなるため、インキ撹拌押し込みロール1が版胴2に強く押し当てられた場合においても、両者の回転が阻害されることがない。
インキ撹拌押し込みロールの径や長さは、特に限定されることはなく、輪転印刷機の仕様に合わせて適宜設定すればよい。例えば、インキ撹拌押し込みロールの直径は50〜150mmであることが好ましく、60〜120mmであることがより好ましい。また、被覆層12の厚みは、特に限定されることはないが、5〜15mmであることが好ましく、5〜9mmであることがより好ましく、6〜8mmであることがさらに好ましい。また、軸芯11は、中実、中空のいずれでもよいが、軽量化が容易な中空であることが好ましい。例えば、中空のアルミニウム系の材料(純アルミニウム又はアルミニウム合金)を用いる場合、アルミニウム系材料の厚みは、10〜20mmとすることが好ましい。
なお、上記実施の形態では、インキ撹拌押し込みロールは、インキの撹拌・押し込みの双方の目的で使用するものであるが、いずれか一方の目的で使用してもよい。また、上記実施の形態では、インキ撹拌押し込みロールは、単独でインキの撹拌・押し込みを行うものであるが、他のロール等とともにインキの撹拌や押し込みを行うものであってもよい。
(実施例1)
以下、本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールを備えた輪転印刷機の好適な実施例を、図1乃至及び図3に基づいて詳述する。
(インキ撹拌押し込みロールの作製)
公知の方法により、直径40mmのアルミニウム製の軸芯11に、EPTゴムからなる厚み6mmの被覆層12を形成したロールを準備した。この軸芯11は、厚み1.5mmのアルミニウムを用いた中空状であり、図2、3に示すように回転軸13及びベアリング14が取り付けられている。このロールの被覆層の表面と刃とのなす角を30°、表面からの刃の食い込み深さを好ましくは2mmとなるようにして、切削刃を被覆層の一方端部にあてがい、ロールを回転させつつ切削刃をロールの他方端部に引いて被覆層を切削する切削作業を繰り返し行った。このとき、ロールの回転速度は8〜10rpm、切削刃の速度は3〜4mm/sec、刃の大きさは40mmとして切削を行った。この作業により、本実施例にかかるインキ押し込みロールを作製した。
図4は、本実施例にかかるインキ撹拌押し込みロールの切削荒粗面を示す写真であって、図4(a)はうろこ状の切削荒粗面の順目方向、図4(b)はうろこ状の切削荒粗面の逆目方向から写したものである。図4に示すように、切削によって、鱗片状部15がランダムに配された、うろこ状の切削荒粗面が得られた。また、横断面において、鱗片状部15の先端部15aが他の表面部分上に重なりってくぼみ15bが形成されていることが確認された(図4(b)の写真では、くぼみは影となって映っている)。また、鱗片状部をランダムに10個抽出してそのサイズを測定したところ、周方向で3〜20mm、軸方向で1〜4mmであった。
この後、版胴2、インキパン3等の公知の材料及び公知の方法を用いて、図1に示す構造を備えた輪転印刷機を作製した。
この輪転印刷機を用いて合計1000時間の印刷テストを行ったところ、インキパンのインキに膜が張ることは確認されず、且つ、版胴の表面の泡に起因するピンホールや、版胴のインキ掻き出し不足によるインキのかすれは確認されなかった。
(実施例2)
上記実施例1と同様にして、本発明にかかるインキ撹拌押し込みロールを作製した。このインキ撹拌押し込みロールを適宜切断して試験サンプルとし、ロール軸に垂直な断面におけるロールの外周形状について、超解像度デジタルマイクロスコープ(キーエンス製VHX−2000)を用いて分析した。また、この際のインキ撹拌押し込みロールの断面写真を図5に示す。
図5(a)ははスケールなし、図5(b)は0.1mm間隔の格子状スケールを付けた顕微鏡写真である。この写真から明らかなように、ロールのEPTゴムからなる被覆層の表面には、多数の突出部が形成されており、この突出部には、くぼみを有している鱗片状部15と、くぼみを有していない凸部16と、が存在していた。
そこで、顕微鏡写真を用いて、(1)突出部の高さ(全体、鱗片状部、その他の凸部について、突出部の最も突出している点における接線と、その近傍の突出部以外の部分における接線の平行線と、の間の平行線間の距離であってその値が最大となるもの、図3(d)のL1参照)、(2)突出部のうち、鱗片状部の比率、(3)くぼみの大きさ(鱗片状部のみについて、鱗片状部の高さに垂直方向((1)の接線方向)の最大長さ、図3(d)のL2参照)、(4)外周長さ当たりの突出部(全体)の数を調べた。この結果を下記表1に示す。なお、(1)〜(3)については、5サンプル中の28の凸部について測定し、(4)については、6サンプルで測定した。
以上のことから、ロール表面のすべての突出部(鱗片状部+凸部)のうち、くぼみを有する鱗片状部の比率は、25%以上、突出部の平均高さ(全体)が、0.15〜0.70mm、鱗片状部の平均高さが0.18〜0.70mmで、くぼみの平均長さが0.08〜0.60mm、ロールの周方向の長さに対する突出部の比率が、0.2〜1.2個/mmであると、インキの撹拌不足や版胴表面における押し込み不良等による印刷不良を防止できることがわかった。
本発明は、グラビア印刷等の凹版印刷、凸版印刷における輪転印刷機で、インキ撹拌押し込みロールを備えるものに簡便に適用でき、インキの撹拌不足や版胴表面における押し込み不良等による印刷不良を防止できるので、本発明の産業上の利用可能性は高い。
1:インキ撹拌押し込みロール
2:版胴
3:インキパン
4:インキ
11:軸芯
12:被覆層
13:回転軸
14:ベアリング
15:鱗片状部
15a:鱗片状部の先端部
15b:くぼみ
16:凸部

Claims (7)

  1. 軸芯と、前記軸芯を被覆するゴム製の被覆層と、を有し、
    前記被覆層の表面は、その周方向に沿ったうろこ状の切削荒粗面である、
    インキ撹拌押し込みロール。
  2. 前記被覆層の厚みは、5〜9mmである、
    ことを特徴とする請求項1に記載のインキ撹拌押し込みロール。
  3. 前記被覆層を構成するゴムは、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムのいずれかである、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ撹拌押し込みロール。
  4. 前記軸芯は、アルミニウム又はアルミニウム合金製である、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインキ撹拌押し込みロール。
  5. 前記鱗片状部は、平均高さが0.18〜0.70mmであり、そのくぼみの平均長さが0.08〜0.60mmである、
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインキ撹拌押し込みロール。
  6. インキが注入されるインキパンと、
    前記インキパンのインキに接して設けられ、当該版胴表面に保持したインキを被印刷対象物に転写して印刷を行う版胴と、
    前記インキパンの前記インキを撹拌し、及び/又は、前記版胴に前記インキを押し込む、請求項1ないし5のいずれかに記載のインキ撹拌押し込みロールと、
    を備える輪転印刷機。
  7. 前記インキ撹拌押し込みロールの回転方向が、前記版胴に対して抵抗が大きい方向である、
    ことを特徴とする、請求項6に記載の輪転印刷機。
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