JP2016024038A - コンクリート構造物における鋼材の腐食箇所特定方法および腐食箇所特定のための電位差測定装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の腐食箇所特定方法で用いられる電位差測定装置1は、コンクリート構造物11に埋設された鋼材13の腐食箇所を特定するために用いられ、コンクリート構造物11の表面から、コンクリート構造物11に埋設された鋼材13の異なる領域の自然電位の差を測定する装置である。電位差測定装置1は、図1に示されるように、コンクリート構造物11の表面に接触する基準電極2および照合電極3、4と、基準電極2が接触する基準表面14および照合電極3、4が接触する照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位の差を計測する電位差計5とを備えている。この電位差測定装置1によれば、基準表面14におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位と、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位との間の電位差が電位差計5により計測される。ここで、鋼材の自然電位とは、コンクリート構造物中の鋼材の腐食状況を推定するために用いられる自然電位測定方法により測定される電位のことである。基準表面14における自然電位より照合表面15における自然電位が低ければ、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13が腐食している可能性があると判断される。そして、その自然電位の差が大きければ大きいほど、鋼材13が腐食している可能性が高いと判断される。
電位差計5は、基準電極2と照合電極3または基準電極2と照合電極4との間の電位差を計測する。電位差計5は、図1に示されるように、プラス側およびマイナス側の少なくとも2つの端子を有している。電位差計5の一方の端子は、リード線などの導線6を介して基準電極2に電気的に接続されている。電位差計5の他方の端子は、リード線などの導線6を介して照合電極3、4に電気的に接続されている。ここで用いられる電位差計5は、一方の端子をコンクリート構造物中の鋼材に接続し、他方の端子をコンクリート構造物の表面に接触した電極に接続し、コンクリート構造物中の鋼材の自然電位を測定するのに用いられる電位差計などの、公知の電位差計を用いることができる。
基準電極2は、図1に示されるように、コンクリート構造物11における鋼材13の異なる領域の自然電位の差を測定する際に、測定の基準となる自然電位(以下、基準電位という)を有する鋼材13の領域にかぶり厚さ方向で隣接した(領域の真上の)、コンクリート構造物11の表面(基準表面14)に接触される電極である。基準電極2は、基準表面14に接触されるとともに、リード線などの導線6を介して電位差計5の一方または他方の端子に電気的に接続される。基準表面14としては、コンクリート構造物11の表面の中から、たとえば鋼材13の腐食していない領域にかぶり厚さ方向で隣接した(領域の真上の)表面が任意に選択される。ただし、基準表面14は、基準となる自然電位を有する鋼材13の領域にかぶり厚さ方向で隣接した、コンクリート構造物11の表面であればよく、鋼材13の多少腐食した領域にかぶり厚さ方向で隣接した、コンクリート構造物11の表面であってもよい。また、基準表面14の大きさは、基準電極2の大きさにより画定される。
照合電極3、4は、図1に示されるように、コンクリート構造物11における鋼材13の異なる領域の自然電位の差を測定する際に、基準となる自然電位に対して測定の対象となる自然電位を有する鋼材13の領域にかぶり厚さ方向で隣接する(領域の真上の)、基準表面14以外のコンクリート構造物11の表面(照合表面15)に接触される電極である。照合電極3、4は、照合表面15に接触されるとともに、リード線などの導線6を介して電位差計5の他方または一方の端子に接続される。照合表面15としては、コンクリート構造物11の表面の中から、測定の対象とする鋼材13の領域にかぶり厚さ方向で隣接した(領域の真上の)、基準表面14以外の表面が任意に選択される。照合表面15の大きさは、照合電極3、4の大きさにより画定される。
大領域照合電極3は、図1に示されるように、コンクリート構造物11の表面(照合表面15)と大領域で接触し、鋼材13の所定の領域(大領域)毎に、基準電位との差を計測するための電極である。ここで、所定の領域とは、大領域照合電極3と接触する照合表面15のかぶり厚さ方向(照合表面15の真下)に埋設された鋼材13が複数存在する領域や、同一の鋼材13において、鋼材13を所定の長さ、たとえば、鋼材13の埋設ピッチ以上の長さを覆う領域などをいう。電位差測定装置1は、大領域照合電極3を備えることにより、基準電位と、大領域に含まれる鋼材13の自然電位との差を測定することができる。つまり、電位差測定装置1は、一回の測定で、大領域内に存在する鋼材13と、基準電位を有する鋼材13との間の自然電位の差をまとめて測定することができる。
小領域照合電極4は、大領域照合電極3により基準電極2との電位差をまとめて計測した大領域をさらに細分化した、大領域よりも小さな小領域の電位と基準電位との電位差を測定するための電極である。小領域照合電極4の小領域とは、大領域照合電極3の大領域に対する相対的な大きさをいう。小領域照合電極4は、図1に示されるように、コンクリート構造物11の表面と接触する接触面の面積が、大領域照合電極3がコンクリート構造物11の表面と接触する接触面の面積よりも小さくなるように形成されている。小領域照合電極4は、上述のように形成されればその大きさは特に限定されないが、大領域照合電極3の面積の半分以下の面積であることが好ましく、コンクリート構造物11に埋設された複数の鋼材13にまたがらない大きさであることがさらに好ましい。
つぎに、これまで説明した電位差測定装置1を用いた本発明の腐食箇所特定方法を、図2〜図4に示されたフローチャートおよび図5〜図7に示された模式図を用いて説明する。
本発明の腐食箇所特定方法は、図2および図5に示されるように、コンクリート構造物11のうち、基準電極2および大領域照合電極3によって低電位大領域16を特定する工程SAを備えている。低電位大領域16は、大領域照合電極3が接触する照合表面15における鋼材13の自然電位が、基準電極2が接触する基準表面14における鋼材13の自然電位よりも低い領域である。工程SAは、本実施形態では、図2に示されるように、工程S1〜工程S4を備えている。
本発明の腐食箇所特定方法はさらに、図3および図6に示されるように、基準電極2および小領域照合電極4によって、工程SAにより特定された低電位大領域16のうち、低電位小領域17を特定する工程SBを備えている。低電位小領域17は、小領域照合電極4が接触する照合表面15における鋼材13の自然電位が、基準電極2が接触する基準表面14における鋼材13の自然電位よりも低い領域である。工程SBは、本実施形態では、図3に示されるように、工程S5〜工程S8を備えている。
本発明の腐食箇所特定方法はさらに、図4および図7に示されるように、電位差計5の一方の端子に鋼材13を接続して、電位差計5の他方の端子に基準電極2または照合電極3、4を接続して、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位を得る工程SCを備えていてもよい。工程SCは、本実施形態では、図4に示されるように、工程S9および工程10を備えている。工程SCでは、まず工程9において、電位差計5の一方の端子に導線6を介してコンクリート構造物11の鋼材13を電気的に接続し、電位差計5の他方の端子に導線6を介して、基準表面14に接触された基準電極2を電気的に接続して(図7)、基準表面14におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位を測定する。その後、工程10において、基準表面14におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の測定された自然電位と、工程SAおよび工程SBにおいて測定された、基準電極2が接触する基準表面14および照合電極3、4が接触する照合表面15(図5および図6参照)におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位の差とを用いて、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位を算出する。以上の工程を経て、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位が得られる。工程SCは、本実施形態では工程9および工程10を備えているが、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位を得ることができれば他の工程を備えていてもよい。たとえば、工程SCは、電位差計5の一方の端子に導線6を介してコンクリート構造物11中の鋼材13を電気的に接続し、電位差計5の他方の端子に導線6を介して、照合表面15に接触された照合電極3、4を電気的に接続して、照合表面15におけるコンクリート構造物11中の鋼材13の自然電位を測定する工程を備えていてもよい。
2 基準電極
2a 電極本体
2b 湿潤パッド
3 大領域照合電極
3a 電極本体
3b 湿潤パッド
4 小領域照合電極
4a 電極本体
4b 湿潤パッド
5 電位差計
6 導線
11 コンクリート構造物
12 コンクリート
13 鋼材、鉄筋
13a 主筋
13b あばら筋
14 基準表面
15 照合表面
16 低電位大領域
17 低電位小領域
Claims (7)
- 電位差測定装置を用いて、コンクリート構造物に埋設された鋼材の腐食箇所を特定する腐食箇所特定方法であって、
前記電位差測定装置が、
前記コンクリート構造物の表面に接触する基準電極と、
前記コンクリート構造物の表面に接触する照合電極と、
前記基準電極および前記照合電極が接続され、前記基準電極が接触する基準表面および前記照合電極が接触する照合表面における前記コンクリート構造物中の前記鋼材の自然電位の差を計測する電位差計と
を備え、
前記照合電極が、前記コンクリート構造物の表面と接触する接触面が、前記コンクリート構造物に離間して埋設された複数の鋼材にまたがる大きさになるように形成され、
前記基準電極を基準表面上に配置する工程、
前記照合電極を照合表面上に配置する工程、および
前記電位差計により、前記照合電極が接触する照合表面における自然電位と、前記基準電極が接触する基準表面における自然電位との間の電位差を計測する工程を備え、
前記照合電極を前記コンクリート構造物に沿って移動させ、複数の箇所で照合表面および基準表面の間の自然電位の差を計測し、前記コンクリート構造物のうち、前記照合表面における自然電位が、前記基準表面における自然電位よりも低い低電位大領域を特定することを特徴とする腐食箇所特定方法。 - 前記コンクリート構造物の表面と接触する接触面の面積が、前記照合電極が前記コンクリート構造物の表面と接触する接触面の面積よりも小さい小領域照合電極をさらに有し、
前記コンクリート構造物のうち前記低電位大領域であることが特定された領域内において、前記小領域照合電極を配置する工程をさらに備え、
前記低電位大領域であることが特定された領域内で、前記小領域照合電極を移動させ、複数の箇所で、前記基準表面との間の自然電位の差を計測し、前記低電位大領域のうち、前記小領域照合電極が接触する照合表面における自然電位が、前記基準電極が接触する基準表面における自然電位よりも低い低電位小領域を特定することを特徴とする請求項1記載の腐食箇所特定方法。 - 前記基準電極および前記照合電極が湿潤パッドを備えることを特徴とする請求項1または2記載の腐食箇所特定方法。
- 前記電位差計の一方の端子に前記鋼材を接続して、前記電位差計の他方の端子に前記基準電極または前記照合電極を接続して、前記照合表面における前記コンクリート構造物中の鋼材の自然電位を得る工程をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の腐食箇所特定方法。
- コンクリート構造物に埋設された鋼材の腐食箇所を特定するために用いられる電位差測定装置であって、
前記電位差測定装置が、
前記コンクリート構造物の表面に接触する基準電極と、
前記コンクリート構造物の表面に接触する照合電極と、
前記基準電極および前記照合電極が接続され、前記基準電極が接触する基準表面および前記照合電極が接触する照合表面における前記コンクリート構造物中の前記鋼材の自然電位の差を計測する電位差計と
を備え、
前記照合電極が、前記コンクリート構造物の表面と接触する接触面が、前記コンクリート構造物に離間して埋設された複数の鋼材にまたがる大きさになるように形成され、
前記照合電極を前記コンクリート構造物に沿って移動させ、複数の箇所で照合表面および基準表面の間の自然電位の差を計測することにより、前記コンクリート構造物のうち、前記照合表面における自然電位が、前記基準表面における自然電位よりも低い低電位大領域を特定することが可能であることを特徴とする電位差測定装置。 - 前記コンクリート構造物の表面と接触する接触面の面積が、前記照合電極が前記コンクリート構造物の表面と接触する接触面の面積よりも小さい小領域照合電極をさらに有し、
前記低電位大領域であることが特定された領域内で、前記小領域照合電極を移動させ、複数の箇所で、前記基準表面との間の自然電位の差を計測し、前記低電位大領域のうち、前記小領域照合電極が接触する照合表面における自然電位が、前記基準電極が接触する基準表面における自然電位よりも低い低電位小領域を特定することが可能であることを特徴とする請求項5記載の電位差測定装置。 - 前記基準電極および前記照合電極が湿潤パッドを備えることを特徴とする請求項5または6記載の電位差測定装置。
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