本発明は、以後に説明する画像形成装置以外でも、プリンタ、スキャナ、被写機、プロッタ、ファクシミリ及びファックス等において、吐出器(吐出ヘッド、インクヘッド、記録ヘッド、インクジェットなど)から液滴(インクなど)を吐出して、記録媒体の表面に画像を形成(又は、印刷、印写、印字、記録など)するものであれば、いずれのものにも用いることができる。
インクジェット方式の画像形成装置を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、以後に説明する画像形成装置以外でも、プリンタ、スキャナ、被写機、プロッタ、ファクシミリ及びファックス等において、吐出器(吐出ヘッド、インクヘッド、記録ヘッド、インクジェットなど)から液滴(インクなど)を吐出して、記録媒体の表面に画像を形成(又は、印刷、印写、印字、記録など)するものであれば、いずれのものにも用いることができる。本発明の一実施形態に係る画像形成装置を用いて、下記に示す順序で本発明を説明する。
1.画像形成装置の構成
2.搬入手段の構成
3.前処理液塗布手段の構成
4.前処理乾燥手段の構成
5.画像形成手段の構成
6.後処理液付与手段の構成
7.浸透手段の構成(実施例1〜実施例3)
8.後処理液乾燥手段の構成
9.搬出手段の構成
10.制御手段の構成
11.制御例
(1.画像形成装置の構成)
本発明の実施形態に係る画像形成装置100を、図1〜図5を用いて説明する。なお、本実施形態では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色の吐出ヘッド(記録ヘッド、インクヘッド)を有する画像形成装置を説明するが、本発明を適用できる画像形成装置はこれらの吐出ヘッドを有するものに限定されない。すなわち、本発明を用いることができる画像形成装置は、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)及び/又はその他の色に対応する吐出ヘッドを更に有するもの、又は、ブラック(K)のみの吐出ヘッドを有するものなどを含む。ここで、以後の説明において、添え字K、C、M及びYを付与された記号は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの夫々に対応するものとする。
また、本実施形態では、記録媒体として、ロール状に巻かれた連続紙(以下、「ロール紙Md」という。)を用いるが、本発明に係る画像形成装置が画像を形成することができる記録媒体は、ロール紙に限定されない。すなわち、本発明に係る画像形成装置が画像を形成することができる記録媒体は、カット紙でもよい。また、本発明に係る画像形成装置を用いて画像を形成することができる記録媒体には、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙及びロール紙、並びに、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面にインク等で画像を形成することができるものを含む。ここで、ロール紙とは、定型よりも長い連続紙である。ロール紙は切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続紙、ミシン目が形成されない連続紙を含む。ミシン目が形成されている連続帳票においては、ページ(頁)とは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る画像形成装置100は、搬入手段10と、前処理液塗布手段20と、前処理液乾燥手段31、画像形成手段40、後処理液付与手段50、浸透手段55、後処理液乾燥手段32、搬出手段60とを備えている。搬入手段10は、ロール紙Md(記録媒体)を搬入する。前処理手段(前処理液塗布手段)20は搬入されたロール紙Mdに前処理液を塗布する(前処理を実行する)。乾燥手段30のうち前処理液乾燥手段31は、前処理されたロール紙Mdを乾燥させる。画像形成手段40は、ロール紙Mdの表面に画像を形成する。後処理手段(後処理液付与手段)50は、画像が形成されたロール紙Mdの上に後処理液を付与する(後処理する)。浸透手段55はロール紙Md上の液滴を浸透させる。後処理液乾燥手段32は、ロール紙上の液滴(インク及び後処理液)を乾燥させる。搬出手段60は後処理されたロール紙Mdを搬出する。更に、画像形成装置100は、画像形成装置100の動作を制御する制御手段70(図13)を有する。
本実施形態に係る画像形成装置100は、搬入手段10によってロール紙Mdを搬入し、前処理液塗布手段20及び前処理液乾燥手段31によってロール紙Mdの表面を前処理及び乾燥する。また、画像形成装置100は、画像形成手段40によって、前処理及び乾燥した後のロール紙Mdの表面に画像を形成する。更に、画像形成装置100は、本実施形態では、後処理液付与手段50によって、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する。そして、浸透手段55によりロール紙Md上の液滴を浸透させた後に、後処理液乾燥手段32により、ロール紙上の液滴(インク及び後処理液)を乾燥させる。その後、画像形成装置100は、搬出手段60によって、ロール紙Mdを巻き取る(排出する、搬出する)。
以下に、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の各構成を具体的に説明する。なお、本発明を用いることができる画像形成装置は、少なくとも記録媒体の種類に基づいて、前処理液塗布手段20、乾燥手段30(前処理液乾燥手段31、後処理液乾燥手段32)及び後処理液付与手段50の動作を制御する。また、画像形成装置は、後述する前処理液塗布手段20等のいずれか一つ又は複数を含まない構成とすることができる。
(2.搬入手段の構成)
搬入手段10は、記録媒体を前処理液塗布手段20等に搬送する手段である。搬入手段10は、本実施形態では、給紙部11及び複数の搬送ローラ12等で構成される。搬入手段10は、搬送ローラ12等を用いて、給紙部11の給紙ロールに巻き付けて保持されたロール紙Mdを搬入(移動)し、後述する前処理液塗布手段20(プラテン)等に搬送する。
(3.前処理液塗布手段の構成)
前処理液塗布手段20は、画像が形成される前の記録媒体を処理する手段である。前処理液塗布手段20は、本実施形態では、搬入手段10によって搬入されたロール紙Mdの表面を、前処理液で前処理する。
ここで、前処理とは、ロール紙Md(記録媒体)表面に、インクを凝集させる機能を有する前処理液(後述)を均一に塗布する処理である。これにより、画像形成装置100は、インクジェット方式の専用紙以外の記録媒体に画像を形成する場合において、前処理液塗布手段20を用いて、記録媒体に画像を形成する前に、インクを凝集させる機能を有する前処理液を記録媒体表面に塗布することができる。
このため、画像形成装置100は、形成される画像の滲み、濃度、色調及び裏写りなどの品質問題、並びに、耐水性、耐候性及びその他画像堅牢性に関する問題が発生することを低減することができる。すなわち、画像形成装置100は、前処理液塗布手段20を用いて、記録媒体に画像を形成する前にインクを凝集させる機能を有する前処理液を塗布することによって、その後形成される画像の品質を向上することができる。
なお、画像形成装置100は、前処理液塗布手段20を用いて、インクジェット方式の専用紙(記録媒体)に画像を形成する前に、インクを凝集させる機能を有する前処理液を塗布してもよい。
本発明の実施形態に係る画像形成装置100の前処理液塗布手段20は、前処理方法として、例えばブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などを用いることができる。
また、本実施形態に係る前処理液塗布手段20は、前処理液として、例えば水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液を用いることができる。ここで、水溶性脂肪族系有機酸を含有した処理液とは、水分散性着色剤を凝集させる性質を有する処理液である。また、凝集するとは、水分散性着色剤粒子同士が吸着集合することである。
ロールコート法を用いた前処理液塗布手段20の一例を、図2を用いて説明する。図2に示すように、前処理液塗布手段20は、本実施形態では、搬入手段10(図1)によって前処理液塗布手段20内に搬入(搬送)されたロール紙Mdの表面に、貯留している前処理液20Lを塗布する。
具体的には、前処理液塗布手段20は、先ず、攪拌(供給)ローラ21及び薄膜化(移送)ローラ22によって、前処理液20Lを塗布ローラ23の表面に薄膜状に転写(転移)する。次に、前処理液塗布手段20は、塗布ローラ23を回転するプラテンローラ24に押し付け、塗布ローラ23を回転する。このとき、前処理液塗布手段20は、塗布ローラ23とプラテンローラ24との間隙にロール紙Mdを搬送することで、ロール紙Mdの表面に前処理液20Lを塗布することができる。
また、前処理液塗布手段20は、圧力調整装置25を用いて、前処理液を塗布するときのニップ圧(塗布ローラ23とプラテンローラ24とが接触する位置に作用する圧力)を制御する。これにより、前処理液塗布手段20は、圧力調整装置25を用いてニップ圧を変えることで、前処理液20Lの塗布量(膜厚、液量、付着量、乾燥付着量など)を制御(変化)することができる。
更に、前処理液塗布手段20は、塗布ローラ23及びプラテンローラ24の回転速度を制御する。これにより、前処理液塗布手段20は、塗布ローラ23等の回転速度を変えることで、前処理液20Lの塗布量を制御(変化)することができる。なお、前処理液塗布手段20は、例えば塗布ローラ23及びプラテンローラ24を駆動する図示しない動力源(駆動モーターなど)の動作を制御することによって、塗布ローラ23等の回転速度を制御してもよい。
以上により、本実施形態に係る前処理液塗布手段20は、噴射ヘッドを用いて前処理液を記録媒体に塗布する場合と比較して、塗布ローラ23等を用いて、ロール紙Md(記録媒体)の表面に均一に前処理液20Lを塗布することができる。すなわち、本実施形態に係る前処理液塗布手段20は、比較的粘度の高い前処理液20Lの場合でも、前処理液20Lをロール紙Md上に均一に薄く塗布することができる。また、本実施形態に係る前処理液塗布手段20によれば、前処理液20Lをロール紙Md上に均一に薄く塗布することができるので、その後に形成される画像の滲み等を低減することができる。更に、本実施形態に係る前処理液塗布手段20によれば、前処理液20Lをロール紙Md上に均一に薄く塗布することができ、その後に形成される画像の滲みなどを低減することができるので、画像品質を向上させることができる。
また、本実施形態の前処理液塗布手段20は、塗布ローラ23等を用いて塗布する前処理液の塗布量(膜厚、液量、付着量、乾燥付着量など)を制御することができる。そのため、その後の画像形成及び後処理に適した塗布量で、ロール紙Md(記録媒体)の表面に前処理液20Lを塗布することができる。
更に、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の前処理液塗布手段20によれば、塗布ローラ23等を用いて塗布する前処理液の塗布量を制御することができるので、記録媒体の種類に基づいて、前処理液の塗布量を制御することができる。すなわち、本実施形態に係る前処理液塗布手段20によれば、前処理液の塗布量を制御することができるので、形成される画像の品質を向上させることができる。
(4.前処理液乾燥手段の構成)
乾燥手段30は、記録媒体を加熱等により乾燥する手段である。乾燥手段30は、図1に示すように、本実施形態では、乾燥手段30として、前処理液塗布手段20によって前処理されたロール紙Mdを乾燥させる前処理液乾燥手段31と、後処理液付与手段50によって後処理されたロール紙Mdを乾燥させる後処理液乾燥手段32と、を有する。
図3を用いて、前処理液乾燥手段31の構成を説明する。図3に示すように、前処理液乾燥手段31は、本実施形態では、乾燥効果を高めるため、複数のヒートローラ311乃至316を用いる。
具体的には、前処理液乾燥手段31は、ヒートローラ(311等)を例えば40〜100℃に加熱し、前処理液が塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラ(311等)に接触等させる。これにより、前処理液乾燥手段31は、前処理液が塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラ(311等)により加熱し、前処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Md(の前処理液)を乾燥させることができる。
なお、本発明を用いることができる前処理液乾燥手段31は、記録媒体の加熱手段をヒートローラに限定されない。すなわち、前処理液乾燥手段31は、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、温風乾燥及びその他乾燥方法を用いることができる。また、前処理液乾燥手段31は、複数の乾燥方法を組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。更に、前処理液乾燥手段31は、前処理液塗布手段20が前処理液を塗布する前に、ロール紙Md(記録媒体)を余熱(加熱)してもよい(プレヒート工程(不図示))。
(5.画像形成手段の構成)
画像形成手段40は、記録媒体に画像を形成する手段である。画像形成手段40は、本実施形態では、前処理液乾燥手段31によって乾燥されたロール紙Md上に液滴(以下、「インク」という。)を吐出することによって、ロール紙Mdの表面に画像を形成する。
画像形成手段40の外形形状の一例を、図4を用いて説明する。ここで、図4(a)は、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の画像形成手段40の全体の構成の一例を示す概略平面図である。図4(b)は、画像形成手段40の要部(ブラック(K)の吐出ヘッド40K)の一例を示す概略平面図である。
図4(a)に示すように、画像形成手段40は、本実施形態では、フルライン型のヘッドを用いることができる。すなわち、画像形成手段40は、記録媒体の搬送方向Xmの上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に対応する4つの吐出ヘッド40K、40C、40M及び40Yを配置している。
ここで、ブラック(K)の吐出ヘッド40Kは、本実施形態では、ロール紙Mdの搬送方向Xmと直行する方向に4つのヘッドユニット40K−1、40K−2、40K−3及び40K−4を千鳥状に配置している。これにより、画像形成手段40は、ロール紙Md(記録媒体)の画像形成領域(印刷領域)の幅方向(搬送方向と直行する方向)の全域に画像を形成することができる。なお、他の吐出ヘッド40C、40M及び40Yの構成は、ブラック(K)の吐出ヘッド40Kの構成と同様のため、説明を省略する。
画像形成手段40のブラック(K)の吐出ヘッド40Kのヘッドユニット40K−1の拡大平面図を図4(b)に示す。図4(b)に示すように、ヘッドユニット40K−1は、本実施形態では、ノズル面(後述する図5(a)のノズル板43の外形表面)に、複数の吐出口(ノズル、印字ノズル)40Nを備える。ここで、複数の吐出口40Nは、ヘッドユニット40K−1の長手方向に1列に配置され、ノズル列を構成している。即ち、主走査方向にノズル列を有するシングルパスインクジェット方式である。なお、ヘッドユニット40K−1は、複数のノズル列を備えてもよい。
画像形成手段40の吐出ヘッドの断面形状を、図5を用いて説明する。ここで、図5(a)は、画像形成手段40の流路(液室40Fの長手方向の断面)の一例を示す概略断面図である。図5(b)は、画像形成手段40の吐出口40Nの配置(液室40Fの短手方向(吐出口の並び方向)の断面(図5(a)のSC1))を示す断面図である。
図5(a)において、画像形成手段40の吐出ヘッド(40K等)は、吐出するインクの通路を形成する流路板41と、流路板41の下面(吐出ヘッドの内部方向)に接合された振動板42と、流路板41の上面(吐出ヘッドの外側方向)に接合されたノズル板43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44とを備える。また、吐出ヘッドは、振動板42を変形させるための圧力発生手段(アクチュエータ手段)45を有する。
本実施形態に係る吐出ヘッド(40K等)は、流路板41と、振動板42と、ノズル板43とを積層することによって、吐出口(ノズル)40Nに連通する流路であるノズル連通路40R及び液室40Fを形成することができる。また、吐出ヘッドは、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40Fにインクを供給するためのインク流入口40S及びインクを液室40Fに供給する共通液室40Cなどを形成することができる。
更に、吐出ヘッドは、圧力発生手段45を用いて、振動板42を変形(撓み変形)することができる。これにより、吐出ヘッドは、液室40Fの容積(体積)を変化させ、液室40F内のインクに作用する圧力を変化させることができる。この結果、吐出ヘッドは、吐出口40Nから、インクを吐出することができる。
流路板41は、結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を用いることができる。これにより、流路板41は、水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路40R及び液室40Fとなる凹部及び穴部を形成されることができる。なお、流路板41に用いることができる材料は、単結晶シリコン基板に限られるものではない。すなわち、流路板41は、ステンレス基板、感光性樹脂及びその他材料を用いることができる。
振動板42は、ニッケルの金属プレートを用いることができる。これにより、振動板42は、ニッケル電鋳(例えばエレクトロフォーミング法、電鋳法)で加工されることができる。なお、振動板42は、ニッケルの金属プレート以外の金属板、又は、金属と樹脂板との接合部材などを用いてもよい。
ノズル板43は、単結晶シリコン基板を用いることができる。これにより、ノズル板43は、流路板41と同様に、異方性エッチングで加工されることができる。なお、ノズル板43は、金属部材からなる外形表面に、所要の層を介して、撥水層を形成されてもよい。
また、ノズル板43は、本実施形態では、液滴(インク滴)を吐出する複数のノズル40Nを有する。具体的には、ノズル板43には、各液室40Fに対応する直径10〜30μmのノズル40Nが夫々形成されている。
フレーム部材44は、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ系樹脂)又はポリフェニレンサルファイト(PPS)などを用いることができる。これにより、フレーム部材44は、射出成形で加工されることができる。
また、本実施形態では、フレーム部材44には、圧力発生手段45を収納する収容部、共通液室40Cとなる凹部、及び共通液室40Cに吐出ヘッド外部からインクを供給するためのインク供給口40INが形成されている。
圧力発生手段45は、電気機械変換素子を用いることができる。圧力発生手段45は、本実施形態では、電気機械変換素子である圧電素子45Pと、圧電素子45Pを接合固定するベース基板45Bと、隣り合う圧電素子45Pの間隙に配置された支柱部とを備えている。また、圧力発生手段45は、圧電素子45Pを図示しない駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル45C等を備えている。
ここで、圧電素子45Pは、図5(b)に示すように、圧電材料45Ppと内部電極45Peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)を用いることができる。内部電極45Peは、複数の個別電極45Peiと複数の共通電極45Pecとを有する。内部電極45Peは、本実施形態では、圧電素子45Ppの端面に交互に個別電極45Pei又は共通電極45Pecを接続している。
また、圧電素子45Pは、実施形態では、圧電素子45Ppの圧電方向として、d33方向を用いる。これにより、圧力発生手段45は、圧電素子45Pの圧電効果(d33方向の変位)を用いて、液室40F内のインクを加圧又は減圧することができる。なお、圧力発生手段45は、圧電素子45Pのd31方向の変位を用いて、液室40F内のインクを加圧又は減圧してもよい。また、圧力発生手段45は、1つの吐出口40Nに対して1列の圧電素子を配置してもよい。
なお、支柱部は、圧電素子部材(圧電素子45P)を分割することで、圧電素子45Pと同時に形成してもよい。すなわち、吐出ヘッドは、圧電素子に電圧を印加しないことによって、圧電素子部材を支柱部として用いることができる。
以下に、吐出ヘッドがノズル40Nからインクを吐出する動作(引き−押し打ち動作)を具体的に説明する。
吐出ヘッドは、本実施形態では、先ず、圧電素子45P(圧力発生手段45)に印加している電圧を基準電位から下げ、圧電素子45Pをその積層方向に縮小させる。また、吐出ヘッドは、圧電素子45Pの縮小によって、振動板42を撓み変形させる。このとき、吐出ヘッドは、振動板42の撓み変形によって、液室40Fの容積(体積)を拡大(膨張)させる。これにより、吐出ヘッドは、共通液室40Cから液室40F内にインクを流入させることができる。
次に、吐出ヘッドは、圧電素子45Pに印加している電圧を上げ、圧電素子45Pを積層方向に伸長させる。また、吐出ヘッドは、圧電素子45Pの伸長によって、振動板42をノズル40N方向に変形させる。このとき、吐出ヘッドは、振動板42の変形によって、液室40Fの容積(体積)を縮小(収縮)させる。これにより、吐出ヘッドは、液室40F内のインクに圧力を付加することができる。また、吐出ヘッドは、インクを加圧することによって、吐出口40Nからインクを吐出(噴射)することができる。
その後、吐出ヘッドは、圧電素子45Pに印加している電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に戻す(復元する)。このとき、吐出ヘッドは、液室40Fの膨張によって液室40F内を減圧し、共通液室40C内から液室40F内にインクを充填(補充)する。次いで、吐出ヘッドは、ノズル40Nのメニスカス面の振動が減衰(安定)した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、上記の動作を繰り返す。
なお、本発明を用いることができる吐出ヘッドの駆動方法は、上記の例(引き−押し打ち)に限定されるものではない。すなわち、吐出ヘッドの駆動方法は、圧電素子45Pに印加する電圧(駆動波形)を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等を行うことができる。
以上により、本実施形態の画像形成装置100は、画像形成手段40(4つの吐出ヘッド40K、40C、40M及び40Y)を用いて、1回の記録媒体(ロール紙Md)の搬送動作で、画像形成領域の全域に、白黒又はフルカラーの画像を形成することができる。
なお、本発明を用いることができる圧力発生手段45は、上記の例(圧電素子45P)に限定されるものではない。すなわち、圧力発生手段45は、発熱抵抗体を用いて液室40F内のインクを加熱して気泡を発生させる方法(いわゆるサーマル型)のもの(例えば特開昭61−59911号公報参照)を用いてもよい。また、圧力発生手段45は、液室40Fの壁面に振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させた静電力によって振動板を変形させる方法(いわゆる静電型)のもの(例えば特開平6−71882号公報参照)を用いてもよい。
本実施形態に係る画像形成手段40は、画像を形成するためのインクとして、水分及び高沸点溶媒を含む液滴を用いることができる。具体的には、上記液滴は、水性インク、UVインク、溶剤系インクの何れも使用可能である。インクとして、(i)水分、(ii)高沸点溶媒(水溶性有機溶剤のうち、特にグリセリン)、(iii)顔料、(iv)上記(ii)以外の水溶性有機溶剤(界面活性剤、防カビ剤、消泡剤、pH調整剤等)を含む。
(6.後処理液付与手段の構成)
後処理液付与手段50は、画像が形成された後の記録媒体を処理する手段である。後処理液付与手段50は、本実施形態では、画像形成手段40によって画像が形成されたロール紙Mdの表面を、後処理液で後処理する。図4(a)に示すように、後処理液付与手段50は、本実施形態では、画像形成手段40に対して、記録媒体の搬送方向Xmの下流側に配置されている。また、後処理液付与手段50は、画像形成手段40と同様に、ロール紙Mdの搬送方向Xmと直行する方向に吐出ヘッド50H(吐出器)を千鳥状に配置している。更に、後処理液付与手段50は、吐出ヘッド50Hに入力する駆動波形を制御することによって、後処理液の吐出量を制御する。これにより、後処理液付与手段50は、吐出ヘッド50Hを用いて、ロール紙Md(記録媒体)の画像形成領域(印刷領域)の幅方向(搬送方向と直行する方向)の全域に後処理液を吐出することができる。なお、吐出ヘッド50Hの構成は、画像形成手段40の構成(図4及び図5)と同様のため、説明を省略する。
ここで、後処理とは、ロール紙Md(記録媒体)上に後処理液を吐出(堆積)する処理である。後処理液は、斑点形状や縞形状等の形状で形成される。これにより、画像が形成された記録媒体は、耐擦過性及び光沢度、並びに、保存安定性(耐水性、耐光性、耐ガス性など)等を向上させることができる。例えば、後処理液付与手段50が後処理を開始する前には、ロール紙Mdには、その表面に前処理液20Lが塗布され、画像を形成するインク40Inkが更に付与されている。本発明の実施形態に係る画像形成装置100の後処理液付与手段50は、後処理として、画像が形成されたロール紙Md上に、後処理液50Lを吐出(堆積)する処理を実施する。なお、図6のように記録媒体Md上に画像が形成され、後処理液が付与された後の記録媒体Mdを、本発明に係る画像形成方法により生産した(印刷した)印刷物と呼ぶ。
更に、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の後処理液付与手段50は、記録媒体の前処理液が塗布された表面面積よりも小さい面積に、後処理液を吐出することができる。また、後処理液付与手段50は、少なくとも記録媒体の画像が形成された部分において、画像が形成された表面面積よりも小さい面積に、後処理液を吐出することができる。
ここで、図6(a)及び図6(b)の例の記録媒体Md上では、少なくとも前処理液20Lが塗布された領域よりも少ない面積に後処理液50Lが吐出(堆積)されている。また、図6(b)の断面図において、インク40Inkが記録媒体Mdの全面に吐出されており、その面積よりも小さい面積に後処理液50Lが吐出(堆積)されている。
ここで、本発明における画像形成物例の上面図(図6(a))と断面図(図6(b))示す。なお、図6では、後処理液50Lは、斑点形状に形成されているように見えるが、断面と直交する方向の縞形状であっても良い。
図6(a)及び図6(b)の例では、後処理液50Lは、少なくとも記録媒体の画像が形成された部分において、画像が形成された表面面積よりも小さい面積に吐出(堆積)されている。また、後処理液50Lは、画像が形成されていない部分においては、吐出(堆積)がされていても、吐出(堆積)がされていなくても良い。
ここで、図6の形状に形成された記録媒体が他の媒体と擦れる場合には、後処理液50Lの層の表面部が擦れることになる。後処理液は高さを持っているので、後処理液が堆積している部分のインク40Inkだけでなく、後処理液が堆積していないインク40Inkについても擦れによる画像(インク)の剥離を予防することが出来る。
このように、本発明の実施形態に係る画像形成装置100によれば、後処理液付与手段50を用いて、画像が形成された記録媒体(ロール紙Md)上に後処理液(後処理液50L)を堆積(吐出)することができる。このため、後処理液を堆積しない場合と比較して、後処理液を付与すると、画像が形成された記録媒体Mdの表面が他の物体(例えば他の記録媒体)と擦れることによって記録媒体上の画像(インク)が剥離(剥奪)することを防止することができる。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、後処理液付与手段50を用いて、記録媒体上に形成された画像の耐擦過性(耐擦性)を向上することができる。
また、本発明の実施形態に係る画像形成装置100によれば、後処理液付与手段50を用いて、画像が形成された記録媒体(ロール紙Md)上に後処理液を堆積(吐出)することができるので、記録媒体に形成された画像の品質を向上することができる。即ち、画像形成装置100は、画像が形成された記録媒体上に後処理液を堆積することができるので、形成される画像の滲み、濃度、色調、光沢及び裏写りなどの品質問題、並びに、耐水性、耐候性及びその他画像堅牢性に関する問題の発生を低減することができる。
本発明の実施形態に係る画像形成装置100の後処理液付与手段50は、後処理方法として、ロール紙Mdの画像が形成された領域の特定の部分のみに後処理液を堆積(吐出)することが好ましい。後処理液付与手段50は、記録媒体の種類、浸透性及び/若しくは光沢度、並びに/又は、前処理液塗布手段20が塗布した前処理液の塗布量(液量)に基づいて、後処理液の吐出量(付与量)及び吐出(付与)方法を変えることが更に好ましい。
また、本実施形態に係る後処理液付与手段50は、吐出ヘッドを用いて、任意の領域(任意の箇所)に、所望の吐出量(所望の斑点形状又は所望の縞形状)で、後処理液を吐出することができる。
具体的には、後処理液付与手段50は、ロール紙Md(記録媒体)の
(1)画像を形成することが可能な範囲の全領域に吐出すること
(2)画像が形成された領域に吐出すること、
(3)画像部(ドット吐出部分)の領域のみに吐出すること
等を選択することができる。
また、後処理液付与手段50は、(4)ロール紙Md(記録媒体)の画像部より広い領域(画像部の外縁に対して、+1ドット又は2ドット以上など)に吐出することを選択することができる。更に、後処理液付与手段50は、選択した後処理液を吐出する領域に対して、n%の領域(斑点形状又は縞形状)に後処理液を吐出することができる。
ここで、n%は、5〜50%とすることができる。また、n%は、実験又は数値計算等で予め定められる値とすることができる。
また、本実施形態に係る後処理液付与手段50は、後処理液50Lを吐出する方法として、
(1)印字Dutyに基づいて吐出する、
(2)吐出する後処理液50Lの液滴量に基づいて吐出する、
などを選択することができる。このとき、後処理液付与手段50は、入力された情報(印刷画像データなど)から印字Dutyや後処理液50Lの液滴量を算出し、算出した印字Duty等に基づいて吐出する方法を決定してもよい。
さらに、更に、後処理液塗布手段50は、例えば予め上記データをデータベース化し、入力された情報、すなわち画像データから、印字Duty(印字率)やインク量を算出してデータベースと照らし合わせ、後処理液の塗布範囲を決定する構成としてもよい。
これにより、本発明の実施形態に係る画像形成装置100によれば、記録媒体の全面に後処理液を塗布(吐出)する場合と比較して、後処理液付与手段50を用いて、画像が形成された領域の特定の部分のみに後処理液を堆積(吐出)することができる。このため、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、後処理に要する時間、特に後処理液の乾燥に要する時間を短縮することができる。また、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、記録媒体の全面に後処理液を塗布(吐出)する場合と比較して、後処理に要する後処理液の付与量を低減することができる。更に、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、記録媒体の全面に後処理液を塗布(吐出)する場合と比較して、後処理液の付与量を低減することができるので、後処理に要するコストを低減することができる。
なお、後処理液付与手段50の後処理方法は、特に制限はなく、後処理液の種類に応じて適宜選択してもよい。また、後処理液付与手段50の後処理方法は、前述の前処理液塗布手段20の前処理液の塗布方法、又は、前述の画像形成手段40のインクを吐出する方法を用いることができる。更に、後処理液付与手段50の後処理方法は、装置の小型化及び後処理液の保存安定性の観点から、画像形成手段40のインクを吐出する方法と同様の方法を用いることがより好ましい。ここで、後処理液を吐出させる場合では、画像形成手段40のインクを吐出する方法で使用されている水溶性有機溶剤(湿潤剤)を適当量含有することが好ましい。
また、本実施形態に係る後処理液付与手段50は、後処理液の乾燥付着量を0.5g/m2〜10g/m2とすることが好ましい。後処理液付与手段50は、後処理液の乾燥付着量を2g/m2〜8g/m2とすることがより好ましい。なお、後処理液の乾燥付着量が0.5g/m2未満であると、画像品質(耐擦過性、画像濃度、彩度、光沢度及び定着性)が低下する場合がある。また、後処理液の乾燥付着量が10g/m2を超えると、保護層(後処理液)の乾燥性が低下する(乾燥に時間がかかる)場合がある。更に、後処理液の乾燥付着量が10g/m2を超えると、後処理による画像品質の向上効果が飽和し、経済的に不利となる場合がある。
本実施形態に係る後処理液付与手段50は、後処理液として、ロール紙Md(記録媒体)上に透明な保護層を形成し得る成分を含有する処理液を用いることができる。透明な保護層を形成し得る成分を含有する処理液とは、例えば、水分散性樹脂(樹脂)、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、水及び/又は必要に応じてその他の成分を含有してなる処理液である。即ち、後処理液も水及び高沸点溶媒を含む。また、後処理液は、紫外線照射によって高分子化する成分を含む樹脂組成物及び/又は熱可塑性樹脂であっても良い。更に、後処理液は、光沢性・定着性向上のために、熱可塑性樹脂エマルジョンであることが好ましい。これにより、後処理液付与手段50は、吐出(塗布)する方法に応じて、画像が形成されたロール紙Mdの表面の光沢性を増加させること、又は、ロール紙Mdの表面を樹脂層で保護することができる。
ここで、水分散性樹脂(樹脂)とは、例えばアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル−シリコン樹脂、フッ素樹脂などが好適である。これらの水分散性樹脂は、画像形成手段40のインクを吐出する方法に用いられる水分散性樹脂と同様のものを適宜選択して用いることができる。また、水分散性樹脂の保護層における含有量は、固形分で1質量%〜50質量%が好ましい。更に、画像形成手段40のインクを吐出する方法を用いる場合には、水分散性樹脂の保護層における含有量は、1質量%〜30質量%とすることが好ましい。
なお、樹脂含有量が50質量%を超える場合には、後処理液の粘度が高くなる場合がある。また、樹脂含有量が1質量%未満である場合には、後処理液の水分蒸発のために必要なエネルギーが増加する場合がある。
後処理液の水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、後処理液の粘度と関係する。組成が同じ場合では、例えば粒径が小さくなるほど後処理液の粘度が大きくなる。従って、後処理時に過剰な高粘度となることを防止するために、水分散性樹脂の平均粒子径(D50)を50nm以上にすることが好ましい。
また、後処理液の水分散性樹脂の平均粒子径は、数十μmの場合では、後処理液を吐出する吐出ヘッドのノズル径(図4(a)の吐出口40Nの直径)より大きくなるため、好ましくない。また、後処理液の水分散性樹脂の平均粒子径が、ノズル径より小さくても、粒子径の大きな粒子が後処理液中に存在すると、吐出ヘッドの吐出性を悪化させる場合がある。従って、後処理液(水分散性樹脂)の平均粒子径(D50)は、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。
水溶性有機溶剤(湿潤剤)を用いた場合では、後処理液中に含まれる水溶性有機溶剤の含有量は、特に限定されない。水溶性有機溶剤の含有量は、10〜80質量%でもよい。また、水溶性有機溶剤の含有量は、15〜60質量%がより好ましい。水溶性有機溶剤(湿潤剤)とは、例えば1、3−ブタジエン、グリセリンである。
なお、水溶性有機溶剤の含有量が80質量%より大きい場合には、後処理後の記録媒体が乾燥しにくくなる場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が10質量%より小さい場合には、前処理液との混合で後処理液の組成が変わる場合がある。
浸透剤及び界面活性剤は、特に制限はない。浸透剤とは、例えば2−エチル−1、3−ヘキサンジオールである。界面活性剤とは、例えばパーフルオロアルキルポリエチレンオキシド付加反応物である。浸透剤及び界面活性剤は、前処理液塗布手段20に用いる前処理液、又は、画像形成手段40に用いるインクに含有する浸透剤若しくは界面活性剤を適宜選択してもよい。
なお、後処理液は、その他の成分を更に含んでもよい。後処理液は、例えば、ワックス、pH調整剤、抗菌剤、表面改質剤、消泡剤などを更に含んでもよい。
ワックスとは、例えばポリエチレンワックスである。pH調整剤とは、例えば2−アミノ−2−エチル−1、3−プロパンジオールである。抗菌剤とは、例えば有効成分1、2−ベンゾチアゾル−3−オンである。表面改質剤とは、例えばポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)である。消泡剤とは、例えば2、4、7、9−テトラメチル−4、7−デカンジオールである。
このようなインクジェット記録装置では、印刷の高速化や、インク(液滴)の物性や記録媒体の特性の組合せ(インクの粘度、接触角、濡れ性など)による影響で、インクが記録媒体上で浸透又は乾燥せずに残留してしまうことがある。この状態で、印刷物(ロール紙)の巻き取りや、カット紙やロール紙の裁断処理後の積層が行われると、ある媒体上のインクが他の媒体上に転写されたり、記録媒体同士が貼り付いたりする(ブロッキング)画像劣化現象が起こることが知られている。
特に、商用印刷用あるいは出版印刷用コート紙(以下、一般コート紙)のようなコート層材料に炭酸カルシウムやカオリン等の安価で遮蔽性が高く、水分の吸収量および浸透速度が比較的小さいフィラーを用いた用紙をインクジェット記録装置で使用すると、前述の画像劣化現象が発生しやすい。
これは、一般コート紙が、普通紙やインクジェット専用普通紙やインクジェット専用コート紙のように、短時間に多量のインクを吸収できるように設計されていないため起きる。一般コート紙では、インクの浸透が遅く、多くの溶媒(主に高沸点の溶媒)が紙面上に残ることでベタつきが発生し、巻き取りや積層(スタック)時に転写やブロッキングが発生する原因となる。
特に、商用印刷用インクジェット記録装置では、高生産性を確保するために印刷速度を速くする必要がある。そのため、インクの浸透時間はさらに短くなる。従って、本来一般コート紙は、シングルパス高速インクジェット記録装置にはあまり適さないが、商用印刷や出版用印刷では一般コート紙の需要がある。
一方で、近年では、高い濃度が得られることや、記録後の保存性や耐水性が優れることから、色材である顔料を微粒子状にして水に分散させた水性顔料インクが注目されている。この顔料は一般的な商用印刷インクに用いられる色材と組成が近いこともあり、印刷物の風合いを商用印刷に近づけることが期待される。しかしながら、一般コート紙に記録すると、インクの浸透が間に合わず画像が滲むなど、乾燥後に顔料が定着しづらいことがあった。
このような問題を解決するため、本発明では、下記の浸透手段を設けている。
(7.浸透手段の構成)
次に、図7に記録媒体表面溶剤量と巻き取りブロッキングによる転写濃度の関係を示す。転写濃度がA以下の時は、転写を視認することができず、ブロッキングはなしと判断する。また紙面上の溶剤量がB以下の時は転写濃度がA以下になる。すなわち紙面溶剤量がある値B以下になるとブロッキングが発生しなくなる。すなわち浸透手段55により記録媒体表面上から溶剤を削減し、除去することで、ブロッキングを防止することが可能である。
さらに、記録媒体の種類に応じて浸透手段55の強度を制御してもよい。すなわち、普通紙のような浸透性の大きい記録媒体の場合、加熱手段56の温度を低めに設定する、またはオフにする。また一般コート紙のような浸透性の小さい記録媒体の場合、加熱手段56の温度を高めに設定する。また、溶剤の種類に応じて浸透手段55の強度を制御しても良い。すなわち、溶剤が低い温度でも粘度が低下しやすい溶剤の場合には、加熱手段の温度を低めに設定する。また、高い温度でないと粘度が低下しない溶剤の場合には、加熱手段の温度を高めに設定する。
このような制御を行うことで、浸透性の高い記録媒体に対しては、加熱に必要なエネルギーを節約することが可能である。また浸透性が低い記録媒体に対しては、溶剤を十分記録媒体中へ浸透させることが可能であり、擦過やブロッキングなど、記録媒体表面に溶剤が残留することに起因する、印刷品質の劣化を防止することが可能である。
本発明では、インク中の高沸点溶媒の粘度が低く、(水+高沸点溶媒の水溶液)状態である区間であって、インクを記録媒体上に打滴する印刷工程と水分蒸発させる水分蒸発工程の間に、印刷面に対し高沸点溶媒を浸透させる浸透促進工程を設けている。
浸透促進工程として、下記加熱搬送手段、搬送手段、吸引手段の例を下記説明する。
<実施例1>
図8は、本発明における実施例1の浸透手段を示す概略構成図である。浸透手段55はインク中の溶剤を記録媒体へ浸透させる手段である。後述の画像形成手段40で記録媒体上に打滴されたインクと、後処理液塗布手段50によって付与された後処理液は、後処理液乾燥手段32によって水分は蒸発させられ、高沸点溶媒は浸透(一部蒸発)させられる。しかし、高沸点溶媒の浸透は後処理液乾燥手段32だけでは不十分である為、浸透手段55において水+高沸点溶媒の水溶液状態で記録媒体中へ浸透させられる。
記録媒体への浸透モデルとしてよく知られているのが、Lucas-Washburnの式である。インクや後処理液などの液滴の紙への吸収である浸透は、紙の毛細管構造の平均細孔径、分布状態、空隙量、インク物性、インクと紙の表面自由エネルギーなどの影響を受ける。
なお、rは毛細管半径、γは液面の表面張力、ηは液体の粘度、θは接触角、lはt秒後に持たされる浸透距離(長さ、高さ)を示す。この式によると、液滴の浸透距離(深さ)lは時間tの1/2乗に比例し、液滴粘度の1/2乗に反比例する。
したがって、溶剤の浸透を促進させるためには、時間を延ばすまたは粘度を下げる手段にすればよい。その一つの手段として、搬送距離を長くし、経路内を加熱した、浸透手段55が考えられる。本発明においては、単純加熱による粘度低減だけでなく、高沸点溶媒が水との水溶液状態である区間に浸透手段55を設けることでさらなる浸透促進効果を達成している。
浸透手段55では、複数のローラ57a〜57hを搬送方向に配列することにより搬送方向に対して屈曲する屈曲搬送路58が形成されており、屈曲搬送路58の近傍には、加熱手段56が設けられている。
浸透手段55では、搬送距離を長くすることで、溶剤が浸透する時間を稼いでいる。さらに加熱手段56により、記録媒体およびインクを加熱し、30〜100℃の(水分が蒸発しない)雰囲気温度に設定することで、インク中の高沸点溶媒を含む水溶液の状態のまま粘度を低下させ、浸透速度を加速させる。
温度と溶剤粘度の関係を図9に示す。温度を上昇させることで、粘度を低下させることが可能である。このように、温度が高いほど時間は小さくなる。どの温度と時間を選択するかは、装置の制約条件に合わせて選択する。また、この関係は溶剤の種類によっても変化する。このため溶剤の種類によって温度と時間を選択する。
前記浸透時間の延長、液粘度の低減の2つの効果により、浸透手段55を設置しないときに比べ、溶剤を記録媒体中へ浸透させることが可能である。
<実施例2>
図10は、本発明における実施例2の浸透手段55Aを示す概略構成図である。上述の図8の浸透手段55との違いは、加熱手段が配置されない点と、ローラの位置が移動可能な点である。
本実施例において、記録媒体Mdは、まず、モータなどの駆動源で回転駆動するフィードローラ57a,57bを通る。その後、回転自在なダンサーローラ57c,57e,57gとこれらダンサーローラの間に配置されたガイドローラ57d,57fにわたってWの字状に巻き掛けられている。その後、排出ローラ75hを通って、浸透手段55の外に排出される。
下側に配置されたダンサーローラ57c,57e,57gにはそれぞれローラ端部に設けた軸受け(図示せず)を介して可動フレーム59に回転自在に取り付けられて、ダンサーユニット54を構成している。なお、可動フレーム59にはおもり53が取り付けられている。おもり53と駆動源を調整することで、このダンサーユニット54は重力方向Aに沿って移動可能になっている。ダンサーユニット54の位置を検出する位置検出手段(不図示)が設けられ、位置検出手段による検知情報を後述の画像形成システムの制御部へフィードバックし、制御部からの位置に基づいてダンサーユニット54の位置を制御する。
この構成により、ダンサーユニット54の位置が調整できる構成にしており、浸透手段の搬送距離を調整できる。具体的に、浸透の程度を高める(強める)ときには、ダンサーユニット54の位置を下側に調整して、浸透手段55内の屈曲搬送路58の距離を長くする。反対に、浸透の程度を低くする(弱める)ときには、ダンサーユニット54の位置を上側に調整して、浸透手段55内の屈曲搬送路58の距離を短くする。
本実施形態においては、浸透時間の延長による効果により、浸透手段55が設置されないときに比べ、溶剤を記録媒体中へ浸透させることが可能である。
なお、本実施例において搬送距離の制御に加えて、さらに実施例1のような加熱手段を設けてもよい。
<実施例3>
図11は、本発明における実施例3の浸透手段55Bを示す概略構成図である。本実施例においては、浸透手段55Bは、非印刷面側から負圧で吸引する吸引手段51(圧力発生装置)を設けている。
本実施形態では、入り口側のフィードローラ57aと出口側の排出ローラ57hとの間に、記録媒体Mdの幅寸法に対応する幅を有し、上面に多数の吸引口51aを有し且つ内部が真空吸引装置52に連通させた吸引手段51が配置されている。
吸引手段51は、上面を記録媒体Pの裏面に接近させて配設し、上流の画像形成手段40及び後処理液塗布手段50により記録媒体Pの表面に塗布されたインク及び後処理液が流動性を失わないうちに記録媒体Pの裏面から吸引する。
吸引手段51に接続した真空吸引装置52を作動させて吸引力を発生させると、接続パイプ53を介して、吸引手段51の上面の吸引口51aより記録媒体Pの裏面側が紙幅方向に均一に吸引される。
なお、後述する制御装置により、真空吸引装置52の吸引力は適宜調整することができる。具体的には、浸透の程度を高めるときには、真空吸引装置52の吸引力を強め、反対に、浸透の程度を弱めるときには、吸引力を弱める。なお、真空吸引装置52が、吸引手段51を介して記録媒体Pの裏面に作用させるよう任意の吸引力が作用する。
吸引力が作用することで、記録媒体であるロール紙Mdの繊維の隙間にインク及び後処理液を含浸させ、浸透を促進させることができる。また、吸引手段を用いる本実施例では、熱量をかけることなく浸透させることができるため、エネルギーコストを低下させることができる。
実施例1〜実施例3のいずれの方式でも、浸透手段がないときと比較して、溶剤を記録媒体中へ浸透させることができるので、転写やブロッキングなど、記録媒体表面に溶剤が残留することに起因する、印刷品質の劣化を防止することが可能である。
(8.後処理液乾燥手段の構成)
図12は、後処理液乾燥手段32の構成要素の概略図を示す。図12の後処理液乾燥手段32において、ローラ321〜326、328a〜328dのうち、ヒートローラ321〜326を例えば80〜100℃に加熱し、ロール紙Mdの裏面をヒートローラ321〜326に接触等させる。これにより、後処理液乾燥手段32は、インク及び後処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Mdを乾燥させることができる。
さらに後処理乾燥手段32は、ヒートローラ形式に加えて、温風機構(温風ヒータ)327を追加しても良い。温風機構327により、ロール紙Mdの上側から、例えば80〜100℃に加熱された温風をあて、さらにロール紙Mdの下側を80〜100℃に加熱されたヒートローラ321に接触させる。
このような構成の後処理乾燥装置において、例えば温風機構327による温風100℃+ヒートローラ321〜326による裏面加熱100℃で約2秒乾燥すると、約10%だった水分が1〜2%まで乾燥する。
なお、後処理液乾燥手段の構成はこの構成に限られず、図12のように、搬送経路を縦一列に並べるのではなく、搬送経路を不規則に蛇行させる構成であってもよい。
なお、浸透手段の位置は後処理乾燥手段の後でもよいが、高沸点溶媒は沸点が高く蒸発しにくく、乾燥工程により水分が蒸発すると粘度が増加し浸透速度が低下する。従って、本発明の浸透手段、特に加熱を伴わない実施例2と実施例3の構成は、後処理付与手段の下流であって、後処理液乾燥手段の上流に配置されるのが好ましい。
(9.搬出手段の構成)
搬出手段60は、画像が形成等された記録媒体を搬出(排出)する手段である。図1に示すように、搬出手段60は、本実施形態では、保管部61及び複数の搬送ローラ62等で構成される。搬出手段60は、搬送ローラ62等を用いて、保管部61の保管ロールに画像が形成されたロール紙Mdを巻き付けて、保管する。
なお、ロール紙Mdを保管部61の保管ロールに巻き付けるときに、ロール紙Mdに作用する圧力が大きくなる場合には、ロール紙Mdの裏面に他の画像が転写することを防止するため、巻き取り直前にロール紙Mdを更に乾燥する乾燥手段を設けてもよい。
(10.制御手段の構成)
制御手段70は、画像形成装置100の動作を制御する手段である。制御手段70は、本実施形態では、画像形成装置100の各構成に動作を指示し、その動作を制御する。図13〜図16を用いて、本実施形態に係る制御手段70を説明する。
なお、本発明の実施形態に係る画像形成装置100は、印刷システムとして、プロダクションプリンティングを用いてもよい。ここで、プロダクションプリンティングとは、ジョブ管理や印刷データの管理などを効率的に行うことによって、短時間に大量の印刷物(画像形成媒体、印字物)を印刷(画像形成、印字)することができる製造システムである。具体的には、本実施形態に係る画像形成装置100は、複数の装置、例えばRIP(Raster Image Processor)装置とプリンタ装置とからなる。RIP装置は、印刷データの印刷順等の制御と印刷データのラスタイメージデータへの変換を行う装置である。プリンタ装置は、変換されたラスタイメージデータに基づく印刷動作を制御装置である。
また、本実施形態に係る画像形成装置100(制御手段70)は、印刷データの作成から印刷物の分配までの管理を行うワークフローのシステムを構築する。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置100(制御手段70)は、当該ワークフローのように処理時間の長いシステムにおいて、RIP装置とプリンタ装置のように装置を分離し処理を分散させることで、印刷の高速化を可能とする。全体の画像形成システムでは制御装置(RIPS装置)を有する。
図13(a)に示すように、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の制御手段70は、RIP処理などを行う上位装置(RIP装置、DFE、Digital Front End)71と、印刷処理などを行うプリンタ装置72とを含む。ここで、上位装置71とプリンタ装置72とは、複数のデータ線70LDと制御線70LCとで接続されている。
以下に、本実施形態に係る制御手段70の上位装置71及びプリンタ装置72を具体的に説明する。
<上位装置>
本発明の実施形態に係る画像形成装置100(制御手段70)の上位装置71は、ホスト装置(不図示)から出力される印刷ジョブデータ(ジョブデータ、印刷データ)に基づいて、RIP処理を行う装置である。すなわち、本実施形態に係る上位装置71は、印刷ジョブデータに基づいて、各色に対応するラスタイメージデータ(以下、「印刷画像データ」という。)を夫々作成する。ここで、印刷画像データは、本実施形態では、後処理液付与手段50が吐出する後処理液の吐出に関するデータ(以下、「後処理に関する画像データ」という。)を更に含む。
また、本実施形態に係る上位装置71は、印刷ジョブデータ及びホスト装置の情報などに基づいて、印刷動作を制御するためのデータ(以下、「制御情報データ」という。)を作成する。ここで、制御情報データとは、印刷条件(印刷形態、印刷種別、給排紙情報、印刷面順、印刷用紙サイズ、印刷画像データのデータサイズ、解像度、紙種情報、階調、色情報及び印刷を行うページ数の情報など)に関するデータを含む。また、制御情報データは、本実施形態では、後処理液付与手段50が吐出する後処理液の吐出に関するデータ(以下、「後処理に関する制御データ」という。)を更に含む。
図13(b)に示すように、上位装置71は、本実施形態では、CPU(Central Processing Unit)71a、ROM(Read Only Memory)71b、RAM(Random Access Memory)71c、HDD(Hard Disk Drive)71dを備える。また、上位装置71は、外部I/F71e、制御情報用I/F71f及び画像データ用I/F71gを備える。更に、上位装置71は、CPU71a等を夫々接続するバス71hを備える。すなわち、上位装置71は、バス71hを介して、CPU71a等を相互に送受信可能とする構成である。
CPU71aは、上位装置71全体の動作を制御するものである。CPU71aは、ROM71b及び/又はHDD71dに格納(記憶)されている制御プログラム等を用いて、上位装置71の動作を制御する。
ROM71b、RAM71c及びHDD71dは、データ等を記憶するものである。ROM71b及び/又はHDD71dは、CPU71aを制御するための制御プログラムを予め格納されている。RAM71cは、CPU71aのワークメモリとして用いられる。
外部I/F71eは、画像形成装置100外部(ホスト装置等)との通信(送受信)を制御するものである。外部I/F71eは、例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に対応した通信を制御することができる。
制御情報用I/F71fは、制御情報データの通信(送受信)を制御するものである。制御情報用I/F71fは、例えばPCI Express(Peripheral Component Interconnect Bus Express)を用いることができる。
画像データ用I/F71gは、印刷画像データの通信(送受信)を制御するものである。画像データ用I/F71gは、例えばPCI Expressを用いることができる。画像データ用I/F71gは、本実施形態では、印刷画像データの各色に対応した複数のチャネル(後述)を有する。
本実施形態に係る制御手段70の上位装置71は、ホスト装置から送信された印刷ジョブデータを外部I/F71eで受信し、CPU71aを用いて、HDD71dに格納する。また、上位装置71は、CPU71aを用いて、HDD71dから印刷ジョブデータを読み出す。更に、上位装置71は、CPU71aを用いて、読み出した印刷ジョブデータに基づいて各色(イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びブラック(K))のラスタイメージデータを生成し、生成した各色のラスタイメージデータをRAM71cに格納する。ここで、上位装置71(CPU71a)は、RIP処理として、例えばPDL(Page Description Language)をレンダリングして各色のラスタイメージデータを生成し、RAM71cに書き出すことができる。
次に、上位装置71は、RAM71cに書き出された各色のラスタイメージデータを圧縮して符号化し、HDD71dに一旦格納する。
その後、上位装置71(CPU71a)は、プリンタ装置72で印刷動作が開始される際に、HDD71dから符号化された各色のラスタイメージデータを読み出し、復号して各色のラスタイメージデータをRAM71cに夫々書き込む。次いで、上位装置71は、RAM71cから各色のラスタイメージデータを読み出し、各色の印刷画像データとして、画像データ用I/F71gの各チャネルを介して、プリンタ装置72(後述するプリンタエンジン72E)に出力する。ここで、上位装置71は、画像データ用I/F71gの各チャネルとして、図13に示すデータ線70LD(70LD−Y、70LD−C、70LD−M及び70LD−K)を介して、プリンタ装置72に印刷画像データを出力することができる。
また、本実施形態に係る上位装置71は、印刷動作の進行などに応じて、CPU71aを用いて、プリンタ装置72(後述するプリンタコントローラ72C)との間で、制御情報用I/F71f(制御線70LC)を介して、制御情報データの送受信を行う。
更に、本実施形態に係る上位装置71は、プリンタ装置72(図1の後処理液付与手段50)において後処理が開始される際に、CPU71aを用いて、HDD71dから符号化された後処理に関する画像データを読み出す。このとき、上位装置71は、上記のラスタイメージデータと同様に、データ線70LD−P(図14)を介して、プリンタ装置72(プリンタエンジン72E)に出力する。
<プリンタ装置>
本発明の実施形態に係る画像形成装置100の制御手段70のプリンタ装置72は、上位装置71から入力された印刷画像データ及び制御情報データに基づいて、記録媒体に画像を形成する動作を制御する装置である。プリンタ装置72は、本実施形態では、プリンタコントローラ72Cとプリンタエンジン72Eとを有する。
プリンタコントローラ72Cは、後述するプリンタエンジン72Eの動作を制御するものである。プリンタコントローラ72Cは、制御線70LCを介して、上位装置71との間で制御情報データ等の送受信を行う。また、プリンタコントローラ72Cは、制御線72LCを介して、プリンタエンジン72Eと制御情報データ等の送受信を行う。これにより、プリンタコントローラ72Cは、制御情報データに含まれる各種の印刷条件等を印刷制御部72Ccのレジスタなどに書き込み、印刷条件を記憶することができる。また、プリンタコントローラ72Cは、制御情報データに基づいてプリンタエンジン72Eを制御し、印刷ジョブデータ(制御情報データ)に従った印刷を実行することができる。
図14に示すように、プリンタコントローラ72Cは、本実施形態では、CPU72Cp及び印刷制御部72Ccを有する。また、プリンタコントローラ72Cは、CPU72Cpと印刷制御部72Ccとを互いに送受信可能にバス72Cbで接続している。ここで、バス72Cbは、通信I/F(不図示)を介して、制御線70LCに接続されている。
CPU72Cpは、ROM71b(図13)に格納されている制御プログラムを用いて、プリンタ装置72全体の動作を制御する。印刷制御部72Ccは、上位装置71から送信された制御情報データに基づいて、プリンタエンジン72Eとの間でコマンドやステータス情報の送受信を行う。これにより、印刷制御部72Ccは、プリンタエンジン72Eの動作を制御することができる。
プリンタエンジン72Eは、上位装置71から入力された印刷画像データ及びプリンタコントローラ72Cから入力された制御情報データに基づいて、記録媒体に画像を形成する動作を制御する装置である。また、プリンタエンジン72Eは、上位装置71から入力された印刷画像データ(後処理に関する画像データ)及びプリンタコントローラ72Cから入力された制御情報データ(後処理に関する制御データ)に基づいて、後処理する動作を制御する装置である。
図14に示すように、プリンタエンジン72Eは、複数のデータ線70LD(70LD−Y,70LD−C,70LD−M,70LD−K及び70LD−P)が接続されている。プリンタエンジン72Eは、複数のデータ線70LD−C等を介して、上位装置71から印刷画像データを受信する。これにより、プリンタエンジン72Eは、受信した印刷画像データに基づいて、各色の印刷動作及び後処理の動作を実施することができる。
プリンタエンジン72Eは、本実施形態では、複数のデータ管理部72EC,72EM,72EY,72EK及び72EPを有する。また、プリンタエンジン72Eは、データ管理部72EC等から印刷画像データ等が入力される画像出力部72Eiと、記録媒体の搬送を制御する搬送制御部72Ecとを有する。更に、プリンタエンジン72Eは、本実施形態では、データ管理部(後処理制御手段)72EPから後処理に関する画像データが入力される後処理液出力部72Epと、後処理液乾燥手段32(図1)の動作を制御する後処理後乾燥制御部72Epbとを有する。
なお、プリンタエンジン72Eは、前処理液塗布制御部、前処理後乾燥制御部、浸透制御部73及び巻取前乾燥制御部(不図示)等を更に含むか、或いは接続されてもよい。
データ管理部72ECの構成を、図14を用いて説明する。なお、その他のデータ管理部72EM、72EY、72EK及び72EPの構成は、データ管理部72ECの構成と同様のため、説明を省略する。
図15に示すように、データ管理部72ECは、ロジック回路72EClとメモリ部72ECmとを含む。データ管理部72EC(ロジック回路72ECl)は、データ線70LD−Cを介して、上位装置71に接続されている。また、データ管理部72EC(ロジック回路72ECl)は、制御線72LCを介して、プリンタコントローラ72C(印刷制御部72Cc)に接続されている。
ロジック回路72EClは、本実施形態では、プリンタコントローラ72C(印刷制御部72Cc)から出力された制御信号に基づいて、上位装置71から出力された印刷画像データをメモリ72ECmに格納(記憶)する。また、ロジック回路72EClは、プリンタコントローラ72C(印刷制御部72Cc)から出力された制御信号に基づいて、メモリ72ECmからシアン(C)に対応する印刷画像データIc(図14)を読み出し、画像出力部72Eiに出力する。なお、ロジック回路72ECp(データ管理部72EP)の場合は、後処理に関する画像データIp(図14)を、後処理液出力部72Epに出力する。
ここで、メモリ部72ECmは、少なくとも3ページ分の印刷画像データを格納可能な容量とすることができる。3ページ分の印刷画像データとは、例えば上位装置71から転送(受信)中のページに対応する印刷画像データと、画像出力部72Eiに出力中のページに対応する印刷画像データと、次のページに対応する印刷画像データである。
なお、データ管理部72ECは、論理回路などの組み合わせによって構成されるハードウェアのロジック回路を用いてもよい。これにより、データ管理部72ECは、より高速な処理を実現することができる。また、データ管理部72ECは、ロジック回路72EClを用いて、例えばビット列による制御信号に対する論理判定を行い、実行する処理を決定してもよい。
画像出力部72Eiの構成を、図16を用いて説明する。なお、後処理液出力部72Epの構成は、画像出力部72Eiの構成と基本的に同様のため、説明を省略する。
図16に示すように、画像出力部72Eiは、出力制御部72Eicを含む。出力制御部72Eicは、各色に対応する印刷画像データを各色に対応する吐出ヘッド40C、40M、40Y及び40K(図4)に出力する。これにより、出力制御部72Eicは、印刷画像データに基づいて、吐出ヘッド40C等の動作を制御することができる。
具体的には、出力制御部72Eicは、複数の吐出ヘッド40C等を個別に制御する。また、出力制御部72Eicは、入力された印刷画像データ(例えば図16のIc)を用いて、複数の吐出ヘッド40C等を同時に制御してもよい。更に、出力制御部72Eicは、図示しない制御装置から入力される制御信号に基づいて、吐出ヘッド40C等を制御してもよい。出力制御部72Eicは、例えばユーザーの操作入力に基づいて、吐出ヘッド40C等を制御してもよい。
以上により、本実施形態に係るプリンタ装置72は、データ管理部72EC等及び出力制御部72Eicを用いて、上位装置71から出力される印刷画像データを、複数の吐出ヘッド40C等に入力する。このとき、プリンタ装置72は、各色の印刷画像データを互いに独立して制御することができる。また、プリンタ装置72は、印刷画像データの色数(C,M,Y及びK,又は、K色のみなど)又は吐出ヘッド数に応じて、プリンタエンジン72Eの構成を容易に変更することが可能である。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置100(プリンタ装置72)は、必要なデータ管理部72EC等及び吐出ヘッド40C等のみを搭載することにより、装置の小型化及び低コスト化について有利な効果を有する。
本実施形態に係る画像形成装置100(プリンタ装置72)は、例えば、C、M、Y及びKの4色でフルカラー印刷を行う場合には、プリンタエンジン72Eにデータ管理部72EC等を全て設けることができる。これにより、画像形成装置100(プリンタ装置72)は、出力制御部72Eicを用いて、データ管理部72EC等の各出力を夫々吐出ヘッド40C等に接続することができる。
また、画像形成装置100(プリンタ装置72)は、例えばKの1色で印刷を行う場合には、装置コスト優先として、1つのデータ管理部72EK及び吐出ヘッド40Kのみを設けることができる。これにより、画像形成装置100(プリンタ装置72)は、出力制御部72Eicを用いて、データ管理部72EKの出力を吐出ヘッド40Kに接続することができる。
更に、画像形成装置100(プリンタ装置72)は、例えば色Kの1色で印刷を行う場合には、印刷速度優先として、1のデータ管理部72EKと4つの吐出ヘッドとを設けることができる。これにより、画像形成装置100(プリンタ装置72)は、出力制御部72Eicを用いて、データ管理部72EKの出力を4つの吐出ヘッドに夫々接続することができる。この場合、画像形成装置100(プリンタ装置72)は、同一色(K)を複数回、重ねて(重畳して)印刷することができるので、例えば1つの吐出ヘッドで画像を形成する場合と比較して、4倍の高速印刷(画像形成)を実現することができる。
画像形成装置100は、印刷制御部72Ccに接続された浸透制御部73により、記録媒体の種類を用いて、乾燥手段30および浸透手段55を制御することが好ましい。ここで、記録媒体の種類とは、記録媒体の浸透性、厚さ等の特性である。また、記録媒体の種類には、上質紙、再生紙、厚紙等の分類だけではなく、メーカー名、商品名により分類される種類であっても良い。
記録媒体が、一般コート紙の場合は、浸透性が低く乾燥しにくくなることから、乾燥手段30の乾燥強度を増加することが好ましい。さらに乾燥後の残溶剤成分も多くなることから、浸透手段55の強度を強めることが望ましい。
また記録媒体が厚紙の普通紙の場合は、水分吸収量が多く、必要水分蒸発量が小さくなることから、乾燥手段30の強度を弱めることが望ましい。さらに普通紙で浸透性も大きいことから、残溶剤も少なく、浸透手段55の強度を弱めることが望ましい。
ここで、浸透手段55の強弱は、図8に示した実施例1では、浸透手段内の加熱手段による雰囲気温度を制御により、浸透の程度を調整する。図10に示した実施例2では、ダンサーユニット54の位置を上下させることにより、屈曲搬送路58の距離を制御し、浸透時間を制御することで、浸透の程度を調整する。図11に示した実施例3では、真空吸引装置52による吸引力を調整し、記録媒体の非印刷面側への負圧を制御することで、浸透力を調整する。
このような制御によりエネルギー低減によってコストを低減することができ、更に、画像形成装置100は、記録媒体の乾燥不足及び乾燥過多による記録媒体の収縮をより抑制することが可能になる。
なお、画像形成装置100は、前処理液塗布手段20、画像形成速度及び記録媒体の種類の組み合わせ毎に最適な制御をデータベース化し、入力された画像形成速度、記録媒体の種類に応じてデータベースを参照する構成であってもよい。
また、画像形成装置100は、記録媒体の種類について、ユーザーが画像形成装置に入力する構成であってもよい。画像形成装置100は、例えば所定のUI(ユーザーインターフェース)により、記録媒体の種類(厚紙、上質紙等の紙の種類及び/又は紙の商品名等)を入力する構成であってもよい。画像形成装置100は、例えば入力された情報に基づき上位装置71(図16)が制御情報をプリンタ装置72に対して送信し、前処理液塗布制御部、前処理後乾燥制御部、後処理液塗布制御部、後処理後乾燥制御部、浸透制御部73などを制御する構成であってもよい。また、画像形成装置100は、例えばプリンタ装置72に外部入力装置を装着し、そこから外部入力によって記録媒体情報を受信する構成であっても良い。
また、浸透制御部73は、印刷速度に応じて、浸透手段55を制御してもよい。印刷速度が速くなると、搬送速度が速くなるため、同じ条件だと、後処理付与工程と後処理液乾燥工程との間の搬送時間が短くなる。よって、印刷速度によらず、十分な浸透を実施するため、印刷速度が速くなると浸透の程度を強め、印刷速度が遅くなると浸透の程度を弱めるように調整する。
さらに、浸透制御部73は、打滴する液滴体積に応じて、浸透手段55を制御してもよい。打滴する液滴(インク)体積が変化すると、後処理付与手段の制御により、例えば図6に示すように、画像が形成された表面面積よりも小さい面積になるよう後処理液を吐出するように後処理液量が調整される。従って、打滴する液滴が多いほど、後処理液も多くなり、記録媒体表面上の溶剤量(インク+後処理液量)が多くなる。上述の図7のグラフように、記録媒体表面上の溶剤量が多いとブロッキング転写濃度の閾値Aを超えてしまい、巻き取り時にブロッキングが発生するおそれがある。
従って、付与する溶剤量が多い(打滴面積が広い)場合は、図7のブロッキング閾値Aに対応する記録媒体表面上の溶剤量Bまで削減させる溶剤の必要削減量が多いため、浸透手段55でより強く浸透させる必要がある。一方、付与する溶剤量が少ない場合は、図7の表面上の溶剤量Bまで削減させる必要削減量が少ないため、浸透手段55では弱い浸透で足りる。このように液滴の打滴面積(付与量)に応じて、浸透の程度を調整する。ここで、上述のように、加熱手段56による浸透手段55内の雰囲気温度、ダンサーユニット54の位置、真空吸引装置52による吸引力のいずれかを調整することにより、浸透の程度を制御する。
このような制御によりエネルギー低減によってコストを低減することができ、更に、画像形成装置100は、記録媒体の乾燥不足及び乾燥過多による記録媒体の収縮をより抑制することが可能になる。
(11.制御例)
以下、画像形成装置の実施例を用いて、本発明を説明する。本実施例に係る画像形成装置100が、画像を形成する動作を、図17及び図18を用いて説明する。
図17に示すように、本実施例に係る画像形成装置100は、ステップS1101(下記ステップを単にSとする)において、画像形成装置100の外部から入力される印刷ジョブデータ等に基づいて、画像の形成を開始する。また、画像形成装置100は、入力された印刷ジョブデータ等を上位装置71のHDD71d等に記憶する。
開始後、画像形成装置100はS1102に進む。S1102において、また、画像形成装置100の外部から入力される印刷ジョブデータ等に基づいて、多色印刷又は単色印刷等の画像形成情報や、他の入力された速度情報により、印刷速度を設定する。また、制御手段72Cの判断部の第1の判断手段(算出部)73は、記録媒体の種類等を判断し、上位装置71のHDD71d等に判断した記録媒体の種類を記憶する。
その後、画像形成装置100はステップS1103に進む。S1103において、画像形成装置100Eは、制御手段70の上位装置71を用いて、印刷画像データ及び制御情報データ等を生成する。
具体的には、制御手段70の上位装置71は、HDD71d等に記憶されている印刷ジョブデータ等及び記録媒体Mdの種類、印刷画像データ及び制御情報データ等を生成する。
その後、画像形成装置100はステップS1104に進む。S1104において、画像形成装置100は、制御手段72Cにより、前処理液の塗布量及び後処理液の付与量を算出する。
具体的には、制御手段70は、記録媒体Mdの種類等に基づいて、前処理液塗布手段20の前処理液20Lの塗布量を算出する。ここで、制御手段70は、記録媒体Mdの浸透性が高い場合に、前処理液20Lの塗布量を増加することができる。また、制御手段70は、記録媒体Mdの浸透性が低い場合に、前処理液20Lの塗布量を減少することができる。
なお、画像形成装置100Eは、予め記憶してある記録媒体の種類に対応する前処理の液量及び後処理の液量を、UI(ユーザーインターフェース)などを用いて、ユーザー等により選択される構成を用いてもよい。
前処理液の液量及び後処理液の液量を算出後、画像形成装置100はステップS1105に進む。S1105にて、浸透制御部73は、上述のように、浸透手段での記録媒体の種類、印刷速度、又は/及び打滴する液滴の体積に応じて、浸透手段55の浸透の程度を制御する。
S1105において、具体的には、S1102で設定した印刷速度の情報を読み出して、印刷速度が速くなると浸透の程度を強め、印刷速度が遅くなると浸透の程度を弱めるように調整する。この調整により、印刷速度によらず、十分な浸透を実施できる。
また、S1102で設定した記録媒体の種類を読み出して、浸透性が低い記録媒体Mdを用いる場合、浸透の程度を強めることで、乾燥性の悪い記録媒体でも確実に擦過やブロッキングによる印刷品質劣化を防止することができる。一方、浸透性が高い記録媒体Mdを用いる場合、浸透の程度を弱めることで、エネルギーを削減できるためコストが低下し、実施例1の場合は熱による収縮防止の効果を得る。
また、S1103及びS1104で生成・制御した打滴する液滴面積を読み出して、付与する溶剤量が多い(打滴面積が広い)場合は、浸透手段55では浸透の程度を強くする一方、付与する溶剤量が少ない場合は、浸透手段55では浸透の程度を弱くする。このような制御により、打滴面積によらず、十分な浸透を実施できる。なお、S1105において、印刷速度、記録媒体Mdの種類、液滴の特性のいずれか、2以上、或いはすべてを組み合わせて考慮して、浸透を制御してもよい。
このように前処理液の塗布量及び後処理液50Lの付与量、浸透手段の浸透手段を算出した後、画像形成装置100はステップS1106に進む。
S1106において、画像形成装置100は、搬入手段10(図1)を用いて、記録媒体Mdを前処理液塗布手段20等に搬入(搬送)する。なお、画像形成装置100は、S1001の画像形成の開始直後に、ステップS1107を開始してもよい。
搬入開始後、画像形成装置100はステップS1107に進む。S1107において、画像形成装置100は、前処理工程(前処理液塗布工程)として、前処理液塗布手段20(図2)を用いて、記録媒体Mdの表面に前処理液を塗布する前処理工程を実施する。
具体的には、前処理液塗布手段20は、ステップS1104で算出した前処理液20Lの塗布量に基づいて、圧力調整装置25(図2)を用いてニップ圧を制御し、前処理液20Lの塗布量(膜厚など)を制御(変化)する。なお、前処理液塗布手段20は、塗布ローラ23(図2)の回転速度を変更することによって、前処理液20Lの塗布量を制御してもよい。
これにより、画像形成装置100は、前処理液塗布手段20の前処理液20Lの塗布量を制御することによって、その後形成される画像(インク)の滲みを抑制することができる。例えば図18に示すように、画像形成装置100は、前処理液塗布手段20の前処理液20Lの塗布量を増加することにより、画像形成時に吐出されるインクの粒状度(ビーディング)を小さくすることができる。すなわち、画像形成装置100は、前処理液塗布手段20の前処理液20Lの塗布量を増加することによって、画像形成に使用されたインクを所定の粒状度Rs以下とすることができる。
ここで、所定の粒状度Rsとは、記録媒体Md上のインクが滲み難い粒状度とすることができる。また、所定の粒状度Rsは、実験又は数値計算等で予め定められる値とすることができる。
その後、画像形成装置100は、記録媒体Mdを図1の前処理液乾燥手段31に搬送し、ステップS1108に進む。S1108において、画像形成装置100は、前処理液乾燥手段31(図1のヒートローラ31h)を用いて、記録媒体Mdを乾燥する。ここで、前処理液乾燥手段31は、ステップS1104で算出した情報に基づいて乾燥強度を制御する。
その後、画像形成装置100は、記録媒体Mdを画像形成手段40(図1及び図4)に搬送し、ステップS1109に進む。S1109において、画像形成装置100は、画像形成工程として、画像形成手段40を用いて、ステップS1103で生成した印刷画像データに基づいて、記録媒体Mdの表面に画像を形成する。ここで、画像形成手段40は、記録媒体Mdの種類等を更に用いて、画像を形成することができる。また、画像形成手段40は、圧電素子45P(図5の圧力発生手段45)に印加する電圧(駆動電圧)を制御することによって、画像を形成する動作を制御することができる。
その後、画像形成装置100は、記録媒体Mdを後処理液付与手段50(図1)に搬送し、ステップS1110に進む。S1110において、画像形成装置100は、後処理工程(後処理液付与工程)として、後処理液付与手段50を用いて、記録媒体Mdも任意の部分に後処理液50Lを付与する後処理を実施する。
具体的には、後処理液付与手段50は、算出した後処理液50Lの吐出量(ステップS1104)及び後処理に関する画像データ等(ステップS1103)に基づいて、記録媒体Mdの画像が形成された領域の特定の部分に後処理液50Lを堆積(吐出)する。ここで、後処理制御手段72EPは、制御手段70の後処理液出力部72EPを用いて、後処理に関する画像データに基づいて、後処理液付与手段50が記録媒体Mdに吐出する吐出量を制御することができる。
後処理液が付与された後、乾燥前に、画像形成装置100は、ステップS1111へ進み、記録媒体Mdを浸透手段55に搬送する。S1111において、浸透手段55は、浸透処理を行う。ここで、S1105で決定された浸透の程度になるように、加熱手段56による浸透手段55内の雰囲気温度、ダンサーユニット54の位置、真空吸引装置52による吸引力のいずれかを適宜制御されて、浸透を行う。
このS1111は、記録媒体上で、インク中の高沸点溶媒の粘度が低い(水+高沸点溶媒の水溶液)状態であって、インクを記録媒体上に打滴する印刷工程(画像形成工程)と水分蒸発させる水分蒸発工程(乾燥工程)の期間にある。
この期間に、水分蒸発が発生しない温度範囲でインク中の溶媒(水+高沸点溶媒)の粘度を低下させる為の、加熱工程、搬送工程又は非印刷面側からの負圧吸引工程等の印刷面に対し浸透促進工程(浸透工程)を行う。
その後、画像形成装置100は、記録媒体Mdを後処理液乾燥手段32に搬送し、ステップS1112に進む。S1112において、画像形成装置100は、後処理液乾燥手段32である温風ヒータ327と裏面ローラ(ヒートローラ)321〜326を用いて、記録媒体Mdを乾燥する。ここで、後処理液乾燥手段32は、前処理液乾燥手段31と同様にステップS1105で算出した情報に基づいて乾燥強度を制御する。
乾燥後、画像形成装置100は、ステップS1113に進む。S113において、画像形成装置100は、搬出手段60(図1)を用いて、記録媒体Mdを搬出(排出)する。搬出手段60では、後加工として、巻き取りや裁断、用紙の積み重ね等が行われる。
その後、画像形成装置100は、図中のENDに進み、画像を形成する動作を終了する。
また、本フローに係る画像形成装置100は、上記のステップS1101ないしステップS1113で記録媒体に画像を形成若しくは印刷することによって、生産物を生産すること若しくは印刷物を印刷することができる。なお、本実施例に係る画像形成装置100が生産した生産物若しくは印刷した印刷物は、例えば図6に示す断面形状となる。
以上により、本発明の係る画像形成装置100は、浸透手段55により溶剤を記録媒体中へより深く浸透させられるので、浸透不足に起因するインクの滲みを抑止できる。本発明ではどの実施例の浸透手段を用いても記録媒体の画像印字面に極力圧力をかけない浸透方式なので、印字面に圧力がかかることに起因するインク滲みが発生しない。また、接触式の挟み込み状態から離れるときにインクも一緒に剥がれて起きる印刷ムラが発生しない。さらに、浸透手段により記録媒体上に溶剤(インクと後処理液)が残らないので、浸透、乾燥後に記録媒体の巻き取りや、裁断処理後の積層が実施されても、記録媒体同士の転写やブロッキング等の画像の劣化を防ぐことが可能になる。
上述の実施形態、では、画像形成装置は、搬入手段10と、前処理液塗布手段20と、前処理液乾燥手段31、画像形成手段40、後処理液付与手段50、浸透手段55、後処理液乾燥手段32、搬出手段60とを備えていた。しかし、それぞれの手段を別の装置(搬入装置、前処理塗布装置、画像形成装置部、後処理液塗布装置、浸透装置、後処理液乾燥装置(乾燥装置)、搬出装置)として、それらの装置を組み合わせてシステム化してもよい。また、画像形成システムは上位装置も内部に含んで制御装置として有してもよい。
以上により、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。