JP2016020062A - ボールペン - Google Patents
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Description
また芯部材は、インキ筒の先端にペン先チップが接続されて成る部材である。そしてペン先チップの中に筆記用ボールが回転可能に保持されており、インキ収納部内のインキを筆記用ボールに導き、筆記用ボールの回転に応じてインキを紙等に付着させるものである。
ここで光輝感のあるインキは、その固形成分がペン先に詰まり易いので、これを防ぐ様々な工夫がなされている。特許文献1に開示されたボールペンでは、固形成分がペン先に詰まらないようボールハウスの内壁と筆記用ボールとの隙間や、ボールハウスの先端開口と筆記用ボールの隙間が、通常のボールペンよりも広く設計されている。また先端開口と筆記用ボールの間に大きな隙間を確保するために、筆記用ボールの直径が通常のものよりも大きい。より具体的には、特許文献1に開示されたボールペンでは、直径が1.0mm以上のボールが使用されている。
すなわちキャップ式ボールペンの本体部は、本体筒と本体筒に装着されるキャップを有している。キャップ式ボールペンでは、本体筒に芯部材のインキ筒部分が挿されており、ペン先チップが本体筒から常時露出している。キャップ式ボールペンでは、ボールペンを使用しないときには、本体筒にキャップが装着される。
即ち、旧来のボールペンは、油性インキを使用したものが主流であったが、近年では水性インキを使用したものが多い。ここで水性インキは乾燥し易く、ペン先を露出した状態で放置するとペン先チップが乾燥し、文字を書くことができなくなってしまう。
そのため近年のキャップ式ボールペンでは、キャップの最奥部に軟質のゴムや樹脂を配置し、キャップを装着した際にペン先チップの先端をゴム等で封止する構造が採用されている(特許文献2)。
ン」と称する)は公知である。しかしながら、発明者の知る限りにおいて、実用化された光輝性ボールペンは、いずれもキャップ式ボールペンであり、ノック式の光輝性ボールペンは見当たらない。少なくとも、ノック式の光輝性ボールペンであって実用に耐える耐久性のあるものは見当たらない。
即ち、ノック式の光輝性ボールペンには解決すべき技術的障害が多く、実用化には至っていないのが現状である。
特に、特許文献1に開示された光輝性ボールペンは、前記した様に、固形成分がペン先に詰まらないようボールハウスの内壁と筆記用ボールとの隙間や、ボールハウスの先端開口と筆記用ボールの隙間が、通常のボールペンよりも広く設計されている。さらに、この光輝性ボールペンでは、直径が1.0mm以上という大きなボールが使用されている。
そのため通常の水性インキを使用するボールペンに比べて先端開口とボールとの間の隙間が大きい。
加えて光輝性ボールペンは、インキに固形物を含み、ボールの周囲に固形物が付着するから、ペン先チップの先端開口とボールとの間に固形物が挟まり、先端開口とボールとの間の密着性が劣る。そのため、特許文献1に開示された光輝性ボールペンは、構造的にペン先チップ内のインキが蒸発しやすい。
加えて本発明のボールペンでは、ボールの直径が0.6mm未満であり、ボールが小さい。そのためボールと先端開口との接触面積が小さい。さらに本発明では、ボールハウスの断面における前記先端側傾斜面同士の中心角は85度以上であり、先端側傾斜面の開き角度が大きいから、ボールとボールハウスの先端開口との接触が線接触に近い。
そのため本発明のボールペンでは、ボールと先端開口との接触圧力が高い。そのため本発明のボールペンは、先端開口の封止性能が高い。
本発明のボールペンは、これらの相乗効果によって先端開口に高い気密性を確保することができ、ペン先チップ内のインキが乾燥しにくい。
また本発明のボールペンでは、開放溝面積は吐出空隙面積よりも広いので、十分な吐出量を長期に渡って確保することができ、耐久性が高い。
即ちペン先チップにおけるインキの通過経路の中で、流路が絞られる部位は、ボールハウスの入口部分たる溝の部位と、ボールハウスの出口部分たる先端開口である。そしてボールハウスの入口部分たる溝の部位は、ボールが当接するので、実質的にボールハウス側に開いている面積は、前記した開放溝面積である。
同様にボールハウスの出口部分たる先端開口についても、ボールの存在によって封鎖され、実質的に外側に開いている面積は、前記した吐出空隙面積である。
一方、吐出空隙面積と開放溝面積の間には相関関係があり、吐出空隙面積を大きくすると開放溝面積が小さくなり、吐出空隙面積を小さくすると開放溝面積が大きくなる。
従って、理論的には、吐出空隙面積と開放溝面積が同一である場合に、最大の吐出量を確保することができる。
そこで、本発明では、製造直後の開放溝面積が吐出空隙面積よりも広くなる様に設計し、長期に渡って良好な吐出量を確保できる様にした。
なお特に断らない限り、以下の説明は、ボール15の中心軸がボールハウス16の中心線上にあり且つボール15が座面20に当接した姿勢(基本姿勢)を基準とする。また上下方向は、図2の姿勢を基準とする。
インキと樹脂フィルムの詳細については後述する。
ボール15の直径dは0.6mm未満であり、具体的には0.5mm程度である。ボール15の直径は、樹脂フィルムを含むインキを採用した従来のボールペンのボールの直径よりも小さい。
ボール15の素材はSiCである。ただし、ボール15の素材は特に限定されず、ステンレススチール、アルミナ焼結体、ジルコニア、WC、その他公知のものも使用できる。
周壁部17は、ボールハウス16における円筒状の内壁を構成している。即ち周壁部17は、先端開口18と座面20との間にある略円筒状の壁である。
中央孔30のボールハウス16側の開口端の直径aは0.25mm以上であり、具体的には0.3mm程度である。
矢溝24の幅W2(図8(a))は0.2mm以上であり、具体的には0.225mm程度である。
矢溝24の深さV(図7(a))は0.2〜0.3mm程度であり、具体的には0.25mm程度である。
座面20の当接面57はボール15に沿った球面形状であるのに対し、傾斜面58はテーパー面であり、形状が異なる。
ボール15と矢溝24の底との間には、インキが通る空間が確保されている。ここで、ボール15は矢溝24の上面の一部を覆っており、これにより閉塞溝部62と開放溝部63が形成されている。即ち、閉塞溝部62はボール15によって閉塞された溝部分であり、開放溝部63はボールハウス16の内側に開放された溝部分である。
平面視において、閉塞溝部62と開放溝部63との境界は、当接面57の上辺65同士を繋いだ仮想円Cと一致する(図8)。
ボール15のボールハウス16(先端開口18)から露出する部分の高さH(図7(a))は0.145mm以下であり、具体的には0.14mm程度である。
吐出空隙60の幅W1(図7(b))は10マイクロメートル以上であり、比較的広い。そのため、樹脂フィルムを含有するインキであっても難なく通過することができる。
なお筆記時以外は、ボール15はバネ11に押されて先端開口18を強制的に封止しているから、吐出空隙60は存在しない。
一方、ボールペン50を使用して筆記を行う場合は、紙面等にボール15が押し当てられ、バネ11に抗してボール15が移動し、先端開口18をボール15が離れるので吐出空隙60ができる。
以下、座打ち量について説明する。
チップ本体53の中間製品70は、図10(a)の様に先端側が大きく開いており、底面71は、テーパー状の傾斜面となっている。中間製品70の底面71は、全てがテーパー面であり、球面形状の部分は無い。
正面視において、先端側傾斜面55が成す中心角αは85度以上であり、具体的には90度程度である。即ち、先端側傾斜面55の傾斜は比較的緩やかである。
即ちボール15を打つことによって中間製品70の底面71がクレータ状に変形する。その結果、基本姿勢におけるボール15の位置が底面71側に移動し、先端開口18を離れるので吐出空隙60ができる。
また座打ちによって、ボール15の当接面57が形成される。
即ちボールペン50が未使用品(製造直後の状態を維持している状態)であってボール15がバネ11に押圧されて先端開口18を封止している状態からバネ15に抗してボール15を移動させ基本姿勢なるまでの移動量は、0.035mm以上であり、本実施形態では0.04mm程度である。
ここで開放溝面積S1は、吐出空隙面積S2よりも大きい。なお一般に、ボール15の移動可能量(座打ち量)bが大きいほど、開放溝面積S1が小さくなり、吐出空隙面積S2が大きくなる。
吐出空隙面積S2は0.015平方ミリメートル以上であり、比較的大きい。そのため、樹脂フィルムを含有するインキであっても、十分な吐出量を確保することができる。
また本実施形態では開放溝面積S1が吐出空隙面積S2よりも大きいので、インキの十分な吐出量を長期に渡って確保することができ、耐久性が高い。
先端側傾斜面55が成す中心角αは85度以上であり、より好ましくは87度以上、さらに好ましくは90度以上である。
吐出空隙60の幅W1は10マイクロメートル以上であり、より好ましくは13マイクロメートル以上である。
吐出空隙面積S2は0.015平方ミリメートル以上であり、より好ましくは0.2平方ミリメートル以上、さらに好ましくは0.25平方ミリメートル以上である。
矢溝24の幅W2は0.2mm以上であり、より好ましくは0.22mm以上、さらに好ましくは0.25mm以上、特に好ましくは0.3mm以上である。
ボール15のボールハウス16から露出する部分の高さHは0.145mm以下であり、より好ましくは0.143mm以下、さらに好ましくは0.14mm以下である。
ボールの沈み量(座打ち量)bは0.035mm以上であり、より好ましくは0.04mm以上、さらに好ましくは0.045mm以上、特に好ましくは0.05mm以上である。
上記した実施形態のペン先チップ2において、中央孔の直径aと矢溝24の幅W2の組み合わせ「a,W2」が、「0.35mm,0.3mm」(組み合わせA)、「0.35mm,0.225mm」(組み合わせB)、「0.3mm,0.225mm」(組み合わせC)の各 場合における、座打ち量bと開放溝面積S1の関係を計算し、グラフ化した。また、座打ち量bと吐出空隙面積S2との関係を計算し、グラフ化した。結果を図11に示す。図11のグラフにおいて、横軸は座打ち量b(マイクロメートル)、縦軸は開放溝面積S1(mm2 平方ミリメートル)又は吐出空隙面積S2(mm2 平方ミリメートル)である。
図11に示すように、座打ち量bが増加するにつれて、開放溝面積S1は減少し、吐出空隙面積S2は増加する。また各組み合わせにおいて、開放溝面積S1と吐出空隙面積S2とが一致する座打ち量bが存在する(交点部分)。
しかし本発明では、あえて開放溝面積S1が吐出空隙面積S2よりも大きくなるよう設定している(S1>S2)。
中央孔30の開口端の直径aと矢溝24の幅W2について、(1)で設定した3つの組み合わせA〜Cと、「0.25mm,0.225mm」(組み合わせD)の計4種のペン先チップ2を作製し、ボールペンとしての性能を評価した。座打ち量bは0.04mmとした。
その結果、いずれの組み合わせでも、インキの吐出性能、書き味ともに問題はなかった。なお「0.3mm,0.225mm」(組み合わせC)の性能が特に優れていた。
上記4種(組み合わせA〜D)のボールペンについて、筆記後、横置き状態で、50℃で1ヶ月間放置した。さらに、室温で1年間放置した。放置後のボールペンを用いて筆記したところ、インキの吐出性能、書き味ともに問題はなかった。このことから、本実施例で作製したボールペンは、室温で少なくとも24ヶ月程度はインキが乾燥することなく高い気密性が保たれており、性能を維持していることが示された。
2 ペン先チップ
4 インキ収納部
11 バネ
15 ボール
16 ボールハウス
17 周壁部
18 先端開口
20 座面
24 矢溝
30 中央孔(インキ導入孔)
50 ボールペン
51 本体部
53 チップ本体
55 先端側傾斜面
60 吐出空隙
62 閉塞溝部
63 開放溝部
Claims (3)
- インキが収納されるインキ収納部と、インキ収納部に接続されたペン先チップとを有し、前記インキ収納部と前記ペン先チップとで芯部材が構成されており、前記ペン先チップは、チップ本体と筆記用のボールとバネとを有し、チップ本体はボールを収容するボールハウスと、インキ導通孔とを備え、ボールハウスは先端開口と、前記先端開口に対向する位置にあってボールが当接する座面と、前記先端開口と座面との間にあってボールの大部分の周囲を覆う略円筒形の周壁部及び前記周壁部と開口との間にある先端側傾斜面とを有し、
インキ導通孔は先端側がボールハウスの座面に開口してボールハウスの内外を連通するものであり、
前記ボールはボールハウス内にあってその一部が先端開口から露出し、前記バネはインキ導通孔内にあって筆記用のボールを先端開口側に向かって押圧し、
インキは光沢を有する樹脂フィルムを含み、
前記ボールは直径が0.6mm未満であり、
ボールハウスの断面における前記先端側傾斜面同士の中心角は85度以上であり、
前記座面には複数の溝が設けられ、
ボールの中心軸がボールハウスの中心線上にあり且つボールが前記座面に当接した姿勢を基本姿勢としたとき、前記溝はボールによって閉塞される閉塞溝部とボールハウスの内側に開放される開放溝部があり、
前記基本姿勢においては、前記先端開口とボールとの間に環状の吐出空隙があり、当該吐出空隙の幅は10マイクロメートル以上であり、
前記開放溝部の先端開口側から見た正投影面積を開放溝面積とし、吐出空隙の開口面積を吐出空隙面積としたとき、吐出空隙面積は0.015平方ミリメートル以上であり、開放溝面積は吐出空隙面積よりも広いことを特徴とするボールペン。 - インキ導通孔のボールハウス側の開口端の直径が、0.25mm以上であり、前記溝の幅が0.2mm以上であり、基本姿勢においてボールのボールハウスから露出する部分の高さが0.145mm以下であり、
ボールペンが未使用品であってボールが前記バネに押圧されて先端開口を封止している状態からバネに抗してボールを移動させ基本姿勢とする際におけるボールの移動量が0.035mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のボールペン。 - 前記芯部材を収納する本体部と、出没機構とを有し、出没機構を操作することによって芯部材の先端が本体部から出没することを特徴とする請求項1又は2に記載のボールペン。
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