JP2016017233A - 手袋の製造方法 - Google Patents

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大久保 博正
Hiromasa Okubo
博正 大久保
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Abstract

【課題】材質や構造、サイズ等が限定されず手袋用として汎用の種々の可撓性高分子、および基材手袋がいずれも使用可能で、しかも可撓性高分子からなる被膜と基材手袋との接着性に優れる上、基材手袋が硬くなるのを防いで可撓性に優れた手袋を製造できる製造方法を提供する。【解決手段】手型に繊維製の基材手袋を被せて水溶性高分子の水溶液に浸漬し、乾燥させて基材手袋中に水溶性高分子を含ませた状態で、浸漬成形によって基材手袋を覆う被膜を形成したのち脱型し、さらに水に浸漬して基材手袋中の水溶性高分子を溶出除去する。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維製の基材手袋をゴムや樹脂等の可撓性高分子の被膜で被覆した手袋の製造方法に関するものである。
天然ゴム等のゴムのラテックス、塩化ビニル樹脂等の樹脂のペーストゾル、あるいはウレタン系樹脂等の樹脂のエマルションなど(以下「浸漬液」と総称する場合がある。)を浸漬成形してなる手袋は安価であることから、一般家庭や工場、医療現場、あるいはスポーツといった様々な用途において幅広く用いられている。
かかる手袋の一種として、着脱のし易さを向上したり着用感を改善したり、あるいは強度を高めて破れにくくしたりするために繊維製の基材手袋を上記可撓性高分子の被膜で被覆した積層構造を有する、いわゆるサポートタイプの手袋が知られている。
サポートタイプの手袋は通常、手袋の立体形状に対応した手型に繊維製の基材手袋を被せた状態で、当該手型を浸漬液に浸漬したのち引き上げて乾燥させるとともにゴムや熱硬化性樹脂を架橋させたのち脱型することで製造される。
ところが上記従来の製造方法では浸漬液が基材手袋を構成する繊維中や繊維間(以下「基材手袋中」と総称する場合がある。)に深く浸透してしまい、その後の乾燥等によって当該基材手袋中で固形化した可撓性高分子によって、本来は柔軟であるはずの基材手袋が硬くなって手袋の可撓性が大きく低下するという問題があった。
そこで手型に被せた基材手袋にまず水を含浸させた状態で浸漬液に浸漬することにより、当該浸漬液が基材手袋中に深く浸透するのを防止することが考えられた。
しかしこの方法では浸漬液に使用する溶剤が水、または水と相溶性を有する有機溶剤に限定され、そのため使用できる可撓性高分子も限定されてしまうという問題があった。
また基材手袋も吸水性の大きい木綿等の天然繊維製の手袋に限定され、強度に優れた合成繊維製の基材手袋には、実質上この方法を適用できないという問題もあった。
さらに浸漬液に有機溶剤を使用する場合は水と有機溶剤との混合物が発生し、その廃液の処理が問題となる場合があった。
特許文献1では、まず手型を浸漬液に浸漬して引き上げたのち乾燥させて被膜を形成し、ついでその上から基材手袋を被せた状態で、先に形成した被膜を溶解しうる溶剤で処理して、被膜を基材手袋と接着させたのち、脱型する方法が提案されている。
この方法によれば、基材手袋は被膜のもとになる浸漬液とは一切接触しないため、当該基材手袋が浸漬液中の可撓性高分子によって硬くなるのを防いで、手袋の可撓性が低下するのを防止できる。
特許第3782268号公報
ところが特許文献1に記載の方法では、例えば基材手袋が小さいと、手型の表面に先に形成した被膜と擦れてすべりにくく、手型に被せにくい上、被せる際に被膜が破れたり傷ついたり、あるいは変形したりしわになったりしやすくなるおそれがある。
またこれらの問題を生じないように慎重に、手型に基材手袋を被せようとすると時間がかかって手袋の生産性が低下するおそれもある。
また逆に基材手袋が大きいと緩くて被膜との密着性が低くなるため、被膜を基材手袋と十分に接着できないおそれがある。
そのため基材手袋は、実質的に伸縮性のある網目密度の低いものに限定されてしまうという問題がある。
また上記基材手袋は、被膜と基材手袋とを十分に接着させるために、被膜を形成する可撓性高分子との接着性に優れた材質のものに限定されてしまうという問題もある。
しかもかかる方法は、架橋後に溶剤への溶解性が大きく低下するゴムや熱硬化性樹脂からなる被膜には適用できないため、被膜を形成する可撓性高分子の材質が限定されてしまうという問題もある。
本発明の目的は、材質や構造、サイズ等が限定されず手袋用として汎用の種々の可撓性高分子、および基材手袋がいずれも使用可能で、しかも可撓性高分子からなる被膜と基材手袋との接着性に優れる上、基材手袋が硬くなるのを防いで可撓性に優れた手袋を製造できる製造方法を提供することにある。
本発明は、
手袋の立体形状に対応した手型に繊維製の基材手袋を被せた状態で、水溶性高分子の水溶液に浸漬して前記基材手袋中に前記水溶液を含浸させ、引き上げて乾燥させることで前記基材手袋中に前記水溶性高分子を含ませる工程、
前記手型を可撓性高分子を含む浸漬液に浸漬し、引き上げたのち乾燥させて前記基材手袋を覆う被膜を形成する工程、および
前記被膜を形成した前記基材手袋を脱型したのち水に浸漬して、前記基材手袋中に含ませた前記水溶性高分子を溶出除去する工程、
を含む手袋の製造方法である。
本発明によれば、基材手袋中に先に水溶性高分子を含ませて目止めとして機能させた状態で、浸漬成形によって上記基材手袋を覆う被膜を形成しているため、かかる被膜を形成する可撓性高分子が基材手袋中に深く浸透して当該基材手袋が硬くなるのを防止できる。
そのため脱型後に基材手袋中から水溶性高分子を溶出除去することにより、可撓性に優れた手袋を製造することが可能となる。
しかも本発明によれば、従来同様に先に手型に被せた基材手袋にあとから浸漬成形によって可撓性高分子の被膜を形成しているため、当該基材手袋の網目に浸漬液が浸入した状態で可撓性高分子が固形化して生じるいわゆるアンカー効果によって、可撓性高分子や基材手袋の材質、あるいはサイズに関係なく高い接着性でもって被膜と基材手袋とを一体化することができる。
しかも基材手袋のサイズや構造等に関係なく作業性良く、当該基材手袋を手型に被せることができ、手袋の生産性も向上する。
本発明の手袋の製造方法は、
手袋の立体形状に対応した手型に繊維製の基材手袋を被せた状態で、水溶性高分子の水溶液に浸漬して前記基材手袋中に前記水溶液を含浸させ、引き上げて乾燥させることで前記基材手袋中に前記水溶性高分子を含ませる工程(第1工程)、
前記手型を可撓性高分子を含む浸漬液に浸漬し、引き上げたのち乾燥させて前記基材手袋を覆う被膜を形成する工程(第2工程)、および
前記被膜を形成した前記基材手袋を脱型したのち水に浸漬して、前記基材手袋中に含ませた前記水溶性高分子を溶出除去する工程(第3工程)、
を含んでいる。
〈第1工程〉
第1工程では、まず繊維製の基材手袋を用意する。
(基材手袋)
先に説明した水を含浸させる製造方法では、吸水性のない合成繊維製の基材手袋は事実上使用できなかったが、本発明では、かかる吸水性のない合成繊維製の基材手袋等も使用可能である。もちろん、吸水性を有する木綿等の天然繊維製の基材手袋も使用できる。
すなわち基材手袋としては、木綿等の天然繊維、ナイロン、弾性ポリウレタン、ポリエステル、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン等の合成繊維、これらの混紡繊維等の1種または2種以上によって編製され、サポートタイプの手袋の製造に使用される種々の基材手袋が、いずれも使用可能である。
特に手型に対するフィット性を向上することを考慮すると、高い伸縮性を有するように軍手編みした手袋が好ましい。
好ましい基材手袋の一例としては、巻縮処理したウーリーナイロン繊維と弾性ポリウレタン繊維との混紡繊維から軍手編みして形成される伸縮性に優れた基材手袋が挙げられるが、かかる基材手袋に限定されるものではない。
(手型)
次いで、上記基材手袋を手袋の立体形状に形成した手型に被せる。手型は、従来同様にセラミック、アルミニウム等の金属、木、各種プラスチック等によって形成できる。特に浸漬液との親和性に優れ、しかも形成した膜の離型性にも優れたセラミックによって形成するのが好ましい。
次に基材手袋を被せた手型を、まず水溶性高分子の水溶液に浸漬する。
(水溶性高分子の水溶液)
水溶性高分子としては、基材手袋に含浸させることができる種々の水溶性高分子がいずれも使用可能である。
かかる水溶性高分子としては、例えばデキストリン、コーンスターチ、およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも天然由来で環境への負荷の小さいデキストリンやコーンスターチが好ましい。
かかる水溶性高分子を水に溶解して水溶液を調製する。
また水溶液には、水溶性の充填剤を配合してもよい。水溶性の充填剤を配合すると、後述する第3工程において、かかる充填剤が水溶性高分子の溶出を補助するため、当該水溶性高分子を短時間で効率よく溶出除去できる。また手袋の可撓性をさらに向上できる。
水溶性の充填剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の1種または2種以上が挙げられる。特に環境への負荷の小さい塩化ナトリウムが好ましい。
特に水溶性高分子としてのデキストリンを塩化ナトリウムと組み合わせるのが、溶出を促進する効果の点や手袋の可撓性を向上する効果の点、あるいは環境への負荷を小さくする上で好ましい。
水溶液の固形分濃度、すなわち水溶性高分子のみを含む場合は当該水溶性高分子の濃度、水溶性高分子と水溶性の塩とを含む場合は両者の合計の濃度は20質量%以上であるのが好ましく、70質量%以下であるのが好ましい。
固形分濃度がこの範囲未満では、1回の浸漬で基材手袋中に含ませることができる固形分量が不足して、当該固形分中の水溶性高分子によって基材手袋を十分に目止めできず、基材手袋中に浸漬液が浸透して手袋の可撓性が低下してしまうのを十分に防止できないおそれがある。
特に浸漬液が水を含む場合は、基材手袋中に少量しか存在しない水溶性高分子が浸漬液中に溶出してしまい、目止めとして全く機能しえない場合も生じうる。
また、十分な量の水溶性高分子を基材手袋中に含ませるために浸漬と乾燥を多数回に亘って繰り返した場合には手袋の生産性が低下するおそれもある。
一方、固形分濃度が上記の範囲を超える場合には水溶液の粘度が上昇して、基材手袋中にスムースに含浸できないおそれがある。
水溶性高分子と充填剤とを併用する場合、両者の総量中に占める水溶性高分子の割合は50質量%以上であるのが好ましく、90質量%以下であるのが好ましい。
水溶性高分子の割合がこの範囲未満では、1回の浸漬で基材手袋中に含ませることができる水溶性高分子量が不足して、当該水溶性高分子によって基材手袋を十分に目止めできず、基材手袋中に浸漬液が浸透して手袋の可撓性が低下してしまうのを十分に防止できないおそれがある。
一方、水溶性高分子の割合が上記の範囲を超える場合には、相対的に水溶性の充填剤の割合が少なくなるため、かかる充填剤を配合することによる、水溶性高分子の溶出を促進する効果や手袋の可撓性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
基材手袋を被せた手型を水溶性高分子の水溶液に浸漬する際の条件は任意に設定できる。
例えば浸漬の時間は、基材手袋中に水溶液を十分に含浸でき、しかも手袋の生産性が大幅に低下しない範囲で任意に設定すればよい。
また水溶液の液温は、当該水溶液の固形分濃度の上昇や、加熱による消費エネルギーの増加等を抑制することを考慮すると、特に加熱をせず作業環境温度付近としておくのが好ましい。
さらに浸漬は、1回または2回以上実施できる。
乾燥の条件も任意に設定できる。自然乾燥でもよいし、乾燥時間を短縮するためには例えばオーブン中で40〜80℃程度に加熱して乾燥させてもよい。また同程度の温度範囲で温風乾燥させてもよい。
〈第2工程〉
第2工程では、まず上記手型を可撓性高分子を含む浸漬液に浸漬し、引き上げて当該手型、および手型に被せた基材手袋の表面に浸漬液を付着させる。
なお浸漬に先立って、手型および基材手袋の表面は、従来同様に凝固剤(主に硝酸カルシウム水溶液)で処理をしておくのが好ましい。
浸漬液への浸漬の条件は任意に設定できる。
例えば浸漬の時間は、所定の厚みを有する被膜を形成するために必要十分な範囲で任意に設定すればよい。
また浸漬液の液温は、当該浸漬液の固形分濃度の上昇や、加熱による消費エネルギーの増加等を抑制することを考慮すると、特に加熱をせず作業環境温度付近としておくのが好ましい。
浸漬液への浸漬は、形成する被膜の厚みに応じて1回または2回以上実施できる。
浸漬液は、従来同様にゴムのラテックス、樹脂のペーストゾル、または樹脂のエマルションに各種の添加剤を配合して調製される。
(ゴム系の浸漬液)
ラテックスのもとになるゴムとしては天然ゴム、および合成ゴムの中からラテックス化が可能な種々のゴムがいずれも使用可能であり、かかるゴムとしては、例えば天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の1種または2種以上が挙げられる。
上記ゴムのラテックスを含む浸漬液には、さらに架橋剤、促進剤、熱安定剤、促進助剤、老化防止剤、充填剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を配合してもよい。
このうち架橋剤(加硫剤)としては硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。特に硫黄が好ましい。架橋剤の配合割合は、ラテックス中のゴム分(固形分)100質量部あたり0.5質量部以上、3質量部以下であるのが好ましい。
また促進剤としては、例えばPX(N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛)、PZ(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)、BZ(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)、ZTC(ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛)、MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)、TT(テトラメチルチウラムジスルフィド)等の1種または2種以上が挙げられる。
促進剤の配合割合は、ラテックス中のゴム分100質量部あたり0.5質量部以上、3質量部以下であるのが好ましい。
促進助剤としては、例えば亜鉛華(酸化亜鉛)、および/またはステアリン酸等が挙げられる。促進助剤の配合割合は、ラテックス中のゴム分100質量部あたり0.5質量部以上、3質量部以下であるのが好ましい。
老化防止剤としては、一般に非汚染性のフェノール類が好適に用いられるが、アミン類を使用してもよい。老化防止剤の配合割合は、ラテックス中のゴム分100質量部あたり0.5質量部以上、3質量部以下であるのが好ましい。
充填剤としては、例えばカオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウム、酸化チタン等の1種または2種以上が挙げられる。充填剤の配合割合は、ラテックス中のゴム分100質量部あたり1質量部以上、10質量部以下であるのが好ましい。
界面活性剤は、上記各種の添加剤を浸漬液中に良好に分散させるために配合されるものであり、当該界面活性剤としては、例えば陰イオン系界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられる。界面活性剤の配合割合は、ラテックス中のゴム分100質量部あたり0.3質量部以上、1質量部以下であるのが好ましい。
着色剤としては各種の顔料が挙げられる。顔料の配合割合は、手袋の色味に合わせて任意に設定できる。
(樹脂系の浸漬液I)
ペーストゾルのもとになる樹脂としては塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
ペーストゾルを含む浸漬液としては、塩化ビニル樹脂に、希釈剤、可塑剤、熱安定剤、充填剤、着色剤等を配合したものが挙げられる。
これらの成分としては、浸漬成形に用いるペーストゾル系の浸漬液で使用可能な各種の成分が、従来同様の割合で使用可能である。
(樹脂系の浸漬液II)
エマルションのもとになる樹脂としては、ウレタン系樹脂、硬化性アクリル系樹脂等の、エマルション化が可能な熱硬化性樹脂の1種または2種以上が挙げられる。
エマルションを含む浸漬液には、さらに熱安定剤、老化防止剤、充填剤、界面活性剤、増粘剤、発泡剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を配合してもよい。
また浸漬液には、ウレタン系樹脂等を硬化反応させるための架橋剤、硬化剤等を適宜の割合で配合してもよい。
これらの成分としては、浸漬成形に用いるエマルション系の浸漬液で使用可能な各種の成分が、従来同様の割合で使用可能である。
本発明では、先の第1工程で基材手袋中に水溶性高分子を目止めとして含ませているため、浸漬液は、先に説明したように当該基材手袋の網目には浸入して、乾燥等により、アンカー効果によって基材手袋と強固に接着された被膜を形成するものの、基材手袋中には浸透せず当該基材手袋を硬くして手袋の可撓性を低下させることはない。
次いで浸漬液がゴムのラテックス、または熱硬化性樹のエマルションである場合は、引き上げた手型ごと加熱して浸漬液を乾燥させるのと同時にゴムの場合は加硫(架橋)させ、熱硬化性樹脂の場合は硬化反応(架橋)させるか、もしくは一旦乾燥させた後に手型ごと加熱してゴムや熱硬化性樹脂を架橋させて被膜を形成する。
また浸漬液がペーストゾルである場合は、手型ごと加熱してゲル化させて被膜を形成する。
加熱の温度や時間はゴムまたは樹脂の種類等に応じて任意に設定できる。
〈第3工程〉
第3工程では、上記第2工程において基材手袋と被膜とを一体化させた積層体を手型から脱型したのち水に浸漬して、基材手袋中に含ませた水溶性高分子や水溶性の充填剤を溶出除去する。
水としては、上記水溶性高分子や充填剤を短時間で効率よく溶出させるために、例えば50℃以上、80℃以下程度の温水を使用するのが好ましい。
浸漬の時間は、水溶性高分子や充填剤を基材手袋中から確実に溶出でき、しかも手袋の生産性が大幅に低下しない範囲で任意に設定すればよいが、具体的には例えば40分間以上であるのが好ましく80分間以下であるのが好ましい。
上記溶出後に乾燥させると、可撓性高分子からなる被膜と基材手袋との接着性に優れる上、基材手袋が硬くなるのを防いで可撓性に優れた手袋が得られる。
なお被膜は単層でも2層以上の積層構造であってもよい。また被膜は、例えば浸漬液を起泡させたり発泡剤を配合したりして発泡構造としてもよい。例えば発泡させた被膜と非発泡の被膜の積層構造とすることもできる。
《実施例1》
〈第1工程〉
基材手袋としては、15ゲージ編み機〔(株)島精機製作所製〕を用いて綿で編製したものを用いた。
また水溶性高分子としてのデキストリン〔東海デキストリン(株)製のNo.103デキストリン〕50質量部を水50質量部に溶解して固形分濃度50質量%の水溶液を調製した。
次いで上記基材手袋を陶器製の手型〔(株)シンコー製〕に被せ、液温を40℃に設定した上記水溶液に20秒間浸漬したのち引き上げて、60℃で10分間乾燥させて基材手袋中にデキストリンを含ませた。
〈第2工程〉
(浸漬液の調製)
天然ゴムラテックス〔アンモニア分0.7質量%のハイアンモニアラテックス〕に、下記表1に示す各成分を配合し、2日間熟成させて浸漬液を調製した。
表中の各成分の質量部は、天然ゴムラテックス中の天然ゴム分100質量部あたりの質量部とした。
Figure 2016017233
なお表中のZTCはジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、CPLは大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)PBK〔p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物〕を示す。また界面活性剤としてはCrusader Chemical社製のFreesil Nを用いた。
(浸漬成形)
先の手型をあらかじめ60℃に予熱した状態で、凝固剤としての20%硝酸カルシウム水溶液に10秒間浸漬し、引き上げたのち60℃で1分間加熱して乾燥させた。
次いでこの手型を上記浸漬液に15秒間浸漬したのち引き上げて、120℃で30分間加熱して基材手袋を覆う被膜を形成した。
〈第3工程〉
上記第2工程において基材手袋と被膜とを一体化させた積層体を手型から脱型したのち70℃の温水に60分間浸漬して基材手袋中に含ませたデキストリンを溶出除去させたのち、100℃で10分間乾燥させて手袋を製造した。
《実施例2》
水溶性高分子としてのコーンスターチ〔日本コーンスターチ(株)製のNON−GMO〕50質量部を水50質量部に溶解して固形分濃度50質量%の水溶液を調製し、第1工程でかかる水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にして手袋を製造した。
《実施例3》
水溶性高分子としてのポリビニルアルコール〔電気化学工業(株)製のデンカポバール(登録商標)B−05〕50質量部を水50質量部に溶解して固形分濃度50質量%の水溶液を調製し、第1工程でかかる水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にして手袋を製造した。
《実施例4》
水溶性高分子としての前出のデキストリン30質量部、および水溶性の充填剤としての塩化ナトリウム〔赤穂化成(株)製のオシオミクロン〕30質量部を水40質量部に溶解して固形分濃度60質量%の水溶液を調製し、第1工程でかかる水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にして手袋を製造した。
《実施例5》
水溶性高分子としての前出のデキストリン60質量部、および水溶性の充填剤としての前出の塩化ナトリウム10質量部を水30質量部に溶解して固形分濃度70質量%の水溶液を調製し、第1工程でかかる水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にして手袋を製造した。
《比較例1》
従来の製造方法を再現するため第1工程、第3工程を省略して第2工程のみ実施して、基材手袋と被膜とを一体化させた積層体を手型から脱型したこと以外は実施例1と同様にして手袋を製造した。
《比較例2》
特許文献1に記載の製造方法を再現するため、まず手型を凝固剤に浸漬したのち乾燥させ、次いで実施例1で使用したのと同じ浸漬液に浸漬したのち加熱して被膜を形成した。
次いでこの被膜上に基材手袋を被せようとしたが、被膜と擦れて滑りにくいため被せるのが難しく、被膜が変形したりしわになったりしたため手袋の製造を断念した。
《可撓性評価》
実施例1〜5、比較例1で製造した手袋を装着した状態で40℃の温水によって100mlビーカーを洗浄する作業を1分間実施した際の、当該手袋の柔軟性、および作業性の良否を、それぞれ10名の被験者に下記の3ランクで評価してもらった。そして選んだ被験者の数が最も多かったランクをその実施例、比較例の手袋の柔軟性、作業性の評価として、手袋の可撓性の良否を判断した。
(柔軟性)
A:非常に軟らかいと感じた。
B:比較的軟らかいと感じた。
C:軟らかいとは感じなかった。
(作業性)
A:非常に作業しやすく、1分間で10個以上のビーカーを洗浄することができた。
B:比較的作用がしやすく、1分間で5個以上、9個以下のビーカーを洗浄することができた。
C:作業し難く、1分間で4個以下のビーカーしか洗浄できなかった。
結果を表2に示す。
Figure 2016017233
表2の実施例1〜5、比較例1の結果より、基材手袋中に先に水溶性高分子を含ませて目止めとして機能させた状態で、浸漬成形によって基材手袋を覆う被膜を形成したのち、基材手袋中から水溶性高分子を溶出除去することにより、従来に比べて可撓性に優れた手袋を製造できることが判った。
また実施例1〜5の結果より、基材手袋に含浸させる水溶性高分子の水溶液に、さらに水溶性の充填剤を配合すると手袋の可撓性をより一層向上できること、両者の組み合わせとしてはデキストリンと塩化ナトリウムが好ましいことが判った。

Claims (5)

  1. 手袋の立体形状に対応した手型に繊維製の基材手袋を被せた状態で、水溶性高分子の水溶液に浸漬して前記基材手袋中に前記水溶液を含浸させ、引き上げて乾燥させることで前記基材手袋中に前記水溶性高分子を含ませる工程、
    前記手型を可撓性高分子を含む浸漬液に浸漬し、引き上げたのち乾燥させて前記基材手袋を覆う被膜を形成する工程、および
    前記被膜を形成した前記基材手袋を脱型したのち水に浸漬して、前記基材手袋中に含ませた前記水溶性高分子を溶出除去する工程、
    を含む手袋の製造方法。
  2. 前記水溶性高分子はデキストリン、コーンスターチ、およびポリビニルアルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の手袋の製造方法。
  3. 前記水溶性高分子の水溶液は、さらに塩化ナトリウムを含んでいる請求項1または2に記載の手袋の製造方法。
  4. 前記水溶液は、前記水溶性高分子としてのデキストリンと塩化ナトリウムの水溶液である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の手袋の製造方法。
  5. 前記水溶液は固形分濃度が20質量%以上、70質量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の手袋の製造方法。
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