以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<粘着シート(表面保護フィルム)の全体構造>
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、一般に、粘着シート、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称される形態のものであり、特に光学部品(例えば、偏光板、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部品)の加工時や搬送時に光学部品の表面を保護する表面保護フィルムとして好適である。前記粘着シートにおける粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
ここに開示される粘着シート(表面保護フィルム)の典型的な構成例としては、支持フィルム(基材)の片面又は両面に粘着剤層を有するものや、支持フィルムの片面に設けられた帯電防止層と、支持フィルムの帯電防止層とは反対側の表面に設けられた粘着剤層を備えるものが挙げられる。粘着シートは、この粘着剤層を被着体(保護対象、例えば偏光板等の光学部品の表面)に貼り付けて使用される。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の粘着シートは、粘着剤層の表面(被着体への貼付面)が、少なくとも粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナーによって保護された形態であってもよい。あるいは、粘着シートがロール状に巻回されることにより、粘着剤層が支持フィルムの背面(帯電防止層の表面)に当接してその表面が保護された形態であってもよい。
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、融点150℃以下のオニウム塩、及び、ベースポリマーとして、ガラス転移温度が0℃以下のポリマーを含有してなり、前記オニウム塩が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び、含リンオニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記オニウム塩が、炭素数8以上のアルキル基を少なくとも1つ有するオニウムカチオンを含有することを特徴とする。前記粘着剤組成物としては、前記融点150℃以下のオニウム塩、及び、ベースポリマーとして、前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマーを含有し、粘着性を発現できるものであれば、特に制限なく使用できる。例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することもできる。中でも、アクリル系粘着剤は、特に、粘着特性の制御が行い易い点で、好ましい態様である。
本発明において、前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましく、ヒドロキシル基、及び、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーであることが、より好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマーを使用することにより、粘着特性に優れた粘着剤設計が可能となり、また、前記(メタ)アクリル系ポリマーを使用することにより、粘着特性の制御が容易に可能となり、好ましい態様となる。また、前記ヒドロキシル基、及び、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを使用することにより、前記ヒドロキシル基が、架橋の制御を容易に行うことができ、前記カルボキシル基が、せん断力を向上させたり、経時での粘着力の上昇を防止できるため、好ましい態様となる。特に、前記ヒドロキシル基、及び、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いることで、粘着剤(層)のせん断力が向上することにより、前記粘着剤を被着体に貼り合わせることにより、被着体に基づくカールを抑制でき、粘着剤と被着体との間(界面)における滑りやズレの発生を抑制でき、好ましい。
なお、本発明において、ベースポリマーとして、前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマーを含有するが、前記ベースポリマー100質量%中、前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマーが100質量%であることが、より好ましい態様である。また、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいい、また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着剤組成物の架橋などを制御しやすくなり、ひいては流動による濡れ性の改善と、粘着剤(層)の凝集力やせん断力のバランスを制御しやすくなる。さらに、粘着剤に帯電防止剤を添加する場合、一般に架橋部位として作用しうるカルボキシル基やスルホネート基などとは異なり、ヒドロキシル基は、帯電防止剤である融点150℃以下のオニウム塩等と適度な相互作用を有するため、帯電防止性の面においても好適に作用することができる。
本発明において、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、0.5〜15質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.6〜7質量%、更に好ましくは0.7〜4.99質量%、最も好ましくは1.0〜3.9質量%である。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と粘着剤(層)の凝集力やせん断力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。また、より少ない前記オニウム塩の配合量で良好な帯電特性を発現させるためには、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーの配合量が少ない方が有効である。
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。なお、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、単独で使用してもよく、また2種以上をモノマー成分として使用してもよい。
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着シート(粘着剤層)の経時での粘着力の上昇を抑制することができ、再剥離性、粘着力上昇防止性、及び作業性に優れる、また、粘着剤層の凝集力と共に、せん断力にも優れ、好ましい。
本発明において、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、0.005〜0.5質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.006〜0.4質量%、更に好ましくは0.008〜0.3質量%、最も好ましくは0.01〜0.2質量%である。前記範囲内にあると、経時での粘着力の上昇を抑制することができ、再剥離性、粘着力上昇防止性、及び作業性に優れる。また、粘着剤層の凝集力と共に、せん断力にも優れ、好ましい。なお、極性作用が大きいカルボキシル基のような酸官能基が、多数存在すると、帯電防止剤として使用できる融点150℃以下のオニウム塩等を配合する場合に、カルボキシル基等の酸官能基と前記オニウム塩等が相互作用することにより、イオン伝導が妨げられ、導電効率が低下し、十分な帯電防止性が得られなくなる恐れがあり、好ましくない。
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などがあげられる。なお、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、単独で使用してもよく、また2種以上をモノマー成分として使用してもよい。
また、本発明において、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることが好ましく、より好ましくは、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。前記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、単独で使用してもよく、また2種以上をモノマー成分として使用してもよい。
前記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
なかでも、本発明の粘着シートを表面保護フィルムとして用いる場合には、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数6〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好適なものとしてあげられる。炭素数6〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを用いることにより、被着体への粘着力を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる。
本発明において、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、前記炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、50〜99質量%含有することが好ましく、より好ましくは60〜98.8質量%、更に好ましくは70〜98.6質量%、最も好ましくは80〜98.4質量%である。前記範囲内にあることにより、粘着剤組成物が適度な濡れ性を有し、粘着剤(層)の凝集力にも優れ、好ましい。
また、その他の重合性モノマー成分として、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下(通常−100℃以上)になるようにして、前記(メタ)アクリル系ポリマーのTgや剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及び、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、本発明の特性を損なわない範囲内であれば、特に限定することなく用いることができる。たとえば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマーなどの粘着(接着)力向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分、アルキレンオキサイド基含有モノマーなど剥離力調整成分を適宜用いることができる。これら重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルがあげられる。
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどがあげられる。
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、その他の置換スチレンなどがあげられる。
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタムなどがあげられる。
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチル−N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンなどがあげられる。
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
前記アルキレンオキサイド基含有モノマーとしては、たとえば、メトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、ブトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのブトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、フェノキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、2−エチルヘキシル−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、メトキシ−ジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート型などがあげられる。
本発明において、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及び、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(全モノマー成分)中、0〜40質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。前記その他の重合性モノマーを、前記範囲内で用いることにより、帯電防止剤として使用できる融点150℃以下のオニウム塩等との良好な相互作用、および良好な再剥離性を適宜調節することができる。
また、前記その他の重合性モノマーして、前記アミド基含有モノマーなどの窒素含有モノマーを、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分として使用する場合、0.5〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜4質量%である。前記窒素含有モノマーを含有する前記(メタ)アクリル系ポリマーを使用することにより、得られる粘着剤(層)の凝集力が向上し、優れたせん断力が発現でき、更に、カール制御(カール調整性)性が高くなるものと推測される。また、高温下でのカール制御性を向上させることができ、有用である。さらに前記窒素含有モノマーに含まれる窒素原子に、前記融点が150℃以下のオニウムが配位することで、オニウム塩がブリードしにくくなり、優れたせん断力が実現できるものと推測される。なお、粘着シートとして、より低い粘着力を求める場合は、窒素含有モノマーの含有量は、より少ない方が好ましい。
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)は10万〜500万が好ましく、より好ましくは20万〜400万、さらに好ましくは30万〜300万、最も好ましくは40万〜70万である。Mwが10万より小さい場合は、得られる粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、Mwが500万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し被着体(例えば、光学部材である偏光板等)への濡れが不十分となり、被着体と粘着シートの粘着剤層(粘着剤組成物層)との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、Mwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)により測定して得られたものをいう。
また、前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマー(例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー)は、Tgが0℃以下であり、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−40℃以下であり、更に好ましくは−60℃以下である(通常−100℃以上)。Tgが0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、例えば、被着体(例えば、光学部材である偏光板等)への濡れが不十分となり、被着体と粘着剤層(粘着剤組成物層)との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。また、Tgを0℃以下にすることで、被着体への濡れ性と軽剥離性に優れる粘着剤組成物が得られ易くなる。なお、前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマー(例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー)のTgは、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
本発明に用いられる前記ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のポリマー(例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、特に作業性の観点や、被着体への低汚染性など特性面から、溶液重合がより好ましい態様である。また、得られるポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
本発明の粘着剤組成物は、融点150℃以下のオニウム塩を含有してなり、前記オニウム塩が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び、含リンオニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記オニウム塩が、炭素数8以上のアルキル基を少なくとも1つ有するオニウムカチオンを含有することを特徴とする。前記融点150℃以下(好ましく、100℃以下、より好ましくは、30℃以上60℃以下)のオニウム塩を使用することにより、ベースポリマーへの分散が容易となり、好ましい態様となる。また、前記オニウム塩が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び、含リンオニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることにより、優れた帯電特性の発現が可能となり、更に、前記オニウム塩が、炭素数8以上のアルキル基を少なくとも1つ有するオニウムカチオンを含有することにより、せん断特性と帯電特性の両立が可能となり、好ましい。
前記融点150℃以下のオニウム塩は、前記オニウム塩を構成する炭素数8以上のアルキル基を少なくとも1つ有するオニウムカチオンは、好ましくは、炭素数が9以上のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数が10以上のアルキル基を有するオニウムカチオンである。
前記オニウム塩の内、含窒素オニウム塩としては、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−オクチルピリジニウムドデシルベンゼンサルホネート、1−オクチル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−オクチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ノニルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ドデシルピリジニウムチオシアネート、1−ドデシル−2−メチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキサデシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドメチルトリオクチルアンモニウムトリフレート、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートなどが挙げられる。
前記オニウム塩の内、含硫黄オニウム塩としては、ジエチルテトラデシルサルフォニウムヘキサフルオロフォスフェートなどが挙げられる。
前記オニウム塩の内、含リンオニウム塩としては、テトラオクチルホスホニウムブロマイド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロマイド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイドなどが挙げられる。
また、前記ベースポリマー100質量部に対して、前記オニウム塩の含有量は、0.1〜4.9質量部が好ましく、0.2〜4質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が更に好ましく、0.7〜1.4質量部が最も好ましい。前記範囲内にあると、帯電防止性と低汚染性の両立がしやすいため、好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、数平均分子量(Mn)が1万以下のアルキレンオキサイド基を有する化合物を含有することが好ましい。前記アルキレンオキサイド基を有する化合物を使用することにより、被着体への濡れ性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。
前記アルキレンオキサイド基を有する化合物の具体例としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;その他、ポリアルキレンオキサイド基(ポリアルキレンオキシド鎖)を有するカチオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤、ポリアルキレンオキサイド基を有するポリエーテル化合物(およびその誘導体を含む)、ポリアルキレンオキサイド基を有するポリエステル化合物(およびその誘導体を含む)、ポリアルキレンオキサイド基を有するアクリル化合物(およびその誘導体を含む)等が挙げられる。また、アルキレンオキサイド基含有モノマーを用いて、前記アルキレンオキサイド基を有する化合物として、前記ベースポリマー(例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー)と共に、配合してもよい。前記アルキレンオキサイド基を有する化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記アルキレンオキサイド基を有するポリエーテル化合物の具体例としては、ポリプロピレングリコール(PPG)−ポリエチレングリコール(PEG)のブロック共重合体、PPG−PEG−PPGのブロック共重合体、PEG−PPG−PEGのブロック共重合体等が挙げられる。前記アルキレンオキサイド基を有するポリエーテル化合物の誘導体としては、末端がエーテル化されたオキシプロピレン基含有化合物(PPGモノアルキルエーテル、PEG−PPGモノアルキルエーテル等)、末端がアセチル化されたオキシプロピレン基含有化合物(末端アセチル化PPG等)等が挙げられる。
また、前記アルキレンオキサイド基を有するアクリル化合物の具体例としては、オキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート重合体が挙げられる。前記オキシアルキレン基としては、オキシアルキレン単位の付加モル数が、帯電防止剤である前記オニウム塩などが配位する観点から、1〜50が好ましく、2〜30がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。また、前記オキシアルキレン基の末端は、ヒドロキシル基のままや、アルキル基、フェニル基等で置換されていていてもよい。
前記オキシアルキレン基を有する(メタ)アクリレート重合体は、モノマー成分(モノマー単位)として、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイドを含む重合体であることが好ましく、前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイドの具体例としては、エチレングリコール基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、たとえば、メトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、エトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、ブトキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのブトキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、フェノキシ−ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのフェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、2−エチルヘキシル−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート型、メトキシ−ジプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのメトキシ−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート型などがあげられる。
また、前記モノマー成分として、前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド以外のその他モノマー成分を用いることができる。その他モノマー成分の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜14のアルキル基を有すアクリレートおよび/またはメタクリレートが挙げられる。
さらに、前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド以外のその他モノマー成分としては、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、リン酸基含有(メタ)アクリレート、シアノ基含有(メタ)アクリレート、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物、酸無水物基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、アミド基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等を適宜用いることも可能である。
好ましい一態様としては、前記アルキレンオキサイド基を有する化合物が、少なくとも一部に(ポリ)エチレンオキシド基を有する化合物である。前記(ポリ)エチレンオキシド基を有する化合物を配合することにより、ベースポリマー (例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー)と帯電防止成分との相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、低汚染性の粘着剤組成物が得られる。中でも特にPPG−PEG−PPGのブロック共重合体を用いた場合には低汚染性に優れた粘着剤組成物が得られる。上記(ポリ)エチレンオキシド基含有化合物としては、前記化合物全体に占める(ポリ)エチレンオキシド基の質量が5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜85質量%、さらに好ましくは5〜80質量%、最も好ましくは5〜75質量%である。
前記アルキレンオキサイド基を有する化合物の分子量としては、数平均分子量(Mn)が1万以下が好ましく、200〜8000がより好ましく、300〜6000が更に好ましく、400〜4000のものが特に好ましく用いられる。Mnが1万よりも大きすぎると、ベースポリマー (例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー)との相溶性が低下し、粘着剤層が白化する傾向にある。Mnが200よりも小さすぎると、前記アルキレンオキサイド基を有する化合物による汚染が生じやすくなることがあり得る。なお、ここでMnとは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)により得られたポリスチレン換算の値をいう。
また、上記アルキレンオキサイド基を有する化合物の市販品としての具体例は、たとえば、アデカプルロニック17R−4、アデカプルロニック25R−1、アデカプルロニック25R−2(以上、ADEKA社製)、エマルゲン120(以上、花王社製)などが挙げられる。
本発明において、前記アルキレンオキサイド基を有する化合物が、アルキレンオキサイド基を有するオルガノポリシロキサンことが好ましい。前記オルガノポリシロキサンを使用することにより、粘着剤表面の表面自由エネルギーが低下し、高速剥離時の軽剥離化を実現しているものと推測される。
前記オルガノポリシロキサンは、公知のアルキレンオキサイド基を有するオルガノポリシロキサンが適宜使用でき、たとえば、市販品として、商品名が、X−22−4952、X−22−4272、X−22−6266、KF−6004、KF−889、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6022、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−2516(以上、信越化学工業社製)、BY16−201、SF8427、SF8428、FZ−2162、SH3749、FZ−77、L−7001、FZ−2104、FZ−2110、L−7002、FZ−2122、FZ−2164、FZ−2203、FZ−7001、SH8400、SH8700、SF8410、SF8422(以上、東レ・ダウコーニング社製)、IM22(以上、旭化成ワッカー社製)、TSF−4440,TSF−4441、TSF−4445、TSF−4450、TSF−4446、TSF−4452、TSF−4460(以上、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製)、BYK−333、BYK−307、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3570(以上、ビックケミー・ジャパン社製)などがあげられる。これらは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
本発明で使用する上記オルガノポリシロキサンとしては、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が、1〜16が好ましく、より好ましくは3〜14である。HLB値が前記範囲内を外れると、被着体への汚染性が悪くなり、好ましくない。
また、前記ベースポリマー100質量部に対して、前記数平均分子量が1万以下のアルキレンオキサイド基を有する化合物の含有量は、0.01〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.03〜1質量部であり、更に好ましくは0.05〜0.5質量部であり、最も好ましくは0.1〜0.2質量部ある。前記範囲内にあると、帯電防止性と軽剥離性(再剥離性)の両立がしやすいため、好ましい。なお、含有量が少ない場合、帯電防止成分のブリードを防止する効果が少なくなり、含有量が多い場合、前記アルキレンオキサイド基を有する化合物自体による汚染が生じやすくなることがあり、好ましくない。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。なお、本発明においては、前記粘着剤組成物を用いて、粘着剤層とすることができる。例えば、前記粘着剤が、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有する場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より耐熱性に優れた粘着シート(粘着剤層)を得ることができる。
本発明に用いられる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などを用いてもよく、特にイソシアネート化合物の使用は、好ましい態様となる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
前記イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、武田薬品工業社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、日本ポリウレタン工業社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、より接着信頼性に優れた表面保護フィルムを得ることができる。
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミンなどがあげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU、TAZM、TAZO(以上、相互薬工社製)などがあげられる。
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。
本発明に用いられる架橋剤の含有量は、例えば、ベースポリマーとして、前記 (メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部含有されていることが好ましく、0.1〜8質量部含有されていることがより好ましく、0.5〜5質量部含有されていることがさらに好ましく、1.0〜2.5質量部含有されていることが最も好ましい。前記含有量が0.01質量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、得られる粘着剤層の凝集力が小さくなって、十分な耐熱性が得られない場合もあり、また糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が10質量部を超える場合、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体(例えば、偏光板)への濡れが不十分となって、被着体と粘着剤層(粘着剤組成物層)との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。さらに、架橋剤量が多いと剥離帯電特性が低下する傾向がある。
前記粘着剤組成物には、さらに、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるため、架橋触媒を含有させることができる。かかる架橋触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズなどのスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(ヘキサン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(5−メチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(オクタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(6−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(ノナン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ノナン−4,6−ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(トリデカン−6,8−ジオナト)鉄、トリス(1−フェニルブタン−1,3−ジオナト)、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸−n−プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸−n−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸−sec−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸−tert−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−n−プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−n−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−sec−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−tert−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄などの鉄系触媒を用いることができる。これら架橋触媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
前記架橋触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、ベースポリマーとして、前記 (メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、およそ0.0001〜1質量部が好ましく、0.001〜0.5質量部がより好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなりなり、好ましい態様となる。
さらに、前記粘着剤組成物には、アクリルオリゴマーを含有してもよい。前記アクリルオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が1000以上30000未満が好ましく、1500以上20000未満がより好ましく、2000以上10000未満がさらに好ましい。Mwが30000以上であると、粘着(接着)性が低下する。また、Mwが1000未満であると、低分子量となるため、粘着シートの粘着力の低下を引き起こす場合がある。
前記アクリルオリゴマーには、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用でき、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
また、前記アクリルオリゴマーには、脂環式構造を持つ(メタ)アクリル系モノマーを使用でき、たとえば、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、トリシクロペンタニルメタクリレート、トリシクロペンタニルアクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル系モノマーは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記アクリルオリゴマーは、前記(メタ)アクリル系モノマー成分(単位)のほかに、前記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマー成分(共重合性モノマー)を共重合させて得ることも可能である。
更に、前記粘着剤組成物には、架橋遅延剤として、ケト−エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。例えば、架橋剤を含む粘着剤組成物または架橋剤を配合して使用され得る粘着剤組成物において、前記ケト−エノール互変異性を生じる化合物を含む態様を好ましく採用することができる。これにより、架橋剤配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。前記架橋剤として少なくともイソシアネート化合物を使用する場合には、ケト−エノール互変異性を生じる化合物を含有させることが特に有意義である。この技術は、例えば、前記粘着剤組成物が有機溶剤溶液または無溶剤の形態である場合に好ましく適用され得る。
前記ケト−エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ−ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert−ブチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸tert−ブチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。かかるケト−エノール互変異性を生じる化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ケト−エノール互変異性を生じる化合物の含有量は、例えば、ベースポリマーとして、前記 (メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部とすることができ、通常は0.5〜15質量部(例えば1〜10質量部)とすることが適当である。前記化合物の量が少なすぎると、十分な使用効果が発揮され難くなる場合がある。一方、前記化合物を必要以上に多く使用すると、粘着剤層に残留し、凝集力を低下させる場合がある。
さらに、本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
本発明の粘着シートは、前記粘着剤組成物から形成(粘着剤組成物を架橋して形成)される粘着剤層を、支持フィルムの片面又は両面に有することが好ましい。前記粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持フィルムなどに転写することも可能である。また、前記支持フィルム上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物を支持フィルムに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持フィルム上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を支持フィルム上に塗布して粘着シートを作製する際には、支持フィルム上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
<支持フィルム>
前記支持フィルムとして、前記支持フィルムを構成する樹脂材料は、特に制限なく使用することができるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性、可撓性、寸法安定性等の特性に優れたものを使用することが好ましい。特に、支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーターなどによって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができ、有用である。
前記支持フィルム(基材)として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;等を主たる樹脂成分(樹脂成分のなかの主成分、典型的には50質量%以上を占める成分)とする樹脂材料から構成されたプラスチックフィルムを、前記支持フィルムとして好ましく用いることができる。前記樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等の、スチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等の、オレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等の、アミド系ポリマー;等を樹脂材料とするものが挙げられる。前記樹脂材料のさらに他の例として、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。上述したポリマーの2種以上のブレンド物からなる支持フィルムであってもよい。
前記支持フィルムとしては、透明な熱可塑性樹脂材料からなるプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。前記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムを使用することが、より好ましい態様である。ここで、ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を基本とする主骨格を有するポリマー材料(ポリエステル樹脂)を主たる樹脂成分とするものをいう。かかるポリエステルフィルムは、光学特性や寸法安定性に優れる等、粘着シートの支持フィルムとして、好ましい特性を有する一方、そのままでは帯電しやすい性質を有する。
前記支持フィルムを構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。前記ポリエステルフィルムの第一面(帯電防止層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、支持フィルムと帯電防止層との密着性を高めるための処理であり得る。支持フィルムの表面にヒドロキシル基等の極性基が導入されるような表面処理を好ましく採用し得る。また、支持フィルムの第二面(粘着剤層が形成される側の表面)に前記と同様の表面処理が施されていてもよい。かかる表面処理は、フィルムと粘着剤層との密着性(粘着剤層の投錨性)を高めるための処理であり得る。
また、本発明の粘着シートは、支持フィルム上に帯電防止層を有することも可能であるが、帯電防止機能を有する場合、更に、前記支持フィルムとして、帯電防止処理がなされてなるプラスチックフィルムを使用することも可能である。前記支持フィルムを用いることにより、剥離した際の粘着シート自身の帯電が抑えられるため、好ましい。また、支持フィルムがプラスチックフィルムであり、前記プラスチックフィルムに帯電防止処理を施すことにより、粘着シート自身の帯電を低減し、かつ、被着体への帯電防止能が優れるものが得られる。なお、帯電防止機能を付与する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法、また、帯電防止剤等を練り込む方法等があげられる。
前記支持フィルムの厚みとしては、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記支持フィルムの厚みが、前記範囲内にあると、被着体への貼り合せ作業性と被着体からの剥離作業性に優れるため、好ましい。
また、本発明の粘着シートを製造する際の粘着剤層の形成方法としては、粘着シート類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコート法などがあげられる。
本発明の粘着シートは、通常、上記粘着剤層の厚みが、3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μm程度となるように作製する。粘着剤層の厚みが、前記範囲内にあると、適度な再剥離性と粘着(接着)性のバランスを得やすいため、好ましい。
<セパレーター>
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)には、必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤層表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。
前記セパレーターを構成する材料としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。
また、本発明の粘着シートは、前記粘着剤層の粘着(接着)面積1cm2をTAC偏光板に貼り合わせ、23℃で30分間貼付後の剥離速度0.06m/minでせん断方向に剥離した際のせん断力が、好ましくは、8.5N/cm2以上であり、より好ましくは、10〜50N/cm2であり、更に好ましくは、10〜20N/cm2である。前記せん断力が、前記範囲内であれば、被着体がカールしようとするときに発生するせん断方向の力に耐えることができ、粘着シートの滑りやズレが生じず、被着体のカールを抑制できるため、好ましい。
<帯電防止層(トップコート層)>
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層とは反対側の前記支持フィルムの片面に帯電防止層を有し、前記帯電防止層が、導電性ポリマー成分としてポリアニリンスルホン酸、バインダとしてポリエステル樹脂、及び、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を含有する帯電防止剤組成物から形成されることが好ましい。前記粘着シートが、帯電防止層(トップコート層)を有することにより、粘着シートの帯電防止性が向上し、好ましい態様となる。
<導電性ポリマー>
前記帯電防止層は、導電性ポリマー成分として、ポリアニリンスルホン酸を含有することが好ましい。前記導電性ポリマーを使用することにより、帯電防止層に基づく帯電防止性を満足することができる。また、前記ポリアニリンスルホン酸は、「水溶性」であるが、後述するイソシアネート系架橋剤を使用することにより、帯電防止層中に固定化でき、耐水性を向上できる。前記水溶性の導電性ポリマー含有水溶液を用いることにより、経時の表面抵抗値に優れた帯電防止層が得られ、好ましい態様となる。一方、帯電防止層を形成する際に用いられる導電性ポリマーが「水分散性」である場合、前記水分散性導電性ポリマー含有溶液を用いて、帯電防止層を形成すると、凝集物が発生し易くなり、均一に塗布できず、経時の表面抵抗値が著しく劣る傾向にあるため、好ましくない。
前記導電性ポリマーの含有量は、帯電防止層(トップコート層)に含まれるバインダ100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、より好ましくは、25〜150質量部であり、更に好ましくは、40〜120質量部である。前記導電性ポリマーの含有量が少なすぎると、帯電防止効果が小さくなる場合があり、導電性ポリマーの含有量が多すぎると、帯電防止層の支持フィルムへの密着性が落ちたり、透明性が低下する恐れがあり好ましくない。
前記導電性ポリマー成分として使用されるポリアニリンスルホン酸は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、5×105以下であるものが好ましく、3×105以下がより好ましい。また、これら導電性ポリマーの重量平均分子量は、通常は1×103以上であることが好ましく、より好ましくは5×103以上である。
前記帯電防止層を形成する方法として、帯電防止層形成用のコーティング材(帯電防止剤組成物)を支持フィルムの第一面に塗布・乾燥(または硬化)させる方法が採用でき、コーティング材の調製に用いる導電性ポリマー成分としては、ポリアニリンスルホン酸、バインダとしてポリエステル樹脂、及び、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましく、前記必須成分が水に溶解した形態のもの(導電性ポリマー水溶液、又は、単に水溶液という。)を好ましく使用し得る。かかる導電性ポリマー水溶液は、例えば、親水性官能基を有する導電性ポリマー(分子内に親水性官能基を有するモノマーを共重合させる等の手法により合成され得る。)を水に溶解させることにより調製することができる。前記親水性官能基としては、スルホ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、四級アンモニウム基、硫酸エステル基(−O−SO3H)、リン酸エステル基(例えば−O−PO(OH)2)等が例示される。かかる親水性官能基は塩を形成していてもよい。
また、前記ポリアニリンスルホン酸水溶液の市販品としては、三菱レイヨン社製の商品名「aqua−PASS」などが例示される。
ここに開示される帯電防止層は、導電性ポリマー成分としては、ポリアニリンスルホン酸(ポリアニリンタイプ)を必須成分として含有するが、例えば、その他の1種又は2種以上の帯電防止成分(導電性ポリマー以外の有機導電性物質、無機導電性物質、帯電防止剤など)を共に含んでもよい。なお、好ましい一態様としては、前記帯電防止層が、前記導電性ポリマー以外の帯電防止成分を実質的に含有しない、すなわち、前記帯電防止層に含まれる帯電防止成分が実質的に導電性ポリマーのみからなる態様が、より好ましく実施され得る。
前記有機導電性物質としては、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体等の両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体等のノニオン型帯電防止剤;前記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基(例えば、4級アンモニウム塩基)を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等の導電性ポリマー;が挙げられる。このような帯電防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記無機導電性物質としては、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)等が挙げられる。このような無機導電性物質は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記帯電防止剤としては、カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤、ノニオン型帯電防止剤、前記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体、等が挙げられる。
<バインダ>
前記帯電防止層は、ポリエステル樹脂をバインダとして含有することが好ましい。前記ポリエステル樹脂は、ポリエステルを主成分(典型的には50質量%超え、好ましくは75質量%以上、例えば90質量%以上を占める成分)として含む樹脂材料であることが好ましい。前記ポリエステルは、典型的には、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類(典型的にはジカルボン酸類)およびその誘導体(当該多価カルボン酸の無水物、エステル化物、ハロゲン化物等)から選択される1種又は2種以上の化合物(多価カルボン酸成分)と、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類(典型的にはジオール類)から選択される1種又は2種以上の化合物(多価アルコール成分)とが縮合した構造を有することが好ましい。
前記多価カルボン酸成分として採用し得る化合物の例としては、シュウ酸、マロン酸、ジフルオロマロン酸、アルキルマロン酸、コハク酸、テトラフルオロコハク酸、アルキルコハク酸、(±)−リンゴ酸、meso−酒石酸、イタコン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、アセチレンジカルボン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、メチルグルタル酸、グルタコン酸、アジピン酸、ジチオアジピン酸、メチルアジピン酸、ジメチルアジピン酸、テトラメチルアジピン酸、メチレンアジピン酸、ムコン酸、ガラクタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、パーフルオロスベリン酸、3,3,6,6−テトラメチルスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、パーフルオロセバシン酸、ブラシル酸、ドデシルジカルボン酸、トリデシルジカルボン酸、テトラデシルジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロアルキルジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸)、1,4−(2−ノルボルネン)ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ハイミック酸)、アダマンタンジカルボン酸、スピロヘプタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、ジチオイソフタル酸、メチルイソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ジクロロイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキソフルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジメチルビフェニレンジカルボン酸、4,4”−p−テレフェニレンジカルボン酸、4,4”−p−クワレルフェニルジカルボン酸、ビベンジルジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸、ホモフタル酸、フェニレン二酢酸、フェニレンジプロピオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジプロピオン酸、ビフェニル二酢酸、ビフェニルジプロピオン酸、3,3'−[4,4’−(メチレンジ−p−ビフェニレン)ジプロピオン酸、4,4’−ビベンジル二酢酸、3,3’(4,4’−ビベンジル)ジプロピオン酸、オキシジ−p−フェニレン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸類;上述したいずれかの多価カルボン酸の酸無水物;上述したいずれかの多価カルボン酸のエステル(例えばアルキルエステル。モノエステル、ジエステル等であり得る。);上述したいずれかの多価カルボン酸に対応する酸ハロゲン化物(例えばジカルボン酸クロリド);等が挙げられる。
前記多価カルボン酸成分として採用し得る化合物の好適例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類およびその酸無水物;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ハイミック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類およびその酸無水物;ならびに前記ジカルボン酸類の低級アルキルエステル(例えば、炭素原子数1〜3のモノアルコールとのエステル)等が挙げられる。
一方、前記多価アルコール成分として採用し得る化合物の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、キシリレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA等のジオール類が挙げられる。他の例として、これらの化合物のアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。
前記ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、例えば5×103〜1.5×105程度(好ましくは1×104〜6×104程度)であり得る。また、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば0〜120℃(好ましくは10〜80℃)であり得る。
前記ポリエステル樹脂として、市販の東洋紡社製の商品名「バイロナールMD−1480」などを用いることができる。
前記帯電防止層(トップコート層)は、ここに開示される粘着シート(表面保護フィルム)の性能(例えば、帯電防止性等の性能)を大きく損なわない限度で、バインダとして、ポリエステル樹脂以外の樹脂(例えば、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシラザン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂等から選択される1種又は2種以上の樹脂)をさらに含有し得る。ここに開示される技術の好ましい一態様としては、帯電防止層のバインダが実質的にポリエステル樹脂のみからなる場合である。例えば、バインダに占めるポリエステル樹脂の割合が98〜100質量%である帯電防止層が好ましい。帯電防止層全体に占めるバインダの割合は、例えば50〜95質量%とすることができ、通常は60〜90質量%とすることが適当である。
<滑剤>
前記帯電防止層(トップコート層)は、滑剤として、脂肪酸アミドを使用することが好ましい。滑剤として、脂肪酸アミドを使用することにより、帯電防止層の表面にさらなる剥離処理(例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤等の公知の剥離処理剤を塗布して乾燥させる処理)を施さない態様においても、十分な滑り性と印字密着性を両立した帯電防止層(トップコート層)を得られるため、好ましい態様となりうる。このように帯電防止層の表面にさらなる剥離処理が施されていない態様は、剥離処理剤に起因する白化(例えば、加熱加湿条件下に保存されることによる白化)を未然に防止し得る等の点で好ましい。また、耐溶剤性の点からも有利である。
前記脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N´−ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N´−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N´−ジオレイルセバシン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N´−ステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これら滑剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記帯電防止層全体に占める滑剤の割合は、1〜50質量%とすることができ、通常は5〜40質量%とすることが適当である。滑剤の含有割合が少なすぎると、滑り性が低下しやすくなる傾向にある。滑剤の含有割合が多すぎると、印字密着性が低下することがあり得る。
ここに開示される技術は、その適用効果を大きく損なわない限度で、帯電防止層(トップコート層)が、前記脂肪酸アミドに加えて、他の滑剤を含む態様で実施され得る。かかる他の滑剤の例として、石油系ワックス(パラフィンワックス等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス等)、高級脂肪酸(セロチン酸等)、中性脂肪(パルミチン酸トリグリセリド等)のような各種ワックスが挙げられる。あるいは、前記ワックスに加えて、一般的なシリコーン系滑剤、フッ素系滑剤等を補助的に含有させてもよい。ここに開示される技術は、かかるシリコーン系滑剤、フッ素系滑剤等を実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。ただし、ここに開示される技術の適用効果を大きく損なわない限度において、滑剤とは別の目的で(例えば、後述する帯電防止層形成用コーティング材の消泡剤として)用いられるシリコーン系化合物の含有を排除するものではない。
<架橋剤>
前記帯電防止層は、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。前記イソシアネート系架橋剤を用いることにより、帯電防止層を形成する際に必須成分である水溶性のポリアニリンスルホン酸をバインダ中に固定化でき、耐水性に優れ、更に、印字密着性の向上等の効果を実現することができる。
前記イソシアネート系架橋剤として、水溶液中でも安定なブロック化イソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい態様である。前記ブロック化イソシアネート系架橋剤の具体例としては、一般的な粘着剤層や帯電防止層(トップコート層)の調製の際に使用できるイソシアネート系架橋剤(例えば、前述の粘着剤層に使用されるイソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤))をアルコール類、フェノール類、チオフェノール類、アミン類、イミド類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物類、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、及び、重亜硫酸ソーダなどでブロックしたものが使用できる。
ここに開示される技術における帯電防止層は、必要に応じて、帯電防止成分、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料等)、流動性調整剤(チクソトロピー剤、増粘剤等)、造膜助剤、界面活性剤(消泡剤等)、防腐剤等の添加剤を含有し得る。
<帯電防止層の形成>
前記帯電防止層(トップコート層)は、前記導電性ポリマー成分等の必須成分および必要に応じて使用される添加剤が適当な溶媒(水など)に溶解した液状組成物(帯電防止層形成用のコーティング材)を支持フィルムに付与することを含む手法によって好適に形成され得る。例えば、前記コーティング材を支持フィルムの第一面に塗布して乾燥させ、必要に応じて硬化処理(熱処理、紫外線処理など)を行う手法を好ましく採用し得る。前記コーティング材のNV(不揮発分)は、例えば5質量%以下(典型的には0.05〜5質量%)とすることができ、通常は1質量%以下(典型的には0.10〜1質量%)とすることが適当である。厚みの小さい帯電防止層を形成する場合には、前記コーティング材のNVを例えば0.05〜0.50質量%(例えば0.10〜0.40質量%)とすることが好ましい。このように低NVのコーティング材を用いることにより、より均一な帯電防止層が形成され得る。
前記帯電防止層形成用コーティング材を構成する溶媒としては、帯電防止層の形成成分を安定して、溶解し得るものが好ましい。かかる溶媒は、有機溶剤、水、またはこれらの混合溶媒であり得る。前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;等から選択される1種又は2種以上を用いることができる。好ましい一態様では、前記コーティング材の溶媒が、水または水を主成分とする混合溶媒(例えば、水とエタノールとの混合溶媒)である。
<帯電防止層の性状>
前記帯電防止層の厚さは、典型的には3〜500nmであり、好ましくは3〜100nm、より好ましくは3〜60nm)である。帯電防止層の厚みが小さすぎると、帯電防止層を均一に形成することが困難となり(例えば、帯電防止層の厚みにおいて、場所による厚みのバラツキが大きくなり)、このため、粘着シート(表面保護フィルム)の外観にムラが生じやすくなることがあり得る。一方、厚すぎると、支持フィルムの特性(光学特性、寸法安定性等)に影響を及ぼす場合がある。
ここに開示される粘着シート(表面保護フィルム)の好ましい一態様では、帯電防止層の表面において測定される表面抵抗値(Ω/□)としては、好ましくは、1.0×1011未満であり、より好ましくは、5.0×1010未満であり、更に好ましくは、2.0×1010未満である。前記範囲内の表面抵抗値を示す粘着シートは、例えば、液晶セルや半導体装置等のように静電気を嫌う物品の加工または搬送過程等において使用される粘着シートとして好適に利用され得る。なお、前記表面抵抗値は、市販の絶縁抵抗測定装置を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される表面抵抗値から算出することができる。
ここに開示される粘着シート(表面保護フィルム)は、その背面(帯電防止層の表面)が、水性インキや油性インキにより(例えば、油性マーキングペンを用いて)容易に印字できる性質を有することが好ましい。かかる粘着シートは、粘着シートを貼り付けた状態で行われる被着体(例えば光学部品)の加工や搬送等の過程において、保護対象たる被着体の識別番号等を前記表粘着シートに記載して表示するのに適している。したがって、印字性に優れた粘着シートであることが好ましい。例えば、溶剤がアルコール系であって顔料を含むタイプの油性インキに対して高い印字性を有することが好ましい。また、印字されたインキが擦れや転着により取れにくい(すなわち、印字密着性に優れる)ことが好ましい。ここに開示される粘着シートは、また、印字を修正または消去する際に、印字をアルコール(例えばエチルアルコール)で拭き取っても外観に目立った変化を生じない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。
ここに開示される粘着シート(表面保護フィルム)は、支持フィルム(基材)、粘着剤層、及び、帯電防止層に加えて、さらに他の層を含む態様でも実施され得る。かかる「他の層」の配置としては、支持フィルムの第一面(背面)と帯電防止層との間、支持フィルムの第二面(前面)と粘着剤層との間等が例示される。支持フィルム背面と帯電防止層との間に配置される層は、例えば、帯電防止成分を含む層(上述した帯電防止層)であり得る。支持フィルム前面と粘着剤層との間に配置される層は、例えば、前記第二面に対する粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)、帯電防止層等であり得る。支持フィルム前面に帯電防止層が配置され、帯電防止層の上にアンカー層が配置され、その上に粘着剤層が配置された構成の粘着シートであってもよい。
本発明の光学部材は、前記粘着シートにより保護されたものであることが好ましい。前記粘着シートは、せん断力に優れるため、前記粘着シートが貼り合わされた被着体(光学部材)のカールを抑制することができ、取り扱い性に優れるため、有用なものとなる。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における配合内容、及び、特性評価については、下記のようにして測定を行った。また、表1において、粘着剤組成物に使用する(メタ)アクリル系ポリマーの物性値や、粘着剤組成物の配合割合を示し、表2において、帯電防止層の配合内容等を示し、表3において、粘着シートにおける特性の評価結果を示した。
<評価>
以下に、具体的な測定・評価方法を記載する。
<重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定>
本発明で用いられる(メタ)アクリル系ポリマーなどの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8220GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2質量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ−H(1本)+TSKgel SuperHZM−H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC(1本)
検出器:示差屈折計(RI)
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算値にて求めた。
<ガラス転移温度(Tg)の理論値>
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)]
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの質量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕文献値:
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
n−ブチルアクリレート(BA):−55℃
アクリル酸(AA):106℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):−15℃
4−ヒドロキブチルアクリレート(HBA):−32℃
なお、文献値として、「アクリル樹脂の合成・設計と新用途展開」(中央経営開発センター出版部発行)及び「Polymer Handbook」(John Wiley & Sons)を参照した。
<せん断力の測定>
粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットし、セパレーターを剥離した後、前記粘着シートの粘着剤層の粘着(接着)面積が、1cm2になるように、TAC偏光板(日東電工社製、SEG1423DU偏光板、幅:25mm、長さ:100mm)に貼り合わせ、室温(23℃×50%RH)で30分、静置後、剥離速度0.06m/minで、せん断方向に引張り、そのときの最大荷重(N/cm2)をせん断力とした。
なお、前記せん断力は、8.5N/cm2以上が好ましく、より好ましくは、10〜50N/cm2、更に好ましくは、10〜20N/cm2である。前記せん断力が、前記範囲内であれば、被着体がカールしようとするときに発生するせん断方向の力に耐えることができ、粘着シートの滑りやズレが生じず、被着体のカールを抑制できるため、好ましい。
<表面抵抗値の測定>
温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下、抵抗率計(三菱化学アナリティック製、ハイレスタUP MCP−HT450型)を用い、JIS−K−6911に準じて測定を行った。
なお、本発明における帯電防止層表面の表面抵抗値(Ω/□)としては、初期(経時処理前)、及び、室温(23℃×50%RH)×1週間(7日間)静置(経時処理後)した場合、共に、好ましくは、1.0×1011未満であり、より好ましくは、5.0×1010未満であり、更に好ましくは、2.0×1010未満である。前記範囲内の表面抵抗値を示す粘着シート(表面保護フィルム)は、例えば、液晶セルや半導体装置等のように静電気を嫌う物品の加工または搬送過程等において使用される粘着シートとして好適に利用され得る。
<剥離帯電圧の測定>
粘着シート2を幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、セパレーターを剥離した後、あらかじめ除電しておいたアクリル板4(厚み:2mm、幅:70mm、長さ:100mm)に貼り合わせたTAC偏光板3(日東電工社製、SEG1423DU偏光板、幅:70mm、長さ:100mm)表面(TAC面)に片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着した。
23℃×50%RHに1日放置した後、図1に示すように、所定の位置にサンプルをセットした。30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度30m/分(高速剥離)となるように剥離した。このときに発生する偏光板表面の電位(剥離帯電圧:絶対値、kV)を偏光板中央の位置に固定してある電位測定器1(春日電機社製、KSD−0103)にて測定した。測定は、23℃×50%RHの環境下で行った。
前記粘着シートに用いられる粘着剤層の粘着面をTAC面(偏光板表面)に対する23℃×50%RHに1日貼付(放置)した後での、剥離角度150°、剥離速度30m/分で剥離(高速剥離)したときに発生する偏光板表面の電位(剥離帯電圧:kV、絶対値)は、1.0kV以下が好ましく、0.8kV以下がより好ましく、0.6kV以下が更に好ましい。前記剥離帯電圧が、1.0kVを超えると、例えば、液晶ドライバ等の損傷を招く恐れがあり、好ましくない。
<印字性(印字密着性)の評価>
23℃×50%RHの測定環境下でシャチハタ社製Xスタンパーを用いて、帯電防止層表面上に印字を施した後、その印字の上からニチバン社製のセロテープ(登録商標)を貼り付け、次いで、剥離速度30m/min、剥離角度180°の条件で剥離する。その後、剥離後の表面を目視観察し、印字面積の50%以上が剥離された場合を×(印字性不良)、印字面積の50%以上が剥離されずに残った場合を○(印字性良好)と評価した。
<調製方法>
以下に、具体的な(メタ)アクリル系ポリマーの合成方法や粘着剤組成物等の調製方法を記載した。
<粘着剤組成物1の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)95質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)4.99質量部、アクリル酸(AA)0.01質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40質量%)を調製した。前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、52万、ガラス転移温度(Tg)は、−68℃であった。
上記(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈し、この溶液500質量部(固形分100質量部)に、架橋剤として、脂肪族系イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)2.5質量部(固形分2.5質量部)、架橋触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)3質量部(固形分0.03質量部)を加えて、混合攪拌を行い、粘着剤組成物1(溶液)を調製した。
<帯電防止層用水溶液(背面処理剤A)の調製>
バインダとしてポリエステル樹脂バイロナールMD−1480(25%水溶液、東洋紡社製)、導電性ポリマーとしてポリアニリンスルホン酸(aquapass、重量平均分子量4万、三菱レイヨン社製)、架橋剤としてジイソプロピルアミンでブロックしたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、滑剤として、オレイン酸アミドを水/エタノール(1/3)の混合溶媒に、バインダを固形分量で100質量部、導電性ポリマーを固形分量で75質量部、架橋剤を固形分量で10質量部、滑剤を固形分量で30質量部とを加え、約20分間撹拌して十分に混合した。このようにして、NV約0.4質量%の帯電防止層用水溶液を調製した。
<帯電防止層用水溶液(背面処理剤B)の調製>
バインダとしてポリエステル樹脂バイロナールMD−1480(25%水溶液、東洋紡社製)、導電性ポリマーとしてポリアニリンスルホン酸(aquapass、重量平均分子量4万、三菱レイヨン社製)、架橋剤としてジイソプロピルアミンでブロックしたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を水/エタノール(1/3)の混合溶媒に、バインダを固形分量で100質量部、導電性ポリマーを固形分量で75質量部、架橋剤を固形分量で10質量部とを加え、約20分間撹拌して十分に混合した。このようにして、NV約0.4質量%の帯電防止層用水溶液を調製した。
<支持フィルム1>
厚さ38μm、幅30cm、長さ40cmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ポリエステルフィルム)を、支持フィルム1として使用した。
<帯電防止層付き支持フィルム2の作製>
前記支持フィルム1の一方の面(第一面)にコロナ処理が施された厚さ38μm、幅30cm、長さ40cmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ポリエステルフィルム)に、前記帯電防止層(背面処理剤A又はB)のいずれかの水溶液を、乾燥後の厚みが30nmとなるように塗布した。この塗布物を130℃に1分間加熱して乾燥させることにより、PETフィルムの第一面に帯電防止層を有する帯電防止層付き支持フィルム2を作製した。
<実施例1>
<粘着シートの作製>
上記粘着剤組成物1(溶液)を、前記支持フィルム1の片面に塗布し、130℃で1分間加熱して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したセパレーターであるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した。
<実施例2〜7、及び、比較例1〜2>
表1、及び表2の配合割合に基づき、実施例1と同様にして、粘着剤組成物、及び、粘着シートを作製した。なお、表1中の配合量は、固形分を示した。また、実施例3及び4においては、実施例1で使用する支持フィルム1の代わりに、前記帯電防止層付き支持フィルム2を使用した。
上記評価方法に従い、作製した粘着シートのせん断力、及び、剥離帯電圧、帯電防止層においては、帯電防止層を作製する際の溶液における凝集物の有無、初期(経時処理前)、及び、経時の表面抵抗、印字密着性の評価を行い、評価結果を表2、及び、表3に示した。
表1及び表2中の略称を、以下に説明する。2EHA:2−エチルへキシルアクリレート
BA:n‐ブチルアクリレート
AA:アクリル酸(カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー)
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー)
C/HX:日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHX」、脂肪族系イソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(架橋剤)
HDPTFI:1−ヘキサデシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点:34℃)(オニウム塩、オニウム塩を構成するオニウムカチオンのアルキル基の炭素数:16)
HDMITFI:1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点:42℃)(オニウム塩、オニウム塩を構成するオニウムカチオンのアルキル基の炭素数:16)
MTOATF:メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート(融点:55℃)(オニウム塩、オニウム塩を構成するオニウムカチオンのアルキル基の炭素数:8)
HDMIHP:1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(融点:125℃)(オニウム塩、オニウム塩を構成するオニウムカチオンのアルキル基の炭素数:16)
TDDAB:テトラドデシルアンモニウムブロマイド(融点:90℃)(オニウム塩、オニウム塩を構成するオニウムカチオンのアルキル基の炭素数:12)
HMITF:1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート(融点:23℃)(オニウム塩、オニウム塩を構成するオニウムカチオンのアルキル基の炭素数:6)
AO化合物:アルキレンオキサイド基を有する化合物
25R−1:ADEKA社製、商品名「アデカプルロニック25R−1」(数平均分子量2800、エチレンオキシド基含有率:10質量%)
KF355A:信越化学工業社製、商品名「KF−355A」(アルキレンオキサイド基を有するオルガノポリシロキサン(HLB値12))
上記表3の結果より、全ての実施例において、せん断力、及び、帯電防止性に優れることが確認できた。また、帯電防止層を有する実施例3及び4においては、さらに、表面抵抗及び印字密着性に優れることも確認できた。
一方、比較例においては、炭素数8以上のアルキル基を少なくとも1つ有するオニウムカチオンを含有していないオニウム塩を用いたために、せん断力が低い値となり、実施例よりも劣ることが確認された。