JP2016007120A - 電力変換回路とその適用電力変換装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電力変換回路の駆動回路2aにトランジスタを飽和領域で動作させる第1の駆動機能回路部1と線形領域で動作させる第2の駆動機能回路部2を設け、第1の駆動機能回路部1によりトランジスタの温度を劣化抑制温度以上に上昇させた後に、第2の駆動機能回路部2により線形領域で動作をさせる。インバータを含むブリッジ構成の電力変換装置の稼働開始時には各アームの第1の駆動機能回路部1を同時に動作させ上下アームを短絡させてトランジスタ11の発熱で内蔵pnボデイダイオードを劣化抑制温度以上にし、その後第2の駆動機能回路部2に切り替えてインバータ動作をさせる。
【選択図】図2
Description
例えば、図6に示す従来例1のSiC−MOSFETが非特許文献1に開示されており、耐圧3.4kVで規格化オン抵抗(以下RonSと記述する)が14.6mΩcm2であり、同耐圧のSi−MOSFETの約1/580の超低オン抵抗が達成されている。また、300℃の高温でも動作でき、300℃でのRonSは83.9mΩcm2になり正の温度依存性を持っていることも開示されている。
上記の広義のコンバータを実現する場合、そのアームを構成するに当たり、個別のSiCフライホイーリングダイオード(Fly Wheeling Diode、以下FWDと記す)をSiC−MOSFETとは逆並列に外部接続して構成している。
例えば、電気自動車のワイヤレス充電装置をSiCインバータを用いて構成した従来例2の電力変換装置が非特許文献2に開示されているが、この開発例では図7に示すようにSiC−MOSFET701とSiCショットキーバリアダイオード702〜704の組合せを用いてアームが構成されている。すなわち、1200V40A級のSiC−MOSFET1個に対し、FWD用のSiCショットキーバリアダイオードは損失低減のために3個並列接続して使用されている。内蔵pnボデイダイオード705は活用されていない。
しかし、Si−MOSFETと異なり、SiC−MOSFETの内蔵pnボデイダイオードは通電により積層欠陥の存在に起因して順方向電圧が増大してゆくという劣化現象を有している。この結果、例えば広義のコンバータを稼働中に、内蔵pnボデイダイオードがFWDとして作動する動作モードの時に、内蔵pnボデイダイオードのオン電圧が増大して電力損失が増大してゆき信頼性が大きく損ねられてしまう。電力損失の増大が極端な場合は、広義のコンバータを長期間停止し稼働開始する時や所定の時間後に再稼働する時にpn内蔵ボデイダイオードが損傷し広義のコンバータの破損に至ってしまう。これは解決すべき極めて深刻な第1の課題である。
このため、積層欠陥を低減する種々のSiCエピタキシャル技術や高精度加工技術等の各種製造技術が開発されているが、積層欠陥を絶滅するには至っていない。たとえ将来、製造技術が発展し素子製造段階で積層欠陥を絶滅できたとしても、稼働中の熱的機械的ストレスにより素子中に残存する微小転移や欠陥が積層欠陥に変化し、上記の内蔵ボデイダイオードの劣化を招いてしまう。従って、上記の課題を製造技術の改良や開発により解決することは困難である。
但し、積層欠陥が消滅するわけではないので、温度が下がると上記の現象が再び現れるので、広義のコンバータを長期間停止し温度が下がった時に稼働開始する場合や所定の時間停止後の温度が下がった時に再稼働する場合には広義のコンバータに損傷をもたらしてしまう。
しかし、外部加熱手段を具備させる方法は、外部加熱手段に加えてその電源も設ける必要があるため、構成部品数が大幅に増加し製作工数の増加や大型化更に重量増加を招くだけでなく、加熱手段やその電源による電力損失の増大も招いてしまう。これらは解決すべき第2の課題である。
ここで、線形領域とは、ユニポーラトランジスタの出力特性において、ソースードレイン間の電流(以下Isdと記述する)がソースードレイン間の電圧(以下Vsdと記述する)にほぼ比例する領域であり、飽和領域とはIsdがVsdにあまり依存しない領域である。この出力特性の領域に関しては、前述の非特許文献3の143頁から144頁により詳しく開示されている。ところで、上記の線形領域と飽和領域との中間領域も時間を延長すると温度を上昇させるという機能を十分果たせるので、本明細書では中間領域も飽和領域に含めて一括して飽和領域と定義する。
電流検出手段の検出電圧が基準電源の基準電圧よりも低い時は比較回路の出力信号によりインターフェイス回路を介して複数の第1の駆動機能回路部1を稼働させて対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを同時にオンさせて短絡させるとともに各第2の駆動機能回路部2は停止させる一方、基準電圧よりも高い時は各第1の駆動機能回路部1を停止させ、各第2の駆動機能回路部2を駆動させることにより対応する各ワイドギャップユニポーラトランジスタを動作させることを特徴とする。
ここで、第1の駆動機能回路部1および第2の駆動機能回路部2とは各々前記の第1の駆動機能および第2の駆動機能を有する回路であり、駆動回路の中で各々別個に回路として分離されていてもよいし融合されていてもよい。後述の第3の駆動機能回路部3に関しても同様である。
更に各インターフェイス回路の出力端はPWM信号発生回路と各駆動回路の第1の駆動機能回路部1の入力端とに接続されており、
PWM信号発生回路の出力端は各駆動回路の第2の駆動機能回路部2の入力端に接続され、両駆動機能回路部の出力端は、各々対応するアームの各ワイドギャップユニポーラトランジスタのゲートに接続されており、
電流検出手段の検出電圧が基準電源の基準電圧よりも低い時は比較回路の出力信号によりインターフェイス回路を介して各第1の駆動機能回路部1を同時に稼働させて対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを同時にオンさせて各相を短絡させるとともに第2の駆動機能回路部2は停止させる一方、基準電圧よりも高い時は各第1の駆動機能回路部1を停止させ、且つPWM信号発生回路を稼働させて第2の駆動機能回路部2をPWM駆動させることにより対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを広義のコンバータPWM動作等の電力変換動作をさせることを特徴とする。
また、この発明に係る電力変換装置は上記した発明において、電流検出手段が誘導電流検出コイルと検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換回路とにより構成されていることを特徴とする。
また、この発明に係る電力変換装置は上記した発明において、検出電流発生手段が駆動回路の第3の駆動機能回路部3が出力するゲート電圧パルスであることを特徴とする。
劣化抑制温度とは前記のように、積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまうという現象が抑制される温度であり50℃から750℃の間の温度である。素子内の積層欠陥の数や形状に大きく依存し、これらが大きくなると劣化抑制温度は高くなる。温度を約50℃以上に上げると徐々に上記の現象が抑制され、注意深く製作された素子では250℃以上ではほぼ現象が消失し素子の出力特性にほとんど悪影響を及ぼさなくなる。しかし、積層欠陥が消滅するわけではないので、素子温度が下がると上記の現象が再び現れる。劣化抑制温度を約450℃以上にすると、積層欠陥を縮小させることができ低い素子温度でも出力特性に悪影響を及ぼし始める通電時間を長くできるが、750℃以下では積層欠陥を消滅させることはできないので、低い素子温度ではいずれ出力特性に悪影響を及ぼし始める。従って、稼働中は素子温度を劣化抑制温度に維持することが肝要である。当然ながら、個々の素子でこの劣化抑制温度を何℃にするか設定するに当たっては、用いているハンダの融点などの他の素子構成材料の許容温度限界も考慮して設定するのが好ましい。
ところで、素子温度を劣化抑制温度に上昇させる時間を短時間にし早く所定の電力変換動作をさせるようにする点から、自己発熱用の温度上昇電力は大きくする必要がある。耐圧が例えば10kV以上と高い素子の場合は内部抵抗、特にドリフト領域の抵抗がかなり高いので前記の線形領域で通電してもよいが、耐圧が比較的低い素子の場合はIsdを小さくVsdを大きくするために前記の飽和領域で通電する必要がある。Isdがかなり大きいと素子を損傷する場合があるためである。
更に、電力変換装置がより高電圧仕様になるほど、外部に逆並列に接続するFWD用のワイドギャップユニポーラダイオードの耐圧は高くする必要があるので、その内部抵抗が高くなり電力損失が大きくなるが、内蔵pnボデイダイオードはバイポーラなので伝導度変調効果が寄与し内部抵抗を大幅に低くできるので電力損失を小さくでき、より効果的に第2の課題を解決できる。
また、検出用ワイドギャップユニポーラトランジスタのセル数や検出用抵抗の抵抗値を増やすことにより検出電圧を容易に高くでき高精度にできる。
このように、内蔵pnボデイダイオードの劣化による悪影響を外部加熱手段や外部接続のFWDを用いずに抑制して信頼性を大幅に向上するとともに、大幅な小型軽量化と電力損失低減ができ本発明の目的を達成できる。また、還流時にはユニポーラトランジスタに逆導通させて還流電流を流すので内蔵pn接合ダイオードのみに還流電流を流す場合に比べて還流時の電力損失をかなり低減でき、更に一層の低損失化ができ本発明の目的をより効果的に達成できる。
また、この発明によれば上記構成により、検出電流発生手段が駆動回路の第3の駆動機能回路部3が出力するゲート電圧パルスで構成できるため、検出用パルス電圧発生回路が不要となるので小型軽量化でき、第2の課題の解決に寄与できる。
図1は、実施例1にかかる電力変換装置である単相フルブリッジインバータの主要回路100を概略的に示す。インバータの各アームを構成するワイドギャップユニポーラトランジスタは例えば耐圧1600V・120A級のSiC−MOSFETモジュール1a〜1dである。1600V40A定格のプレーナゲート構造のSiC−MOSFETチップを3チップ並列接続して搭載して1アーム当りのSiC−MOSFETモジュール1a〜1dを構成している。SiC−MOSFETチップは図6の従来例1と類似のプレーナゲートのDMOS構造であるが、Current spread layerは有していない。しかし、pnボデイダイオードに加えて検出用MOSFETを内蔵している。
図1の各SiC−MOSFETモジュール1a〜1dは上記のように3チップ構成であるが図が煩雑になるのを避けるために、一つのMOSFETの記号で示しており、内蔵する検出用MOSFETも同様に一つのMOSFETの記号で示している。またモジュール内のゲート配線の詳細は図示していないが図2と同じである。更に、以下の説明に当たっては煩雑さを避けるために、各チップの特性は全て同じであると仮定して進める。
SiC−MOSFETジュール1aと1bで1相分を、1cと1dで他の1相分を構成している。各SiC−MOSFETモジュールには各々通電電流検出用の抵抗(以下、検出抵抗と記述する)6a〜6dとSi半導体製の駆動回路2a〜2dが接続され、これらの駆動回路にはSi半導体製の制御回路3が接続されている。駆動回路や制御回路は非特許文献3や4等に開示されている一般的な構成であるので詳細は割愛しブロック図として示す。また、駆動回路や制御回路の各電源は図が煩雑になるのを避けるために図示していない。また、直流電源として機能するコンデンサ4には、図示していないが商用交流電源とトランスおよび整流回路が接続され、整流された直流電力が充電されており、インバータ部で電力変換されて負荷5に供給されている。
まず、この電力変換回路の構成を説明する。SiC-MOSFETモジュール1aはpnボデイダイオードの他に上記のように電流検出用MOSFETも内蔵している。すなわち、各SiC-MOSFETチップ内に主電流通電用の主SiC-MOSFET部11と通電電流の検出用MOSFET部12を有している。検出用MOSFET部12はチップ内の多数のセルの一部を用いて、そのソース電極のみを主SiC-MOSFET部11のソース電極と分離し、そのドレイン電極とゲート電極は連結したままにすることにより構成している。3チップのドレイン電極同士とゲート電極同士およびソース電極同士はモジュール内で連結されている。また検出用MOSFET部12の連結されたソース電極には検出抵抗6aが接続されている。
この構成による通電電流の検出法はSi−MOSFETやSi−IGBTで良く知られた方法を改良したものであり、以下に簡単に説明する。各SiC-MOSFETチップが通電時には、主SiC-MOSFET部11と通電電流の検出用MOSFET部12には各々セル数に比例した通電電流が分流して流れる。検出用MOSFET部12に分流した電流は3チップ分纏まって検出抵抗6aに流れる。Si製MOSFET62aがオフしている時は、検出抵抗60aのみに流れるので検出抵抗60aの電圧を測定し、その電圧を検出抵抗60aの抵抗値で割算することにより検出電流を算出し、更にその検出電流からセル比を用いて換算してSiC-MOSFETモジュールの通電電流を求めるものである。Si製MOSFET62aがオンしている時は検出抵抗60aと検出抵抗61aの両方に流れるので、測定電圧を両抵抗の並列接続抵抗値で割算して検出電流を算出する。本実施例では、例えば検出抵抗60aは600Ω、検出抵抗61aは20Ωに設定している。
なお、上記したように、駆動回路2a〜2dや制御回路3の各電源は煩雑になるのを避けるために図示していない。
例えば、動作開始時にはインバータの各相の各SiC-MOSFETモジュールにはコンデンサ電圧の半分のVsd、すなわち400Vが印加され、SiC-MOSFETモジュールの25℃での内部抵抗で制限される短絡電流0.7Aが流れ280Wの発熱が生じる。この発熱により、SiC-MOSFETモジュール1aの内部抵抗が減少し温度が加速度的に上昇してゆく。
例えば、SiC-MOSFETモジュール1aの熱抵抗を約0.52℃/W、動作開始10ミリ秒後での過度熱抵抗を0.2℃/Wに設定すると、10ミリ秒後のSiC-MOSFETモジュール1aの温度は約204℃になる。この温度は内蔵pnボデイダイオードのようなSiCバイポーラ素子において、積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまう現象がほとんど抑制される温度、すなわち劣化抑制温度である。
なお、制御回路や駆動回路は各々必ずしも1チップの集積回路として纏める必要はなく、回路規模や電流・電圧・周波数などを考慮して分割し、1枚もしくは複数のプリント板上に複数のICチップや個別部品も含んで搭載して構成してもよい。
一方、比較のために従来例2と同様にFWDとしてSiCショットキーバリアダイードを用いSiC−MOSFETチップの外部に接続した場合は、1アーム当り9チップのSiCショットキーバリアダイードを実装する必要があるため1アーム分のSiC素子は12チップであり、モジュールの平面積が大きくなってしまう。単相インバータの場合は4モジュールで構成するので、本実施例による小型軽量化効果はより顕著になる。
また、加熱のための駆動回路や制御回路内の増加回路分はいずれも集積化できるので、これらの増加分を考慮しても小型軽量化効果は極めて大きい。
一方、本実施例になる上記の動作方法を適用しないインバータの稼働試験では、24チップ中4チップの内蔵pnボデイダイオードに40Aの定格電流における順方向電圧が10V以上に及ぶ劣化が見出された。この結果、本実施例の高い信頼性が確認できた。
また本実施例において、SiC−MOSFETの接合用高融点ハンダ材料を、例えば融点が約500℃の超塑性Al-Znハンダに変更して、同様の動作方法で劣化抑制温度を350℃にして上記の信頼性検証稼働試験を試みた。この場合は500回くりかえす稼働試験を実施してもいずれの内蔵pnボデイダイオードにも40Aの定格電流における順方向電圧に顕著な劣化は見いだされなかった。劣化抑制温度を470℃にして上記の信頼性検証稼働試験を試みた場合は1000回くりかえす稼働試験においても、上記と同様に定格電流における順方向電圧に顕著な劣化は見いだされなかった。後者では積層欠陥の縮小効果が寄与しているものと考えられる。
図3は、実施例2にかかる電力変換装置である単相フルブリッジインバータ回路200の基本構成を、また図4は単相フルブリッジインバータ回路200の1アーム分に相当する電力変換回路を示す。インバータは25kW級であり、コンデンサの直流電圧は600Vである。
インバータの各アームを構成するワイドギャップユニポーラトランジスタは例えば耐圧1200V・140A級のSiC−MOSFET21a〜21dであり、チップサイズは6.0mmx6.0mmである。セルは実施例1と同様にプレーナゲート型のDMOS構造であり、セルのパターン形状はメッシュ状であり、セルの幅は約14ミクロンメートルである。ゲート閾値電圧は例えば、約2Vである。
本実施例はSiC−MOSFET21a〜21dがボデイダイオードを内蔵しているが、検出用MOSFETは内蔵していない点、検出用抵抗に代わり誘導電流検出コイル32と検出用パルス電圧発生回路31を用いている点、検出誘導電流を電流―電圧変換回路26で検出電圧に変換している点を除けば実施例1とほぼ同じである。各SiC−MOSFETには各々駆動回路22a〜22dが接続され、これらの駆動回路には制御回路23が接続されている。実施例1と同様の理由から、駆動回路や制御回路はブロック図として示すとともに、これらの回路の各電源は図示していない。通電電流検出手段は検出用パルス電圧発生回路31と誘導電流検出コイル32および制御回路23に含まれた検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換回路26により構成される。また、直流電源として機能するコンデンサ4に接続される商用交流電源とトランスや整流回路も図示していない。
従って、コンパレータ28はコンパレータの負の電源電圧に近いLow電圧を出力する。この結果、実施例1と同様にインターフェイス回路29を介して第1の駆動機能回路部1を全てオンさせて約3Vのゲート電圧を各SiC-MOSFET21a〜21dのゲートに供給し、飽和動作領域の高い内部抵抗で制限された短絡電流を流し続ける。
当然ながら、約170℃に対応するようにコンパレータ28の基準電圧を設定しているので、この間コンパレータは上記のようにHigh電圧を出力し続けており全ての駆動回路の第1の駆動機能回路部1はオフを維持している。インバータ回路が定常動作に入ったら検出用パルス電圧発生回路31は停止させる。
一つ目の方法はあらかじめ基準電圧を設定した後に、試験用小型高温槽もしくは試験用ヒーターを用いて本実施例のSiC−MOSFET21aに通電しないでSiC−MOSFET21aのみの温度を170℃に上げた状態で、上記のように例えば25Vのパルス電圧をSiC−MOSFET21aに印加してコンパレータ28の出力を測定する。この際、電流―電圧変換回路26のいずれかの抵抗に小型の可変抵抗器を外部に並列接続し、可変抵抗器の抵抗値を調整しながら測定し、出力がLow電圧からHigh電圧に代わる直前の抵抗値に固定する方法である。二つ目の方法はあらかじめ電流―電圧変換回路26の各抵抗を固定した状態で、上記のやり方で基準電源27の基準電圧を調整しながらコンパレータ28の出力を測定し、出力がLow電圧からHigh電圧に代わる直前の基準電圧に固定する方法である。
なお、制御回路や駆動回路は各々必ずしも1チップの集積回路として纏める必要はなく、回路規模や電流・電圧・周波数などを考慮して分割し、1枚もしくは複数のプリント板上に複数のICチップや個別部品も含んで搭載して構成してもよい。
一方、比較のために従来例2と同様にFWDとしてSiCショットキーバリアダイードを用いSiC−MOSFETチップの外部に接続した場合は、1アーム当り3チップのSiCショットキーバリアダイードを実装する必要があるため1相分のSiC素子は8チップであり、モジュールの平面積が大きくなってしまう。単相インバータの場合は2モジュールで構成するので、本実施例の小型軽量化効果はより顕著になる。
また、劣化抑制温度までの加熱手段が本実施例の場合はSiC−MOSFET本体に内蔵され外部加熱手段を必要としないので、[0011]に示した特許公開公報2008−294452の開示例に比較して大幅に小型軽量化できる。加熱のための駆動回路や制御回路内の増加回路分は集積化できるので、これらを考慮しても小型軽量化効果は著しく大きい。
一方、本実施例になる上記の動作方法を適用しないインバータの稼働試験では、16チップ中5チップの内蔵pnボデイダイオードに140Aの定格電流における順方向電圧が10V以上に及ぶ劣化が見出された。この結果、本実施例の高い信頼性が確認できた。
図5は実施例3にかかる電力変換装置である単相フルブリッジインバータの1アーム分に相当する電力変換回路を示す。単相フルブリッジインバータの基本構成は図3に示す実施例2とほとんど同じである。インバータは25kW級であり、コンデンサの直流電圧も600Vであり同じである。
インバータの各アームを構成するワイドギャップユニポーラトランジスタも実施例2と同じであり、耐圧1200V・140A級のSiC−MOSFET521a〜521dであり、チップサイズは6.0mmx6.0mmである。セルはプレーナゲート型のDMOS構造であり、セルのパターン形状はメッシュ状であり、セルの幅は約14ミクロンメートルである。ゲート閾値電圧は例えば、約2Vである。
本実施例のアーム構成は、検出用パルス電圧発生回路を用いていない点、制御回路523内にパルス発生回路534を設けて入力端をインターフェイス回路529に接続している点、更に駆動回路522aに第3の駆動機能回路部3を設けて入力端をパルス発生回路534の出力端に接続し且つ出力端をSiC-MOSFET521aのゲートに接続している点を除けば、それ以外は実施例2とほぼ同じである。
インバータの動作に当たっては、図5のインターフェイス回路529の制御信号端子533にスタート信号を与えて動作させ、まず各駆動回路522a〜522dの第1の駆動機能回路部1を全てオンさせて、各SiC-MOSFET521a〜521dのゲートに閾値電圧より高い、例えば3Vのゲート電圧を供給して25℃で飽和領域で動作開始させる。この時、インバータの各相の各SiC-MOSFETにはコンデンサ電圧600Vの半分の電圧が印加され、実施例2と同様にSiC-MOSFETの内部抵抗で制限された約0.98AのIsdが短絡電流として流れる。この結果、各SiC-MOSFETの内部発熱は約294Wとなる。例えば、SiC-MOSFET21aの熱抵抗を約0.5℃/W、動作開始後10ミリ秒での過度熱抵抗を0.18℃/Wに設定すると、この発熱によって各SiC-MOSFETの温度は動作開始後10ミリ秒で約200℃になる。この温度は積層欠陥が少数キャリアをトラップして再結合させ消滅させてしまう現象が十分抑制される劣化抑制温度である。
このHigh電圧によりインターフェイス回路529がオフ司令信号をだし、これによりパルス発生回路534もオフ信号を出し、全ての駆動回路の第1の駆動機能回路部1がオフして各SiC-MOSFETに流れている短絡電流が停止される。一方、インターフェイス回路529を介して例えば20マイクロ秒後にはPWM発生回路部がオンし、各SiC-MOSFET521a〜521dが所定の単相フルブリッジインバータ動作に対応する動作をするように位相が調節されたPWM信号が駆動回路522a〜522dに送られる。このPWM信号に基づき各駆動回路の第2の駆動機能回路部2がオンオフし、ゲート電圧20VのPWMゲート信号を各SiC−MOSFETのゲートに送り、各SiC−MOSFETは線形領域で所定のPWM単相フルブリッジインバータ動作をする。
当然ながら、約190℃に対応するようにコンパレータ128の基準電圧を設定しているので、この間コンパレータは上記のようにHigh電圧を出力し続けており、一方全ての駆動回路の第1の駆動機能回路部1と第3の駆動機能回路部3はオフを維持している。
また、SiC−MOSFETの190℃における検出電流を電流―電圧変換回路526で変換して得た検出電圧と、基準電源527の基準電圧をほぼ正確に合せるには、[0059]に記載した実施例2の二つ目の方法を用いている。
なお、制御回路や駆動回路は各々必ずしも1チップの集積回路として纏める必要はなく、回路規模や電流・電圧・周波数などを考慮して分割し、1枚もしくは複数のプリント板上に複数のICチップや個別部品も含んで搭載して構成してもよい。
耐圧1200V・140A級のSiC−MOSFETを用いて、1相分のSiC素子は1モジュール内に実装した。従って、モジュール内のSiC−MOSFETは2チップで済む。モジュールの冷却用ヒートシンクの放熱にはファンによる強制風冷を採用したが、本実施例の場合はチップ数が少ないのでモジュールの平面積が小さくヒートシンクを小型にできる。
一方、比較のために従来例2と同様にFWDとしてSiCショットキーバリアダイードを用いSiC−MOSFETチップの外部に接続した場合は、1アーム当り3チップのSiCショットキーバリアダイードを実装する必要があるため1相分のSiC素子は8チップであり、モジュールの平面積が大きくなってしまう。単相インバータの場合は2モジュールで構成するので、本実施例の小型軽量化効果はより顕著になる。
また信頼性に関しても、上記の25kW級インバータに上記の動作方法を適用して実施例1と同様の稼働試験を5台のインバータについて実施して、内蔵pnボデイダイオードの劣化状況を調べた結果、20チップの内蔵pnボデイダイオードのいずれにも140Aの定格電流における順方向電圧の顕著な劣化は見いだされなかった。
一方、本実施例になる上記の動作方法を適用しないインバータの稼働試験では、20チップ中7チップの内蔵pnボデイダイオードに140Aの定格電流における順方向電圧が10V以上に及ぶ劣化が見出された。この結果、本実施例による高い信頼性が確認できた。
本実施例はモータ、コイル、電磁石などの誘導性負荷を有する場合に好適な実施例であり、基本構成は実施例1の図1および図2とほぼ同じであり、動作方法が異なる。誘導性負荷はインバータスタート時に大きな突入電流が流れるので、一般にはインバータの出力電流を徐々に大きくしてゆくソフトスタートが用いられる。しかし、pn接合ダイオードを内蔵するワイドギャップユニポーラトランジスタを用いてインバータを構成しソフトスタートを実施すると内蔵pnボデイダイオードの劣化により損傷を招いてしまう。
本実施例4は実施例1の図1および図2と同じ基本構成を用いて本実施例の特有の動作方法により、SiC−MOSFET内蔵pnボデイダイオードの劣化による悪影響を抑制しながら、特有のソフトスタートを実施するものである。
以上のように、本実施例によれば内蔵pnボデイダイオードの劣化の悪影響を抑制し、且つ大きな突入電流を抑制することができる。
本実施例は劣化抑制温度が比較的範囲が広いことに注目し大幅に小型軽量化と低損失化を図るものである。用いたSiC−MOSFETは実施例2と同じである。電力変換回路は実施例2と同様のSiC−MOSFETと駆動回路、およびPWM回路と機能を削減したインターフェイス回路を含む制御回路で構成される。この電力変換回路を用いて構成した25W級インバータも実施例2とほぼ同様である。
電力変換回路の動作の要点は次のとおりである。まず、素子の温度が劣化抑制温度まで上昇する時間すなわち劣化抑制時間をあらかじめ把握しておく。ついで、第1の駆動機能回路部を動作させSiC−MOSFETを飽和領域で動作させ素子の温度を上昇させる。制御回路にあらかじめタイマー回路を設けておき、第1の駆動機能回路部1の動作を開始してから劣化抑制時間が経過した後に、第1の駆動機能回路部1の動作を停止し且つインターフェイス回路を介してPWM信号発生回路と各第2の駆動機能回路部2を動作させ、ついで各ワイドギャップユニポーラトランジスタを線形領域でPWM動作させ所定のインバータ動作をさせる。
すなわち、まず上記の構成の本実施例の電力変換回路に調整試験用の制御回路と調整試験用の通電電流検出手段とを用いて実施例2と同じ構成にする。この場合の通電電流検出手段は検出用パルス電圧発生回路と誘導電流検出コイルである。その上で、電力変換回路の第1の駆動機能回路部1を動作させてSiC−MOSFETを飽和領域で動作させる。この際、動作時間と、試験用制御回路のコンパレータの出力がLow電圧からHigh電圧に代わる直前の基準電源の基準電圧との相関曲線1を求める。
ついで、試験用小型高温槽もしくは試験用ヒーターを用いて本実施例のSiC−MOSFETに通電しないでSiC−MOSFETのみの温度を変えて、例えば25Vのパルス電圧をSiC−MOSFETに印加して上記のコンパレータの出力がLow電圧からHigh電圧に代わる直前の基準電源の基準電圧を測定し、SiC−MOSFETの温度と基準電圧との相関曲線2を求める。
そのうえで、上記の二つの相関曲線からSiC−MOSFETの温度と動作時間の相関曲線3を求める。この相関曲線3を用いて150℃から250℃の好ましい劣化抑制温度の中間温度、例えば200℃に対応する劣化抑制時間を決定する。このようにすることにより上記の誤差を著しく低減できる。劣化抑制時間決定後は上記の試験用回路や試験用小型高温槽もしくは試験用ヒーターなどを取り外してインバータとして供することにより、インバータの大幅な誤差低減と小型軽量化および低損失化を図るものである。
また、信頼性向上効果を検証するために実施例2と同様の稼働試験を実施した。まず、上記の25kW級インバータを6台用いて本実施例になる上記の動作方法を適用して1.5時間稼働後に1.5時間停止して冷やすというサイクルを350回くりかえす稼働試験を実施して内蔵pnボデイダイオードの劣化状況を調べた。その結果、24チップの内蔵pnボデイダイオードのいずれにも140Aの定格電流における順方向電圧に顕著な劣化は見いだされなかった。
一方、本実施例になる上記の動作方法を適用しないインバータの稼働試験では、24チップ中8チップの内蔵pnボデイダイオードに140Aの定格電流における順方向電圧が10V以上に及ぶ劣化が見出された。この結果、本実施例の高い信頼性が確認できた。
本実施例にかかる電力変換装置は基本構成が実施例2とほぼ同様であり、動作方法もPWM動作時の還流動作を除けばほぼ同じである。また、各アームを構成するSiC-MOSFETもゲート閾値電圧が例えば、約3Vと高目である点を除けばほぼ同じである。
一般に、PWMインバータの動作方法においては還流動作時に上記の各実施例のように内蔵pnボデイダイオードを介して還流電流を流す方式の他に、還流動作時に還流動作をする当該アームのSiC-MOSFETのゲートにオン信号を、予めオン信号発生機能を盛り込んだPWM発生回路部などから印加して逆導通させ還流電流を流す方式もある。後者の方式は同期整流回路の動作に似ているので、以下では同期整流型還流方式と呼ぶことにする。本実施例ではこの同期整流型還流方式を用いることにより、還流時の電力損失の低減も図り、本発明の目的の更により効果的な達成を図るものである。
素子温度が170℃を超えると全ての駆動回路の第1の駆動機能回路部1がオフして各SiC-MOSFETを流れている短絡電流が停止される。
また、インバータ動作開始後はSiC−MOSFETのオン時の定常損失とキャリア周波数でオンオフする際のスイッチング損失とにより発生する発熱とその放熱の調整により、150℃〜250℃の劣化抑制温度に維持されるようにできる。この温度範囲はインバータ用ヒートシンクを小型軽量にしつつインバータの出力を増大する上でも好ましい温度範囲である。
このため、同期整流型還流方式を用いる場合は、デッドタイムの期間はSiC−MOSFETのチャネル部の表面が蓄積傾向にならないようなゲート電圧にする必要がある。従って、デッドタイムの期間の還流側のSiC−MOSFETの印加ゲート電圧は、0V以上で閾値電圧以下の範囲の電圧にし、他の手段でオフ速度を短くしてターンオフ損失の低減を図るのが好ましい。
また、劣化抑制温度までの加熱手段が実施例2と同様に、SiC−MOSFET本体に内蔵され外部加熱手段を必要としないので、[0011]に示した特許公開公報2008−294452の開示例に比較して大幅に小型軽量化できる。加熱のための駆動回路や制御回路内の増加回路分は集積化できるので、これらを考慮しても小型軽量化効果は著しく大きい。
また、同期整流型還流方式を採用したことにより還流時の電力損失を7%〜18%低減できた。更に素子温度を劣化抑制温度に上昇してからPWMインバータ動作が開始できているので、信頼性に関しても実施例2と同様の高い信頼性が確認できた。
例えば、第6実施例は第2実施例に同期整流型還流方式を適用することにより更なる低損失化を図ったが、他の実施例、例えば第5実施例に同様の同期整流型還流方式を適用することにより更なる低損失化に加えて大幅な小型軽量化も図ることができ、本発明の目的を更により効果的に達成できることは当然である。
また、ワイドギャップユニポーラトランジスタとしてはpn接合ダイオードを逆並列にボデイダイオードとして内蔵したDMOS型のSiC-MOSFETを取り上げて説明したが、pn接合ダイオードを逆並列にボデイダイオードとして内蔵したMOSFETであれば、トレンチ型SiC-MOSFETやスーパージャンクション型SiC-MOSFET、DACFET、IEMOSFET等でもよい。また、また、ワイドギャップユニポーラトランジスタはpn接合ダイオードを逆並列にボデイダイオードとして内蔵したユニポーラトランジスタであれば、SiC-MOSFET以外にSiC−JFETやSiC−SIAFET、SIMOSFET、SITなどでもよい。
また、内蔵されたボデイダイオードの他に、素子内に別途新たに逆並列に形成したpn接合ダイオードを有するこれらのワイドギャップユニポーラトランジスタでもよい。
比較回路はコンパレータ回路を例に挙げて説明したが、各種の差動増幅回路やオペアンプを用いて構成してもよく、ウインドコンパレータを用いてより検出機能を付加することも当業者には容易である。また、電流検出手段も本実施例で用いた方法以外の方法、例えばMOSFETのドレイン−ソース間電圧をモニタ検出する手段等に変更することも当業者には容易である。
また、電力変換装置は単相フルブリッジインバータを例に挙げて説明したが、単相ハーフブリッジインバータ等でもよく、3相インバータでもよい。また3レベルインバータ等のマルチレベルインバータでもよい。さらに、各種コンバータや各種チョッパー回路装置、各種電源、ブリッジダイオードとpnダイオード内蔵ワイドギャップユニポーラトランジスタで構成した複合整流装置でもよい。また、これらのインバータやコンバータを含む各種電力変換装置、例えば無停電電源(UPS)やアクティブフィルター、STATCOM、BTBや固体トランス(SST)等でもよい。
また、電流検出手段は検出抵抗や検出コイルの他に、ダイオードやJFET等でもよい。
なお、検出電流発生手段や電流検出手段は、信頼性よりも構成の簡略化を重視する場合は必ずしもこれらの電力変換装置の上下両方のアームに設けないで一方のアームのみに設けて簡単化してもよい。
2. 2a,2b,2c、2d、22a,22b,22c、22d、522a:駆動回路
3. 3,23、523 :制御回路
4. 4、24 :コンデンサ
5. 5,25 :負荷
6. 6a,6b,6c、6d,60a,61a:検出抵抗
7. 7、27、527 :基準電源
8. 8、28、528 :コンパレータ
9. 9、29、529 :インターフェース回路
10.10、30、530 :PWM信号発生回路
11.11 :主SiC−MOSFET
12.12 :検出用SiC−MOSFET
13.13、33、533 :インターフェイス回路の制御信号端子
14.26、526 :電流―電圧変換回路
15.31 :検出用パルス電圧発生回路
16.32、532 :検出コイル
17.534 :パルス発生回路
18.100,200 :単相フルブリッジインバータ主要回路
19.62a :検出抵抗切替用Si−MOSFET
駆動回路はワイドギャップユニポーラトランジスタを飽和領域で高いソースードレイン間電圧で動作させる第1の駆動機能部と線形領域で低いソースードレイン間電圧で動作させる第2の駆動機能部を有し、第1の駆動機能部により飽和領域で高いソースードレイン間電圧で動作させることにより前記ワイドギャップユニポーラトランジスタの温度を劣化抑制温度以上に上昇させた後に、第2の駆動機能部により線形領域で動作をさせることを特徴とする。
ここで、線形領域とは、ユニポーラトランジスタの出力特性において、ソースードレイン間の電流(以下Isdと記述する)がソースードレイン間の電圧(以下Vsdと記述する)にほぼ比例する領域であり、飽和領域とはIsdがVsdにあまり依存しない領域である。この出力特性の領域に関しては、前述の非特許文献3の143頁から144頁により詳しく開示されている。ところで、上記の線形領域と飽和領域との中間領域も時間を延長すると温度を上昇させるという機能を十分果たせるので、本明細書では中間領域も飽和領域に含めて一括して飽和領域と定義する。
前記電流検出手段はワイドギャップユニポーラトランジスタの温度に相関した電流を検出する手段であり、
検出電流を変換した検出電圧が基準電源の基準電圧よりも低い時は、所定の前記駆動回路の第1の駆動機能部を稼働させてこの第1の駆動機能部に対応する前記組回路内のワイドギャップユニポーラトランジスタを全て同時に飽和領域で動作させて電力変換装置の全組回路を短絡させ、短絡電流で前記pn接合ダイオードを劣化抑制温度まで上昇させるとともに各第2の駆動機能部は停止させる一方、基準電圧よりも高い時は、対応する組回路の第1の駆動機能部を停止させた後に第2の駆動機能部を駆動させることにより、
または、検出電流を変換した検出電圧が基準電源の基準電圧よりも高い時は、所定の前記駆動回路の第1の駆動機能部を稼働させてこの第1の駆動機能部に対応する前記組回路内のワイドギャップユニポーラトランジスタを全て同時に飽和領域で動作させて電力変換装置の全組回路を短絡させ、短絡電流で前記pn接合ダイオードを劣化抑制温度まで上昇させるとともに各第2の駆動機能部は停止させる一方、基準電圧よりも低い時は、対応する組回路の第1の駆動機能部を停止させた後に第2の駆動機能部を駆動させることにより、
少なくとも対応する組回路の各ワイドギャップユニポーラトランジスタを駆動し所定の電力変換動作をさせることを特徴とする。
ここで、検出電圧が基準電源の基準電圧に比較して低い時と高い時の組合せAの場合の駆動回路動作と、正反対の高い時と低い時の組合せBの場合の駆動回路動作とを併記した。すなわち、組合せAの場合の駆動回路動作を前段に記述し、組合せBの場合の駆動回路動作をその後に記述した。一般に検出電圧と基準電源の基準電圧との比較は比較回路(別名コンパレータ)で行われ、基準電源を比較回路の+入力端子(プラス入力端子)に接続するか、あるいは−入力端子(マイナス入力端子)に接続するかで、比較回路の出力信号を非反転(検出電圧が基準電圧よりも低い時は比較回路の出力信号も低く、基準電圧よりも高い時は出力信号も高くなること)にするか、あるいは反転(検出電圧が基準電圧よりも高い時は出力信号を低く、低い時は出力信号を高くすること)にするかを選択できることは、同業者であれば周知であり極めて容易に実施できるものである。従って、組合せAでは基準電源を比較回路の+入力端子に接続することによって非反転の低い出力信号を、また組合せBでは基準電源を比較回路の−入力端子に接続することによって反転した低い出力信号を得ることができる。この結果、両者において比較回路から同じ低い出力信号が出力されるので、上記のように同じ駆動回路動作を達成できる。従って、両者を併記することは適正かつ妥当である。
また、第1の駆動機能部および第2の駆動機能部とは駆動回路の中で各々別個に回路として分離されていてもよいし融合されていてもよい。分離されている場合は第1の駆動機能回路部および第2の駆動機能回路部と明確に区分けできる。しかし、融合されている場合は区分けするのが困難もしくは煩雑なので、第1の駆動機能部および第2の駆動機能部と記述することとし、分離されている場合と融合されている場合の両方を包含して記述する場合も同様とする。後述の第3の駆動機能回路部に関しても同様である。
また、電力変換装置は広義のコンバータ(インバータとコンバータの両方を意味する)でもよく、各種電源や複合整流装置でもよい。広義のコンバータの場合は電源の出力端間に並列接続された各コンバータ回路を交流のU,V,W各相に対応させて相と記述するが、後の2者の場合は機能が異なりこの記述は適切でないので組回路と記述する。
各アームは請求項2に記載の前記逆並列接続pn接合ダイオード内蔵ワイドギャップユニポーラトランジスタと前記駆動回路とを有する電力変換回路を含んで構成され、少なくとも全相のいずれかのアームあるいは各相のいずれかのアームはワイドギャップユニポーラトランジスタの温度に相関した電流を検出する電流検出手段と基準電源とを有しており、
電流検出手段の検出電流に対応する検出電圧が基準電源の基準電圧よりも低い時は、全相の全アームあるいは各相の全アームの前記駆動回路の第1の駆動機能部を同時に稼働させて、全相のワイドギャップユニポーラトランジスタを飽和領域で全て同時にオンさせて全相を短絡させ、短絡電流で劣化抑制温度までワイドギャップユニポーラトランジスタの温度を上昇させるとともにコンバータの全アームの前記駆動回路の第2の駆動機能部は停止させる一方、前記検出電圧が基準電圧よりも高い時は、全アームの第1の駆動機能部を停止させ、且つ所定の相の所定のアームの第2の駆動機能部を駆動させることにより、
または、電流検出手段の検出電流に対応する検出電圧が基準電源の基準電圧よりも高い時は、全相の全アームあるいは各相の全アームの前記駆動回路の第1の駆動機能部を同時に稼働させて、全相のワイドギャップユニポーラトランジスタを飽和領域で全て同時にオンさせて全相を短絡させ、短絡電流で劣化抑制温度までワイドギャップユニポーラトランジスタの温度を上昇させるとともにコンバータの全アームの前記駆動回路の第2の駆動機能部は停止させる一方、前記検出電圧が基準電圧よりも低い時は、全アームの第1の駆動機能部を停止させ、且つ所定の相の所定のアームの第2の駆動機能部を駆動させることにより、
対応する相の各ワイドギャップユニポーラトランジスタを駆動し広義のコンバータ動作をさせることを特徴とする。
対応する組回路あるいは対応する相の各ワイドギャップユニポーラトランジスタを駆動し所定の電力変換動作あるいは広義のコンバータ動作をさせる際に、第2の駆動機能部がワイドギャップユニポーラトランジスタに出力する駆動信号を徐々に高くしソフトスタート動作をさせることを特徴とする電力変換装置。
Claims (11)
- 逆並列接続のpn接合ダイオードを内蔵するワイドギャップユニポーラトランジスタを用いた電力変換回路またはこの回路を適用した電力変換装置において、
ワイドギャップユニポーラトランジスタの多数キャリア電流の通電により、内蔵pn接合ダイオードの温度を劣化抑制温度以上に上昇させた後に所定の電力変換動作をさせることを特徴とする電力変換回路。
- 請求項1において、電力変換回路が少なくとも逆並列接続のpn接合ダイオードを内蔵するワイドギャップユニポーラトランジスタとその駆動回路を含んで構成されており、
駆動回路はワイドギャップユニポーラトランジスタを飽和領域で動作させる第1の駆動機能と線形領域で動作させる第2の駆動機能を有し、第1の駆動機能により飽和領域で動作させることにより前記ワイドギャップユニポーラトランジスタの温度を劣化抑制温度以上に上昇させた後に、第2の駆動機能により線形領域で動作をさせることを特徴とする電力変換回路。
- 請求項2において、あらかじめ把握した劣化抑制時間の経過後、すなわち前記電力変換回路の第1の駆動機能により飽和領域で動作させて前記ワイドギャップユニポーラトランジスタの温度を劣化抑制温度まで上昇させる時間の経過後に、第2の駆動機能により線形領域で動作をさせることを特徴とする電力変換回路。
- 少なくとも、負荷と電源と1個以上の電流検出手段と1個以上の請求項1の電力変換回路を含む電力変換装置において、前記電力変換回路の少なくとも1個は前記電流検出手段を有しており、
制御回路は少なくともインターフェイス回路と比較回路を有し、比較回路の一方の入力端には基準電源が、また他方の入力端には前記電流検出手段が接続されており、比較回路の出力端はインターフェイス回路の入力端に接続されており、更にインターフェイス回路の複数の出力端は各々対応する電力変換回路の前記駆動回路の第1の駆動機能回路部の入力端と前記駆動回路の第2の駆動機能回路部の入力端に接続され、各第1および第2の駆動機能回路部の出力端は各々対応するワイドギャップユニポーラトランジスタのゲートに接続されており、
前記電流検出手段はワイドギャップユニポーラトランジスタの温度に相関した電流を検出する手段であり、検出電流を変換した検出電圧が基準電源の基準電圧よりも低い時は比較回路の出力信号によりインターフェイス回路を介して複数の第1の駆動機能回路部を稼働させて対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを同時にオンさせて電力変換装置を短絡させ短絡電流で前記pn接合ダイオードを劣化抑制温度まで上昇させるとともに各第2の駆動機能回路部は停止させる一方、基準電圧よりも高い時は各第1の駆動機能回路部を停止させ、各第2の駆動機能回路部を駆動させることにより対応する各ワイドギャップユニポーラトランジスタを動作させることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項4において、電力変換装置は広義のコンバータ装置および広義のコンバータを含む装置であり、その広義のコンバータは所定数のアームで構成されており、
各アームは前記逆並列接続のpn接合ダイオードを内蔵したワイドギャップユニポーラトランジスタと前記請求項1の駆動回路と電流検出手段で構成され、
制御回路は少なくともPWM信号発生回路と各アームに対応するインターフェイス回路と各アームに対応する比較回路を有し、
各比較回路の一方の入力端には基準電源が、また他方の入力端には対応するアームのワイドギャップユニポーラトランジスタの温度に相関した電流を検出する電流検出手段が接続されており、比較回路の出力端は各アームに対応する各インターフェイス回路の入力端に接続されており、
更に各インターフェイス回路の出力端は対応するアームの各PWM信号発生回路と各駆動回路の第1の駆動機能回路部の入力端とに接続されており、
PWM信号発生回路の出力端は各駆動回路の第2の駆動機能回路部の入力端に接続され、
両駆動機能回路部の出力端は、各々対応するアームの各ワイドギャップユニポーラトランジスタのゲートに接続されており、
前記電流検出手段の検出電圧が基準電源の基準電圧よりも低い時は比較回路の出力信号によりインターフェイス回路を介して各アームの第1の駆動機能回路部を同時に稼働させて対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを同時にオンさせて各相を短絡させ短絡電流で劣化抑制温度までワイドギャップユニポーラトランジスタの温度を上昇させるとともに各アームの第2の駆動機能回路部は停止させる一方、基準電圧よりも高い時は各アームの第1の駆動機能回路部を停止させ、且つPWM信号発生回路を稼働させて各アームの第2の駆動機能回路部をPWM駆動させることにより対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを広義のコンバータPWM動作させることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項4および請求項5において、前記電流検出手段が、ワイドギャップユニポーラトランジスタのドレイン電極とゲート電極とを共通にしたセルにより構成された検出用ワイドギャップユニポーラトランジスタおよびそのソース電極に接続された検出用抵抗とにより構成されていることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項4において、前記電流検出手段が誘導電流検出コイルと検出電流を電圧に変換する電流―電圧変換回路とにより構成されていることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項7において、検出電流発生手段が駆動回路の第3の駆動機能回路部が出力するゲート電圧パルスであることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項5において、前記電流検出手段の検出電圧が基準電圧よりも低い時は各アームの第1の駆動機能回路部を同時に稼働させて対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを同時にオンさせて各相を短絡させるとともに各アームの第2の駆動機能回路部は停止させる一方、基準電圧よりも高い時は各アームの第1の駆動機能回路部を停止させ、且つPWM信号発生回路を稼働させて各アームの第2の駆動機能回路部をPWM駆動させることによりPWMゲート電圧を送出して対応するワイドギャップユニポーラトランジスタを広義のコンバータPWM動作させる際、PWMゲート電圧を徐々に高くすることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項4および請求項5において、電力変換回路が請求項3の電力変換回路であることを特徴とする電力変換装置。
- 請求項4から10において、電力変換装置は所定数のアームを有する広義のコンバータ装置および広義のコンバータを含む装置であり、ワイドギャップユニポーラトランジスタの多数キャリア電流の通電により、内蔵pn接合ダイオードの温度を劣化抑制温度以上に上昇させた後に所定のコンバータ電力変換動作をさせることを特徴とし、アームの還流動作時にはワイドギャップユニポーラトランジスタを逆導通させて還流電流を流すことを特徴とする電力変換装置。
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