JP2016005826A - 酸素還元触媒および燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸素の還元反応を活性化させることができる酸素還元触媒、および、その酸素還元触媒を含有する酸素側電極を備える燃料電池を提供すること。【解決手段】燃料電池の酸素側電極に含有される酸素還元触媒に、ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体を焼成することにより得られる焼成体を、含有させる。また、アニオン成分を移動させることができる電解質と、電解質を挟んで対向配置された燃料側電極および酸素側電極とを備える燃料電池の酸素側電極に、上記の酸素還元触媒を含有させる。【選択図】図1

Description

本発明は、酸素還元触媒、詳しくは、固体高分子型燃料電池などの燃料電池の酸素側電
極に用いられる酸素還元触媒、および、その酸素還元触媒を含有する酸素側電極を備える
燃料電池に関する。
従来、燃料電池として、アルカリ型(AFC)、固体高分子型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)など、各種燃料電池が知られている。これらの燃料電池は、例えば、自動車用途など、各種用途での使用が検討されている。
例えば、固体高分子型燃料電池は、燃料が供給される燃料側電極(アノード)と、酸素が供給される酸素側電極(カソード)とを備えており、これらの電極は、固体高分子膜からなる電解質層を挟んで対向配置されている。そして、この燃料電池では、アノードに燃料ガスが供給されるとともに、カソードに空気が供給されることによって、アノード−カソード間に起電力が発生して、発電が行われる。
このような固体高分子型燃料電池に使用されるカソードとして、例えば、アミノベンゾイミダゾールなどのイミダゾール骨格を有する配位子と、鉄などの金属とからなる配位高分子金属錯体を、熱処理することにより得られる燃料電池用触媒が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2010−015972号公報
しかるに、燃料電池の技術分野では、燃料電池の発電性能向上させることが、常に期待されており、近年ますますその要求が高まっている。そのため、上述した酸素還元触媒よりも、さらに燃料電池の発電性能を向上させることができる高性能の触媒還元触媒の開発が期待される。
そこで、本発明の目的は、酸素還元活性能がさらに向上した酸素還元触媒、および、その酸素還元触媒を含有する酸素側電極を備える燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の酸素還元触媒は、ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体を焼成することにより得られる焼成体を含有していることを特徴としている。
また、本発明の酸素還元触媒は、前記遷移金属が、鉄であることが好適である。
また、本発明の酸素還元触媒は、前記ピペミド酸系配位子が、ピペミド酸であることが好適である。
また、本発明の燃料電池は、アニオン成分を移動させることができる電解質と、前記電解質を挟んで対向配置された燃料側電極および酸素側電極とを備え、前記酸素側電極は、上記の酸素還元触媒を含有していることを特徴としている。
本発明の酸素還元触媒によれば、ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体を焼成することにより得られる焼成体が含有されているため、酸素の還元反応を活性化することができる。その結果、高電流を安定して得ることができ、燃料電池の発電性能を向上させる。
本発明の燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。 実施例1および比較例1における電流密度と電圧との関係を示すグラフである。 実施例1および比較例1における電流密度と出力密度との関係を示すグラフである。
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。
燃料電池1は、固体高分子型燃料電池であって、複数の燃料電池セルSを備えており、これらの燃料電池セルSが積層されたスタック構造として形成されている。なお、図1においては、図解しやすいように1つの燃料電池セルSのみを示している。
燃料電池セルSは、燃料側電極2(アノード)と、酸素側電極3(カソード)と、電解質層4とを備えている。
燃料側電極2は、例えば、触媒を担持した触媒担体などの電極材料により形成されている。また、触媒担体を用いずに、電極材料として触媒を用い、その触媒を、直接、燃料側電極2として形成してもよい。
触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))などの周期表(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 22 June 2007)に従う。以下同じ。)第8〜10(VIII)族元素や、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの周期表第11(IB)族元素、さらには亜鉛(Zn)などの金属単体や、それらの合金などが挙げられる。
これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
触媒担体としては、例えば、カーボンなどの多孔質物質が挙げられる。触媒の触媒担体に対する担持量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
燃料側電極2の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
酸素側電極3は、酸素還元触媒として、ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体を焼成することにより得られる焼成体を含んでいる。
遷移金属としては、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)が挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
ピペミド酸系配位子は、ピペミド酸(別名:8−エチル−5−オキソ−2−(1−ピペラジニル)−5,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−カルボン酸)またはその誘導体であり、例えば、下記一般式(1)示されるピペミド酸系化合物が挙げられる。
上記式(1)において、Rは、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)などを表す。
で示されるアルキル基は、好ましくは、C1−6アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、イソへキシル、シクロヘキシルなどの炭素数1〜6の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられる。
で示されるアルコキシ基は、好ましくは、C1−6アルコキシ基が挙げられ、具体的は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシなどの炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
で示されるアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチル、フェニルナフチル、アントリル、フェナントリル、アズレニルなどのアリール基が挙げられる。
は、カルボキシル基(−COOH)またはスルホ基(−SOH)である場合、これらは、金属塩を形成していてもよい。金属塩を形成する金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
は、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基、スルホ基などを表す。
に示されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基、スルホ基などはRと同様のものが挙げられる。
は、例えば、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基、スルホ基などを表す。
に示されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基、スルホ基などはRと同様のものが挙げられる。
なお、Rが水素原子以外の置換基(アルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボキシル基、スルホ基など)である場合、その置換基は含窒素六員環に1つ置換していてもよく、また、複数置換していてもよい。なお、複数である場合、含窒素六員環に対する置換位置は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
ピペミド酸系配位子として、好ましくは、上記式(1)において、R、RおよびRのすべてが水素原子であるピペミド酸系化合物、具体的には、置換基により置換されていないピペミド酸が挙げられる。
これらピペミド酸系配位子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
遷移金属錯体を調製するには、特に制限されないが、例えば、まず、遷移金属の塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩など)と、ピペミド酸系配位子とを、例えば、湿式混合または乾式混合、好ましくは、乾式混合する。
遷移金属の塩とピペミド酸系配位子との配合割合は、配位子100質量部に対して、遷移金属の塩が、例えば、6質量部以上、好ましくは、8質量部以上であり、例えば、14質量部以下、好ましくは、12質量部以下である。
次いで、得られた混合物を、例えば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)や、還元ガス(例えば、窒素ガスおよび水素ガスの混合ガス)雰囲気下において、焼成する。
焼成条件としては、焼成温度が、例えば、400℃以上、好ましくは、800℃以上であり、また、例えば、1000℃以下、好ましくは、900℃以下である。焼成時間は、例えば、15分以上、好ましくは、30分以上であり、また、例えば、5時間以下、好ましくは、1時間以下である。
このような焼成により、まず、上記の混合物が溶融され、ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体が得られる。その後、遷移金属錯体が引き続き焼成されることにより、酸素還元触媒が焼成体として得られる。
なお、混合物および遷移金属錯体は、一段階または多段階で焼成することができる。
このようにして得られた焼成体は、遷移金属錯体における配位子としてピペミド酸系配位子が用いられているため、酸素の還元反応を活性化することができる。
また、このようにして得られた焼成体を、さらに、アンモニア処理することもできる。焼成体をアンモニア処理することにより、錯体の酸素還元活性をさらに向上することができる。
アンモニア処理においては、上記により得られた焼成体を、例えば、アンモニア雰囲気(100%アンモニアガス)下において、焼成(2次焼成)する。アンモニア処理における焼成条件としては、焼成温度が、例えば、400℃以上、好ましくは、600℃以上であり、また、例えば、1000℃以下である。焼成時間は、例えば、0.5時間以上であり、また、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
一方、遷移金属錯体を焼成すると、遷移金属錯体が凝集および粒成長し、その有効表面積が減少して、その結果、触媒活性が低下する場合がある。このような場合には、有効表面積を十分に確保するため、好ましくは、遷移金属錯体が凝集および粒成長した粒状物に細孔を形成し、多孔質の焼成体を形成する。
多孔質の焼成体を形成する方法としては、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、まず、遷移金属錯体と可溶性粒子との粒子混合物を焼成して、酸素還元触媒(焼成物)と可溶性粒子とをランダムに含有する複合物を作製し、その後、複合物中の可溶性粒子を除去する方法が挙げられる。
可溶性粒子としては、特に制限されないが、例えば、遷移金属錯体に均一に分散でき、また、上記の焼成によって融解することなく複合物に均一に分布し、また、焼成の後に、酸またはアルカリ処理などにより溶解および除去される粒子などが挙げられる。
このような可溶性粒子としては、例えば、シリカ(例えば、フュームドシリカ、コロイダルシリカなどのアモルファスシリカを含む。)、ポリスチレン、ポリイミドなどのポリマー粒子、および、それらの焼成体などが挙げられ、好ましくは、シリカが挙げられる。
これら可溶性粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
可溶性粒子を遷移金属錯体に分散させるには、例えば、上記の遷移金属の塩とピペミド酸系配位子との混合において、さらに、可溶性粒子を混合する。なお、可溶性粒子は、予め遷移金属の塩および/またはピペミド酸系配位子に配合されていてもよく、また、遷移金属の塩およびピペミド酸系配位子と同時に配合されてもよく、さらに、遷移金属の塩およびピペミド酸系配位子の混合物に対して配合されてもよい。
可溶性粒子の配合割合は、例えば、遷移金属の塩とピペミド酸系配位子との総量100質量部に対して、可溶性粒子が、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
これにより、遷移金属の塩とピペミド酸系配位子と可溶性粒子との混合物を得る。
次いで、この方法では、上記の焼成条件において、遷移金属の塩とピペミド酸系配位子と可溶性粒子との粒子混合物を焼成する。これにより、遷移金属錯体と可溶性粒子とをランダムに含有する複合物を得る。その後、引き続き焼成することにより、酸素還元触媒(焼成物)と可溶性粒子とをランダムに含有する複合物を得る。
その後、この方法では、複合物中の可溶性粒子を、除去する。
例えば、可溶性粒子としてシリカが用いられる場合には、そのシリカを除去するためには、例えば、複合物を、酸処理またはアルカリ処理する。
酸処理としては、複合物に、例えば、フッ酸、硫酸、硝酸などの酸溶液を含浸させる。また、アルカリ処理としては、複合物に、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液を含浸させる。
これにより、複合物中の可溶性粒子が溶解されて、細孔が形成され、その結果、多孔質の焼成体が得られる。
その後、この方法では、焼成体を酸溶液またはアルカリ溶液から分離し、必要により水洗した後、乾燥させる。
乾燥条件としては、乾燥温度が、例えば、70℃以上、好ましくは、80℃以上であり、また、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。乾燥時間は、例えば、5時間以上、好ましくは、10時間以上であり、また、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
このような多孔質の焼成体によれば、焼成により遷移金属錯体が凝集および粒成長する場合にも、細孔により、遷移金属錯体の有効表面積が十分に確保されるため、優れた触媒活性を維持することができる。
なお、可溶性粒子を除去する方法としては、上記に限定されず、可溶性粒子の種類に応じて、例えば、水に浸漬する方法など、適宜選択することができる。
また、本発明の酸素還元触媒は、上記した焼成体以外の成分を含むこともできる。そのような成分として、担持体が挙げられる。
担持体としては、例えば、カーボンブラックなどのカーボンが挙げられる。酸素還元触媒が担持体を含む場合、焼成体は担持体に担持される。焼成体を担持体に担持させるには、公知の担持方法を採用することができる。
例えば、上記の遷移金属の塩とピペミド酸系配位子との混合時において、さらに、担持体を混合した後、上記した焼成条件にて焼成する。担持体の混合割合は、ピペミド酸系配位子100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、500質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
そして、得られた酸素還元触媒を用いて、電解質層4とともに膜−電極接合体を形成するには、例えば、上記した燃料側電極2と同様の方法により形成する。これによって、電解質層4における、燃料側電極2が定着された一方の表面とは異なる他方の表面に定着した酸素側電極3を得ることができる。すなわち、酸素側電極3が、電解質層4の他方の表面に定着されることによって、燃料側電極2および酸素側電極3は、電解質層4を挟んで対向配置される。
なお、酸素側電極3の坪量(電解質層4に対する酸素還元触媒の付着量)は、例えば、0.01〜10mg/cmである。
また、酸素側電極3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、10μm以下である。
電解質層4は、アニオン交換膜から形成されている。アニオン交換膜としては、酸素側電極3で生成されるアニオン成分としての水酸化物イオン(OH)を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動させることができる媒体であれば、特に限定されないが、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
燃料電池セルSは、さらに、燃料供給部材5および酸素供給部材6を備えている。燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、燃料側電極2に対向接触されている。そして、この燃料供給部材5には、燃料側電極2の全体に燃料を接触させるための燃料側流路7が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この燃料側流路7は、その上流側端部および下流側端部に、燃料供給部材5を貫通する供給口8および排出口9がそれぞれ連続して形成されている。
また、酸素供給部材6も、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、酸素側電極3に対向接触されている。そして、この酸素供給部材6にも、酸素側電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この酸素側流路10にも、その上流側端部および下流側端部に、酸素供給部材6を貫通する供給口11および排出口12がそれぞれ連続して形成されている。
そして、この燃料電池1は、実際には、上記した燃料電池セルSが、複数積層されるスタック構造として形成される。そのため、燃料供給部材5および酸素供給部材6は、実際には、両面に燃料側流路7および酸素側流路10が形成されるセパレータとして構成される。
なお、図示しないが、この燃料電池1には、導電性材料によって形成される集電板が備えられており、集電板に備えられた端子から燃料電池1で発生した起電力を外部に取り出すことができるように構成されている。
また、試験的(モデル的)には、この燃料電池セルSの燃料供給部材5と酸素供給部材6とを外部回路13によって接続し、その外部回路13に電圧計14を介在させて、発生する電圧を計測することもできる。
そして、この燃料電池1においては、燃料化合物を含む燃料が、改質などを経由することなく、直接供給される。また、直接供給される燃料は、好ましくは、液体燃料である。
燃料化合物は、水素が窒素に直接結合し、窒素−窒素結合を有するものが好ましく、炭素−炭素結合を有しないものが好ましい。また、炭素の数はできる限り少ない(できればゼロである)ものが好ましい。
また、このような燃料化合物には、その性能を阻害しない範囲において、酸素原子、イオウ原子などを含んでいてよく、より具体的には、カルボニル基、水酸基、水和物、スルホン酸基あるいは硫酸塩などとして、含まれていてもよい。
このような観点から、燃料化合物としては、具体的には、例えば、ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、カルボンヒドラジド((NHNHCO)などのヒドラジン類、例えば、尿素(NHCONH)、例えば、アンモニア(NH)、例えば、イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールなどの複素環類、例えば、ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)などのヒドロキシルアミン類などが挙げられる。このような燃料化合物は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。好ましくは、ヒドラジン類が挙げられる。
上記した燃料化合物のうち、炭素を含まない化合物、すなわち、ヒドラジン(NH
)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、アンモニア(NH)、ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)などは、後述するヒドラジンの反応のように、COによる触媒の被毒がないので耐久性の向上を図ることができ、実質的なゼロエミッションを実現することができる。
燃料は、上記例示の燃料化合物をそのまま用いてもよいが、上記例示の燃料化合物を、例えば、水および/またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなど)などの溶液として用いることができる。この場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、燃料化合物の種類によっても異なるが、例えば、1質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
さらに、燃料は、上記した燃料化合物をガス(例えば、蒸気)として用いることができる。
そして、酸素供給部材6の酸素側流路10に酸素(空気)を供給しつつ、燃料供給部材5の燃料側流路7に上記した燃料を供給すれば、酸素側電極3においては、下記反応式(2)に示すように、燃料側電極2で発生し、外部回路13を介して移動する電子(e)と、水(HO)と、酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)を生成する。生成した水酸化物イオン(OH)は、アニオン交換膜からなる電解質層4を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動する。そして、燃料側電極2においては、下記反応式(1)に示すように、電解質層4を通過した水酸化物イオン(OH)と、燃料とが反応して、電子(e)が生成する。生成した電子(e)は、燃料供給部材5から外部回路13を介して酸素供給部材6に移動され、酸素側電極3へ供給される。このような燃料側電極2および酸素側電極3における電気化学的反応によって、起電力が生じ、発電が行われる。
(1) 2H+4OH→4HO+4e (燃料側電極2における反応)
(2) O+2HO+4e→4OH (酸素側電極3における反応)
(3) 2H+O→2HO (燃料電池1全体としての反応)
なお、この燃料電池1の運転条件は、特に限定されないが、例えば、燃料側電極2側の
加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、酸素側電極3側の加圧
が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、燃料電池セルSの温度が0
℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、120℃以下、好ましくは、80℃以下として設定される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
本発明の燃料電池の用途としては、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源や、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
このような燃料電池によれば、酸素側電極3に、ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体を焼成することにより得られる焼成体が含有されているため、酸素側電極3における酸素の還元反応を活性化することができる。
その結果、高電流を安定して得ることができ、燃料電池1の発電性能を向上させることができる。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
1.酸素還元触媒の調製
実施例1
シリカ(Cabot製)10gと、Fe(NO・9HO(SIGMA社製)2.5gと、配位子としてのピペミド酸(SIGMA社製)25gとを、ボールミル(500rpm)により60分間乾式混合した。
次いで、窒素雰囲気下、900℃において45分間焼成し、得られた焼成体を、フッ化水素(HF)溶液に1晩(約15時間)浸漬させた。
その後、遠心分離器によって、フッ化水素(HF)溶液から焼成体を分離し、純水によって洗浄した後、85℃において12時間乾燥させた。
これにより、酸素還元触媒を得た。
比較例1
ピペミド酸に代えて、アミノベンズイミダゾール(SIGMA社製)25gを用いた以外は、実施例1と同様にして、酸素還元触媒を得た。
評価方法
<膜電極接合体の製造>
各実施例および各比較例において得られた酸素還元触媒(カソード触媒)と、アニオン交換樹脂との混合物を、アルコール類などの有機溶媒に適宜分散させて、カソード触媒インクを調製した。なお、全てのインクにおいて、遷移金属触媒の含有量が1μg/μLとなるように調製した。
また、アノード触媒としてのニッケル系金属であるニッケル亜鉛合金(NiZn)(AQ672078、Ni:87質量%、Zn:13質量%、平均粒子径:3μm、Cabot社製)と、アニオン交換樹脂との混合物を、アルコール類などの有機溶媒に適宜分散させて、アノード触媒インクを調製した。
その後、アニオン交換形電解質膜(A201CE トクヤマ社製)の一方側表面にアノード触媒の量が2.6mg/cmとなるように、上記のアノード電極インクを、他方側表面にカソード触媒の量が1.0mg/cmとなるように、各調製例のカソード電極インクを、それぞれ乾燥後の表面の面積が2cmとなるように塗布して、膜電極接合体を製造した。
その後、溶媒を大気中で蒸発させ、得られた膜電極接合体を1MのKOHに12時間以上浸漬させた。
<発電特性の測定>
燃料電池評価セル(ラボセル、ダイハツ工業社製)に、各実施例および比較例で得られた膜電極接合体をセットして、アノード側へ1MのKOHと20体積%濃度の水加ヒドラジンとの混合溶液を、カソード側へ空気を、それぞれ2cc/minおよび0.5L/minの流速で供給して、電子負荷装置(890e、Scribner Associates社製)で電流密度を制御して、そのときのセルの電圧および出力密度を測定した。
測定条件を以下に示す。
セル温度;80℃
背圧;アノード:10kPa、カソード:60kPa
その結果を図2および図3に示す。
(考察)
図2および図3より、各実施例において得られた酸素還元触媒を用いれば、各比較例において得られた酸素還元触媒を用いる場合に比べ、高電流を安定して得られることがわかる。
1 燃料電池
2 燃料側電極
3 酸素側電極
4 電解質層

Claims (4)

  1. ピペミド酸系配位子が遷移金属に配位された遷移金属錯体を焼成することにより得られる焼成体を含有していることを特徴とする酸素還元触媒。
  2. 前記遷移金属が、鉄であることを特徴とする、請求項1に記載の酸素還元触媒。
  3. 前記ピペミド酸系配位子が、ピペミド酸であることを特徴とする、請求項1または2に記載の酸素還元触媒。
  4. アニオン成分を移動させることができる電解質と、
    前記電解質を挟んで対向配置された燃料側電極および酸素側電極と
    を備え、
    前記酸素側電極は、請求項1〜3のいずれかに記載の酸素還元触媒を含有していること
    を特徴とする、燃料電池。
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