JP2016004901A - 有機系太陽電池用材料及びそれを用いた有機系太陽電池、並びに、その材料の製造方法 - Google Patents

有機系太陽電池用材料及びそれを用いた有機系太陽電池、並びに、その材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換効率を向上させる、色素増感型及び有機半導体系の太陽電池を提供する。
【解決手段】物理蒸着槽1内に、物理蒸着槽1上部に設けられた蒸発源2、蒸発源2下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽3、攪拌槽3内に設けられた前記蒸発物質が母材に略均一に堆積するための攪拌機を少なくとも設置し、前記母材として金属酸化物粒子及び/または金属粒子を、前記蒸発源として金、銀、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、及び、チタン合金、の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属を用い、前記金属酸化物粒子及び/または金属粒子を撹拌しながら、その表面に前記金属ナノ粒子が担持され金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR)により太陽電池の光電変換効率を向上させた、有機系太陽電池用材料。
【選択図】図2

Description

本発明は、有機系太陽電池に適した金属ナノ粒子が担持された金属酸化物粒子及び/または金属粒子及びそれを用いた有機系太陽電池、並びに、その粒子の製造方法に関する。
限りある地球において、その物質循環システムを破壊することなく、人類が持続可能な社会を構築するためには、枯渇性資源である化石燃料やウラン等を用いない、また、資源環境を破壊しないクリーンエネルギーの創出が、必須課題の一つとなっている。つまり、電気や熱等の人類が活用する有効なエネルギーに変換する際、二酸化炭素、窒素酸化物等の有害物質排出量が少なく、太陽光、風力、波力、地熱等の、燃料が不要で、無尽蔵に存在する自然の力で補充される再生可能エネルギーが求められている。
特に、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽光発電は、太陽電池及び二次電池の開発が進み、本格的実用化が期待されているクリーンエネルギーの代表格である。太陽電池は、半導体によって光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、半導体の材料により、無機系と有機系に大別される。更に、無機系は、シリコン半導体系と化合物半導体系、有機系は、金属酸化物半導体系(色素増感型)と有機半導体系とに分類される。
無機系は、材料コストが高く、大面積化が困難であるという課題があるが、変換効率が高いため、着実に実用化が進んでいる。一方、有機系は、材料コストが安く、大面積化が容易な太陽電池として期待されたが、光電変換効率の克服が困難で、開発が停滞していた時期があった。
しかし、有機系太陽電池において、次のような改良が報告された。まず、色素増感型では、1991年、グレッツェル・セルと呼ばれ、多孔質酸化チタン半導体の負極と白金の正極との間に、ルテニウム色素を溶解した酸化還元電解液を用いる有機太陽電池が開発され、光電変換効率7.9%を達成した(非特許文献1)。更に、1997年には、ルテニウム色素の改良によって、アモルファスシリコン半導体系太陽電池と同等の光電変換効率約10%に到達した(非特許文献2)。一方、有機半導体系においては、2002年、電子供与体としてポリチオフェン系高分子薄膜を、電子受容体としてフラーレン誘導体薄膜を用いることによって、光電変換効率が2.8%まで改善され(非特許文献3)、この系の研究が活性化された。最近では、電子供与体と電子受容体をブレンドしたバルクヘテロジャンクション型有機太陽電池によって、光電変換効率10%を達成した報告もある(例えば、非特許文献4)。
今では、有機系太陽電池には、太陽電池の本格的実用化に極めて重要な低コスト化・大面積化を実現しうる可能性があるものとして、大きな期待が寄せられている。当面、有機系太陽電池の用途は、透明太陽電池、フレキシブル太陽電池等の比較的消費電力が低く、屋内で用いられる小型民生機器の電源と考えられるが、上記持続可能な社会を実現するためには、エネルギー問題を解決する住宅用発電システムとして用いられる電源となる必要がある。
そのため、耐久性や光電変換効率等の特性についても、更なる向上に注力されている。特に、光電変換効率については、有機系太陽電池も、小面積のセルではアモルファスシリコン半導体系と同等の光電変換効率を達成しているが、単結晶シリコン半導体系の約25%、多結晶シリコン半導体系の約20%にまでは至っていない。また、実際の大面積セルになると、アモルファスシリコン半導体系で約7%、単結晶シリコン半導体系及び多結晶シリコン半導体系では約14%程度まで大きく低下するため、更なる向上が急務となっている。
このような状況において、金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴(SPR,Surface Plasmon Resonance)を、太陽電池の光電変換効率向上に適用した報告が既に数多く認められる。シリコン半導体系太陽電池では、その受光面に金属ナノ粒子が有機又は無機材料中に分散された膜を形成するもの(特許文献1)やシリコン半導体層と透明電極間に透明樹脂で被覆された金属ナノ粒子を形成するもの(特許文献2)が報告されている。色素増感型太陽電池では、電解質に銀ナノ粒子を分散したもの(特許文献3)、光電極をなす多孔質の酸化チタン膜表面に金属ナノ粒子あるいは化学修飾した金属ナノ粒子を担持するもの(特許文献4及び5)、負極に金属ナノ粒子と酸化チタンナノ粒子の規則的な積層構造をコロイド溶液から形成するもの(特許文献6)等が開示されている。また、有機半導体系でも、透明電極の対抗電極に金属ナノ粒子の形成が有効であることが開示されている(特許文献7)。
しかし、このような有機系太陽電池へのSPRの適用においては、光電変換効率向上に対する金属ナノ粒子の効果は認められるものの、上述した各種シリコン半導体系太陽電池の到達している光電変換効率を凌駕するには至っていない。その原因は、従来のSPRを誘起させる金属ナノ粒子が、液相法、すなわち、貴金属の溶液の還元によって析出、生成されるコロイド溶液を用いるものであることに起因していると考えられる。すなわち、液相法で生成された金属ナノ粒子の粒子径制御が困難であること、コロイド溶液から金属ナノ粒子を電極基板に浸漬して付着させるため、付着量制御が困難であり、金属ナノ粒子の電極基板に対する付着力が不足していること等であると推測される(特許文献4、5、及び、6)。一方、スパッタリング法を用いて電極基板上に金属ナノ粒子を直接形成する方法も考えられるが、スパッタリング初期の金属ドメインを金属ナノ粒子層としており、球体のナノ粒子の層を形成したものではなく、表面積が小さい(特許文献7)。
特開2011−040645号公報 特開2012−169380号公報 特開平9−259943号公報 特開2001−035551号公報 特開2007−265694号公報 特開2007−335222号公報 特開2009−246025号公報 特開2012−057198号公報 国際公開第2012/150804号公報
B.O’Regan and M.Graetzel,Nature,353,737(1991). M.K.Nazeeruddin,P.Pechy and M.Graetzel,Chem.Commum.,1705(1997). P.Schilinsky,C.Waldauf,and C.J.Brabec,Appl.Phys.Lett.,81,3885(2002). 佐々木健一,「有機薄膜太陽電池のバルクヘテロ型デバイス構造の最適化に関する研究」,神戸大学博士論文(2013年1月). 特許庁標準技術集,「色素増感型太陽電池の概要」,2004年3月26日掲載。 (独)工業所有権情報・研修館,「平成17年度特許流通支援チャート ナノ粒子製造技術」,2006年3月. 多賀康訓,「薄膜プロセス技術の研究」,総合工学,第22巻,53−64(2010). W.Ensinger et al.,Surface and Coatings Technology,vol.163−164,30 January,281−285(2003).
本発明は、有機系太陽電池の光電変換効率向上を目的として、SPRが効果的に作用する金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子及び/または金属粒子を提供するものである。更に、その材料を用いた有機系太陽電池を提供するものである。並びに、その材料の特性を発現するために適した材料の製造方法を提供することを目的としている。特に、金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子は、色素増感型太陽電池の電極材料に適したものである。
本発明者らは、物理蒸着(PVD)の基材(母材)となる金属酸化物粒子及び/または金属粒子を撹拌しながら、金属のPVDを行うと、その金属酸化物粒子及び/または金属粒子上に金属ナノ粒子が堆積させて得られ、この金属ナノ粒子が担持した金属酸化物及び/または金属粒子が、SPRを最も効果的に発現することを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、金属ナノ粒子が担持された金属酸化物粒子及び/または金属粒子を有機系太陽電池の構成材料として提供すると共に、それを用いた有機系太陽電池を提供するものである。並びに、その材料の特性を発現するために適した材料の上記製造方法を提供する。
更に具体的には、本発明は、PVD槽に、その上部に設けられた蒸発源、その蒸発源下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽、その攪拌槽内に設けられた蒸発物質が前記母材に均一に堆積するための攪拌機、を少なくとも設置し、母材として粒子径1〜200nmの金属酸化物粒子及び/または金属粒子を攪拌層に投入し、少なくとも1種以上の金属を蒸発源として用い、上記金属酸化物粒子及び/または金属粒子を撹拌しながら、その表面に粒子径1〜10nmの金属ナノ粒子を堆積して製造されることを特徴とする、有機系太陽電池の構成材料に適した金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子である。また、それを構成材料として用いたことを特徴とする有機系太陽電池である。並びに、その材料の特性を発現するために適した材料の上記製造方法を提供する。
上記PVDされる金属ナノ粒子としては、金、銀、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、及び、チタン合金の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属を用いることが、いずれの有機系太陽電池の光吸収を促進するSPRに効果的である。
しかし、母材は、有機系太陽電池の種類によって異なる。色素増感型太陽電池の電極材料として用いる場合、本発明の上記母材として金属酸化物粒子を用いることが好ましく、この金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子は、色素増感型太陽電池の光電極に適する電極材料である。具体的には、透明導電膜を形成した透明基板上に白金若しくは炭素質材料をコーティングした対向電極と、透明導電膜を形成した透明基板上に金属酸化物多孔質膜を形成し、この金属酸化物多孔質膜の表面にルテニウム錯体等の色素を担持した光電極とを、酸化還元電解質を介して対向させ、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するようにした色素増感型太陽電池における、金属酸化物多孔質膜の構成材料として最も有効である。この場合、金属酸化物としては、酸化チタン粒子が好ましく、アナターゼ型酸化チタン粒子がより好ましい。そして、このような金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子は、有機あるいは無機材料中に分散され、上記透明導電膜上に製膜して使用される。
一方、有機半導体系太陽電池の場合には、上記金属ナノ粒子が担持される物質に制限がない。これは、有機半導体系太陽電池が、電子供与体が光を吸収し、励起されて、電子供与体から電子受容体に電子移動することによって光電変換するためである。このため、可能な限り全ての光が吸収されるような工夫が必要であり、本発明の金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子及び/または金属粒子の層を電極に設けることが効果的である。また、これらは、太陽光の入射面及びその反対面の電極いずれに設けてもよい。もちろん、入射面の電極に用いる場合には、十分な透明性が保持される粒子径に限定される。
更に、本発明の金属ナノ粒子が担持された金属酸化物及び/または金属粒子は、色素増感型太陽電池の電解質や有機半導体系太陽電池の半導体層に分散してもよい。このような金属ナノ粒子が担持された金属酸化物及び/または金属粒子は、金属ナノ粒子単体よりも効果的にSPRが発現し、光電変換効率が向上する。(特許文献3)。この場合、上記母材の材質に特に制限はないが、金属酸化物粒子や金属粒子であることが好ましい。
以上、本発明の上記母材は、有機系太陽電池の光電変換効率を高める直接的な機能を有するが、均一な金属ナノ粒子をPVD法で堆積させるための場として不可欠であり、PVDに対して、安定な材質であり、常に新しい表面を作り出せることが可能な形状であること等が求められる。
本発明のSPRを誘起する金属ナノ粒子は、PVD法によって金属酸化物粒子及び/または金属粒子表面上に直接形成されるのに対し、化学蒸着(CVD)法を用いる気相法、コロイド溶液系を用いる液相法、及び、粉砕等の固相法から生成される単一の金属ナノ粒子は、その後、金属酸化物粒子と分散、吸着させる必要がある。従って、本発明の金属ナノ粒子は、純度が高く、均一かつ小さな粒子径であり、その上、金属酸化物粒子及び/または金属粒子表面上に金属ナノ粒子を直接堆積させるため、金属ナノ粒子と金属酸化物粒子及び/または金属粒子との付着力が強く、金属ナノ粒子の粒子数を制御することができる(非特許文献6)。上記本発明の特徴に基づいて、従来の有機系太陽電池におけるSPRを上回る効果があり、光電変換効率を向上させることができる。
色素増感型太陽電池においては、透明導電膜を形成した透明基板上に白金若しくは炭素質材料をコーティングした対向電極と、透明導電膜を形成した透明基板上に上記金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子を用いて形成した金属酸化物膜の表面にルテニウム錯体等の色素を担持した光電極とを、酸化還元電解質を介して対向させ、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するようにすると、従来技術のSPRを上回る効果があり、光電変換効率を向上させることができる。更に、本発明の金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子及び/または金属粒子を電解質中に分散させることによって、単一の金属ナノ粒子を分散させる場合以上のSPR効果を生起することができる。
また、有機半導体系太陽電池の場合、必ずしも金属酸化物に担持させる必要はないが、金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子の層を電極上に形成したり、半導体層中に分散すると、従来の単一の金属ナノ粒子を用いる場合以上のSPRによって光の利用効率が向上し、光電変換効率も改善される。
金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子及び/または金属粒子を製造するPVD装置の概要図である。 本発明のPVD法により金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子を光電極構成材料としたグレッツェル・タイプの色素増感型太陽電池の断面の模式図である。
本発明の金属ナノ粒子を担持した金属酸化物粒子及び/または金属粒子は、図1に示した一般的なPVD装置を用いて製造することができる。ただし、金属ナノ粒子を担持させる金属酸化物粒子及び/または金属粒子(母材)が、金属(蒸着物質)に対し、常に新しい堆積面を向けるように、この母材を撹拌しながらPVDを行う必要がある。この方法による金属ナノ粒子の生成機構は定かでないが、次のように考えることができる。一般的な蒸着やスパッタリング等の成膜機構は、Volmer−Weber(VW)成長、Frank−van der Merwe(FM)成長、Stranski−Krastanov(SK)成長が有名である(非特許文献7)。PVD物質と基板について、表面エネルギー、温度等様々なパラメーターによって成膜機構に差が生じると考えられるが、成膜初期において、VW成長となる条件を見出し、上記母材を撹拌しながらPVDを行えば、常に新しい堆積面が蒸着物質に対して向けられるため、3次元の海島構造、すなわち、金属ナノ粒子が次々に生成していくものと推測している。従って、上記新しい堆積面の創出がなければ、ナノ粒子の生成は不可能であると考えられる(特許文献7)。
具体的には、図1に示したように、PVD槽内の上部に設けられた蒸発源、蒸発源下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽、攪拌槽内に設けられた蒸発物質が母材に均一に堆積するための攪拌機を少なくとも設置し、母材である粒子を撹拌しながら、蒸着源の金属を蒸発させることによって、金属ナノ粒子が粒子表面上に堆積される。PVD法としては、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、及び、各種スパッタリング法を用いることができ、例えば、非特許文献9、特許文献8及び9等の方法が開示されている。このようにして作製された金属ナノ粒子が担持された粒子は、金属ナノ粒子の酸化を防止するため、不活性ガスで置換された容器に保存されることが好ましい。
蒸着源であり、ナノ粒子となる金属は、金属であれば特に制限はないが、金、銀、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、及び、チタン合金、の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属が適している。これは、SPRが、金属をナノオーダー(光の波長の1/10以下)まで小さくすると、粒子の表面近傍で電子の振動による分極が生じ、金属の材質や形状、その金属ナノ粒子の存在する媒体等によって特定の波長を有するプラズモンが生起するため、光の吸収が高まり、光電変換効率が向上することに基づくが、特に、励起されるプラズモン共鳴周波数が可視光から近赤外光領域の波長に存在する金や銀等が好ましい。ただし、色素増感型太陽電池に適用する場合、その電解質は、腐食性のあるハロゲン系の酸化還元電解質を用いることが多いため、その電解質に応じて、白金、白金合金、チタン、及び、チタン合金の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属を用いる方が好ましく、白金合金及びチタン合金は、白金及びチタン共に、50mol%以上含まれていることが好ましい。もちろん、色素増感型太陽電池の光電変換効率の向上のため、本発明の酸化チタン系光電極材料の改良だけでなく、色素増感型太陽電池を構成する基板、透明電極、電解質、対向電極等、あらゆる観点から新材料が試みられており、非腐食性電界質の開発も進められているので、材料が限定される訳ではない。
上記金属ナノ粒子の粒子径は、1〜10nmであることが好ましい。より好ましくは、3〜5nmである。そして、金属酸化物粒子に対する金属ナノ粒子の付着量は、金属酸化物粒子1cmあたり0.00001〜0.5cmであることが好ましい。更に、0.0001〜0.1cmの付着量であることがより好ましい。この粒子径及び付着量(粒子数)は、PVDの条件、母材の攪拌条件等によって容易に制御することが可能である。上記領域にある金属ナノ粒子が、SPRの光電変換効率向上に効果的であることはいうまでのないが、この原因は定かではないが、粒子表面に堆積しているナノ粒子の積層構造、金属ナノ粒子と母材である金属酸化物粒子や金属粒子との相互作用等に関係しており、それが、従来にはない効果を発現するものと推測している。
一方、金属ナノ粒子が堆積する上記母材は、金属酸化物粒子や金属粒子が好ましく用いられ、特に制限はない。
特に、色素増感型太陽電池用の母材には金属酸化物粒子が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化第二スズ、三酸化タングステン、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム等やそれらの複合系を用いることができる。しかし、酸化チタン、特に、ルチル型よりもアナターゼ型酸化チタンが好ましい。また、シリコンやステアリン酸等の表面処理剤で処理されていないものが好ましい。その粒子径は1〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、15〜50nmがより更に好ましい。粒子径が1nmより小さいと、金属ナノ粒子の生成及び付着が困難となる。一方、粒子径が200nm以上になると、光の透過性が悪くなり、色素、金属ナノ粒子に対し、光が十分作用することができなくなる。このような本発明に適した酸化チタンとしては、触媒として利用されるものが市販されており、石原産業製STシリーズやMCシリーズ、堺化学工業製触媒用酸化チタン、テイカ製AMTシリーズ、シーアイ化成製Nano Tech、チタン工業製PCシリーズ、古河機械金属製DNシリーズ、日本エアロジル製Pシリーズ等から選ぶことができる。ただし、色素増感型太陽電池の電界質に分散させる場合は、金属粒子でもよく、その粒子径は上記金属酸化物と同様である。
一方、有機半導体系太陽電池の場合、母材に使用する材料に制限はないが、光によって誘起されるプラズモン共鳴振動数が可視光から近赤外光領域の波長に存在する金や銀等が好ましい。その粒子径は、その粒子径は1〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、15〜50nmがより更に好ましい。
次いで、上記金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子を色素増感型太陽電池の電極材料に適用した例を用いてより具体的に説明するが、本発明の技術思想は、これに限定されるものではなく、課題を解決する手段及び発明の効果で述べたとおりである。
上記金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子を光電極材料として用いた色素増感型太陽電池は次のようにして作製される。まず、上記金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子を含む光電極は、界面活性剤やバインダー樹脂溶液に金属ナノ粒子担持金属酸化物を分散させたペーストを、酸化インジウムと酸化スズから成るITO膜や酸化スズにフッ素をドープしたFTO膜等の透明電極を設けたガラスや合成樹脂の透明基板上に塗布、乾燥させた後、これを色素溶液に浸漬して色素を吸着させて製造することができる。上記ペーストの塗布方法は、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、その他一般的な塗布方法が、上記ペーストの濃度や粘度に応じて使い分けられる。
上記ペーストに用いられる界面活性剤は、イオン性、ノニオン性、カチオン性いずれのものを用いても構わないが、バインダー樹脂としては、分散性を考慮して、界面活性能の高い水溶性樹脂が好ましい。水溶性樹脂としては、ポリアミック酸、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸共重合体、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等があり、特に限定されない。透明基板がガラスの場合、乾燥後、バインダー樹脂を数百度で分解するため、熱分解性に優れたセルロース誘導体の水溶性樹脂がバインダー樹脂として好ましい。透明基板が合成樹脂の場合は、熱分解できないため、バインダー樹脂を可能な限り少なくすることができる、分散性に優れた界面活性能が高い樹脂が好ましい。
色素としては、カルボキシ基を有するルテニウムのビピリジン錯体に代表されるポリピリジルルテニウム錯体が最も適しているが、中心金属として、鉄、銅、白金等の錯体、或いは、金属を含まないメロシアニン系、シアニン系、フタロシアニン系、ポルフィリン系、アゾ系、クマリン系、インドリン系、トリフェニルアミン系等の有機色素も用いることができる。この色素溶液は、溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、或いは、これらのアセトニトリル混合溶媒等が、1〜5×10−4mol/l程度の濃度として用いられる。
光電極の対向電極は、上記透明電極を設けた透明基板に、白金や炭素質材料で電極を設けたものが適しているが、導電性ポリマーを皮膜化したものも用いることができる。
上記両電極の間には、ニトリル系有機溶媒を基本とするハロゲン系酸化還元電解質が封入され、シーリングされて色素増感型有機太陽電池が完成する。特に、液体電解質としては、ヨウ素系酸化還元電解質が最も適しており、アセトリトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル系有機溶媒に、ヨウ素、ヨウ化リチウムを溶解したものに、逆電流を防ぎ起電力を高めるt−ブチルピリジン等を添加したり、粘性を低くしイオンの拡散をスムーズにする常温溶融塩である1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド等が添加することができる。更に、液体電解質のシーリング性や長期安定性を改良することができる固体電解質を用いることもできる。固体電解質としては、ポリアルキレンオキサイド、ポリアクリロニトリル等の高分子網目に有機溶媒を吸着させるタイプ、イミダゾリウム系等のイオン性液体を用いるタイプ、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の正孔輸送材料を用いるタイプ等がある。
以下、更に、色素増感型太陽電池の場合について、実施例及び比較例を挙げて説明し、本発明の一部をより具体的に説明する。
まず、図1に示したように、真空蒸着槽1に内に備えられた撹拌槽3の中に、平均粒径約20nmのアナターゼ型酸化チタン粒子を適量投入する。次いで、蒸着源2に平均粒径約10mm、純度99.99%である真空蒸着用銀ペレットを備え付ける。
次いで、上記真空蒸着槽の真空度が1×10〜1torrになるように排気しながら、不活性ガス導入系7からArを真空蒸着槽1に導入する。真空度が安定したら、撹拌槽3のプロペラ4を1〜200rpmの回転速度で撹拌しながら、蒸着源2の銀を、固定された平面基板上において単位面積当たり1Å〜10μm/分の速度で蒸発、シャッター6を開け、酸化チタン表面に1〜10nmの銀ナノ粒子が形成される。そして、酸化チタン粒子1cmあたり約0.001cmの銀ナノ粒子となるように蒸着し、シャッター6を閉じる。生成された銀粒子担持酸化チタン粒子は窒素置換された容器に保存された。
この銀粒子担持酸化チタンを用いた光電極、及び、それを用いた色素増感型太陽電池の一例を次に示す。
光電極及びその対向電極として使用する導電性の透明電極基板は、FTO膜を透明導電膜とした太陽電池用ガラス(AGCファブリテック社製)を使用した。
光電極用銀粒子担持酸化チタンペーストは、銀粒子担持酸化チタンが30wt%となるように、ポリエチレングリコール6000を40wt%溶解した、アセチルアセトン10wt%及びエタノール20wt%を含む水に投入し、超音波分散して光電極用ペーストを作製した。これを、上記等電極基板にスクリーン印刷法で塗布し、乾燥膜厚約15μmとし、その後400℃で焼成した。これを、カルボキシ基を有するルテニウムのビピリジン錯体に代表されるルテニウム錯体(RuL(NCS),L=2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシアシッド,Aldrich社製)が、濃度2.0×10−4mol/lとなるように溶解されたアセトリトリル/エタノール=1/1(v/v)混合溶媒に24hr浸漬して、上記酸化チタンの部分に上記ルテニウム錯体を吸着させた後、80℃×24hr乾燥して光電極とした。一方、対向電極は、上記太陽電池用ガラスにスパッタリング法で白金をコーティングして作製した。
上記両電極の間隙に注入する電解質は、酸化還元電解質としてヨウ素/ヨウ化リチウム=10/3(w/w)、粘性を低くしイオンの拡散をスムーズにする常温溶融塩として1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド60(w)、逆電流を防ぎ開放起電圧を高める4−t−ブチルピリジン50(w)を、3−メトキシプロピオニトリルに溶解したものを用いた。
最後に、両電極基板間に、ポリイミドフィルム50μmをスペーサーとして挟み、電解液を注入する口と脱気する口を除き、周辺をエポキシ樹脂で封止した後、電解質を注入して、注入口と脱気口を封止して色素増感型太陽電池を作製した。
比較例
光電極を作製する酸化チタンペーストの酸化チタン粒子を、平均粒径約20nmのアナターゼ型酸化チタン粒子としたことを除き、実施例と同様に、色素増感型太陽電池を作製した。
以上の結果、ソーラーシミュレーターで1000W/mの擬似太陽光を照射して、電流電圧特性を測定した結果、実施例は、比較例の約1.5倍の光電変換効率であった。
本発明の金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子は、有機系太陽電池の電極だけでなく、様々な有機太陽電池の構成材料に応用することができる。
特に、本発明の金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子は、透明導電膜を形成した透明基板上に白金若しくは炭素質材料をコーティングした対向電極と、透明導電膜を形成した透明基板上に酸化チタン等の金属酸化物膜を形成し、この金属酸化物膜の表面にルテニウム錯体等の色素を担持した光電極とを、酸化還元電解質を介して対向させ、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するようにした色素増感型太陽電池において、負極金属酸化物皮膜の構成材料として利用される。また、本発明の金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子は、有機半導体系太陽電池の電極材料としても利用される。更に、本発明の金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子を、色素増感型太陽電池の電解質として、有機半導体系太陽の半導体層として利用できる。従って、本発明の金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子を用いた有機系太陽電池は、光電変換効率に優れ、低コスト化・大面積化を実現し、持続可能な社会を実現しうる住宅発電システムに適したものである。
1 真空蒸着槽
2 蒸着源
3 撹拌槽
4 プロペラ
5 モーター
6 シャッター
7 不活性ガス導入系
8 真空排気系
9 透明基板
10 透明電極
11 白金あるいは炭素質材料
12 酸化物粒子
13 物理蒸着法により生成した金属ナノ粒子
14 色素
15 酸化還元電解質
16 太陽
更に具体的には、本発明は、PVD槽に、その上部に設けられた蒸発源、その蒸発源下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽、その拌槽内に設けられた蒸発物質が前記母材に均一に堆積するための拌機、を少なくとも設置し、母材として粒子径1〜200nmの金属酸化物粒子及び/または金属粒子を拌層に投入し、少なくとも1種以上の金属を蒸発源として用い、上記金属酸化物粒子及び/または金属粒子を撹拌しながら、その表面に粒子径1〜10nmの金属ナノ粒子を堆積して製造されることを特徴とする、有機系太陽電池の構成材料に適した金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子である。また、それを構成材料として用いたことを特徴とする有機系太陽電池である。並びに、その材料の特性を発現するために適した材料の上記製造方法を提供する。
具体的には、図1に示したように、PVD槽内の上部に設けられた蒸発源、蒸発源下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽、拌槽内に設けられた蒸発物質が母材に均一に堆積するための拌機を少なくとも設置し、母材である粒子を撹拌しながら、蒸着源の金属を蒸発させることによって、金属ナノ粒子が粒子表面上に堆積される。PVD法としては、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、及び、各種スパッタリング法を用いることができ、例えば、非特許文献9、特許文献8及び9等の方法が開示されている。このようにして作製された金属ナノ粒子が担持された粒子は、金属ナノ粒子の酸化を防止するため、不活性ガスで置換された容器に保存されることが好ましい。
上記金属ナノ粒子の粒子径は、1〜10nmであることが好ましい。より好ましくは、3〜5nmである。そして、金属酸化物粒子に対する金属ナノ粒子の付着量は、金属酸化物粒子1cmあたり0.00001〜0.5cmであることが好ましい。更に、0.0001〜0.1cmの付着量であることがより好ましい。この粒子径及び付着量(粒子数)は、PVDの条件、母材の拌条件等によって容易に制御することが可能である。上記領域にある金属ナノ粒子が、SPRの光電変換効率向上に効果的であることはいうまでのないが、この原因は定かではないが、粒子表面に堆積しているナノ粒子の積層構造、金属ナノ粒子と母材である金属酸化物粒子や金属粒子との相互作用等に関係しており、それが、従来にはない効果を発現するものと推測している。

Claims (5)

  1. 物理蒸着槽内に、前記物理蒸着槽上部に設けられた蒸発源、前記蒸発源下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽、前記攪拌槽内に設けられた前記蒸発物質が母材に略均一に堆積するための攪拌機を少なくとも設置し、前記母材として金属酸化物粒子及び/または金属粒子を、前記蒸発源として金、銀、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、及び、チタン合金、の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属を用い、前記金属酸化物粒子及び/または金属粒子を撹拌しながら、その表面に前記金属ナノ粒子が担持されたことを特徴とする有機系太陽電池用材料。
  2. 前記金属酸化物粒子及び/または金属粒子の粒子径が、1〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機系太陽電池用材料。
  3. 前記金属ナノ粒子の粒子径が、1から10nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機系太陽電池用材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持金属酸化物粒子及び/または金属粒子を有機系太陽電池の構成材料の少なくとも一つとして用いることを特徴とする有機系太陽電池。
  5. 物理蒸着槽内に、前記物理蒸着槽上部に設けられた蒸発源、前記蒸発源下部に設けられた蒸発物質が堆積する母材を投入する撹拌槽、前記攪拌槽内に設けられた前記蒸発物質が母材に略均一に堆積するための攪拌機を少なくとも設置し、前記母材として金属酸化物粒子及び/または金属粒子を、前記蒸発源として金、銀、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、及び、チタン合金、の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属を用い、前記金属酸化物粒子及び/または金属粒子を撹拌しながら、その表面に前記金属ナノ粒子を担持することを特徴とする有機系太陽電池用材料の製造方法。
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