JP2016003746A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】皿バネ等の弾性部材を設けても、第1ピストン部の重量増加や耐久性の低下を招くことなく、かつ、第2シリンダ部のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことのない押圧装置を備えたトロイダル型無段変速機を提供する。【解決手段】押圧装置40は、第1シリンダ部41と、第2シリンダ部59と、第1ピストン部61と、第2ピストン部60とを備え、第2シリンダ部59の第1ピストン部61が当接する端面59aより軸方向内側でかつ第2シリンダ部59の内径側と、第1ピストン部61との間に弾性部材としての皿バネ100が設けられているので、従来と異なり皿バネを設けるための凹溝を第1ピストン部61に設ける必要ないので、当該第1ピストン部61の重量増加や耐久性の低下を招くことなく、かつ、第2シリンダ部59のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことがない。【選択図】図2

Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図4および図5に示すように構成されている。図4に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車(伝達歯車)4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図4中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図4中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図4中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1とともに回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図5参照)が回転自在に挟持されている。
図4中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図4の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力(予圧)を付与する。
図5は、図4のA−A線に沿う断面図である。図5に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図5においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図5の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図5の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図5の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ56によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図5で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図5の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ56と下側シリンダボディ57とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、さらにこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図5の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。
その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、上述の押圧装置12として油圧式の押圧装置が用いられる場合がある。この油圧式の押圧装置の一例として特許文献1に記載されたものが知られている。
図6は、特許文献1に記載されたトロイダル型無段変速機の押圧装置40を示す断面図である。
押圧装置40は、入力軸1の入力端部1aと一体の第1シリンダ部41と、入力側ディスク2と一体の第2シリンダ部59と、第1ピストン部61と、第2ピストン部60とを備えている。第1シリンダ部41は、第2シリンダ部59の外周に係合しており、入力側ディスク2の背面2dと対向した状態で配されている。また、第2シリンダ部59は、筒状に形成されており、入力側ディスク2の外周縁から第1シリンダ部41に向けて延びている。
第2ピストン部60は、その内周面が入力軸1の外周面に嵌合されるとともに、その外周面が第2シリンダ部59の内周面に嵌合されており、入力側ディスク2の背面2dに対向した状態で配されている。また、第1ピストン部61は、その内周面が入力軸1の外周面に嵌合されるとともに、その外周面が第1シリンダ部41の内周面に摺動自在に嵌合されており、第2ピストン部60と第1シリンダ部41との間に配されている。
第1シリンダ部41の内面と、第1ピストン部61と、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第1油圧室(油室)70を構成している。この第1油圧室70は、第1ピストン部61の外周部および内周部に装着されたシール部材71、72によって、流体密(液密および気密)に保たれている。また、第2シリンダ部59の内周面と、第2ピストン部60と、入力側ディスク2の背面2dと、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第2油圧室(油室)67を構成している。この第2油圧室67は、第2ピストン部60の外周部に装着されたシール部材65によって、流体密に保たれている。また、第2シリンダ部59の内周側において、第2ピストン部60と第1ピストン部61との間に位置する空間75は空気室となっている。空気室75は、複数のシール部材65,72によって流体密に保たれている。また、第2シリンダ部59は、空気室75を外部に連通させる連通溝としても機能する隙間Sを第1ピストン部61との間に有しており、この隙間Sを介して第1ピストン部61と当接可能となっている。そして、第1ピストン部61と第2シリンダ部59との間には、予圧を付与するための皿バネ100が介挿されている。この場合、皿バネ100は、予圧調整用のプレート102により、第2シリンダ部59と常時接触された状態で配置されている。
各油圧室67,70に油を供給するため、エンジン側の前記駆動軸には油路が形成されている。具体的には、入力軸1の入力端部1aには、軸線Oと同軸な内孔1fが長手方向に沿って形成されており、この内孔1fには入力軸1に結合される駆動軸の延出部が嵌挿されるようになっている。また、前記延出部には、その長手方向に沿って延びる油路と、この油路と直交するように径方向に延びる油孔とが形成されている。また、入力軸1には、前記油孔と各油圧室67,70とをそれぞれ繋ぐ油孔82,80が形成されている。
第1油圧室70に通じる第1油孔80は、入力軸1の軸線Oと直交するように径方向に延びており、また、第2油圧室67に通じる第2油孔82は、入力軸1の軸線Oに対して斜めに延びている。
このような構成の押圧装置40では、第2油圧室67内に圧油が供給されると、この圧油は、第2ピストン部60と入力側ディスク2の背面2dとが互いに離れる方向に入力側ディスク2を移動させる。これにより、入力側ディスク2が出力側ディスクに向かって押圧される。一方、第1油圧室70内に圧油が供給されると、この圧油は、第1ピストン部61と第1シリンダ部41とが離れる方向に第1シリンダ部41を移動させる。これにより、第1シリンダ部41と一体を成す入力軸1がエンジン側へと移動し、エンジンから遠くに位置し、かつ入力軸1に軸方向外側への移動が規制されて設けられた入力側ディスク2が出力側ディスクに向かって押圧される。こうして、それぞれのパワーローラのトラクション部が入出力側ディスク2,3の双方に転接し、入力側ディスク2の回転駆動力を所望の減速比で出力側ディスク3に伝達する。
特許第4605495号公報
ところで、図6に示すような押圧装置を備えたトロイダル型無段変速機では、第1ピストン部61の外径側の側面に環状の凹溝を設け、この凹溝に弾性部材としての皿バネ100を挿入している。したがって、この凹溝を設ける分、第1ピストン部61を肉厚に形成する必要があり、このため第1ピストン部の重量増加を招く。
また、第1ピストン部61の外径側は第2シリンダ部59から荷重を受けるので、高応力部位となるが、この高応力部位に凹溝を設けるため、第1ピストン部の耐久性の低下が懸念される。
さらに、第2シリンダ部59と第1ピストン部61との接触部は、第2シリンダ部59が一体形成された入力側ディスク2の変形(パワーローラにより押圧されるため変形する。)によりフレッチング摩耗の虞があるため、接触面圧を下げるために所定の接触面積が必要である。この場合、第2シリンダ部59の内径を小さくするか、入力側ディスク2の外径を大きくする必要があり、第2シリンダ部のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことになる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、皿バネ等の弾性部材を設けても、第1ピストン部の重量増加や耐久性の低下を招くことなく、かつ、第2シリンダ部のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことのない押圧装置を備えたトロイダル型無段変速機を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、それぞれの内側面どうしを互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転自在に設けられた第1ディスクおよび第2ディスクと、これら両ディスクの間に挟持されるパワーローラと、前記第1ディスクの背面側に配置され、かつ前記第1ディスクを前記第2ディスク側に向けて押圧する油圧式の押圧装置とを備え、
前記押圧装置は、前記第1ディスクの背面側に設けられた第1シリンダ部と、前記第1ディスクと一体的に設けられた第2シリンダ部と、前記第1シリンダ部に設けられた第1ピストン部と前記第2シリンダ部に設けられた第2ピストン部とを備え、
前記第1シリンダ部の第1油圧室内への油の導入に伴って、前記第1ピストン部と前記第1シリンダ部とが互いに離間するように軸方向に移動するとともに、第1ピストン部が第2シリンダ部と当接し、前記第2シリンダ部の第2油圧室内への油の導入に伴って、第2ピストン部と第2のシリンダ部とが互いに離間するように軸方向に移動するトロイダル型無段変速機であって、
前記第2シリンダ部の前記第1ピストン部が当接する端面より軸方向内側でかつ前記第2シリンダ部の内径側と、前記第1ピストン部との間に弾性部材が設けられていることを特徴とする。
本発明においては、第2シリンダ部の第1ピストン部が当接する端面より軸方向内側でかつ第2シリンダ部の内径側と、第1ピストン部との間に弾性部材が設けられているので、従来と異なり、第1ピストン部の外径側の側面に、皿バネ等の弾性部材を挿入するための凹溝を設ける必要がない。したがって、第1ピストン部を肉厚に形成する必要がないので、第1ピストン部の重量増加を招くことがない。
また、第1ピストン部の外径側は第2シリンダ部から荷重を受けるので、高応力部位となるが、この高応力部位に前記のような凹溝を設ける必要がないため、第1ピストン部の耐久性の低下を招くこともない。
さらに、第2シリンダ部と第1ピストン部との接触部は接触面圧を下げるために所定の接触面積が必要であるが、従来と異なり、第1ピストン部の外径側の側面に、皿バネ等の弾性部材を挿入するための凹溝を設ける必要がないため、第2シリンダ部の内径を小さくする必要や、入力側ディスクの外径を大きくする必要がない。したがって、第2シリンダ部のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことがない。
本発明の前記構成において、前記第2シリンダ部の内径側に、前記弾性部材を係合させるための係合部が設けられていてもよい。
このような構成によれば、第2シリンダ部の内径側に設けられた係合部に、弾性部材を係合させることによって、弾性部材の第2シリンダ部の軸方向における位置決めを確実に行うことができる。
請求項1に係る本発明によれば、押圧装置に皿バネ等の弾性部材を設けても、第1ピストン部の重量増加や耐久性の低下を招くこともないし、第2シリンダ部のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことものない。
本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、その断面図である。 同、押圧装置の断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の押圧装置を示すもので、(a)は断面図、(b)は第2シリンダ部付近の拡大断面図である。 従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。 図4におけるA−A線に沿う断面図である。 従来のトロイダル型無段変速機の他の一例を示すもので、その押圧装置の断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施の形態のトロイダル型無段変速機と、図4〜図6に示す従来のトロイダル型無段変速機と共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
(第1の実施の形態)
図1に示す第1の実施の形態のトロイダル型無段変速機は、例えば、ケーシングに収容する前の段階で、入力軸1、入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、外周歯車4A、上下のヨーク23A,23B、トラニオン、パワーローラ11、駆動装置32、油圧式の押圧装置40、固定部材52(アッパープレート)等が一体に組み立てられてバリエータモジュール43とされ、このバリエータモジュール43をケーシング内に収容して取り付けるようになっている。
このようなバリエータモジュール43においては、駆動装置32の駆動シリンダ31を構成する上側シリンダボディ56および下側シリンダボディ57に固定される下側の球面ポスト68と、アッパープレート52に固定される上側の球面ポスト64とが上下に一体に接合された柱状ポスト69とされ、バリエータモジュール43において一対の柱状ポスト69がアッパープレート52と、駆動シリンダ31のシリンダボディ(上側シリンダボディ56および下側シリンダボディ57)を接続した状態となっている。
また、柱状ポスト69の上下の中央部分を入力軸1が貫通した状態となっている。この入力軸1に一対の入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、押圧装置40等が支持されている。
出力側ディスク3Aは、ラジアルニードル軸受(ラジアル軸受)35を介して入力軸1に相対回転自在に支持されている。
また、前記一対の柱状ポスト69の間に、出力側ディスク3Aが配置され、この出力側ディスク3Aの軸方向両端に出力側ディスク3Aを軸方向に位置決めするとともに軸回りに回転可能に支持するスラスト軸受55が設けられている。すなわち、柱状ポスト69と、出力側ディスク3Aの小径側端部との間にスラスト玉軸受(スラスト軸受)55が配置され、出力側ディスク3Aの入力軸1の軸方向に沿った位置が規制されるとともに、出力側ディスク3Aの軸回りの回転を許容している。
次に前記押圧装置40について図2を参照して説明する。この押圧装置40は、図5に示す従来の押圧装置を改良したものである。したがって、以下では、本実施の形態における押圧装置40が図5に示す押圧装置40と異なる点について説明し、その他の共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
押圧装置40は、入力軸1の右端部に結合される第1シリンダ部41と、入力側ディスク2に設けられた第2シリンダ部59と、環状の第1ピストン部61と、環状の第2ピストン部60とを備えている。
第1シリンダ部41の内面と、第1ピストン部61と、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第1油圧室70を構成している。
また、第2シリンダ部59の内周面と、第2ピストン部60と、入力側ディスク2の背面2dと、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第2油圧室67を構成している。
また、第2シリンダ部59の内周側において、第2ピストン部60と第1ピストン部61との間に位置する空間75は空気室となっている。また、第2シリンダ部59は、空気室75を外部に連通させる連通溝としても機能する隙間Sを第1ピストン部61との間に有しており、この隙間Sを介して第1ピストン部61と当接可能となっている。
各油圧室67,70に油を供給するため、入力軸1の入力端部1aには内孔1fが形成されており、この内孔1fには入力軸1に結合される駆動軸の延出部が嵌挿されるようになっている。この延出部から内孔1fに油が供給されるようになっている。また、入力軸1には、内孔1fと第1油圧室70とを繋ぐ油孔80が形成され、この油孔80の途中に油孔81が形成され、さらに、この油孔81と第2油圧室67を繋ぐ油孔82が形成されている。
第1油圧室70に通じる油孔80は、入力軸1の軸線方向に対して傾斜して延び、第2油圧室67に通じる油孔82は、入力軸1の軸線方向に対して直交して延び、油孔80と油孔82とを繋ぐ油孔81は入力軸1の軸線方向に対して傾斜して延びている。
また、第2シリンダ部59の第1ピストン部61が当接する端面59aより軸方向内側(図2において左側)でかつ第2シリンダ部59の内径側と、第1ピストン部61との間に、予圧を与えるための弾性部材としての皿バネ100が設けられている。
すなわちまず、第2シリンダ部59の内径面には、環状の凹溝101が周方向に沿って形成されている。この凹溝101は、第2シリンダ部59の端面59aより軸方向内側に形成され、この凹溝101に円環状の止め輪102Aが嵌合されている。
そして、この止め輪102Aの第1ピストン部61側を向く側面と第2シリンダ部59の先端内径面とで形成される隅部に皿バネ100の外周側が係合されている。つまり、凹溝101に嵌合された止め輪102Aおよび第2シリンダ部59の先端内径面とで形成された隅部が本発明に係る係合部110に相当し、この係合部110に皿バネ100が係合されている。
また、この皿バネ100の内周側は第2シリンダ部59の端面59aより軸方向外側に突出しており、この突出した内径側が第1ピストン部61の外周側の側面に当接している。
このような構成の押圧装置40では、第2油圧室67内に圧油が供給されると、この圧油は、第2ピストン部60と入力側ディスク2の背面2dとが互いに離れる方向に入力側ディスク2を移動させる。これにより、入力側ディスク2が出力側ディスクに向かって押圧される。一方、第1油圧室70内に圧油が供給されると、この圧油は、第1ピストン部61と第1シリンダ部41とが離れる方向に第1シリンダ部41を移動させる。これにより、第1シリンダ部41と一体を成す入力軸1がエンジン側(図2において右側)へと移動し、コッタ9a(図1参照)を介して、エンジンから遠くに位置する反対側の入力側ディスク2が出力側ディスクに向かって押圧される。こうして、それぞれのパワーローラ11のトラクション部が入出力側ディスク2,3の双方に転接し、入力側ディスク2の回転駆動力を所望の減速比で出力側ディスク3に伝達する。
また、このような押圧作動時(第1油圧室70内および第2油圧室67内に圧油が供給された際)、第1ピストン部61は、隙間Sを埋めるように第2シリンダ部59の端面59aと当接し、第2シリンダ部59との間に介挿された皿バネ100を圧縮させるが、第1ピストン部61と第2シリンダ部59とが当接するため、皿バネ100の圧縮量は隙間S分の長さだけに留まる。
このように、本実施形態では、第1ピストン部61と第2のシリンダ部59との間に、予圧を付与する弾性部材としての皿バネ100が介挿されているが、第1油圧室70内および第2油圧室67内に油を供給して押圧力を増大した場合でも、第1ピストン部61と第2シリンダ部59とが当接することにより、皿バネ100の圧縮量が制限される(皿バネ100の縮み過ぎが防止される)ため、推力変化を小さく抑えることができる。すなわち、押し付け力の変化を抑えることができ、押圧装置40からの推力が過大になったり、あるいは、過小になったりすることを防止できる。その結果、トロイダル型無段変速機の効率低下や耐久性低下を防止することができる。また、皿バネ100の振幅が小さくなるため、皿バネ100の疲労を抑えることも可能になる。
また、第2シリンダ部59の第1ピストン部61が当接する端面59aより軸方向内側でかつ第2シリンダ部59の内径側と、第1ピストン部61との間に皿バネ100が設けられているので、従来と異なり、第1ピストン部61の外径側の側面に、皿バネ等の弾性部材を挿入するための凹溝を設ける必要がない。したがって、第1ピストン部61を図6に示した第1ピストン部61より肉厚に形成する必要がないので、第1ピストン部の重量増加を招くことがない。
また、第1ピストン部61の外径側は第2シリンダ部59から荷重を受けるので、高応力部位となるが、この高応力部位に凹溝を設ける必要がないため、第1ピストン部61の耐久性の低下を招くこともない。
さらに、第2シリンダ部59と第1ピストン部61との接触部は接触面圧を下げるために所定の接触面積が必要であるが、従来と異なり、第1ピストン部61の外径側の側面に、皿バネ等の弾性部材を挿入するための凹溝を設ける必要がないため、第2シリンダ部59の内径を小さくする必要や、入力側ディスク2の外径を大きくする必要がない。したがって、第2シリンダ部59のポンプ圧力の上昇もしくは重量増加を招くことがない。
加えて、第2シリンダ部59の内径面に設けられた凹溝101に、止め輪102Aを嵌合し、この止め輪102Aと第2シリンダ部59の先端内径面とで形成される隅部(係合部110)に皿バネ100の外周側が係合されているので、皿バネ100の第2シリンダ部59の軸方向における位置決めを確実に行うことができる。
また、皿バネ100が従来と異なり凹溝に嵌め込まれていないので、皿バネ100の径方向の幅を広げ易く、皿バネ100の内外径差を大きくできるため、皿バネ100の応力を低くできる。
(第2の実施の形態)
図3は第2の実施の形態示すもので、押圧装置40の断面図である。この押圧装置40が第1の実施の形態における押圧装置40と異なる点は、弾性部材としての皿バネ100の取り付け方であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態における押圧装置と共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
第1の実施の形態では、皿バネ100の外周側を、第2シリンダ部59の内径側の凹溝101に嵌合された止め輪102Aと第2シリンダ部59の先端内径面とで形成された隅部(係合部110)に係合しているのに対し、本実施の形態では以下のようにして皿バネ100の外周側を係合している。
すなわち、第2シリンダ部59の第1ピストン部61が当接する端面59aより軸方向内側で、かつ第2シリンダ部59の先端内径面には、当該内径面と所定の段差をもった円筒状の段差面103が周方向に沿って形成されるとともに、この段差面103と直交する環状の設置面104が周方向に沿って形成されている。
そして、段差面103と設置面104とで形成された隅部に、皿バネ100の外径側が係合されている。つまり、このような隅部が本発明に係る係合部111に相当し、この係合部111に皿バネ100が係合されている。
また、この皿バネ100の内周側は第2シリンダ部59の端面59aより軸方向外側に突出しており、この突出した内径側が第1ピストン部61の外周側の側面に当接している。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる他、第1の実施の形態に比して、皿バネ100を係合するための係合部111(段差面103と設置面104とで形成された隅部)を容易に形成できるとともに、止め輪102Aも必要ないので、その分、コスト削減を図ることができるという利点がある。
なお、トロイダル型無段変速機では、入力側ディスクと出力側ディスクの入出力関係を逆にする場合もある。したがって、本発明は、入力側ディスク2と出力側ディスク3とを入れ替えた場合にも適用できる。また、本発明は、ハーフトロイダル型無段変速機の他、フルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
2 入力側ディスク(第1ディスク)
3 出力側ディスク(第2ディスク)
11 パワーローラ
40 押圧装置
41 第1シリンダ部
59 第2シリンダ部
59a 端面
60 第2ピストン部
61 第1ピストン部
67 第2油圧室
70 第1油圧室
100 皿バネ(弾性部材)
101 凹溝
102A 止め輪
103 段差面
104 設置面
110 係合部
111 係合部

Claims (1)

  1. それぞれの内側面どうしを互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転自在に設けられた第1ディスクおよび第2ディスクと、これら両ディスクの間に挟持されるパワーローラと、前記第1ディスクの背面側に配置され、かつ前記第1ディスクを前記第2ディスク側に向けて押圧する油圧式の押圧装置とを備え、
    前記押圧装置は、前記第1ディスクの背面側に設けられた第1シリンダ部と、前記第1ディスクと一体的に設けられた第2シリンダ部と、前記第1シリンダ部に設けられた第1ピストン部と前記第2シリンダ部に設けられた第2ピストン部とを備え、
    前記第1シリンダ部の第1油圧室内への油の導入に伴って、前記第1ピストン部と前記第1シリンダ部とが互いに離間するように軸方向に移動するとともに、第1ピストン部が第2シリンダ部と当接し、前記第2シリンダ部の第2油圧室内への油の導入に伴って、第2ピストン部と第2のシリンダ部とが互いに離間するように軸方向に移動するトロイダル型無段変速機であって、
    前記第2シリンダ部の前記第1ピストン部が当接する端面より軸方向内側でかつ前記第2シリンダ部の内径側と、前記第1ピストン部との間に弾性部材が設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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