JP2016003598A - 内燃機関の制御システム - Google Patents

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聡 谷口
雅紀 杉浦
Masaki Sugiura
雅紀 杉浦
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Abstract

【課題】本発明は、CNGを含む複数種の燃料を使用可能な内燃機関の制御システムにおいて、CNGの性状変化に起因したドライバビリティの悪化や排気エミッションの悪化を軽減することを課題とする。
【解決手段】本発明は、圧縮天然ガスと他の燃料を使用可能な内燃機関において、圧縮天然ガスの性状を学習するための学習処理を行う学習手段と、前記学習手段による学習処理が終了する前は、他の燃料から圧縮天然ガスへ切り替えを所定の中回転・中負荷領域に制限する制限手段と、を備えるようにした。
【選択図】図4

Description

本発明は、圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)を含む複数種の燃料を使用可能な内燃機関の制御システムに関する。
に関する。
近年、CNGを含む複数種の燃料を使用可能な内燃機関が知られている。このような内燃機関として、CNGの補充後に内燃機関が始動されるときに、ガソリンを使用して内燃機関を始動させるものが知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
国際公開第2013/145930号 特開2013−130156号公報
ところで、CNGの補充後に他の燃料を使用して内燃機関が始動され、その後に他の燃料からCNGへ切り替えられると、混合気の空燃比がCNGの性状(組成)に適した空燃比から懸け離れる可能性がある。その結果、ドライバビリティが悪化したり、排気エミッションが悪化したりする可能性がある。
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、CNGを含む複数種の燃料を使用可能な内燃機関の制御システムにおいて、CNGの性状変化に起因したドライバビリティの悪化や排気エミッションの悪化を軽減することにある。
本発明は、上記した課題を解決するために、以下のような手段を採用した。すなわち、本発明は、圧縮天然ガスと他の燃料を使用可能な内燃機関において、
圧縮天然ガスの性状を学習するための学習処理を行う学習手段と、
前記学習処理が終了する前は、他の燃料から圧縮天然ガスへ切り替えを所定の中回転・中負荷領域に制限する制限手段と、
を備えるようにした。
燃料タンクに圧縮天然ガス(CNG)が補給(充填)されると、燃料タンク内に残っているCNG(以下、「残留CNG」と称する)と補給されたCNG(以下、「補給CNG」と称する)とが混合する。その際、補給CNGと残留CNGとの性状が相異していると、燃料タンク内のCNG(補給CNGと残留CNGとが混合したCNG(以下、「混合CNG」と称する))の性状が残留CNGの性状と相異することになる。
ここで、CNGの性状変化が内燃機関の運転状態に及ぼす影響としては、理論空燃比の変化やウォッペ指数(CNGの総発熱量をCNGの比重の2乗根で除算した値)の変化等が挙げられる。たとえば、気体燃料に含まれる不活性ガスの濃度(たとえば、二酸化炭素(CO)や窒素(N))が変化すると、混合気中のCNGと酸素とが過不足なく反応する空燃比(理論空燃比)が変化するとともにウォッペ指数が変化する。
よって、内燃機関が混合CNGによって運転されるときに、残留CNGの性状に基づい
て内燃機関が運転されると、混合気の空燃比が所望の空燃比とならず、ドライバビリティが悪化したり、排気エミッションが悪化したりする可能性がある。よって、CNGの性状が変化した場合は、混合CNGの性状に適した条件で内燃機関を運転させる必要がある。
混合CNGの性状に適した条件で内燃機関を運転させるためには、混合気の空燃比に係わる制御パラメータ(たとえば、燃料噴射量、吸入空気量、EGRガス量等)をCNGの性状に適した値に補正するための補正値や学習値を求めるための学習処理を行う必要がある。
ところで、混合CNGの性状を学習する学習処理が終了する前に、他の燃料からCNGへの切り替えが行われると、切り替え後の混合気の空燃比が混合CNGの性状に適した空燃比とならず、ドライバビリティや排気エミッションの悪化を招く可能性がある。特に、内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるとき、及び内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときに、他の燃料からCNGへの切り替えが行われると、排気エミッションの悪化又はドライバビリティの悪化が顕著になる虞がある。
内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるときは、単位時間あたりの燃料噴射量が多くなるため、単位時間あたりに内燃機関から排出される有害ガス成分(たとえば、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等)の量も多くなる。よって、内燃機関が高回転・高負荷運転状態にあるときに、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の混合気の空燃比が目標空燃比から乖離すると、触媒等の排気浄化装置によって浄化されない有害ガス成分の量が多くなる可能性がある。また、高回転領域(たとえば、3000rpm以上)において、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の空燃比が目標空燃比から乖離すると、内燃機関が発生する振動が大きくなる可能性がある。さらに、高負荷領域では、触媒等の排気浄化装置の過昇温を抑制するために、混合気の空燃比を理論空燃比より低いリッチ空燃比にする場合がある。そのような場合に、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の空燃比が目標空燃比よりリーンな空燃比になると、排気浄化装置の過昇温を抑制することができなくなる可能性がある。
一方、内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときは、内燃機関を搭載する車両の乗員がトルクの変化を感じやすい。よって、内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときに、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の空燃比が目標空燃比から乖離すると、切り替え前後のトルク変動が大きくなり、乗員が違和感を覚えやすい。さらに、内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときは、混合気の燃焼安定性が損なわれやすい。よって、内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときに、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の空燃比が目標空燃比から乖離すると、混合気の燃焼安定性が低下し、機関回転速度が過剰に低下する可能性がある。
これに対し、本発明の内燃機関の制御システムは、学習処理が終了する前は、他の燃料から圧縮天然ガスへ切り替えを所定の中回転・中負荷領域に制限(所定の中回転・中負荷領域において他の燃料から圧縮天然ガスへの切り替えを許可)するようにした。ここでいう「所定の中回転・中負荷領域」は、上記したような不具合(排気エミッションの悪化、内燃機関の振動増加、排気浄化装置の過昇温、トルク変動の増加、燃焼安定性の低下等)が起こり難い領域であり、予め実験等を利用した適合処理によって定められた運転領域である。このような運転領域においてのみ他の燃料から圧縮天然ガスへの切り替えが行われると、燃料の切り替えに伴う排気エミッションの悪化又はドライバビリティの悪化を少なく抑えることができる。
なお、混合CNGの性状を学習する学習処理が終了する前に、他の燃料を使用して内燃
機関が運転される場合としては、CNG補給後に初めて内燃機関が始動されるときに他の燃料が使用された場合や、CNG補給後の学習処理が終了する前にCNGから他の燃料への切り替えが行われた場合等である。
本発明によれば、CNGを含む複数種の燃料を使用可能な内燃機関の制御システムにおいて、CNGの性状変化に起因したドライバビリティの悪化や排気エミッションの悪化を軽減することができる。
本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。 CNGの不活性ガス濃度と理論空燃比との関係を示す図である。 液体燃料からCNGへの切り替えが許容される運転領域を示す図である。 内燃機関の始動時にECUによって実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、CNGと液体燃料(ガソリンやアルコール燃料等)とを使用可能な火花点火式の内燃機関である。なお、内燃機関1は、CNGと軽油とを使用可能な圧縮着火式の内燃機関であってもよい。
内燃機関1には、吸気通路3と排気通路4とが接続されている。吸気通路3は、大気中から取り込まれた新気(空気)を各気筒2へ導くための通路である。吸気通路3の途中には、エアクリーナ30が取り付けられている。エアクリーナ30は、空気中に含まれる塵や埃などを捕集するものである。エアクリーナ30より下流の吸気通路3には、エアフローメータ31が取り付けられている。エアフローメータ31は、吸気通路3を流れる空気の量(質量)に相関する電気信号を出力するものである。エアフローメータ31より下流の吸気通路3には、スロットル弁32が取り付けられている。スロットル弁32は、吸気通路3の通路断面積を変更することにより、内燃機関1へ供給される空気量を変更するものである。
なお、スロットル弁32より下流の吸気通路3は、4つの枝管に分岐され、各枝管が一つの気筒2に接続されている。吸気通路3の各枝管には、該枝管内にCNGを噴射する第一燃料噴射弁5と、該枝管内に液体燃料を噴射する第二燃料噴射弁6とが取り付けられている。
第一燃料噴射弁5は、第一デリバリパイプ50に接続されている。第一デリバリパイプ50は、第一燃料通路51を介して、第一燃料タンク52に接続されている。第一燃料タンク52は、車両の車体に取り付けられた充填口53とインレットパイプ54を介して接続されている。充填口53は、補給場所(ガスステーションなど)に配置された充填ノズルが差し込まれたときに開口し、充填ノズルから供給されるCNGをインレットパイプ54へ導入する。充填口53からインレットパイプ54へ導入されたCNGは、第一燃料タンク52に貯蔵される。
第一燃料タンク52に貯蔵されたCNGは、第一燃料通路51を介して第一デリバリパ
イプ50へ供給され、次いで第一デリバリパイプ50から4つの第一燃料噴射弁5に分配される。なお、第一燃料通路51の途中には、遮断弁55が配置される。遮断弁55は、第一燃料通路51の導通と遮断を切り替えるものであり、内燃機関1の運転停止中(たとえば、イグニッションスイッチがオフの期間)は閉弁し、内燃機関1の運転中(たとえば、イグニッションスイッチがオンの期間)は開弁する。遮断弁55としては、たとえば、駆動電力が印加されたときに開弁し、駆動電力が印加されないときは閉弁する電磁式の弁装置を用いることができる。
遮断弁55より下流の第一燃料通路51には、レギュレータ56が配置される。レギュレータ56は、第一燃料タンク52から供給されるCNGの圧力を予め設定された圧力(設定圧力)に減圧するものである。言い換えると、レギュレータ56は、該レギュレータ56より下流の第一燃料通路51における燃料圧力、言い換えれば第一燃料噴射弁5及び第一デリバリパイプ50に印加される燃料圧力(以下、「燃料噴射圧力」と称する)が設定圧力と等しくなるように、第一燃料通路51の通路断面積を調整する弁装置である。レギュレータ56としては、たとえば、ダイヤフラムとスプリングを組み合わせた機械式の弁装置を用いることができる。また、第一燃料タンク52には、圧力センサ57が取り付けられている。圧力センサ57は、第一燃料タンク52内の圧力に相関した電気信号を出力する。
第二燃料噴射弁6は、第二デリバリパイプ60に接続されている。第二デリバリパイプ60は、第二燃料通路61を介して、第二燃料タンク62に接続されている。第二燃料タンク62は、液体燃料を貯蔵するタンクである。第二燃料通路61の途中には、第二燃料タンク62に貯蔵されている液体燃料を汲み上げるための燃料ポンプ63が取り付けられている。燃料ポンプ63は、たとえば、電動モータにより駆動されるタービン式のポンプである。燃料ポンプ63により汲み上げられた液体燃料は、第二燃料通路61を介して第二デリバリパイプ60へ供給され、次いで第二デリバリパイプ60から4つの第二燃料噴射弁6に分配される。
排気通路4は、各気筒2から排出される既燃ガス(排気)を排気浄化装置40や消音器などの経由させた後に大気中へ排出するための通路である。排気浄化装置40は、たとえば、三元触媒等を具備し、該排気浄化装置40へ流入する排気の空燃比が所定の範囲(たとえば、理論空燃比近傍)にあるときに、排気中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等を浄化する。また、排気浄化装置40より上流の排気通路4には、空燃比に相関する電気信号を出力するA/Fセンサ41が取り付けられている。
このように構成された内燃機関1には、ECU(Electronic Control Unit)7が搭載
されている。ECU7は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどから構成される電子制御ユニットである。ECU7には、前述したエアフローメータ31、A/Fセンサ41、及び圧力センサ57に加え、アクセルポジションセンサ8、クランクポジションセンサ9、切り替えボタン10等の各種センサが電気的に接続されている。
アクセルポジションセンサ8は、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に相関する電気信号を出力するセンサである。クランクポジションセンサ9は、内燃機関1のクランクシャフトの回転位置に相関する電気信号を出力するセンサである。切り替えボタン10は、車両の室内に設けられ、運転者が使用燃料の切り替え要求を入力するための装置である。
また、ECU7には、第一燃料噴射弁5、第二燃料噴射弁6、スロットル弁32、遮断弁55、燃料ポンプ63などの各種機器が電気的に接続されている。ECU7は、前記した各種センサの出力信号に基づいて、前記各種機器を制御する。
たとえば、ECU7は、前記した各種センサの出力信号に基づいて内燃機関1の運転条件(たとえば、機関負荷や機関回転速度等)を特定し、その運転条件に基づいて混合気の燃焼状態に係わる制御パラメータ(たとえば、燃料噴射量、吸入空気量、点火時期等)を求める。そして、ECU7は、前記制御パラメータに従って、前記各種機器を制御する。また、ECU7は、運転者により切り替えボタン10が操作されたとき(切り替え要求が入力されたとき)に、使用燃料の切り替えを行う。
ところで、第一燃料タンク52に貯蔵されるCNGの性状は、必ずしも一様ではなく、CNGの補給場所(充填場所)等によって異なる場合がある。混合気中のCNGと酸素が過不足なく反応する際の空燃比(理論空燃比)は、CNGの性状によって異なる。特に、CNGに含まれる不活性ガス(二酸化炭素(CO)及び窒素(N))の濃度が異なると、理論空燃比が相異する。
ここで、CNGに含まれる不活性ガスの濃度と理論空燃比との関係を図2に示す。図2において、CNGの理論空燃比は、CNGの不活性ガス濃度が低いときより高いときの方が低くなる。そのため、第一燃料タンク52内に残留しているCNG(残留CNG)と性状の異なるCNG(補給CNG)が補給された場合に、補給後の制御パラメータが残留CNGの理論空燃比に従って制御されると、実際の空燃比が所望の目標空燃比と相異したり、内燃機関1の発生トルクが目標トルクと相異したりする可能性がある。
たとえば、残留CNGより不活性ガス濃度の高いCNGが補給されたときは、補給後のCNG(残留CNGと補給CNGとが混合したCNG(混合CNG))の理論空燃比は、残留CNGの理論空燃比より低く(リッチに)なる。そのため、CNGの補給後における制御パラメータが残留CNGの理論空燃比に従って制御されると、実際の空燃比が目標空燃比より高く(リーンに)なる。
一方、残留CNGより不活性ガス濃度の低いCNGが補給されたときは、混合CNGの理論空燃比は、残留CNGの理論空燃比より高く(リーンに)なる。そのため、CNGの補給後における制御パラメータが残留CNGの理論空燃比に従って制御されると、実際の空燃比が目標空燃比より低く(リッチに)なる。
したがって、CNGの性状(不活性ガス濃度)が変化した場合は、理論空燃比の変化を補償するために、CNGの性状を学習する必要がある。詳細には、混合気の空燃比に係わる制御パラメータをCNGの性状に適した値に補正する必要がある。以下では、混合気の空燃比に係わる制御パラメータとして、燃料噴射量を用いる例について述べる。
まず、本実施例では、内燃機関1がCNGを使用して運転されるときに、以下の式(1)を利用して、CNGの燃料噴射量(燃料噴射時間)etauを演算する。
etau=etp*ekaf*ekin*k・・・(1)
前記式(1)中のetpは、吸入空気量や機関回転速度等を引数とするマップから導き出される基本噴射量である。ここでいうマップは、予め実験などを利用した適合処理によって求められ、ECU7のROMに記憶されている。
前記式(1)中のekafは、目標空燃比と実際の空燃比(A/Fセンサ41により検出される空燃比)との乖離を解消するための補正係数(空燃比フィードバック補正係数)である。このekafは、たとえば、以下の式(2)に従って演算される。
ekaf=(efaf+efgaf+100)/100・・・(2)
前記式(2)中のefafは、目標空燃比と実際の空燃比との差に基づいて決定される補正値(空燃比フィードバック補正値)である。前記式(2)中のefgafは、目標空燃比と実際の空燃比との恒常的な乖離(第一燃料噴射弁5の噴射特性の経時変化などに起因した乖離)を補償するための空燃比学習値である。
前記式(1)におけるkは、冷却水温度やアクセル開度に応じて決定される増量補正係数である。また、前記式(1)中のekinは、CNGの性状変化(不活性ガス濃度の変化)に伴う理論空燃比の変化を補償するための補正係数(不活性ガス濃度学習補正係数)である。
前記不活性ガス濃度学習補正数ekinは、以下の式(3)に基づいて演算される。
ekin=(eknco2+100)/100・・・(3)
前記式(3)中のeknco2は、CNGの不活性ガス濃度に起因した目標空燃比と実際の空燃比の恒常的な乖離を補償するための学習値(不活性ガス濃度学習値)である。以下では、不活性ガス濃度学習値eknco2の決定方法について述べる。
CNGの性状変化は、第一燃料タンク52にCNGが補給されたときに起こり得る。そして、混合CNGの性状変化は、CNGの補給後に初めてCNGが使用されるときの空燃比フィードバック補正値efafに反映される。たとえば、残留CNGより不活性ガス濃度の高い補給CNGが補給された場合は、混合CNGの理論空燃比は、残留CNGの理論空燃比より低く(リッチに)なる。そのため、A/Fセンサ41により検出される空燃比は、目標空燃比よりリーン側にずれる。その場合、空燃比フィードバック補正値efafは、燃料噴射量を増量させる値(正値)になるとともに、その大きさはCNGの性状が一定であるときに該補正値が取り得る最大値より大きくなる。
一方、残留CNGに比して不活性ガス濃度の低い補給CNGが補給された場合は、混合CNGの理論空燃比は、残留CNGの理論空燃比より高く(リーンに)なる。そのため、A/Fセンサ41により検出される空燃比は、目標空燃比よりリッチ側にずれる。その場合、空燃比フィードバック補正値efafは、燃料噴射量を減量させる値(負値)になるとともに、その大きさはCNGの性状が一定であるときに該補正値が取り得る最大値より大きくなる。
なお、CNGの補給は、内燃機関1の始動前(運転停止中)に行われる。よって、内燃機関1の始動後に初めてCNGが使用されたときに、空燃比フィードバック補正値efafの大きさが閾値以上であれば、残留CNGと異なる性状の補給CNGが第一燃料タンク52に補給されたとみなすことができる。なお、ここでいう「閾値」は、たとえば、CNGの性状が一定となる条件下において、空燃比フィードバック補正値efafの絶対値が取り得る最大値にマージンを加算した値である。
そこで、ECU7は、内燃機関1の始動後に初めてCNGが使用されたときに、空燃比フィードバック補正値efafの大きさが閾値以上であれば、CNGの性状を学習するための処理(学習処理)を実行する。ここでいう学習処理は、不活性ガス濃度学習値eknco2の値をCNGの性状に適した値に更新する処理である。
詳細には、ECU7は、不活性ガス濃度学習値eknco2に所定値aを加算する。所定値aは、空燃比フィードバック補正値efafが正値である場合は正の値に設定され、空燃比フィードバック補正値efafが負値である場合は負の値に設定される。なお、所定値aの大きさは、空燃比フィードバック補正値efafの大きさ(若しくは、空燃比フィードバック補正値efafの絶対値と前記閾値との差)に応じて決定される可変値であ
ってもよく、又は予め実験などを利用した適合処理によって決定される固定値であってもよい。
ECU7は、不活性ガス濃度学習値eknco2を更新した場合に、空燃比フィードバック補正値efafから不活性ガス濃度学習値eknco2の更新分(所定値a)を差し引くものとする。これは、CNGの性状変化に伴う補正分は、不活性ガス濃度学習値eknco2と空燃比フィードバック補正値efafの双方に含まれるためである。
以上述べた方法により学習処理が行われると、前記式(1)に従って演算される燃料噴射量(燃料噴射時間)etauは、CNGの性状変化に伴う理論空燃比の変化及びウェッペ指数の変化を補償可能な値になる。その結果、CNGの性状が変化した場合に、混合気の空燃比を速やかに目標空燃比に収束させることができるとともに、混合気が燃焼した際に発生する熱エネルギの量を所望の量に一致させることができる。なお、ECU7が上記した方法により学習処理を実行することにより、本発明に係わる「学習手段」が実現される。
ところで、CNGの補給後に初めて内燃機関1が始動されるときに液体燃料が使用されると、混合CNGの性状を学習する処理が行われない状態で内燃機関1が運転されることになる。そして、内燃機関1の始動後に初めて切り替えボタンが操作(液体燃料からCNGへの切り替え要求が入力)されたときに、CNGから液体燃料への切り替えが行われると、切り替え後の混合気の空燃比が混合CNGの性状に適した空燃比とならず、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を招く可能性がある。特に、内燃機関1が高回転・高負荷運転状態にあるとき、又は内燃機関1が低回転・低負荷運転状態にあるときに、液体燃料からCNGへの切り替えが行われると、排気エミッションの悪化又はドライバビリティの悪化が顕著になる虞がある。
ここで、内燃機関1が高回転・高負荷運転状態にあるときは、単位時間あたりの燃料噴射量が多くなるため、単位時間あたりに内燃機関1から排出される有害ガス成分(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等)の量も多くなる。そのような条件下において、液体燃料からCNGへの切り替えが行われ、且つ切り替え後の混合気の空燃比が混合CNGの性状に適した空燃比から乖離していると、排気浄化装置40によって浄化されない有害ガス成分の量が過剰に多くなる可能性がある。また、高回転領域(たとえば、3000rpm以上)において、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の空燃比が目標空燃比から乖離すると、内燃機関1が発生する振動が大きくなる可能性がある。さらに、高負荷領域では、排気浄化装置40の過昇温を抑制するために、混合気の空燃比を理論空燃比より低いリッチ空燃比にする場合がある。そのような場合に、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、切り替え後の空燃比が目標空燃比よりリーンな空燃比になると、排気浄化装置40の過昇温を抑制することができなくなる可能性がある。
一方、内燃機関1が低回転・低負荷運転状態にあるときは、内燃機関1を搭載する車両の乗員がトルク変動を感じ易い。そのような条件下において液体燃料からCNGへの切り替えが行われ、且つ切り替え後の空燃比が混合CNGの性状に適した空燃比から乖離していると、切り替え前後のトルク変動が大きくなり、乗員が違和感を覚える可能性がある。さらに、内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときは、混合気の燃焼安定性が損なわれやすい。よって、内燃機関が低回転・低負荷運転状態にあるときに、他の燃料からCNGへの切り替えが行われ、且つ切り替え後の空燃比が目標空燃比から乖離すると、混合気の燃焼安定性が低下し、機関回転速度が過剰に低下(エンジンストール)する可能性がある。
そこで、本実施例では、CNGの補給後に液体燃料を使用して内燃機関1が始動された場合において、液体燃料からCNGへの最初の切り替えが所定の中回転・中負荷領域に制限されるようにした。言い換えると、CNGの補給後に液体燃料を使用して内燃機関1が始動された場合において、内燃機関1が高回転・高負荷運転領域にあるとき、及び内燃機関1が低回転・低負荷運転状態にあるときは、液体燃料からCNGへの最初の切り替えが行われないようにした。ここでいう「所定の中回転・中負荷領域」は、上記したような不具合(排気エミッションの悪化、内燃機関1の振動増加、排気浄化装置40の過昇温、トルク変動の増加、燃焼安定性の低下等)が起こり難い領域であり、予め実験等を利用した適合処理によって定められた運転領域である。
図3は、液体燃料からCNGへの切り替えが許容される運転領域を示す図である。図3中の領域Aは、CNG補給後の学習処理が終了している場合において、液体燃料からCNGへの切り替えが許容される運転領域を示す。図3中の領域Bは、CNG補給後の学習処理が終了していない場合において、液体燃料からCNGへの切り替えが許容される運転領域を示す。
図3に示すように、CNG補給後の学習処理が終了していない場合は、CNG補給後の学習処理が終了している場合に比べ、液体燃料からCNGへの切り替えが許容される運転領域が縮小される。具体的には、CNG補給後の学習処理が終了していない場合は、液体燃料からCNGへの切り替えが許容される運転領域が中回転・中負荷領域に制限される。
CNG補給後の学習処理が終了していない場合において、液体燃料からCNGへの切り替えが中回転・中負荷領域に制限されると、高回転・高負荷運転領域及び低回転・低負荷運転領域において液体燃料からCNGへの切り替えが行われなくなるため、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を少なく抑えつつ燃料を切り替えることができる。
以下、本実施例における燃料の切り替え手順について図4に沿って説明する。図4は、内燃機関1の始動時(たとえば、イグニッションスイッチがオフからオンへ切り替えられたとき)にECU7によって実行される処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理ルーチンは、予めECU7のROMに記憶されているものとする。
図4の処理ルーチンでは、ECU7は、まず、S101の処理において、内燃機関1の始動前(運転停止中)にCNGが補給されたか否かを判別する。たとえば、ECU7は、前回の運転停止時における圧力センサ57の測定値と今回の始動時における圧力センサ57の測定値との差が所定値より大きければ、内燃機関1の始動前にCNGが補給されたと判定する。一方、前記した差が所定値以下であれば、ECU7は、内燃機関1の始動前にCNGが補給されていないと判定する。
前記S101において肯定判定された場合は、混合CNGの性状が残留CNGの性状と異なる可能性があるため、液体燃料からCNGへの切り替えを行う運転領域を制限する必要がある。そこで、ECU7は、前記S101において肯定判定された場合は、S102乃至S106の処理において、液体燃料からCNGへの切り替えを中回転・中負荷運転領域に制限する。
まず、S102の処理では、ECU7は、液体燃料を使用して内燃機関1を始動させる。続いて、S103の処理では、ECU7は、液体燃料からCNGへの切り替え要求が入力されたか否かを判別する。詳細には、ECU7は、切り替えボタン10が操作されたか否かを判別する。S103の処理で否定判定された場合は、ECU7は、該S103の処理を繰り返し実行する。一方、S103の処理で肯定判定された場合は、ECU7は、S104の処理へ進む。
S104の処理では、ECU7は、内燃機関1の運転状態が前述した図3の領域B(中回転・中負荷運転領域)に属しているか否かを判別する。S104の処理において否定判定された場合は、ECU7は、S103の処理へ戻る。一方、S104の処理で肯定判定された場合は、ECU7は、S105の処理へ進む。
S105の処理では、ECU7は、CNGの使用条件が成立しているか否かを判別する。たとえば、ECU7は、A/Fセンサ41や排気浄化装置40が活性しており、且つ冷却水温度が所定温度以上(たとえば、内燃機関1が暖機完了状態にあると判定される最低の冷却水温度)であれば、CNGを使用可能であると判定する。S105の処理において否定判定された場合は、ECU7は、S103の処理へ戻る。一方、S105の処理において肯定判定された場合は、ECU7は、S106の処理へ進む。
S106の処理では、ECU7は、内燃機関1の使用燃料を液体燃料からCNGへ切り替える。詳細には、ECU7は、第二燃料噴射弁6及び燃料ポンプ63の停止と、遮断弁55の開弁と、第一燃料噴射弁5の作動とを行う。
S102乃至S106の処理が実行されると、CNG補給後における液体燃料からCNGへの最初の切り替えが中回転・中負荷運転領域に制限されるため、燃料の切り替えに伴う排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を少なく抑えることができる。
また、前記S101の処理において否定判定された場合は、ECU7は、S107の処理へ進む。S107の処理では、ECU7は、学習処理が完了しているか否かを判別する。ここでいう学習処理は、最後のCNG補給に対応した学習処理である。最後のCNG補給に対応した学習処理が終了する前に内燃機関1の運転が停止されると、再始動後に初めて液体燃料からCNGへの切り替えが行われたときに、混合気の空燃比がCNGの性状に適した空燃比から乖離する。よって、S107の処理において否定判定された場合は、液体燃料からCNGへの切り替えを中回転・中負荷運転領域に制限する必要がある。そこで、S107の処理において否定判定された場合は、ECU7は、S102乃至S106の処理を実行する。その結果、最後のCNG補給に対応した学習処理が終了する前に内燃機関1の運転が停止され、その後に内燃機関1が再始動された場合において、初めて液体燃料からCNGへの切り替えが行われるときに、排気エミッションの悪化やドライバビリティの悪化を少なく抑えることができる。
また、前記S107の処理において肯定判定された場合は、直前の運転停止中にCNGの補給が行われておらず、且つ最後のCNG補給に対応した学習処理が完了していることになる。すなわち、現時点における不活性ガス濃度学習値eknco2の値は、第一燃料タンク52に貯蔵されているCNGの性状に適した値になっていることになる。よって、前記S107の処理において肯定判定された場合は、液体燃料からCNGへの切り替えを中回転・中負荷運転領域に制限する必要がない。そこで、S107の処理において肯定判定された場合は、ECU7は、S108乃至S112の処理において、液体燃料からCNGへの切り替えを通常通りに実行する。
まず、S108の処理では、ECU7は、液体燃料を使用して内燃機関1を始動させる。続いて、S109の処理では、ECU7は、液体燃料からCNGへの切り替え要求が入力されたか否かを判別する。S109の処理で否定判定された場合は、ECU7は、該S109の処理を繰り返し実行する。一方、S109の処理で肯定判定された場合は、ECU7は、S110の処理へ進む。
S110の処理では、ECU7は、内燃機関1の運転状態が前述した図3の領域Aに属
しているか否かを判別する。S110の処理において否定判定された場合は、ECU7は、S109の処理へ戻る。一方、S110の処理で肯定判定された場合は、ECU7は、S111の処理へ進む。
S111の処理では、ECU7は、CNGの使用条件が成立しているか否かを判別する。その際の使用条件は、前述したS105の処理における使用条件と同様である。S111の処理において否定判定された場合は、ECU7は、S109の処理へ戻る。一方、S111の処理において肯定判定された場合は、ECU7は、S112の処理へ進む。
S112の処理では、ECU7は、内燃機関1の使用燃料を液体燃料からCNGへ切り替える。その際の切り替え方法は、前述したS106の処理と同様である。
以上述べたように、ECU7が図4の処理ルーチンを実行することにより、本発明に係わる「制限手段」が実現される。その結果、CNGの補給後であって、且つ学習処理が終了する前は、液体燃料からCNGへの最初の切り替えが高回転・高負荷運転領域や低回転・低負荷運転領域で行われなくなる。その結果、燃料の切り替えに伴う排気エミッションの悪化又はドライバビリティの悪化を少なく抑えることができる。
なお、学習処理が終了する前にCNGから液体燃料へ切り替えられ、その後に液体燃料からCNGへの切り替えが行われる場合についても、中回転・中負荷運転領域に制限されることが望ましい。要するに、学習処理が終了する前は、液体燃料からCNGへの切り替えを中回転・中負荷領域に制限すればよい。
1 内燃機関
2 気筒
3 吸気通路
4 排気通路
5 第一燃料噴射弁
6 第二燃料噴射弁
7 ECU
10 切り替えボタン
41 A/Fセンサ
50 第一デリバリパイプ
51 第一燃料通路
52 第一燃料タンク
53 充填口
54 インレットパイプ
55 遮断弁
56 レギュレータ
57 圧力センサ
60 第二デリバリパイプ
61 第二燃料通路
62 第二燃料タンク
63 燃料ポンプ

Claims (1)

  1. 圧縮天然ガスと他の燃料を使用可能な内燃機関において、
    圧縮天然ガスの性状を学習するための学習処理を行う学習手段と、
    前記学習処理が終了する前は、他の燃料から圧縮天然ガスへの切り替えを所定の中回転・中負荷領域に制限する制限手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御システム。
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