JP4012373B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばLPG(液化石油ガス)を燃料とする内燃機関にあっては、同LPGが供給経路を通じてインジェクタに供給され、このインジェクタから吸気通路等に噴射されるようになっている。内燃機関の燃料噴射量は、同機関の空燃比を例えば理論空燃比へとフィードバック制御する際に増量補正又は減量補正される。こうした燃料噴射量の補正に用いられるフィードバック補正値は、内燃機関の空燃比が理論空燃比となるよう、所定の制御ゲインを用いて増減されることとなる。
【0003】
ところで、インジェクタにLPGを供給する供給経路は内燃機関からの熱を受けるため、供給経路の内部ではLPGが気化してベーパ(気化燃料)が発生し易くなる。そして、供給経路内でのベーパの発生に伴い、インジェクタからの噴射燃料にベーパが含まれるようになると、その噴射燃料の燃料密度が低下するため、同噴射燃料が必要量に対して不足することとなる。そこで、例えば特開昭59−208152号公報に示されるように、上記のような噴射燃料の不足が補償されるように燃料噴射量を増量することも考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、供給経路内にベーパとLPGとの両方が存在する状態にあっては、供給経路からインジェクタへと供給されるベーパの量、及びLPGの量が種々の状況に応じて大きく変動する。そのため、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパとLPGとの割合にも大きな変動が生じ易く、この変動に伴い内燃機関の空燃比も理論空燃比に対してリッチ側もしくはリーン側に大きくずれるおそれがある。
【0005】
即ち、噴射燃料不足を補償するための上記燃料噴射量の増量が行われている状態にあって、噴射燃料に含まれるベーパの量が減少するとともにLPGの量が増加すると、噴射燃料の燃料密度が高くなって内燃機関の空燃比が理論空燃比よりもリッチになる。一方、噴射燃料に含まれるベーパの量が増加するとともにLPGの量が増加すると、噴射燃料の燃料密度が低下して内燃機関の空燃比が理論空燃比よりもリーンになる。
【0006】
このように内燃機関の空燃比が理論空燃比から大きくずれたときには、上述したフィードバック制御を通じて燃料噴射量をフィードバック補正値により増量補正若しくは減量補正し、同機関の空燃比を理論空燃比に到達させようとしても、その到達に長い時間がかかるようになる。その結果、内燃機関の空燃比が理論空燃比からずれている時間が長くなり、これが同機関の出力や排気エミッションに悪影響を及ぼすということも無視できない問題となる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、供給経路内にベーパと液化ガス燃料との両方が存在するとき、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量が変動することに伴い内燃機関の空燃比が目標値から大きくずれても、同空燃比を速やかに目標値に到達させることのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、燃料を噴射するためのインジェクタに液化ガス燃料を供給する供給経路を備え、その供給経路内でのベーパの発生に伴う噴射燃料の不足を補償すべく燃料噴射量を増量する内燃機関の燃料噴射制御装置において、内燃機関の燃料噴射量を所定の補正値をもって補正するものであって、同機関の空燃比が目標値となるよう前記補正値を増減させる補正手段と、前記供給経路内のベーパ発生状態に関係するパラメータに基づき前記補正値の増減量を変更する変更手段とを備え、前記補正手段は、内燃機関の空燃比を理論空燃比へとフィードバック制御すべく、同機関の空燃比に基づき前記フィードバック制御の制御ゲインを用いて前記補正値を増減させ、前記変更手段は、前記パラメータに基づき前記供給経路内のベーパ率を算出し、そのベーパ率に基づき前記制御ゲインの大きさを変更するものとした。
【0009】
上記の構成によれば、供給経路内のベーパ発生状態が、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量に大きな変動が生じ易い状態のとき、内燃機関の空燃比を目標値に近づけるための補正値の増減量を大とすることができるようになる。そして、このように補正値の増減量を大とすることで、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量の変動に伴い、内燃機関の空燃比が目標値から大きくずれたとしても、同空燃比を速やかに目標空燃比へと到達させることができる。
【0010】
さらに、供給経路内のベーパ発生状態に関係するパラメータに基づき算出されるベーパ率に応じて、内燃機関の空燃比を目標値に近づけるための補正値の増減量が変更されるため、その変更を適切に行うことができる。
また、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量の変動に伴い、内燃機関の空燃比が理論空燃比から大きくはずれたとしても、同空燃比を理論空燃比へとフィードバック制御する際の制御ゲインを適切に変更し、同空燃比を速やかに理論空燃比へと到達させることができる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記パラメータは、前記液化ガス燃料の燃料性状を表す値、前記供給経路内の燃料温度、及び燃料圧力のうちの少なくとも一つであることを要旨とした。
【0011】
上記の構成によれば、供給経路内でのベーパ発生状態に大きな関係のある液化ガス燃料の燃料性状、供給経路内での燃料温度、及び燃料圧力のうちの少なくとも一つに基づき、内燃機関の空燃比を目標値に近づけるための補正値の増減量が変更されるため、その変更を適切に行うことができる。
【0012】
なお、液化ガス燃料が例えば気化温度の異なる複数種の燃料からなるものである場合には、前記燃料性状を表す値として液化ガス燃料に含まれる気化温度の最も低い燃料の割合を用いることが考えられる。
【0013】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記液化ガス燃料の燃料性状を表す値は、前記インジェクタに供給される液化ガス燃料を貯留するための燃料タンク内の燃料温度及び燃料圧力に基づき特定されるものであることを要旨とした。
【0014】
上記の構成によれば、燃料タンク内の燃料温度及び燃料圧力に基づき液化ガス燃料の燃料性状を表す値が的確に特定され、その値に基づき内燃機関の空燃比を目標値に近づけるための補正値の増減量が的確に変更されるようになる。
【0017】
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記変更手段は、前記インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量に大きな変動が最も生じ易いベーパ率であるとき、前記補正値の増減量が最大となるように同増減量を変更するものとした。
【0018】
上記の構成によれば、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量に大きな変動が最も生じ易いとき、即ち内燃機関の空燃比が目標値から最も大きくずれ易いとき、内燃機関の空燃比を目標値に近づけるための補正値の増減量が最大とされる。そのため、上記のように内燃機関の空燃比が目標値から大きくずれたとしても、同空燃比を速やかに目標値に到達させることができる。
【0019】
なお、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量に大きな変動が最も生じ易くなる供給経路内でのベーパ率としては、例えば当該ベーパ率がその変化範囲の中間付近の状態にあるときをあげることができる。
【0022】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記制御ゲインは、内燃機関の空燃比が理論空燃比に対してリッチとリーンとの間で反転したときに前記補正値に対し加算若しくは減算されるスキップ量と、同機関の空燃比が理論空燃比に対してリッチ若しくはリーンに維持されている間に前記補正値に対し継続して加算若しくは減算される積分量とであり、前記変更手段は、前記ベーパ率に基づき前記スキップ量と前記積分量とを変更するものとした。
【0023】
上記の構成によれば、内燃機関の空燃比を理論空燃比に近づけるための補正値の増減量を決定するスキップ量と積分量とがベーパ率に基づいて変更されるため、インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量の変動に伴い、内燃機関の空燃比が理論空燃比から大きくはずれたとき、同空燃比を速やかに理論空燃比に到達させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、プロパン及びブタン等からなるLPG(液化石油ガス)を燃料として使用する自動車用エンジンに適用した一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
【0025】
図1に示されるエンジン1においては、吸気通路2内に燃料を噴射するインジェクタ3に、燃料タンク8に貯留されたLPGがデリバリパイプ9を通じて供給される。燃料タンク8内の燃料温度及び燃料圧力は、それぞれタンク用温度センサ14及びタンク用圧力センサ15によって検出される、また、インジェクタ3にLPGを供給する供給経路(デリバリパイプ9等)内の燃料温度及び燃料圧力は、それぞれパイプ用温度センサ16及びパイプ用圧力センサ17によって検出される。
【0026】
インジェクタ3からは上記LPGがエンジン1の燃料として噴射され、この燃料と空気とが吸気通路2を通じて燃焼室4内に吸入されるようになる。そして、燃焼室4内で空気と燃料とからなる混合気を燃焼させ、そのときの燃焼エネルギでピストン5を往復移動させることにより、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト6が回転するようになる。また、燃焼室4内で燃焼した後の混合気は、排気として排気通路7へと送り出される。
【0027】
上記インジェクタ3はエンジン1を運転制御するための電子制御装置10により駆動制御され、この駆動制御を通じてインジェクタ3から噴射される燃料の量が調整される。
【0028】
電子制御装置10には、上記タンク用温度センサ14、タンク用圧力センサ15、パイプ用温度センサ16、及びパイプ用圧力センサ17からの検出信号が入力される。更に、電子制御装置10には、吸気通路2を流れる空気量(吸入空気量)を検出するエアフローメータ11、排気通路を流れる排気中の酸素濃度に対応した信号を出力する酸素(O2 )センサ12、クランクシャフト6の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ13、及び、運転者によって踏込操作されるアクセルペダル18の踏込量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ19等からの検出信号も入力される。
【0029】
次に、エンジン1の燃料噴射量制御に用いられる最終燃料噴射量Qfin の算出手順について、最終燃料噴射量算出ルーチンを示す図2のフローチャートを参照して説明する。この最終燃料噴射量算出ルーチンは、電子制御装置10を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0030】
最終燃料噴射量算出ルーチンにおいて、最終燃料噴射量Qfin は、基本燃料噴射量Qbse 、フィードバック補正係数FAF、ベーパ補正係数B、及びその他の補正係数Cを用いて下記の式(1)に基づき算出される。
【0031】
Qfin =Qbse *FAF*B*C …(1)
Qfin :最終燃料噴射量
Qbse :基本燃料噴射量
FAF:フィードバック補正係数
B :ベーパ補正係数
C :その他の補正係数
ここで、基本燃料噴射量Qbse は、エンジン1の運転状態に応じて決まる値である。この基本燃料噴射量Qbse は、最終燃料噴射量算出ルーチンにおけるステップS101の処理でエアフローメータ11の検出信号から求められる吸入空気量GAと、クランクポジションセンサ13の検出信号から求められるエンジン回転速度NEとに基づき算出される。
【0032】
また、フィードバック補正係数FAFは、エンジン1の空燃比を理論空燃比(目標値)へと近づけるべく燃料噴射量を補正するためのものであって、後述するフィードバック補正係数算出ルーチンによって算出される。このフィードバック補正係数FAFは、エンジン1の空燃比に応じて図4(a)に示すように変化する酸素センサ12の出力信号Sに基づき、図4(b)に示すように「1.0」を基準に増減する。
【0033】
上記酸素センサ12は、エンジン1の空燃比が理論空燃比の前後の間で変化するとき出力信号Sが急変する特性を有する。こうした酸素センサ12の出力信号Sは、上記空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときには同理論空燃比に対応した基準値Dよりも小さくなり、上記空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときには上記基準値Dよりも大きくなる。そして、フィードバック補正係数FAFは、酸素センサ12の出力信号Sが基準値Dよりも大きい場合には減少させられ、同出力信号Sが基準値Dよりも小さい場合には増加させられる。こうしたフィードバック補正係数FAFに基づき燃料噴射量を補正することで、エンジン1の空燃比を理論空燃比へと近づけるための空燃比フィードバック制御が行われるようになる。
【0034】
また、式(1)で用いられるベーパ補正係数Bは、インジェクタ3にLPGを供給する供給経路(デリバリパイプ9等)内でLPGが気化してベーパ(気化燃料)が発生したとき、それに伴うインジェクタ3からの噴射燃料の不足を補償すべく燃料噴射量を増量するためのものである。即ち、デリバリパイプ9内等でのベーパ発生に伴いインジェクタ3から噴射される燃料にベーパが含まれるようになると、その噴射燃料の燃料密度が低下して同噴射燃料が必要量に対して不足するが、この不足分を補償すべくベーパ補正係数Bによる燃料噴射量の増量が行われるのである。
【0035】
ベーパ補正係数Bの算出には、LPGの燃料性状を表す値であるプロパン含有率、並びに、デリバリパイプ9内の燃料温度及び燃料圧力から求められるベーパ率BP、即ちデリバリパイプ9内の燃料におけるベーパの割合が用いられる。そして、LPGのプロパン含有率はステップS102の処理で算出され、ベーパ率BPはステップS103の処理で算出されるようになる。これらステップS102,S103の処理については以下に詳しく説明する。
【0036】
ステップS102の処理では、タンク用温度センサ14及びタンク用圧力センサ15の検出信号に基づき求められる燃料タンク8内の燃料温度及び燃料圧力に基づき、LPGのプロパン含有率を算出する。このようにLPGのプロパン含有率を算出することができるのは、燃料タンク8内では燃料が液体(LPG)と気体(ベーパ)との両方の状態で存在し、こうした燃料状態となるための燃料タンク8内の燃料温度及び燃料圧力はLPGのプロパン含有率に応じて変化するという特性が存在するためである。なお、LPGにはプロパンのほかにブタン等が含まれるが、プロパンはブタンに比べて気化温度が高いため、LPGのプロパン含有率が大であるほどベーパが発生し易くなる。
【0037】
ここで、燃料がLPGとベーパとの両方の状態で存在する燃料タンク8内の燃料温度及び燃料圧力と、LPGのプロパン含有率との関係を図3に示す。この図において、一つの実線はLPGのプロパン含有率を一定とした条件のもとで、燃料がLPGとベーパとの両方の状態で存在する燃料タンク8内の燃料温度及び燃料圧力の組み合わせを示すものである。そして、上記実線はLPGのプロパン含有率が大となるほど図中上方のものへと移行するようになる。こうした関係がLPGのプロパン含有率と燃料タンク8内の燃料温度及び燃料圧力との間に存在することから、この関係を利用して上記燃料温度及び燃料圧力に基づきLPGのプロパン含有率を算出することができる。
【0038】
続くステップS103の処理では、LPGのプロパン含有率、並びに、パイプ用温度センサ16及びパイプ用圧力センサ17の検出信号から求められるデリバリパイプ9内の燃料温度及び燃料圧力に基づき、デリバリパイプ9内でのベーパ率BPが算出される。
【0039】
上記LPGのプロパン含有率、並びに、デリバリパイプ9内の燃料温度及び燃料圧力といったパラメータは、デリバリパイプ9内でのベーパの発生に大きく関係している。即ち、LPGのプロパン含有率が大となるほどベーパが発生し易くなるとともに、デリバリパイプ9内の燃料温度が高くなるほど、またデリバリパイプ9内の燃料圧力が低くなるほどベーパが発生し易くなる。
【0040】
これらのことを考慮して、ベーパ率BPは、LPGのプロパン含有率が大となるほど大きくなるように、且つ、デリバリパイプ9内の燃料温度が高くなるほど、またデリバリパイプ9内の燃料圧力が低くなるほど大きくなるように算出される。そして、算出されたベーパ率BPはRAMに記憶され(S104)、続くステップS105の処理、及び、後述する制御ゲイン算出ルーチン(図7)で用いられる。
【0041】
ステップS105の処理では、実験に基づいて設定されたマップを参照してベーパ率BPを用いてベーパ補正係数Bが算出される。こうして算出されるベーパ補正係数Bは、ベーパ率BPが大となるほど燃料噴射量の増量を大とすべく大きい値となるよう算出される。その後、上記式(1)に基づいて最終燃料噴射量Qfin の算出が行われる(S106)。
【0042】
次に、上記フィードバック補正係数FAFの算出手順の概要について、図4及び図5を参照して詳しく説明する。なお、図4は酸素センサ12の出力信号S、及びフィードバック補正係数FAFの時間経過に対する推移を示すタイムチャートである。また、図5は、フィードバック補正係数FAFの算出に用いられる制御ゲインである積分量(Ki R,Ki L)及びスキップ量(Rs R,Rs L)について、その概念を示すタイムチャートである。ここでは、フィードバック補正係数FAFの算出態様を酸素センサ12の出力信号Sの変化との対応のもとに説明する。
【0043】
1.酸素センサ12の出力信号Sが基準値Dよりも大きい状態が続き、エンジン1の空燃比が継続して理論空燃比よりもリッチであるとき
このときには図5に示されるように、フィードバック補正係数FAFから積分量Ki Lが減算される。即ち、フィードバック補正係数FAFが例えば図5のP1点に位置する状態にあるとき、上記積分量Ki L分の減算が行われると、同補正係数FAFはP2点に位置する状態へと変化する。こうした積分量Ki Lの減算が所定周期毎に継続して実行されるいわゆる積分制御が行われることで、フィードバック補正係数FAFは徐々に小さくなる。このようにフィードバック補正係数FAFを徐々に小さくすると、いずれは空燃比が理論空燃比に対してリッチ側からリーン側へと変化し、これに伴って酸素センサ12からの出力信号Sが基準値Dに対して大きい値から小さい値へと反転する。
【0044】
2.酸素センサ12からの出力信号Sが基準値Dに対し大きい値から小さい値へと反転したとき
こうした酸素センサ12の出力信号Sの変化が生じると、上記フィードバック補正係数FAFにスキップ量Rs Rを加算し、同フィードバック補正係数FAFを所定量だけ大きくする、いわゆるスキップ制御が行われる。即ち、フィードバック補正係数FAFが図5のP3点に位置する状態にあるときに上記スキップ量Rs R分の加算が行われると、同補正係数FAFはP4点に位置する状態へと変化する。このフィードバック補正係数FAFの増加量は、上記スキップ量Rs Rが大きくなるほど大きいものとなるが、同スキップ量Rs Rは、フィードバック補正係数FAFに加算されるときに空燃比が理論空燃比に対しリーン側からリッチ側へと一気に反転しない値とされる。従って、フィードバック補正係数FAFにスキップ量Rs Rが加算された後においても、空燃比が理論空燃比よりもリーンであって、酸素センサ12の出力信号Sが基準値Dよりも小さい状態が続くことになる。
【0045】
3.酸素センサ12の出力信号Sが基準値Dよりも小さい状態が続き、エンジン1の空燃比が継続して理論空燃比よりもリーンであるとき
この状態にあっては、フィードバック補正係数FAFに積分量Ki Rが加算される。即ち、フィードバック補正係数FAFが図5のP4点に位置する状態にあるときに上記積分量Ki Rの加算が行われると、同補正係数FAFはP5点に位置する状態へと変化する。こうした積分量Ki Rの加算を所定周期毎に継続して実行する積分制御が行われることで、フィードバック補正係数FAFは徐々に大きくなる。このようにフィードバック補正係数FAFを徐々に大きくすると、いずれは空燃比が理論空燃比に対してリーン側からリッチ側へと変化し、これに伴って酸素センサ12からの出力信号Sが基準値Dに対し小さい値から大きい値へと反転する。
【0046】
4.酸素センサ12からの出力信号Sが基準値Dに対し小さい値から大きい値へと反転したとき
こうした酸素センサ12の出力信号Sの変化が生じると、上記フィードバック補正係数FAFからスキップ量Rs Lを減算して同フィードバック補正係数FAFを所定量だけ小さくするスキップ制御が実行される。即ち、フィードバック補正係数FAFが図5のP6点に位置する状態にあるときに上記スキップ量Rs L分の減算が行われると、同補正係数FAFはP7点に位置する状態へと変化する。このフィードバック補正係数FAFの減少量は上記スキップ量Rs Lが大きくなるほど大きいものとなるが、同スキップ量Rs Lは、先のスキップ量Rs Rと同じくフィードバック補正係数FAFから減算されるときに空燃比が理論空燃比に対しリッチ側からリーン側へと一気に反転しない値にされる。従って、フィードバック補正係数FAFからスキップ量Rs Lが減算された後においても、空燃比が理論空燃比よりもリッチであって、酸素センサ12の出力信号Sが基準値Dよりも大きい状態が続くことになる。この状態にあっては、フィードバック補正係数FAFは積分制御により上記積分量Ki Lに応じて徐々に小さくなる。そして、図4に示されるように、上記のようなフィードバック補正係数FAFの算出処理が酸素センサ12の出力信号Sの推移に応じて繰り返し実行される。
【0047】
このように、酸素センサ12からの出力信号Sに応じてフィードバック補正係数FAFを変化させることで、エンジン1の空燃比が理論空燃比へと近づくように最終燃料噴射量Qfin が変化する。
【0048】
次に、フィードバック補正係数FAFの算出手順について、フィードバック補正係数算出ルーチンを示す図6のフローチャートを参照して詳しく説明する。このフィードバック補正係数算出ルーチンは、電子制御装置10を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0049】
フィードバック補正係数算出ルーチンの処理においては、まず空燃比フィードバック制御の実行条件であるフィードバック条件が成立しているか否かが判断される(S201)。こうした判断は例えば、
・始動完了前のクランキング中でない
・エンジン1の暖機が完了している
・酸素センサ12が活性化している
・過度に高回転高負荷状態でない
といった条件がすべて成立しているか否かに基づき行われる。
【0050】
そして、上記各条件の内のいずれか一つでも満たされていなければ、フィードバック条件が成立していない旨判断され、フィードバック補正係数FAFが「1.0」に設定される(S210)。また、上記各条件が全て満たされていれば、フィードバック条件が成立している旨判断され、酸素センサ12の出力信号Sが基準値Dに対し大きい値と小さい値との間で反転したか否かが判断される(S202)。ここで肯定判定であればスキップ制御を行うべき旨判断され、当該スキップ制御を行うためのステップS203〜S205の処理が実行される。
【0051】
ステップS203の処理では、酸素センサ12の出力信号Sが基準値D未満であるか否かが判断される。そして、「S<D」であって出力信号Sが基準値Dに対し大きい値から小さい値へと反転した旨判断された場合には、フィードバック補正係数FAFにスキップ量Rs Rが加算される(S204)。また、「S<D」でなく出力信号Sが基準値Dに対して小さい値から大きい値へと反転した旨判断された場合には、フィードバック補正係数FAFからスキップ量Rs Lが減算される(S205)。
【0052】
一方、上記ステップS202の処理において否定判定であれば積分制御を行うべき旨判断され、当該積分制御を行うためのステップS206〜ステップS208の処理が実行される。
【0053】
ステップS206の処理では、酸素センサ12の出力信号Sが基準値D未満であるか否かが判断される。そして、「S<D」であって出力信号Sが基準値D未満の状態が維持されている旨判断された場合には、フィードバック補正係数FAFに積分量Ki Rが加算される(S207)。また、「S<D」でなく出力信号Sが基準値Dよりも大きい状態が維持されている旨判断された場合には、フィードバック補正係数FAFから積分量Ki Lが減算される(S208)。
【0054】
上記ステップS205〜S208のいずれかの処理を実行した後、フィードバック補正係数FAFが過度に大きい値や小さい値にならないよう、フィードバック補正係数FAFのガード処理が実行される(S209)。こうしてフィードバック補正係数算出ルーチンによって算出されるフィードバック補正係数FAFは、図4(a)に示す酸素センサ12の出力信号Sの変化に対し、図4(b)に示すように推移することとなる。
【0055】
ところで、電子制御装置10を通じて行われるエンジン1の燃料噴射量制御では、デリバリパイプ9内でのベーパ率BPが大になるほどベーパ補正係数Bが大きくされ、エンジン1の燃料噴射量が増量されるようになる。これにより、デリバリパイプ9内でのベーパ発生に伴い、インジェクタ3からの噴射燃料が必要量に対して不足することは抑制される。
【0056】
しかしながら、デリバリパイプ9内にLPGとベーパとの両方が存在する状態にあっては、デリバリパイプ9からインジェクタ3へと供給されるLPGの量、及びベーパの量が種々の状況に応じて大きく変動する。そのため、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPGとベーパとの割合にも大きな変動が生じ易く、この変動に伴いエンジン1の空燃比も理論空燃比に対してリッチ側もしくはリーン側に大きくずれるおそれがある。
【0057】
本実施形態では、このように空燃比が理論空燃比に対して大きくずれたとき、同空燃比を速やかに理論空燃比へと到達させることができるよう、デリバリパイプ9内でのベーパ率BPに応じて空燃比フィードバック制御の制御ゲインを変更する。即ち、デリバリパイプ9内でのベーパ率が、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPG及びベーパの量に大きな変動が最も生じ易い値へと近づくほど、スキップ量Rs R,Rs L及び積分量Ki R,Ki Lといった制御ゲインを大きくする。
【0058】
これにより、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPGとベーパとの割合に大きな変動が生じ、エンジン1の空燃比が理論空燃比に対して大きくずれたとしても、上記制御ゲインを用いて増減されるフィードバック補正係数FAFに基づく燃料噴射量の増減補正により、エンジン1の空燃比を速やかに理論空燃比に到達させることができる。
【0059】
次に、上記制御ゲインを変更する手順について制御ゲイン算出ルーチンを示す図7のフローチャートを参照して説明する。この制御ゲイン算出ルーチンは、電子制御装置10を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0060】
制御ゲイン算出ルーチンの処理としては、まずエンジン回転速度NE及び吸入空気量GA、並びに、アクセルポジションセンサ19の検出信号から求められるアクセル踏込量ACCPに基づき、スキップ量Rs R,Rs L及び積分量Ki R,Ki Lといった制御ゲインが算出される(S301)。これら制御ゲインは、アイドル運転(「ACCP=0」)、高負荷運転(「GA/NE」が大)、及び低負荷運転(「GA/NE」が小)といった運転状態毎に、そられ各運転状態にとって最適な値となるように算出される。
【0061】
その後、最終燃料噴射量算出ルーチンにおけるステップS104(図2)の処理でRAMに記憶されたベーパ率BPに基づき、上記積分量Ki R,Ki L及びスキップ量Rs R,Rs Lを変更するための補正係数α,βが算出される(S302)。続いて積分量Ki R,Ki Lに補正係数αを乗算したものを新たな積分量Ki R,Ki Lとし、スキップ量Rs R,Rs Lに補正係数βを乗算したものを新たなスキップ量Rs R,Rs Lとすることで、ベーパ率BPに応じて積分量Ki R,Ki L及びスキップ量Rs R,Rs Lを変更する(S303)。
【0062】
こうした変更に用いられる補正係数α,βは、ステップS302の処理で、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPG及びベーパの量に大きな変動が最も生じ易くなるベーパ率BPに近づくなるほど、スキップ量Rs R,Rs L及び積分量Ki R,Ki Lが大きくなるよう増大側の値として算出される。なお、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPG及びベーパの量に大きな変動が最も生じ易くなるベーパ率BPとしては、例えばベーパ率BPの変化範囲(0%〜100%)の中間付近の値をあげることができる。
【0063】
また、補正係数α,βは、図8に示されるように、ベーパ率BPの変化に対して異なる推移傾向をとるようになる。即ち、スキップ量Rs R,Rs Lを変更するための補正係数βは、積分量Ki R,Ki Lを変更するための補正係数αが推移する領域よりも減少側の領域で推移することとなる。このように推移する補正係数α,βによって積分量Ki R,Ki L及びスキップ量Rs R,Rs Lは、各々積分制御及びスキップ制御に適した態様で変更されることとなる。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)デリバリパイプ9内でのベーパ率BPは、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPG及びベーパの量の変動に大きな影響を及ぼす。そして、このベーパ率BPに応じて変化する補正係数α,βにより、空燃比フィードバック制御の制御ゲインである積分量Ki R,Ki L及びスキップ量Rs R,Rs Lが変更される。即ち、インジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPG及びベーパの量に大きな変動が最も生じ易くなるベーパ率BPに近づくほど、補正係数α,βが大きくされて上記制御ゲインが大きくされる。このため、デリバリパイプ9内でのベーパ発生に起因してインジェクタ3からの噴射燃料に含まれるLPG及びベーパの量に大きな変動が生じ、これに伴いエンジン1の空燃比が理論空燃比から大きくずれたとしても、上記制御ゲインを用いた空燃比フィードバック制御により空燃比を理論空燃比へと速やかに到達させることができる。
【0065】
(2)スキップ制御に用いられる上記スキップ量Rs R,Rs L、及び積分制御に用いられる上記積分量Ki R,Ki Lは、各々ベーパ率BPの変化に対する推移傾向が互いに異なる補正係数α,βにより、スキップ制御及び積分制御に適した態様で変更されることとなる。従って、上記のようにエンジン1の空燃比が理論空燃比から大きくはずれたとき、上記スキップ制御及び積分制御を各々最適な制御状態とし、エンジン1の空燃比を理論空燃比へと速やかに到達させることができる。
【0066】
(3)デリバリパイプ9内でのベーパ率BPを、LPGのプロパン含有率、並びに、デリバリパイプ9内の燃料温度及び燃料圧力など、同パイプ9内でのベーパ発生状態に関係するパラメータに基づき算出するようにした。これらパラメータは、タンク用温度センサ14、タンク用圧力センサ15、パイプ用温度センサ16、及びパイプ用圧力センサ17など、既存のセンサの検出信号から求められる。従って、デリバリパイプ9内のベーパ率BPを算出するのに新たにセンサを追加する必要はなく、簡単な構成で且つエンジン1の部品点数を増やすことなく上記ベーパ率BPを算出することができる。
【0067】
なお、本実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・エンジン1の燃料としてLPGの代わりにその他の燃料、例えばCNG(液化天然ガス)を用いてもよい。
【0068】
・補正係数α,βを必ずしも異なる値とする必要はない。
・LPGのプロパン含有率、並びに、デリバリパイプ9内の燃料温度及び燃料圧力など、デリバリパイプ9内のベーパ発生状態に関係するパラメータに基づきデリバリパイプ9内のベーパ率BPを算出し、このベーパ率BPに基づき空燃比フィードバック制御の制御ゲインを変更したが、本発明はこれに限定されない。即ち、上記デリバリパイプ9内のベーパ発生状態に関係するパラメータのうちの少なくとも一つに応じて直接的に上記制御ゲインを変更してもよい。また、デリバリパイプ9内のベーパ発生状態に関係するパラメータとしては、上記以外に例えば燃料タンク8内の燃料温度とデリバリパイプ9内の燃料温度との温度差等を用いることもできる。
【0069】
・デリバリパイプ9内のベーパ発生状態に関係するパラメータの一つとして、LPGの燃料性状を表す値であるプロパン含有率を例示したが、この燃料性状を表す値としてはプロパン含有率に限らず例えばブタン比率を用いることもできる。この場合にはベーパ率BPの算出に際し、ブタン比率が大となるほどベーパ率BPが小さい値となるように算出される。
【0070】
・デリバリパイプ9内のベーパ発生状態を表す値としてベーパ率BPを例示したが、これに変えてベーパ発生量を用いてもよい。この場合、LPGのプロパン含有率、並びに、デリバリパイプ9内の燃料温度及び燃料圧力など、デリバリパイプ9内でのベーパ発生状態に関係するパラメータに基づき、デリバリパイプ9内でのベーパ発生量が算出される。そして、このベーパ発生量に応じてスキップ量Rs R,Rs L及び積分量Ki R,Ki Lが変更されることとなる。
【0071】
・エンジン1の空燃比を理論空燃比に制御するのにフィードフォワード制御が用いられる場合には、燃料噴射量の補正に用いられるフィードフォワード項の増減量をベーパ率BPやベーパ発生量など、デリバリパイプ9内のベーパ発生状態を表す値に応じて変更することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の燃料噴射制御装置が適用されるエンジン、及びその燃料供給系を示す略図。
【図2】最終燃料噴射量Qfin の算出手順を示すフローチャート。
【図3】LPGのプロパン含有率と、燃料タンク内の燃料温度及び燃料圧力との関係を説明するための説明図。
【図4】酸素センサの出力信号S及びフィードバック補正係数FAFの時間経過に伴う推移を示すタイムチャート。
【図5】フィードバック補正係数FAFの算出に用いられる積分量Ki L,Ki R及びスキップ量Rs L,Rs Rの概念を示すタイムチャート。
【図6】フィードバック補正係数FAFの算出手順を示すフローチャート。
【図7】積分量Ki L,Ki R及びスキップ量Rs L,Rs Rといった制御ゲインの算出手順を示すフローチャート。
【図8】積分量Ki L,Ki R及びスキップ量Rs L,Rs Rの変更に用いられる補正係数α,βがベーパ率BPの変化に対してどのように推移するかを示すグラフ。
【符号の説明】
1…エンジン、3…インジェクタ、8…燃料タンク、9…デリバリパイプ、10…電子制御装置、14…タンク用温度センサ、15…タンク用圧力センサ、16…パイプ用温度センサ、17…パイプ用圧力センサ。
Claims (5)
- 燃料を噴射するためのインジェクタに液化ガス燃料を供給する供給経路を備え、その供給経路内でのベーパの発生に伴う噴射燃料の不足を補償すべく燃料噴射量を増量する内燃機関の燃料噴射制御装置において、
内燃機関の燃料噴射量を所定の補正値をもって補正するものであって、同機関の空燃比が目標値となるよう前記補正値を増減させる補正手段と、
前記供給経路内のベーパ発生状態に関係するパラメータに基づき前記補正値の増減量を変更する変更手段とを備え、
前記補正手段は、内燃機関の空燃比を理論空燃比へとフィードバック制御すべく、同機関の空燃比に基づき前記フィードバック制御の制御ゲインを用いて前記補正値を増減させ、
前記変更手段は、前記パラメータに基づき前記供給経路内のベーパ率を算出し、そのベーパ率に基づき前記制御ゲインの大きさを変更する
ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記パラメータは、前記液化ガス燃料の燃料性状を表す値、前記供給経路内の燃料温度、及び燃料圧力のうちの少なくとも一つである
請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記液化ガス燃料の燃料性状を表す値は、前記インジェクタに供給される液化ガス燃料を貯留するための燃料タンク内の燃料温度及び燃料圧力に基づき特定される
請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記変更手段は、前記インジェクタからの噴射燃料に含まれるベーパ及び液化ガス燃料の量に大きな変動が最も生じ易いベーパ率であるとき、前記補正値の増減量が最大となるように同増減量を変更する
請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記制御ゲインは、内燃機関の空燃比が理論空燃比に対してリッチとリーンとの間で反転したときに前記補正値に対し加算若しくは減算されるスキップ量と、同機関の空燃比が理論空燃比に対してリッチ若しくはリーンに維持されている間に前記補正値に対し継続して加算若しくは減算される積分量とであり、
前記変更手段は、前記ベーパ率に基づき前記スキップ量と前記積分量とを変更する
請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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