JP2016002583A - プレス成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るプレス成形方法は、長手方向に延びる溝形状部13を有し、該溝形状部13を形成する一対の縦壁部13bの両方に長手方向に沿って湾曲するフランジ部を有する製品形状の成形品11を、溝形状部13を成形するパンチ3と、パンチ3の両側部に移動可能に設けられたフランジ成形ダイ5と、溝形状成形部7aとフランジ成形部7bを有するダイ7とを用いてプレス成形するプレス成形方法であって、成形途中におけるダイ7の下死点からの距離をH、成形途中におけるフランジ成形ダイ5の上死点からの距離をDとしたときに、成形途中においてはH>0、D>0であり、製品形状に成形する時点で、H=D=0となるようにして成形することを特徴とするものである。
【選択図】 図1
Description
このため、スプリングバック後の形状を設計形状に近づけるために、生産現場では熟練者によって金型を幾度も修正して、トライアル&エラーを重ねなければならず、その結果、生産期間が長期化してしまう。
したがって、スプリングバックを効果的に低減できる方法を開発することは、自動車の開発期間やコストを削減する上でもますます重要な課題であると言える。
応力をコントロールしてスプリングバックを低減するものとして、例えば特許文献1に記載の「薄鋼板のプレス成形用金型装置」がある。特許文献1は、ハット断面部品をフォーム成形する際に、フランジ部に凸ビードを設けた金型でプレス成形する方法である。この方法は、下死点直前でブランクが凸ビードにロックされてブランクの縦壁部に引張変形が付与され、縦壁部の反りの原因であった板厚方向の応力差が解消されるというものである。
従来のフォーム成形の場合、図23に示すように、プレス成形開始からストロークが約4.7mmまでの間は、図20(b)中の太矢印に示す方向にブランク19が流入して、これによってブランク内側部は引張りひずみが生ずる。このプレス成形開始からストロークが約4.7mmまでの間は、ブランク内側端部はパンチ85と接触していないので、ストロークに対するひずみ量が大きくなったものと考えられる。
そして、ストロークが10mmを超えた時点から下死点である15mmまでは、引張りひずみが増加し、特にストロークが12mmを超えた時点以降は引張りひずみが急激に増加している。
これは、ストロークが10mmを超えた時点からブランク内側端部のパンチ85の平坦部86に対する傾斜角度が小さくなり、つまりブランク内側端部とパンチ85の平坦部86が成す角度が小さくなり、ブランク内側端部のパンチ85の平坦部86による拘束力が小さくなったため、それまで伸びようとしても伸びられなかったのが開放されことで急激に引張りひずみが生じたものと考えられる。
とすれば、引張りひずみを小さくするには、プレス成形過程において、フランジ端部のパンチ85の平坦部86による拘束をできるだけ長くする、つまりプレス成形の下死点直前までフランジ端部とパンチ85の平坦部86との成す角度が大きくなるような成形をすればよい。
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
成形途中における前記ダイの下死点からの距離をH、成形途中における前記フランジ成形ダイの上死点からの距離をDとしたときに、
成形途中においてはH>0、D>0であり、製品形状に成形する時点で、H=D=0となるようにして成形することを特徴とするものである。
本発明の一実施の形態に係るプレス成形方法は、図18に示す製品形状の成形品11(図18参照)を、図1〜図3に示すプレス成形装置1を用いてプレス成形するものであるので、本プレス成形方法について詳細に説明するのに先立って、上記の成形品11及びプレス成形装置1について図1〜図3、図18に基づいて概説する。
成形品11は、図18に示すように、溝底部13a及び縦壁部13bからなる溝形状部13と、内側フランジ部15及び外側フランジ部17を有しており、全体形状が長手方向に沿って湾曲している。
内側フランジ部15は湾曲曲率が大きくなっており(曲率半径が小さくなっており)、外側フランジ部17は湾曲曲率が小さくなっている(曲率半径が大きくなっている)。従って、従来のフォーム成形において、内側フランジ部15が伸びフランジ変形を受けるフランジ部であり、外側フランジ部17がプレス成形時に縮みフランジ変形を受けるフランジ部である。
プレス成形装置1は、図3に例を示すように、溝形状部13を成形するパンチ3と、パンチ3の両方の側部に移動可能に設けられたフランジ成形ダイ5と、パンチ3及びフランジ成形ダイ5と協働して溝形状部13及びフランジ部を成形するダイ7と、フランジ成形ダイ5を移動可能に支持する支持機構としての油圧支持機構9を有している。
以下、各構成について説明する。
パンチ3は、長手方向に沿って湾曲する凸条からなり、上端が溝形状部13の溝底部13aを成形する溝底成形部3aになっており、溝底成形部3aの両側が縦壁部13bを成形する縦壁成形部3bになっている。
フランジ成形ダイ5は、ダイ7と協働してフランジ部を成形するためのものであり、ダイ7に対向するフランジ成形面5aを有し、パンチ3の両側に配置されて油圧支持機構9によって移動可能に支持されている。
ダイ7は、長手方向に沿って湾曲する溝形からなり、パンチ3と協働して溝形状部13を成形する溝形状成形部7aと、溝形状成形部7aの両側に設けられフランジ成形ダイ5と協働してフランジ部を成形するフランジ成形部7bとを有している。
油圧支持機構9は、フランジ成形ダイ5を支持して移動させる支持機構の一例であり、図3に示すように、ダイ7のプレス成形時の移動方向(図中では下方向)に凸となるようにダイ7に設けられた凸部7cと、ダイ7の凸部7cによって押圧されることでダイ7の成形荷重を受ける第1油圧ピストン21と、作動油23が充填された油圧配管25と、油圧配管25における第1油圧ピストン21が設置された端部と反対側の端部に設置された第2油圧ピストン27とを備えており、成形時におけるダイ7の成形荷重をフランジ成形ダイ5がダイ7に近づく方向に移動させる駆動力に変換して、該駆動力によってフランジ成形ダイ5を移動させるようになっている。
以下に、油圧支持機構9の各構成を詳細に説明する。
ダイ7の凸部7cの高さと第1油圧ピストン21の高さは、プレス成形時においてダイ7が移動して所定の位置に到達したときに、凸部7cが第1油圧ピストン21に当接して押し下げを開始するように設定されている。
作動油23は、第1油圧ピストン21がダイ7の凸部7cから受けた荷重を、他端側に設置された第2油圧ピストン27に伝達するための機能を有している。
第2油圧ピストン27は、油圧配管25の一端に上下動可能に配置されており、第2油圧ピストン27によって押圧板29を介してフランジ成形ダイ5を支持している。
〔プレス成形方法〕
図1(a)はプレス成形の初期状態を示す図である。以下の説明において、成形途中におけるダイ7の下死点からの距離をH、成形途中におけるフランジ成形ダイ5の上死点からの距離をDとし、ブランク19の厚みをtとする。
図1(a)に示すように、フランジ成形ダイ5はD=D0となるように、フランジ成形ダイ5の上死点から下がった位置で油圧支持機構9によって支持しておく。ブランク19はパンチ3の上面に載置する。
例えば、内側端19aは、図5の実線に示すように、成形開始からストロークが約5.8mmまでの間フランジ成形ダイ5に当接せず、その間、引張ひずみが蓄積される。
なお、従来方法の場合、図5の点線に示すように、プレス成形開始からストロークが約4.7mmまでの間は、内側端19aがフランジ成形ダイ5に当接しなかったため、本発明方法の場合と同様に、引張ひずみが蓄積された。
フランジ端部がフランジ成形ダイ5に当接すると、フランジ端部に拘束力が発生する。このような拘束力はフランジ端部がフランジ成形ダイ5に対してなす角度(以下、「当接角度θ」という)に応じて変化し、当接角度θが急であるほど大きくなり、逆に当接角度θが0°(フランジ部とフランジ成形ダイ5のフランジ成形面5aとがほぼ平行)に近いほど小さくなる。
例えば内側端19aの場合、フランジ成形ダイ5に当接した後は、発生した拘束力によって内側端19aの動きが制限され、ブランク19全体は矢印A1(図4参照)に示す方向への動きができず、内側端19aも矢印A3(図4参照)に示すような引張りひずみが生じない。その一方で、内側端19aよりもパンチ3に近い部位は、プレス成形が進行するにしたがって引張りひずみが増加し、そのため、図5の実線に示すように、ストロークが約5.8mmを超えたあたりから引張ひずみが徐々に減少する。
また、フランジ成形ダイ5がD>0の状態を維持していることにより、従来方法に比較して、フランジ端部の傾斜角度がより大きい状態でフランジ成形ダイ5に当接するため、フランジ端部の当接角度θを大きくすることができる。
これに対して、従来方法では、ストロークが約10.2mmを超えたあたりから、引張ひずみが増加し、その後急激に増加している。これは、フランジ部の当接角度θがストークの早い段階で0°に近くなるため、内側端19aの拘束力が弱まり、内側端19aが伸びフランジ成形となったためである。
他方、従来方法の場合の同様の応力状態を示した図7を見ると分かるように、従来方法では、プレス成形完了前である内側端19aの図7(a)中の矢印A4で示す箇所においては、残留応力が殆ど蓄積されていない状態であったが、プレス成形完了時の図7(b)の下死点の状態では、引張方向の残留応力が蓄積されている。
このように、本発明方法ではフランジ端部に蓄積されるひずみ量すなわち残留応力を低減させ、これによってスプリングバックを緩和させることができるので、金型形状を修正することでトライアル&エラーによってスプリングバックを緩和していた従来の方法に比べ、はるかに安価でなおかつ短期間でスプリングバックを緩和できる。
実施の形態1では、内側フランジ部15及び外側フランジ部17の両方において、フランジ端部に生ずる残留応力を低減させ、これによってスプリングバックを緩和させた例を説明したが、内側フランジ部15と外側フランジ部17とで残留応力のバランスをとることによって成形品11全体としてスプリングバックが緩和されればよく、内側フランジ部15または外側フランジ部17の一方についてのみ、残留応力を低減させるような成形を行うようにしてもよい。
例えば、内側フランジ部15のみで残留応力を低減させる場合、図8に示すように、外側フランジ成形部33bを有するパンチ33と、内側フランジ部15を成形するためのフランジ成形ダイ5を備えたプレス成形装置31を用いてプレス成形を行う。
プレス成形装置31の他の構成は図1〜図3のプレス成形装置1と同様であるので、図8において、図1〜図3と同一のものには同一の符号を付している。
実施の形態2で説明したものとは逆に、外側フランジ部17のみ残留応力を低減させるようにしてもよく、この場合、図9に示すように、内側フランジ成形部43aを有するパンチ43と、外側フランジ部17を成形するためのフランジ成形ダイ5を備えたプレス成形装置41を用いる。
パンチ43は、ダイ7と共に図18に示す溝底部13aと縦壁部13bと内側フランジ部15を成形する。
プレス成形装置41の他の構成はプレス成形装置1及びプレス成形装置31と同様であるので、図9において、図1〜図3及び図8と同一のものには同一の符号を付している。
このようなものの一例を図10に示す。図10に示すプレス成形装置51は、図1〜図3のプレス成形装置1の変形例であり、ブランク19の溝底部13aに相当する部位をパンチ3と協働して挟持するパッド53を設けて、ダイ7の移動前からブランク19を挟持するようにしてもよい。こうすることで、プレス成形中にブランク19がずれてしまうことを確実に防止できる。なお、図10のプレス成形装置51において、図1〜図3のプレス成形装置1と同一のものには同一の符号を付している。
しかし、上記説明の「上死点」、「下死点」における「上」、「下」には、一般的な上下(うえした)の意味はなく、対向配置されたフランジ成形ダイ5とダイ7が対向する相手側に向かって移動するという移動の方向を示すものであり、「上死点」、「下死点」とはフランジ成形ダイ5とダイ7がそれぞれ対向する相手側に向かって移動したときの移動最終点の意味である。つまり「上死点」、「下死点」という文言によってフランジ成形ダイ5とダイ7の配置が限定されるものではく、例えばフランジ成形ダイ5とダイ7が上下逆に配置された場合も含まれる。
図11(a)〜図11(f)は、内側及び外側の両方に湾曲したフランジ部を有するものである。図11(a)、(d)は縦壁が垂直になっているものである。図11(b)、(e)は上述した成形品11の断面と同様であり、縦壁が傾斜しているものである。図11(c)、(f)は両縦壁部が傾斜して三角形を形成しているものである。図11(c)、(f)の断面を成形するには、先端がRになっているパンチを使用するとよい。
また、図11(g)〜図11(i)に示すように、図11(a)〜図11(c)の内側または外側のいずれか一方のみの湾曲したフランジ部を有するものであってもよい。
フランジ部の長さ、高さ位置や角度について制限はない。
また、図12(a)の成形品61及び図12(b)の成形品63に示すように、内側または外側のいずれか一方に湾曲したフランジ部を有し、他方は湾曲しないフランジ部を有するものであってもよく、成形品の製品形状全体が湾曲していなくともよい。
図13(a)は、成形品全体が長手方向中央で上に凸となるように湾曲した形状の一例(成形品65)を図示したものであり、図13(b)は長手方向中央で下に凸となるように湾曲した形状の一例(成形品67)を図示したものである。
図14(a)は、成形品のフランジ部のみが長手方向中央で上に凸となるように湾曲した形状の一例(成形品69)を図示したものであり、図14(b)は成形品のフランジ部のみが長手方向中央で下に凸となるように湾曲した形状の一例(成形品71)を図示したものである。
まず、実験方法について概説する。実験は、H1及びD0のスプリングバックへ量の影響を確認するために、プレス成形装置1を用いてH1及びD0を変えて成形を行い、成形された成形品11のスプリングバック量を比較するというものである。
比較例1としてプレス成形金型81(図19参照)を用いて、溝底部13aと縦壁部13bとフランジ部(内側フランジ部15及び外側フランジ部17)を成形する通常のパンチ85(H1=0mm、D0=0mm)を用いて従来のフォーム成形(図20参照)を行った。
曲がり量Δyは、正ならば部品の湾曲曲率が大きくなる(曲率半径が小さくなる)方向に曲がり変形したことを、負ならば湾曲曲率が小さくなる(曲率半径が大きくなる)方向に曲がり変形したことを意味する。そして、絶対値が小さければスプリングバック量が少ないことを意味する。
表1に各プレス成形条件{H1(mm)、D0(mm)、パッドの有無}と各プレス条件で成形された成形品11の曲がり量Δy(mm)をまとめたものを示す。
また、比較例2及び本発明例5から分かる通り、パッドを用いた場合でもスプリングバックが大幅に改善された。
3 パンチ
3a 溝底成形部
3b 縦壁成形部
5 フランジ成形ダイ
5a フランジ成形面
7 ダイ
7a 溝形状成形部
7b フランジ成形部
7c 凸部
9 油圧支持機構
11 成形品
13 溝形状部
13a 溝底部
13b 縦壁部
15 内側フランジ部
17 外側フランジ部
19 ブランク
19a 内側端
19b 外側端
21 第1油圧ピストン
23 作動油
25 油圧配管
27 第2油圧ピストン
29 押圧板
31 プレス成形装置(実施の形態2)
33 パンチ
33b 外側フランジ成形部
41 プレス成形装置(実施の形態3)
43 パンチ
43a 内側フランジ成形部
51 プレス成形装置(他の態様)
53 パッド
61 内側に湾曲フランジを有する成形品
63 外側に湾曲フランジを有する成形品
65 上に凸となる湾曲形状の成形品
67 下に凸となる湾曲形状の成形品
69 フランジ部のみが上に凸となる湾曲形状の成形品
71 フランジ部のみが下に凸となる湾曲形状の成形品
81 プレス成形金型(従来例)
83 ダイ
85 パンチ
86 パンチの平坦部
Claims (4)
- 長手方向に延びる溝形状部を有し、該溝形状部を形成する一対の縦壁部の少なくとも一方に長手方向に沿って湾曲するフランジ部を有する製品形状の成形品を、前記溝形状部を成形するパンチと、該パンチの少なくとも一方の側部に移動可能に設けられたフランジ成形ダイと、前記パンチと協働して溝形状部を成形する溝形状成形部と前記フランジ成形ダイと協働してフランジ部を成形するフランジ成形部を有するダイと、を用いてプレス成形するプレス成形方法であって、
成形途中における前記ダイの下死点からの距離をH、成形途中における前記フランジ成形ダイの上死点からの距離をDとしたときに、
成形途中においてはH>0、D>0であり、製品形状に成形する時点で、H=D=0となるようにして成形することを特徴とするプレス成形方法。 - フランジ成形ダイの移動開始時におけるHとDの関係が、D>Hであることを特徴とする請求項1記載のプレス成形方法。
- 前記パンチのいずれか一方の側部に移動可能に設けられたフランジ成形ダイを用いてプレス成形することを特徴とする請求項1又は2記載のプレス成形方法。
- 前記パンチの両方の側部に移動可能に設けられたフランジ成形ダイを用いてプレス成形することを特徴とする請求項1又は2記載のプレス成形方法。
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