JP6809435B2 - プレス成形装置及び方法 - Google Patents
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Description
このため、スプリングバック後の形状を目標となる設計形状に近づけるために、生産現場では熟練者が金型を幾度も修正して、トライアル&エラーを重ねなければならず、その結果、生産準備期間が長期化してしまう。したがって、スプリングバックを効果的に低減できる方法を開発することは、自動車の開発期間やコストを削減する上でも、ますます重要な課題である。
湾曲部品の捩れや曲がりの3次元的なスプリングバックを低減するための技術として、特許文献1に「プレス成形方法及び装置」が提案されている。
本発明は、同文献で検討されたスプリングバック低減のメカニズムを前提としているので、以下において同文献で検討されたメカニズムを概説する。
これらの残留応力は離型時に弾性回復し、湾曲内側フランジ部51dでは縮み変形、湾曲外側フランジ部51cは伸び変形となり、その結果、図12に示すように、部品は湾曲曲率が大きく(曲率半径が小さく)なるような曲がり変形となるスプリングバックが発生する。なお、図12において、破線がスプリングバック前の形状を示しており、実線がスプリングバック後の形状を示している。
特許文献1に開示されたプレス成形装置の成形中の断面を図13に示す。プレス成形装置59は、ダイ61と、ダイ61に対向配置されたフランジ成形用ダイ63と、支持機構65によって上下動可能に支持されたパンチ67と、ブランク69をパンチ67に押圧するパッド71とを備えている。
特許文献1のプレス成形方法は、ダイ61とパンチ67によってパンチ底部51a及び縦壁部51bを目標形状に第1下死点まで成形すると共に、湾曲外側フランジ部51cおよび湾曲内側フランジ部51dについて、湾曲外側フランジ部51cに対しては長手方向の線長が成形品51のフランジ部の線長よりも短く、湾曲内側フランジ部51dに対しては長手方向の線長が成形品51のフランジ部の線長よりも長くなるように成形する第1成形工程(図13(a)〜図13(c)参照)と、ダイ61とフランジ成形用ダイ63によって第1成形工程で成形された湾曲外側フランジ部51cおよび湾曲内側フランジ部51dを成形品51の目標形状に第2下死点まで成形する第2成形工程(図15(d)参照)とを備え、第1成形工程と第2成形工程を1度のプレス成形で行うことを特徴とするものである。
以上のように、特許文献1の発明は、わずかにひずみを戻すことによって、残留応力が敏感に大きく変化する特徴を利用したものである。
そして、ひずみの戻し量は第1下死点(図13(c)参照)から第2下死点(図13(d)参照)に至るパンチの下降量(相対移動距離h)(図13(a)参照)に関係しており、相対移動距離hを確実かつ正確に調整できることが重要である。
パンチ67の動きがプレス成形の各ショットで同じでないと、上述の相対移動距離hがショットごとに変化してひずみの戻し量が変化することになる。このため、スプリングバック後の形状がショットごとに変動する場合があり、この点では特許文献1のプレス成形装置59ではスプリングバック後の目標形状がばらつく懸念がある。
さらに、湾曲内側フランジ部と湾曲外側フランジ部の位置が同じであり、相対移動距離hの調整を湾曲内側フランジ部と湾曲外側フランジ部で個別にできないため、捩れや曲げといった複雑な3次元的なスプリングバックに柔軟に対応することが難しいという課題もあった。
また、捩れや曲がりといった3次元的なスプリングバックを安定して低減できるプレス成形装置及び方法を提供することを目的としている。
以下、各構成を詳細に説明する。
ダイ3は、溝形状部を成形する溝部11と溝部11の両側にダイ肩部13を有しており、図示しないダイ駆動装置によってパンチ5側に相対移動できるようになっている。
ダイ3の溝部11の上方には、パッド9を収容するパッド収容部15と、後述のパッド押付機構17を収容するためのパッド押付機構収容部19が設けられている。
パンチ5は、ダイ3の溝部に挿入され、ダイ3と協働して目標形状のパンチ底部51aと縦壁部51bとからなる溝形状部を成形するものである。パンチ5は、図1に示すように、中央部に縦壁部51bを成形するための縦壁成形部21が設けられている。
フランジ成形用ダイ7は、ダイ肩部13に対向配置されてダイ肩部13と協働してフランジ部を成形するものであり、湾曲内側フランジ成形用ダイ7a(図1中左側)と湾曲外側フランジ成形用ダイ7b(図1中右側)がパンチ5の両側に設けられている。そして、湾曲内側フランジ成形用ダイ7a及び湾曲外側フランジ成形用ダイ7bは、いずれも高さ方向に移動可能であり、フランジ成形用ダイ移動機構23によって上下位置の設定と上下動が可能になっている。
以下の説明においては、湾曲内側フランジ成形用ダイ7a及び湾曲外側フランジ成形用ダイ7bの高さに関し、図1に示すように、パンチ5における縦壁成形部21の下端からの鉛直距離をダイギャップg(湾曲内側フランジ成形用ダイ7aのダイギャップをg1、湾曲外側フランジ成形用ダイ7bのダイギャップをg2)という。
パッド9は、成形過程においてブランク69をパンチ5に押し付けるものであり、ダイ3の内部に設けられたエアシリンダ等で構成されるパッド押付機構17によってパンチ5側に押し付けられるようになっている。
なお、パッド9を使用しなくても、本発明の方法は実施できるが、成形中にブランク69が動かないようにパッド9とパンチ5で把持しておくことが望ましい。
図2(a)に示すプレス成形の開始時点において、湾曲内側フランジ成形用ダイ7aと湾曲外側フランジ成形用ダイ7bは、ダイギャップがそれぞれg1およびg2となるように上下位置が設定され、図中左側の湾曲内側フランジ成形用ダイ7aの高さが図中右側の湾曲外側フランジ成形用ダイ7bよりも若干だけ低く設定されている。すなわち、湾曲内側フランジ成形用ダイ7aのダイギャップg1を湾曲外側フランジ成形用ダイ7bのダイギャップg2よりも大きく設定している。これは、湾曲内側フランジ部51dのひずみの戻し量を湾曲外側フランジ部51cのそれよりも大きくするためである。
特に、本実施の形態においては湾曲内側フランジ成形用ダイ7aと湾曲外側フランジ成形用ダイ7bを個別に高さ方向移動可能にし、それぞれに対してダイギャップを設定できるようにしたことにより、金型自体の形状を変えることなく、湾曲内側フランジ部51dと湾曲外側フランジ部51cの各ひずみの戻し量を個別に制御することができ、より精密に曲がりや捩れのスプリングバックを制御することができる。
本発明の実施形態のこのような柔軟性は、微調整を繰り返すプレスショップにおいてその繰り返し操作を削減できて大きな優位性を有していると言える。
溝形状部を形成する一対の縦壁部の一方にのみ湾曲したフランジ部を有する場合、本発明に係るプレス成形装置は、フランジ部成形用ダイのうち、長手方向に沿って湾曲するフランジ部側にあるフランジ成形用ダイのみが高さ方向移動可能であればよく、他方のフランジ成形用ダイは固定されているものであってもよい。
比較例として、図13に示すプレス成形装置59を用いて、特許文献1の方法を用い、相対移動距離hを変化させた。本発明例および比較例ともに、パッド9を使用し、パッド圧は50tonfとした。
曲がり量Δyは、以下の方法で測定した。まず、成形された目標形状を3次元形状測定装置で測定した。その後、CADソフトウェア上で長手方向中央の湾曲部が設計形状と合うように測定形状データの位置合わせを行った後、部品端における測定形状データと設計形状データのY座標差異(曲がり量Δy、図5参照)を算出し、この曲がり量Δyをスプリングバックによる曲がり変形の指標とした。
曲がり量Δyは、正ならば部品の湾曲曲率が大きくなる(曲率半径が小さくなる)方向に曲がり変形したことを、負ならば湾曲曲率が小さくなる(曲率半径が大きくなる)方向に曲がり変形したことを意味する。そして、絶対値が小さければスプリングバック量が少ないことを意味する。
曲がり量Δyの測定方法と同様、長手方向中央の湾曲部が設計形状と合うように測定形状データの位置合わせを行った後、図6に示すように湾曲部中央と端部の断面形状を抽出した。抽出した断面形状は図6の模式図のようになっている。測定形状のパンチ底部分と、設計形状のパンチ底部分のなす角(スプリングバックによる回転角)を、図6の回転角の方向を正として測定し、湾曲部中央のパンチ底回転角θCと、端部のパンチ底回転角θEから、捩れ量をΔθ=θE−θCとして計算した。
比較例において、曲がり量Δyと捩れ量Δθを測定した結果を、曲がり量Δyを○、捩れ量Δθを△で図7にプロットして示す。比較例では、相対移動距離h=11.8mmのときに曲がり量Δyはほぼゼロに、相対移動距離h=18.2mmのときに捩れ量Δθはほぼゼロとなったが、曲がり量Δyと捩れ量Δθの双方を同時にゼロにする相対移動距離hは存在しない結果となった。
1 プレス成形装置
3 ダイ
5 パンチ
7 フランジ成形用ダイ
7a 湾曲内側フランジ成形用ダイ
7b 湾曲外側フランジ成形用ダイ
9 パッド
11 溝部
13 ダイ肩部
15 パッド収容部
17 パッド押付機構
19 パッド押付機構収容部
21 縦壁成形部
23 フランジ成形用ダイ移動機構
<成形品>
51 成形品
51a パンチ底部
51b 縦壁部
51c 湾曲外側フランジ部
51d 湾曲内側フランジ部
<従来例>
53 ダイ
55 パンチ
57 プレス成形金型
59 プレス成形装置
61 ダイ
63 フランジ成形用ダイ
65 支持機構
67 パンチ
69 ブランク
69a フランジ内側端
69b フランジ外側端
71 パッド
<記号>
g ダイギャップ
g1 湾曲内側フランジ成形用ダイのダイギャップ
g2 湾曲外側フランジ成形用ダイのダイギャップ
h 相対移動距離
Claims (2)
- 長手方向に延びる溝形状部を有し、該溝形状部を形成する一対の縦壁部のそれぞれにフランジ部を有し該フランジ部の少なくとも一方が長手方向に沿って湾曲するフランジ部である目標形状の成形品を成形するプレス成形装置であって、
前記溝形状部を成形する溝部と該溝部の両側にダイ肩部を有するダイと、前記ダイの溝部に挿入されて前記目標形状の溝形状部を成形する分割されていないパンチと、該パンチの両側に設けられ、いずれも高さ方向に移動可能であり、前記パンチにおける縦壁成形部の下端からの鉛直距離であるダイギャップを設定でき、成形途中におけるひずみの戻り量を制御できて、前記両側のダイ肩部にそれぞれ対向配置されて前記ダイ肩部と協働して前記フランジ部を成形する2つのフランジ成形用ダイと、該パンチ側にブランクを押し付けるパッドと、を備えていることを特徴とするプレス成形装置。 - 溝形状部を成形する溝部と該溝部の両側にダイ肩部を有するダイと、前記両側のダイ肩部にそれぞれ対向配置されて前記ダイ肩部と協働してフランジ部を成形する2つのフランジ成形用ダイと、前記ダイの溝部に挿入されて溝形状部を成形する分割されていないパンチと、該パンチ側にブランクを押し付けるパッドと、を備え、
前記2つのフランジ成形用ダイの一方は他方と独立して高さ方向移動可能に構成されているプレス成形装置を用いて、
長手方向に延びる溝形状部を有し、該溝形状部を形成する一対の縦壁部のそれぞれにフランジ部を有し該フランジ部の少なくとも一方が長手方向に沿って湾曲するフランジ部である目標形状の成形品を成形するプレス成形方法であって、
高さ方向移動可能な前記フランジ成形用ダイの高さを所定の高さに調整し、前記パッドでブランクを前記パンチに押し付けた状態で、前記パンチと前記ダイによって溝形状部を前記目標形状に成形する工程と、
前記フランジ成形用ダイを前記ダイ側に移動させて前記フランジ部を前記目標形状に成形する工程とを備えたことを特徴とするプレス成形方法。
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