JP2016000723A - 新規なグルタミン酸誘導体およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)によって認識されるプロドラッグは、GGT高発現組織において、選択的に活性化化合物を遊離させることができることから、副作用が軽減され、治療効果が向上することが期待できる。しかしながら、医薬品として求められる安定性や効果を十分に発揮するものは得られておらず、医薬品として使用可能なGGT認識プロドラッグが望まれている。
【解決手段】 γ−グルタミル化薬剤とするプロドラッグ化において、適当な芳香族アミド化リンカーを介することにより、GGT認識性が顕著に高くなり、非常に速やかに薬理活性型薬剤を遊離することを見出し、本発明に至った。すなわち、γ―グルタミル芳香族アミドを結合させた薬剤が、GGTが高発現している組織において、速やかに薬理活性型薬剤を遊離し、治療効果の高い薬剤と成り得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、新規なグルタミン酸誘導体であって、標的部位で酵素選択的に活性化される新規化合物、その用途に関するものである。より詳細には、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT, E.C. 2.3.2.2)によって活性化されるプロドラッグである新規グルタミン酸誘導体及びその用途に関する。
プロドラッグは、生体内で代謝された後に活性型の薬剤に変化するものである。薬剤をプロドラッグ化する目的としては、安定性の改善、溶解性の改善、吸収性の改善、副作用の軽減、作用時間の改善(作用の持続化)、特定部位での作用発現などが挙げられる。これまで、幾つかの薬剤がプロドラッグとして開発されてきており、様々な疾病に対する治療用医薬品として臨床使用されている。
がんの化学療法に用いられる抗がん剤の多くは、がん細胞のみならず正常細胞にも細胞増殖阻害作用を示すため、このことに起因する副作用が問題となっている。このため、抗がん剤をがん細胞に対して選択的に作用させることができれば、副作用が軽減した抗がん剤を提供することができる。そこで、抗がん剤をプロドラッグ化して、腫瘍組織などの標的部位で選択的に活性化することができれば、副作用が軽減されると同時に治療効果を大きく向上させることが期待できる。
標的部位で選択的に活性化合物に変換させる方法として、標的組織に高発現している酵素を利用する方法が考えられている。標的部位の酵素特異的反応を利用したプロドラッグ化に関しては、酵素認識部位と薬剤間に自己開裂型リンカーを介在させる手法が知られている(非特許文献1)。これは酵素特異的反応により酵素認識部位が開裂し、それにより生じたリンカー−薬剤複合体において、リンカー部が自己開裂することにより薬剤を放出することを可能としている。
γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)は、グルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)およびグルタチオン抱合体の代謝分解の初発段階をつかさどる酵素で、高等動植物から微生物までほとんどあらゆる生物に普遍的に存在することが知られている(非特許文献2、非特許文献3、および非特許文献4)。GGTは、グルタチオンのγ−グルタミル結合を加水分解する酵素であり、GluとCys−Glyを生成する一方、各種アミノ酸やジペプチド、アミン類を受容体として、γ−グルタミル転移生成物を与える。
GGTは、多種多様ながん細胞で高発現していることが知られており、がん化学療法の薬物ターゲットとしてGGTを指摘する報告もある(非特許文献5)。
特許文献1には、抗がん剤をγ−グルタミル化した化合物が開示されている。また、自己開裂リンカーを利用したプロドラッグとして、トリプシンにより切断することが可能であるプロドラッグが挙げられている(非特許文献1)。しかしながら、GGTに認識され、これにより切断されることが可能であるプロドラッグについては述べられていない。また、非特許文献6には、抗がん剤をグルタミル化した化合物が挙げられており、酵素に依存した細胞毒性が示されてはいる。しかしながら、非常に高い酵素濃度において、薬理活性型化合物を解離されるものであり、生体内環境でプロドラッグとして機能できるものではない。また、グルタミン酸γ位に薬剤を結合させた化合物として、適当なリンカーを介したプロドラッグ型化合物は知られていない。
J.Med.Chem., 479,(1981) Adv. Enzymol. Relat.Areas Mol. Biol ., 72 , 239 − 278(1998) Methods Enzymol.,113,400−419(1985) Methods Enzymol.,113,419−437(1985) Biochemical Pharmacology 71, pp231−238,2006 Environmental and Molecular Mutagenesis 32:377−386 (1998)
US7,989,188
GGTによって認識されるプロドラッグは、GGT高発現組織において、選択的に活性型化合物を遊離させることができることから、副作用が軽減され、治療効果が向上した医薬品となることが期待できる。しかしながら、医薬品として求められる安定性や効果を十分に発揮するものは得られておらず、医薬品として使用可能なGGT認識プロドラッグが望まれている。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、適当なγ―グルタミル芳香族アミドを結合させた薬剤が、GGTに認識されて速やかに生理活性作用を示す薬剤を遊離することを見出した。具体的には、下記一般式(1)
Figure 2016000723
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
Figure 2016000723
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩が、GGT認識プロドラッグとして有用であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本願は、以下の[1]乃至[13]に示す発明を、その要旨とする。
[1] 一般式(1)
Figure 2016000723
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
Figure 2016000723
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[2] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、カンプトテシン及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[3] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、パクリタキセル又はドセタキセルである前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[4] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エベロリムス、テムシロリムス、タクロリムス及びラパマイシンからなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[5] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン及びアムルビシンからなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[6] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ゲムシタビン、エチニルシチジン、シタラビン及びCNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)からなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[7] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ベスタチン(Bestatin)又はその誘導体、グルファニド(Glufanide)、グレリン(Ghrelin)、テルトモチド(Tertomotide)、PR1、オクトレオチド(Octreotide)、ランレオチド(Lanreotide)及びパシレオチド(Pasireotide)からなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[8] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エリブリン又はその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[9] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、オーリスタチン又はその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[10] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、メトトレキサート又はペメトレキセドである前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[11] 一般式(1)において、R、R及びRは水素原子である前記[1]〜[10]の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[12] 前記[1]〜[11]の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
[13] 抗がん剤である前記[12]に記載の医薬。
本発明のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、GGTに認識され、水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質を、速やかに遊離する物性を有する。GGTは、多くの悪性腫瘍において高発現していることが知られている。したがって、本発明のグルタミン酸誘導体を抗腫瘍効果を有する化合物に適用することで、標的組織選択的に抗腫瘍活性を発揮する化合物を遊離させることができ、副作用が軽減され、治療効果が向上した抗腫瘍性薬剤を提供することができる。
OS−RC−2細胞に対する実施例1の細胞増殖抑制試験の結果である。 SK−OV−3細胞に対する実施例1の細胞増殖抑制試験の結果である。 GGT阻害剤存在下、OS−RC−2細胞に対する実施例1の細胞増殖抑制試験の結果である。
本発明は、水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質に、γ―グルタミル芳香族アミドを結合させたグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩に関する。また、該化合物の医薬品としての用途に関する。以下に本発明の詳細を述べる。
本発明のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、下記一般式(1)
Figure 2016000723
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
Figure 2016000723
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基である。
前記置換基を有していても良いアルキル基における、該アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
前記置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基における、該アルコキシカルボニル基とは、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基を示す。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の他、適当な芳香族置換基を有する、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等の1級アルコキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基等の2級アルコキシカルボニル基、若しくはt−ブトキシカルボニル基等の3級アルコキシカルボニル基が挙げられる。
前記アルキル基及びアルコキシカルボニル基における有していても良い置換基としては、例えば、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素環又は複素環アリール基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、アリールチオ基、炭素数1〜8のアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、炭素数1〜8のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族又は芳香族アミノ基、脂肪族アミノ基が置換された炭素数1〜8のアルキル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、若しくはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
前記一般式(1)におけるR及びRにおける置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基は、アミノ基の保護基であることが好ましい。すなわち、有機合成反応におけるアミノ基の保護基であれば、特に制限なく用いることができる。特に好ましくは、前記アルコキシカルボニル基であり、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、t−ブトキシカルボニル基(Boc基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)、アリルオキシカルボニル基(Aloc基)等を挙げることができる。
前記R及びRとしては、水素原子及び/又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基であることが好ましい。R及びRが両方とも水素原子である場合、又は水素原子と置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基の組み合せである場合が好ましい。
一般式(1)におけるRとしては、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基が挙げられる。
前記置換基を有していても良いアルキル基における、該アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。また、適当な芳香族置換基を有する、ベンジル基、9−フルオレニルメチル基等が挙げられる。該Rのアルキル基における置換基としては、前述のR及びRにおける置換基と同義である。
該Rの置換基を有していても良いアルキル基としては、カルボン酸の保護基が用いられることが好ましい。有機合成反応におけるカルボン酸の保護基であれば、特に制限なく用いることができる。特に好ましくは、メチル基、エチル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、9−フルオレニルメチル基である。
一般式(1)において、A及びAは、Rで置換された炭素原子であるC−R、Rで置換された炭素原子であるC−R及び窒素原子からなる群から選択される基である。また、B、B及びBは、それぞれ独立してRで置換された炭素原子であるC−R又は窒素原子である。
前記Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基である。
前記ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
前記置換基を有していても良いアルキル基における該アルキル基とは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
前記置換基を有していても良いアルコキシ基における該アルコキシ基とは、炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基等の1級アルコキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基等の2級アルコキシ基、若しくはt−ブトキシ基等の3級アルコキシ基が挙げられる。
前記アルキル基及びアルコキシ基における有していても良い置換基としては、例えば、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素環又は複素環アリール基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、アリールチオ基、炭素数1〜8のアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、炭素数1〜8のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族又は芳香族アミノ基、脂肪族アミノ基が置換された炭素数1〜8のアルキル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、若しくはシリル基、等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
前記A、A、B、B及びBは、窒素原子であっても良い。すなわち、該A〜Bで構成される6員環芳香族基は含窒素複素環であっても良い。該含窒素複素環としては、該A〜Bにおいて、1〜3個の窒素原子を含有する複素環基を含む。例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環又はトリアジン環である。前記含窒素複素環は、置換基を有していても良い。該置換基としては、前記Rで規定される置換基である。
前記R及びRとしては、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基が挙げられる。
置換基を有していても良いアルキル基における該アルキル基とは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。有していても良い置換基としては、前述のR及びRにおける置換基と同義である。
一般式(2)において、Xは水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質の結合残基を示す。該X基が、水酸基を有する生理活性物質の結合残基である場合、該水酸基がオキシカルボキシ基とカーボネート結合している形式での結合残基である。
一方、該X基がアミノ基を有する生理活性物質の結合残基である場合、該アミノ基がオキシカルボキシ基とウレタン結合している形式での結合残基である。
また、該X基がカルボキシ基を有する生理活性物質での結合残基である場合、Rにおけるカルボニル基は、該生理活性物質由来のカルボニル基であり、エステル結合している形式での結合残基である。
前記Xにおける生理活性物質としては、生体内に投与することにより薬理機能を示す化学物質であって、水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。該水酸基は、脂肪族性水酸基及び芳香族性水酸基であっても良く、1級水酸基、2級水酸基又は3級水酸基の何れの置換基であっても良い。また該アミノ基は、脂肪族性アミノ基及び芳香族性アミノ基であっても良く、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基の何れの置換基であっても良い。
水酸基とアミノ基が共存する生理活性物質であっても良く、水酸基及びアミノ基が共存した化合物の場合は、一般的にはアミノ基による結合残基であることが考えられるが、反応条件や立体的要素を考慮して該水酸基と該アミノ基の何れかの活性官能基による結合残基であっても良く、該水酸基による結合残基と該アミノ基による結合残基の混合物であっても良い。
また、水酸基及び/又はアミノ基と、カルボキシ基が共存する生理活性物質であっても良い。水酸基及び/又はアミノ基と、カルボキシ基が共存した化合物の場合は、反応条件により、結合様式を適宜選択することができる。
当該生理活性物質における生理活性は、特に限定されるものではないが疾病治療に係る薬理活性であることが好ましく、疾病治療用薬理活性化合物を用いることが好ましい。GGTは悪性腫瘍で高発現していることから、当該生理活性物質としては、抗腫瘍活性物質であることが好ましく、抗がん剤を適用することが好ましい。すなわち、一般式(1)のXで示される生理活性物質は、水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する抗がん剤であることが好ましい。
一般式(2)のXで示される生理活性物質として好適な抗がん剤としては、カンプトテシン系抗がん剤、タキサン系抗がん剤、シロリムス系抗がん剤、アンスラサイクリン系抗がん剤、シチジン系抗がん剤、チロシンキナーゼ阻害剤及びその他の細胞分裂阻害作用を有する抗がん剤を挙げることができる。
前記カンプトテシン系抗がん剤としては、例えば、カンプトテシン、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ノギテカン、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン等を挙げることができる。
前記タキサン系抗がん剤としては、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル等を挙げることができる。
前記シロリムス系抗がん剤としては、例えば、エベロリムス、テムシロリムス、タクロリムス、ラパマイシン等を挙げることができる。
前記アンスラサイクリン系抗がん剤としては、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、アムルビシン等を挙げることができる。
前記シチジン系抗がん剤としては、例えば、エチニルシチジン、CNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)、ゲムシタビン、シタラビン等を挙げることができる。
前記チロシンキナーゼ阻害剤としては、水酸基及び/又はアミノ基を有するチロシンキナーゼ阻害剤であり、例えば、クリゾチニブ、ダサチニブ等が挙げられる。
前記その他の細胞分裂阻害作用を有する抗がん剤としては、水酸基及び/又はアミノ基を有する抗がん剤であり、例えば、エトポシド、テニポシド等のエトポシド類、コンブレタスタチン、ポドフィロトキシン、エリブリン、オーリスタチン等の微小管重合阻害剤を挙げることができる。
また、一般式(1)のXにおける、のカルボキシ基を有する生理活性物質として好適な抗がん剤とは、例えば、メトトレキサート、ペメトレキセド、DMXAA(5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸)、ベキサロテン、タミバロテン等が挙げられる。
また、一般式(1)のXにおいて、アミノ基又はカルボキシ基を有する生理活性物質として、生理活性ペプチド類であってもよい。該アミノ基又はカルボキシ基を有する生理活性ペプチド類は、末端アミノ基又はカルボキシ基を用いて結合する様式とすることができる。
該生理活性ペプチド類として、例えば、ベスタチン(Bestatin)及びベスタチンメチルエステル等のエステル誘導体、グルファニド(Glufanide)、グレリン(Ghrelin)、テルトモチド(Tertomotide)、PR1、オクトレオチド(Octreotide)、ランレオチド(Lanreotide)、パシレオチド(Pasireotide)等が挙げられる。
一般式(2)のXは、脂肪族性水酸基、芳香族性水酸基及びアミノ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質の結合残基であることが好ましい。該脂肪族性水酸基、芳香族性水酸基及びアミノ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質としては、カンプトテシン、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ノギテカン、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン等のカンプトテシン誘導体であることが好ましい。これらは、ラクトン環の3級水酸基や、芳香族性水酸基、アミノ基を具備し、これらの置換基により前記結合基であるオキシカルボニル基とカーボネート結合及び/又はウレタン結合を形成している。
また、該脂肪族性水酸基、芳香族性水酸基及びアミノ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質として、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムルビシン等のアンスラサイクリン系抗がん剤も好ましい。より好ましくは、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、アムルビシンである。これらは、水酸基及び/又はアミノ基を具備し、これらの置換基により前記結合基であるオキシカルボニル基とカーボネート結合及び/又はウレタン結合を形成している。
更に、該脂肪族性水酸基、芳香族性水酸基及びアミノ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質として、ゲムシタビン、エチニルシチジン、シタラビン、CNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)等のシチジン系抗がん剤であることが好ましい。これらは水酸基及び/又はシチジン塩基のアミノ基を有し、これらの置換基により前記結合基であるオキシカルボニル基とカーボネート結合及び/又はウレタン結合を形成している。
本発明は、前記A及びAの何れか1つが、C−Rであることを特徴とする。すなわち、本発明の1つの態様としては、AがC−Rである下記一般式(3)で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
Figure 2016000723
一般式(3)において、R、R、R、R、R、A、B、B、B及びXは、前述と同義である。
また、本発明のもう1つの態様としては、AがC−Rである下記一般式(4)で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
Figure 2016000723
一般式(4)において、R、R、R、R、R、A、B、B、B及びXは、前述と同義である。
本発明の一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩において、GGT認識されるためには、γ−グルタミン酸結合部分構造が遊離アミノ酸構造であることが必要である。すなわち、当該グルタミン酸誘導体が、GGTに認識され活性化されるプロドラッグとして機能するためには、前記R、R及びRがいずれも水素原子であることが必要である。したがって、当該グルタミン酸誘導体が薬理活性を発揮させるための医薬として使用する場合は、前記R、R及びRがいずれも水素原子であることが好ましい。しかしながら、前記R、R及びRの何れかが、アミノ基又はカルボキシ基の保護基であり、生体内へ投与した後に該保護基が解離して、該R、R及びRの全てが水素原子の構造となる場合も、医薬用途の当該グルタミン酸誘導体の態様として含まれる。
なお、前記R、R及びRが置換基を有していても良いアルキル基やアルコキシカルボニル基である化合物は、当該医薬用途化合物の製造上の中間体として有用な化合物であり、本発明の内容に含まれる。
一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体は、薬理学的に許容される塩として存在して良い。当該塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを挙げることができる。もっとも、本発明の化合物の塩は、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体及びその塩は、置換基の種類に応じて1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体及びその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を挙げることができる。
本明細書の実施例には、一般式(1)で表される本発明の化合物に包含される代表的化合物についての製造方法が具体的に示されているので、当業者は本明細書の開示を参照することにより、および必要に応じて出発原料や試薬、反応条件などを適宜選択することにより、一般式(1)に包含される任意の化合物を容易に製造することができる。
本発明の一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体は、AがC−Rであって、Xが水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質の場合、例えば以下のように製造することができる。
[スキーム(I)]
Figure 2016000723
スキーム(I)中、R〜R、X、A、B〜Bは、前述と同義である。ここで、R及び/又はRはアミノ基の保護基であり、Rはカルボン酸の保護基である。LGはハロゲン原子、p−ニトロフェノキシ基あるいはヒドロキシスクシンイミド基等の脱離基を表す。以下に各工程を説明する。
[工程A]:アミノ基及びα−カルボキシ基を保護したグルタミン酸誘導体を、芳香族アミンでアミド化して、γ−グルタミン酸アミド誘導体(A−1)を合成する工程である。本工程は、アミド化縮合反応であり、一般的な縮合剤を用いて反応させることができる。縮合剤として、例えば、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)を用い、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。縮合剤としては、例えば、カルボジイミド系縮合剤、イミダゾール系脱水縮合剤、トリアジン系縮合剤、ホスホニウム系脱水縮合剤、ウロニウム系縮合剤、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、BOP試薬、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等を用いることができる。必要に応じ1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性化剤の共存させることができる。
[工程B]:一般式(A−1)で表されるγ−グルタミン酸アミド誘導体から、一般式(A−2)で表されるカルボニル誘導体を合成する工程である。本工程は、例えば、クロロギ酸p−ニトロフェニルをピリジン存在下、テトラヒドロフラン等の溶媒中、−30℃から150℃、好ましくは−10℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
[工程C]:一般式(A−2)で表されるカルボニル誘導体から、一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体を合成する工程である。本工程は、例えば、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質を、ジイソプロピルエチルアミン存在下、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
[工程D]:一般式(A−1)で表されるγ−グルタミン酸アミド誘導体から、一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体を、一段階で合成するための工程経路である。本工程は、例えば、一般式(I−1)で表されるカルボニル化生理活性物質誘導体を、N,N−ジメチルアミノピリジン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
一般式(I−1)で表されるカルボニル化生理活性物質誘導体は、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質Xを、例えば、N,N−ジメチルアミノピリジン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で、トリホスゲンと反応させることにより製造できる。または、例えば、クロロギ酸p−ニトロフェニルをピリジン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより製造できる。
[工程E]:一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体における、γ−グルタミン酸結合部分のアミノ基及びカルボキシル基の脱保護反応を行う工程である。
及びRの何れか一方がt−ブトキシカルボニル基(Boc基)で、他方が水素原子であり、Rがt−ブチル基の場合、酸性条件下で該工程Eの脱保護を実施することができる。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸等のカルボン酸等が使用できる。その他、t−ブトキシカルボニル基あるいはt−ブチルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、特に制限なく使用することができる。
また、該R及びRの何れか一方が9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)で、他方が水素原子であり、該Rがフルオレニルメチル基の場合、塩基性条件下で該工程Eを実施することができる。塩基としては、アンモニア、あるいはピペリジン、モルホリンなどの有機塩基等を使用できる。その他、フルオレニルメトキシカルボニル基あるいはフルオレニルメチルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、何れの脱保護反応条件であっても使用することができる。
また、該R及びRの何れか一方がアリルオキシカルボニル基(Aloc基)で、他方が水素原子であり、該Rがアリル基の場合、パラジウム触媒存在下で該工程Eを実施することができる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等を使用できる。その他、アリルオキシカルボニル基あるいはアリルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、何れの脱保護反応条件であっても使用することができる。
Xがアミノ基を有する生理活性物質の場合、一般式(A−3)で表される誘導体は、例えば以下のように製造することができる。
[スキーム(II)]
Figure 2016000723
スキーム(II)中、R〜R、X、A、B〜Bは、前述と同義であり、R及び/又はRはアミノ基の保護基であり、Rはカルボン酸の保護基である。以下に各工程を説明する。
[工程F]:一般式(A−1)で表されるγ−グルタミン酸アミド誘導体から、一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体を合成する工程である。本工程は、例えば、アミノ基を有する生理活性物質Xのイソシアネート誘導体を、N,N−ジメチルアミノピリジン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
アミノ基を有する生理活性物質Xのイソシアネート誘導体は、例えば、アミノ基を有する生理活性物質Xを、炭酸水素カリウム水溶液およびジクロロメタン等の混合溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で、トリホスゲンと反応させることにより製造できる。
Xがカルボキシル基を有する生理活性物質の場合、一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体は、例えば以下のように製造することができる。
[スキーム(III)]
Figure 2016000723
スキーム(III)中、R〜R、X、A、B〜Bは、前述と同義であり、R及び/又はRはアミノ基の保護基であり、Rはカルボン酸の保護基である。以下に各工程を説明する。
[工程G]:一般式(A−1)で表されるγ−グルタミン酸アミド誘導体と、カルボキシル基を有する生理活性物質を縮合反応により、エステル化する工程である。本工程は、一般的な縮合剤を用いることができ、例えば、縮合剤として1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩を用い、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。縮合剤としては、他にカルボジイミド系縮合剤、イミダゾール系脱水縮合剤、トリアジン系縮合剤、ホスホニウム系脱水縮合剤、ウロニウム系縮合剤、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、BOP試薬、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等を用いることができる。必要に応じ1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の活性化剤の共存させることができる。
本発明のグルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩は、生理活性物質を遊離させることがきるものであり、該生理活性物質のプロドラッグとして機能する。したがって、当該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬として用いることができる。
本発明の該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬は、該グルタミン酸又はその塩を単独で用いても良いが、通常は、医薬品として許容される添加剤と併せて医薬組成物を調製し、医薬品製剤として用いることが好ましい。該添加剤としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、矯味剤、着香剤、希釈剤、溶解補助剤等の製薬上許容し得る添加剤が挙げられ、これらと混合して医薬品製剤を調製する。該製剤としては、粉剤、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、カプセル剤、注射剤、座剤、軟膏剤等の製剤形態で、経口又は非経口的(全身投与、局所投与等)に安全に投与される。製剤中の本発明のグルタミン酸誘導体、又は製薬上許容される塩の含量は、製剤により種々異なるが、通常0.1〜100重量%であることが好ましい。
当該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬として用いる場合、投与量は投与経路、患者の年齢並びに予防又は治療すべき実際の症状等により異なり、特に限定されるものではない。本発明のグルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩は、悪性腫瘍に高発現されるGGTに認識され、生理活性物質を遊離する物性であることから、抗がん剤として用いることが好ましい。抗がん剤として用いる場合には、例えば成人に経口投与する場合、有効成分として1日0.01mg〜2000mg、好ましくは0.1mg〜1000mgとすることができ、1日1回又は数回に分けて投与できる。また、経静脈投与等の非経口的に投与する場合は、体表面積当りの有効成分として0.01mg〜2000mg/m、好ましくは0.1mg〜1000mg/mとすることができ、1日1回又は数回に分けて投与することが好ましい。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例化合物、及び合成例化合物の検出及び同定、並びに純度測定のためのLC/MS測定条件は次のとおりである。

機種:島津 LCMS−2010A
カラム:Inertsil ODS−3、2.1mm×100mm、
移動相A:アセトニトリル/ギ酸 (99.9/0.1)
移動相B:水/ギ酸 (99.9/0.1)
グラジェント:時間(分)0.0 5.5 6.5 6.51 10.0
A濃度 5 90 90 5 5
流速:0.3mL/分
実施例1
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシンの合成
[スキーム1]
Figure 2016000723
実施例1−1
(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸(0.182g)と4−アミノベンジルアルコール(0.049g)の乾燥ジクロロメタン(5mL)溶液中に、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン (EEDQ)(0.103g)を加え、室温で18時間撹拌した.1規定塩酸を加え、生じた結晶をろ過し、粗生成物として(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.173g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:1.81−1.90(1H,m),2.01−2.12(1H,m),2.40−2.46(2H,m),4.17−4.43(9H,m),7.22−7.33(6H,m),7.37−7.44(4H,m),7.55(2H,d),7.68−7.76(4H,m),7.86−7.96(5H,m),9.89(1H,brs).
LC/MS 保持時間:7.3分;m/z(ESI,POS):653[M+H]
実施例1−2
(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.145g)とピリジン(0.0448mL)の乾燥テトラヒドロフラン(100mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.089g)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下して加え、室温で18時間撹拌した。水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.130g)を得た。
LC/MS 保持時間:8.1分;m/z(ESI,POS):840[M+Na]
実施例1−3
((((4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシンの合成
粗製の(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.05g)をN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)に溶解し、塩酸ドキソルビシン(0.03g)を加えた後、ジイソプロピルエチルアミン(0.13mL)を加えた。室温で15時間撹拌後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として((((4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシン(0.09g)を得た。
LC/MS 保持時間:7.8分;m/z(ESI,POS):1245[M+Na]
実施例1−4
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシンの合成
粗製の((((4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシン(0.085g)をN,N−ジメチルホルムアミド(1.1725mL)に溶解し、氷冷下ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10%、0.275mL)を滴下し、30分撹拌した。水(4mL)を加え、混合溶液を分取HPLCで精製し、(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシン(実施例1、0.025g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:1.11(3H,d),1.37−1.51(2H,m),1.76−1.92(4H,m),2.07−2.22(2H,m),2.62−2.69(1H,m),2.98−3.12(3H,m),3.19−3.28(1H,m),3.67−3.76(1H,m),3.98(3H,s),4.10−4.17(1H,m),4.56(2H,s),4.69−4.73(1H,m),4.87−4.98(5H,m),5.22(1H,s),5.46(1H,s),6.84(1H,d),7.23(2H,d),7.53(2H,d),7.63(1H,d),7.88−7.95(2H,m),10.42(1H,brs).
LC/MS 保持時間:4.0分;m/z(ESI,POS):822[M+H]
実施例2
(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシンの合成
[スキーム2]
Figure 2016000723
実施例2−1
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸(1.00g)と4−アミノベンジルアルコール(0.487g)の乾燥ジクロロメタン(15mL)溶液中に、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン (EEDQ)(1.019g)を加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をジエチルエーテルで洗浄し、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.890g)を得た。
NMR[400MHz,CDCl,TMS]ppm:1.46(9H,s),1.47(9H,s),1.82−1.89(1H,m),2.27−2.30(2H,m),2.44(2H,t),4.21−4.24(1H,m),4.66(2H,s),5.35−5.37(1H,m),7.33(2H,d),7.62(2H,d),8.87(1H,brs).
LC/MS 保持時間:5.5分;m/z(ESI,POS):431[M+Na]
実施例2−2
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.10g)とピリジン(0.0494mL)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.0987g)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下して加え、室温で2時間撹拌した。クエン酸水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.038g)を得た。
NMR[400MHz,CDCl,TMS]ppm:1.46(9H,s),1.48(9H,s),1.79−1.90(1H,m),2.26−2.28(1H,m),2.45(2H,t),4.20−4.28(1H,m),5.26(2H,s),5.38−5.40(1H,m),7.37(2H,d),7.41(2H,d),7.69(2H,d),8.27(2H,d),9.15(1H,brs).
LC/MS 保持時間:7.1分;m/z(ESI,POS):596[M+Na]
実施例2−3
(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシンの合成
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.125g)をN,N−ジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(0.0855g)を加えた後、ジイソプロピルエチルアミン(0.37mL)を加えた。室温で18時間撹拌後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(0.227g)を得た。
LC/MS 保持時間:6.6分;m/z(ESI,POS):827[M+H]
実施例2−4
(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシンの合成
粗製の((((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(0.02g)に4規定塩酸ジオキサン溶液(2.0mL)に溶解し、30分撹拌した。溶媒を留去し、水(4mL)を加え、混合溶液を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(実施例2、0.0015g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:0.88(3H,t),1.29(3H,t),1.84−2.11(6H,m),3.16−3.29(3H,m),5.28(2H,s),5.36(2H,s),5.45(2H,s),6.55(1H,s),7.34(1H,s),7.44(2H,d),7.65(2H,d),7.78−7.80(1H,m),8.18−8.25(2H,m),10.21(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.9分;m/z(ESI,POS):671[M+H]
実施例3
(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
[スキーム3]
Figure 2016000723
実施例3−1
(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
カンプトテシン(0.050g)とトリホスゲン(0.0158g)の乾燥ジクロロメタン(6mL)懸濁液に、ジメチルアミノピリジン(0.0561g)のジクロロメタン(2mL)溶液をゆっくり滴下した。30分撹拌後、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.059g)を加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸(50mL)を加え、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物として(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(0.108g)を得た。
LC/MS 保持時間:6.8分;m/z(ESI,POS):805[M+Na]
実施例3−2
(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
粗製の(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(0.028g)に4規定塩酸酢酸エチル溶液(3.0mL)に0℃で溶解し、3時間撹拌した。溶媒を留去し、得られた残渣を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(実施例3、0.0017g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:0.90(3H,t),1.90−1.97(3H,m),2.13−2.21(3H,m),3.16−3.28(1H,m),5.09(2H,q),5.33(2H,s),5.52(2H,s),7.02(1H,s),7.27(2H,d),7.53(2H,d),7.74(1H,t),7.89(1H,t),8.15−8.21(2H,m),8.73(1H,s),10.29(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.9分;m/z(ESI,POS):627[M+H]
実施例4
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシンの合成
[スキーム4]
Figure 2016000723
実施例4−1
(S)−アリル 2−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−アリル 2−((アリルオキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.400g)とピリジン(0.214mL)の乾燥テトラヒドロフラン(20mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.428g)の乾燥テトラヒドロフラン(1mL)溶液を滴下して加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸(10mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)−アリル 2−((アリルオキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.633g)を得た。
NMR[400MHz,CDCl,TMS]ppm:1.96−2.08(1H,m),2.34−2.44(1H,m),2.48−2.53(2H,m),4.42−4.50(1H,m),4.62(2H,d),4.70(2H,d),5.24−5.39(6H,m),5.63(1H,brd),5.86−5.97(2H,m),7.39(2H,d),7.43(2H,d),7.65(2H,d),8.30(2H,d),8.41(1H,brs).
LC/MS 保持時間:6.6分;m/z(ESI,POS):564[M+Na]
実施例4−2
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシンの合成
(S)−アリル 2−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.130g)およびエピルビシン塩酸塩(0.127g)をN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(0.0928mL)を加えた。室温で6時間撹拌後、反応液をジイソプロピルエーテル(200mL)に滴下して加えた。生じた固体をクロロホルムに溶解し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシン(0.222g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:1.18(3H,d),1.53−1.64(1H,m),1.79−1.91(2H,m),2.02−2.24(3H,m),2.38−2.46(2H,m),2.90−3.02(3H,m),3.49−3.59(1H,m),3.84−3.93(1H,m),3.98(3H,s),4.06−4.13(1H,m),4.45―4.49(2H,m),4.53−4.61(4H,m),4.83−4.88(3H,m),4.93−4.98(2H,m),5.16−5.23(3H,m),5.26−5.34(2H,m),5.49(1H,s),5.83−5.96(2H,m),7.02(1H,d),7.23(2H,d),7.53(2H,d),7.65(1H,t),7.75(1H,d),7.91(2H,d),9.93(1H,s),13.27(1H,brs),14.03(1H,brs).
LC/MS 保持時間:6.2分;m/z(ESI,POS):968[M+Na]
実施例4−3
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシンの合成
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシン(0.200g)をジクロロメタン(4.5mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(1.0mL)に溶解し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.012g)およびフェニルシラン(0.026mL)を加え、アルゴン雰囲気下、30分撹拌した。反応液を10%メタノール含有ジイソプロピルエーテル(450mL)に滴下して加えた。生じた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/水=13/6/1)で精製し、(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシン(実施例4、0.080g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:1.18(3H,d),1.52−1.67(1H,m),1.80−1.97(3H,m),2.13−2.23(2H,m),2.90−3.05(3H,m),3.15−3.23(2H,m),3.49−3.61(1H,m),3.84−3.93(1H,m),3.99(3H,s),4.56(2H,s),4.87(2H,s),4.92−5.01(2H,m),5.21(1H,s),5.51(1H,s),7.03(1H,d),7.23(2H,d),7.54(2H,d),7.66(1H,t),7.91(2H,d),10.36(1H,s),14.04(1H,brs).
LC/MS 保持時間:4.4分;m/z(ESI,POS):822[M+H]
実施例5
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビンの合成
[スキーム5]
Figure 2016000723
実施例5−1
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビンの合成
(S)−アリル 2−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.030g)をテトラヒドロフラン(1.85mL)に溶解し、シタラビン(0.014g)を加えた後、1規定水酸化ナトリウム水溶液(0.15mL)を加えた。室温で3時間撹拌後、酢酸エチルを加え有機層を得た。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1から5/1)で精製し,(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビン(0.016g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:1.79−1.93(1H,m),2.02−2.34(1H,m),3.49−3.63(2H,m),4.05−4.16(1H,m),4.47(2H,d),4.60(2H,d),4.92−5.09(3H,m),5.16−5.34(4H,m),5.68(1H,d),5.83(1H,d),5.84−5.97(2H,m),6.17(1H,d),7.24(2H,d),7.56(2H,d),7.63(1H,d),7.76(1H,d),10.00(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.6分;m/z(ESI,POS):646[M+H]
実施例5−2
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビンの合成
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビン(0.016g)をジクロロメタン(2.0mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(0.40mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下,テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.0028g)およびフェニルシラン(0.0030mL)を加え,室温で45分撹拌した後、そのまま18時間静置した。溶媒を留去し、残渣を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビン(実施例5、0.0015g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:2.02−2.14(2H,m),3.53−3.65(2H,m),3.73−3.81(1H,m),3.90−3.99(1H,m),4.06−4.12(1H,m),4.94−5.11(4H,m),5.71−5.5.75(1H,m),5.82−5.85(1H,m),6.16(1H,d),7.25(2H,d),7.57(2H,d),7.95(1H,s),8.05−8.30(2H,m),10.08(1H,brs).
LC/MS 保持時間:0.8分;m/z(ESI,POS):522[M+H]
比較例1
(S)−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ドキソルビシンの合成
比較例1−1
(S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸(0.100g)、ドキソルビシン塩酸塩(0.095g)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(3mg)およびトリエチルアミン(0.024mL)をN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(0.100g)を加え、室温で22時間撹拌した。水(40mL)を加え、生じた析出物をろ過した。析出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ドキソルビシン(0.090g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:1.13(3H,d),1.42−1.54(1H,m),1.64−1.94(3H,m),2.06−2.25(4H,m),2.90−3.04(2H,m),3.90−4.38(10H,m),4.59(2H,d),4.77(1H,d),4.88−4.99(2H,m),5.20−5.26(1H,m),5.50(1H,s),7.20−7.89(19H,m),13.28(1H,s),14.07(1H,s).
LC/MS 保持時間:7.6分;m/z(ESI,POS):1096[M+Na]
比較例1−2
(4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ドキソルビシン(0.020g)をジクロロメタン(0.1365mL)に溶解し、ピペリジンのジクロロメタン溶液(10%v/v,0.635mL)を0℃で加え、3.5時間撹拌した。ジクロロメタン(1mL)を加えた後、ピペリジンのジクロロメタン溶液(10%v/v,0.0158mL)を0℃で加え、2時間撹拌を続けた。析出物をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。得られた析出物を分取HPLCで精製し、(S)−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ドキソルビシン(比較例1、0.0021g)を得た。
NMR[400MHz,DO,TMS]ppm:1.17(3H,d),1.61−1.74(1H,m),1.76−1.93(2H,m),1.94−2.04(2H,m),2.11−2.20(1H,m),2.24−2.50(3H,m),2.66−2.78(1H,m)3.59(2H,m),3.75(3H,s),3.99−4.16(2H,m),5.25(1H,m),7.02−7.15(2H,m),7.35−7.42(1H,m).
LC/MS 保持時間:3.8分;m/z(ESI,POS):673[M+H]
比較例2
9−((S)−4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)カンプトテシンの合成
[スキーム6]
Figure 2016000723
比較例2−1
(S)−5−(ベンジルオキシ)−4−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−オキソペンタン酸(0.173g)を9−アミノカンプトテシン(0.090g)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)溶液に加えた後、ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.005g)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(0.297g)を加え、室温で2時間撹拌後、2日間静置した。水(10mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/5から0/1)で精製し、9−((4−((S)−5−(ベンジルオキシ)−4−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−オキソ)ペンタナミド)カンプトテシン(0.024g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:0.89(3H,t),1.81−2.02(4H,m),2.13−2.29(1H,m),2.58−2.70(2H,m),4.22−4.30(1H,m),5.08(2H,d),5.17(2H,s),5.28(2H,s),5.44(2H,s),6.56(1H,s),7.23−7.40(11H,m),7.76−7.87(2H,m),7.92(1H,d),8.03(1H,d),8.75(1H,s),10.20(1H,s).
LC/MS 保持時間:5.8分;m/z(ESI,POS):717[M+H]
比較例2−2
9−((4−((S)−5−(ベンジルオキシ)−4−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−オキソ)ペンタナミド)カンプトテシン(0.020g)をN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(0.005g)を加え、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、N,N−ジメチルホルムアミド(1mL)と水(8mL)の混合溶液で洗浄した。濾液を分取HPLCで精製し、9−((S)−4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)カンプトテシン(0.012g)を得た。
NMR[400MHz,DO,TMS]ppm:0.86(3H,t),1.85(2H,q),2.26(2H,q),2.71−2.82(2H,m),3.97(1H,m),5.24−5.35(2H,m),7.21(1H,s),7.39−7.44(1H,m),7.49(2H,d),8.30(1H,s).
LC/MS 保持時間:1.2分;m/z(ESI,POS):493[M+H]
試験例1;γ‐グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)酵素認識試験
実施例1のドキソルビシンプロドラッグ(0.49mg)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.298mL)に溶解し、2mMドキソルビシンプロドラッグPBS溶液を調製した。
該ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液0.150mLに、GGT(0.22mg、8U/mg)(Sigma−Aldrich社)をPBS(0.880mL)に溶解した2U/mLのGGT溶液を0.150mL加え、37℃で反応させた。
反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率およびドキソルビシンの生成率を求めた。結果を表1にまとめた。
[表1]
Figure 2016000723
比較試験例1;GGT酵素認識試験
比較例1で得られたドキソルビシンプロドラッグ(0.17mg)を、PBS(0.1265mL)に溶解し、2mMドキソルビシンプロドラッグPBS溶液を調製した。
該ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液0.100mLに、GGT(0.38mg、8U/mg)(Sigma−Aldrich社)をPBS(1.520mL)に溶解した2U/mLのGGT溶液を0.100mL加え、37℃で反応させた。
6時間後、反応液をHPLC分析したところ、プロドラッグは93%残存していた。このことから、比較例1に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGTに認識されず、生理活性物質であるドキソルビシンを遊離することができないことが示された。
試験例1の結果から、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGT存在下で速やかに、薬理活性を有するドキソルビシンを遊離できることが示された。一方、比較試験例1は、ドキソルビシンに直接γ−グルタミン酸を結合させた比較例1のドキソルビシンプロドラッグは、GGTによるドキソルビシンの解離反応がほとんど起こらない結果であった。したがって、GGTの認識による速やかな解離反応には、γ−グルタミン酸結合部位と薬剤との間に、適当なリンカーセグメントを介在させることが必要であり、本発明の芳香族アミド型リンカーセグメントが、優位なGGT認識能を発揮させることができることが明らかとなった。
試験例2;リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液安定性試験
実施例1のドキソルビシンプロドラッグ(0.49mg)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.298mL)に溶解し、ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液を調製した。
該ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液0.148mLを、PBS溶液0.148mLに溶解し、37℃で反応させた。6.5時間後、反応液をHPLC分析したところ、プロドラッグの減少は確認されなかった。
したがって、本発明に係る実施例1のドキソルビシンプロドラッグは、PBS溶液中においてドキソルビシンを遊離せず、化学的に安定であることが示された。
試験例3;細胞増殖阻害活性試験
GGT活性の高いOS−RC−2細胞(理研バイオリソースセンター)及びGGT活性の低いSK−OV−3細胞(American Type Culture Collection)を用いて、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグの細胞増殖阻害活性を評価した。
96穴プレートに、GGT活性の高いOS−RC−2細胞及びGGT活性の低いSK−OV−3細胞を、それぞれ4,000 cells/well播種し、37℃、5%CO下で1日間培養後、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグを終濃度0.039〜10μM添加した。6時間培養後にウェル内を洗浄し、さらに3日間培養後、細胞をメタノールで固定し、メチレンブルー色素を用いて染色した。染色後色素を0.3%塩酸水で抽出し、660nmの吸光度を測定した。得られた吸光度について、化合物を添加しない細胞から測定された吸光度に対する減少率により細胞増殖抑制活性を評価した。
同様の操作により、プロドラッグ化していないドキソルビシンを用いて、その吸光度から細胞増殖抑制活性を評価した。結果を図1(GGT活性の高いOS−RC−2細胞)及び図2(GGT活性の低いSK−OV−3細胞)に示した。
試験例4;プロドラッグのGGT依存性の確認試験 GGT活性の高いOS−RC−2細胞を用いて、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグの細胞増殖阻害活性におけるGGT活性依存性を評価した。 試験例3と同様の方法でOS−RC−2細胞を播種して1日培養後、GGT阻害剤であるGGsTop(和光純薬工業株式会社)を終濃度10μM添加し、1時間培養後、実施例1に関わるドキソルビシンプロドラッグを終濃度0.039〜10μM添加した。6時間培養後にウェル内を洗浄し、さらに3日間培養後、試験例3と同様の方法で細胞増殖抑制活性を評価した。 同様の操作により、プロドラッグ化していないドキソルビシンを用いて、その吸光度から細胞増殖抑制活性を評価した。結果を図3に示した。
試験例3の結果、GGT活性の高いOS−RC−2細胞において、10μMのドキソルビシンを添加した場合、細胞増殖阻害活性は77%だった。これに対し、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグを10μM添加した場合、76%の細胞増殖阻害活性を示した。
一方、GGT活性の低いSK−OV−3細胞において、10μMのドキソルビシンを添加した場合、細胞増殖阻害活性は77%だった。これに対し、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグを10μM添加した場合、13%の細胞増殖阻害活性を示した。
GGT活性の高い細胞とGGT活性の低い細胞における細胞増殖阻害活性の結果を比較すると、本発明に係る実施例1のドキソルビシンプロドラッグは、GGTによりドキソルビシンを遊離し、細胞増殖阻害活性を示すと共に、GGTが存在しない場合は、細胞増殖阻害活性が低く、殺細胞性をほとんど示さないことが明らかとなった。このことから、本発明に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGT活性に依存した細胞増殖抑制活性を発揮する物性であることが示された。
また、試験例4の結果、GGT活性の高いOS−RC−2細胞において、GGT阻害剤はドキソルビシンの細胞増殖抑制活性に影響を与えなかったが、ドキソルビシンプロドラッグの活性を完全に阻害した。このことから、本発明に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGT活性に依存した細胞増殖抑制活性を発揮する物性であることが示された。
試験例5;GGT酵素認識試験
試験例1と同様にして、実施例4のエピルビシンプロドラッグの2mM PBS溶液し、2U/mLのGGT溶液を用いて、37℃で反応させた。
反応液を経時的にHPLC分析することにより、プロドラッグは酵素反応によって開裂することが確認され、6時間後のプロドラッグ残存率は5%だった。
このことから、実施例4に係るエピルビシンプロドラッグは、GGT存在下で速やかに、薬理活性を有するエピルビシンを遊離できることが示された。
試験例6;GGT酵素認識試験
試験例1と同様にして、実施例5で得られたシタラビンプロドラッグの1mM PBS溶液し、2U/mLのGGT溶液を用いて、37℃で反応させた。
反応液を経時的にHPLC分析することにより、プロドラッグは酵素反応によって開裂することが確認され、6.5時間後のプロドラッグ残存率は34%だった。
このことから、実施例5に係るシタラビンプロドラッグは、GGT存在下で速やかに、薬理活性を有するシタラビンを遊離できることが示された。
比較試験例2;GGT酵素認識試験
比較試験例1と同様にして、比較例2で得られた9−アミノカンプトテシンプロドラッグの2mM PBS溶液を調製し、2U/mLのGGT溶液を用いて、37℃で反応させた。
6時間後、反応液をHPLC分析したところ、プロドラッグは99%残存していた。このことから、比較例2に係る9−アミノカンプトテシンプロドラッグは、GGTに認識されず、生理活性物質である9‐アミノカンプトテシンを遊離することができないことが示された。
比較例2の9−アミノカンプトテシンプロドラッグは、GGTによる9−アミノカンプトテシンの解離反応がほとんど起こらない結果であったことから、GGTの認識による速やかな解離反応には、γ−グルタミン酸結合部位と薬剤との間に、適当なリンカーセグメントを介在させることが必要であり、本発明の芳香族アミド型リンカーセグメントが、優位なGGT認識能を発揮させることができることが明らかとなった。

Claims (13)

  1. 一般式(1)
    Figure 2016000723
    [式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
    Figure 2016000723
    [式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  2. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、カンプトテシン及びその誘導体である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  3. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、パクリタキセル又はドセタキセルである請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  4. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エベロリムス、テムシロリムス、タクロリムス及びラパマイシンからなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  5. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン及びアムルビシンからなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  6. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ゲムシタビン、エチニルシチジン、シタラビン及びCNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)からなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  7. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ベスタチン(Bestatin)又はその誘導体、グルファニド(Glufanide)、グレリン(Ghrelin)、テルトモチド(Tertomotide)、PR1、オクトレオチド(Octreotide)、ランレオチド(Lanreotide)及びパシレオチド(Pasireotide)からなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  8. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エリブリン又はその誘導体である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  9. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、オーリスタチン又はその誘導体である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  10. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、メトトレキサート又はペメトレキセドである請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  11. 一般式(1)において、R、R及びRは水素原子である請求項1〜10の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  12. 請求項1〜11の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
  13. 抗がん剤である請求項12に記載の医薬。

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