JP2016000723A - 新規なグルタミン酸誘導体およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 γ−グルタミル化薬剤とするプロドラッグ化において、適当な芳香族アミド化リンカーを介することにより、GGT認識性が顕著に高くなり、非常に速やかに薬理活性型薬剤を遊離することを見出し、本発明に至った。すなわち、γ―グルタミル芳香族アミドを結合させた薬剤が、GGTが高発現している組織において、速やかに薬理活性型薬剤を遊離し、治療効果の高い薬剤と成り得る。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、抗がん剤をγ−グルタミル化した化合物が開示されている。また、自己開裂リンカーを利用したプロドラッグとして、トリプシンにより切断することが可能であるプロドラッグが挙げられている(非特許文献1)。しかしながら、GGTに認識され、これにより切断されることが可能であるプロドラッグについては述べられていない。また、非特許文献6には、抗がん剤をグルタミル化した化合物が挙げられており、酵素に依存した細胞毒性が示されてはいる。しかしながら、非常に高い酵素濃度において、薬理活性型化合物を解離されるものであり、生体内環境でプロドラッグとして機能できるものではない。また、グルタミン酸γ位に薬剤を結合させた化合物として、適当なリンカーを介したプロドラッグ型化合物は知られていない。
[1] 一般式(1)
[2] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、カンプトテシン及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[3] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、パクリタキセル又はドセタキセルである前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[4] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エベロリムス、テムシロリムス、タクロリムス及びラパマイシンからなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[5] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン及びアムルビシンからなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[6] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ゲムシタビン、エチニルシチジン、シタラビン及びCNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)からなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[7] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ベスタチン(Bestatin)又はその誘導体、グルファニド(Glufanide)、グレリン(Ghrelin)、テルトモチド(Tertomotide)、PR1、オクトレオチド(Octreotide)、ランレオチド(Lanreotide)及びパシレオチド(Pasireotide)からなる群から選択される生理活性物質である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[8] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エリブリン又はその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[9] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、オーリスタチン又はその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[10] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、メトトレキサート又はペメトレキセドである前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[11] 一般式(1)において、R1、R2及びR3は水素原子である前記[1]〜[10]の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[12] 前記[1]〜[11]の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
[13] 抗がん剤である前記[12]に記載の医薬。
前記置換基を有していても良いアルキル基における、該アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
前記R1及びR2としては、水素原子及び/又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基であることが好ましい。R1及びR2が両方とも水素原子である場合、又は水素原子と置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基の組み合せである場合が好ましい。
前記置換基を有していても良いアルキル基における、該アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。また、適当な芳香族置換基を有する、ベンジル基、9−フルオレニルメチル基等が挙げられる。該R3のアルキル基における置換基としては、前述のR1及びR2における置換基と同義である。
該R3の置換基を有していても良いアルキル基としては、カルボン酸の保護基が用いられることが好ましい。有機合成反応におけるカルボン酸の保護基であれば、特に制限なく用いることができる。特に好ましくは、メチル基、エチル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、9−フルオレニルメチル基である。
前記ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
前記置換基を有していても良いアルキル基における該アルキル基とは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
置換基を有していても良いアルキル基における該アルキル基とは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。有していても良い置換基としては、前述のR1及びR2における置換基と同義である。
一方、該X基がアミノ基を有する生理活性物質の結合残基である場合、該アミノ基がオキシカルボキシ基とウレタン結合している形式での結合残基である。
また、該X基がカルボキシ基を有する生理活性物質での結合残基である場合、R7におけるカルボニル基は、該生理活性物質由来のカルボニル基であり、エステル結合している形式での結合残基である。
水酸基とアミノ基が共存する生理活性物質であっても良く、水酸基及びアミノ基が共存した化合物の場合は、一般的にはアミノ基による結合残基であることが考えられるが、反応条件や立体的要素を考慮して該水酸基と該アミノ基の何れかの活性官能基による結合残基であっても良く、該水酸基による結合残基と該アミノ基による結合残基の混合物であっても良い。
また、水酸基及び/又はアミノ基と、カルボキシ基が共存する生理活性物質であっても良い。水酸基及び/又はアミノ基と、カルボキシ基が共存した化合物の場合は、反応条件により、結合様式を適宜選択することができる。
当該生理活性物質における生理活性は、特に限定されるものではないが疾病治療に係る薬理活性であることが好ましく、疾病治療用薬理活性化合物を用いることが好ましい。GGTは悪性腫瘍で高発現していることから、当該生理活性物質としては、抗腫瘍活性物質であることが好ましく、抗がん剤を適用することが好ましい。すなわち、一般式(1)のXで示される生理活性物質は、水酸基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する抗がん剤であることが好ましい。
該生理活性ペプチド類として、例えば、ベスタチン(Bestatin)及びベスタチンメチルエステル等のエステル誘導体、グルファニド(Glufanide)、グレリン(Ghrelin)、テルトモチド(Tertomotide)、PR1、オクトレオチド(Octreotide)、ランレオチド(Lanreotide)、パシレオチド(Pasireotide)等が挙げられる。
また、該脂肪族性水酸基、芳香族性水酸基及びアミノ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質として、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムルビシン等のアンスラサイクリン系抗がん剤も好ましい。より好ましくは、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、アムルビシンである。これらは、水酸基及び/又はアミノ基を具備し、これらの置換基により前記結合基であるオキシカルボニル基とカーボネート結合及び/又はウレタン結合を形成している。
更に、該脂肪族性水酸基、芳香族性水酸基及びアミノ基からなる群から選択される1種以上の官能基を有する生理活性物質として、ゲムシタビン、エチニルシチジン、シタラビン、CNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)等のシチジン系抗がん剤であることが好ましい。これらは水酸基及び/又はシチジン塩基のアミノ基を有し、これらの置換基により前記結合基であるオキシカルボニル基とカーボネート結合及び/又はウレタン結合を形成している。
なお、前記R1、R2及びR3が置換基を有していても良いアルキル基やアルコキシカルボニル基である化合物は、当該医薬用途化合物の製造上の中間体として有用な化合物であり、本発明の内容に含まれる。
[スキーム(I)]
一般式(I−1)で表されるカルボニル化生理活性物質誘導体は、水酸基及び/又はアミノ基を有する生理活性物質Xを、例えば、N,N−ジメチルアミノピリジン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で、トリホスゲンと反応させることにより製造できる。または、例えば、クロロギ酸p−ニトロフェニルをピリジン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより製造できる。
R1及びR2の何れか一方がt−ブトキシカルボニル基(Boc基)で、他方が水素原子であり、R3がt−ブチル基の場合、酸性条件下で該工程Eの脱保護を実施することができる。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸等のカルボン酸等が使用できる。その他、t−ブトキシカルボニル基あるいはt−ブチルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、特に制限なく使用することができる。
また、該R1及びR2の何れか一方が9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)で、他方が水素原子であり、該R3がフルオレニルメチル基の場合、塩基性条件下で該工程Eを実施することができる。塩基としては、アンモニア、あるいはピペリジン、モルホリンなどの有機塩基等を使用できる。その他、フルオレニルメトキシカルボニル基あるいはフルオレニルメチルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、何れの脱保護反応条件であっても使用することができる。
また、該R1及びR2の何れか一方がアリルオキシカルボニル基(Aloc基)で、他方が水素原子であり、該R3がアリル基の場合、パラジウム触媒存在下で該工程Eを実施することができる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等を使用できる。その他、アリルオキシカルボニル基あるいはアリルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、何れの脱保護反応条件であっても使用することができる。
[スキーム(II)]
アミノ基を有する生理活性物質Xのイソシアネート誘導体は、例えば、アミノ基を有する生理活性物質Xを、炭酸水素カリウム水溶液およびジクロロメタン等の混合溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で、トリホスゲンと反応させることにより製造できる。
[スキーム(III)]
本発明の該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬は、該グルタミン酸又はその塩を単独で用いても良いが、通常は、医薬品として許容される添加剤と併せて医薬組成物を調製し、医薬品製剤として用いることが好ましい。該添加剤としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、矯味剤、着香剤、希釈剤、溶解補助剤等の製薬上許容し得る添加剤が挙げられ、これらと混合して医薬品製剤を調製する。該製剤としては、粉剤、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、カプセル剤、注射剤、座剤、軟膏剤等の製剤形態で、経口又は非経口的(全身投与、局所投与等)に安全に投与される。製剤中の本発明のグルタミン酸誘導体、又は製薬上許容される塩の含量は、製剤により種々異なるが、通常0.1〜100重量%であることが好ましい。
機種:島津 LCMS−2010A
カラム:Inertsil ODS−3、2.1mm×100mm、
移動相A:アセトニトリル/ギ酸 (99.9/0.1)
移動相B:水/ギ酸 (99.9/0.1)
グラジェント:時間(分)0.0 5.5 6.5 6.51 10.0
A濃度 5 90 90 5 5
流速:0.3mL/分
(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸(0.182g)と4−アミノベンジルアルコール(0.049g)の乾燥ジクロロメタン(5mL)溶液中に、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン (EEDQ)(0.103g)を加え、室温で18時間撹拌した.1規定塩酸を加え、生じた結晶をろ過し、粗生成物として(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.173g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:1.81−1.90(1H,m),2.01−2.12(1H,m),2.40−2.46(2H,m),4.17−4.43(9H,m),7.22−7.33(6H,m),7.37−7.44(4H,m),7.55(2H,d),7.68−7.76(4H,m),7.86−7.96(5H,m),9.89(1H,brs).
LC/MS 保持時間:7.3分;m/z(ESI,POS):653[M+H]+
(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.145g)とピリジン(0.0448mL)の乾燥テトラヒドロフラン(100mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.089g)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下して加え、室温で18時間撹拌した。水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.130g)を得た。
LC/MS 保持時間:8.1分;m/z(ESI,POS):840[M+Na]+
((((4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシンの合成
粗製の(S)−(9H−フルオレン−9−イル)メチル 2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.05g)をN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)に溶解し、塩酸ドキソルビシン(0.03g)を加えた後、ジイソプロピルエチルアミン(0.13mL)を加えた。室温で15時間撹拌後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として((((4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシン(0.09g)を得た。
LC/MS 保持時間:7.8分;m/z(ESI,POS):1245[M+Na]+
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシンの合成
粗製の((((4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシン(0.085g)をN,N−ジメチルホルムアミド(1.1725mL)に溶解し、氷冷下ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10%、0.275mL)を滴下し、30分撹拌した。水(4mL)を加え、混合溶液を分取HPLCで精製し、(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)ドキソルビシン(実施例1、0.025g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:1.11(3H,d),1.37−1.51(2H,m),1.76−1.92(4H,m),2.07−2.22(2H,m),2.62−2.69(1H,m),2.98−3.12(3H,m),3.19−3.28(1H,m),3.67−3.76(1H,m),3.98(3H,s),4.10−4.17(1H,m),4.56(2H,s),4.69−4.73(1H,m),4.87−4.98(5H,m),5.22(1H,s),5.46(1H,s),6.84(1H,d),7.23(2H,d),7.53(2H,d),7.63(1H,d),7.88−7.95(2H,m),10.42(1H,brs).
LC/MS 保持時間:4.0分;m/z(ESI,POS):822[M+H]+
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸(1.00g)と4−アミノベンジルアルコール(0.487g)の乾燥ジクロロメタン(15mL)溶液中に、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン (EEDQ)(1.019g)を加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をジエチルエーテルで洗浄し、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.890g)を得た。
NMR[400MHz,CDCl3,TMS]ppm:1.46(9H,s),1.47(9H,s),1.82−1.89(1H,m),2.27−2.30(2H,m),2.44(2H,t),4.21−4.24(1H,m),4.66(2H,s),5.35−5.37(1H,m),7.33(2H,d),7.62(2H,d),8.87(1H,brs).
LC/MS 保持時間:5.5分;m/z(ESI,POS):431[M+Na]+
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.10g)とピリジン(0.0494mL)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.0987g)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下して加え、室温で2時間撹拌した。クエン酸水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.038g)を得た。
NMR[400MHz,CDCl3,TMS]ppm:1.46(9H,s),1.48(9H,s),1.79−1.90(1H,m),2.26−2.28(1H,m),2.45(2H,t),4.20−4.28(1H,m),5.26(2H,s),5.38−5.40(1H,m),7.37(2H,d),7.41(2H,d),7.69(2H,d),8.27(2H,d),9.15(1H,brs).
LC/MS 保持時間:7.1分;m/z(ESI,POS):596[M+Na]+
(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシンの合成
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.125g)をN,N−ジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(0.0855g)を加えた後、ジイソプロピルエチルアミン(0.37mL)を加えた。室温で18時間撹拌後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(0.227g)を得た。
LC/MS 保持時間:6.6分;m/z(ESI,POS):827[M+H]+
(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシンの合成
粗製の((((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(0.02g)に4規定塩酸ジオキサン溶液(2.0mL)に溶解し、30分撹拌した。溶媒を留去し、水(4mL)を加え、混合溶液を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(実施例2、0.0015g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:0.88(3H,t),1.29(3H,t),1.84−2.11(6H,m),3.16−3.29(3H,m),5.28(2H,s),5.36(2H,s),5.45(2H,s),6.55(1H,s),7.34(1H,s),7.44(2H,d),7.65(2H,d),7.78−7.80(1H,m),8.18−8.25(2H,m),10.21(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.9分;m/z(ESI,POS):671[M+H]+
(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
カンプトテシン(0.050g)とトリホスゲン(0.0158g)の乾燥ジクロロメタン(6mL)懸濁液に、ジメチルアミノピリジン(0.0561g)のジクロロメタン(2mL)溶液をゆっくり滴下した。30分撹拌後、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.059g)を加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸(50mL)を加え、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物として(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(0.108g)を得た。
LC/MS 保持時間:6.8分;m/z(ESI,POS):805[M+Na]+
(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
粗製の(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(0.028g)に4規定塩酸酢酸エチル溶液(3.0mL)に0℃で溶解し、3時間撹拌した。溶媒を留去し、得られた残渣を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(実施例3、0.0017g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:0.90(3H,t),1.90−1.97(3H,m),2.13−2.21(3H,m),3.16−3.28(1H,m),5.09(2H,q),5.33(2H,s),5.52(2H,s),7.02(1H,s),7.27(2H,d),7.53(2H,d),7.74(1H,t),7.89(1H,t),8.15−8.21(2H,m),8.73(1H,s),10.29(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.9分;m/z(ESI,POS):627[M+H]+
(S)−アリル 2−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
(S)−アリル 2−((アリルオキシカルボニル)アミノ)−5−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.400g)とピリジン(0.214mL)の乾燥テトラヒドロフラン(20mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.428g)の乾燥テトラヒドロフラン(1mL)溶液を滴下して加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸(10mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)−アリル 2−((アリルオキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.633g)を得た。
NMR[400MHz,CDCl3,TMS]ppm:1.96−2.08(1H,m),2.34−2.44(1H,m),2.48−2.53(2H,m),4.42−4.50(1H,m),4.62(2H,d),4.70(2H,d),5.24−5.39(6H,m),5.63(1H,brd),5.86−5.97(2H,m),7.39(2H,d),7.43(2H,d),7.65(2H,d),8.30(2H,d),8.41(1H,brs).
LC/MS 保持時間:6.6分;m/z(ESI,POS):564[M+Na]+
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシンの合成
(S)−アリル 2−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.130g)およびエピルビシン塩酸塩(0.127g)をN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(0.0928mL)を加えた。室温で6時間撹拌後、反応液をジイソプロピルエーテル(200mL)に滴下して加えた。生じた固体をクロロホルムに溶解し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製し、(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシン(0.222g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:1.18(3H,d),1.53−1.64(1H,m),1.79−1.91(2H,m),2.02−2.24(3H,m),2.38−2.46(2H,m),2.90−3.02(3H,m),3.49−3.59(1H,m),3.84−3.93(1H,m),3.98(3H,s),4.06−4.13(1H,m),4.45―4.49(2H,m),4.53−4.61(4H,m),4.83−4.88(3H,m),4.93−4.98(2H,m),5.16−5.23(3H,m),5.26−5.34(2H,m),5.49(1H,s),5.83−5.96(2H,m),7.02(1H,d),7.23(2H,d),7.53(2H,d),7.65(1H,t),7.75(1H,d),7.91(2H,d),9.93(1H,s),13.27(1H,brs),14.03(1H,brs).
LC/MS 保持時間:6.2分;m/z(ESI,POS):968[M+Na]+
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシンの合成
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシン(0.200g)をジクロロメタン(4.5mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(1.0mL)に溶解し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.012g)およびフェニルシラン(0.026mL)を加え、アルゴン雰囲気下、30分撹拌した。反応液を10%メタノール含有ジイソプロピルエーテル(450mL)に滴下して加えた。生じた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/水=13/6/1)で精製し、(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)エピルビシン(実施例4、0.080g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:1.18(3H,d),1.52−1.67(1H,m),1.80−1.97(3H,m),2.13−2.23(2H,m),2.90−3.05(3H,m),3.15−3.23(2H,m),3.49−3.61(1H,m),3.84−3.93(1H,m),3.99(3H,s),4.56(2H,s),4.87(2H,s),4.92−5.01(2H,m),5.21(1H,s),5.51(1H,s),7.03(1H,d),7.23(2H,d),7.54(2H,d),7.66(1H,t),7.91(2H,d),10.36(1H,s),14.04(1H,brs).
LC/MS 保持時間:4.4分;m/z(ESI,POS):822[M+H]+
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビンの合成
(S)−アリル 2−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.030g)をテトラヒドロフラン(1.85mL)に溶解し、シタラビン(0.014g)を加えた後、1規定水酸化ナトリウム水溶液(0.15mL)を加えた。室温で3時間撹拌後、酢酸エチルを加え有機層を得た。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1から5/1)で精製し,(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビン(0.016g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:1.79−1.93(1H,m),2.02−2.34(1H,m),3.49−3.63(2H,m),4.05−4.16(1H,m),4.47(2H,d),4.60(2H,d),4.92−5.09(3H,m),5.16−5.34(4H,m),5.68(1H,d),5.83(1H,d),5.84−5.97(2H,m),6.17(1H,d),7.24(2H,d),7.56(2H,d),7.63(1H,d),7.76(1H,d),10.00(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.6分;m/z(ESI,POS):646[M+H]+
(((4−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビンの合成
(((4−((S)−5−アリル−4−(アリルオキシカルボニルアミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビン(0.016g)をジクロロメタン(2.0mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(0.40mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下,テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.0028g)およびフェニルシラン(0.0030mL)を加え,室温で45分撹拌した後、そのまま18時間静置した。溶媒を留去し、残渣を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)シタラビン(実施例5、0.0015g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:2.02−2.14(2H,m),3.53−3.65(2H,m),3.73−3.81(1H,m),3.90−3.99(1H,m),4.06−4.12(1H,m),4.94−5.11(4H,m),5.71−5.5.75(1H,m),5.82−5.85(1H,m),6.16(1H,d),7.25(2H,d),7.57(2H,d),7.95(1H,s),8.05−8.30(2H,m),10.08(1H,brs).
LC/MS 保持時間:0.8分;m/z(ESI,POS):522[M+H]+
(S)−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ドキソルビシンの合成
比較例1−1
(S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタン酸(0.100g)、ドキソルビシン塩酸塩(0.095g)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(3mg)およびトリエチルアミン(0.024mL)をN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(0.100g)を加え、室温で22時間撹拌した。水(40mL)を加え、生じた析出物をろ過した。析出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ドキソルビシン(0.090g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:1.13(3H,d),1.42−1.54(1H,m),1.64−1.94(3H,m),2.06−2.25(4H,m),2.90−3.04(2H,m),3.90−4.38(10H,m),4.59(2H,d),4.77(1H,d),4.88−4.99(2H,m),5.20−5.26(1H,m),5.50(1H,s),7.20−7.89(19H,m),13.28(1H,s),14.07(1H,s).
LC/MS 保持時間:7.6分;m/z(ESI,POS):1096[M+Na]+
(4−((S)−5−((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)−4−(((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ドキソルビシン(0.020g)をジクロロメタン(0.1365mL)に溶解し、ピペリジンのジクロロメタン溶液(10%v/v,0.635mL)を0℃で加え、3.5時間撹拌した。ジクロロメタン(1mL)を加えた後、ピペリジンのジクロロメタン溶液(10%v/v,0.0158mL)を0℃で加え、2時間撹拌を続けた。析出物をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。得られた析出物を分取HPLCで精製し、(S)−(4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ドキソルビシン(比較例1、0.0021g)を得た。
NMR[400MHz,D2O,TMS]ppm:1.17(3H,d),1.61−1.74(1H,m),1.76−1.93(2H,m),1.94−2.04(2H,m),2.11−2.20(1H,m),2.24−2.50(3H,m),2.66−2.78(1H,m)3.59(2H,m),3.75(3H,s),3.99−4.16(2H,m),5.25(1H,m),7.02−7.15(2H,m),7.35−7.42(1H,m).
LC/MS 保持時間:3.8分;m/z(ESI,POS):673[M+H]+
(S)−5−(ベンジルオキシ)−4−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−オキソペンタン酸(0.173g)を9−アミノカンプトテシン(0.090g)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)溶液に加えた後、ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.005g)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(0.297g)を加え、室温で2時間撹拌後、2日間静置した。水(10mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/5から0/1)で精製し、9−((4−((S)−5−(ベンジルオキシ)−4−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−オキソ)ペンタナミド)カンプトテシン(0.024g)を得た。
NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:0.89(3H,t),1.81−2.02(4H,m),2.13−2.29(1H,m),2.58−2.70(2H,m),4.22−4.30(1H,m),5.08(2H,d),5.17(2H,s),5.28(2H,s),5.44(2H,s),6.56(1H,s),7.23−7.40(11H,m),7.76−7.87(2H,m),7.92(1H,d),8.03(1H,d),8.75(1H,s),10.20(1H,s).
LC/MS 保持時間:5.8分;m/z(ESI,POS):717[M+H]+
9−((4−((S)−5−(ベンジルオキシ)−4−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−5−オキソ)ペンタナミド)カンプトテシン(0.020g)をN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(0.005g)を加え、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、N,N−ジメチルホルムアミド(1mL)と水(8mL)の混合溶液で洗浄した。濾液を分取HPLCで精製し、9−((S)−4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)カンプトテシン(0.012g)を得た。
NMR[400MHz,D2O,TMS]ppm:0.86(3H,t),1.85(2H,q),2.26(2H,q),2.71−2.82(2H,m),3.97(1H,m),5.24−5.35(2H,m),7.21(1H,s),7.39−7.44(1H,m),7.49(2H,d),8.30(1H,s).
LC/MS 保持時間:1.2分;m/z(ESI,POS):493[M+H]+
実施例1のドキソルビシンプロドラッグ(0.49mg)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.298mL)に溶解し、2mMドキソルビシンプロドラッグPBS溶液を調製した。
該ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液0.150mLに、GGT(0.22mg、8U/mg)(Sigma−Aldrich社)をPBS(0.880mL)に溶解した2U/mLのGGT溶液を0.150mL加え、37℃で反応させた。
反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率およびドキソルビシンの生成率を求めた。結果を表1にまとめた。
比較例1で得られたドキソルビシンプロドラッグ(0.17mg)を、PBS(0.1265mL)に溶解し、2mMドキソルビシンプロドラッグPBS溶液を調製した。
該ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液0.100mLに、GGT(0.38mg、8U/mg)(Sigma−Aldrich社)をPBS(1.520mL)に溶解した2U/mLのGGT溶液を0.100mL加え、37℃で反応させた。
6時間後、反応液をHPLC分析したところ、プロドラッグは93%残存していた。このことから、比較例1に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGTに認識されず、生理活性物質であるドキソルビシンを遊離することができないことが示された。
実施例1のドキソルビシンプロドラッグ(0.49mg)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.298mL)に溶解し、ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液を調製した。
該ドキソルビシンプロドラッグPBS溶液0.148mLを、PBS溶液0.148mLに溶解し、37℃で反応させた。6.5時間後、反応液をHPLC分析したところ、プロドラッグの減少は確認されなかった。
したがって、本発明に係る実施例1のドキソルビシンプロドラッグは、PBS溶液中においてドキソルビシンを遊離せず、化学的に安定であることが示された。
GGT活性の高いOS−RC−2細胞(理研バイオリソースセンター)及びGGT活性の低いSK−OV−3細胞(American Type Culture Collection)を用いて、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグの細胞増殖阻害活性を評価した。
96穴プレートに、GGT活性の高いOS−RC−2細胞及びGGT活性の低いSK−OV−3細胞を、それぞれ4,000 cells/well播種し、37℃、5%CO2下で1日間培養後、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグを終濃度0.039〜10μM添加した。6時間培養後にウェル内を洗浄し、さらに3日間培養後、細胞をメタノールで固定し、メチレンブルー色素を用いて染色した。染色後色素を0.3%塩酸水で抽出し、660nmの吸光度を測定した。得られた吸光度について、化合物を添加しない細胞から測定された吸光度に対する減少率により細胞増殖抑制活性を評価した。
同様の操作により、プロドラッグ化していないドキソルビシンを用いて、その吸光度から細胞増殖抑制活性を評価した。結果を図1(GGT活性の高いOS−RC−2細胞)及び図2(GGT活性の低いSK−OV−3細胞)に示した。
一方、GGT活性の低いSK−OV−3細胞において、10μMのドキソルビシンを添加した場合、細胞増殖阻害活性は77%だった。これに対し、実施例1に係るドキソルビシンプロドラッグを10μM添加した場合、13%の細胞増殖阻害活性を示した。
GGT活性の高い細胞とGGT活性の低い細胞における細胞増殖阻害活性の結果を比較すると、本発明に係る実施例1のドキソルビシンプロドラッグは、GGTによりドキソルビシンを遊離し、細胞増殖阻害活性を示すと共に、GGTが存在しない場合は、細胞増殖阻害活性が低く、殺細胞性をほとんど示さないことが明らかとなった。このことから、本発明に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGT活性に依存した細胞増殖抑制活性を発揮する物性であることが示された。
また、試験例4の結果、GGT活性の高いOS−RC−2細胞において、GGT阻害剤はドキソルビシンの細胞増殖抑制活性に影響を与えなかったが、ドキソルビシンプロドラッグの活性を完全に阻害した。このことから、本発明に係るドキソルビシンプロドラッグは、GGT活性に依存した細胞増殖抑制活性を発揮する物性であることが示された。
試験例1と同様にして、実施例4のエピルビシンプロドラッグの2mM PBS溶液し、2U/mLのGGT溶液を用いて、37℃で反応させた。
反応液を経時的にHPLC分析することにより、プロドラッグは酵素反応によって開裂することが確認され、6時間後のプロドラッグ残存率は5%だった。
このことから、実施例4に係るエピルビシンプロドラッグは、GGT存在下で速やかに、薬理活性を有するエピルビシンを遊離できることが示された。
試験例1と同様にして、実施例5で得られたシタラビンプロドラッグの1mM PBS溶液し、2U/mLのGGT溶液を用いて、37℃で反応させた。
反応液を経時的にHPLC分析することにより、プロドラッグは酵素反応によって開裂することが確認され、6.5時間後のプロドラッグ残存率は34%だった。
このことから、実施例5に係るシタラビンプロドラッグは、GGT存在下で速やかに、薬理活性を有するシタラビンを遊離できることが示された。
比較試験例1と同様にして、比較例2で得られた9−アミノカンプトテシンプロドラッグの2mM PBS溶液を調製し、2U/mLのGGT溶液を用いて、37℃で反応させた。
6時間後、反応液をHPLC分析したところ、プロドラッグは99%残存していた。このことから、比較例2に係る9−アミノカンプトテシンプロドラッグは、GGTに認識されず、生理活性物質である9‐アミノカンプトテシンを遊離することができないことが示された。
比較例2の9−アミノカンプトテシンプロドラッグは、GGTによる9−アミノカンプトテシンの解離反応がほとんど起こらない結果であったことから、GGTの認識による速やかな解離反応には、γ−グルタミン酸結合部位と薬剤との間に、適当なリンカーセグメントを介在させることが必要であり、本発明の芳香族アミド型リンカーセグメントが、優位なGGT認識能を発揮させることができることが明らかとなった。
Claims (13)
- 一般式(1)
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、カンプトテシン及びその誘導体である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、パクリタキセル又はドセタキセルである請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エベロリムス、テムシロリムス、タクロリムス及びラパマイシンからなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン及びアムルビシンからなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ゲムシタビン、エチニルシチジン、シタラビン及びCNDAC(2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン)からなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ベスタチン(Bestatin)又はその誘導体、グルファニド(Glufanide)、グレリン(Ghrelin)、テルトモチド(Tertomotide)、PR1、オクトレオチド(Octreotide)、ランレオチド(Lanreotide)及びパシレオチド(Pasireotide)からなる群から選択される生理活性物質である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エリブリン又はその誘導体である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、オーリスタチン又はその誘導体である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、メトトレキサート又はペメトレキセドである請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- 一般式(1)において、R1、R2及びR3は水素原子である請求項1〜10の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
- 請求項1〜11の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
- 抗がん剤である請求項12に記載の医薬。
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