JP6570034B2 - 新規なグルタミン酸誘導体およびその用途 - Google Patents

新規なグルタミン酸誘導体およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、新規なグルタミン酸誘導体であって、標的部位で酵素選択的に活性化される新規化合物、その用途に関するものである。より詳細には、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT, E.C. 2.3.2.2)によって活性化されるプロドラッグである新規グルタミン酸誘導体及びその用途に関する。
プロドラッグは、生体内で代謝された後に活性型の薬剤に変化するものである。薬剤をプロドラッグ化する目的としては、安定性の改善、溶解性の改善、吸収性の改善、副作用の軽減、作用時間の改善(作用の持続化)、特定部位での作用発現などが挙げられる。これまで、幾つかの薬剤がプロドラッグとして開発されてきており、様々な疾病に対する治療用医薬品として臨床使用されている。
がんの化学療法に用いられる抗がん剤の多くは、がん細胞のみならず正常細胞にも細胞増殖阻害作用を示すため、このことに起因する副作用が問題となっている。このため、抗がん剤をがん細胞に対して選択的に作用させることができれば、副作用が軽減した抗がん剤を提供することができる。そこで、抗がん剤をプロドラッグ化して、腫瘍組織などの標的部位で選択的に活性化することができれば、副作用が軽減されると同時に治療効果を大きく向上させることが期待できる。
標的部位で選択的に活性化合物に変換させる方法として、標的組織に高発現している酵素を利用する方法が考えられている。標的部位の酵素特異的反応を利用したプロドラッグ化に関しては、酵素認識部位と薬剤間に自己開裂型リンカーを介在させる手法が知られている(非特許文献1)。これは酵素特異的反応により酵素認識部位が開裂し、それにより生じたリンカー−薬剤複合体において、リンカー部が自己開裂することにより薬剤を放出することを可能としている。
γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)は、グルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)およびグルタチオン抱合体の代謝分解の初発段階をつかさどる酵素で、高等動植物から微生物までほとんどあらゆる生物に普遍的に存在することが知られている(非特許文献2、非特許文献3、および非特許文献4)。GGTは、グルタチオンのγ−グルタミル結合を加水分解する酵素であり、GluとCys−Glyを生成する一方、各種アミノ酸やジペプチド、アミン類を受容体として、γ−グルタミル転移生成物を与える。
GGTは、多種多様ながん細胞で高発現していることが知られており、がん化学療法の薬物ターゲットとしてGGTを指摘する報告もある(非特許文献5)。
特許文献1には、抗がん剤をγ−グルタミル化した化合物が開示されている。自己開裂リンカーを利用したプロドラッグとして、トリプシンにより切断することが可能であるプロドラッグが挙げられている(非特許文献1)。しかしながら、GGTに認識され、これにより切断されることが可能であるプロドラッグについては述べられていない。また、非特許文献6には、抗がん剤をグルタミル化した化合物が挙げられており、酵素に依存した細胞毒性が示されている。しかしながら、非常に高い酵素濃度において、薬理活性型化合物を解離されるものであり、生体内環境でプロドラッグとして機能できるものではない。また、非特許文献7には、グルタミン酸γ位に薬剤を結合させた化合物として、適当なリンカーを介したプロドラッグ型化合物が挙げられている。
J.Med.Chem., 24,479−480,(1981) Adv. Enzymol. Relat.Areas Mol. Biol ., 72 , 239 − 278(1998) Methods Enzymol.,113,400−419(1985) Methods Enzymol.,113,419−437(1985) Biochemical Pharmacology 71, 231−238(2006) Environmental and Molecular Mutagenesis 32,377−386 (1998) Chem.Commun.,49,1389−1391(2013)
US7,989,188
GGTによって認識されるプロドラッグは、GGT高発現組織において、選択的に活性型化合物を遊離させることができることから、副作用が軽減され、治療効果が向上した医薬品となることが期待できる。しかしながら、医薬品として求められる安定性や効果を十分に発揮するものは得られておらず、医薬品として使用可能なGGT認識プロドラッグが望まれている。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、適当なγ―グルタミル芳香族アミドを結合させた薬剤が、極めて安定でありながら、GGTに認識されて速やかに生理活性作用を示す薬剤を遊離することを見出した。具体的には、下記一般式(1)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは芳香族性水酸基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩が、GGT認識プロドラッグとして有用であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本願は、以下の[1]乃至[12]に示す発明を、その要旨とする。
[1] 一般式(1)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは芳香族性水酸基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[2] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、ノギテカン及びその誘導体からなる群から選択される1種である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[3] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エトポシド、テニポシド及びその誘導体からなる群から選択される1種である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[4] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ラロキシフェン及びその誘導体からなる群から選択される1種である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[5] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ゴセレリン、リュープリン及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[6] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、2−ブチルアミノ−2−デメトキシヒポクレリン及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[7] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、コンブレタスタチン及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[8] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ガネテスピブ、マクベシン、ラディシコル及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[9] Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムルビシン及びその誘導体である前記[1]に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[10] 一般式(1)において、R、R及びRは水素原子である前記[1]〜[9]の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[11] 前記[1]〜[10]の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
[12] 抗がん剤である前記[11]に記載の医薬。
本発明のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、GGTに認識され、芳香族性水酸基を有する生理活性物質を、速やかに遊離する物性を有する。GGTは、多くの悪性腫瘍において高発現していることが知られている。したがって、本発明のグルタミン酸誘導体を抗腫瘍効果を有する化合物に適用することで、標的組織選択的に抗腫瘍活性を発揮する化合物を遊離させることができ、副作用が軽減され、治療効果が向上した抗腫瘍性薬剤を提供することができる。
OS−RC−2細胞に対する実施例1の化合物の細胞増殖抑制試験の結果である。 SK−OV−3細胞に対する実施例1の化合物の細胞増殖抑制試験の結果である。 GGT阻害剤存在下、OS−RC−2細胞に対する実施例1の化合物の細胞増殖抑制試験の結果である。
本発明は、芳香族性水酸基を有する生理活性物質に、γ―グルタミル芳香族アミドを結合させたグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩に関する。また、該化合物の医薬品としての用途に関する。以下に本発明の詳細を述べる。
本発明のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、下記一般式(1)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは芳香族性水酸基を有する生理活性物質の結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基である。
前記置換基を有していても良いアルキル基における、該アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
前記置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基における、該アルコキシカルボニル基とは、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基を示す。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の他、適当な芳香族置換基を有する、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等の1級アルコキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基等の2級アルコキシカルボニル基、若しくはt−ブトキシカルボニル基等の3級アルコキシカルボニル基が挙げられる。
前記アルキル基及びアルコキシカルボニル基における有していても良い置換基としては、例えば、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素環又は複素環アリール基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、アリールチオ基、炭素数1〜8のアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、炭素数1〜8のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族又は芳香族アミノ基、脂肪族アミノ基が置換された炭素数1〜8のアルキル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、若しくはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
前記一般式(1)におけるR及びRにおける置換基を有していても良いアルキル基又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基は、アミノ基の保護基であることが好ましい。すなわち、有機合成反応におけるアミノ基の保護基であれば、特に制限なく用いることができる。特に好ましくは、前記アルコキシカルボニル基であり、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、t−ブトキシカルボニル基(Boc基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)、アリルオキシカルボニル基(Aloc基)等を挙げることができる。
前記R及びRとしては、水素原子及び/又は置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基であることが好ましい。R及びRが両方とも水素原子である場合、又は水素原子と置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基の組み合せである場合が好ましい。
一般式(1)におけるRとしては、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基が挙げられる。
前記置換基を有していても良いアルキル基における、該アルキル基とは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。また、適当な芳香族置換基を有する、ベンジル基、9−フルオレニルメチル基等が挙げられる。該Rのアルキル基における置換基としては、前述と同義である。
該Rの置換基を有していても良いアルキル基としては、カルボン酸の保護基が用いられることが好ましい。有機合成反応におけるカルボン酸の保護基であれば、特に制限なく用いることができる。特に好ましくは、メチル基、エチル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、9−フルオレニルメチル基である。
一般式(1)において、A及びAは、Rで置換された炭素原子であるC−R、Rで置換された炭素原子であるC−R及び窒素原子からなる群から選択される基である。また、B、B及びBは、それぞれ独立してRで置換された炭素原子であるC−R又は窒素原子である。
前記Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基である。
前記ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
前記置換基を有していても良いアルキル基における該アルキル基とは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
前記置換基を有していても良いアルコキシ基における該アルコキシ基とは、炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基等の1級アルコキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基等の2級アルコキシ基、若しくはt−ブトキシ基等の3級アルコキシ基が挙げられる。
前記アルキル基及びアルコキシ基における有していても良い置換基としては、例えば、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素環又は複素環アリール基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、アリールチオ基、炭素数1〜8のアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、炭素数1〜8のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリールオキシ基、脂肪族又は芳香族アミノ基、脂肪族アミノ基が置換された炭素数1〜8のアルキル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、若しくはシリル基、等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
前記A、A、B、B及びBは、窒素原子であっても良い。すなわち、該A〜Bで構成される6員環芳香族基は含窒素複素環であっても良い。該含窒素複素環としては、該A〜Bにおいて、1〜3個の窒素原子を含有する複素環基を含む。例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環又はトリアジン環である。前記含窒素複素環は、置換基を有していても良い。該置換基としては、前記Rで規定される置換基である。
前記R及びRとしては、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基が挙げられる。
置換基を有していても良いアルキル基における該アルキル基とは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n―ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。有していても良い置換基としては、前述と同義である。
前記Xにおける生理活性物質としては、生体内に投与することにより薬理機能を示す化学物質であって、芳香族性水酸基を有する化合物であれば特に制限なく使用することができる。すなわち、該X基は前記生理活性物質の芳香族水酸基の酸素原子を介してエーテル結合した結合残基である。
当該生理活性物質における生理活性は、特に限定されるものではないが疾病治療に係る薬理活性であることが好ましく、疾病治療用薬理活性化合物を用いることが好ましい。GGTは悪性腫瘍で高発現していることから、当該生理活性物質としては、抗腫瘍活性物質であることが好ましく、抗がん剤を適用することが好ましい。すなわち、一般式(1)のXで示される生理活性物質は、芳香族性水酸基を有する抗がん剤であることが好ましい。
一般式(1)のXで示される生理活性物質として好適な抗がん剤としては、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン療法剤、光線力学療法剤、微小管重合阻害剤、Hsp90阻害剤及びその他の細胞分裂阻害作用を有する抗がん剤を挙げることができる。
前記DNAトポイソメラーゼ阻害剤としては、例えば、DNAトポイソメラーゼI型阻害剤である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、ノギテカンが挙げられる。また、DNAトポイソメラーゼII型阻害剤として、エトポシド、テニポシド等を挙げることができる。また、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムルビシン等のアンスラサイクリン系抗がん剤等を挙げることができる。
前記ホルモン療法剤としては、ラロキシフェン、ゴセレリン、リュープロレリン等を挙げることができる。
前記光線化学療法剤としては、2−ブチルアミノ−2−デメトキシヒポクレリン等を挙げることができる。
前記微小管重合阻害剤としては、コンブレタスタチン及びその誘導体を挙げることができる。
前記Hsp90阻害剤としては、ガネテスピブ、マクベシン、ラディシコル等を挙げることができる。
これらの抗がん剤が、その芳香族水酸基の酸素原子を介してエーテル結合することで、血漿中における安定性に優れ、且つGGTとの接触により迅速に結合解離して、抗がん剤を遊離させる応答性に優れたプロドラッグを提供することができる。特に、該Xに係る芳香族性水酸基を有する生理活性物質として、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンまたはノギテカンを用いることが好ましく、該Xは、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンまたはノギテカンの10位水酸基によりエーテル結合した結合残基であることが好ましい。
本発明は、前記A及びAの何れか1つが、C−Rであることを特徴とする。すなわち、本発明の1つの態様としては、AがC−Rである下記一般式(3)で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
一般式(3)において、R、R、R、R、R、A、B、B、B及びXは、前述と同義である。
また、本発明のもう1つの態様としては、AがC−Rである下記一般式(4)で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
一般式(4)において、R、R、R、R、R、A、B、B、B及びXは、前述と同義である。
本発明の一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩において、GGT認識されるためには、γ−グルタミン酸結合部分構造が遊離アミノ酸構造であることが必要である。すなわち、当該グルタミン酸誘導体が、GGTに認識され活性化されるプロドラッグとして機能するためには、前記R、R及びRがいずれも水素原子であることが必要である。したがって、当該グルタミン酸誘導体が薬理活性を発揮させるための医薬として使用する場合は、前記R、R及びRがいずれも水素原子であることが好ましい。しかしながら、前記R、R及びRの何れかが、アミノ基又はカルボキシ基の保護基であり、生体内へ投与した後に該保護基が解離して、該R、R及びRの全てが水素原子の構造となる場合も、医薬用途の当該グルタミン酸誘導体の態様として含まれる。
なお、前記R、R及びRが置換基を有していても良いアルキル基やアルコキシカルボニル基である化合物は、当該医薬用途化合物の製造上の中間体として有用な化合物であり、本発明の内容に含まれる。
一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体は、薬理学的に許容される塩として存在して良い。当該塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを挙げることができる。もっとも、本発明の化合物の塩は、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体及びその塩は、置換基の種類に応じて1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体及びその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を挙げることができる。水和物又は溶媒和物の結合数は特に限定されるものではなく、単離可能な安定型の水和物又は溶媒和物であれば良い。
本明細書の実施例には、一般式(1)で表される本発明の化合物に包含される代表的化合物についての製造方法が具体的に示されているので、当業者は本明細書の開示を参照することにより、および必要に応じて出発原料や試薬、反応条件などを適宜選択することにより、一般式(1)に包含される任意の化合物を容易に製造することができる。
本発明の一般式(1)で表されるグルタミン酸誘導体は、AがC−Rである場合、例えば以下のように製造することができる。
スキーム(I)
スキーム(I)中、R〜R、X、A、B〜Bは、前述と同義であり、R及び/又はRはアミノ基の保護基であり、Rはカルボン酸の保護基である。LGはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基等の脱離基を表す。以下に各工程を説明する。
工程A:アミノ基及びα−カルボキシ基を保護したグルタミン酸誘導体を、芳香族アミンでアミド化して、γ−グルタミン酸アミド誘導体(A−1)を合成する工程である。本工程は、アミド化縮合反応であり、一般的な縮合剤を用いて反応させることができる。例えば、縮合剤として1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)を用い、ジクロロメタン等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。縮合剤としては、例えば、カルボジイミド系縮合剤、イミダゾール系脱水縮合剤、トリアジン系縮合剤、ホスホニウム系脱水縮合剤、ウロニウム系縮合剤、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、BOP試薬、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等を用いることができる。必要に応じ1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の活性化剤の共存させることができる。
工程B:一般式(A−1)で表されるγ−グルタミン酸アミド誘導体から、一般式(A−2)で表される誘導体を合成する工程である。一般式(A−2)におけるLGは脱離基であり、例えばメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等を挙げることができる。本工程は、例えば、該脱離基がメタンスルホニルオキシ基である場合、メタンスルホニルクロリドをN,N−ジイソプロピルエチルアミン存在下、ジクロロメタン等の溶媒中、−30℃から150℃、好ましくは−10℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
工程C:一般式(A−2)で表される誘導体から、一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体を合成する工程である。本工程は、例えば、芳香族性水酸基を有する生理活性物質を、炭酸セシウム存在下、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
工程D:一般式(A−1)で表されるγ−グルタミン酸アミド誘導体から、一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体を、一段階で合成するための工程経路である。本工程は、例えば、芳香族性水酸基を有する化合物を、トリフェニルホスフィン、アゾジカルボン酸ジイソプロピル存在下、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、0℃から150℃、好ましくは0℃から30℃の温度で反応させることにより実施できる。
工程E:一般式(A−3)で表される生理活性物質結合誘導体における、γ−グルタミン酸結合部分のアミノ基及びカルボキシ基の脱保護反応を行う工程である。
及びRの何れか一方がt−ブトキシカルボニル基(Boc基)で、他方が水素原子であり、Rがt−ブチル基の場合、酸性条件下で該工程Eの脱保護を実施することができる。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸等のカルボン酸等が使用できる。その他、t−ブトキシカルボニル基あるいはt−ブチルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、特に制限なく使用することができる。
また、該R及びRの何れか一方が9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)で、他方が水素原子であり、該Rがフルオレニルメチル基の場合、塩基性条件下で該工程Eを実施することができる。塩基としては、アンモニア、あるいはピペリジン、モルホリンなどの有機塩基等を使用できる。その他、フルオレニルメトキシカルボニル基あるいはフルオレニルメチルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、何れの脱保護反応条件であっても使用することができる。
また、該R及びRの何れか一方がアリルオキシカルボニル基(Aloc基)で、他方が水素原子であり、該Rがアリル基の場合、パラジウム触媒存在下で該工程Eを実施することができる。パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等を使用できる。その他、アリルオキシカルボニル基あるいはアリルエステルを脱保護できることが知られている触媒であって、保護基以外の部分に影響を与えない触媒であれば、何れの脱保護反応条件であっても使用することができる。
本発明のグルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩は、生理活性物質を遊離させることがきるものであり、該生理活性物質のプロドラッグとして機能する。したがって、当該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬として用いることができる。
本発明の該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬は、該グルタミン酸又はその塩を単独で用いても良いが、通常は、医薬品として許容される添加剤と併せて医薬組成物を調製し、医薬品製剤として用いることが好ましい。該添加剤としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、矯味剤、着香剤、希釈剤、溶解補助剤等の製薬上許容し得る添加剤が挙げられ、これらと混合して医薬品製剤を調製する。該製剤としては、粉剤、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、カプセル剤、注射剤、座剤、軟膏剤等の製剤形態で、経口又は非経口的(全身投与、局所投与等)に安全に投与される。製剤中の本発明のグルタミン酸誘導体、又は製薬上許容される塩の含量は、製剤により種々異なるが、通常0.1〜100重量%であることが好ましい。
当該グルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬として用いる場合、投与量は投与経路、患者の年齢並びに予防又は治療すべき実際の症状等により異なり、特に限定されるものではない。本発明のグルタミン酸誘導体又はその製薬上許容される塩は、悪性腫瘍に高発現されるGGTに認識され、生理活性物質を遊離する物性であることから、抗がん剤として用いることが好ましい。抗がん剤として用いる場合には、例えば成人に経口投与する場合、有効成分として1日0.01mg〜2000mg、好ましくは0.1mg〜1000mgとすることができ、1日1回又は数回に分けて投与できる。また、経静脈投与等の非経口的に投与する場合は、体表面積当りの有効成分として0.01mg〜2000mg/m、好ましくは0.1mg〜1000mg/mとすることができ、1日1回又は数回に分けて投与することが好ましい。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例化合物の検出及び同定、並びに純度測定のためのLC/MS測定条件は次のとおりである。
機種:島津 LCMS−2020
カラム:Inertsil ODS−3、2.1mm×100mm、
移動相A:アセトニトリル/ギ酸 (99.9/0.1)
移動相B:水/ギ酸 (99.9/0.1)
グラジェント:時間(分)0.0 5.5 6.5 6.51 10.0 A濃度(%)20 90 90 20 20
流速:0.3mL/分
また、参考例化合物の検出及び同定、並びに純度測定のためのLC/MS測定条件は次のとおりである。
機種:島津 LCMS−2010A
カラム:Inertsil ODS−3、2.1mm×100mm、
移動相A:アセトニトリル/ギ酸 (99.9/0.1)
移動相B:水/ギ酸 (99.9/0.1)
グラジェント:時間(分)0.0 5.5 6.5 6.51 10.0
A濃度(%) 5 90 90 5 5
流速:0.3mL/分
実施例1:10−(4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジルオキシ)−7−エチルカンプトテシン 2トリフルオロ酢酸塩の合成[スキーム1]
実施例1−1:5−((4−ヒドロキシメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメートの合成
1−t−ブチル N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(1.00g)と4−アミノベンジルアルコール(0.487g)の乾燥ジクロロメタン(15mL)溶液中に、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン (EEDQ)(1.019g)を加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をジエチルエーテルで洗浄し、5−((4−ヒドロキシメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(0.890g)を得た。

NMR[400MHz,CDCl,TMS]ppm:1.46(9H,s),1.47(9H,s),1.82−1.89(1H,m),2.27−2.30(2H,m),2.44(2H,t),4.21−4.24(1H,m),4.66(2H,s),5.35−5.37(1H,m),7.33(2H,d),7.62(2H,d),8.87(1H,brs).
LC/MS 保持時間:5.6分;m/z(ESI,POS):431[M+Na]
実施例1−2:5−((4−クロロメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメートの合成 アルゴン雰囲気中、氷冷撹拌下、5−((4−ヒドロキシメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(88mg,0.22mmol)の乾燥ジクロロメタン(4.3mL)溶液中に、ジイソプロピルエチルアミン(0.073mL、0.43mmol)、および、メタンスルホニルクロリド(0.025mL、0.32mmol)をこの順で加え、氷冷下2時間5分撹拌した。反応液に酢酸エチル(40mL)を加えて希釈し、0.3モル炭酸水素ナトリウム水溶液(3mL)−水(10mL)、水(10mL)、および、食塩水(10mL)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去、減圧下溶媒を留去して、5−((4−クロロメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(83.7mg)を得た。このものを、精製することなく次の縮合反応に用いた。
実施例1−3:10−(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジルオキシ)−7−エチルカンプトテシンの合成 アルゴン雰囲気中、室温撹拌下、7−エチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン(EHC 29mg、0.074mmol)の乾燥ジメチルホルムアミド(1.5mL)懸濁液中に、炭酸セシウム(24mg、0.074mmol)を加え、得られた淡黄色懸濁液を室温で9分撹拌して、橙色均一溶液とした。次いで、室温撹拌下、粗製の5−((4−クロロメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(36mg,0.084mmol)の乾燥ジメチルホルムアミド(1.5mL)溶液を加え、得られた橙色溶液を室温で2時間40分、次いで、氷冷下1.5時間撹拌した。氷冷撹拌下、反応液に酢酸エチル(20mL)を加えて希釈し、塩化アンモニウム水溶液(6mL)を加えて反応を停止した。有機層を分取し,水(8mL、2回)、および、食塩水(6mL)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去、減圧下溶媒を留去して、淡黄色固体(61mg)を得た。このものを,分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル,酢酸エチル)により精製し、10−(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジルオキシ)−7−エチルカンプトテシン(19mg)を得た。 NMR[400MHz,CDCl3,TMS]ppm:1.033(3H,t,J=7.3Hz),1.353(3H,t,J=7.7Hz),1.459(9H,s),1.473(9H,s),1.80−1.95(3H,m),2.289(1H、m),2.453(2H、t、J=6.5Hz),3.108 (2H,q,J=7.7Hz),3.828(1H,s),4.229(1H,m),5.205(2H,s),5.220(2H,s),5.298(1H,d,J=16.2Hz),5.389(1H,d,J=8.1Hz),5.745(1H,d,J=16.2Hz,7.368(1H,d,J=2.6Hz),7.463(2H,d,J=8.6Hz),7.510(1H,dd,J=9.2Hz,2.6Hz),7.600(1H,s),7.693(2H,d,J=8.2Hz),8.125(1H,d,J=9.2Hz),9.062(1H,s).LC/MS 保持時間:6.9分;m/z(ESI、NEG):781[M−H]
実施例1−4:10−(4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジルオキシ)−7−エチルカンプトテシン 2トリフルオロ酢酸塩の合成 アルゴン雰囲気中、氷冷撹拌下、10−(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジルオキシ)−7−エチルカンプトテシン(33.7mg、0.043mmol)の1,2−ジクロロエタン(3mL)溶液中に、トリフロロ酢酸(1mL)を加え、得られた黄色溶液を、氷冷下5分、次いで室温(21°C)で2時間撹拌した。反応液を減圧乾固し、残査に1,2−ジクロロエタン(8mL)を加えて再度減圧乾固して、黄色固体(41mg)を得た。このものに、ジメチルホルムアミド(1mL) 、アセトニトリル(MeCN、7mL) 、及び、水(4mL)を加えて溶解し、得られた溶液(12mL)を分取液体クロマトグラフィーにより分離精製した(4mL、3回)。不純物を含まない画分を合して減圧下溶媒を留去し、10−(4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジルオキシ)−7−エチルカンプトテシン 2トリフルオロ酢酸塩(実施例1、21.8mg)を得た。 NMR[400MHz,DMSO−d6,TMS]ppm:0.874(3H,t,J=7.3Hz),1.272(3H,t,J=7.6Hz),1.864(2H,m),2.082(2H,m),2.566(overlapped),3.185(2H,q,J=7.3Hz),3.980(overlapped),5.299,5.309,5.429(each 2H,s),6.50(1H,b),7.269(1H,s),7.47−7.65(6H,m),8.09(1H,d,J=9.0Hz),8.262(2H,d,J=4.1Hz),10.105(1H,s),13.9(1H,b).LC/MS 保持時間:4.1分;m/z(ESI,POS):628[M+2H]
参考例1:10−((((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)オキシ)−7−エチルカンプトテシンの合成[スキーム2]
参考例1−1:(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエートの合成
実施例1−1に記載の5−((4−ヒドロキシメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(0.10g)とピリジン(0.0494mL)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液中に、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.0987g)の乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液を滴下して加え、室温で2時間撹拌した。クエン酸水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.038g)を得た。

NMR[400MHz,CDCl,TMS]ppm:1.46(9H,s),1.48(9H,s),1.79−1.90(1H,m),2.26−2.28(1H,m),2.45(2H,t),4.20−4.28(1H,m),5.26(2H,s),5.38−5.40(1H,m),7.37(2H,d),7.41(2H,d),7.69(2H,d),8.27(2H,d),9.15(1H,brs).
LC/MS 保持時間:7.1分;m/z(ESI,POS):596[M+Na]
参考例1−2:(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシンの合成
(S)−t−ブチル 2−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−((4−((((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)−5−オキソペンタノエート(0.125g)をN,N−ジメチルホルムアミド(8mL)に溶解し、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(EHC 0.0855g)を加えた後、ジイソプロピルエチルアミン(0.37mL)を加えた。室温で18時間撹拌後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、粗生成物として(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(0.227g)を得た。
LC/MS 保持時間:6.6分;m/z(ESI,POS):827[M+H]
参考例1−3:10−((((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)オキシ)−7−エチルカンプトテシンの合成
粗製の((((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(0.02g)に4規定塩酸ジオキサン溶液(2.0mL)に溶解し、30分撹拌した。溶媒を留去し、水(4mL)を加え、混合溶液を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)−10−オキシ−7−エチルカンプトテシン(参考例1、0.0015g)を得た。

NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:0.88(3H,t),1.29(3H,t),1.84−2.11(6H,m),3.16−3.29(3H,m),5.28(2H,s),5.36(2H,s),5.45(2H,s),6.55(1H,s),7.34(1H,s),7.44(2H,d),7.65(2H,d),7.78−7.80(1H,m),8.18−8.25(2H,m),10.21(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.9分;m/z(ESI,POS):671[M+H]
参考例2:(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成[スキーム3]
参考例2−1:(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
カンプトテシン(0.050g)とトリホスゲン(0.0158g)の乾燥ジクロロメタン(6mL)懸濁液に、ジメチルアミノピリジン(0.0561g)のジクロロメタン(2mL)溶液をゆっくり滴下した。30分撹拌後、実施例1−1に記載の5−((4−ヒドロキシメチル)ベンジルアミノ)−1−(t−ブチル) N−(t−ブトキシカルボニル)−L−グルタメート(0.059g)を加え、室温で18時間撹拌した。1規定塩酸(50mL)を加え、ジクロロメタンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物として(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(0.108g)を得た。
LC/MS 保持時間:6.8分;m/z(ESI,POS):805[M+Na]
参考例2−2:(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシンの合成
粗製の(((4−((S)−5−(t−ブトキシ)−4−((t−ブトキシカルボニル)アミノ)−5−オキソペンタナミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(0.028g)に4規定塩酸−酢酸エチル溶液(3.0mL)に0℃で溶解し、3時間撹拌した。溶媒を留去し、得られた残渣を分取HPLCで精製し、(((4−((S)4−アミノ−4−カルボキシブタンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)カンプトテシン(参考例2、0.0017g)を得た。

NMR[400MHz,DMSO−d,TMS]ppm:0.90(3H,t),1.90−1.97(3H,m),2.13−2.21(3H,m),3.16−3.28(1H,m),5.09(2H,q),5.33(2H,s),5.52(2H,s),7.02(1H,s),7.27(2H,d),7.53(2H,d),7.74(1H,t),7.89(1H,t),8.15−8.21(2H,m),8.73(1H,s),10.29(1H,brs).
LC/MS 保持時間:3.9分;m/z(ESI,POS):627[M+H]
試験例1;リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での安定性試験
実施例1のEHCプロドラッグ0.864mg/mL DMSO溶液(0.050mL)に、PBS(0.450mL)を加え、37℃で反応させた。反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率を求めたところ、24時間後プロドラッグは90%残存していた。
参考例1のEHCプロドラッグの60mg/mL DMSO溶液(0.005mL)にPBS(0.220mL)を加えEHCプロドラッグ溶液を調製した。該EHCプロドラッグ溶液(0.100mL)に、PBS(0.100mL)を加え、37℃で反応させた。反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率を求めたところ、3.5時間後プロドラッグの残存率は52%であった。
参考例2のカンプトテシンプロドラッグ6.3mg/mL DMSO溶液(0.073mL)にPBS(0.294mL)を加えカンプトテシンプロドラッグ溶液を調製した。該カンプトテシンプロドラッグ溶液(0.117mL)に、PBS(0.117mL)を加え、37℃で反応させた。反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率を求めたところ、3時間後プロドラッグの残存率は74%であった。
したがって、本発明に係る実施例1のEHCプロドラッグは、参考例1及び2と比べ、PBS中において化学的に安定であることが示された。
試験例2;マウス血漿中での安定性試験
実施例1のEHCプロドラッグ0.856mg/mL DMSO溶液(0.020mL)に、マウス血漿(0.180mL)を加え、37℃で反応させた。
反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率を求めたところ、24時間後プロドラッグは94%残存していた。
したがって、本発明に係る実施例1のEHCプロドラッグは、マウス血漿中においても、化学的に安定であることが示された。
試験例3:γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)酵素認識試験
実施例1のEHCプロドラッグを、DMSOに溶解し、0.34mg/mL溶液を調製した。該EHCプロドラッグ溶液(0.300mL)にPBS(0.300mL)を加え、EHCプロドラッグ溶液(2)を調製した。
γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT Sigma−Aldrich社)をPBSに溶解し0.227mg/mL溶液を調製した。
該EHCプロドラッグ溶液(2)(0.250mL)に、GGT溶液(0.250mL)を加え、37℃で反応させた。
反応液をHPLC分析することにより、プロドラッグの残存率およびEHCの生成率を求めた。
試験例3の結果、実施例1のEHCプロドラッグは、反応1時間で化学量論量のEHCを生成した。この結果は、実施例1の化合物がGGTに認識され、速やかにエーテル結合を介したγ−グルタミル芳香族アミドリンカーを開裂させ、生理活性物質であるEHCを生成できることを示す結果である。
試験例1、2の結果から、実施例1に係るEHCプロドラッグは、PBS溶液及びマウス血漿存在下の溶液において、安定な物性であることが示された。これに対し、炭酸エステル型の結合様式のプロドラッグ体である参考例1及び参考例2は、PBS溶液で速やかに結合が開裂してしまい、溶液安定性を確保できない結果であった。一方、実施例1に係るEHCプロドラッグは、GGT存在下で、速やかに薬理活性を有するEHCを遊離できることが示された。これらの結果から、芳香族性水酸基を有する薬剤のプロドラッグを調製する場合、投与用溶液や血流中等の生体内環境下でプロドラッグ体として安定に存在し、且つGGT存在下で酵素認識による速やかな解離反応により薬剤を遊離させるためには、γ−グルタミン酸結合部位と薬剤との間に、適当な様式でリンカーセグメントを介在させることが必要であり、芳香族アミド型リンカーセグメントをエーテル結合様式を採用することで、優位な溶液安定性とGGT認識能を発揮させることができることが明らかとなった。
試験例4;細胞増殖阻害活性試験
GGT活性が高いことが知られているOS−RC−2細胞(理研バイオリソースセンター)及びGGT活性が低いことが知られているSK−OV−3細胞(American Type Culture Collection)を用いて、実施例1に係るEHCプロドラッグの細胞増殖阻害活性を評価した。
96穴プレートに、GGT高活性のOS−RC−2細胞及びGGT低活性のSK−OV−3細胞を、それぞれ4,000 cells/well播種し、37℃、5%CO下で1日間培養後、実施例1に係るEHCプロドラッグを、終濃度0.0001〜1μMで添加した。6時間培養後にウェル内を洗浄し、さらに3日間培養した。培養後、細胞をメタノールで固定し、メチレンブルー色素を用いて染色した。染色後色素を0.3%塩酸水で抽出し、660nmの吸光度を測定した。得られた吸光度について、化合物を添加しない細胞から測定された吸光度に対する減少率により細胞増殖抑制活性を評価した。
同様の操作により、実施例1の有効成分であるEHCをそのまま用いて、その吸光度から細胞増殖抑制活性を評価した。
結果を図1(GGT高活性のOS−RC−2細胞)及び図2(GGT低活性のSK−OV−3細胞)に示した。
試験例5;プロドラッグのGGT依存性の確認試験 GGT活性が高いことが知られているOS−RC−2細胞を用いて、実施例1に係るEHCプロドラッグの細胞増殖阻害活性におけるGGT活性依存性を評価した。 試験例4と同様の方法でOS−RC−2細胞を播種して1日培養後、GGT阻害剤であるGGsTop(和光純薬工業株式会社)を終濃度10μM添加し、1時間培養した。その後、実施例1に関わるEHCプロドラッグを終濃度0.0001〜1μMで添加した。6時間培養後にウェル内を洗浄し、さらに3日間培養後、試験例4と同様の方法で細胞増殖抑制活性を評価した。 同様の操作により、実施例1の有効成分であるEHCをそのまま用いて、その吸光度から細胞増殖抑制活性を評価した。 結果を図3に示した。
試験例4の結果、GGT活性が高いことが知られているOS−RC−2細胞において、0.01μMのEHCを添加した場合、細胞増殖阻害活性は26%だった。また、実施例1に係るEHCプロドラッグを0.01μM添加した場合、25%の細胞増殖阻害活性を示した。
一方、GGT活性が低いことが知られているSK−OV−3細胞において、0.01μMのEHCを添加した場合、細胞増殖阻害活性は27.7%だった。一方、実施例1に係るEHCプロドラッグを0.01μM添加した場合、1.3%の細胞増殖阻害活性を示した。
GGT活性の高い細胞とGGT活性の低い細胞における細胞増殖阻害活性の結果を比較すると、本発明に係る実施例1のEHCプロドラッグは、GGTによりEHCを遊離し、細胞増殖阻害活性を示すと共に、GGTが存在しない場合は、細胞増殖阻害活性が低く、殺細胞性をほとんど示さないことが明らかとなった。このことから、本発明に係るEHCプロドラッグは、GGT活性に依存した細胞増殖抑制活性を発揮できることが示された。
また、試験例5の結果、GGT活性の高いOS−RC−2細胞において、GGT阻害剤はEHCの細胞増殖抑制活性に影響を与えなかったが、EHCプロドラッグの活性を阻害した。このことから、本発明に係るEHCプロドラッグは、GGT活性に依存した細胞増殖抑制活性を発揮する物性であることが示された。
試験例6;組織中薬剤濃度の測定
マウス皮下で継代培養しているマウス腎細胞がんOS−RC−2腫瘍を約2mm角のブロックにし、套管針を用いてマウス皮下に移植した。腫瘍移植後17日目に本発明に係る実施例1のEHCプロドラッグをDMSO/5%グルコース水溶液=1:9溶液に懸濁し、EHC換算として20mg/kgで尾静脈内投与した。また対照薬として、EHCのプロドラッグである塩酸イリノテカン(CPT−11)を5%グルコース水溶液に溶解し、EHC換算として20mg/kgで尾静脈内投与した。
投与後5分、1、3、6時間に、エーテル麻酔下、血漿、肝臓、骨髄及び腫瘍の各組織を採取した。各組織中における活性体であるEHC、実施例6未変化体及びCPT−11未変化体の薬物濃度を、LC−MS/MS法により以下の測定機器及び条件で定量分析した。
機種:ABSciex API4000
島津 LC−20AD
カラム:Waters XBridge、C18、2.1mm×50mm
移動相A:ギ酸/水 (1/1000)
移動相B:ギ酸/アセトニトリル (1/1000)
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(正イオン)
検出法:多重反応モニタリング
各時点の組織中EHC、実施例1に係るプロドラッグ及びCPT−11濃度から、投与開始後6時間までの各成分のAUC0−6hrを算出した。各組織中における実施例1及びCPT−11のプロドラッグ活性化率として、未変化体に対する活性体のAUC0−6hr比率(AUCEHC/AUC実施例6及びAUCEHC/AUCCPT−11)を求めた。結果を表1にまとめた。
[表1]
試験例7;抗腫瘍効果試験
試験例6と同様にマウス腎細胞がんOS−RC−2を移植したマウスに、腫瘍移植後17日目に本発明に係る実施例6のEHCプロドラッグ20、40及び80mg/kgを、4日おきに計3回尾静脈内投与した。投与後、腫瘍の長径(Lmm)及び短径(Wmm)を、キャリバーを用いて2〜3日間隔で計測し、腫瘍体積を(L×W)/2により計算し、投与開始日からの腫瘍体積変化率/無処置群の体積変化率を求め、表2に示した。
[表2]
試験例6の結果、実施例1のEHCプロドラッグは、GGT低発現の血漿や肝臓、骨髄でCPT−11と比較し、同程度〜9.4倍程度の活性化率であった。一方、GGTを発現する腫瘍中では、実施例1のAUCEHC/AUC実施例6比はCPT−11投与群と比較して61.8倍と顕著に高値を示した。このことから、本発明に係る実施例6のEHCプロドラッグは、組織中でGGT依存的に活性化され、GGTを発現する組織において選択的にEHCを放出できる物性であることが示された。
また、試験例7の結果、実施例1のEHCプロドラッグは、用量依存的な抗腫瘍効果を示し、80mg/kg投与群では顕著な腫瘍縮小効果を示しており、優れた抗腫瘍作用を発揮する物性であることが示された。

Claims (12)

  1. 一般式(1)
    [式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rは、水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、A及びAは、C−R、C−R及び窒素原子からなる群から選択される基であり、該Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、置換基を有していても良いアルキル基及び置換基を有していても良いアルコキシ基からなる群から選択される1種以上の基を示し、該Rは下記一般式(2)
    [式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基を示し、Xは生理活性物質の芳香族性水酸基の酸素原子を介してエーテル結合した結合残基を示す。]であり、ここで、前記A及び前記Aは何れか一方が前記C−Rであって、他方が前記C−R又は窒素原子であり、B、B及びBは、それぞれ独立して前記C−R又は窒素原子である。]で表されるグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  2. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、ノギテカン及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  3. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、エトポシド、テニポシド及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  4. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ラロキシフェン及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  5. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ゴセレリン、リュープリン及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  6. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、2−ブチルアミノ−2−デメトキシヒポクレリン及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  7. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、コンブレタスタチン及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  8. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ガネテスピブ、マクベシン、ラディシコル及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  9. Xで示される前記生理活性物質の結合残基における該生理活性物質が、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムルビシン及びその誘導体からなる群から選択される1種である請求項1に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  10. 一般式(1)において、R、R及びRは水素原子である請求項1〜9の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載のグルタミン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
  12. 抗がん剤である請求項11に記載の医薬。
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