JP2016000023A - 細胞シート製造用容器 - Google Patents

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【課題】製造した細胞シートを、ダメージを与えることなく容易に移送することができる手段を提供すること。【解決手段】内部に細胞培養液を保持可能なケーシング(2)、前記ケーシングの内面の一部に設けられ、その上で細胞をシート状に培養し、かつ得られた細胞シートを剥離させることが可能な培養用領域(3)、および前記ケーシングの内面の一部に設けられ、細胞シートをその上に載せて回収するための移送用領域(4)を有し、前記移送用領域は、前記ケーシングを回動させることによりその鉛直方向視における位置を培養用領域と入れ替えられる位置に設けられている、細胞シート製造用容器(1)。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞シートを製造するための容器、およびその容器を用いて細胞シートを製造する方法に関する。
細胞をシート状に培養し、トリプシンなどの酵素を使用せずに温度を低下させるだけで細胞をシート状に回収する「細胞シート工学」という技術が再生医療分野で注目されている。細胞シート工学によって得られる細胞シートは角膜や歯周組織などの再生医療で既に一定の治療効果も確認され欧州で既に臨床研究や治験が進められている。また、複数の種類からなる細胞シートを積層することによる三次元組織モデルの作製や血管組織を伴う成熟した組織を生体外で作製することも可能であり、今後ますます本技術をベースにした研究や治療が期待される。
このような細胞シートを、目的とする患部(移植部位)に移植するには、例えば、細胞シートの端部をピンセット等で摘んで、細胞シートを包装容器から取り出し、患部まで移送し、その患部に移植(貼付)するといった一連の操作が必要となるが、細胞シートは、物理的強度が低く、シワ、破れ、破損などが生じ易いことから、この一連の操作には高度な技術が要求され、かつ細心の注意を払う必要がある。そこで、そのような細胞シートの移送操作をより容易にするための治具やデバイスが開発されている。
細胞シートを把持するための治具としては、例えば特許文献1〜3に記載されているようなものが知られている。特許文献1では、剥離した細胞シートが内部張力でカールすることを利用し、把持用フックに絡みつかせて細胞シートを把持する治具が提案されている。特許文献2では、柱状または錘状をなす支持体と該支持体の側面から突出する複数の突刺部とを有し、該複数の突刺部のうちの少なくとも一部によってシート状移植片が突刺されることにより、前記シート状移植片を保持することができるように構成されている移送デバイスが提案されている。特許文献3では、細胞シート吸着部と減圧部とを有し、該細胞シート吸着部が多孔体によって構成される細胞シート搬送治具が提案されている。
特開2013−074867号公報 特開2013−198442号公報 特開2010−075081号公報
特許文献1および2に記載されているような細胞シートをフックなどで直接把持する治具では、把持した際に細胞シートに張力がかかり、細胞シートがその形状を維持できない可能性がある上、細胞シートへのダメージは避けられない。また、特許文献3に記載されているような細胞シートを吸着させて移送するデバイスでは、吸引や加圧により細胞シートにダメージが加わるリスクがある上、細胞シートの培養時における非接着面に触れてハンドリングする必要があり、細胞シートの非接着面に独特の性質が損なわれる可能性もある。また、いずれの治具やデバイスも、ヒトが直接操作をすることを前提に設計されており、細胞シートの移送を自動的に行う装置に採用するのに適した構成となっているとはいえない。
上記のような従来の治具やデバイスにおける問題に鑑み、本発明は、製造した細胞シートを、どのような操作者であっても、あるいは自動化されたプロセス中においても、ダメージを与えることなく容易に移送することができる手段を提供することを目的とする。
本発明者は上述したような問題を検討した結果、培養し製造した細胞シートを容易に移送可能とする細胞シート製造用容器およびそれを用いた細胞シートの製造方法を見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)内部に細胞培養液を保持可能なケーシング、
前記ケーシングの内面の一部に設けられ、その上で細胞をシート状に培養し、かつ得られた細胞シートを剥離させることが可能な培養用領域、および
前記ケーシングの内面の一部に設けられ、細胞シートをその上に載せて回収するための移送用領域を有し、
前記移送用領域は、前記ケーシングを回動させることによりその鉛直方向視における位置を前記培養用領域と入れ替えられる位置に設けられている、細胞シート製造用容器。
(2)前記ケーシングの回動軸に対して垂直方向における前記ケーシング内面の断面形状が、前記培養用領域が最下部の状態から、前記移送用領域が最下部となる状態まで入れ替えるためにケーシングを回動させる際に、細胞培養液の界面がケーシングと接する部分において円弧を有する、(1)に記載の細胞シート製造用容器。
(3)前記移送用領域が、それ単独で、または周囲のケーシングの一部と共に、前記ケーシングから着脱可能に設けられている、(1)または(2)に記載の細胞シート製造用容器。
(4)前記移送用領域として、第1の移送用領域と第2の移送用領域とを有し、各移送用領域を構成する材料および/または構造が互いに異なる、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞シート製造用容器。
(5)2以上の培養用領域を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞シート製造用容器。
(6)前記培養用領域が、温度変化により細胞接着性が変化する領域である、(1)〜(5)のいずれかに記載の細胞シート製造用容器。
(7)前記ケーシングを回動させる際の回動軸が、鉛直方向に対して30°以上の傾きを有するかあるいは水平である、(1)〜(6)のいずれかに記載の細胞シート製造用容器。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の細胞シート製造用容器を用いた細胞シートの製造方法であって、
前記培養用領域に細胞を播種しシート状に培養する工程、
得られた細胞シートを前記培養用領域から剥離させ、細胞培養液中に浮遊させる工程、
前記ケーシングを回動させて前記培養用領域と前記移送用領域の鉛直方向視における位置を入れ替える工程、および
細胞シートを前記移送用領域上に載せる工程
を含む、前記方法。
(9)前記ケーシングから細胞培養液を除去することにより細胞シートを移送用領域上に載せる、(8)に記載の方法。
作業者の技量に依らず、培養した細胞シートの移送を精度よく、かつ安定して行うことが可能となる。本発明の細胞シート製造用容器を用いることにより、ヒトによる操作のみならず機械的に細胞シートを製造し移送することも可能となる。
本発明の細胞シート製造用容器の一態様を表す図である。 図1の細胞シート製造用容器1をハウジング7に収めた状態を説明する図である。 図1に示した細胞シート製造用容器1を用いた細胞シート製造方法の工程3における、ケーシング2の回動前((a),(b))および回動後((c),(d))を示す図である。(a)および(c)は鉛直上面図、(b)および(d)は斜視図である。 培養用領域3が設けられている部分および移送用領域4が設けられている部分の双方が平面であるケーシング2の断面の一例を示す図である。 培養用領域3を複数有する容器の例を示した図である。
(本発明の細胞シート製造用容器の基本構成)
図1は本発明の細胞シート製造用容器の一態様を表す図である。本発明の細胞シート製造用容器1は、内部に細胞培養液を保持可能なケーシング2、ならびにケーシング2の内面の一部に設けられた、細胞をシート状に培養するための培養用領域3および細胞シートをその上に載せて回収するための移送用領域4を有する。移送用領域4は、ケーシング2を回動させることによりその鉛直方向視に基づく位置を培養用領域3と入れ替えられる位置に設けられている。ケーシング2はさらに開放部5を有しており、図1に示した態様では上面に開放部5を有し、そこから培養液や細胞の出し入れを行うことができる。
図1に示した態様では、ケーシング2はさらに回動軸6を有する。回動軸6は、それを中心としてケーシング2を回動させることにより、移送用領域4の鉛直方向視に基づく位置を培養用領域3と入れ替えられるよう設けられている。回動軸6は必ずしもケーシング2に物理的に設けられている必要はないが、例えば図2に例示するハウジング7のような回動軸6を保持する機構を設ける場合、回動軸6を有することでよりケーシング2をスムーズに回動させることができる。また、回動軸6は常にハウジング7と一体である必要はなく、必要に応じてネジ機構等の公知の方法により取り付けや取り外しが可能に構成されていてもよい。なお、本明細書における回動軸とは、ケーシングに図1に示したような物理的な回動軸が存在しない場合には、ケーシングの回動運動の中心軸を意味する。
(本発明の容器を用いた細胞シートの製造方法)
図1に示した細胞シート製造用容器1を用いた細胞シート製造は以下のように行う。
工程1:細胞シート製造用容器1をケーシング2の内面の一部に設けられた培養用領域3が最下部となるように設置し、培養用領域3の上で従来法に従って細胞を播種し培養液を加えて培養を行う。培養液は、少なくとも培養用領域3が最下部となるように設置した状態で培養用領域3が浸る程度加えればよい。培養用領域3に播種された細胞は当該領域に接着し、培養することにより細胞同士も接着し、細胞シートを形成する。
工程2:ケーシング2に培養液を入れた状態で、得られた細胞シートを培養用領域3から剥離させる。細胞シートの剥離は、トリプシンなどの酵素を用いた方法でもよいが、培養用領域3を刺激応答性を有する材料から構成し、特定の刺激によって細胞シートを剥離するようにすると、細胞シートにダメージを与えることなく剥離できるため好ましい。培養用領域3から剥離された細胞シートは培養液中に浮遊した状態となる。この際、細胞シートが培養用領域3やケーシング2などと接触しないよう、また細胞シートがシワ等にならないよう、ケーシングを回動させた際の培養液の動き(液の対流など)が細胞シートに伝わらないようにすることが望ましい。容器形状と細胞シートの状態(細胞種・サイズなど)にも依存するが、ケーシングの回動は培養液の動きが大きくならないよう、極力ゆっくりと行うことが好ましい。
工程3:回動軸6を中心としてケーシング2を回動させ、培養用領域3の代わりに、やはりケーシング2の内面の一部に設けられた移送用領域4が最下部となるようにする。図3(a)および(b)は回動前の状態を、ならびに図3(c)および(d)は回動後の状態をそれぞれ示す。そのようにすると、移送用領域4の鉛直方向視における位置、図3に示した態様では、移送用領域4の中心(領域の形状が円や正方形などではない場合には重心)を通る鉛直線上から視た位置は、ケーシング2の回動前に視点から視た培養用領域3の位置、より詳細には培養用領域3の中心と一致し、培養用領域3と移送用領域4の鉛直方向視における位置が入れ替わる(図3(a)および(c)を参照)。このケーシング2の回動の間、細胞シートは培養液の液中に浮遊した状態となる。培養液の動きが大きくならないようにすると、細胞シートは鉛直方向視における位置を変えることなく、またシートがシワになる等のことはない。
工程4:ケーシング2を工程3で回動させた状態で保持したまま、ケーシング2内から培養液を除去する。培養液の除去は、ケーシング2の開放部5からピペットを挿入して液を吸い出す等することによって行うことができる。あるいはケーシング2に予め培養液の排出口を設けておき、そこから排出を行うようにしてもよい。ただし、いずれの場合も培養液の液中に浮遊している細胞シートがシワになることの無いよう、培養液の動きを大きくすることなく培養液を排出することが好ましい。培養液を除去するに従い液面レベルは低下し、最終的には細胞シートは移送用領域4の上に載ることとなる。このようにすると、細胞シートに一切触れることなく、培養用領域3から移送用領域4へと細胞シートを移すことができる。
移送用領域4は、それ単独で、または周囲のケーシング2の一部と共に、ケーシング2から着脱可能に設けられていることが好ましい。例えば、ケーシング2の移送用領域4を支持する部分がフィルム状となっており、細胞シートを移送用領域4の上に載せた後に剥離して、ケーシング2と分離して持ち運びができるようにするような構成が考えられる。
(培養用領域)
培養用領域はどのような形状を有していてもよいが、作成する細胞シートは、培養用領域と同じ形状でサイズが小さいものとなる。培養用領域は、その上に細胞を接着させシート状に培養することができ、かつ形成された細胞シートをダメージを与えずに剥離することが可能な素材から構成されていることが好ましい。培養用領域に接着した細胞シートを剥離する方法としては、トリプシンなどの酵素を用いる方法も挙げられるが、刺激応答性を有する材料を用いて培養用領域の少なくとも表面を構成し、特定の刺激によって細胞シートを剥離するようにすることが好ましい。
刺激応答性を有する材料とは、刺激により細胞の接着性を変化させることで培養する細胞の接着および剥離を行うことができるものであり、好ましくは、特定の刺激により細胞の接着性が高い細胞接着性を発現している状態から、細胞の接着性が低い細胞非接着性を発現している状態に変化し得るものである。
刺激応答性を有する材料から構成される培養用領域の表面に細胞を播種すると、細胞接着性を発現している際には細胞が接着するが、細胞非接着性を発現している際には細胞の接着が阻害されるため、接着していた細胞を剥離することができる。したがって、細胞接着性を発現している状態で細胞を播種して接着させ細胞をシート状に培養し、次いで特定の刺激により細胞非接着性を発現している状態に変化させ、細胞シートを剥離回収することができる。
刺激応答性を有する材料としては、刺激の有無により細胞の接着性が変化し、培養する細胞の接着および剥離を行うことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、温度、光、pH、電位または磁力の変化により細胞の接着性が変化する温度応答性材料、光応答性材料、pH応答性材料、電位応答性材料、および磁力応答性材料などを挙げることができる。本発明において用いる刺激応答性を有する材料としては、温度変化により細胞接着性が変化する温度応答性材料が好ましい。
温度応答性材料は、細胞接着性を発揮する温度領域が10℃〜45℃、特に33℃〜40℃の範囲であることが好ましい。温度領域が上述の範囲内であることにより、細胞を安定的に培養することができるからである。一方、温度応答性材料の細胞非接着性を発揮する温度領域は、1℃〜36℃、特に4℃〜32℃の範囲内であることが好ましい。温度領域が上述の範囲内であることにより、細胞へのダメージをより減らすことができる。
温度応答性材料としては、具体的には、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、および、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド等の温度応答性ポリマーを挙げることができ、なかでもPNIPAAm、ポリ−N−n―プロピルメタクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドを好ましく用いることができ、特にPNIPAAmを好ましく用いることができる。細胞接着性を有する温度領域および細胞非接着性を有する温度領域が上述の温度領域であり、細胞へのダメージを減らすことができるからである。
温度応答性材料は1種類のみからなるものであってもよく、2種類以上含むものであってもよい。また、温度領域の調整をするため、温度応答性材料同士および/またはその他のポリマーと共重合したものを用いるものであってもよい。
光応答性材料としては、光照射の有無により細胞の接着性が変化するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、特開2005−210936号公報に開示されるような、光触媒や、アゾベンゼン、ジアリールエテン、スピロピラン、スピロオキサジン、フルギドおよびロイコ色素等の光応答成分を含むものを用いることができる。
電位応答性材料としては、電位の印加により、細胞の接着性が変化するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、特開2008−295382号公報に開示されるような、電極と、RGD配列を含むペプチド等の細胞接着性部分を有し、上記電極表面にチオレートを介して結合するアルカンチオール、システイン、アルカンジスルフィド等のスペーサ物質とを有するものを挙げることができる。
磁力応答性材料としては、磁力の付与・除去により細胞の接着性が変化するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、特開2005−312386号公報に開示されるような、フェライト等の磁性粒子を正電荷リポソームに封入した磁性粒子封入正電荷リポソームを挙げることができる。
培養用領域3の表面に構成される刺激応答性材料の層の膜厚としては、刺激応答性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.5nm〜300nm、特に1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。また、刺激応答性材料の層の被覆量としては、0.3〜6.0μg/cmであることが好ましい。
刺激応答性材料の層の形成方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、刺激応答性材料を含む組成物をスピンコート等の公知の塗布方法を用いて、培養用領域3の底部を構成するケーシング2の内面に直接、またはケーシング2の内面に設けられたか、あるいは層を形成後にケーシング2の内面に設置される基材上に塗布する。または、刺激応答性材料のパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法や、グラビア印刷やフレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法などの公知のパターン塗布法を用いてパターン状に塗布する方法を使用できる。貫通孔(スルーホール)を有するメタルマスク等を介して、パターン状に刺激応答性材料を電子線や紫外線処理することによって作製してもよい。刺激応答性材料が光触媒等の無機物のみからなるものである場合には、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。
(移送用領域)
移送用領域は、どのような形状を有していてもよいが、細胞シート以上のサイズを有することが好ましく、その表面は、細胞シートをその上に載せて移送し移植先の組織等に張り付けるまでの間に、細胞シートにシワやヨレなどを生じさせずに保持することができ、かつ移植先に細胞シートを一定時間置くなどして定着させた後には、スムーズに細胞シートから剥離される材質からなることが好ましい。そのような材質としては、高分子材料からなる膜、例えば、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース及びその誘導体、キチン、キトサン、コラーゲン、和紙等の紙類、ウレタン、スパンデックスなどの高分子材料からなり、好ましくは表面が親水性加工されている高分子材料からなる膜が挙げられる。
(培養細胞)
培養して細胞シートとする細胞の種類としては、生体に存在するあらゆる組織とそれに由来する細胞を用いることができるが、接着性の細胞が好ましい。具体的には、生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン、グリア細胞、繊維芽細胞、生体の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々組織に存在する幹細胞、さらには骨髄細胞、ES細胞、iPS細胞などを用いることができる。細胞は、一種類のみであってもよく、二種類以上用いるものであってもよい。細胞が由来する動物も特に限定されず、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジなどが含まれる。
培養用領域に播種する細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、あるいは、それらを何代か継代させたものでもよい。さらにこれら細胞は、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞などの多能性幹細胞、単分化能を有する血管内皮前駆細胞などの単能性幹細胞、分化が終了した細胞の何れであってもよい。細胞を通常の方法で予備培養して増殖させ、酵素処理することにより剥離および回収した上で播種することができる。
(培養液)
培養液としては、当技術分野で通常用いられる細胞培養用培地であれば特に制限なく用いることができる。例えば、用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI1640培地などの基礎培地を用いることができる。
(ケーシングの材質)
ケーシングを構成する材料としては金属、ガラス、セラミック、プラスチック、エラストマーなどや、これらの複合材を用いることができる。培養中の細胞の観察などを容易にする観点から、ケーシングは透明な材料から構成されていることが好ましい。プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。
上記のようなケーシングを構成する材料は細胞非接着性であってもよい。その場合、培養用領域以外のケーシングの表面は細胞非接着領域となり、培養用領域に播種した細胞はケーシングの表面には接着せず培養用領域にのみ接着するため、培養用領域の形状に沿った細胞シートを製造しやすくなるという利点がある。
(ケーシングの形状)
図1に示した実施形態ではケーシング2は円筒に基づく形状を有しているが、本発明の細胞シート製造用容器におけるケーシング形状はこれに限られるものではなく、ケーシングの回動により培養用領域と移送用領域の鉛直方向視における位置が入れ替えられるものであれば他の形状であってもよい。他の形状としては、例えば球または球の一部を切り出した形状(例えば底面に球面を有する円錐形など)が挙げられる。
また、図1に示した実施形態ではケーシング2の回動軸は水平であるが、回動軸の角度はこれに限られない。例えば前述の球または球の一部を切り出した形状を有するケーシングの場合であれば、回動軸を傾けてもよい。ただし、培養用領域と移送用領域を設ける位置が重ならないよう、回動軸は鉛直方向に対して30°以上、特に45°以上の傾きを有することが好ましい。
ケーシングの内面は全て曲面から構成されていてもよいが、少なくとも培養用領域が設けられている部分が平面であることが好ましい。移送用領域は必ずしも平面である必要はないが、移送用領域が平面であると細胞シートがシワ等になりにくく、より好ましい。図4に培養用領域3が設けられている部分および移送用領域4が設けられている部分の双方が平面であるケーシング2の断面の一例を示す。ケーシングの培養用領域が設けられている部分が平面であり、それにより培養用領域が平面であると、細胞を播種した際に細胞が均一に分布しやすくなり好ましい。また、ケーシングの移送用領域が設けられている部分が平面であり、それにより移送用領域が平面であると、細胞シートを載せた際にシワ等になりにくく好ましい。
一方、培養用領域および好ましくは移送用領域以外のケーシングの内面は、少なくとも回動前および回動後に培養液が接する部分において滑らかであると、ケーシングの回動時に培養液の液面が波立って浮かんでいる細胞シートがシワ等になることを防ぐことができ好ましい。より具体的には、ケーシング内面の回動方向における断面形状、すなわち回動軸に対して垂直方向における断面形状が、前記培養用領域が最下部の状態から、前記移送用領域が最下部となる状態まで入れ替えるためにケーシングを回動させる際に、細胞培養液の界面がケーシングと接する部分において円弧を有することが好ましい。断面形状が円弧を有するとは、直線と円弧の組み合わせからなる形状、および円弧のみからなる形状の両方を意味する。円弧は真円に基づくものであっても楕円に基づくものであってもよく、2種以上の円に基づく円弧がスムーズに接続されているようなものであってもよい。
ケーシングが保持可能な細胞培養液の量はケーシングの形状によって変化し、当然ながらケーシング内の液面レベルはケーシング内に保持した細胞培養液の量によって変化し得る。移送用領域が最下部となるようケーシングを設置した際に細胞培養液が接する部分は、ケーシング内の培養液の液面レベルによって変化し得る。従って、ケーシングの形状に応じて予め培養液の最大許容液面レベルを定めておき、それによりケーシングを回動させて移送用領域が最下部となるようにした際に培養液に接する部分、さらに培養用領域が最下部の状態から、移送用領域が最下部となる状態まで入れ替えるためにケーシングを回動させる際に、細胞培養液の界面がケーシングと接する部分を定めておくことが好ましい。例えば図1に示したような細胞シート製造用容器1の場合であれば、最大許容液面レベルを最深部で1cmと定めた場合、移送用領域4が最下部となるようケーシング2を設置した際に細胞培養液が接する部分とは、移送用領域4の上方の鉛直方向1cm以内の範囲に含まれるケーシング2の内面を意味する。
(本発明の細胞シート製造用容器の応用例)
図1に示した細胞シート製造用容器では、移送用領域4は1つの培養用領域3に対して1つのみ設けられているが、移送用領域の数はこれに限られず、培養用領域1つに対して2以上の移送用領域が設けられていてもよい。例えば、第1の移送用領域と第2の移送用領域とを有するようにし、各移送用領域を構成する材料および/または構造が互いに異なるようにすることもできる。その場合、例えば第1の移送用領域を細胞シートを直ちに移植先の組織等に張り付けるのに適した材質または構造とする一方、第2の移送用領域を細胞シートを凍結保存するのに適した材質または構造とすれば、細胞シートが完成した際の患者の状態が移植に適していれば第1の移送用領域を使用し、患者の状態が悪く移植を延期等しなければならない際には第2の移送用領域を使用する、といった使い方も可能となる。
培養用領域も1つのみならず、2以上設けられていてもよい。図5は培養用領域3を複数有する容器の例を示したものである。この例では、5つの培養用領域3と、それぞれに対応する5つの移送用領域4が設けられている。図5のように複数の培養用領域3を並列に有する容器を用いれば、一度に複数の細胞シートを製造可能である。一度に複数の細胞シートを製造することにより、例えばそれらを積層させてより厚みのある組織を作成する作業が従来よりも容易となる。
以上説明したような本発明の細胞シート製造用容器によれば、作業者の技量に依らず、培養した細胞シートの移送を精度よく、かつ安定して行うことが可能となる。また、培養から移送までの細胞シート製造における作業を1つの容器内で実現できるため、利便性が高い。本発明の細胞シート製造用容器を用いることにより、ヒトのみならず機械的に細胞シートを製造し移送することも可能となる。
図1に示した構成を有する細胞シート製造用容器(回転軸6に対して垂直な断面における最大径4cm)を用いて、培養液中に浮遊させた細胞シートを移送用領域上に載せることが可能であるかを検証した。
細胞シート製造用容器1を培養用領域3が最下部となるように保持し、そこに液深が最も深いところで5mm程度となるように細胞培養液9を入れた。次に、従来の温度応答性培養皿を用いて培養し回収したヒト肝細胞の細胞シート8を、シートがシワにならないようにして入れ、容器1の培養用領域3の直上に細胞シート8が浮かぶようにした。
次に、その状態から、容器1を回動軸6を中心として回動させ、移送用領域4が最下部となるようにした。回動の際、培養液の液面は大きく乱れることはなく、液面に浮かんだ細胞シート8にシワなどが発生することもなかった。移送用領域4が最下部となるように容器1を保持すると、細胞シート8は移送用領域4の直上に浮かんだ状態となった。ピペットを用いて容器1から細胞培養液9を除去したところ、容易に細胞シート8を移送用領域4の上に載せることができた。
1…細胞シート製造用容器、2…ケーシング、3…培養用領域、4…移送用領域、5…ケーシング開放部、6…回動軸、7…ハウジング、8…細胞シート、9…細胞培養液

Claims (9)

  1. 内部に細胞培養液を保持可能なケーシング、
    前記ケーシングの内面の一部に設けられ、その上で細胞をシート状に培養し、かつ得られた細胞シートを剥離させることが可能な培養用領域、および
    前記ケーシングの内面の一部に設けられ、細胞シートをその上に載せて回収するための移送用領域を有し、
    前記移送用領域は、前記ケーシングを回動させることによりその鉛直方向視における位置を前記培養用領域と入れ替えられる位置に設けられている、細胞シート製造用容器。
  2. 前記ケーシングの回動軸に対して垂直方向における前記ケーシング内面の断面形状が、前記培養用領域が最下部の状態から、前記移送用領域が最下部となる状態まで入れ替えるためにケーシングを回動させる際に、細胞培養液の界面がケーシングと接する部分において円弧を有する、請求項1に記載の細胞シート製造用容器。
  3. 前記移送用領域が、それ単独で、または周囲のケーシングの一部と共に、前記ケーシングから着脱可能に設けられている、請求項1または2に記載の細胞シート製造用容器。
  4. 前記移送用領域として、第1の移送用領域と第2の移送用領域とを有し、各移送用領域を構成する材料および/または構造が互いに異なる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞シート製造用容器。
  5. 2以上の培養用領域を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞シート製造用容器。
  6. 前記培養用領域が、温度変化により細胞接着性が変化する領域である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞シート製造用容器。
  7. 前記ケーシングを回動させる際の回動軸が、鉛直方向に対して30°以上の傾きを有するかあるいは水平である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞シート製造用容器。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞シート製造用容器を用いた細胞シートの製造方法であって、
    前記培養用領域に細胞を播種しシート状に培養する工程、
    得られた細胞シートを前記培養用領域から剥離させ、細胞培養液中に浮遊させる工程、
    前記ケーシングを回動させて前記培養用領域と前記移送用領域の鉛直方向視における位置を入れ替える工程、および
    細胞シートを前記移送用領域上に載せる工程
    を含む、前記方法。
  9. 前記ケーシングから細胞培養液を除去することにより細胞シートを移送用領域上に載せる、請求項8に記載の方法。
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